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人型ロボットハンド
> 明細書
明細書 :人型ロボットハンド
発行国
日本国特許庁(JP)
公報種別
特許公報(B2)
特許番号
特許第3848123号 (P3848123)
公開番号
特開2003-117873 (P2003-117873A)
登録日
平成18年9月1日(2006.9.1)
発行日
平成18年11月22日(2006.11.22)
公開日
平成15年4月23日(2003.4.23)
発明の名称または考案の名称
人型ロボットハンド
国際特許分類
B25J 15/08 (2006.01)
FI
B25J 15/08 K
請求項の数または発明の数
9
全頁数
14
出願番号
特願2001-316828 (P2001-316828)
出願日
平成13年10月15日(2001.10.15)
審査請求日
平成16年1月19日(2004.1.19)
特許権者または実用新案権者
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】501401102
【氏名又は名称】星野 聖
【識別番号】501401113
【氏名又は名称】川渕 一郎
発明者または考案者
【氏名】星野 聖
【氏名】川渕 一郎
個別代理人の代理人
【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官
【審査官】八木 誠
参考文献・文献
特開平11-156778(JP,A)
特開2001-287182(JP,A)
調査した分野
B25J1/00-21/02
特許請求の範囲
【請求項1】
人間の5指に相当する5本の指機構と、その5本の指機構を支持する人間の掌に相当する掌部を備え、親指に相当する第1指は四つの節により構成され、第1指を他の指と向かい合わせにすることができる運動機能を備え、第2指~第5指は,それぞれ四つの節により構成されており、各関節部で屈伸できる構成を有し、さらに第3指の中手骨
部
はハンド全体の基部である掌部に固定されており、また、前記第2、4、5指の中手骨
部
は連動して回転可能に構成することにより指が開いた状態とするアブダクション動作を可能としたことを特徴とする人型ロボットハンド。
【請求項2】
前記第2指~第5指の指機構は、指先から順にそれぞれ
末節骨部、中節骨部、基節骨部、中手骨部
の計4節を備え、各節骨部間の接続部3箇所には、指の屈伸を行うための1自由度のジョイントを有し、
基節骨部
には指の屈伸運動を行うジョイント駆動用モータを内蔵し、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントには該モータの回転力をそのジョイントの回転運動とするための減速機構を内蔵し、さらにそのジョイントの回転運動を、同一指機構上の
中手骨部
と
基節骨部間
のジョイントおよび
中節骨部と末節骨部間
のジョイントに伝達するための連動機構を備え、
さらに掌部と中手骨部間のジョイントの軸と中手骨部と基節骨部間のアブダクション用のジョイントの軸を直交して配置し、その交点部に空間を設けて指機構に内蔵するジョイント駆動用モータやセンサ等のための配線ケーブルを通過するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の人型ロボットハンド。
【請求項3】
前記第2指~第5指の4指のうち、第2指、第4指、第5指の
中手骨部
と掌部間の接続部には指の開き動作を実現するためのアブダクション用ジョイントを有し、また第3指の
中手骨部
は掌部に固定され、さらに第2、4、5指の
中手骨部
をリンク機構を介して掌部との間のアブダクション用ジョイント周りに連動して回転するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の人型ロボットハンド。
【請求項4】
前記第4指の
中手骨部
に、
中手骨部
と掌部間のアブダクション用ジョイントを中心とする円弧歯車を固定し、掌部にその円弧歯車に噛み合う駆動用モータを内蔵し、さらに
中手骨部
の揺動により前記リンク機構を介して第2、4、5指のアブダクション動作を行うようにしたことを特徴とする請求項3に記載の人型ロボットハンド。
【請求項5】
前記
基節骨部
と
中節骨部間
の屈伸用ジョイントの回転運動を、同一指機構上の
中手骨部
と
基節骨部間
のジョイントおよび
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントに伝達するための連動機構は、
基節骨部
と
中節骨部間
のジョイントと
中手骨部
と
基節骨部
間のジョイントを連動して回転させるワイヤ・プーリ機構と、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントと
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントを連動して回転させるワイヤ・プーリ機構としたことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の人型ロボットハンド。
【請求項6】
前記ワイヤ・プーリ機構は、指機構の両脇に配置され、そのプーリは対応する
節骨部の
側面に彫られて形成され、対応する二つのプ-リに巻回するワイヤは両プーリ間を8の字型に巻かれていることを特徴とする請求項5に記載の人型ロボットハンド。
【請求項7】
前記第1指は、指先から順に、
末節骨部
、
中節骨部、基節骨部、中手骨部
を備え、第1指の根元における2自由度を実現するために、掌部と
中手骨部と
の接続部および
中手骨部と基節骨部
との接続部にそれぞれ独立の駆動機構を備えた第1、第2ジョイントを備え、さらに掌部の手の平側の一部に前記第1ジョイントおよびその駆動用モータと減速機を内蔵し、さらに
中手骨部
に前記第2ジョイントの駆動用モータと減速機を内蔵し、前記二つのジョイントは直交しないが両者のねじれ角を90度として構成し、また第1指の
基節骨部
には指の屈伸運動を行うモータを配置し、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントには該モータの回転力をそのジョイントの回転力とするための減速機構を内蔵し、さらに
基節骨部
と
中節骨部間
のジョイントの回転運動を、
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントに伝達するための連動ワイヤ機構を備えたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の人型ロボットハンド。
【請求項8】
前記第1指は、その基部の中央部に
節骨部の
軸方向の回転部分を備え、適切なねじれ角度で固定できるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の人型ロボットハンド。
【請求項9】
前記ジョイント駆動用モータは、それを内蔵した
基節骨部
の軸と平行になる様に配置し、また
基節骨部と中節骨部
間のジョイントに内蔵した減速機は、ジョイントの軸と中心を同一とするクラウンギヤおよび遊星歯車減速機で構成し、さらにモータの回転軸に取り付けたピニオンとクラウンギヤを噛み合わせ、モータの回転力を前記減速機に伝動することを特徴とする請求項2~請求項8のいずれかに記載の人型ロボットハンド。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各指の屈伸機能、親指を他の指と向かい合わせにする運動機能および指同士の開閉(アブダクション;abduction)機能を備えた人型ロボットハンドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ペン持ちや手話などのように、細かくかつ広範囲な指先の運動を必要とする人型ロボットハンドにおいては、各指の屈伸機能、親指を他の指と向かい合わせにする運動機能が必要であるだけでなく、指同士の開閉(アブダクション;abduction)機能が必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の人型(指の数、運動可動域、大きさ等が人間並み)ロボットハンドではは、前2者は実現されてきたが、後者の実現例は極めて少なく、また実現したものにおいても機構が大きく重くなり実用性・凡用性に乏しいものばかりであった。特にロボットハンド内にモ-タや歯車例などの駆動機構をコンパクトに内蔵させることが困難であり、このため、指の数、運動可動域、大きさ等が人間並みの従来人間型ロボットハンドでは、モ-タや減速機からなる駆動機構を手の外部に設け、ワイヤ機構で動力を指先まで伝達する手法が取られてきた。この手法では、駆動機構のための大きな占有空間を必要とし、機構全体の重量がかさみ、さらにワイヤの伸びや摩擦による運動精度や効率の低下が避けられないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、アブダクション機能用の運動機構とモ-タを掌部分の中へコンパクトに収納するとともに、その機構と干渉しないように、各指の屈伸機能用の運動機構とモ-タを各指毎に極めてコンパクトに内蔵する方法の検討を行った結果、新規な人型ロボットハンドの開発に成功した。本人型ロボットハンドは、親指運動が3自由度、他の4指の屈伸が各1自由度、および後者4指間のアブダクションが1自由度の計8自由度を有し、人が実現できる大抵の運動を実現可能である。また、人間と比較しても小形である、全長185mm、指の太さ19mmの寸法内へ全機構とモ-タおよび配線を内蔵し、全重量500g以下を実現した。すなわち、諸元上も従来のものに比較して顕著なる性能向上を実現した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明が採用した解決手段は、
人間の5指に相当する5本の指機構と、その5本の指機構を支持する人間の掌に相当する掌部を備え、親指に相当する第1指は四つの節により構成され、第1指を他の指と向かい合わせにすることができる運動機能を備え、第2指~第5指は,それぞれ四つの節により構成されており、各関節部で屈伸できる構成を有し、さらに第3指の中手骨
部
はハンド全体の基部である掌部に固定されており、また、前記第2、4、5指の中手骨
部
は連動して回転可能に構成することにより指が開いた状態とするアブダクション動作を可能としたことを特徴とする人型ロボットハンドで
ある。
また、前記第2指~第5指の指機構は、指先から順にそれぞれ
末節骨部、中節骨部、基節骨部、中手骨部
の計4節を備え、各節骨部間の接続部3箇所には、指の屈伸を行うための1自由度のジョイントを有し、
基節骨部
には指の屈伸運動を行うジョイント駆動用モータを内蔵し、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントには該モータの回転力をそのジョイントの回転運動とするための減速機構を内蔵し、さらにそのジョイントの回転運動を、同一指機構上の
中手骨部
と
基節骨部間
のジョイントおよび
中節骨部と末節骨部間
のジョイントに伝達するための連動機構を備え、さらに掌部と
中手骨部
間のジョイント軸の軸と
中手骨部
と
基節骨部間
のジョイントの軸を直交して配置し、その交点部に空間を設けて指機構に内蔵するジョイント駆動用モータやセンサ等のための配線ケーブルを通過するようにしたことを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記第2指~第5指の4指のうち、第2指、第4指、第5指の
中手骨部
と掌部間の接続部には指の開き動作を実現するためのアブダクション用ジョイントを有し、また第3指の
中手骨部
は掌部に固定され、さらに第2、4、5指の
中手骨部
をリンク機構を介して掌部との間のアブダクション用ジョイント周りに連動して回転するようにしたことを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記第4指の
中手骨部
に、
中手骨部
と掌部間のアブダクション用ジョイントを中心とする円弧歯車を固定し、掌部にその円弧歯車に噛み合う駆動用モータを内蔵し、さらに
中手骨部
の揺動により前記リンク機構を介して第2、4、5指のアブダクション動作を行うようにしたことを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記
基節骨部
と
中節骨部間
の屈伸用ジョイントの回転運動を、同一指機構上の
中
手
骨部
と
基節骨部間
のジョイントおよび
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントに伝達するための連動機構は、
基節骨部
と
中節骨部間
のジョイントと
中手骨部
と
基節骨部
間のジョイントを連動して回転させるワイヤ・プーリ機構と、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントと
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントを連動して回転させるワイヤ・プーリ機構としたことを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記ワイヤ・プーリ機構は、指機構の両脇に配置され、そのプーリは対応する
節骨部の
側面に彫られて形成され、対応する二つのプ-リに巻回するワイヤは両プーリ間を8の字型に巻かれていることを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記第1指は、指先から順に、
末節骨部
、
中節骨部、基節骨部、中手骨部
を備え、第1指の根元における2自由度を実現するために、掌部と
中手骨部と
の接続部および
中
手
骨部と基節骨部
との接続部にそれぞれ独立の駆動機構を備えた第1、第2ジョイントを備え、さらに掌部の手の平側の一部に前記第1ジョイントおよびその駆動用モータと減速機を内蔵し、さらに
中手骨部
に前記第2ジョイントの駆動用モータと減速機を内蔵し、前記二つのジョイントは直交しないが両者のねじれ角を90度として構成し、また第1指の
基節骨部
には指の屈伸運動を行うモータを配置し、
基節骨部
と
中節骨部
間のジョイントには該モータの回転力をそのジョイントの回転力とするための減速機構を内蔵し、さらに
基節骨部
と
中節骨部間
のジョイントの回転運動を、
中節骨部
と
末節骨部
間のジョイントに伝達するための連動ワイヤ機構を備えたことを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記第1指は、その基部の中央部に
節骨部の
軸方向の回転部分を備え、適切なねじれ角度で固定できるように構成されていることを特徴とする人型ロボットハンドである。
また、前記ジョイント駆動用モータは、それを内蔵した
基節骨部
の軸と平行になる様に配置し、また
基節骨部と中節骨部
間のジョイントに内蔵した減速機は、ジョイントの軸と中心を同一とするクラウンギヤおよび遊星歯車減速機で構成し、さらにモータの回転軸に取り付けたピニオンとクラウンギヤを噛み合わせ、モータの回転力を前記減速機に伝動することを特徴とする人型ロボットハンドである。
【0006】
【実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態としての人型ロボットハンドの構成を図面を参照して説明する。図1R>1は人型ロボットハンドの全体像を示す図であり、(イ)は同ロボットハンドの側面図、(ロ)は平面図、図2は人型ロボットハンドの屈伸部に設ける全19個の回転ジョイントの配置、および呼び名を示す図、図3は第2指の斜視図および分解図である。前記図1に示す人型ロボットハンドは、第1指~第5指を有しており、ロボットハンドの各指には図2に示すように第1指に対してジョイントJ1,0 ~J1,3、第2指に対してジョイントJ2,0 ~J2,3 、第3指に対してジョイントJ3,1~J3,3 、第4指に対してジョイントJ4,0 ~J4,3 、第5指に対してジョイントJ5,0 ~J5,3 が配置され,これらのジョイント部で各指が屈伸運動(詳細は後述する)あるいはアブダクション(詳細は後述する)可能な構成となっている。なお、第3指の
中手骨部
のジョイント部は、左右方向に回転させる必要がないため、図2に示すようにアブダクション用のジョイントJ3,0 は省略されている。
【0007】
〔第2~5指の指機構〕指の屈伸運動およびアブダクション運動を説明する前に、それを実現するための第2~5指の指機構について説明する。なお、第1指は他の4指と大きく異なる構造を持ち、本ロボットハンドのアブダクション機構と独立に運動するので、その構造の説明は後述する。
【0008】
〔第2指~第5指の
節骨部構成
〕第2指~第5指は,それぞれ四つの
節骨部
により構成されており、各関節部で屈伸できる構成となっている。図3は第2指の斜視図およびその分解部であり、この図に示すように、指は指先から順に、
末節骨部1、中節骨部2、基節骨部3、中手骨部4
を備えている。なお、第2指~第5指においてそれぞれの
中手骨部
4の形状が若干異なるが、特に説明を大きく変えなければならない差異ではないので、以後は第2指を代表に取り上げてその機構を説明し、他の第3指~第5指の節
骨部機構
については重複する部分の説明は省略する。
【0009】
第2指において、
中手骨部
4が
末節骨部1
側とハンド全体の基部である掌部5を仲介する節骨部である。そのため、
中手骨部4
の内部で、指のアブダクション機能実現のための1自由度を有するジョイントJ2,0 (アブダクションジョイント)と、指の屈伸機能実現のための1自由度を有するジョイントJ2,1 (屈伸用ジョイント)が直交して構成されている。この二つのジョイントJ2,0 およびJ2,1 により、
中手骨部
4は掌部5に対してジョイントJ2,0 を中心にアブダクション機能を達成でき、また
基節骨部
3が屈伸用ジョイントJ2,1 により図3中で上下方向(握り動作)に揺動できる構成となっている。この
中手骨部
の部分をコンパクトに構成し、かつ大きな回転可動域を得ることが極めて重要である。そこで、この部分には回転軸受以外にモ-タや減速機を置かず、それぞれのジョイントの回転運動用動力は、少し離れたところに配置したモ-タから伝達することにする(詳細は後述する)。また、
末節骨部1と中節骨部2
とを接続するジョイントJ2,3 、および、
中節骨部2と基節骨部3
とを接続するジョイントJ2,2 も前記ジョイントJ2,1 と同じ回転運動〔図3中上下方向の運動即ち指の屈伸運動(握り動作)〕を許容する指の屈伸用ジョイントとして構成されている。
【0010】
〔関節駆動機構〕指関節の駆動機構を図4を参照して説明すると、図4(イ)は第2指の側面図、(ロ)は駆動機構の斜視図、(ハ)は駆動・減速機構の断面図である。指の屈伸機構のためにエンコーダ内蔵型の超小型モータが基節骨部3に内蔵されており、その減速機が図(ハ)に示すように
中節骨部2と基節骨部3
とを接続する前記ジョイントJ2,2 にコンパクトに内蔵されている。また、ジョイントJ2,2 の回転動力を前後のジョイントJ2,1 ,J2,3 に伝達する連動ワイヤ機構による伝達機構(後述するワイヤ・プーリ機構)が設けられている。
【0011】
基節骨部3
およびジョイントJ2,2 部分はそれぞれ内部空間が比較的大きく取れるので、超小型モ-タ13や関節駆動用減速機12の内蔵に適した構成としてある。関節駆動用減速機12は後述するように遊星歯車機構からなる3段減速機として構成されている。また、指先の部分にセンサ-や電装品等を内蔵するための格納空間11が形成されている。さらに、超小型モ-タ13の後部から出る配線ケ-ブル14が(イ)に示すように指機構の運動を阻害しないように、それをジョイントJ2,0 ,J2,1 のほぼ回転中心に直接的に通せる構成とされている。十分な出力を得る為に、本ロボットハンドで使用する全ての超小型モ-タ13は、小形・軽量で高出力のDCコアレスモ-タを採用する。また、それらはエンコ-ダを内蔵し、特に付加的なセンサを用いずに位置制御、速度制御、トルク制御が可能となっている。
【0012】
モ-タ回転数が比較的に高いため、十分に小形かつ減速比の大きな減速機が関節部に組み込まれる。減速機として、少ない歯車数で大きな減速比および大きな伝達動力が期待できる遊星歯車機構からなる3段減速機を採用する。3段減速機構は、図9(ハ)に示すように1段目減速機構としてクラウン減速機、2、3段目減速機として遊星歯車減速機を使用している。1段目の減速機構を構成するクラウンギヤの回転軸は2段目太陽歯車を支持しており、この太陽歯車に噛み合う2段目遊星歯車、さらに2段目の遊星歯車に設けたキャリアの軸に設けた3段目の太陽歯車、この太陽歯車に噛み合う3段目の遊星歯車、さらに前記2、3段目遊星歯車に共通な内歯車によって減速機が構成され、基節内に収納された超小型モータの出力軸に設けたピニオンが前記クラウンギヤに噛み合っている。また内歯車は
中節骨部内
に設けられている。クラウンギヤの回転中心は
中節骨部と基節骨部
とを接続するジョイントJ2,2 の関節軸と同軸上にあり、またこの軸上には前記減速機構を構成する2、3段目太陽歯車の軸が配置されている。そして前記減速機の軸とジョイントJ2,2 の関節の軸を共通とすることにより、関節内に3段減速機がコンパクトに収められている。
【0013】
超小型モ-タは
基節骨部
3の長手方向に対してその軸が平行となる様に収納され、クラウンギアを介して関節軸方向の回転動力を得る。また、この動力伝達段階でも大きな減速比を得るために、クラウンギアの径を出来る限り大きくする。一般的に遊星歯車機構では出力要素が内歯車か遊星歯車のキャリアのいずれかとなる。ここでは、関節軸の両端の軸受に生ずる負荷の偏りが出来る限り小さくなるように、指節の中央へ出力を与えるために、関節軸の中央寄りに位置する内歯車を出力要素とする。
【0014】
つづいて、前記機構によって得られたジョイントJ2,2 の回転動力を前後のジョイントJ2,1 ,J2,3 に伝達する機構について説明する。伝達機構として連動ワイヤ機構を用いる。図5において、(イ)は第2指の斜視図、(ロ)は同指の分解図である。ワイヤ・プーリからなるこの伝達機構では、ジョイントJ2,1 ,J2,2 を連動するワイヤW1と、ジョイントJ2,2 ,J2,3 を連動するワイヤW2をそれぞれ指機構の両脇に配置する。
【0015】
各ワイヤ用のプ-リは、指節の側面に彫り込むことにより形成する。ワイヤW1用として二つのプ-リ21,22と中間プーリ23が必要となる。プーリ22は中手骨
部
上に彫り込まれて形成され、プーリ21は
中節骨部
上に彫り込まれて形成されており、プーリ21、22には中間プーリ23を介してワイヤW1が両者に8の字型にかけられる。ワイヤW1の端部は図5(ロ)に示すように
中手骨部
上に挟み留め板によって固定され、またワイヤW1はワイヤ上に取り付けた玉を
中節骨部
上に形成した穴に嵌合して
中節骨部
に固定される。また、ワイヤW2用の二つのプ-リ24,25のうち、プーリ25は
基節骨部
に彫り込まれて形成され、またプーリ24は
末節骨部
に彫り込まれて形成され、それぞれのプーリにはワイヤW2が8の字型にかけられる。ワイヤW2はワイヤ上に設けた玉が前記プーリ25に形成した穴へはめ込まれ、ワイヤの端部は図6に示すように
末節骨部
に形成した穴に通し、さらにその先を挟み留め板によって固定されている。
【0016】
この様に構成するワイヤ・プーリからなる連動ワイヤ機構は、極めて小形軽量で、大きな回転可動域を有し、歯車列にみられる様なガタが無いので高精度かつ高効率の伝達機構となる。このような屈伸機構による屈伸運動を図6に示す。具体的には超小型モータを駆動すると基部が曲がり、さらにこの動きに連動して連動ワイヤ機構を介して
中節骨部、末節骨部
が曲がり図6に示すような状態となる。図7、図8に第2指を折り曲げた状態の人型ロボットハンドの様子を示す。
【0017】
上記第2指の屈伸運動は第4指、第5指と共通であるが、第3指については
中手骨部
の構成が若干相違している。第3指には後述するアブダクション機能を与える必要がないため、第3指の
中手骨部
は後述するように掌部に固定されている。
【0018】
つづいて、人型ロボットハンドのアブダクション機構を説明する。図9は(イ)、(ロ)は手を閉じた状態から開いた状態へと移行させた図であり、図10R>0はアブダクション機構の斜視図、図11はアブダクション機構を構成するリンク機構の説明図である。アブダクション動作は、第2~5指の4指の内、第2、4、5指の
中手骨部
を連動して回転させることにより図9(ロ)に示すように指が開いた状態とする動作である。このアブダクション機構を実現するために、第3指の
中手骨部
は、ハンド全体の基部である掌部に固定されている。また、強い回転力を効率よく得るために、図11に示すように第4指の
中手骨部
にピッチ円半径の出来る限り大きな円弧歯車31を固定する。前記円弧歯車31は第4指の根元に設けたジョイントP5を中心に揺動可能に構成されており、この円弧歯車31の揺動運動により第4指が開き動作を行う。また、前記円弧歯車31は掌部の端に配置したクラウンギヤ33の軸上に設けたピニオン32とかみ合わせる。クラウンギヤ33は〔掌部〕に配置したアブダクションモータ34の出力軸に設けたギヤと噛み合っている。この構成により、アブダクションモータ34が回転するとクラウンギヤ33が回転し、さらにピニオン32が回転して、円弧歯車31が第4指の根元に配置したジョイントJ4,0 を中心に揺動し第4指が開く動作を行う。
【0019】
第4指の
中手骨部
の回転運動を、連動リンク機構により、両側の第2指および第5指の
中手骨部
に伝達する連動リンク機構の説明をする。連動リンク機構は図1111に示すようにL1~L4の四つの
節骨部
から構成する。リンクL1は、一端を第2指の
中手骨部
とジョイントP1で連結し、他端をリンクL2とジョイントP2で連結する。リンクL2は、一端をリンクL1とジョイントP2で連結し、他端をリンクL3とジョイントP4で連結し、リンクL2の中央を掌部とジョイントP3で連結する。
【0020】
リンクL3は、一端をリンクL2とジョイントP4で連結し、他端を第4指の
中手骨部
とジョイントP5で連結する。リンクL4は、一端を第4指の〔
中手骨部
〕とジョイントP6で連結し、他端を第5指の
中手骨部
とジョイントP7で連結する。アブダクションモ-タ34によって円弧歯車31が駆動されると、その動きにより第4指の
中手
骨
部
が開く運動をし、その運動がリンクL1~L3を介して回転方向が逆となる様に第2指の
中手骨部
に伝達され、リンクL4を介して回転角を拡大する様に第2指および第5指の
中手骨部
に伝達される。こうしてアブダクション機能を達成することができる。
【0021】
また、上記構成において、掌部の内部に
中手骨部
の運動空間、および配線や電装品の内蔵空間を得るために、円弧歯車およびその運動空間を手の甲側の外装板間近に配し、また連動リンクを
中手骨部
と手のひら側の外装板との間の空間に薄く収めることが重要である。図1212にアブダクションモータ、クラウンギヤ、円弧歯車31の配置関係を示す。なおこれらの配置は設計時において自由に変更することが可能である。図13にアブダクション機構の駆動用連動リンクの斜視図を示す。
【0022】
最後に第1指の指機構について説明する。図14は第1指の最大内転状態を説明する図、図15は第1指の
節骨部構
成を説明する図、図16は第1指の関節駆動機構を説明する図である。第1指は図15に示すように四つの
節骨部
により構成する。指先から順に
末節骨部,中節骨部,基節骨部,中手骨部と
する。第1指を他の指と向かい合わせにする運動機能を実現するために人間の親指の根本が2自由度を有することと同様に,第1指の根元に二つのジョイントJ1,0 、J1,1 のそれぞれ独立の駆動機構を組み込む。即ち、第1指の
中手骨部
は、2自由度を実現するために
中手骨部
と掌部との接続部および
中
手
骨部と基節骨部との
接続部にそれぞれ独立の駆動機構を備えた第1ジョイントJ1,0、第2ジョイントJ1,1 を備えている。
【0023】
掌部の手の平側の一部にふくらみ(人間の親指の根元に存在するのと同様)を設け、図16に示すように第1ジョイントJ1,0 およびその駆動用モータと減速機を内蔵する。第1指では
中手骨部
を短くするためにこの減速機の内歯車をモータ側へ固定し、遊星歯車の軸を出力側である
中手骨部
の側面へ固定する構造とする。
中手骨部
に第2ジョイントJ1,1 の駆動用モータと減速機を内蔵する。このために二つのジョイントJ1,0 、J1,1 は直交しないが両者のねじれ角を90度とする。この部分の減速機の基本構成は前述した第2~4指における屈伸機能のためのものと同一とする。
【0024】
基節骨部
にジョイントJ1,2 の駆動用モータと減速機を内蔵する。ジョイントJ1,2 の回転運動をジョイントJ1,3 に連動ワイヤ機構により伝達する。これらの連動ワイヤ機構は前述した第2~4指における屈伸機構のためのものと同一とする。さらに、第1指を他の4指と向かい合わせにする状態での第1指の腹の方向を調整するために
基節骨部
の中央に
節骨部
の軸方向の回転部分を設け、ジョイントJ1,2 、J1,3 を適切なねじれ角で固定できるようにする。
【0025】
以上のように、上記本発明に係る実施形態では、アブダクション機能用の運動機構とモ-タを掌部分の中へコンパクトに収納するとともに、その機構と干渉しないように、各指の屈伸機能用の運動機構とモ-タを各指毎に極めてコンパクトに内蔵したため、小型で新規な人型ロボットハンドを構成することができた。特に本人型ロボットハンドは、親指運動が3自由度、他の4指の屈伸が各1自由度、および後者4指間のアブダクションが1自由度の計8自由度を有しており、また指内に配置したモータを駆動することで、人が実現できる大抵の指の運動を実現することができる。
【0026】
以上本発明の実施形態について説明してきたが、アブダクション機能用の運動機構とモ-タを掌部分の中へコンパクトに収納するとともに、その機構と干渉しないように、各指の屈伸機能用の運動機構とモ-タを各指毎に極めてコンパクトに内蔵する方法として、上記説明の機構に限定されることはない。また本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係る人型ロボットハンドは、親指運動が3自由度、他の4指の屈伸が各1自由度、および後者4指間のアブダクションが1自由度の計8自由度を有し、人が実現できる大抵の運動を実現することができる。また、人間と比較しても小形なロボットハンドとすることができる、等々の優れた効果を奏することができる。
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】ロボットハンドの全体像を示す。
【図2】ロボットハンドに設ける全19個の回転ジョイントの配置、および呼び名を示す。
【図3】第2指の
節骨部構
成を示す。
【図4】第2指の関節駆動機構を示す。
【図5】第2指の連動ワイヤ機構を示す。
【図6】第2指の連動ワイヤ機構によって指を曲げた状態の説明図である。
【図7】第2指の屈伸機能により、第2指が極めて大きく内側へ曲がる(内転する)ことを示す。
【図8】第2指が3つのジョイントJ2,1 、J2,2 、J2,3 を軸として回転することを示す。なお、他の4指も同様の屈伸機能を有する。
【図9】アブダクション機能として、第2、4、5指がそれぞれジョイントJ2,0 、J4,0 、J5,0 軸として回転することを示す。
【図10】アブダクション駆動機構を示す。
【図11】アブダクション駆動用連動リンク機構の透視図を示す。
【図12】アブダクション駆動機構の横断面を示す。
【図13】アブダクション駆動用連動リンクを示す。
【図14】第1指を他の指と向かい合わせにする運動機能として、第1指がジョイントJ1,0 を軸として大きく内転することを示す。
【図15】第1指の
節骨部構
成を示す。
【図16】第1指の関駆動機構を示す。
【0029】
【符号の説明】
1
末節骨部
2
中節骨部
3
基節骨部
4
中手骨部
5 掌部
11 センサーや電装品等を内蔵するための格納空間
12 減速機
13 超小型モータ
21、22 プーリ
23 中間プーリ
24、25 プーリ
31 円弧歯車
32 ピニオン
33 クラウンギヤ
34 アブダクション駆動用モータ
図面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】