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明細書 :排水の脱色方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3477187号 (P3477187)
公開番号 特開2003-103280 (P2003-103280A)
登録日 平成15年9月26日(2003.9.26)
発行日 平成15年12月10日(2003.12.10)
公開日 平成15年4月8日(2003.4.8)
発明の名称または考案の名称 排水の脱色方法および装置
国際特許分類 C02F  3/06      
C02F  3/08      
C02F  3/34      
FI C02F 3/06 ZAB
C02F 3/08
C02F 3/34
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2001-303395 (P2001-303395)
出願日 平成13年9月28日(2001.9.28)
審査請求日 平成13年10月1日(2001.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
【識別番号】500476392
【氏名又は名称】陳 昌淑
発明者または考案者 【氏名】陳 昌淑
【氏名】田中 康男
個別代理人の代理人 【識別番号】100072604、【弁理士】、【氏名又は名称】有我 軍一郎
審査官 【審査官】谷口 博
参考文献・文献 特開 平11-285377(JP,A)
特開 平6-182393(JP,A)
特開2002-346592(JP,A)
特開2001-104993(JP,A)
調査した分野 C02F 3/06
C02F 3/08
C02F 3/34
C02F 3/34 101
特許請求の範囲 【請求項1】
硫黄又は硫黄と炭酸カルシウムとの混合物を充填した反応槽に着色した排水を導入するに際し、該着色排水の流入水pHを8.0-9.0に保持し、曝気を施し、更に好気条件において硫黄酸化反応を生じさせて、該着色排水を脱色することからなる排水の脱色方法。

【請求項2】
生物処理を経た着色排水又は生物処理と硝化脱窒処理とを経た着色排水を脱色処理する請求項1に記載の排水の脱色方法。

【請求項3】
硫黄の粒状体又は硫黄と炭酸カルシウムとの混合物からなる粒状体を充填してなる反応槽と、曝気装置と、処理水のpHに応じて通気量を制御する手段と、pH調整手段と、着色した排水を該反応槽に導入する手段、及び脱色した処理水を導出する手段とを備えてなる排水の脱色装置。

【請求項4】
硫黄の粒状体又は硫黄と炭酸カルシウムを含む混合物粒状体からなる硫黄含有濾材床を反応槽内に形成してなる請求項3に記載の排水の脱色装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、用水(排水等を含む。以下「排水」と単に記す。)の脱色方法及びその装置に関し、詳しくは、好気条件下における硫黄酸化反応を利用し、排水に含有する呈色成分(有機物から生成されたフミン質由来の難分解性成分)を脱色する脱色方法および装置に関する。

【0002】
【従来の技術】高濃度有機排水である畜舎排水は、種々な処理により汚濁成分を除去しても、排水に占める有機物から生成されたフミン質由来の茶褐色を呈する着色成分を除去できない場合が多い。色の着いた処理水は視覚的に汚れて見え、放流の際に問題となることが多い。最近、排水の色についての関心が高まり、規制を設けようとする動きがあり、畜舎排水も今後は脱色処理が求められるようになる懸念がある。

【0003】
ところで、畜舎排水を始めとする着色排水の脱色技術には、凝集沈澱法(特開2000-246013号公報、同2000-153280号公報、同平7-299474号公報、同平7-299475号公報、同平11-239795号公報など)、イオン交換処理法(特開平6-304403号公報)、酸化分解法(特開2000-153286号公報、同2000-263049号公報、特開平7-299472号公報など)、紫外線照射法(特開平11-114585号公報)、過酸化水素添加紫外線照射法(特開平10-085771号公報、特開平11-090462号公報など)、膜濾過法(特開平11-010142号公報;水道公論1996年4号、86-89頁)、土壌吸着法(特開平10-156347号公報、特開平10-204446号公報など)、活性炭吸着法(特開平9—248562号公報、特開2000—026114号公報など)、オゾン注入法(特開2001-038344号公報、同2000-051876号公報、特開平8-052482号公報、特開平8-024898号公報など)等の手段がある。

【0004】
このうち、凝集沈殿法は、無機凝集剤であるアルミニウム塩類(硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩基性塩化アルミニウム)、鉄塩類(硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、塩化第2鉄、塩素化コッパラス)及び有機高分子凝集剤(陰イオン性ポリマー、陽イオン性ポリマー、非イオン性ポリマーなど)を排水に添加し、色成分を凝集させて除去する手法である。この手段は凝集性の乏しい低分子の呈色物質に対してはは適用できない。

【0005】
イオン交換処理法は、イオン交換樹脂に色度を有する不純物を吸着させて色を除去する方法である。この方法は吸着が進むと、不純物が濃縮されて濃厚な再生廃液が発生するので廃液の処理も考えなければならない。

【0006】
また、酸化分解法は、色度原因物質を酸化剤である過酸化水素、次亜塩素酸などを投入して分解又は電気分解して色度を低減させる手法である。最近では、オゾンを注入する方法も用いられている。しかしながら、これらの方法は薬品費などの処理コストが嵩み、また電力消費コストも高いという問題を抱えている。

【0007】
更に、紫外線照射法、オゾン又は過酸化水素添加紫外線照射法も広い意味では酸化分解法であり、前述の酸化分解法と同様に、薬品処理コスト、電力消費コストが高いという問題を有する。

【0008】
またさらに、処理コストが低い手段としては土壌吸着法がある。もっとも、この手段は土壌の閉塞の問題と破過した土壌の定期的な交換が必要となるという課題を抱える。

【0009】
膜濾過法の場合は、主に飲料水の色を除去するために開発された方法で、原水の色度成分の量が多いときは凝集剤を添加してから膜濾過を施すか、又は活性炭処理を追加する必要がある。

【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述の脱色方法の多くは、コストが高いこと、運転及び維持管理が煩雑であることなどが難点とされており、処理コストが低い土壌吸着法の場合は、土壌の閉塞の問題と破過した土壌の取替えの問題とが存する。

【0011】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、安価な硫黄と炭酸カルシウム(炭酸石灰)を用い、簡単な方法で着色した排水の脱色を可能ならしめることを目的とする。

【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、硫黄の粒状体又は硫黄と炭酸カルシウムとを混合した粒状体を充填した反応槽を用い、排水を曝気することにより好気条件下において、硫黄酸化菌による硫黄酸化反応を生起させ、着色物質(主にフミン質)を酸化分解して脱色を行うことを特徴とする。

【0013】
本発明は、硫黄又は硫黄と炭酸カルシウムとの混合物粒状体を充填した反応槽に着色した排水を導入するに際し、この着色排水の流入水のpHを8.0乃至9.0の範囲に保持しながら、曝気を施し、更に好気条件において硫黄酸化反応を生じさせて、脱色することを特徴としている。流入する着色排水のpHが前記の範囲にあれば、pH調整は不要である。本発明では、流入水のpHを調整すると共に、通気により硫黄酸化菌の活動を促し、反応槽内のpHを6.5乃至8.0の範囲に維持すると、硫黄酸化反応を好適に進めることができる。

【0014】
これら排水処理は、生物処理が施された状態の着色排水を脱色処理するとき、処理水の色度を低減でき、好ましい結果が得られる。排水中に窒素成分が含有されている場合にも本発明の技術は好ましく適用できる。脱色に際し使用する硫黄と炭酸カルシウムからなる混合粒状体で形成されたもの(例えばペレット状)は、アルカリ成分の放出が円滑に行われ、緩衝作用によりpHが適正に維持され、その取扱いも容易となる。

【0015】
本発明装置は、硫黄からなる粒状体又は硫黄と炭酸カルシウムとの混合物からなる粒状体が充填された反応槽と、曝気装置と、処理水のpHに応じて通気量を制御できる通気量制御手段と、酸やアルカリの添加によるpH調整装置と、着色した排水を該反応槽に導入し、また脱色処理を経た後に処理水を導出する手段とを備える。

【0016】
硫黄と炭酸カルシウムを含む混合物は粒状体として硫黄含有濾材床を形成する。そして、反応層内に固定又は流動する状態で配される。曝気装置は反応槽の下方から送気管を介して空気又は酸素を含むガスを反応槽内に導く機能を備える。通常はコンプレッサ(ブロア)と通気管とを備える。これらの通気装置は機能的にそのまま通気量制御手段となり得る。pH調整装置は排水を反応槽に導入する前方に設ける。pH調整槽には、pHメータ、酸性の液(又はアルカリ液)を滴下できる装備、攪拌機などが設けられ、自動的又は手動的に排水が所定のpHとなるように調整される。本発明の場合は、流入する着色排水の多くが中性乃至弱アルカリ性であることから通常では格別pH調整を要しない場合が多い。処理水のpHが8未満の場合、通気量制御手段及び/又はpH調整装置を使用する。

【0017】
なお、硫黄酸化に伴い処理水のpHが低下する場合があり、放流水をpH調整して放流することもあるが、この場合は流入水のpH調整の要領を応用できる。

【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明装置の実施形態を示す図面に基づき、本発明装置および方法について詳細に説明する。図1は、後述する実施例に供したカラム型の試験装置であり、模式的側断面図である。また、図5は、本発明の実施態様の1つであって、中和槽及び曝気装置を付加し、硫黄ペレットを充填した上向流式の脱色処理装置の1例を示す模式的断面図である。

【0019】
更に、図6は、本発明における他の実施態様の1つであって、pH調整槽、通気量調整装置及び曝気装置を付加し、炭酸カルシウムと硫黄との混合物ペレットを充填した脱色処理装置の1例を示す他の模式的断面図である。

【0020】
また更に、図7は、本発明の別な実施態様の1つであって、曝気装置を付加し、硫黄と炭酸カルシウムとの混合物ペレットを充填した脱色処理装置の1例を示す模式的断面図である。

【0021】
図5乃至図7の装置では、曝気手段を附加し、硫黄ペレット又は硫黄と炭酸カルシウムとの混合物ペレットを充填した脱色処理装置を用いることができる。曝気装置において間欠的曝気を施し、好気条件と嫌気条件とを繰り返すと、単に脱色ができるだけでなく、脱窒も可能となる。

【0022】
図1の試験装置において、処理槽カラム1は縦型円筒状の槽体で、底部には通気装置3が設けられ、上部には排気栓が設けられ、また処理槽カラム1の内部には硫黄又は硫黄・炭酸カルシウム混合物のペレットが含有された硫黄含有濾材床2が配される。硫黄含有濾材床2は固定床でも流動床でもよい。硫黄含有濾材床2の下方には曝気手段である円板状の通気装置3が設けられる。通気装置3は、槽外に設けられたブロアBあるいはコンプレッサ(図示せず)からの空気を通気管3aから供給され、空気は通気装置3の上面の多孔面から噴出し、硫黄含有濾材床2に空気すなわち酸素を供給し、好気層としている。

【0023】
本体1の内部には、硫黄と要すれば炭酸カルシウムとからなる硫黄含有濾材を充填した硫黄含有濾材床2が形成される。この粒状物は、例えば、特開平11-285377号公報に記載の組成物が好適に用いられるが、硫黄とアルカリ成分を含んでおれば、適宜の粒状物を充填して硫黄含有濾材床2を形成することができる。

【0024】
排水供給手段である、ポンプ4aを有する排水供給管4は、硫黄含有濾材床2の上方で本体1の底面近くの側壁に開口し、ここから排水を供給すると上向流となって処理槽1の上方に向かい、排水は硫黄酸化されつつ、槽外に流出する。

【0025】
なお、着色排水は被処理水タンク12に貯留することができ、この被処理水タンク12には被処理水の均一化のため攪拌機9が設けられているので、pH調整などを施した際や馴養状態の調整などにおいて、この攪拌機9は有効である。

【0026】
図5乃至図7は、後述する実施例の知見に基づいて、着色排水の脱色処理を施す脱色処理装置を示す。

【0027】
図5の装置について説明する。この装置は、反応槽1と硫黄(S0)濾材2を用いたものである。反応槽1は上向流式であり、反応槽の下部から着色排水を排水供給管4により導入せしめる。また、反応槽1の底部に曝気装置3が設けてあり、空気又は酸素含有ガスが通気管を経て反応槽に供給され、着色排水は曝気される。この結果、好気条件において硫黄酸化反応が進み、着色排水の脱色が起きる。硫黄濾材2の場合、脱色と共に処理水のpHが大きく低下する場合があるので、放流の前にpH調整をして処理水を放流する。なお、流入水のpHが中性又はアルカリ性の場合、処理水のpHに応じてインバータIによって、ブロアを制御し、通気量を変化させて硫黄酸化活性を適正化すると、処理水のpHを所定範囲に維持することが可能となる。

【0028】
次に、図6の装置について説明すると、この装置は、反応槽1と硫黄(S0)と炭酸カルシウムとの混合物からなる硫黄含有濾材床2とを用いている。pHメータ8を設置したpH調整槽7を設け、流入する着色排水のpHを8~9前後の所定の値に自動的に調整しながら、上向流式で反応槽1の下部から排水供給管4を介して被処理水を流入させる。ここでも、反応槽1の底部に曝気装置3が設けてあり、空気又は酸素含有ガスがコンプレッサBや通気管3を経て反応槽1に供給され、着色排水は充分曝気される。

【0029】
なお、流入する非処理水のpH調整には、酸又はアルカリ(pH調整液)の貯蔵槽10に蓄えられた酸又はアルカリをポンプで例示される酸又はアルカリ(pH調整液)供給手段11を介してpH調整槽7に送る。そこでは被処理水と酸(又はアルカリ)とが充分均一に混ざるように攪拌機9が備えられ、所定のpHが維持される。

【0030】
更に、硫黄と炭酸カルシウム又はその複合濾材を用いる際に、流入する排水のpHが適正範囲である場合には、図7のようにpH調整機能部を省くことが可能となる。また、図5乃至図7において、反応槽1は下向流又は流動床の形式を採ることも可能である。既に、述べたように、曝気を間欠曝気とすると、脱色に加えて窒素成分の硝化・脱窒も可能となる。もっとも、脱色効果は間欠曝気にすると連続曝気に比較して低減する。

【0031】
本発明の脱色処理では曝気は間欠的又は連続的に実施される。この通気(曝気)は脱色には不可欠であって、通気量として例えば少なくとも1m3/m3・minが目安となる。

【0032】
【実施例】本発明は、好気条件において排水に硫黄酸化反応を施すことにより、酸化反応に伴い着色物質(主にフミン質に由来するもの)を酸化分解せしめ、排水を脱色する方法及び装置であるが、以下に具体的な手法を示す。

【0033】
被処理水として、排水、特に色度の低減乃至高度な脱色を要する排水の代表例として畜舎排水を用いる。着色した畜舎排水の色の除去に、本発明の方法及び装置を適用した例示として畜舎排水を用いているが、勿論本発明は畜舎排水に適用が限定されるものではない。

【0034】
豚舎汚水をHRT2日とし、UASBリアクタで嫌気性処理した排水を、供給管から供給し、更に硫黄含有濾材床に硫黄酸化菌を馴養、馴致し、濾床に微生物相が安定した後、排水の脱色処理を行うものである。

【0035】
実施例1-3における分析方法は以下の通りである。着色度は着色度計(NDR-2000、日本電色工業社)を用いて分析した。着色度は15000rpm、5分間遠心分離して浮遊物質(SS)を除去した後測定した。この着色度計は「希釈法—XYZ 濃度和検量線」を使用する方法で着色度を測定する機器である。硫酸態硫黄(SO42-—S)は試料を50倍に希釈しミリポアHA フィルタで濾過してから、イオンクロマトグラフィ(IC 7000 Yokogawa社)で測定した。
<実験例1>実験は20℃で行い、全実験での流入水は畜舎排水をUASBリアクタで嫌気処理した後、水道水で2倍希釈して作成した。流入水の性状は表1に示した。植種源としては独立行政法人農業技術研究機構の畜産草地研究所(茨城県茎崎町)の畜舎排水を処理している施設の活性汚泥を用いた。表1において、TOCとは全有機炭素を、T-Nとは全窒素を、NH4+-Nとはアンモニア態窒素を、NO3--Nとは硝酸態窒素を、またNO2--Nとは亜硝酸態窒素を示す。更にT-Pとは全燐を、PO42--Pとは燐酸態燐を、またSO42--Sは硫酸態硫黄を示す。

【0036】
ここでは、脱色が硫黄酸化に付随する現象であることを確認するため、硫黄と炭酸カルシウムとを混合して造粒した濾材であるSO+CaCO3 ペレット(粒径5—20mm) に加えてCaCO3を含まない硫黄成分のみの硫黄粒(SOペレット(粒径3—5mm))及び硫黄を含まない砕石(粒径5—20mm)の3種類の濾材を各々1.4kg充填した図1のカラムを用いて表2の条件で実験を行った。

【0037】
実験の結果を表3に示す。

【0038】
【表1】
JP0003477187B2_000002t.gif【0039】表1は実験例1-3における全実験に用いた流入水の性状を示すものである。

【0040】
【表2】
JP0003477187B2_000003t.gif【0041】表2は実験例1における実験Aの実験条件を示したものである。この実験Aの実験結果を次ぎの表3に示す。

【0042】
【表3】
JP0003477187B2_000004t.gif【0043】SO ペレットでは実験前半は脱色ができなかったが、実験後半には徐々に脱色率が高くなり、最大44.7%まで達した。これにより、硫黄だけても脱色が生じることが確認された。ただし、pHは5.2まで低下した。一方、SO+CaCO3 ペレットでも脱色率は徐々に上昇し最大56.6%を示した。なお、SO42--S濃度はSO ペレットとほぼ同じ濃度まで高まったにも拘らずpHは6.8程度であり、CaCO3がpHの低下を抑制することが確認された。

【0044】
また、処理水のSO42--S濃度と脱色率との相関はSO ペレットがr2=0.918、SO+CaCO3 ペレットがr2=0.824であった。砕石でも脱色率は徐々に上昇したが、最大でも30%程度で他に比べて低かった。砕石での脱色は砕石上の生物膜による好気分解や硝化が関与した可能性が考えられる。

【0045】
SO+CaCO3 ペレットとSO ペレットの単位硫黄酸化量当りの脱色量[△着色度/△SO42--S (U/mg) ]と処理水pHとの関係から、どちらもpHが低いほど△着色度/△SO42_Sが高まる傾向が見られた。また、SO+CaCO3 ペレットがSO ペレットより△着色度/△SO42--Sが大きいことも示された(SO+CaCO3 ペレット:最大1.9、SOペレット: 最大1.2 ) (表3)。なお、1kgの硫黄が1時間当たりに除去する脱色量を表した比脱色速度(U/kg・h)はSO+CaCO3ペレットが最大22.8 U/kg・h、SOペレットが最大18.0 U/kg・hであった(表3)。これより、比脱色速度で示される硫黄酸化に由来する脱色の効率はSO+CaCO3 ペレットの方がSO ペレットより高いことが示唆された。これらの結果より、硫黄単独に較べ、SO+CaCO3ペレットの脱色性能が優れており、また中和処理も必要ないことから、装置として一層簡便なものとなると考えられる。
<実験例2>脱色性能に及ぼす曝気方式及び曝気量の影響を検討するため、実験装置として前記図1のカラムを用いて、SO+CaCO3 を1.0~1.4kg充填し、表4の条件で2系列の実験を行った。

【0046】
実験は20℃で行い、全実験での流入水は畜舎排水をUASBリアクタで嫌気処理した後水道水で2倍希釈して作成した。流入水の性状は表2に示した。植種源としては、実施例1と同様に、畜産草地研究所の畜舎排水を処理している施設の活性汚泥を用いた。流入水を3週間通水し馴養させてから、実験データの採取を開始した。実験結果を表5に示す。

【0047】
【表4】
JP0003477187B2_000005t.gif【0048】実験例2における実験B及び実験Cの試験条件を示す。実験B及び実験Cの実験結果を、次ぎの表5に掲記する。

【0049】
【表5】
JP0003477187B2_000006t.gif【0050】脱色率は曝気を行ったカラム(間欠曝気(B-1), 平均脱色率:24.6%、連続曝気(B-3), 平均脱色率:32.6%)が無曝気(嫌気)のカラム(B-2, 平均脱色率:9.3%)より高かった(表5)。SO42--S濃度が100-150mg/Lの範囲での△着色度を連続曝気と間欠曝気とで比較すると、連続曝気の方が2倍近く高かった。このことから連続曝気の方が効率的と云える。連続曝気ではSO42--S濃度によらず、ほぼ一定の△着色度を示したが、これは分解可能な着色成分がSO42--S濃度50mg/Lでも殆ど分解されるため、SO42--S濃度がこれ以上上昇しても脱色率の増加が見られなかったものと推測される。無曝気でも硫黄脱窒に由来すると考えられる硫酸の生成が見られ、脱色も確認されたが、連続曝気及び間欠曝気に比較して低いレベルであった。無曝気条件でもNOx-N濃度が高く、硫黄脱窒に伴う硫酸生成量が上昇すれば、脱色量も高まる可能性がある。そこで、この点を確認するため、亜硝酸を添加した流入水を用いて、硫酸生成と脱色の関係を把握した。

【0051】
この試験では、他の条件を実験例2と同様にして、無曝気条件下での硫黄酸化量を高めるために流入水のNO2---N濃度が約500mg/LになるようにNaNO2を添加して、間欠曝気(E-1)及び無曝気(E-2)の条件でカラム実験を行った。その結果を図2に示した。

【0052】
この図2から、無曝気条件下では硫黄酸化反応に伴う硫酸生成量が約400mg/Lまで高くなっても脱色量はあまり増加しなかった。一方、好気的硫黄酸化も生じる条件の間欠曝気の場合、硫酸生成に伴う顕著な脱色量の上昇が見られた。この結果から、嫌気条件下での脱窒に伴う硫黄酸化の場合、△着色度/△SO42--Sが好気条件下での硫黄酸化に較べて小さいと考えられる。なお、図3に示したように、無曝気、間欠曝気共に脱窒により亜硝酸は除去されていた。このことから、脱色と脱窒とを同時に行う場合には間欠曝気が適切と考えられる。

【0053】
表5に示したように、△着色度/△SO42--S及び比脱色速度も連続曝気、間欠曝気、無曝気の順で低くなり、単位硫黄酸化量当たりの脱色量及び硫黄酸化に由来する脱色の効率共に連続曝気が高かった。従って、脱色のみを目的とする場合には連続曝気を選択した方がよいと考えられる。

【0054】
そこで、適切な通気量を調べるため、各通気量における脱色性能を実験Cで検討した。全通気量において処理水のpHは7-8を呈し、通気量による差は顕著ではなかった。処理水の着色度は通気量が高いほど低くなる傾向が見られた。

【0055】
SO42--Sは前半で全通気量において約100mg/Lまで生成された。その後は通気量3.0及び5.0 m3/m3・minでは、約250mg/Lまで徐々に増加したが、0.5 及び1.0 m3/m3・minでは殆ど変化しなかった。△着色度/△SO42--Sは通気量が少ない方が多少高く、そのため比脱色速度は通気量が多い方が多少高かった(表5)。また、生成されたSO42--S量(△SO42--S)と除去された着色度(△着色度)との関係から、通気量が1.0m3/m3・minより低いと△SO42--Sが低下し、それに伴い△着色度も低下することが示された。溶存酸素(DO)の測定は行っていないが、通気量が1.0 m3/m3・min未満ではDOが硫黄酸化には不充分になると考えられる。通気量3.0及び5.0m3/m3・minの場合は、硫黄酸化量が増加しても脱色量はあまり増加しなかったが、これは分解され易い着色成分がほぼ分解され尽くしたためと考えられる。
<実験例3>脱色性能に及ぼす流入水のpHの影響を検討するため、塩酸により段階的にpHを調整した3種類の原水を用い脱色性能の比較を行った。前記図1のカラムを用いて、SO+CaCO3 ペレットを0.7kg充填し、表6の条件で実験を行った。

【0056】
実験は20℃で行い、全実験での流入水は畜舎排水をUASBリアクタで嫌気処理した後水道水で2倍希釈して作成した。流入水の性状は表2に示した。植種源としては、実施例1と同様に、畜産草地研究所の畜舎排水を処理している施設の活性汚泥を用いた。実験結果を表7に示す。

【0057】
【表6】
JP0003477187B2_000007t.gif【0058】表6は実験例3における実験Dの実験条件を示したものである。また、この実験Dの結果を表7に掲記する。

【0059】
【表7】
JP0003477187B2_000008t.gif【0060】pH調節の段階で、最大20%程度の着色度の変化があり、低いpHほど着色度も低くなった。流入水のpHを6に調節したD-1の場合、処理水のpHは実験初期に急激に低下して10日目には3.6までになった。それに対して、pH 8に調整したD-2は徐々に6.4まで低下した。pH 9に調整したD-3は実験初期には変化が小さかったが、5日以後に7.1まで低下した。△着色度は全pHで大きな差が見られなかった。一方、△SO42--S濃度は流入水pHによって大きく異なり、pH6の場合は1日目に約600mg/Lが生成され、その後はあまり変化がなかった。pH8の場合も1日目に△SO42--Sが約600mg/Lが生成されたが、その後は徐々に減少し、8日目には300mg/Lとなり安定した。これに対してpH 9の場合は1~6日目まで約100 mg/Lであったが、その後徐々に増加し、9日以降に約300 mg/Lとなった。

【0061】
比脱色速度は大きな差がなかったが、△着色度/△SO42--Sは流入水のpHが高くなると共に上昇することが確認された(表7、図4)。

【0062】
以上の結果を纏めると、流入水のpHが低いと硫黄酸化反応が促進されてSO42--Sの生成量は高くなるが、それに伴って脱色に関与しない硫黄酸化の割合が増加するために、△着色度/△SO42--Sが低くなったものと考えられる。

【0063】
また、pHが6程度の流入水の場合、処理水のpHが約4まで低くなり、処理後に中和処理が必要となるので、実用面では流入水のpHが低いことは好ましくないと言える。

【0064】
これに対し、流入水のpHが高いと硫黄酸化反応は多少抑制されるものの、△着色度/△SO42--Sは高まり、低いpHと同程度の脱色量が得られる。従って、高いpHの方が相対的に少量の硫黄消費で脱色が可能になると云える。

【0065】
前記の実験から得た知見を総合すると、硫黄酸化反応を利用して着色排水の色を除去するためには、原水のpHを8.0-9.0に保ち、連続曝気するのが良いと考えられる。

【0066】
この知見を取り込んだ硫黄充填反応槽が図5乃至図7に示されたものである。本発明の脱色処理方法及び脱色処理装置は、既述の通り実験結果を総合して、完成されたものである。

【0067】
補説すると、図5の反応槽は、硫黄(So)濾材を用いた場合の反応槽である。上向流式で反応槽の下部から流入水を導入する。また反応槽の下部に曝気装置を設けて曝気し、反応槽内の硫黄酸化反応が好気条件で行われるようにする。硫黄(So)濾材の場合、脱色と共にpH低下が大きいので放流する前、中和槽で中和してから放流する。なお、硫黄(So)のみの場合、処理水のpHと生成SO42--S量との相関がr2=0.909 であることから、流入水のpHが中性又はアルカリ性のときは、処理水のpHに応じてブロアの制御だけで、通気量の調節によって処理水のpHを調整することができ、pH調節用の液を添加しなくてよい。

【0068】
図6の反応槽は、SO+CaCO3 ペレットを用いているが、pHメータを設置したpH調節槽を設け、流入水のpHを8.0-9.0程度に自動的に調節しながら、上向流式で反応槽の下部から流入水を導入させる。曝気装置を設けて反応槽の下部から曝気するものであって、反応槽内の硫黄酸化反応が好気条件で行われる。この反応槽は、効率が優れているので少ない硫黄消費量で脱色を実施する場合に適用できる。

【0069】
図7の反応槽は、流入水のpHが適正範囲にある場合で、pH調整は不要となる。

【0070】
【発明の効果】本発明は、曝気による好気条件下おける硫黄酸化反応を利用する脱色方法及び装置であるが、硫黄と炭酸カルシウム(炭酸石灰)という比較的安価で取扱いが容易な材料を使用して、着色排水の脱色の課題を解決できる。即ち、流入水の浮遊成分を除去してから、要すれば流入水のpHを調節して導入するか、または原水をそのまま流入して、連続又は間欠曝気すれば脱色できる。本発明の対象は、フミン質由来の着色がある放流直前の排水である。即ち、畜舎排水、メタン発酵を始めとする嫌気処理後の各種産業廃水、埋め立て地の浸出水などに適用できる。
図面
【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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