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明細書 :動物及び植物病原菌由来毒素の解毒剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2997774号 (P2997774)
登録日 平成11年11月5日(1999.11.5)
発行日 平成12年1月11日(2000.1.11)
発明の名称または考案の名称 動物及び植物病原菌由来毒素の解毒剤
国際特許分類 C12N  1/20      
A61P 39/02      
A61K 35/74      
C12R  1:01      
FI C12N 1/20 E
C12N 1/20
A61K 31/00
A61K 35/74
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願平10-219245 (P1998-219245)
出願日 平成10年8月3日(1998.8.3)
審査請求日 平成10年8月3日(1998.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391030284
【氏名又は名称】農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】塚本 貴敬
【氏名】白田 昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
審査官 【審査官】六笠 紀子
調査した分野 C12N 1/00 - 7/08
A61K 35/00 - 35/76
要約 【解決手段】 デトラシンバクター属、スフィンゴバクテリウム属、バチルス属、若しくはアシネトバクター属に属し、動物病原菌若しくは植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物、及び/又はその培養物を有効成分として含有することを特徴とする、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素の解毒剤である。
【効果】 動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を効果的に解毒できる解毒剤が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
デトラシンバクター属、スフィンゴバクテリウム属、バチルス属、若しくはアシネトバクター属に属し、シュードモナス・トラシーが生産する毒素を解毒する作用を有する微生物又はその培養物を有効成分として含有することを特徴とする、シュードモナス・トラシーが生産する毒素の解毒剤。

【請求項2】
前記微生物が、デトラシンバクター・ツカモトアエ、デトラシンバクター・シラタエ、デトラシンバクター・ムラタエ、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラム、又はバチルス・パミルスに属し、シュードモナス・トラシーが生産する毒素を解毒する作用を有する微生物であることを特徴とする、請求項1記載の解毒剤。

【請求項3】
前記微生物が、デトラシンバクター・ツカモトアエOM-F11株(FERM P-16772)、デトラシンバクター・シラタエOM-D5株(FERM P-16769)、デトラシンバクター・ムラタエCM-14株(FERM P-16767)、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株(FERM P-16768)、スフィンゴバクテリウム sp.OM-E81株(FERM P-16770)、バチルス・パミルスOM-F6株(FERM P-16771)、又はアシネトバクター sp. OM-H10株(FERM P-16773)であることを特徴とする、請求項1記載の解毒剤。

【請求項4】
シュードモナス・トラシーが生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・ツカモトアエ。

【請求項5】
シュードモナス・トラシーが生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・シラタエ。

【請求項6】
シュードモナス・トラシーが生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・ムラタエ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物及び/又はその培養物を有効成分とする動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素の解毒剤、並びに動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物に関する。

【0002】
【従来の技術】医学及び植物病理学において、細菌感染症をどのように予防し、治療するかは、大きな命題である。一般に、動物及び植物を問わず、細菌感染症には、抗生物質の投与により病原菌そのものの増殖を押さえる治療が行われているが、近年、メチシリン耐性ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌などの薬剤耐性菌が出現し、これらの薬剤耐性菌の出現が医学分野で大きな問題となっている。また、農業分野においても、ストレプトマイシン耐性リンゴ火傷病菌やポリオキシン耐性ナシ黒斑病菌などの薬剤耐性菌が出現し、これらの耐性菌の出現が大きな問題となっている。

【0003】
細菌感染症は、細菌が生産する毒素がその主な病因となっている場合が多く、近年注目されている例としては、病原性大腸菌O-157が生産するシガトキシンにより引き起こされる腸管出血が挙げられ、この細菌感染症により、多くの人命が失われている。このような背景の下、薬剤耐性菌を出現させにくく、病原菌が生産する毒素を効果的に解毒できる解毒剤の開発が切望されている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、薬剤耐性菌が出現しにくく、病原菌が生産する毒素を効果的に解毒できる解毒剤を提供することを目的とする。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、野外のキノコより単離した数種の細菌が、植物病原細菌シュードモナス・トラシーが生産する毒素を効果的に解毒する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。

【0006】
(1)デトラシンバクター属、スフィンゴバクテリウム属、バチルス属、若しくはアシネトバクター属に属し、動物病原菌若しくは植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物、及び/又はその培養物を有効成分として含有することを特徴とする、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素の解毒剤。

【0007】
(2)前記微生物が、デトラシンバクター・ツカモトアエ、デトラシンバクター・シラタエ、デトラシンバクター・ムラタエ、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラム、又はバチルス・パミルスに属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物であることを特徴とする、前記(1)記載の解毒剤。

【0008】
(3)前記微生物が、デトラシンバクター・ツカモトアエOM-F11株、デトラシンバクター・シラタエOM-D5株、デトラシンバクター・ムラタエCM-14株、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株、スフィンゴバクテリウム sp. OM-E81株、バチルス・パミルスOM-F6株、又はアシネトバクター sp. OM-H10株であることを特徴とする、前記(1)記載の解毒剤。

【0009】
(4)前記病原菌が、シュードモナス・トラシーであることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の解毒剤。
(5)動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・ツカモトアエ。
(6)動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・シラタエ。
(7)動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有するデトラシンバクター・ムラタエ。

【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素の解毒剤は、デトラシンバクター属(Detolaasinbacter)、スフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium)、バチルス属(Bacillus)、若しくはアシネトバクター属(Acinetobacter)に属し、動物病原菌若しくは植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物、及び/又はその培養物を有効成分として含有することを特徴とする。

【0011】
本発明で使用する微生物は、デトラシンバクター属、スフィンゴバクテリウム属、バチルス属、又はアシネトバクター属に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物である限り特に限定されない。ここで、本発明で使用する微生物が有する「毒素を解毒する作用」には、毒素を毒性の低い物質又は毒性のない物質に変化させる作用である限り、いかなる作用も含まれる。このような作用としては、例えば、毒素を分解し、毒性の低い物質又は毒性のない物質に変化させる作用、毒素を化学的に修飾し、毒性の低い又は毒性のない物質に変化させる作用等が挙げられる。

【0012】
本発明で使用する微生物としては、以下に挙げる微生物を好ましいものとして例示できる。すなわち、デトラシンバクター属に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物としては、デトラシンバクター・ツカモトアエ(Detolaasinbacter tsukamotoae)、デトラシンバクター・シラタエ(Detolaasinbacter shiratae)、又はデトラシンバクター・ムラタエ(Detolaasinbacter muratae)に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物が好ましく、デトラシンバクター・ツカモトアエOM-F11株、デトラシンバクター・シラタエOM-D5株、又はデトラシンバクター・ムラタエCM-14株がさらに好ましい。

【0013】
また、スフィンゴバクテリウム属に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物としては、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラム(Sphingobacterium multivorum)に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物が好ましく、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株、又はスフィンゴバクテリウム sp. OM-E81株がさらに好ましい。

【0014】
また、バチルス属に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物としては、バチルス・パミルス(Bacillus pumilus)に属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物が好ましく、バチルス・パミルスOM-F6株がさらに好ましい。また、アシネトバクターに属し、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を有する微生物としては、アシネトバクター sp. OM-H10株が好ましい。

【0015】
なお、デトラシンバクター・ツカモトアエOM-F11株はFERM P-16772として、デトラシンバクター・シラタエOM-D5株はFERM P-16769として、デトラシンバクター・ムラタエCM-14株はFERM P-16767として、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株はFERM P-16768として、スフィンゴバクテリウム sp. OM-E81株はFERM P-16770として、バチルス・パミルスOM-F6株はFERM P-16771として、及びアシネトバクター sp. OM-H10株はFERM P-16773として、各々、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0016】
本発明で使用する上記微生物の培養物は、上記微生物の培養の結果直接得られるもの他、これを処理して得られるものを含む。上記微生物の培養には、特別な方法を用いる必要はなく、公知の好気性細菌と同様の方法を用いることができる。例えば、培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育促進物質を適当に含有する培地であれば、合成培地、天然培地のいずれを用いてもよいが、特に、ジャガイモ半合成培地(ジャガイモ塊茎300gの煎汁1L、Ca(NO3)2<HAN>・</HAN>4H2O:0.5g、Na2HPO4<HAN>・</HAN>12H2O:2g、ペプトン:5g、スクロース:15g、寒天:18g)が好ましい。培養に際しては、温度を15~32℃、好ましくは20~26℃に維持することが望ましい。以上のような条件下で1~2日程度培養を行うと、培地表面に十分な量のコロニーが形成される。

【0017】
上記微生物の培養の結果直接得られるものを処理する方法は、上記微生物の動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒する作用を喪失させない限り、公知のいかなる処理方法を使用してもよい。このような処理方法としては、例えば、抽出、ろ過等が挙げられる。本発明の解毒剤は、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を解毒するために使用することができる。また、本発明の解毒剤は、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素によって引き起こされる疾病を治療するために使用することもできる。

【0018】
本発明の解毒剤による解毒の対象となる毒素は、特に限定されない。本発明の解毒剤は、例えば、ボルデテラ属菌、クロストリジウム属菌(例えば、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌)等の動物病原菌、又はシュードモナス属菌(例えば、エンバクかさ枯病菌、タバコ野火病菌)、アルタナリア属菌(例えば、カンキツbrown spot病菌、ナシ黒斑病菌)等の植物病原菌が生産する毒素に対して解毒作用を発揮し得るが、特に、植物病原細菌シュードモナス・トラシーが生産する毒素に対して効果的に解毒作用を発揮し得る。

【0019】
本発明の解毒剤は、上記微生物及び/又はその培養物をそのまま直接使用してもよいが、一般には薬剤学的に許容される固体担体又は液体担体と混合し、液剤、水和剤、粉剤、粒剤、乳剤、油剤、カプセル剤等の製剤形態に調製して使用する。本発明の解毒剤の有効成分である上記微生物及び/又はその培養物の濃度は、解毒の対象となる毒素の量や種類等によって適宜決定し得るが、液剤であれば、通常、上記微生物の濃度として106~108個/mlとするのが適当である。

【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕細菌の分離
野外より採取したキノコ(ヒラタケ等)を用いて、常法に従い、キノコ組織磨砕希釈液を調製した。一方、ジャガイモ半合成培地(ジャガイモ塊茎300gの煎汁1L、Ca(NO3)2<HAN>・</HAN>4H2O0.5g、Na2HPO4<HAN>・</HAN>12H2O 2g、ペプトン5g、スクロース15g、寒天18g)を直径9cmのペトリ皿に流し込んで平板培地を調製した。

【0021】
この平板培地に上記キノコ組織磨砕希釈液を塗抹し、25℃で3日間培養すると、コロニーが形成された。平板培地上に形成されたコロニーから、常法に従って、各種細菌を単コロニーとして分離した。これにより、2200株の細菌が分離された。

【0022】
得られた2200株の分離細菌の中から、植物病原細菌シュードモナス・トラシーが生産する毒素を分解する細菌株をジャガイモ切片接種法よりスクリーニングした。その結果、シュードモナス・トラシーが生産する毒素を効率よく分解する細菌7株が得られた。これらの7菌株をOM-F11株、OM-D5株、CM-14株、OM-A8株、OM-E81株、OM-F6株及びOM-H10株と命名し、各菌株の属及び種を同定した。

【0023】
〔実施例2〕細菌の同定
(1)実施例1により分離した各菌株の16S rRNA遺伝子をAusubelらの方法(Ausubel et al.,Short Protocols In Molecular Biology 第3版 p2-11(1995))に従って調製した。各菌株の16S rRNA遺伝子について、ABI Prism BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer Japan社製)及び以下の表1に示すプライマーセットを用いてシークエンシングPCRを行った後、ABI Prism377 DNASequencer(Perkin Elmer Japan社製)によって塩基配列を決定した。

【0024】
【表1】
JP0002997774B1_000002t.gif【0025】(2)決定した各菌株の16SrRNA遺伝子の塩基配列を系統解析プログラムClustalW ver.1.7(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/mac/clustalw/clustalw.17.sea.hpx)により処理し、Thompson,J.Dらの方法(Thompson,J.D.et al.,Nucleic Acids Research,22(22):4673-4)に従って、各菌株に関する系統樹を作成した(図1~4)。これによって、各菌株の分類学的位置付けが明らかになった。

【0026】
すなわち、上記7菌株のうち、2菌株(OM-A8株及びOM-E81株)はスフィンゴバクテリウム属に属することが判明し(図2)、1菌株(OM-F6株)はバチルス属に属することが判明し(図3)、1菌株(OM-H10株)はアシネトバクター属に属することが判明した(図4)。一方、残りの3菌株(OM-F11株、OM-D5株及びCM-14株)は同一の属に属することが判明したが、既存の属には分類されず、新たな属を構成することが判明した(図1)。

【0027】
なお、系統樹は左から右へ進化の過程を示す。系統樹の途中の「枝分かれ」は、進化により新しい微生物に分化したことを示しており、各枝分かれの基部に示す数字(Bootstrap)は、その分化がどの程度の確率で生じたかを百分率で表したものである。高い確率で分かれた枝の下流を「クラスター」といい、通常、「属」単位でクラスターを形成している。

【0028】
(3)上記系統解析の結果、新属に属することが判明した3菌株(OM-F11株、OM-D5株及びCM-14株)の酵素活性能及び資化性を常法により調べた。その結果を以下の表2に示す。

【0029】
【表2】
JP0002997774B1_000003t.gif【0030】
JP0002997774B1_000004t.gif【0031】
JP0002997774B1_000005t.gif【0032】以下の表3には、上記3菌株(OM-F11株、OM-D5株及びCM-14株)及びその近縁属である細菌の、運動性、カタラーゼ活性、メナキノン及びGC含量を示す。なお、上記3菌株の近縁属である細菌の上記菌学的性質はJ.G.Holt et al.,Bergey's Manual of Determinative Bacteriology,第9版,787pp (1994);P.H.A.Sneath et al.,Bergey's Manual of Systematic Bacteriology,vol.2,1261-1434 (1986)に基づくものである。

【0033】
【表3】
JP0002997774B1_000006t.gif【0034】表3に基づいて、上記3菌株(OM-F11株、OM-D5株及びCM-14株)の運動性、カタラーゼ活性、メナキノン(細胞壁構成)及びGC含量を近縁属細菌と比較したところ、当該3菌株が新たな属を構成するという系統解析の結果を強く支持し、当該3菌株は新属を構成することが確実となった。そこで、当該新属を「デトラシンバクター属(Detolaasinbacter)」と命名した。新属「デトラシンバクター属」に属することが明らかとなった上記3菌株が、独立した種であるか否かを、当該3菌株の全染色体を用いたDNA-DNA交雑法により調べた。その結果を以下の表4に示す。

【0035】
【表4】
JP0002997774B1_000007t.gif【0036】表4に示す結果より、上記3菌株は独立した新種であることが判明した。そこで、OM-F11株をデトラシンバクター・ツカモトアエ(Detolaasinbacter tsukamotoae)、OM-D5株をデトラシンバクター・シラタエ(Detolaasinbacter shiratae)、CM-14株をデトラシンバクター・ムラタエ(Detolaasinbacter muratae)と命名した。

【0037】
なお、デトラシンバクター・ツカモトアエ OM-F11株、デトラシンバクター・シラタエ OM-D5株及びデトラシンバクター・ムラタエ CM-14株は、各々、FERM P-16772、FERM P-16769及びFERM P-16767として、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0038】
(4)上記系統解析の結果、スフィンゴバクテリウム属に属することが判明した2菌株(OM-A8株及びOM-E81株)のうちの1菌株(OM-A8株)について、API20NEグラム陰性細菌同定キット(日本ビオメリュー・バイテック社製)を使用して菌学的性質を調べ、種の同定を行った。

【0039】
その結果を以下の表5に示す。表5中には、スフィンゴバクテリウム属の公知の種であるスフィンゴバクテリウム・マルチボーラム及びスフィンゴバクテリウム・スピリチボーラムの菌学的性質(Yabuuchi et al.,International Journalof Systematic Bacteriology,33 580-598 (1983);Holmes et al., International Journal of Systematic Bacteriology,31 21-34(1981);Holmes et al., International Journal of Systematic Bacteriology,38 348-353(1988);Holmes et al.,The Prokaryotes,第2版,3620-3630(1992))を併せて示す。

【0040】
【表5】
JP0002997774B1_000008t.gif【0041】表5に示す結果より、OM-A8株は99.9%の確率でスフィンゴバクテリウム・マルチボーラムに同定されることが判明した(Excellent Identification to Sphingobacterium multivorum,%ID=99.9%,T=1.00)。なお、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株は、FERM P-16768として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0042】
上記系統解析の結果、スフィンゴバクテリウム属に属することが判明した2菌株のうちのもう一方の菌株(OM-E81株)については、種の同定は行われていない。なお、スフィンゴバクテリウム sp.OM-E81株は、FERM P-16770として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0043】
(5)上記系統解析の結果、バチルス属に属することが判明した1菌株(OM-F6株)について、API50CHBバチルス属細菌同定キット(日本ビオメリュー・バイテック社製)を使用して菌学的性質を調べ、種の同定を行った。その結果を以下の表6に示す。表6中には、バチルス属の公知の種であるバチルス・パミルス及びバチルス・サブチリスの菌学的性質(Holmes et al.,The Prokaryotes,第2版,1664-1696(1992);Nielsen et al.,FEMS Microbiology Letters,117 61-66(1994);Pretorius et al.,Journal of Applied Bacteriology,60 351-360 (1986))を併せて示す。

【0044】
【表6】
JP0002997774B1_000009t.gif【0045】表6に示す結果より、当該菌株は99.9%の確率でバチルス・パミルスに同定されることが判明した(Very Good Identification to Bacillus pumillus,%Id=99,9%,T=0.54)。なお、バチルス・パミルスOM-F6株は、FERM P-16771として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0046】
(6)上記系統解析の結果、アシネトバクター属に属することが判明した1菌株(OM-H10株)については、種の同定は行われていない。なお、アシネトバクター sp.OM-H10株は、FERM P-16773として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成10年4月20日)。

【0047】
〔実施例3〕植物病原細菌シュードモナス・トラシーが生産する毒素の解毒効果実施例1で分離され、実施例2で同定された4属7種の菌株(デトラシンバクター・ツカモトアエOM-F11株、デトラシンバクター・シラタエOM-D5株、デトラシンバクター・ムラタエCM-14株、スフィンゴバクテリウム・マルチボーラムOM-A8株、スフィンゴバクテリウム sp. OM-E81株、バチルス・パミルスOM-F6株、アシネトバクター sp. OM-H10株)の解毒作用を以下のようにして調べた。

【0048】
ジャガイモ半合成液体培地(ジャガイモ塊茎300gの煎汁1L、Ca(NO3)2<HAN>・</HAN>4H2O0.5g、Na2HPO4<HAN>・</HAN>12H2O 2g、ペプトン5g、スクロース15g)30mlを300ml容三角フラスコに入れ、この中に各菌株を接種し、2日間振盪培養(25℃、130rpm)した。各培養液と予め調製しておいたシュードモナス・トラシーの毒素液(毒素濃度40μg/ml)を等量混合し、HPLC測定法により経時的に毒素分解の程度を測定した。その結果、各菌株とも6-9時間後には、液中の毒素を完全に分解した(表7)。

【0049】
【表7】
JP0002997774B1_000010t.gif【0050】なお、表7中の数字は、毒素混合培養液中に残存する毒素量を示す(単位:μg/ml)。毒素解毒検定用に使用したシュードモナス・トラシーが生産する毒素は、約20個のアミノ酸からなるペプチドである。このような毒素活性をもつペプチドは多くの細菌が菌体外に分泌しており、宿主の組織を冒すことが多い。上記毒素解毒能を有する細菌は、これら毒性をもつ動物病原菌又は植物病原菌由来ペプチドを効率よく分解する作用を有するものと考えられる。

【0051】
【発明の効果】本発明により、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素を効果的に解毒できる解毒剤が提供される。本発明の解毒剤は、動物病原菌又は植物病原菌が生産する毒素によって引き起こされる感染症を効果的に予防又は治療できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3