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明細書 :パラジウムの選択的抽出剤およびパラジウムの選択的抽出・回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2972886号 (P2972886)
登録日 平成11年9月3日(1999.9.3)
発行日 平成11年11月8日(1999.11.8)
発明の名称または考案の名称 パラジウムの選択的抽出剤およびパラジウムの選択的抽出・回収方法
国際特許分類 B01D 11/04      
FI B01D 11/04 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願平10-305645 (P1998-305645)
出願日 平成10年10月27日(1998.10.27)
審査請求日 平成10年10月27日(1998.10.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391055276
【氏名又は名称】宮崎大学長
発明者または考案者 【氏名】貝掛 勝也
【氏名】馬場 由成
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】服部 智
調査した分野 B01D 11/04
要約 【課題】 パラジウムに加えて卑金属および/または他の貴金属が共存する系であっても、当該系からパラジウムを高い選択性をもって効率的に抽出し得、それ自体環境的に悪影響をもたらさないパラジウムの選択的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウムの抽出・回収方法を提供することをである。
【解決手段】 金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液に天然物質であるカフェインを抽出剤として含有する抽出有機溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを該抽出有機溶媒中に抽出することを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液からパラジウムを選択的に抽出するための、カフェインを有効成分とするパラジウムの選択的抽出剤。

【請求項2】
金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出することを特徴とするパラジウムの選択的抽出方法。

【請求項3】
金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出し、この抽出したパラジウムを含有する前記抽出溶媒に水性の逆抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該逆抽出溶媒中に逆抽出することを特徴とするパラジウムの回収方法。

【請求項4】
前記抽出溶媒はクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムの重量に対して5ないし30重量%添加したものであることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然物質であるカフェインを用いたパラジウムの選択的抽出剤、およびこの抽出剤を用いたパラジウムの選択的抽出・回収方法に関する。

【0002】
【従来の技術】パラジウムは、金、白金、ロジウム等の他の貴金属と同様、工業的に触媒として利用され、この他装飾品として我々の身の回りに存在している。パラジウムはこれらの需要がありながら天然資源として採掘される量が少ないため、貴重な天然資源となっている。

【0003】
このため、鉱石中に多量に含まれる鉄、銅、ニッケル等の卑金属からのパラジウムの分離、さらに例えば自動車の排気ガス処理用触媒として用いられたパラジウムが他の同様の触媒として用いられた金、白金、ロジウムなどの貴金属触媒と一緒に回収された場合にこれら性質の似た他の貴金属からのパラジウムの分離が不可欠である。そこで選択的にパラジウムを分離、回収するためにさまざまなパラジウム抽出剤の開発が成されている。

【0004】
従来、パラジウムの抽出に用いられる溶媒抽出剤としては、ジヘキシルスルフィド(SFI-6)やLIX系のオキシム類などの工業的抽出剤が用いられている。これらは卑金属から貴金属のみを回収するための選択性は高いが、抽出率が不十分であり、抽出速度も遅い。さらに、有機相に抽出した後の逆抽出が困難であるなどの欠点がある。これら抽出剤を使用した場合、パラジウムの抽出は平衡達成に長時間を要するため、白金等の貴金属との分離をする際には、操業可能な時間内にはほとんど抽出できないという難点がある。

【0005】
一方、環境ホルモンにいわれるように、環境保全にも配慮したパラジウム抽出剤の分子設計が必要となる。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、パラジウムに加えて卑金属および/または他の貴金属が共存する系であっても、当該系からパラジウムを高い選択性をもって効率的に抽出し得、それ自体環境的に悪影響をもたらさないパラジウムの選択的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウムの抽出・回収方法を提供することを目的とする。

【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述のごとき現状に鑑み、パラジウムの回収に用いられる抽出剤として従来から知られている工業的抽出剤とは全く異なる抽出剤として天然物質のカフェインに着目し、種々の実験を行った結果、カフェインが従来の抽出剤に比べて遥かに高い抽出率で、かつ高い抽出速度でパラジウムを抽出できることを見出した。本発明者らは、さらに、カフェインを用いてパラジウムを抽出した場合には、抽出されたパラジウムを含有する抽出溶媒から容易にパラジウムを逆抽出でき、しかも逆抽出溶媒の調製によっては逆抽出率を高くすることができることもまた明らかにしたものである。

【0008】
すなわち、本発明は、金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液からパラジウムを選択的に抽出するための、カフェインを有効成分とするパラジウムの選択的抽出剤を提供する。

【0009】
また、本発明は、金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出することを特徴とするパラジウムの選択的抽出方法を提供する。

【0010】
また、本発明は、金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する塩酸酸性水溶液にカフェインをパラジウムの選択的抽出剤として含有する抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該抽出溶媒中に抽出し、この抽出したパラジウムを含有する前記抽出溶媒に水性の逆抽出溶媒を液-液接触させ、前記パラジウムを当該逆抽出溶媒中に逆抽出することを特徴とするパラジウムの回収方法を提供する。

【0011】
本発明において、前記抽出溶媒はクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムの重量に対して5ないし30重量%添加したものであることが好ましい。

【0012】
【発明の実施の形態】本発明のパラジウムの選択的抽出剤はカフェインを有効成分とするものである。

【0013】
ここで、カフェインは、下に構造を有する分子式C10で表される分 子量194.14の白色結晶であり、クロロホルム、トルエンなどの有機溶媒に 可溶である。水には難溶であり、熱水には可溶となる。カフェインは、天然にはお茶、紅茶、コーヒーに含まれ、医薬品として利用されているものであり、環境的に安全である。

【0014】
【化1】
JP0002972886B1_000002t.gif本発明によりパラジウムを抽出するためには、まず、パラジウムを通常、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛等の少なくとも1種の卑金属および/または白金、金等の少なくとも1種の他の貴金属とともに含有する水溶液を本発明の抽出剤と接触させる。抽出対称であるパラジウムを含有する水溶液は、例えば銅を含有する鉱石を銅鉱石の湿式精錬により銅を回収した後の水溶液を、あるいは、自動車に使われているハニカム型の廃触媒などを溶解した水溶液を用いることができる。

【0015】
これらの水溶液は、通常、塩酸酸性となっている。このパラジウム含有水溶液に含まれる塩化物イオン濃度は、好ましくは1.0mol/dm3以下、さらに好ましくは0.5mol/dm3以下である。塩化物イオン濃度が1.0mol/dm3を超えると抽出されないパラジウムの塩化物錯体が増加するからである。また、塩酸濃度としては、好ましくは0.1mol/dm3ないし2.0mol/dm3である。塩酸濃度が2.0mol/dm3を超えると抽出に関与する塩化物錯イオンの減少により抽出率が低下するからである。さらに、pHは0ないし6の範囲にあればよい。

【0016】
カフェインは、通常、有機溶媒(抽出溶媒)に溶解させて使用する。抽出溶媒としては、カフェインを溶解し水に実質的に不溶の有機溶媒であり、クロロホルム、トルエン、エーテル、ベンゼン等を例示することができ、カフェインの有機溶媒への溶解性の高さ、および有機溶媒の有機相から水相への溶解度の低さの観点からクロロホルムまたはトルエンが好ましい。本発明において、最も好ましくは、有機溶媒として特にクロロホルムまたはトルエンと2-エチルヘキシルアルコールとの混合物を抽出溶媒として使用する。2-エチルヘキシルアルコールは、パラジウム抽出後の有機相に生ずる沈殿の発生を防止する。2-エチルヘキシルアルコールは、クロロホルムの重量に対して好ましくは5ないし30重量%、さらに好ましくは10重量%の割合で混合する。2-エチルヘキシルアルコールが30重量%を超えると有機相が水相へ溶解し抽出剤のロスが多くなり、5重量%未満では有機相に沈殿が生ずるため好ましくない。

【0017】
また、抽出剤として用いる有機溶媒相中のカフェイン濃度は、好ましくは、例えばパラジウム濃度が1mmol/dm3の場合、0.05mol/dm3ないし0.5mol/dm3である。0.5mol/dm3を超えるとカフェインの溶解性が悪くなるため好ましくないからである。また、0.05mol/dm3未満であるとパラジウムを100%抽出することが困難となる。

【0018】
抽出剤としてカフェインを用いることによりパラジウムを高抽出率で抽出することができるため、本発明によるパラジウムの選択的抽出はバッチ法により行うことができる。ただし、バッチ法以外の連続抽出法により行うことも可能である。パラジウムの選択的抽出は、金属イオンとして少なくともパラジウムを含有する上記塩酸酸性水溶液と上記有機溶媒をほぼ等量の割合で、室温(5℃ないし35℃)において少なくとも好ましくは5時間、さらに好ましくは少なくとも24時間振とうすることにより行う。なお、このときの温度が30℃を超えると水相へのカフェインの溶解が生じ得るため好ましくない。

【0019】
このようにして抽出されたパラジウムをカフェインを含む抽出溶媒から逆抽出するためには抽出後の有機相を水性の逆抽出溶媒と液-液接触させる。この逆抽出においても抽出の場合と同様バッチ法により行うことができるが、バッチ法以外の連続抽出法等により行うことも可能である。

【0020】
水性の逆抽出溶媒としては、チオ尿素水溶液、アンモニア水の他、塩酸、チオシアン酸アンモニウム等を例示することができるが、逆抽出能力の高さの点からチオ尿素水溶液が好ましい。さらに、本発明では、最も好ましくは、チオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液を逆抽出溶媒として使用することができる。塩酸を添加することによりカフェインのアミノ基はプロトン化され、パラジウムはより親和性の高い硫黄原子を持つ水相中のチオ尿素に引き抜かれるためである。

【0021】
逆抽出溶媒は好ましくはチオ尿素に塩化水素をモル比で1/100(HCl/チオ尿素)ないし5/1、さらに好ましくは1/1の割合で含有する。チオ尿素に対する塩化水素のモル比が5/1を超えると逆抽出率は低下し、1/100未満の場合も同様に逆抽出率が低下するからである。バッチ法によるパラジウムの逆抽出は、上記方法により抽出されたパラジウムを含有する抽出溶媒と上記逆抽出溶媒とをほぼ等量の割合で、室温において好ましくは少なくとも1時間、さらに好ましくは少なくとも5時間振とうすることにより、高抽出率で逆抽出されたパラジウム含有水溶液を得ることができる。

【0022】
【実施例】以下、カフェインを用いたパラジウムの選択的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウムの選択的抽出・回収方法に関し、本発明の実施例を順次説明する。最初にカフェインによる金属イオンの選択性について、実施例1として説明する。

【0023】
実施例1.金属イオン選択性
抽出剤としてカフェインを用いた。金属イオンとしては、貴金属間の選択的分離を想定してパラジウムと白金を選び、卑金属として銅、ニッケル、コバルト、鉄を用いた。また、環境汚染金属の回収の検討のために亜鉛、カドミウム、水銀に金属を設定した。なお、本実施例で用いた金属はすべて塩化物塩である。

【0024】
実験はすべてバッチ法で行った。水相は各金属イオンの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸とアンモニア水および水酸化ナトリウムを用いてpHを変えて調製した。また、塩化物濃度を一定とするために塩化リチウムを1mol/dm3となるように加えた。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に設定して調製した。その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。

【0025】
各金属の抽出結果を横軸にpH、縦軸に各金属の抽出百分率Eを表し図1に示した。ここで、抽出百分率Eは次式より求めた。
E={(C0-Ce)/C0}×100[%]
C0:金属の初濃度
Ce:金属の平衡濃度
図1より、パラジウム、白金、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、カドミウム、水銀の中ではパラジウム以外は全く抽出されず、pH値が0.5ないし6.0の範囲では抽出率も85%以上と高いことが明らかとなった。この結果よりカフェインによる金属イオンの抽出はパラジウムを選択的に抽出することがわかった。

【0026】
次に、パラジウムの抽出に及ぼす塩化物イオン濃度の依存性について、実施例2として説明する。

【0027】
実施例2.塩化物イオン濃度依存性
実験はすべてバッチ法により行った。水相はパラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸と水酸化ナトリウムを用いてpHを1.0になるように調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。パラジウムの抽出結果を横軸に塩化物イオン濃度、縦軸にパラジウムの抽出百分率Eを表し図2に示した。図2より、塩化物イオン濃度が0.5mol/dm3以下ではパラジウムの抽出率は100%であるが、これを超えると塩化物イオン濃度の増加に伴い抽出率が減少することがわかった。

【0028】
次に、カフェイン濃度の変化がパラジウムの抽出率に及ぼす影響について、実施例3として説明する。

【0029】
実施例3.カフェイン濃度依存性
実施例1よりカフェインはパラジウムのみを選択的に抽出することから、パラジウムをいくつのカフェイン分子で抽出しているかを検討するため、カフェイン濃度の変化が及ぼす影響を考察した。

【0030】
実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸と水酸化ナトリウムを用いてpHを1.0になるよう調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.01mol/dm3から0.2mol/dm3に変化させて調製した。その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光高度計により求めた。

【0031】
パラジウムの抽出結果を、横軸にカフェイン濃度、縦軸にパラジウムの抽出百分率Eを表し図3に示した。図3より、抽出剤濃度が高くなるにつれ抽出率は上昇し、カフェイン濃度が0.06mol/dm3以上になると抽出百分率Eは100%となる。

【0032】
次に、パラジウム以外の金属イオンが存在する場合に、選択的にパラジウムだけを抽出できるかについて、実施例4として説明する。

【0033】
実施例4.混合溶液からのパラジウムの選択的抽出
本実験では、工業的に分離の難しいとされる貴金属間での分離を想定して白金とパラジウムの分離を、また鉱石中に存在する銅との分離を想定して銅とパラジウムの分離を検討した。

【0034】
実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、白金および銅の初濃度を1mmol/dm3から25mmol/dm3に変化させ、二液を混合したものを調製した。塩酸を用いてpHを1.5になるよう調整した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlずつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。

【0035】
パラジウムと白金の混合溶液からの抽出結果を、横軸に相対濃度[Pt]/[Pd]を、縦軸にパラジウムと白金の抽出百分率Eを表し図4に示した。図4より、パラジウムの約25倍の白金が含まれる混合溶液からも選択的にパラジウムを抽出することができ、しかも抽出率は100%と極めて高いことが確認された。

【0036】
同様にパラジウムと銅の混合溶液からの抽出結果を、横軸に相対濃度[Cu]/[Pd]を、縦軸にパラジウムと銅の抽出百分率Eを表し図5に示した。図5より、パラジウムの約25倍の銅が含まれる混合溶液からも、選択的にパラジウムを抽出することができ、白金との場合と同様に抽出率は100%と極めて高いことが確認された。

【0037】
次に、パラジウム抽出における抽出平衡時間について実施例5として説明する。

【0038】
実施例5.抽出平衡時間
実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸を用いてpHを1.5になるように調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlづつ三角フラスコに取り、室温で30分から15時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。

【0039】
各金属の抽出結果を、横軸に抽出時間を、縦軸にパラジウムの抽出百分率Eを表し図6に示した。図6より、パラジウムのカフェインによる抽出時間は約4時間で完全に抽出されることが確認された。これに対し従来のパラジウム抽出剤を用いた場合には、通常少なくとも2日ないし3日は抽出に要する。これにより、カフェインを用いることで従来の抽出剤よりも短時間でパラジウム抽出が可能であり、他の金属との分離が可能となることが明らかとなった。

【0040】
次に工業的に重要とされる塩酸溶液からの抽出を検討するため、パラジウム抽出に対する塩酸濃度の依存性について実施例6として説明する。

【0041】
実施例6.塩酸濃度依存性
実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムと銅、白金、鉄の初濃度を各々1mmol/dm3として調製した。塩酸濃度は2N、1N、0.5N、0.1N、0.05N、0.01Nに設定した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlづつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計により求め、平衡塩酸濃度は電位差滴定装置により求めた。各金属の抽出結果を、横軸に平衡塩酸濃度を、縦軸に各金属の抽出百分率Eを表し図7に示した。図7より、塩酸濃度が2.0mol/dm3を超えると塩酸濃度の増加に伴い抽出率が減少することが示された。この減少は抽出に関与する塩化物錯イオンの減少によるものと考えられる。他の金属についてはここで用いた塩酸濃度の領域ではほとんど抽出されないことが確認された。

【0042】
次に、抽出溶媒である有機相中に抽出されたパラジウムを逆抽出し、パラジウムを含む水溶液を得ることによるパラジウムの回収方法について実施例7として説明する。

【0043】
実施例7.パラジウムの逆抽出方法
実験はすべてバッチ法で行った。水相はパラジウムイオンの初濃度を1mmol/dm3とし、塩酸を用いてpHを1.5になるよう調製した。有機相は抽出溶媒としてクロロホルムに2-エチルヘキシルアルコールをクロロホルムを基準として10重量%添加したものを用い、カフェイン濃度を0.1mol/dm3に調製した。その後各相を15mlづつ三角フラスコに取り、室温で24時間振とうした。振とう後水相を分取し、各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。次いで有機相10mlを取り出し、表1に示す逆抽出溶媒を等量用いて6時間振とうさせた。振とう後水相を分取し各金属濃度は原子吸光光度計により求めた。結果を表1に示す。

【0044】
【表1】
JP0002972886B1_000003t.gif表1に示す結果から、逆抽出剤としてアンモニア水、チオ尿素水溶液、またはチオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液を用いた場合にパラジウムを抽出することができ、チオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液の場合に特に高い逆抽出率が得られることが明らかとなった。ここで、チオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液は各濃度の水溶液を1:1の体積割合で混合したものを用いた。

【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、パラジウムの抽出剤として天然物質であるカフェインに着目したものであり、本発明により、パラジウムに加えて卑金属および/または他の貴金属が共存する系であっても、当該系からパラジウムを高い選択性をもって効率的に抽出し得、それ自体環境的に悪影響をもたらさないパラジウムの選択的抽出剤およびこの抽出剤を用いたパラジウムの抽出・回収方法の提供が可能となった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6