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明細書 :強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3513601号 (P3513601)
公開番号 特開2002-372519 (P2002-372519A)
登録日 平成16年1月23日(2004.1.23)
発行日 平成16年3月31日(2004.3.31)
公開日 平成14年12月26日(2002.12.26)
発明の名称または考案の名称 強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法
国際特許分類 G01N 27/72      
G01N 27/80      
FI G01N 27/72
G01N 27/80
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2001-181135 (P2001-181135)
出願日 平成13年6月15日(2001.6.15)
審査請求日 平成13年6月15日(2001.6.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597122725
【氏名又は名称】岩手大学長
発明者または考案者 【氏名】高橋 正氣
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】平田 佳規
参考文献・文献 特開2001-21538(JP,A)
特開2001-133440(JP,A)
特開2002-214200(JP,A)
高橋正氣,磁性と塑性-非破壊検査への応用,日本AEM学会誌,2001年 6月10日,Vol.9, No.2,131-139頁
調査した分野 G01N 27/72 - 27/90
特許請求の範囲 【請求項1】
強磁性構造材の経年による脆性の変化を定量的に求めることにより、強磁性構造材の経年劣化を非破壊で測定する方法において、
強磁性材料の磁化率χbを保磁力Hc以上にて所定の磁界強度Hで測定し、
前記磁化率χbと前記磁界強度Hとから次式
b=χb
により脆化係数bを求めるものとし、
あらかじめ、前記強磁性構造材と同種の前記強磁性材料についての前記脆化係数bとその強磁性構造材の脆性の変化に対応して変化する基準脆化因子との相関関係を得ておき、
経年劣化測定対象の前記強磁性構造材について、初期状態および経年劣化後の前記脆化係数bの値を求めてそれらの値に各々対応する前記基準脆化因子の値を前記相関関係から求め、
それらの基準脆化因子の値を比較して、前記経年劣化測定対象の強磁性構造材の経年による脆性の変化を定量的に求めることを特徴とする、強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法。

【請求項2】
前記基準脆化因子が硬度であることを特徴とする、請求項1記載の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体の、中性子線照射等による材料の劣化を非破壊的に測定して定量的に求める方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術】従来の一般的な非破壊検査方法は全て、亀裂の発生とその進展を調べることを目的としていた。その結果、現在の非破壊検査方法の発展の方向は、できる限り小さい亀裂の発生を発見することにあり、かかる従来の非破壊検査方法では、亀裂が発生する前の段階での非破壊検査は行うことができなかった。

【0003】
ところで、原子炉圧力容器の経年劣化は、一般的に、金属疲労と中性子線照射による銅原子の析出や転位ループ等とが複合して進行すると考えられている。ここで、強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体の経年による材料強度劣化を非破壊的に測定する方法として従来、被測定対象の保磁力および飽和磁化領域における磁化率を測定する方法が知られている。さらに、亀裂が発生する前段階での金属疲労による経年劣化に関しては、本願発明者が先に特開2001-021538号公報にて開示しているように、従来、被測定対象の強磁性構造材または強磁性構造体の保磁力Hc及び帯磁率係数c(以下、強度係数cという。)を求めてその強度係数cにより強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造材の強度の経年劣化を測定する非破壊検査方法が知られている。

【0004】
そこで、本願発明者は、材料の強度の経年劣化の非破壊検査と併せて材料の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊検査を行うことができれば、原子炉圧力容器の安全性のより一層の向上につながると考え、材料の脆性の変化に伴う経年劣化についての非破壊検査に着目した。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の材料の強度の経年劣化の非破壊検査方法を銅原子析出等による材料の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊検査に適用することはできない。

【0006】
即ち、従来の材料の強度の経年劣化の測定対象は、金属疲労によって生じた転位であり、かかる転位には材料内部の異方的に存在する歪みの場が存在する。それゆえ、材料の強度の経年劣化は保磁力Hcに影響を与えることから、従来の保磁力Hcを測定する方法で経年劣化の非破壊検査をすることができた。これに対して、銅原子析出等による材料の脆性の変化に伴う経年劣化の測定対象は、中性子線照射等によって生じた原子空孔や格子間原子、熱処理などで生じる析出物などの欠陥であり、かかる欠陥には必ずしも異方的な歪みの場が存在しない。それゆえ、銅原子析出等による材料の脆性の変化に伴う経年劣化は保磁力Hcに殆ど影響を与えないことから、上記した材料の強度の経年劣化の非破壊検査方法のうち保磁力Hcを求める方法を、材料の脆性の変化に伴う経年劣化の測定に適用することはできない。また、被測定対象の強度係数cを求める従来の方法によっても、材料の脆性の変化に伴う経年劣化を捕らえることはできなかった。

【0007】
従って、銅原子の析出や原子空孔の増加による脆性を定量的に測定することは困難であり、かかる脆性の変化を定量的に調べるための新たな測定量が必要とされた。

【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】この発明は、上記課題を有利に解決した強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法を提供するものであり、この発明の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法は、強磁性構造材の経年による脆性の変化を定量的に求めることにより、強磁性構造材の経年劣化を非破壊で測定する方法において、強磁性材料の磁化率χbを保磁力Hc以上にて所定の磁界強度Hで測定し、前記磁化率χbと前記磁界強度Hとから次式
b=χb ・・・(1)
により脆化係数bを求めるものとし、あらかじめ、前記強磁性構造材と同種の前記強磁性材料についての前記脆化係数bとその強磁性構造材の脆性の変化に対応して変化する基準脆化因子との相関関係を得ておき、経年劣化測定対象の前記強磁性構造材について、初期状態および経年劣化後の前記脆化係数bの値を求めてそれらの値に各々対応する前記基準脆化因子の値を前記相関関係から求め、それらの基準脆化因子の値を比較して、前記経年劣化測定対象の強磁性構造材の経年による脆性の変化を定量的に求めることを特徴とする。

【0009】
この発明の原理を、実際に行った試験データをもとにして説明する。鉄鋼材料の機械的性質と磁気的性質の相関関係を明らかにするため、ここでは、銅原子(1.5重量%)を加えた多結晶純鉄(99.992%)を試験片とし、その試験片を色々な温度で熱処理することで銅原子を析出させた。このようにすることで、熱処理の温度及び時間の変化に応じて、銅原子の析出量および析出物の大きさを変化させることができる。ところで、銅原子は熱処理温度が445℃から650℃までの時効温度で析出し、かかる銅原子の析出は硬度に関係することが分かっている。このように銅原子の析出が硬度に関係するのは、銅原子の析出物が転位の運動を妨げることで鉄鋼材料の硬度が増すからである。そこで、本実験において、試験片を各温度(時効温度:455℃,550℃,650℃)で熱処理した結果、図4に示すように、各温度について熱処理時間(分)と硬度(ビッカース硬さHv)との相関関係が得られた。ここで、図4中、455℃の熱処理については▲(黒三角)、550℃の熱処理については●(黒丸)、650℃の熱処理については◆(黒菱形)でそれぞれプロットしている。これによると、例えば時効温度455℃では2000分から7000分の時効時間で銅原子の析出が最も進むことが分かる。

【0010】
なお、上記実験では熱処理によって銅原子を析出させているが、これは、圧力容器に中性子線が照射されると材料内部に熔けていた銅原子が析出し、その銅析出物が圧力容器を脆化させると一般的に考えられているからである。このほかにも、中性子照射により転位ループができてこの転位ループが圧力容器の脆化の一因になっているとの考えもある。それゆえ、上記実験では、銅原子の析出の原因となる圧力容器への中性子線照射に代わるものとして試験片の熱処理を行い、これにより材料中の銅原子を析出させている。

【0011】
図5および図6は、熱処理により銅原子を析出させた試験片に対するヒステリシス磁化特性試験により得られた磁化曲線を示す説明図である。ここで、図5は時効時間(0min,30min,300min,2000min,7000min)で時効温度455℃の熱処理による銅析出に伴うヒステリシス磁化特性の変化を示しており、図6は時効時間(0min,30min,100min,200min,1000min)で時効温度550℃の熱処理による銅析出に伴うヒステリシス磁化特性の変化を示している。図5及び図6の何れについても、ヒステリシス磁化特性試験により得られた磁化曲線は、時効時間の変化によっては大きな変化が見られない。しかし、本願発明者の研究によって、以下で説明する解析を行うと、ヒステリシス磁化曲線に基づいて、時効条件(時効時間,時効温度)の変化に伴う材料中の銅原子の析出状態の変化(脆性の変化)を定量的に表わすことができると判明した。

【0012】
図5に示すヒステリシス磁化曲線から、磁界強度Hの対数log(H)に対する磁化率χb(=磁束密度B(Gauss)/磁界強度H(Oe))の対数log(χb)の関係をプロットすると、時効温度455℃で時効時間300分のものについては図7に、また時効温度455℃での時効時間2000分のものについては図8に示す関係線図がそれぞれ得られる。なお、ここでの対数は、常用対数(底が10の対数)を用いて図示し、また、図中には関係線図に最も良くのる-2の傾きの直線を図示している。そして、図7及び図8に図示された関係線図(-2の傾きの直線)から次式、
log(χb)=log(b)-2log(H) ・・・(2)
なる関係式が得られる。この式から、
χb=b/H ・・・(3)
なる関係式が得られ、この式は先に述べた(1)式
b=χb
に変形できる。それゆえ、図7及び図8に示す、傾きが-2の直線((2)式の直線)からlog(b)が求められ、このlog(b)の値から脆化係数bの値が求められる。

【0013】
図9~図11は、上述のようにして求めた脆化係数bと時効時間との関係をビッカース硬さHvと比較して例示する説明図である。ここでは、図9に時効温度455℃、図10に時効温度550℃、図11に時効温度650のときの関係線図をそれぞれ示している。これらによると、図9~図11のいずれについても、時効時間に応じて、脆化係数bの値が減少して極小値を取る現象と、ビッカース硬さHvが増加して極大値を取る現象とが良く対応していることが、本願発明者の実験により判明した。そこで、図9~図11で表わされた関係線図から脆化係数bとビッカース硬さHvとの関係を図示すると、図12に示す値の分布が得られ、この分布から図12中曲線で示すような相関関係が得られる。なお、図12中、455℃の熱処理については▲(黒三角)、550℃の熱処理については●(黒丸)、650℃の熱処理については◆(黒菱形)でそれぞれプロットしている。

【0014】
ところで、上記図4によれば、ビッカース硬さは、時効温度455℃のとき5000分、時効温度550℃のとき200分、時効温度650℃のとき10分付近でそれぞれ極大値(最大値)を示していることが分かる。これは、原子空孔の助けで銅原子が析出するが、その析出の初期段階でビッカース硬さがピークとなり、その後さらに時効すると微細に析出した銅原子が次第に粗大化して平均距離が大きくなってビッカース硬さが低下するからである。このことは、ビッカース硬さが極大となるときに脆性が最も大きくなる(脆化が最も進む)ことを示すものである。このことから、強磁性構造材の脆性の変化に対応してビッカース硬さが変化することが分かり、かかるビッカース硬さを基準脆化因子とすることができる。それゆえ、経年劣化測定対象の強磁性構造材について、初期状態および経年劣化後の脆化係数bの値を求めてそれらの値に各々対応する基準脆化因子の値を図12に示すような相関関係から求め、それらの基準脆化因子の値を比較することで、経年劣化測定対象の強磁性構造材の経年による脆性の変化(脆化の程度)を定量的に求めることが出来る。

【0015】
即ち、本発明の方法によれば、あらかじめ、経年劣化の非破壊検査をする強磁性構造材と同じ種類の強磁性材料の試験片を用いて、上述した方法により、例えば図12中の曲線にて示すような脆化係数bと基準脆化因子(図12ではビッカース硬さHv)との相関関係を求めてその相関関係をその構造材の基準相関としておき、経年劣化測定対象である強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体(例えば原子炉圧力容器等)の初期状態及び経年劣化後について、ヒステリシス磁化特性試験を行って得られた磁化曲線から、上記方法と同様の方法にて脆化係数bの値をそれぞれ求め、それら脆化係数bに各々対応する基準脆化因子の値を前述の基準相関から求め、それらの基準脆化因子の値を比較することで、測定対象とした構造物の脆化の程度を定量的に求めることができる。

【0016】
しかも、ビッカース硬さを測定する一般的な方法によれば、材料の表面の情報を得ることはできても被測定強磁性構造材内部の脆性の情報を得ることはできないのに対して、本発明の方法によれば、材料内部の情報の含まれたヒステリシス磁化曲線に基づいて脆化係数bを求めているので、被測定強磁性構造材の内部も含めた材料全体の情報を得ることができるという利点がある。

【0017】
なお、原子炉圧力容器等を被測定対象とする場合には、測定対象物の形状に応じて、その測定対象物に巻線を直に巻くか、あるいは巻線を巻いた磁気ヨークを測定対象物に当てることで、ヒステリシス磁化特性試験を行うことができ、得られたヒステリシス磁化曲線から脆化係数bの値を求めることができる。

【0018】
すなわち、構造材が長期間に亘って中性子線の照射を受けると、材料内部の空孔が増加し、その結果、銅原子が析出して構造材中の脆化が進行する。この発明の方法によれば、かかる銅原子の析出等による実質的な脆化の程度を正確に測定し得て、材料の経年劣化を非破壊的に測定することができる。

【0019】
さらに、強度係数cを求めて材料の強度の経年劣化を非破壊的に測定し定量的に求める上記従来の方法と併せることもでき、このようにすれば、材料の強度だけでなく脆性の変化も定量的に求めることができるので、金属疲労や中性子線照射等に伴う転位密度の変化を同時に調べることができて、材料の強度および脆性の変化に伴う経年劣化を評価することができる。なお、上記強度係数cは、次式
c=χc ・・・(4)
で定義される。

【0020】
特に、原子炉圧力容器の中性子線照射による経年劣化は、原子空孔や格子間原子、銅原子の析出、転位ループの増加などが互いに相関して進むとされている。それゆえ、本発明の強磁性構造材の経年劣化の測定方法における脆化係数bと、従来の強磁性構造材の強度の経年劣化の測定方法における強度係数cの値とを、ヒステリシス磁化曲線から上記(1)式,(4)式によってそれぞれ求めることで、強度および脆性のそれぞれの劣化情報を得ることができるとともに、材料の強度の変化による劣化から、原子空孔や格子間原子、銅原子の析出および転位ループなどの増加による脆性の変化による劣化を分離することができる。

【0021】
なお、この発明の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法では、前記基準脆化因子が硬度であっても良く、このようにすれば、脆化係数bと硬度との相関関係を示す次式
Hv=f(b) ・・・(5)
から脆化係数bの値に対応する硬度を得ることができ、先に述べたように硬度は材料の脆性の変化に対応することが分かっているので、脆化係数bに対応するビッカース硬さHvにより、材料の脆性の変化の定量的な値を確実に求めることができる。

【0022】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施例の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。図1は、この発明の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法の第一実施例において用いる、脆化係数bと基準脆化因子(ビッカース硬さHv)との基準相関を例示する説明図であり、図2は、本実施例の非破壊測定方法を示す説明図である。図中符号1は、銅原子の析出等により脆化が進行している強磁性構造材によって構成された被測定強磁性構造体、2は励磁巻線、3は磁束検出巻線、4はそれらの巻線が巻かれた磁気ヨークである。ここでは、図2に示すように、励磁巻線2と磁束検出巻線3とを直接巻けない形状の被測定強磁性構造体1に対し、励磁巻線2と磁束検出巻線3とを有する磁気ヨーク4を密着させ、磁気閉回路5を形成する。6は、上記励磁巻線2と磁束検出巻線3とが接続されたヒステリシス磁化特性測定装置であり、このヒステリシス磁化特性測定装置6には、一般の市販品を用いることができる。また7は、この実施例を実施した結果として、ヒステリシス磁化特性測定装置6に表示される、被測定強磁性構造体1のヒステリシス磁化特性である。

【0023】
この実施例の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法によれば、ヒステリシス磁化特性測定装置6より励磁巻線2に励磁電流が供給され、このとき磁束検出巻線3に誘起した電圧が、ヒステリシス磁化特性測定装置6に導かれて増幅積分され、その結果ヒステリシス磁化特性7が得られる。この実施例では、磁化率χbが求められれば良いので、従来方法の実施のために飽和磁化まで磁化させて測定するのに必要な磁界強度Hがおよそ1000~2000Oe であるのに対して、50Oe 程度の極めて低い磁界強度Hで測定を行えば足りる。

【0024】
上述した極めて低い磁界強度Hでの測定により得られたヒステリシス磁化特性7は、被測定強磁性構造体1の内部での3次元的磁路の広がりや反磁界係数の影響による誤差を含んだものである。ゆえに、この誤差を除去したヒステリシス磁化特性を得るための補正係数を求める必要があるが、この補正係数は、既知の静磁界解析手法を用いた計算機実験あるいは実測定体系を模擬したモックアップ実験により前もって求めておくことができる。

【0025】
上述のようにして求めた磁界強度Hでの擬似的ヒステリシス磁化特性により求めた磁化率χbと磁界強度Hとの値を上記(1)式
b=χb
に代入することで脆化係数bの値が求められる。そして図1に示す、脆化係数bと基準脆化因子としてのビッカース硬さHvとの相関関係としての相関関係を示す上記(5)式
Hv=f(b)
に、先に求めた脆化係数bの値を代入することで、脆化係数bに対応するビッカース硬さHvの値が得られ、ビッカース硬さHvと材料の脆性の変化との対応関係から、銅原子の析出等により脆化が進行している被測定強磁性構造体1の内部の実質的な材料の脆性の変化を求めることができる。

【0026】
上記相関関係Hv=f(b)は材料の内部構造によって定まるが、この相関関係Hv=f(b)は、経年劣化測定対象の強磁性構造材としての被測定強磁性構造体1と同種の材料のテストピースを用いて測定により前もって求めておくことができる。そして、その相関関係Hv=f(b)を図示すると、脆化係数bとビッカース硬さHvとの関係が、図1に示す校正曲線Hv=f(b)として表わされる。その校正曲線Hv=f(b)を基準相関として、この基準相関Hv=f(b)から、上述の測定で求めた脆化係数bの値に対応するビッカース硬さHv(実質的な脆性)の値が容易に求められる。

【0027】
そして、材料の脆性の変化に伴う経年劣化を評価するに際しては、経年劣化前の被測定構造体1について同様にヒステリシス磁化特性試験を行っておき、上記と同様の方法にて脆化係数bの値を求め、この脆化係数bの値を図1に示すように初期値b0としておく。また、上記で求めた経年劣化後の脆化係数bをb1(初期値b0からδ離れた脆化係数)とする。そして図1の基準相関Hv=f(b)から、経年劣化後の脆化係数b1に対応するビッカース硬さHv1と、初期値b0に対応するビッカース硬さHv0とを得ることができる。これらビッカース硬さの値Hv0,Hv1は脆性の変化に対応していることから、ビッカース硬さの値Hv0とHv1とを比較することで、被測定構造体1の経年による脆性の変化(脆化の程度)を非破壊的に測定できる。

【0028】
なお、本実施例の非破壊検査方法では、経年後の被測定構造体1について、定期的にヒステリシス磁化特性試験を行って材料の脆性の変化を測定することができ、これにより、被測定構造体1が最も脆くなっている状態(図1では脆化係数bの最大値)を検出することも可能である。

【0029】
従って、本実施例の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法によれば、被測定強磁性構造材の所定の磁界強度Hでの測定により得られた擬似的なヒステリシス磁化曲線7から脆化係数bの値を計算し、図1に例示する如き脆化係数bとビッカース硬さHvとの関係を示す基準相関Hv=f(b)から、脆化係数bの値b0,b1に対応するビッカース硬さHvの値Hv0,Hv1を得て、脆性の変化に対応するビッカース硬さHvの値Hv0,Hv1を比較することで、強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の程度を定量的に非破壊的測定できる。

【0030】
しかも、本実施例の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法では、被測定強磁性構造材の所定の磁界強度Hでの測定により得られた擬似的なヒステリシス磁化曲線7から、上記(4)式c=χcHにより、強磁性構造材の強度の経年劣化の程度を表わす強度係数cの値も併せて求めることができる。

【0031】
それゆえ、この実施例の測定方法によれば、原子炉圧力容器等、強磁性構造材で製造された全ての構造物の経年劣化の程度を、亀裂が発生する前段階での、材料内部の銅原子の析出量、転位密度及びそれらの分布の変化から非破壊的に正確に検査でき、なおかつ小型の磁気ヨークと小容量の励磁電源を具える簡単な装置で測定することができる。

【0032】
図3は、この発明の強磁性構造材の脆性の変化に伴う経年劣化の非破壊測定方法の第2実施例を示す説明図である。この実施例では、第1実施例と異なり、中性子線照射等により銅原子が析出等して脆化が進行している被測定構造体1が、シャルピー試験片に代表されるように、励磁巻線2と磁束検出巻線3とを直接巻ける形状を有しているので、被測定構造体1に、励磁巻線2と磁束検出巻線3とが直接巻かれている。ここでも、ヒステリシス磁化特性測定装置6には、先の第1実施例と同様に、一般の市販品を用いることができる。また8は、この実施例を実施した結果として、ヒステリシス磁化特性測定装置6に表示されるヒステリシス磁化特性である。

【0033】
本実施例では、先の第1の実施例と同様にして、極めて低い磁界強度Hでの測定により得られたヒステリシス磁化特性8から脆化係数bの値を求める。また、あらかじめ、先の第1実施例にて示した図1の基準相関を得た方法と同様の方法により、脆化係数bと基準脆化因子としてのビッカース硬さとの基準相関(図示せず)を得ておく。そして、かかる基準相関から、被測定構造体1について、上記第1実施例と同様にして求めた、経年劣化後のビッカース硬さHvの値Hv1と初期状態のビッカース硬さHvの値Hv0とを比較することで、強磁性構造体1の経年による脆性の変化(脆化の程度)を非破壊的に測定することができる。

【0034】
従って、本実施例の方法によれば、原子炉圧力容器中に装備されているシャルピー試験片と同様に巻線を巻ける形状の部材に対して、先の実施例と同様に強磁性構造体1の銅原子の析出等に伴う経年劣化の非破壊検査を行うことができる。しかも磁気ヨークを使用しなくてすむことから、装置の単純化及び軽量化を図ることができる。

【0035】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記実施例では構造体について測定したが、構造体用の構造材についても測定し得ることはいうまでもない。また、この発明の方法の各工程を実施する手段を組合わせて、経年劣化測定装置を構成することもできる。そして、上記第1及び第2実施例では、脆性の変化に対応する基準脆化因子としてビッカース硬さHvを用いたが、強磁性材料の脆性の変化に対応して変化する因子であればこれに限られず、例えば、シャルピー衝撃試験による延性脆性遷移温度を基準脆化因子とすることもでき、また、硬度についても、ビッカース硬さに限られず、例えばロックウェル硬さ等の硬度を基準脆化因子とすることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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