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明細書 :腸管出血性大腸菌O157保菌牛の排菌阻止剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3353063号 (P3353063)
公開番号 特開2000-273047 (P2000-273047A)
登録日 平成14年9月27日(2002.9.27)
発行日 平成14年12月3日(2002.12.3)
公開日 平成12年10月3日(2000.10.3)
発明の名称または考案の名称 腸管出血性大腸菌O157保菌牛の排菌阻止剤
国際特許分類 A61K 35/74      
A61P 31/04      
FI A61K 35/74 A
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願平11-075053 (P1999-075053)
出願日 平成11年3月19日(1999.3.19)
審査請求日 平成11年3月19日(1999.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人 農業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】大宅 辰夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
審査官 【審査官】田村 聖子
調査した分野 A61K 35/74
特許請求の範囲 【請求項1】
ストレプトコッカス・ボビスLCB6株又はラクトバチラス・ガリナルムLCB12株を有効成分として含有することを特徴とする腸管出血性大腸菌O157保菌牛の排菌阻止剤。

【請求項2】
製剤形態が、生菌製剤であることを特徴とする請求項1記載の排菌阻止剤。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ストレプトコッカス・ボビス又はラクトバチラス・ガリナルムに属し、腸管出血性大腸菌O157(以下、「大腸菌O157」という)保菌牛に対し排菌阻止効果を持つ微生物を有効成分として含有することを特徴とする大腸菌O157保菌牛の排菌阻止剤に関する。

【0002】
【従来の技術】動物医薬品検査所が公開している動物用医薬品データベース(http://www.nval.go.jp/yakkou/YAK056.html)によると、家畜の単純性下痢の予防・治療、第1胃異常発酵の治療、整腸効果を得ることを目的として、乳酸菌(ラクトバチラス属)、乳酸産生性芽胞菌(クロストリジウム属)、バチラス属、腸球菌(ストレプトコッカス属)、酵母などを利用した家畜用の生菌製剤が市販されている。また、Fuller著(1992)、Probiotics、Chapman & Hall(ケンブリッジ)、光岡知足編(1990)、腸内細菌学、朝倉書店などにも種々の微生物を利用した家畜用生菌製剤に関する記述がある。

【0003】
しかし、以上の成書及びデーターベースには、大腸菌O157を保菌している牛の排菌の阻止を目的として、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)やラクトバチラス・ガリナルム(Lactobacillus gallinarum)に属する微生物を利用したという報告はない。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】公衆衛生上の大きな社会問題ともなっている大腸菌O157によるヒトの食中毒の直接または間接の感染源である保菌牛からの排菌を抑制あるいは阻止できれば、ヒトが大腸菌O157に感染する危険性を減少させることが可能となる。本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、大腸菌O157保菌牛からの排菌を抑制する手段を提供することを目的とする。

【0005】
【課題を解決するための手段】国内の調査によると、野外で飼養されている牛の大腸菌O157の保菌率は0.62%、と畜場搬入牛の保菌率は1.4 %、食肉汚染率は0.3 %である(1996年、厚生省および農水省の調査)。米国での調査では牛の保菌率は2.8 %と報告され、成牛の保菌率は子牛に比べて有意に低いという[Faith等(1996)、Applied and Environmental Microbiology、1519~1525頁、Hancock等(1994)、Epidemiology and Infection、199~207頁、Wells等(1991)、Journal of Clinical Microbiology、985~989頁]。また、Cray等(1995)、Applied and Environmental Microbiology、1586~1590頁によると、牛を子牛と成牛に分け、大腸菌O157を実験的に感染させ、その排菌経過を調査したところ、成牛は比較的早期に排菌が停止する個体が多いのに比べ、子牛は長期にわたり排菌を続けたという。

【0006】
本発明者は、このような子牛と成牛との排菌の違いが成牛の腸管に存在する大腸菌O157の定着を阻止する機能を持つ有用菌の存在によるものと推測し、かかる観点から牛の直腸便由来の細菌の選抜を行った結果、排菌抑制効果を持つ菌株の単離に成功し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、ストレプトコッカス・ボビス又はラクトバチラス・ガリナルムに属し、大腸菌O157保菌牛に対し排菌阻止効果を持つ微生物を有効成分として含有することを特徴とする大腸菌O157保菌牛の排菌阻止剤である。

【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の排菌阻止剤は、ストレプトコッカス・ボビス又はラクトバチラス・ガリナルムに属し、大腸菌O157保菌牛に対し排菌阻止効果を持つ微生物を有効成分として含有することを特徴とするものである。ここで、「大腸菌O157保菌牛に対し排菌阻止効果を持つ微生物」とは、大腸菌O157保菌牛に投与することによりその牛の排菌量を減少させる効果を持つ微生物を意味する。

【0008】
本発明に使用する微生物としては、ストレプトコッカス・ボビス又はラクトバチラス・ガリナルムに属し、大腸菌O157保菌牛に対し排菌阻止効果を有する限り、特に限定されないが、ストレプトコッカス・ボビスLCB6株(以下、単に「LCB6株」という)又はラクトバチラス・ガリナルムLCB12株(以下、単に「LCB12株」という)を使用するのが好ましい。

【0009】
LCB6株の性状は以下の通りである。
(1)一般的性状:グラム陽性短桿菌、好気発育陽性、15℃発育陰性、45℃発育陽性、乳酸のタイプL、ガス産生陰性、β溶血性陰性(以上は、一般的な細菌学的手法によって得られた成績)
(2)その他の生化学的性状:アセトイン産生陽性、馬尿酸加水分解陰性、エスクリン陽性、ピロリドニルアリルアミダーゼ陰性、α-ガラクトシダーゼ陽性、β-グルクロニダーゼ陰性、β-ガラクトシダーゼ陽性、アルカリフォスファダーゼ陰性、ロイシンアリルアミダーゼ陽性、アルギニンジヒドロラーゼ陰性、β溶血性陰性、糖の資化性;D-リボース陰性、L-アラビノース陰性、D-マンニトール陰性、D-ソルビトール陰性、ラクトース陽性、D-トレハロース陰性、イヌリン陰性、D-ラフィノース陽性、スターチ陽性、グリコーゲン陽性(以上は、日本ビオメリュー・バイテック製のアピ ストレップ20によって得られた成績)

【0010】
(3)16S rRNA塩基配列の比較:Mori等、International Journal of Systematic Bacteriology、54~57(1997)の方法に従って該菌の16S rDNAを増幅するプライマーを作製しPCRを行い、16S rRNAの5'末から300位の領域の塩基配列を決定した。EMBL/GenBankのデータベースからFASTAプログラムにより相同性の検索を行ったところ、ストレプトコッカス・ボビスとの間に99.413%の類似性が認められた(参考:エス・マケドニクス(S. macedonicus) 94.721%、エス・カプリヌス(S.caprinus) 94.910%、エス・ガロリティカス(S. gallolyticus) 91.202%、エス・ディサガラクチアエ(S. dysagalactiae) 90.909%)。

【0011】
LCB12株の性状は以下の通りである。
(1)一般的性状:グラム陽性短桿菌、好気発育陰性、15℃発育陰性、45℃発育陰性、乳酸のタイプDL、ガス産生陰性(以上は、一般的な細菌学的手法によって得られた成績)
(2)糖の資化性:グリセロール陰性、エリスリトール陰性、D-アラビノース陰性、L-アラビノース陰性、リボース陰性、D-キシロース陰性、L-キシロース陰性、アドニトール陰性、8-メチル-D-キシロサイド陰性、ガラクトース陰性、グルコース陽性、フラクトース陽性、マンノース陰性、ソルボース陰性、ラムノース陰性、ズルシトール陰性、イノシトール陰性、マンニトール陰性、ソルビトール陰性、α-メチル-D-マンノサイド陰性、α-メチル-D-グルコサイド陰性、N-アセチルグルコサミン陽性、アミグダリン陰性、アルブチン陰性、エスクリン陽性、サリシン陰性、セロビオース陽性、マルトース陽性、ラクトース陽性、メリビオース陰性、サッカロース陽性、トレハロース陽性、イヌリン陰性、メレジトース陰性、ラフィノース陰性、スターチ陰性、グリコーゲン陰性、キシリトール陰性、ゲンチオビオース陰性、D-ツラノース陰性、D-リキソース陰性、D-タガトース陰性、D-フコース陰性、L-アラビトール陰性、L-アラビトール陰性、グルコン酸陰性、2ケトグルコン酸陰性、5ケトグルコン酸陰性(以上は、日本ビオメリュー・バイテック製のアピ 50 CHおよびアピ 50 CHLによって得られた成績)

【0012】
(3)16S rRNA塩基配列の比較:Mori等(1997)、International Journal of Systematic Bacteriology、54~57頁の方法に従って該菌の16S rDNAを増幅するプライマーを作製しPCRを行い、16S rRNAの5'末から300位の領域の塩基配列を決定した。EMBL/GenBankのデータベースからFASTAプログラムにより相同性の検索を行ったところ、ラクトバチラス<HAN>・</HAN>ガリナルムとの間に99.390%の類似性が認められた(参考:エル・クリスパツス(L. crispatus) 94.340%、エル・アシドフィラス(L. acidophilus) 91.892%、エル・ヘルベチカス(L. helveticus) 90.189%、エル・アセトトレランス(L. acetotolerans) 89.888%)。

【0013】
本発明の排菌阻止剤は、培養菌体をそのまま用いてもよいが、適当な賦形剤や安定剤を加えて生菌製剤化して用いることが好ましい。使用する微生物は、成牛の糞便から採取することができるが、LCB6株及びLCB12株についてはそれぞれ工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P-17313、FERM P-17314として寄託されている(寄託日:平成11年 3月16日)。微生物の培養は、常法に従って行うことができ、たとえば、GAMブロスなどの市販の培地を使用し、温度 37℃で培養することができる。

【0014】
排菌阻止剤中に含まれる菌体の量は、製剤形態に応じて適宜変更することができるが、生菌製剤として使用する場合は、1010cfu/gとするのが好ましい。大腸菌O157保菌牛への投与量は、排菌阻止剤中の菌体濃度などに応じて適宜選択し得るが、1頭当たりの投与量が 1011cfuとなるようにするのが好ましい。排菌阻止剤を投与する牛は、子牛、成牛のいずれであってもよく、また、雌雄どちらであってもよい。

【0015】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕LCB6株および LCB12株の分離・同定
本発明の方法に使用する細菌 LCB6株および LCB12株は、例えば以下のようにして分離・同定することができる。

【0016】
(1)LCB6株および LCB12株の分離
約3才令の成牛3頭(全て♂)、約4ヶ月令の子牛3頭(♀2頭、♂1頭)の直腸便を採取し、腸管感染研究会編(1973),感染モデルの組み方,171~173頁(近代出版)記載の希釈液(A)(リン酸一カリウム 4.5 g ,リン酸二ナトリウム 6.0 g ,L-システイン塩酸塩 0.5 g ,トウィーン80 0.5 g ,寒天 1.0 gおよび精製水1,000 ml)で段階希釈した後、これをBL寒天培地(栄研化学)に接種した。嫌気性条件下で37℃、3日間培養後、発育した集落をその大きさ、色調および酸産生による培地の変色で大別した上で単離するとともに、成牛、子牛毎に整理した。この中から、(i) 成牛の直腸内で菌数も多く優勢であるが、子牛の直腸内では菌数が少ないか、検出されない菌であること、(ii)人工培地における発育が良好であること、(iii) 酸産生が旺盛であること、を条件として検索し、成牛の糞便から分離された2種の細菌を得て、これらをそれぞれLCB6株およびLCB12株とした。

【0017】
(2)LCB6株およびLCB12株の同定
一般的に用いられている細菌学的手法および市販の同定キット、アピストレップ 20、アピ 50 CHおよびアピ 50 CHL(日本ビオメリュー・バイテック株式会社)を用いて、上記 LCB6株および LCB12株の形態学的性状および生化学的性状を調べ、また、遺伝子レベルでの菌種の同定に有用とされている16S rRNAの塩基配列の相同性比較を行った。この結果、LCB6株およびLCB12株の形態学的性状等は前述した通りのものであった。

【0018】
前述のLCB6株の形態学的性状等をもとに、アピ ストレップ20プロファイルインデックス(日本ビオメリュー・バイテック)およびColman(1990)、Topley &Wilson's Principles of Bacteriology, Virology and Immunity volume 2 Systematic Bacteriology、120~159頁(Edward Arnold、ロンドン)を参照した結果、この菌株はストレプトコッカス・ボビスと同定された。

【0019】
また、前述のLCB12株の形態学的性状等をもとに、Fujisawaら(1992)、International Journal of Systematic Bacteriology、487~491頁およびアピ50 CHLプロファイルインデックス(日本ビオメリュー・バイテック)を参照した結果、この菌株はラクトバチラス・ガリナルムと同定された。

【0020】
〔実施例2〕LCB6株および LCB12株を培養した新鮮培養菌液の経口投与による排菌阻止試験
(1)大腸菌O157攻撃菌株の調製
大腸菌O157 MN157株からナリジクス酸およびリファンピシン両薬剤に対する耐性株を選択誘導し、これを経口感染攻撃菌株とした(以下、この攻撃菌株を単に「大腸菌MN157NR」という)。

【0021】
(2)実験感染
試験牛として、210日齢の黒毛和種(♀、牛 No.1)および同じく180日齢の黒毛和種(♀、牛 No.2)各1頭を使用した。牛 No.1には1010.62 cfu、牛 No.2には1010.49 cfuの大腸菌MN157NR株の新鮮培養菌液を経口的に投与し、実験感染を行った。牛 No.1、No.2において、ともに実験感染1日目から大腸菌MN157NRの排菌が観察され、その後も排菌は継続した。

【0022】
(3)排菌量の測定
排菌量の測定は以下の方法で実施した。
〔排菌量の測定方法〕試験牛の直腸便を採取後、希釈液(A)(リン酸一カリウム 4.5 g ,リン酸二ナトリウム 6.0 g ,L-システイン塩酸塩 0.5 g ,トウィーン80 0.5 g ,寒天 1.0 gおよび精製水1000 ml)で10倍段階希釈列を作製した。ナリジクス酸およびリファンピシンをそれぞれ最終濃度 20μg/mlまで添加したソルビトール・マッコンキー寒天培地(栄研化学、以下、選択平板培地と記す)で定量培養を行い、大腸菌MN157NRの 10-5、10-3、10-1希釈物を選択平板培地1枚あたり各0.1 ml、10-1希釈物各 2 mlを5枚の選択平板培地に接種した。この方法での検出感度は、糞便1 gあたり1 cfuである。

【0023】
排菌量が糞便1gあたり1cfu未満の場合には、MPN(Most Probable Number)法5本法[倉田ら著(1977)、医薬品・化粧品の微生物試験法、300~305頁(講談社)]を応用した。すなわち、糞便10 g、1 g 、0.1 gを各々100 ml、10 ml、10 mlのノボビオシン加mEC培地(栄研化学)に加えたものをそれぞれ5組作製し、ノボビオシン加mEC培地で37℃、18時間増菌培養後、その 0.1 ml を選択平板培地に接種し、大腸菌MN157NRの発育が確認されたノボビオシン加mEC培地の本数からMPN値を換算した。本MPN法での大腸菌MN157NRの検出感度は2 cfu/糞便100gである。

【0024】
(4)LCB6株および LCB12株の新鮮培養菌液の調製
LCB6株および LCB12株両菌株を、GAMブロス(日水製薬)中で37℃18時間振盪培養し、各々108 cfu/ml程度の菌液を調製した。試験牛の大腸菌MN157NR排菌開始後短期間および長期間での排菌阻止効果を比較する目的で、以下の試験を行った。

【0025】
(5)大腸菌MN157NRの排菌阻止試験
牛 No.1には、上記(4)で調製した LCB6株および LCB12株の新鮮培養菌液各 250 ml(各1011 cfu)を混合し、実験感染後6日目から3日間、1日1回牛用経口カテーテルを用いて経口投与した。投与開始後1日目(実験感染後7日目)には大腸菌MN157NRの排菌量が著しく減少し、3日目以降は排菌陰性(すなわち、検出されない)となった。

【0026】
牛 No.2には、牛 No.1と同様に LCB6株および LCB12株の新鮮培養菌液各2.5 ml(各109 cfu)を混合し、実験感染後28日目から3日間、1日1回牛用経口カテーテルを用いて経口投与したが、大腸菌MN157NR排菌量は投与期間中のみ一時的に減少したにとどまった。このため、引き続いて実験感染後35日目から3日間同じく LCB6株および LCB12株の新鮮培養菌液各1011 cfuを毎日1回経口投与したところ、投与開始後1日目には大腸菌MN157NRの排菌量が著しく減少し、3日目以降は排菌陰性となった。

【0027】
これらの結果から、LCB6株および LCB12株の新鮮培養菌液を保菌牛1頭あたり各 2.5 ml(各 109 cfu)投与した場合では、排菌は一時的に減少するだけであるが、保菌牛1頭あたり各 250 ml(1011 cfu)程度の LCB6株および LCB12株を投与することで大腸菌MN157NRの排菌は完全に阻止されることが判明した。図1に実施例2の排菌阻止試験の結果を示す。

【0028】
〔実施例3〕生菌製剤としての LCB6株および LCB12株の経口投与による排菌阻止試験
実施例2の成績を元に、大腸菌O157の排菌阻止効果が認められた LCB6株および LCB12株の牛への投与をより簡単に行うことを目的として、両菌を粉末化した生菌製剤を用いての排菌阻止試験を実施した。排菌量の測定手法としては、MPN法を3本法(検出感度 3 cfu/100 g)に変更した以外は実施例2と同様の手法を用いた。

【0029】
(1)生菌製剤の調製
LCB6株および LCB12株の生菌製剤の調製は、カルピス株式会社に依頼した。調製法の概要は以下のとおりである。LCB6株、LCB12株を各々MRSブロス(ゼラチンのパンクレアチン消化物 10.0 g、牛肉エキス 8.0 g、酵母エキス 4.0 g、ブドウ糖 20.0 g、リン酸一水素カリウム 2.0 g、ポリソルベート80 1.0 g、酢酸ナトリウム 5.0 g、クエン酸アンモニウム 2.0 g、硫酸マグネシウム 0.2 g、硫酸マンガン 0.05 g および精製水 1,000 ml )に加えて2日間37℃で培養した後、5,000 g 遠心分離により濃縮した。これを凍結乾燥後粉末化し、賦形・安定化剤としてデキストリンを添加して生菌製剤とした。該生菌製剤中の菌量は LCB6株および LCB12株ともに製剤粉末1gあたり1010 cfuに調整した。本剤を使用直前まで4℃以下で保存する。

【0030】
(2)大腸菌MN157NRの排菌阻止試験
試験牛として、約4ヶ月令のホルスタイン種8頭 (牛 No.1~8:No.1,6,7,8は♀、No.2,3,4,5は♂)を使用した。各試験牛に、実施例2(1)と同様にして培養調製した大腸菌MN157NRを牛1頭あたり 1010.11 cfu 経口投与して実験感染させた。

【0031】
全ての試験牛で実験感染1日目から大腸菌MN157NRの排菌が観察され、その後も排菌が継続した。供試8頭中4頭(牛 No.5~8)は実験感染後7日目には排菌陰性となったが、他の試験牛4頭(牛 No.1~4)では実験感染後7日目にも依然として102~105 cfu/gの排菌が認められたため、これら4頭に実験感染後7日目から13日目までの7日間、上記実施例2(1)で調製した LCB6株および LCB12株の生菌製剤を牛1頭あたり各10 g(各1011 cfu)を朝夕2回、濃厚飼料とともに経口的に給与した。

【0032】
定期的に直腸便を採取し、生菌製剤による排菌阻止効果を検討した。生菌製剤投与開始後、大腸菌MN157NR排菌量は次第に減少し、実験感染後14日目には、4頭中3頭(牛 No.1,3,4)で排菌陰性となった。しかし、残り1頭(牛 No.2)は43~500 個/糞便100 g 程度の微量の菌排泄を続けたため、実験感染後17日目から23日目の7日間、全4頭(牛 No.1~4)に再度生菌製剤を投与したところ、実験感染後28日目には、4頭すべての糞便で排菌陰性となった。その後3週間測定を続けたが、再排菌は認められなかった。

【0033】
これらの結果により、LCB6株および LCB12株を生菌製剤としたものを、飼料とともに牛に連続的に投与することによっても、実施例2と同様の大腸菌MN157NRの排菌阻止効果が確認された。図2に実施例3の排菌阻止試験の結果を示す。実施例2および実施例3の結果から、成牛の糞便由来の LCB6株および LCB12株を、大腸菌O157保菌牛1頭あたり 1011 cfu経口的に連続投与することによって、大腸菌O157の排菌は完全に阻止されることが明らかとなった。

【0034】
【発明の効果】本発明によれば、大腸菌O157によるヒトの食中毒の直接または間接の感染源である保菌牛からの排菌を抑制または阻止できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1