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明細書 :化合物半導体の製膜方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3000143号 (P3000143)
公開番号 特開平11-283925 (P1999-283925A)
登録日 平成11年11月12日(1999.11.12)
発行日 平成12年1月17日(2000.1.17)
公開日 平成11年10月15日(1999.10.15)
発明の名称または考案の名称 化合物半導体の製膜方法
国際特許分類 H01L 21/205     
C30B 25/10      
C30B 29/40      
H01L 21/20      
FI H01L 21/205
C30B 25/10
C30B 29/40
H01L 21/20
請求項の数または発明の数 8
全頁数 7
出願番号 特願平10-096945 (P1998-096945)
出願日 平成10年3月26日(1998.3.26)
審査請求日 平成10年3月26日(1998.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】角谷 正友
【氏名】福家 俊郎
【氏名】小川 真吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】長谷山 健
参考文献・文献 特開 平2-211620(JP,A)
特開 平5-283745(JP,A)
特開 平8-203837(JP,A)
特開 平9-186403(JP,A)
調査した分野 H01L 21/205
H01L 21/20
特許請求の範囲 【請求項1】
化合物半導体を基板上にエピタキシャル成長させる化合物半導体の製膜方法において、
製膜中における基板温度を所定の割合で上昇させて、前記基板上に直接化合物半導体をエピタキシャル成長させることを特徴とする、化合物半導体の製膜方法。

【請求項2】
前記基板温度の上昇開始時に、前記化合物半導体の原料ガスの供給を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。

【請求項3】
製膜直前の基板温度を400~670℃に設定し、製膜中の基板温度上昇度を0.5℃/秒以上に設定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物半導体の製膜方法。

【請求項4】
前記基板温度上昇度は、1.0~3℃/秒であることを特徴とする、請求項3に記載の化合物半導体の製膜方法。

【請求項5】
前記製膜直前の基板温度は、500~600℃であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の化合物半導体の製膜方法。

【請求項6】
前記化合物半導体は、III -V族窒化物化合物半導体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の化合物半導体の製膜方法。

【請求項7】
請求項1~5のいずれか一に記載の製膜方法を用いて、(0001)面のサファイア基板上に、バッファ層を介さずに、直接エピタキシャル成長により製膜されてなることを特徴とする、化合物半導体。

【請求項8】
前記化合物半導体は、III -V族窒化物化合物半導体であることを特徴とする、請求項7に記載の化合物半導体。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化合物半導体の製膜方法に関し、さらに詳しくは、青色半導体レーザなどの発光素子として好適に使用することのできる、化合物半導体の製膜方法に関する。

【0002】
【従来の技術】近年の半導体エレクトロニクス分野においては、光記録等の高密度化などの目的から、青色発振の半導体レーザが開発され、着目を浴びている。この青色発振の半導体レーザは、「Jananese J.of Applied Physics」(Vol.30、No.10A、October、1991)の1705~1707頁、あるいは「J.of Crystal Growth」(98、1989)の209~219頁に記載されているように、(0001)面サファイア基板上に、窒化アルミニウム(AlN)や窒化ガリウム(GaN)などのバッファ層を製膜した後、MOCVD法などにより窒化ガリウム、あるいは窒化ガリウムアルミニウム(Ga1-X AlX N)を3~12μm製膜して、エピタキシャル成長させた化合物半導体をデバイス材料として用いることにより、製造している。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のようにして窒化ガリウムなどの化合物半導体を製造するに当たっては、基板の格子定数と窒化ガリウムなどの化合物半導体の格子定数とが異なるため、基板上に直接化合物半導体を製膜してもエピタキシャル成長しないため、基板と化合物半導体との間にバッファ層を設ける必要があった。このバッファ層として、上記のように、例えば、窒化ガリウムと異なる窒化アルミニウムを用いる場合には、窒化アルミニウムと窒化ガリウムとの製膜において反応ガスを切り替える必要があり、製膜操作が煩雑化するという問題があった。さらに、バッファ層として、例えば、化合物半導体と同じ窒化ガリウムを用いた場合においても、バッファ層の製膜と実際の化合物半導体の製膜とにおいては、製膜時の基板温度や反応ガスの流量などが異なるため、両者の製膜時においてこれらを調節する必要が生じ、前記同様に、製膜操作が煩雑化するという問題があった。

【0004】
本発明の目的は、バッファ層を設けることなく、簡易な方法でエピタキシャル成長させることが可能な、化合物半導体の製膜方法を提供することである。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、化合物半導体を基板上にエピタキシャル成長させる化合物半導体の製膜方法において、製膜中における基板温度を所定の割合で上昇させて、前記基板上に直接化合物半導体をエピタキシャル成長させることを特徴とする、化合物半導体の製膜方法である。

【0006】
図2は、本発明の化合物半導体の製膜方法によって製膜した、窒化ガリウム膜のX線回折(XRD)パターンを示す図である。図3は、本発明の化合物半導体の製膜方法によって製膜した、窒化ガリウム膜の高速電子線回折(RHEED)パターンを示す図である。図2及び3における窒化ガリウムは、製膜直前の基板温度を500℃に設定し、基板温度上昇度を2℃/秒に設定して、(0001)面サファイア基板上に約1.2μm製膜したものである。

【0007】
図2におけるX線回折パターンでは、窒化ガリウムの(0002)面及び(0004)面からのピーク、すなわち、c軸配向した窒化ガリウムからのピークのみが観測されている。また、図3においても、ストリーク状の高速電子線回折パターンが観察されている。したがって、図2及び3から明らかなように、例えば、(0001)面サファイア基板上に、直接格子定数の異なる窒化ガリウムを製膜した場合においても、エピタキシャル成長した窒化ガリウムを形成できることが分かる。

【0008】
本発明の方法を用いることにより、格子定数の異なる基板上に化合物半導体を製膜した場合において、バッファ層を設けなくともエピタキシャル成長した化合物半導体を形成できる理由については、以下のように考えることができる。すなわち、製膜中の基板温度上昇度を所定の範囲に限定することにより、最初に製膜された膜が昇温過程でアニールされると同時に、再蒸発する現象と、その上への製膜過程とが同時に進行し、(0001)面に配向した初期成長核上への製膜が可能になるためと考えられる。

【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。本発明の化合物半導体の製膜方法においては、製膜中の基板温度をほぼ一定の割合で上昇させることが必要である。窒化物化合物半導体などの化合物半導体を、格子定数の異なる基板上にエピタキシャル成長させるためには、製膜直前の基板温度の上限は670℃であることが好ましく、さらには600℃であることが好ましい。同様に、製膜直前の基板温度の下限は400℃であることが好ましく、さらには500℃であることが好ましい。

【0010】
また、製膜直前の基板温度の上限を670℃とすることにより、格子定数の異なる基板上に化合物半導体をエピタキシャル成長させた場合において、平滑な表面を有する化合物半導体を得ることができる。図4~6は、(0001)面サファイア基板上に、基板温度上昇度2℃/秒で窒化ガリウムをエピタキシャル成長させた場合の表面特性を、製膜直前の基板温度に対して調べたものである。図4に示す製膜直前の基板温度500℃及び図5に示す製膜直前の基板温度600℃の場合においては、比較的平滑な表面を有する窒化ガリウム膜を得ることができるが、図6に示す製膜直前の基板温度700℃の場合においては、得られる窒化ガリウム膜の表面が荒れていることが分かる。

【0011】
さらに、窒化物化合物半導体などの化合物半導体を、格子定数の異なる基板上にエピタキシャル成長させるためには、本発明の基板温度上昇度の下限は0.5℃/秒であることが好ましく、さらには1.0℃/秒であることが好ましい。また、基板温度上昇度の上限は、良好な結晶性を得るためには、3℃/秒であることが好ましく、さらに好ましくは2.5℃/秒である。

【0012】
上述したような製膜直前の基板温度、及び基板温度上昇度の基板温度の設定手段については、特に限定されるものではなく、抵抗もしくはランプ加熱などをPID制御で行う方法、及びカーボンサセプタの高周波(100kHz~13.56MHz)吸収による加熱する方法などを使用することができる。後者の方法は、PID制御することができないため、通常は、高周波入力電力をパラメータとして、基板温度上昇の時間依存性を調べた後、目的の基板温度上昇度が得られるような構成曲線を作成して、ほぼ一定の基板温度上昇度を得る。

【0013】
本発明の方法は、III -V族窒化物化合物半導体及びIII -V族砒化物化合物半導体などの化合物半導体に使用することができる。しかしながら、III -V族窒化物化合物半導体において、本発明の目的を最もよく達成することができる。III -V族窒化物化合物半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化ガリウムアルミニウム、及び窒化ガリウムインジウムなどを例示することができる。

【0014】
また、本発明における化合物半導体の製膜は、有機金属化学堆積(MOCVD)法、分子線エピタキシー(MBE法)、水素輸送法、ホットウオール法などの汎用の方法を用いて製膜することができる。

【0015】
本発明の製膜方法に用いることのできる基板としては、(0001)面サファイア基板、炭化ケイ素基板、シリコン基板及び砒化ガリウム基板などを例示することができる。

【0016】
以下、本発明の化合物半導体の製膜方法の実施手順について説明する。図1は、本発明の製膜方法を実施するための装置の一例としてのMOCVD装置を示すものである。図1に示すMOCVD装置20は、基板1を支持するためのカーボンからなる台座2を有しており、その直上には反応ガスを基板1の直上に導いて、製膜を効率よく進行させるための内管4が設けられている。また、MOCVD装置20の外周には基板1を加熱するための高周波加熱コイル3が設けられており、この高周波加熱コイルに電流を流すことによって発生した高周波によって、台座2を加熱し、この台座2上に位置する基板1を間接的に加熱する。

【0017】
さらに、MOCVD装置20のチャンバ壁には、前記の基板加熱によって、チャンバ壁が不必要に加熱されるのを防止すべく、冷却水入口5及び冷却水出口6を通じて、冷却水を流せるようになっている。MOCVD装置20の上方には、反応ガスを装置内部に導入するためのガス導入口7及び8が設けられており、また、MOCVD装置20の外部であって内管4の上方には、基板温度を測定するための赤外線放射温度計10が設けられている。

【0018】
化合物半導体として、例えば、窒化ガリウムを製膜する場合は、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)を用い、キャリアガスである窒素(N2 )及び水素(H2 )と混合して、ガス導入口7よりMOCVD装置20内に導入する。一方、窒素源としてアンモニアガス(NH3 )を用い、前記同様に窒素及び水素キャリアガスとともに、ガス導入口8より、MOCVD装置20内に導入する。これらのガスは内管4内において混合され、(0001)面サファイア基板などからなる基板1の直上へ導入される。

【0019】
なお、この原料ガスの供給のタイミングについては、特に限定されるものではないが、前記基板温度の上昇を開始する時に行なうことにより、より結晶性の高い化合物半導体を得ることができる。

【0020】
これらガスの流量は、使用するMOCVD装置20のチャンバの大きさ及び排気口9からの排気能力に依存して変化するが、NH3 /TMGガスのモル流量比は、2000~20000の範囲に設定することが必要であり、NH3 ガス/キャリアガスの流量比は0.1~10の範囲に設定することが必要である。

【0021】
製膜前の基板1の温度は、上述したように、高周波加熱コイル3によって400~670℃の範囲に設定しておき、前述のようにして作成した基板温度上昇度の構成曲線から、基板温度上昇度が1℃/秒以上の所定の値となるように、高周波加熱コイル3に印加する電力値を適宜調節して、基板1を加熱する。なお、製膜前の基板1の温度測定は、基板1が加熱されることによって放出する赤外線を、赤外線放射温度計10でモニターすることによって行う。

【0022】
製膜中のガス圧は、常に38~760Torrとなるように、排気口9から真空ポンプ(図示せず)を用いて、MOCVD装置20のチャンバ内を排気する。以上のような操作によって、約10~180分間反応を行うことにより、膜厚0.1~5μmの窒化ガリウム膜を、格子定数の異なる基板1上に製膜する。

【0023】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
実施例1~7
図1に示すようなMOCVD装置20を用い、窒化ガリウム膜の製膜を実施した。基板1としては、(0001)面サファイア基板を用いた。ガリウム源としてチリメチルガリウムガスを使用し、窒素源としてアンモニアガスを使用した。1.3sccmの流量に設定したトリメチルガリウムガスを、窒素250sccm及び水素250sccmのキャリアガスとともに,ガス導入口7よりMOCVD装置20内に導入し、750sccmの流量に設定したアンモニアガスを、窒素500sccm及び水素250sccmのキャリアガス(アンモニアガス/キャリアガスの流量比=1とともに,ガス導入口8よりMOCVD装置20内に導入し、内管4により基板1の直上にまで上記反応ガスを導入した。

【0024】
その後、発明の実施の形態で述べたような手法にしたがって、製膜直前の基板温度及び基板温度上昇度を表1に示す温度に設定し、MOCVD装置20内の圧力を760Torrになるように排気口9で調節することにより、反応を60分間実施して、約1.2μmの窒化ガリウム膜を製膜した。得られた窒化ガリウム膜に対してX線回折分析を行い、(0004)面からのピーク強度のωモードFWHM(秒)を調べることにより、膜の結晶性を評価した。結果を表1に示す。

【0025】
実施例8及び9
アンモニアガスをキャリアガスとともに5分間流した後に、トリメチルガリウムガスをキャリアガスとともに導入し、このトリメチルガリウムガスの導入と同時に基板温度の上昇を開始して、原料ガスの導入と基板温度の上昇開始とを同時に行わなかった以外は、実施例1及び3と同様にして実施した。得られた窒化ガリウム膜に対してX線回折分析を行い、(0004)面からのピーク強度のωモードFWHM(秒)を調べることにより、膜の結晶性を評価した。結果を表1に示す。

【0026】
比較例1
製膜直前の基板温度を1040℃とし、基板温度上昇度を0℃/秒として、製膜中の基板温度を一定とした以外は、上記実施例と同様にして窒化ガリウム膜を製膜した。得られらた窒化ガリウム膜の結晶性については、上記同様にX線回折分析による(0004)面からのピーク強度のωモードFWHM(秒)を調べることにより実施した。結果を表1に示す。

【0027】
比較例2
1.3sccmの流量に設定したトリメチルガリウムガスを、窒素250sccm及び水素250sccmのキャリアガスとともに,ガス導入口7よりMOCVD装置20内に導入し、750sccmの流量に設定したアンモニアガスを、窒素500sccm及び水素250sccmのキャリアガス(アンモニアガス/キャリアガスの流量比=1とともに,ガス導入口8よりMOCVD装置20内に導入し、内管4により(0001)面サファイア基板1の直上にまで上記反応ガスを導入した。基板1の温度を一定温度600℃に設定し、排気口9によりMOCVD装置20内の圧力を760Torrと一定にして、反応を3分間行い、0.060μmの厚さの窒化ガリウムバッファ層を基板1上に形成した。

【0028】
その後、この窒化ガリウムバッファ層上に、比較例1と同様にして1.2μmの厚さの窒化ガリウム膜を形成した。得られらた窒化ガリウム膜の結晶性については、上記同様にX線回折分析による(0004)面からのピーク強度のωモードFWHM(秒)を調べることにより実施した。結果を表1に示す。

【0029】
【表1】
JP0003000143B2_000002t.gif【0030】表1のωモードFWHM(秒)はその値が小さい程、(0001)面の配向のゆらぎが小さく、結晶性の高いことを示す。したがって、表1における実施例1~9及び比較例2から、本発明の製膜方法によって製膜した化合物半導体である窒化ガリウム膜は、バッファ層を設けた場合と同等の高い(0001)面配向性を示し、格子定数の異なる(0001)面サファイア基板上においても、エピタキシャル成長していることが分かる。また、比較例1に示すように、本発明の製膜方法と異なり、製膜中の基板温度を一定にして窒化ガリウム膜を、格子定数の異なる基板上に形成した場合には、(0001)面配向性は全く見られず、エピタキシャル成長していないことが分かる。さらに、実施例1~7及び実施例8、9より基板温度の上昇開始時に原料ガスを供給することにより、より配向性の高い化合物半導体の得られることが分かる。

【0031】
【発明の効果】以上から明らかなように、本発明の製膜方法を用いることにより、格子定数の異なる基板上に、バッファ層を介さずに化合物半導体を製膜した場合においても、エピタキシャル成長した化合物半導体薄膜を得ることができる。したがって、バッファ層を形成と化合物半導体の形成との間における反応ガスの切り替えや、基板温度の再調節などの煩雑な操作が不要となるため、極めて簡易な手法でエピタキシャル成長した化合物半導体を得ることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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