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明細書 :金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法及びこの方法を用いて製造した光放出半導体デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2884083号 (P2884083)
登録日 平成11年2月12日(1999.2.12)
発行日 平成11年4月19日(1999.4.19)
発明の名称または考案の名称 金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法及びこの方法を用いて製造した光放出半導体デバイス
国際特許分類 H01L 33/00      
H01L 21/203     
H01L 29/43      
FI H01L 33/00 C
H01L 21/203
H01L 29/46
請求項の数または発明の数 16
全頁数 7
出願番号 特願平10-077140 (P1998-077140)
出願日 平成10年3月25日(1998.3.25)
審査請求日 平成10年3月25日(1998.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】角谷 正友
【氏名】吉本 護
【氏名】福家 俊郎
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】吉野 三寛
参考文献・文献 特開 昭56-125298(JP,A)
応用物理学会関係連合講演会講演予稿集,Vol.45th,No.1,PAGE.299,1998
調査した分野 H01L 33/00
H01L 21/203
要約 【課題】 絶縁性基板上に形成した金属層上に単結晶構造の半導体層を直接形成できる金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法を提供する。
【解決手段】 本発明による金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法においては、層形成されるべき表面を有する絶縁性基板上に金属層を形成し、この金属層(11)上に単結晶構造の半導体層を形成するに当たり、単結晶の結晶構造を有する絶縁性基板(10)上に、エピタキシャル成長した金属層(11)を形成し、この金属層上に、エピタキシャル成長法により単結晶の結晶構造を有する半導体層(12)を形成することを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
層形成されるべき表面を有する絶縁性基板上に金属層を形成し、この金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成するに当たり、
単結晶の結晶構造を有する絶縁性基板上に、エピタキシャル成長した金属層を形成し、この金属層上に、エピタキシャル成長法により単結晶の結晶構造を有する半導体層を形成することを特徴とする金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項2】
前記絶縁性基板をサファイア基板で構成し、このサファイア基板の層形成されるべき面をc面とし、このサファイア基板のc面上に白金の層を(111)方向に堆積し、形成された白金層上にIII 族の窒化物半導体材料層をエピタキシャル成長法により形成することを特徴とする請求項1に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項3】
前記白金層をスパッタリング処理により堆積することを特徴とする請求項2に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項4】
前記スパッタリング工程において、サファイア基板を400℃~700℃の温度範囲に維持しながら白金層をエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項3に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項5】
前記基板の温度をほぼ500℃としたことを特徴とする請求項4に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項6】
前記白金のエピタキシャル層を成長した後、不活性ガス雰囲気下において600~900℃の温度範囲でアニール処理を行い、その後半導体層をエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項2に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項7】
前記半導体層のエピタキシャル成長工程を、低温エピタキシャル成長工程と高温エピタキシャル成長工程との2段階により行うことを特徴とする請求項2に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項8】
前記低温エピタキシャル成長工程中において基板をほぼ600℃維持し、高温エピタキシャル成長工程において基板をほぼ1000℃に維持することを特徴とする請求項7に記載の金属層上にエピタキシャル成長した単結晶の半導体層を形成する方法。

【請求項9】
前記窒化物半導体材料を窒化ガリウムとし、有機金属気相成長法により単結晶の窒化ガリウム層を形成することを特徴とする請求項2に記載の金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法。

【請求項10】
層形成されるべき表面を有する絶縁性基板上に金属層を形成し、この金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成するに当たり、
層形成すべき面としてc面を有するサファイア基板を用意し、このサファイア基板のc面上に、スパッタリング処理により白金層を(111)方向に堆積し、堆積した白金層上にエピタキシャル成長法により窒化ガリウム層を堆積することを特徴とすることを特徴とする金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項11】
前記窒化ガリウム層を堆積する際、前記基板を第1の温度に維持しながら第1の窒化ガリウム層を形成し、その後基板を前記第1の温度よりも高い第2の温度に維持しながら前記第1の窒化ガリウム層よりも厚い第2の窒化ガリウム層を堆積することを特徴とする請求項10に記載の金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法。

【請求項12】
前記第1の温度をほぼ600℃とし、前記第2の温度をほぼ1000℃としたことを特徴とする請求項11に記載の金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項13】
層形成されるべき表面を有する絶縁性基板上に金属層を形成し、この金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成するに当たり、
層形成すべき面としてc面を有するサファイア基板を用意し、このサファイア基板のc面上に、スパッタリング処理により白金層を(111)方向に堆積し、堆積した白金層上にエピタキシャル成長法により窒化アルミニウムのバッファ層を形成し、このバッファ層上にエピタキシャル成長法により窒化ガリウム層を堆積することを特徴とする金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法。

【請求項14】
層形成されるべき表面を有する単結晶構造の絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、単結晶構造を有し第1の電極を構成する第1の金属層と、この第1の金属層上にエピタキシャル成長法により形成した第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、この活性層上に形成され、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、この第2クラッド層上に形成した第2の電極とを具えることを特徴とする光放出半導体デバイス。

【請求項15】
前記絶縁性基板をサファイア基板で構成し、このサファイア基板の層形成されるべき面をc面とし、前記第1の金属層を、スパッタリング処理によりサファイア基板のc面上に(111)方向に形成した白金層とし、前記第1及び第2のクラッド層を有機金属気相成長法により堆積した窒化ガリウム層で構成したことを特徴とする請求項14に記載の光放出半導体デバイス。

【請求項16】
前記第1の金属層と第1のクラッド層との間に窒化ガリウム又は窒化アルミニウムのバッファ層が介在することを特徴とする請求項15に記載の光放出半導体デバイス。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁性基板上に金属-半導体の層構造体を形成する方法及びこの方法により製造した光放出半導体デバイスに関するものである。

【0002】
【従来の技術】窒化ガリウム(GaN)をベース材料とする青色半導体レーザの実用化が強く要請されている。図1は従来の窒化ガリウムをベース材料と半導体レーザの構造を示す線図である。窒化ガリウムは単結晶のウエハを製造することができないため、基板材料としてサファイア基板1が用いられ、このサファイア基板1上に窒化ガリウムのバッファ層2が形成され、このバッファ層2上に例えば3μmの厚い厚さのn型の窒化ガリウムの第1のクラッド層3が形成されている。そして、このクラッド層3上に活性層4が形成され、活性層上にp型の第2のクラッド層5が形成され、この第2のクラッド層上にp-電極6が形成されている。n-電極を形成するため、パターニング処理を行って第1のクラッド層3の側部が部分的に除去され、第1のクラッド層3の側部にn-電極7が形成されている。

【0003】
この半導体レーザの電流通路は、n-電極7、第1のクラッド層3、活性層4、第2のクラッド層5及びp-電極6に沿って形成される。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の半導体レーザは、第1のクラッド層の側部にn-電極が形成された構造とされているため、n-電極から供給されたキャリアは第1のクラッド層を横方向に沿って走行して活性層に供給される。このため、第1のクラッド層の電気抵抗が大きくなり、この結果消費電力が大きくなるばかりでなく、動作電圧も高くなる不都合が生じている。

【0005】
さらに、n-電極を形成するためにパターニング等の種々の処理が必要となるため、製造工程が複雑になる欠点もあった。

【0006】
一方、これらの欠点は、絶縁性の基板上に電極を構成する金属層を形成し、この金属層上に半導体材料の単結晶層が直接形成できれば全て解消することができる。すなわち、サファイア基板上に電極を構成する金属層を直接形成し、この金属層上に窒化ガリウムの単結晶層が形成できれば、電極から供給されたキャリアは薄い厚さのクラッド層を経て活性層内に供給されるので、クラッド層の電気抵抗を大幅に減少させることができる。

【0007】
また、太陽電池や光センサのように、絶縁性基板上に種々の半導体材料層を形成することにより半導体デバイス又はデバイスアレイが形成される場合にも、絶縁性基板上に形成した金属層上に半導体材料の単結晶層が直接形成できれば、デバイスの効率及び製造工程を大幅に改善することができる。

【0008】
従って、本発明の目的は、絶縁性基板上に形成した金属層上に単結晶構造の半導体層を直接又は薄いバッファ層を介して形成できる金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法を提供することにある。

【0009】
さらに、本発明の別の目的は、消費電力が少なく且つ動作電圧が一層低い光放出半導体デバイスを提供することにある。

【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法は、層形成されるべき表面を有する絶縁性基板上に金属層を形成し、この金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成するに当たり、単結晶の結晶構造を有する絶縁性基板上に、エピタキシャル成長した金属層を形成し、この金属層上に、エピタキシャル成長法によりエピタキシャル成長した半導体層を形成することを特徴とする。

【0011】
本発明者が金属-半導体層構造について種々の実験及び解析を行った結果、単結晶構造の絶縁性基板を特定の結晶面を層形成すべき面とし、この特定の面上に金属膜を特定の結晶軸方向に堆積させることによりエピタキシャル成長した金属層が形成できることが判明した。そして、このエピタキシャル成長した金属層上に、エピタキシャル成長法により半導体層を成長させれば、エピタキシャル成長した単結晶の半導体層が形成できることも判明した。本発明はこのような実験及び解析結果に基づくものであり、絶縁性の単結晶基板上にエピタキシャル成長した金属層を形成し、この金属層上にエピタキシャル成長法により単結晶の半導体層を形成する。この単結晶半導体層の形成方法を利用することにより、金属層上に単結晶の半導体層を直接形成できるので、絶縁性基板上に電極を構成する金属層を形成し、この金属層上に半導体層構造を形成することにより半導体デバイスが完成する用途に極めて有益である。特に、電極を構成する金属層上に単結晶半導体層が直接又は薄いバッファ層を介して形成できるので、窒化ガリウムのようにウェハが得られない半導体材料をベース材料とする半導体デバイスの製造に極めて有益である。尚、本発明は、半導体レーザやLEDのような光放出半導体デバイスだけでなく、太陽電池や光センサのように絶縁性基板上に金属層及び半導体層を積層することにより構成される種々の半導体デバイスにも適用することができる。半導体層をエピタキシャル成長させる方法として、有機金属気相成長法、液層エピタキシャル成長法、気相エピタキシャル成長法、分子線エピタキシャル成長法等の種々のエピタキシャル成長法を用いることができる。

【0012】
本発明による金属層上にエピタキシャル成長した半導体層を形成する方法の好適実施例は、絶縁性基板をサファイア基板で構成し、このサファイア基板の層形成されるべき面をc面とし、このサファイア基板のc面上に白金の層を(111)方向に形成し、形成された白金層上にIII 族の窒化物半導体材料層をエピタキシャル成長法により形成することを特徴とする。本発明者が、サファイア基板について種々の解析を行った結果、サファイア基板のc面上にスパッタリング処理により白金の層を(111)方向に堆積することにより全体として結晶方位が一様な単結晶の金属膜が形成できることが判明した。この理由として、スパッタリング処理は比較的膜厚の制御がし易いため、白金の原子又は分子が下地のサファイア基板又は白金層の安定なサイトを見つけてゆっくりと堆積するからであると考えられる。このような観点より、白金の堆積方法として液相エピタキシィーのような一層平衡で熱的に安定な状態でエピタキシャル成長が行われる堆積方法も利用することができる。このような認識に基づき、本発明の好適実施例では絶縁性基板としてサファイア基板を用い、このサファイア基板のc面上にスパッタリング処理により白金層を(111)方向に堆積する。

【0013】
本発明による方法の好適実施例は、スパッタリング工程において、サファイア基板を400℃~700℃の温度範囲に維持しながら白金層をエピタキシャル成長させることを特徴とする。本発明者がスパッタリング処理について種々の実験を行った結果、400℃から700℃の温度範囲に基板を維持しながらスパッタリングを行った場合、良好にエピタキシャル成長した白金層が形成できることを見出した。特に、サファイア基板をほぼ500℃に維持しながらスパッタリングを行うことにより、結晶方位のバラツキの少ない良好な白金のエピタキシャル層を形成することができることが判明した。尚、スパッタリング処理として、D.C.スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、リアクティブスパッタリング等の種々のスパッタリング処理を用いることができる。

【0014】
本発明による方法の好適実施例は、白金のエピタキシャル層を成長した後、不活性ガス雰囲気下において600~900℃の温度範囲でアニール処理を行い、その後半導体層をエピタキシャル成長させることを特徴とする。このアニール処理を行うことにより、エピタキシャル成長した白金層の表面を一層平坦化することができる。この平坦化処理を行ってから半導体層をエピタキシャル成長させることにより、下地の白金層と上側の半導体層との間で合金化することを防止できる利点も考えられる。このアニール処理の温度範囲として、900℃を超える温度でアニール処理すると一旦堆積した白金が脱着するおそれがある。一方、600℃以下の温度では十分な平坦化を行うことができない。従って、アニール処理の温度は600~900℃の範囲が好ましい。

【0015】
本発明による方法の好適実施例は、半導体層のエピタキシャル成長工程を、低温エピタキシャル成長工程と高温エピタキシャル成長工程との2段階により行うことを特徴とする。金属層上に半導体層をエピタキシャル成長させる場合、下側の金属と半導体とが合金化するおそれがある。このような場合、半導体層のエピタキシャル成長を低温エピタキシャルと高温エピタキシャルの2段階に分けて行うことにより、合金化が生ずるのを有効に防止できることが考えられる。この2段階エピタキシャル成長工程において、低温エピタキシャル成長工程中において基板をほぼ600℃維持し、高温エピタキシャル成長工程において基板をほぼ1000℃に維持することが好ましい。このように温度設定することにより、合金化を有効に防止することができる。

【0016】
下側の白金層と上側の窒化ガリウム層との間で合金化が生ずるのを防止する観点より、これらの層間にバッファ層を介在させることも有益である。このバッファ層として、例えば500℃~800℃の比較的低温度で堆積した窒化ガリウムや窒化アルミニウム層を用いることができる。このバッファ層の材料としては、下側の白金層と合金化しにくく、しかも上側に堆積される窒化ガリウムと格子定数差が小さい材料が好ましい。

【0017】
本発明による光放出半導体デバイスは、層形成されるべき表面を有する単結晶構造の絶縁性基板と、この絶縁性基板上にエピタキシャル成長形成され、第1の電極を構成する第1の金属層と、この第1の金属層上にエピタキシャル成長法により形成した第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、この活性層上に形成され、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、この第2クラッド層上に形成した第2の電極とを具えることを特徴とする。本発明の半導体レーザは、絶縁性基板上に第1の電極を構成する金属層が形成され、この金属層上にレーザダイオードを構成する半導体層が順次形成されているので、電極から活性層に供給されるキャリアの走行距離が一層短くでき、この結果消費電力が少なく且つ動作電圧が一層低い半導体レーザ及び発光ダイオード(LED)を実現することができる。

【0018】
本発明による半導体レーザの好適実施例は、絶縁性基板をサファイア基板で構成し、前記第1の金属層をサファイア基板のc面上に(111)方向の結晶方位に沿って形成した白金層とし、前記第1及び第2のクラッド層を有機金属気相成長法により堆積した窒化ガリウム層で構成したことを特徴とする。

【0019】
【発明の実施の形態】図2は本発明による金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法を説明するための線図的断面図である。本例では、窒化ガリウムをベース材料とする半導体レーザを製造するための層構造を形成する場合について説明する。絶縁性基板として単結晶構造を有するサファイア基板10を用いる。このサファイア基板10は層構造体を形成すべき表面10aを有し、この表面10a上に金属層及び半導体層を順次形成する。本例では、層構造を形成すべき表面10aとしてc面を用いる。尚、サファイア基板10の層形成すべき面10aは、通常の鏡面研磨した表面でもよく、或いは高温アニール処理により超平坦化処理をした表面でもよく、いずれの表面でも上側に金属層をエピタキシャル成長させることができる。

【0020】
このサファイア基板のc面上に、電極を構成する金属層11を堆積する。本例では、スパッタリング処理により白金を(111)方向に沿って堆積し、結晶方位の揃った白金層11を形成する。この白金層11の厚さは、例えば100~1000オングストロームすることができる。この白金層の堆積方法として、スパッタリング以外の方法としてLPE(液層エピタキシャル)のような結晶方位の揃った金属層を堆積できる種々の堆積方法を用いることができる。尚、金属層11はオーミック電極を構成するため、上側に形成される半導体層の材料の仕事関数を考慮して適切なオーミック電極が形成できるように材料を選択する必要がある。

【0021】
次に、必要に応じて、不活性ガスの雰囲気下において高温アニール処理を行って白金層11の表面を平坦化処理を行う。このアニール処理により、上側に成長される半導体と白金との間で合金化が生じにくくする作用が期待できる。尚、このアニール処理の温度として600~900℃の温度範囲で行うことができる。

【0022】
次に、白金層11上に窒化ガリウム層12を有機金属気相エピタキシャル成長法により形成する。この窒化ガリウム12は、エピタキシャル成長時の温度及び成長条件を最初から終了時まで一定に維持しながら1段階で行うことができ、或いはエピタキシャル成長温度を低温エピタキシャル成長と高温エピタキシャル成長の2段階に分けて行うこともできる。或いは、低温から高温度まで温度を時間的に連続して変化させるように、エピタキシャル成長条件を時間的に連続して変えながらエピタキシャル成長させることもできる。

【0023】
本例では、低温エピタキシャル成長と高温エピタキシャル成長の2段階で行い、低温エピタキシャル成長により形成した半導体層をバッファ層12aとして利用する。このバッファ層12aは、下地の金属層と上側の半導体層との間の格子定数の差が大きい場合に格子定数の差を緩和するために有用である。また、このバッファ層12aは、下側の白金層11と上側の窒化ガリウム層12との間で合金化が生ずるのを防止する有用な作用も果たすことができる。

【0024】
本例では、バッファ層12aとしてGaN層を用いる。このバッファ層の成長条件一例を以下に示す。原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMGa)を用いた。
TMGaの供給量:2.86×10-6mol/min
TMGaの流量:1.3ccm
2 (MO)流量:500ccm
2 (NH3 )流量:500~1250ccm
NH3 の供給量:1.12~4.46×10-2mol/min
NH3 の流量:250~1000ccm
V/III 比:4000~15000
基板温度:600℃

【0025】
尚、バッファ層12aとしてGaN層以外の層としてAlN層を用いることができ、このAlNバッファ層のエピタキシャル成長条件の一例を以下に示す。尚、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた。
TMAlの供給量:2.45~4.9×10-6mol/min
TMAlの流量:5~10ccm
2 (MO)流量:500ccm
2 (NH3 )流量:1430~500ccm
NH3 の供給量:0.31~4.46×10-2mol/min
NH3 の流量:70~1000ccm
V/III 比:1100~18000
基板温度:500~800℃

【0026】
次に、同一の有機金属気相エピタキシャル成長装置を用いてデバイスの有用な構成層となる窒化ガリウム層12をエピタキシャル成長させる。この窒化ガリウム層12のエピタキシャル成長条件の一例を以下に示す。
TMGaの供給量:2.86×10-6mol/min
TMGaの流量:1.3ccm
2 (MO)流量:500ccm
2 (NH3 )流量:750ccm
NH3 の供給量:3.35×10-2mol/min
NH3 の流量:750ccm
V/III 比:12000
基板温度:1040℃

【0027】
次に、必要に応じて例えば900℃程度の温度でアニール処理を行い、窒化ガリウム層12の表面を平坦化することができる。この平坦化処理は、窒化ガリウム層12の表面に凹凸が生じた場合に特に有用である。

【0028】
次に、上述した製造方法に基づき実際にサンプルを作成し、単結晶の窒化ガリウム層が白金層上に直接堆積できるかについて確認実験を行った。サンプルの製造条件は以下の通りである。
(1)絶縁性基板
材料:サファイア、
層形成すべき面:c面
(2)白金層
厚さ:100nm
結晶方位: (111)方向
形成方法:DCスパッタリング(Arガス:20sccm、圧力:1mTorr)
(3)窒化ガリウム層
窒化ガリウム層の形成に際し、低温エピタキシャル成長と高温エピタキシャル成長の2段階で行い、低温エピタキシャル成長層をバッファ層とした。
(低温エピタキシャル成長層)
厚さ:20nm
TMGaの供給量:2.86×10-6mol/min
TMGaの流量:1.3ccm
2 (MO)流量:500ccm
2 (NH3 )流量:1250ccm
NH3 の供給量:1.12~4.46×10-2mol/min
NH3 の流量:250ccm
V/III 比:4000~15000
基板温度:600℃
(高温エピタキシャル成長層)
厚さ:1.2μm
TMGaの供給量:2.86×10-6mol/min
TMGaの流量:1.3ccm
2 (MO)流量:500ccm
2 (NH3 )流量:750ccm
NH3 の供給量:3.35×10-2mol/min
NH3 の流量:750ccm
V/III 比:12000
基板温度:1040℃
成長時間:60分

【0029】
上述した条件で作成したサンプルについてX線回折法により回折パターンを観測した。この回折パターンを図3に示す。図3から明かなように、サファイアのc面及び白金の(111)面に対応した回折ピークに加えて、c軸方向に成長した窒化ガリウムのピークだけが観測された。また、銅から発生する2個のX線(Cu(銅)Kα1 及びKα2 )に対する回折ピークの分離がGaN(0004)面からの回折について見られた。このX線回折の実験結果から、サファイア基板上にエピタキシャル成長した白金層及び窒化ガリウム層が形成されているのが確認された。

【0030】
さらに、上記サンプルについて電子線回折パターンの測定を行った。撮影した電子線回折像の写真を忠実に図面とし再現したものを図4に示す。(11-20)入射電子線に対してストリーク状の回折パターンが明瞭に観測された。この電子線回折の結果からも白金層上に窒化ガリウム層の単結晶膜が形成されていることが確認された。

【0031】
次に、本発明により作成した金属-半導体層構造を有する窒化ガリウムをベース材料とする半導体レーザについて説明にする。絶縁性基板としてサファイア基板20を用いる。このサファイア基板20のc面上に第1の電極を構成する白金層21を形成する。この白金層21はエピタキシャル成長により形成し、その厚さは500~2000Åとする。白金層21上に、有機金属気相エピタキシャル成長法により半導体レーザを構成する層構造体を順次積層形成する。初めに、トリメチルガリウムを原料ガスとしてGaNのバッファ層22を成長形成する。このバッファ層22の厚さは、例えば100~500Åとすることができる。バッファ層22上にp形のクラッド層となるp-GaN層23をエピタキシャル成長させる。このp-GaN層23はMgをドーパントとし、その不純物濃度は2×1020原子/cmとする。また、その厚さは0.2~0.5μmとする。このp-GaN層23上にp形の組成変調層24を形成する。本例では、組成変調層24は、p-Al0.2 Ga0.8 N:Mg、p-GaN:Mg、及びp-Al0.7 Ga0.3 N:Mgの3層で構成する。このp形の組成変調層24上に活性層25を形成する。この活性層25は、例えばInGaNの多重量子井戸構造で構成することができる。

【0032】
活性層25上にn形の組成変調層26を形成する。このn形の組成変調層26はSiをドーパントとし、n-In0.05Ga0.95N:Si、n-Al0.07Ga0.93N:Si、n-GaN:Siの3層で構成する。次に、n形の組成変調層26上にn形のGaN層27を形成する。このGaN層27は、その厚さは0.2~0.5μmとし、不純物濃度は例えば2×1019原子/cm2 とする。さらに、n形のGaN層27上にp-電極を構成する第2の電極28を形成する。この第2の電極28は、Ni層とAu層とで構成することができる。

【0033】
図6は本発明による金属層上に単結晶の半導体層を形成する方法により製造される面発光形のレーザの構成を示す線図的断面図である。面発光形のレーザは既に実用化されているため、本発明と関連する部分について説明することにする。サファイア基板30上に白金層31を形成する。この白金層31は電極として及び反射鏡として機能する。この白金層31上にp形GaNの第1のクラッド層32をエピタキシャル成長法により形成する。この第1のクラッド層32上に活性領域33を形成する。この活性領域33上にn形のGaNの第2のクラッド層34を形成する。この第2のクラッド層の活性層と対応する部分に第2の反射鏡35を形成し、この第2の反射鏡のまわりにNi層とAu層とから構成される第2の電極を形成する。この面発光レーザ素子においても、基板上に形成した白金層上に直接半導体層を形成できるので、この白金層を電極及び反射鏡の両方として機能させることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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