TOP > 国内特許検索 > バレイショ貯蔵時の発芽抑制方法、及び該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショ > 明細書

明細書 :バレイショ貯蔵時の発芽抑制方法、及び該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3062599号 (P3062599)
登録日 平成12年5月12日(2000.5.12)
発行日 平成12年7月10日(2000.7.10)
発明の名称または考案の名称 バレイショ貯蔵時の発芽抑制方法、及び該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショ
国際特許分類 A23B  7/00      
A23L  1/216     
A23L  3/26      
FI A23B 7/00
A23L 1/216
A23L 3/26
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願平11-012684 (P1999-012684)
出願日 平成11年1月21日(1999.1.21)
審査請求日 平成11年7月7日(1999.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
【識別番号】398061740
【氏名又は名称】林 徹
【識別番号】398061739
【氏名又は名称】鈴木 節子
発明者または考案者 【氏名】林 徹
【氏名】鈴木 節子
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
審査官 【審査官】鈴木 恵理子
参考文献・文献 特開 平10-229818(JP,A)
特開 平3-103140(JP,A)
調査した分野 A23B 7/00
A23L 1/212 - 1/216
A23L 3/26
要約 【課題】 低コストで、しかも薬剤処理やガンマ線に頼ることなく、バレイショの貯蔵時の発芽を抑制して常温貯蔵することのできるバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法と、該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショとを提供することを目的とする。
【解決】 請求項1記載の本発明は、バレイショの表面に、エネルギーが100keVを超え、1MeV未満の低エネルギー電子線を照射することを特徴とするバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法と、前記請求項1記載の方法により得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショとを提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
バレイショの表面に、エネルギーが100keVを超え、1MeV未満の低エネルギー電子線を総電子線量が100~200Gyとなるように照射することを特徴とするバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法。

【請求項2】
請求項1記載の方法により得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工食品原料として広く使用されているバレイショの貯蔵時の発芽を抑制して常温貯蔵することができ、食品工業など、広範な分野において有効に利用することのできるバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法と、該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショとに関する。

【0002】
【従来の技術】加工食品原料となるバレイショは、北海道産が日本国内の約80%を占め、その収穫時期も8月から10月の間に集中している。生鮮農産物であるバレイショを年間を通じて安定的に供給するためには、バレイショの貯蔵時の発芽を抑制し、品質を保持する必要がある。

【0003】
バレイショの貯蔵方法として、2~3℃の低温で冷蔵を行い、休眠明け後も発芽を抑制して品質を保持することも可能であるが、電気冷房装置を使用し、貯蔵期間を通じて低温条件を維持しなければならず、そのためには莫大なコストがかかるという問題がある。

【0004】
また、欧米では、発芽抑制剤による処理やガンマ線による処理が一般に行われており、バレイショは自発休眠が明けた後も比較的高い温度での貯蔵が可能となっている。

【0005】
しかしながら、我が国では、発芽抑制剤の使用には制約があり、ガンマ線による処理にも消費者の根強い反発がある。また、ガンマ線処理施設では、遮蔽設備の建設やコバルト線源の補充に莫大な費用がかかるため、国内の照射施設は僅か1つにとどまっている。このため、農協等が管理する北海道産の貯蔵バレイショは、3月頃迄にほぼ全量が出荷され、その後の出荷は極少量となるため、周年供給の要望には応えられないのが現状である。従って、低コストで、しかも薬剤処理やガンマ線に頼らないバレイショの処理技術の開発が要望されている。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、電子線の発芽抑制効果と電子の透過力がエネルギーに依存することに着目し、従来のガンマ線照射に代わる処理技術を目指して検討を進めた結果、本発明を完成するに到ったものである。

【0007】
すなわち、本発明は、低コストで、しかも薬剤処理やガンマ線に頼らないバレイショの処理技術の開発を目的とするものであって、加工食品原料として広く使用されているバレイショの貯蔵時の発芽を抑制して常温貯蔵することができ、食品工業など、広範な分野において有効に利用することのできるバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法と、該方法によって得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショとを提供することを目的とするものである。

【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、バレイショの表面に、エネルギーが100keVを超え、1MeV未満の低エネルギー電子線を総電子線量が100~200Gyとなるように照射することを特徴とするバレイショ貯蔵時の発芽抑制方法を提供するものである。

【0009】
請求項2記載の本発明は、上記請求項1記載の方法により得られる、貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショを提供するものである。

【0010】
請求項1記載の本発明は、バレイショ貯蔵時の発芽を抑制するにあたり、バレイショの表面に、エネルギーが100keVを超え、1MeV未満の低エネルギー電子線を総電子線量が100~200Gyとなるように照射することを特徴とする。

【0011】
請求項1記載の本発明においては、バレイショの表面、より具体的にはバレイショの表層部に局在している芽の原器部分の全てに、生物的な作用をもたらすのに必要な最低のエネルギーの低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)を照射することを特徴とするものであって、これにより、バレイショ貯蔵時の発芽を抑制し、常温下での貯蔵期間の延長を行うことができる。

【0012】
現在一般に用いられている放射線には、透過力が強く食品原料深部の殺菌が可能なガンマ線(電磁波)と、電子線加速装置から得られる電子線と、X線発生装置によるX線(電磁波)とがある。このうち請求項1記載の本発明に用いる電子線は、本質的に透過力が弱いものであり、食品原料の表層部にしか到達することができないという性質を持っている。電子線源としては、スキャン形電子線照射装置とエリアビーム形電子線照射装置を用いることが好ましい。

【0013】
請求項1記載の本発明では、バレイショの表層部に存在している芽の原器部分の失活を目的としているため、低エネルギー電子線、すなわちソフトエレクトロンを使用する。請求項1記載の本発明では、エネルギーが100keVを超え、1MeV(1000keV)未満の低エネルギー電子線を照射することが必要であり、好ましくは150keV以上であって、1MeV未満、より好ましくは200keV以上であって、1MeV未満となるような低エネルギー電子線を照射する。ここで照射エネルギーが100keV以下の低エネルギー電子線であると、十分な発芽抑制効果が得られない。一方、照射エネルギーを1MeV以上のものとしても、発芽抑制効果に特に差異は見られないばかりか、必ずしもこの場合には低エネルギー電子線とは言えないことになり、コスト的に満足できないものとなってしまう。

【0014】
ところで、バレイショが受ける低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)の電子エネルギーとは、発生時の電子エネルギーそのものではない。バレイショが受ける低エネルギー電子線の電子エネルギーは、電子線発生装置における窓箔構成物質の電子阻止能や窓箔の厚さ(cm)、その比重、さらには装置出口からバレイショまでの距離などにより、発生時の電子エネルギーとは異なるものとなっている点に注意すべきである。

【0015】
なお、バレイショへの低エネルギー電子線の照射時間は、ビーム量により異なり、また、処理するバレイショの大きさや量などによっても異なるため、これらを考慮して適宜決定すれば良い。例えば、ビーム量が5~50μAの電子線発生装置を用いる場合には、1~10秒程度を目安とすれば良い。バレイショの受ける総電子線量は、100~200Gyとする。

【0016】
バレイショの発芽抑制率を高くするためには、処理する全てのバレイショへ万遍なく、しかもバレイショの全ての表面に均一に低エネルギー電子線を照射することが好ましい。そのため、バレイショを移動させつつ、その向きを変えるなどして全ての方向から(例えば90度ずつ角度を変え、上下左右の4方向から)、低エネルギー電子線を照射することが最も好ましい。さらには、バレイショに縦方向の振動を与えたり、横方向の振盪を与えたり、或いはこれらを同時に与えたりして、うまく回動させ、そのような状態で低エネルギー電子線を照射しても良い。

【0017】
以上の如き請求項1記載の本発明の方法によれば、請求項2に記載した如き、常温における貯蔵時の発芽の抑制されたバレイショが得られる。なお、本発明は、バレイショの発芽抑制に関するものであるが、必要に応じて他のものの発芽抑制に利用することも可能である。

【0018】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれによって何ら制限されるものではない。

【0019】
【実施例】試験例1
1998年北海道産のバレイショ(男爵)、各20個を頂芽を上向きに固定して、3m/min.の速度のコンベアーに載せ、ビーム量10μAにて100~1000kev(1Mev)の範囲の7種の低エネルギー電子線(バンデグラーフ型電子加速器を線源としたものであって、バレイショの受けたエネルギーである)の下を通過させた。次いで、コンベアー上でのバレイショの向きを90度ずつ回転させ、バレイショの基部、或いは両側部を上向きにし、同スピードで、合わせて4方向から低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)を当てた。このときのバレイショの受けた総電子線量は、150Gyであった。その後、上記処理を行ったバレイショを常温(20~25℃)にて遮光貯蔵し、1ヶ月貯蔵後と2ヶ月貯蔵後の発芽固体数を調べた。結果を無処理の場合の結果と共に第1表に示す。なお、供試各品目の収穫日は、1998年9月14日であり、電子線照射を行った日は、1998年10月9日であった。

【0020】
【表1】第1表[バレイショ(男爵)貯蔵中の発芽個体数の変化]
JP0003062599B1_000002t.gif【0021】第1表の結果によれば、150kev以上からバレイショの発芽抑制効果が認められ、特に300kev以上のソフトエレクトロンを当てることにより、ほぼバレイショの発芽を抑制することができることが分かる。また、それより低い200kevでも、発芽開始時期や芽の伸長の遅れが認められた。

【0022】
試験例2
1998年北海道産のバレイショ(メイクイーン)、各20個を用いたこと以外は、試験例1と同様にして低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)を当て、1ヶ月貯蔵後と2ヶ月貯蔵後の発芽固体数を調べた。結果を無処理の場合の結果と共に第2表に示す。なお、供試各品目の収穫日は、1998年9月14日であり、電子線照射を行った日は、1998年10月9日であった。

【0023】
【表2】第2表[バレイショ(メイクイーン)貯蔵中の発芽個体数の変化]
JP0003062599B1_000003t.gif【0024】第2表の結果によれば、150kev以上からバレイショの発芽抑制効果が認められ、特に250kev以上のソフトエレクトロンを当てることにより、ほぼバレイショの発芽を抑制することができることが分かる。また、それより低い150kevでも、発芽開始時期や芽の伸長の遅れが認められた。

【0025】
試験例3
北海道産のバレイショ(ホッカイコガネ)、各20個を用いたこと以外は、試験例1と同様にして低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)を当て、1ヶ月貯蔵後と2ヶ月貯蔵後の発芽固体数を調べた。結果を無処理の場合の結果と共に第3表に示す。なお、供試各品目の収穫日は、1998年9月19日であり、電子線照射を行った日は、1998年10月9日であった。

【0026】
【表3】第3表[バレイショ(ホッカイコガネ)貯蔵中の発芽個体数の変化]
JP0003062599B1_000004t.gif【0027】第3表の結果によれば、150kev以上からバレイショの発芽抑制効果が認められ、特に200kev以上のソフトエレクトロンを当てることにより、完全にバレイショの発芽を抑制することができることが分かる。また、それより低い150kevでも、発芽開始時期や芽の伸長の遅れが認められた。

【0028】
試験例4
北海道産のバレイショ(トヨシロ)、各20個を用いたこと以外は、試験例1と同様にして低エネルギー電子線(ソフトエレクトロン)を当て、1ヶ月貯蔵後と2ヶ月貯蔵後の発芽固体数を調べた。結果を無処理の場合の結果と共に第4表に示す。なお、供試各品目の収穫日は、1998年9月14日であり、電子線照射を行った日は、1998年10月9日であった。

【0029】
【表4】第4表[バレイショ(トヨシロ)貯蔵中の発芽個体数の変化]
JP0003062599B1_000005t.gif【0030】第4表の結果によれば、150kev以上からバレイショの発芽抑制効果が認められ、特に200kev以上のソフトエレクトロンを当てることにより、ほぼバレイショの発芽を抑制することができることが分かる。また、それより低い150kevでも、発芽開始時期や芽の伸長の遅れが認められた。

【0031】
【発明の効果】本発明によれば、薬剤処理やガンマ線を使用することなく安全に、加工食品原料として広く使用されているバレイショの貯蔵時の発芽を抑制して常温貯蔵することができる。しかも、本発明では、バレイショの貯蔵時の発芽抑制に必要最低限度のエネルギーの電子線を照射しており、このためバレイショに損傷を与えることなく、しかも低コストでバレイショの貯蔵時の発芽を抑制することができる。従って、本発明は、食品工業など、広範な分野において有効に利用することができる。