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明細書 :強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3472826号 (P3472826)
公開番号 特開2002-214200 (P2002-214200A)
登録日 平成15年9月19日(2003.9.19)
発行日 平成15年12月2日(2003.12.2)
公開日 平成14年7月31日(2002.7.31)
発明の名称または考案の名称 強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法
国際特許分類 G01N 27/72      
FI G01N 27/72
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2001-013248 (P2001-013248)
出願日 平成13年1月22日(2001.1.22)
審査請求日 平成13年1月22日(2001.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597122725
【氏名又は名称】岩手大学長
発明者または考案者 【氏名】高橋 正氣
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】平田 佳規
参考文献・文献 特開2000-258259(JP,A)
特開 平1-119756(JP,A)
特開2001-133440(JP,A)
特開2001-21538(JP,A)
S.Takahashi et.al,Journal of Applied Physics,2000年 1月15日,Vol.87,No.2,第805-813頁
調査した分野 G01N 27/72 - 27/90
特許請求の範囲 【請求項1】
強磁性構造材を対象として測定した、磁界強度Hと磁化Mとで表されるヒステリシス磁化曲線に基づき、前記強磁性構造材の経年劣化を非破壊的に検査する方法において、前記ヒステリシス磁化曲線を複数に分割し、各分割点における前記曲線の勾配を、任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配によって求める、という作業を複数種類の自然数kの値について行い、各自然数kの値に関し、全ての前記分割点について求めた前記勾配から、磁界強度H,帯磁率χcおよび前記強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む関係式である次式
c=χc・H3
への前記勾配の収束の程度を調べて最も良く収束する前記自然数kの値を最適値として得るとともに、前記最適値における帯磁率χcから前記帯磁率係数cを求め、前記帯磁率係数cに基づいて前記強磁性構造材の経年劣化の程度を非破壊検査することを特徴とする、強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法。

【請求項2】
前記n番目の分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn,Mnとするとともに、前記n番目の分割点から前記自然数k個離れた分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn+k,Mn+kとして、次式
χnk=(Mn+k-Mn)/(Hn+k-Hn
から、前記任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配χnkを求めることを特徴とする、請求項1記載の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法。

【請求項3】
前記自然数kは、前記勾配χnkの、次式
c=χc・H3
を変形して得られる次式
log(χc)=log(c)-3log(H)
で示される関係式からの誤差が最小の時の値とすることを特徴とする、請求項2記載の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体の経年劣化による材料強度の劣化を非破壊的に検査する方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術】従来の一般的な非破壊検査方法は全て、亀裂の発生とその進展を調べることを目的としていた。その結果、現在の非破壊検査方法の発展の方向はできる限り小さい亀裂の発生を発見することにあり、かかる従来の非破壊検査方法では、亀裂が発生する前の段階での強磁性構造材の経年劣化を非破壊的に評価をすることはできなかった。

【0003】
ところで、強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体の経年による材料強度劣化を非破壊的に測定する方法として従来、被測定対象の強磁性構造材料または強磁性構造体の保磁力および飽和磁化領域における帯磁率を測定する方法も知られている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる被測定対象の強磁性構造材料等の保磁力および飽和磁化領域における帯磁率を測定する従来の方法では、保磁力を正確に測定する必要性があることから、測定の際に、被測定対象の強磁性構造材料等を、磁気ヨーク或いは巻線を用いて磁気飽和の段階まで磁化したのちに、その被測定対象の強磁性構造材料等を、内部の磁束密度がゼロにまるまで減磁しなければならない。そのため、磁気飽和するまで磁化するのにその材料の保磁力よりもはるかに大きい起磁力を必要とすることから、大型の磁気ヨークを用いて励磁巻線に大きな励磁電流を流す必要がある。

【0005】
従って、そのような大型の磁気ヨークを有する測定装置や大容量の励磁用電源を必要とすることから、コストが嵩んでしまうという問題がある。さらに、大型の磁気ヨークを有する測定装置などにより測定系の重量が重くなってしまうとともに、その測定装置を設置するための場所も設けなければならないという問題がある。

【0006】
そこで、本願発明者は、被測定強磁性構造材またはそれを用いた強磁性構造体の経年劣化による材料強度の劣化を非破壊的に測定する方法として、所定の磁界強度Hで測定した帯磁率χcとその磁界強度Hとにより次式の関係式
c=χc・H3 ・・・(1)
から帯磁率係数cを求め、その帯磁率係数cが含まれた関係式から経年劣化後の実質的な応力を得て、その実質的な応力と劣化前の初期の応力とを比較する方法に想到した。なお、この帯磁率係数cからは、転位密度の変化を知ることもできる。

【0007】
上記方法において帯磁率係数cを求めるに際しては、ヒステリシス磁化曲線(ヒステリシスループ)からその勾配として表される帯磁率χcを求める必要がある。ところで、従来一般的に行なわれている隣接データを用いての数値解析によって帯磁率を求め、その帯磁率から帯磁率係数cを求めることによって、経年劣化のパラメータである転位密度の変化を捕らえることも可能である。しかし、上記従来の一般的な数値解析により求められる帯磁率は、バルクハウゼンノイズの影響により局所的に大きな値となる帯磁率と、上記(1)式の関係を満たす帯磁率χcとを両方とも含んでおり、かかるバルクハウゼンノイズの影響による帯磁率と、上記(1)式の関係を満たす帯磁率χcとは、発生機構が根本的に異なっている。即ち、バルクハウゼンノイズによる帯磁率は、鉄鋼材料等の強磁性構造材の磁区を構成する個々の磁壁の不連続な移動に伴う磁化の増加によって生じるものである。これに対して、上記(1)式の関係を満たす帯磁率χcは、磁気モーメントの回転に伴う磁化の増加によって生じるものである。

【0008】
このことから、先に述べた(1)式を用いる方法により強磁性構造材又はそれを用いた強磁性構造体の経年劣化をより正確に評価するためには、その(1)式の関係を満たす((1)式に収束する)帯磁率χcを正確に求める必要があるが、上記従来の一般的な数値解析により求めた帯磁率では、上述のようにバルクハウゼンノイズの影響による帯磁率を含んでいるために、実験で得られた上記(1)式で示される関係から外れてばらついてしまうという問題があった。また、数値解析を行なう際に解析範囲の分割数が少ないと解析精度が悪くなってしまう一方、統計的に精度を上げるべく磁界強度Hの分割数をできるだけ大きくして数値解析を行うと、前述したバルクハウゼンノイズの影響により、(1)式で示される関係からのばらつきがさらに大きくなってしまうという不都合があった。そして、かかるばらつきの大きな帯磁率からでは(1)式の関係が成り立つ磁界強度Hの範囲を特定するのも困難であった。

【0009】
従って、バルクハウゼンノイズの影響による帯磁率の値の変化分を完全に取り除くことができれば、(1)式の関係を完全に満たす帯磁率χcひいてはその帯磁率χcから定まる真の帯磁率係数c(本件明細書では誤差が全くないと考えた場合の帯磁率係数をいう)を求めることができるはずであるが、従来このノイズの影響を取り除く簡易な解析方法は見出されていなかった。

【0010】
そこで、本発明は、上記課題を有利に解決するため、ヒステリシス磁化曲線から、(1)式の関係をより正確に満たすような帯磁率ひいては真の帯磁率係数c*の値により近い帯磁率係数cを容易に求めることができる方法を提供することにより、強磁性構造材やそれを用いた強磁性構造体の経年劣化をより精度良く非破壊的に捕らえることを目的とする。

【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法は、強磁性構造材を対象として測定した、磁界強度Hと磁化Mとで表されるヒステリシス磁化曲線に基づき、前記強磁性構造材の経年劣化を非破壊的に検査する方法において、前記ヒステリシス磁化曲線を複数に分割し、各分割点における前記曲線の勾配を、任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配によって求める、という作業を複数種類の自然数kの値について行い、各自然数kの値に関し、全ての前記分割点について求めた前記勾配から、磁界強度H,帯磁率χcおよび前記強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む関係式である以下に示す(1)式
c=χc・H3 ・・・(1)
への前記勾配の収束の程度を調べて最も良く収束する前記自然数kの値を最適値として得るとともに、前記最適値における帯磁率χcから前記帯磁率係数cを求め、前記帯磁率係数cに基づいて前記強磁性構造材の経年劣化の程度を非破壊検査することを特徴とする。

【0012】
この発明の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法にあっては、強磁性構造材を対象として測定した、磁界強度Hと磁化Mとで表されるヒステリシス磁化曲線に基づき、ヒステリシス磁化曲線を複数に分割し、各分割点におけるその曲線の勾配を、任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配によって求める。そして、かかる作業を複数種類の自然数kの値について行い、各自然数kの値に関し、全ての分割点について求めた勾配から、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む上記(1)式の関係式への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得るとともに、その最適値における帯磁率χcから帯磁率係数cを求めて、その帯磁率係数cに基づいて、測定対象である強磁性構造材の経年劣化の程度を非破壊検査する。

【0013】
従って、上記操作により得られる自然数kの最適値における帯磁率は、分割されたヒステリシス磁化曲線の全ての分割点について求めた勾配から、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む関係式への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得ている。このことから、その最適値における帯磁率χcは、かかる関係式をより正確に満たすような帯磁率として得ることができる。それゆえ、この発明の方法によれば、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む上記(1)式の関係式への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得ることにより、帯磁率からバルクハウゼンノイズの影響による帯磁率の変化分を簡易な方法により容易に取り除くことができ、先に述べた関係式をより正確に満たすような帯磁率χcを容易に求めることができる。そして、その帯磁率から帯磁率係数cを求めることにより、真の帯磁率係数cにより近い帯磁率係数cを容易に求めることができ、その帯磁率係数cに基づいて、強磁性構造材又はそれを用いた強磁性構造体の経年劣化を評価することで、かかる強磁性構造材又はそれを用いた強磁性構造体の経年劣化の非破壊的な検査をより正確かつ精度良く行なうことができる。

【0014】
そして、この発明の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法は、前記n番目の分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn,Mnとするとともに、前記n番目の分割点から前記自然数k個離れた分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn+k,Mn+kとして、次式
χnk=(Mn+k-Mn)/(Hn+k-Hn) ・・・(2)
から、前記任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配χnkを求めても良い。

【0015】
このようにすれば、上記(1)式から求められる帯磁率係数cの値を求めるに際して、自然数kの値をパラメータとして、解析の対象となるヒステリシス磁化曲線における磁界強度Hおよび磁化MについてHn,Mn,Hn+k,Mn+kを上記(2)式に代入して帯磁率χnkを求めて、その求めた帯磁率χnkの値の結果から、(1)式の関係へ最も良く収束する自然数kの最適値における帯磁率χnkを帯磁率χcとして具体的に決定することができる。なお、個々のヒステリシス磁化曲線および磁界強度の分割数nに応じて、自然数kの最適値が定数として得られる。

【0016】
そして、この発明の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法では、前記自然数kは、前記勾配χnkの、以下に示す前記(1)式
c=χc・H3
を変形して得られる以下に示す(3)式
log(χc)=log(c)-3log(H) ・・・(3)
で示される関係式からの誤差が最小の時の値としても良い。

【0017】
このようにすれば、(1)式の関係式へ最も良く収束する自然数kの最適値を求めるに際して、log(H)とlog(χc)とを対数目盛りで図示することで、(1)式への各分割点における勾配の収束の程度が、(3)式で示される傾き(log(H)の増分に対するlog(χc)の増分)-3の直線に、各分割点における勾配の値がのっているか否かによって視覚的にも判断することができるので、(1)の関係式へ最も良く収束する自然数kの最適値における帯磁率χnkの値を容易に求めることができる。

【0018】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施例の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。図1は、この発明の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法の一実施例により得られた帯磁率係数cに対応する変形応力の相関を、従来の一般的な数値解析により得られた帯磁率係数と比較して示す説明図である。図2(a)はこの実施例において引張試験を行なう強磁性構造材の形状を示す正面図であり、図2(b)は、ヒステリシス磁化特性を得るために測定した強磁性構造材の試験片の形状を示す正面図である。

【0019】
図1に示すような、帯磁率係数cに対する変形応力の相関関係の図を得るために、この実施例における強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法を以下に説明する。

【0020】
まず、この実施例の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法により、強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを求めるに際し、予め、経年劣化の被測定対象である強磁性構造材についてヒステリシス磁化特性試験を行なって、磁界強度Hと磁化Mとで示されるヒステリシス磁化曲線(ヒステリシスループ)を得る。ここでは、鉄鋼材料の機械的性質と磁気的性質との相関関係を明らかにするとともに図3に示すようなヒステリシス磁化曲線(ヒステリシスループ)を得るために、図2(a)に示す板状の引張試験用試験片1を用いて引張試験を行い、応力負荷を加える前の応力(0MPa)および、前述の引張試験の結果から、0MPaから破断直前の応力までの間で適当な応力の値(この実施例では476MPa)を選んでいる。そして、その選んだそれぞれの応力の値(この実施例では0MPaおよび476MPa)について、図2(b)に示す通常の磁化測定用試験片2に応力負荷した後、通常のヒステリシス磁化特性試験を行なうことにより、図3に示す、それぞれの応力負荷の値(0MPa,476MPa)による変形を伴うヒステリシス磁化曲線が得られる。

【0021】
なお、この実施例における引張試験用試験片1および磁化測定用試験片2は、原子炉圧力容器の材料である低合金鋼A533Bと同じ組成をもつ圧力容器用調質型合金鋼鍛鋼品であるSFVQ-1Aを用いている。また表1は、試験に用いたSFVQ-1A鋼の化学組成を示すものである。そして、ここでは、図2(a)に示す引張試験用試験片1に、両端部分の長さがそれぞれ20mm、中央部分の長さが60mm、中央部分から両端部分への遷移部分はR40mm、両端部分の幅40mm、中央部分の幅20mm、厚さ2mmのものを使用し、図2(b)に示す磁化測定用試験片に、厚さ2mmの中央部のくりぬかれた枠形の板状部材であって、内側は横15mm,縦5mmの長方形、外側は横20mm,縦10mmの長方形のものを使用している。

【0022】
【表1】
JP0003472826B2_000002t.gif【0023】図3に示すヒステリシス磁化曲線に基づき、磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを求める手順を以下に説明する。

【0024】
図3に示すヒステリシス磁化曲線は、磁界強度Hを横軸に磁化Mを縦軸にそれぞれとって示しており、図3に示す磁化曲線の傾きから保磁力以上の磁界強度Hに於ける帯磁率χcを求めることができる。そして、ここにおける磁界強度Hは-100Oe(エルステッド)~100Oeの範囲で示されているので、まず、応力負荷0MPa及び応力負荷476MPaのそれぞれの磁化曲線について、磁界強度Hの測定範囲-100Oe~100Oeの間で磁化曲線を400等分して、即ち0.5Oeごとに分割して、図中左側から順番に番号を付けていく。

【0025】
そして、左側からn番目の磁界強度の値をHnとして、その磁界強度Hnに対応する磁化の値をMnとする。また、左側からn+k番目の磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn+k,Mn+kとして、それら値Hn,Mn,Hn+k,Mn+kおよび任意に選んだ自然数kの値を以下に示す(2)式
χnk=(Mn+k-Mn)/(Hn+k-Hn) ・・・(2)
に代入することにより、その自然数kについて、n番目の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点(k=2以上)との間を結ぶ直線の勾配χnkを得ることができる。そして、n番目の分割点における磁界強度Hnの値に対応させてχnkをχcとして、磁界強度Hに対するlog(χc)や、log(H)に対するlog(χc)の関係をプロットすることで、前記(1)式
c=χc・H3 ・・・(1)
を変形して得られる以下に示す(3)式
log(χc)=log(c)-3log(H) ・・・(3)
で示される関係式からの誤差が最小の時の値を自然数kの最適値として得る。

【0026】
図4は、図3に示すヒステリシス磁化曲線のうちの応力負荷前(0MPa)のヒステリシス磁化曲線に基づいて、自然数k=3とした場合における保磁力以上の磁界強度Hでの帯磁率χc、それを磁界強度Hに対するlog(χc)の値をプロットしたものである。ここでは、自然数k=1とした場合、従来一般的に行なわれている数値解析によって帯磁率χcを求めるのと同様の方法で求めたことになる。従って、図4では、自然数k=3とした場合の磁界強度Hに対するlog(χc)の値をプロットするとともに、この実施例の方法による結果と従来の方法による結果とを比較するために、自然数k=1とした場合の磁界強度Hに対するlog(χc)の値もプロットしている。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=3については△(三角)でそれぞれプロットしている。

【0027】
また図5は、図3に示すヒステリシス磁化曲線のうちの応力負荷476MPaを加えた時のヒステリシス磁化曲線に基づいて、自然数k=3とした場合における保磁力以上の磁界強度Hでの帯磁率χcを求めて、磁界強度Hに対するlog(χc)の値をプロットしたものである。ここでも、図4に示すものと同様にこの実施例の方法により得られた結果と従来の数値解析と同様の方法により得られた結果との比較のために自然数k=1とした場合の磁界強度Hに対するlog(χc)の値もプロットしている。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=3については□(四角)でそれぞれプロットしている。

【0028】
そして、図6は、図4において自然数k=3を自然数k=5に変えた場合、即ち図3に示すヒステリシス磁化曲線のうちの応力負荷を0MPaとした時のヒステリシス磁化曲線に基づいて、自然数k=5として帯磁率χcを求めて、磁界強度Hに対するlog(χc)の値としてプロットしたものである。ここでも、この実施例方法により得られた結果と従来の数値解析により得られた結果との比較のために、上記図4に示すものと同様に自然数k=1とした場合の磁界強度Hに対するlog(χc)の値をプロットしている。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=5については△(三角)でそれぞれプロットしている。

【0029】
また図7は、図5において自然数k=3を自然数k=5に変えた場合、即ち、図3に示すヒステリシス磁化曲線のうちの応力負荷476MPaとした時のヒステリシス磁化曲線に基づいて、自然数k=5とした場合における帯磁率χcを求めて、磁界強度Hに対するlog(χc)の値としてプロットしたものである。ここでも、この実施例の方法により得られた結果と従来の数値解析により得られた結果との比較のために、上記図5に示すものと同様に自然数k=1とした場合の磁界強度Hに対するlog(χc)の値もプロットしている。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=5については□(四角)でそれぞれプロットしている。

【0030】
そして、上記図4~図7においてそれぞれの自然数kの値についてプロットした結果に基づき、(1)式を対数をとることにより変形して得られる以下に示す(3)式
log(χc)=log(c)-3log(H) ・・・(3)
で表されるlog(H)とlog(χc)との関係を対数目盛りで示した直線の傾き-3(log(H)の増分に対するlog(χc)の増分)と同様の傾きの直線からのばらつきが最も小さくなると共に、傾き-3の直線にのるlog(H)の範囲が最も広い自然数kの値を決定する。そして、決定した自然数kの値における磁界強度Hnと帯磁率χcとの関係を対数目盛りで示した図から上記(3)式に基づいて、帯磁率係数cを決定する。なお、自然数kの値を大きくすると、(1)式で示される直線からの値のばらつきが小さくなる一方、傾き-3の直線上にのるlog(H)の範囲が狭くなることが分かっている。

【0031】
ところで、図8は、図4で得られた自然数k=1の場合における応力負荷前(0MPa)の、磁界強度Hに対する帯磁率χcの対数log(χc)に基づいてlog(H)に対するlog(χc)の関係を求めて示すとともに、実験値から推定される(1)式の関係を示す帯磁率χcについてのlog(H)に対するlog(χc)の関係を示す説明図である。ここでは、実験値から上記(1)式を想定して得られる帯磁率χcについては直線L1で示し、また、自然数k=1の場合における応力負荷前(0MPa)の帯磁率χcについては、●(黒丸)でプロットしている。

【0032】
また、図9は、図5で得られた自然数k=1の場合における応力負荷476MPaの、磁界強度Hに対する帯磁率χcの対数log(χc)に基づいてlog(H)に対するlog(χc)の関係を求めて示すとともに、実験値から推定される(1)式の関係を示す帯磁率χcについてのlog(H)に対するlog(χc)の関係を示す説明図である。ここでは、実験値から上記(1)式を想定して得られる帯磁率χcについて直線L2で示し、また、自然数k=1の場合における応力負荷476MPaの帯磁率χcについて●(黒丸)でプロットしている。

【0033】
そして、図10は、図6で得られた自然数k=1および自然数k=5の場合における応力負荷前(0MPa)の、磁界強度Hに対する帯磁率χcの対数log(χc)に基づいてlog(H)に対するlog(χc)の関係を求めて示している。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=5については△(三角)でそれぞれプロットしている。またここでは、自然数k=5について、傾きが-3の直線であって、その直線上に△(三角)でプロットした点が最も多くのるような直線L3を示している。

【0034】
さらに図11は、図7で得られた自然数k=1および自然数k=5の場合における応力負荷476MPaの、磁界強度Hに対する帯磁率χcの対数log(χc)に基づいてlog(H)に対するlog(χc)の関係を求めて示している。なお、自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=5については□(四角)でそれぞれプロットしている。またここでは、自然数k=5について、傾きが-3の直線であって、その直線上に□(四角)でプロットした点が最も多くのるような直線L4を示している。

【0035】
従って、上記図10および図11では自然数k=5以外の自然数kの値については示していないが、この実施例の非破壊検査方法では、図10および図11に示す自然数k=5のときのlog(H)に対するlog(χc)の値が、傾き-3の直線からのばらつきが最も小さくなると共に、傾き-3の直線にのるlog(H)の範囲が最も広くなった。従って、自然数k=5における磁界強度Hnと帯磁率χcとの関係を対数目盛りで示した図10および図11に基づいて、応力負荷を加える前(0MPa)については図10に示す直線L3から帯磁率係数cを求めることができ、一方、応力負荷476MPaを加えた時については、図11に示す直線L4からそれぞれ帯磁率係数cを求めることができる。

【0036】
さらに、応力負荷476MPa以外の複数の応力負荷について、上記した非破壊検査方法により同様にして帯磁率係数cを求めることにより、先に示した図1のような、変形応力(応力負荷)に対応する帯磁率係数cの関係が得られる。また、ここでは、比較のため、自然数k=1および自然数k=3とした場合についても示している。なお、ここでの自然数k=1については●(黒丸)で、自然数k=3については□(四角)で、自然数k=5については△(三角)でそれぞれ示している。また、ここでは、それぞれの自然数kの値についてプロットした点から得られる直線を、自然数k=1については実線で、自然数k=3については一点鎖線で、自然数k=5については破線でそれぞれ示している。

【0037】
この図1によれば、各直線の傾きによって示されるように、自然数k=1、自然数k=3および自然数k=5のいずれの場合の直線についても、変形応力の増加に対して帯磁率係数cが増加していることが分かる。しかも、この実施例の非破壊検査方法による結果(自然数k=3および自然数k=5)の方が従来の数値解析と同様である自然数k=1よりも直線の勾配が大きくなっていることが分かる。従って、従来の方法と同様の方法(自然数k=1)により得られた結果よりも、この実施例の方法により得られた結果の方が、同一範囲内の変形応力に対応する帯磁率係数cが広くなっていることが分かる。

【0038】
このことから、帯磁率係数cを用いて経年劣化を調べる際の感度は、従来の数値解析と同様の方法により求めた帯磁率係数cよりもこの実施例の非破壊検査方法により得られた帯磁率係数cを用いた方が高くなる。また、この実施例の非破壊検査方法により求めた帯磁率係数cにおいては、自然数k=3の場合より自然数k=5の場合の方がさらに感度が高くなるので、自然数k=5の時の帯磁率係数cを用いて強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査を行なうことで、より精度良く測定することができる。

【0039】
従って、この実施例の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法では、強磁性構造材を対象として測定した、磁界強度Hと磁化Mとで表されるヒステリシス磁化曲線に基づき、ヒステリシス磁化曲線を複数に分割し、各分割点におけるその曲線の勾配を、任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配χnkによって求めている。そして、かかる作業を複数種類の自然数kの値について行い、各自然数kの値に関し、全ての分割点について求めた勾配からχnk、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む関係式である以下に示す(1)式
c=χc・H3 ・・・(1)
への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得るとともに、その最適値における帯磁率χcから帯磁率係数cを求めて、その帯磁率係数cに基づいて、測定対象である強磁性構造材の経年劣化の程度を非破壊検査している。

【0040】
このことから、この実施例で上記操作により得られる自然数kの最適値における帯磁率は、分割されたヒステリシス磁化曲線の全ての分割点について求めた勾配χnkから、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む上記(1)式の関係式への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得ている。このことから、その最適値における帯磁率χcは、かかる関係式をより正確に満たすような帯磁率として得ることができる。

【0041】
それゆえ、この実施例の方法によれば、磁界強度H,帯磁率χcおよび強磁性構造材の経年劣化の程度を表す帯磁率係数cを含む上記(1)式の関係式への収束の程度を調べて最も良く収束する自然数kの値を最適値として得ることにより、帯磁率からバルクハウゼンノイズの影響による帯磁率の変化分を簡易な方法により容易に取り除くことができ、先に述べた関係式をより正確に満たすような帯磁率χcを容易に求めることができる。そして、その帯磁率から帯磁率係数cを求めることにより、真の帯磁率係数cにより近い帯磁率係数cを容易に求めることができ、その帯磁率係数cに基づいて、強磁性構造材やそれを用いた強磁性構造体の、劣化前の初期の応力と経年劣化後の実質的な応力とを定量的に求めてそれらを比較することにより、強磁性構造材やそれを用いた強磁性構造体の経年劣化をより精度良く非破壊的に捕らえることができる。

【0042】
しかも、この実施例の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法は、ヒステリシス磁化曲線を分割した時のn番目の分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn,Mnとするとともに、そのn番目の分割点から前記自然数k個離れた分割点における磁界強度Hおよび磁化Mの値をそれぞれHn+k,Mn+kとして、以下に示す(2)式
χnk=(Mn+k-Mn)/(Hn+k-Hn) ・・・(2)
から、前記任意の分割点とその分割点から自然数k個離れた隣り合わない分割点との間を結ぶ直線の勾配χnkを求めている。

【0043】
従って、上記(1)式から求められる帯磁率係数cの値を求めるに際して、自然数kの値をパラメータとして、解析の対象となるヒステリシス磁化曲線における磁界強度Hおよび磁化MについてHn,Mn,Hn+k,Mn+kを上記(2)式に代入して帯磁率χnkを求め、その求めた帯磁率χnkの値の結果から、(1)式の関係へ最も良く収束する自然数kの最適値における帯磁率χnkを帯磁率χcとして具体的に決定することができる。

【0044】
従って、ヒステリシス磁化曲線から、(1)式c=χc・H3が成り立つような帯磁率χcから得られる真の帯磁率係数c*の値に近い帯磁率係数cを容易に求めることができる。そして、かかる帯磁率係数から、強磁性構造材やそれを用いた強磁性構造体の、劣化前の初期の応力と経年劣化後の実質的な応力とを定量的に求めてそれらを比較することにより、強磁性構造材やそれを用いた強磁性構造体の経年劣化をより精度良く非破壊的に捕らえることができる。

【0045】
また、この実施例の強磁性構造材の経年劣化の非破壊検査方法では、自然数kの最適値が、上記(2)式χnk=(Mn+k-Mn)/(Hn+k-Hn)により求められる勾配χnkの、上記(1)式c=χc・H3を変形して得られる以下に示す(3)式log(χc)=log(c)-3log(H)で示される関係式からの誤差が最小の時の値として得られる。

【0046】
これにより、図8~図11に示すように、(1)式の関係を示す帯磁率χcに最も近い値を示す自然数kを、(3)式で示される直線からの値のばらつきが最も少ない自然数kの値を視覚的に容易に判断することもできる。

【0047】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記実施例の非破壊検査方法と同様の方法により帯磁率係数cを求める処理を行なうようにプログラムを構成して一連の工程をコンピュータにより処理することもできる。また、上記実施例の非破壊検査方法によって経年劣化の測定を行なう経年劣化測定装置を構成することもできる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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