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明細書 :生体高分子/ポリアリルアミン複合体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3151665号 (P3151665)
公開番号 特開2000-273264 (P2000-273264A)
登録日 平成13年1月26日(2001.1.26)
発行日 平成13年4月3日(2001.4.3)
公開日 平成12年10月3日(2000.10.3)
発明の名称または考案の名称 生体高分子/ポリアリルアミン複合体およびその製造方法
国際特許分類 C08L 39/00      
C08K  5/07      
C08L 89/00      
C12N 11/00      
A61L 15/16      
A61L 27/00      
C12N  5/06      
C12Q  1/18      
FI C08L 39/00
C08K 5/07
C08L 89/00
C12N 11/00
A61L 27/00
C12Q 1/18
C12N 5/00
A61L 15/01
請求項の数または発明の数 7
全頁数 16
出願番号 特願平11-077510 (P1999-077510)
出願日 平成11年3月23日(1999.3.23)
審査請求日 平成11年3月23日(1999.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391030284
【氏名又は名称】農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】新居 孝之
【氏名】塚田 益裕
【氏名】日本 理都子
【氏名】早坂 昭二
個別代理人の代理人 【識別番号】100060025、【弁理士】、【氏名又は名称】北村 欣一 (外3名)
審査官 【審査官】佐々木 秀次
参考文献・文献 特開 平2-181628(JP,A)
特開 昭62-83885(JP,A)
特開 昭62-57562(JP,A)
調査した分野 C08L 39/00
C08K 5/07
C08L 89/00
C12N 11/00
A61L 15/16
A61L 27/00
C12N 5/06
C12Q 1/18
特許請求の範囲 【請求項1】
絹蛋白質、羊毛ケラチン、コラーゲン、クモの糸、または海性蛋白質である生体高分子と、中和処理後の、または未中和のポリアリルアミンであって、分子内に正の電荷を持つポリアリルアミンとからなる生体高分子/ポリアリルアミン複合体。

【請求項2】
記生体高分子/ポリアリルアミン複合体が細胞の付着・増殖増強機能を有するものであることを特徴とする請求項1記載の生体高分子/ポリアリルアミン複合体。

【請求項3】
請求項1または2記載の生体高分子/ポリアリルアミン複合体が、水とアルコールとの混合水溶液に、エポキシ化合物、アルデヒド、または両者の化合物を混合した水不溶化薬剤水溶液で処理され、該生体高分子とポリアリルアミン相互間に架橋結合が導入されたものであることを特徴とする水不溶化生体高分子/ポリアリルアミン体

【請求項4】
絹蛋白質、羊毛ケラチン、コラーゲン、クモの糸、または海性蛋白質である生体高分子と、中和処理後の、もしくは未中和のポリアリルアミンとを水性溶液または水性分散液状態で混合し、その後蒸発乾固せしめて、生体高分子/ポリアリルアミン複合体を得ることを特徴とすると生体高分子/ポリアリルアミン複合体の製造方法。

【請求項5】
絹タンパク質とポリアリルアミンとからなる複合体膜を、水とアルコールとの混合水溶液に、エポキシ化合物、アルデヒド、または両者の化合物を混合した水不溶化薬剤水溶液で処理し、架橋結合を導入してなる創傷被覆材。

【請求項6】
絹タンパク質とポリアリルアミンとからなる複合体膜を、水とアルコールとの混合水溶液に、エポキシ化合物、アルデヒド、または両者の化合物を混合した水不溶化薬剤水溶液で処理し、架橋結合を導入してなる、細胞の付着、増殖機能を有する細胞培養床基材。

【請求項7】
絹タンパク質とポリアリルアミンとからなる複合体膜が、水とアルコールとの混合水溶液に、エポキシ化合物、アルデヒド、または両者の化合物を混合した水不溶化薬剤水溶液で処理され、架橋結合が導入されてなる金属イオン吸着基材。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体高分子/ポリアリルアミン複合体およびその製造方法に関する。この複合体は、生化学・医学分野において種々の用途に利用できる。

【0002】
【従来の技術】ポリアリルアミンは、正の電荷を持ち、化学反応性の大きな第1級アミノ基を側鎖に含む直鎖のオレフィン系重合体であり、水によく溶け、水の中では正に荷電するものであり、さらに結晶構造的には非結晶性であり、強い吸湿性と吸水性を示すものである。ポリアリルアミンは、低pH領域で優れた水溶性となるため、ポリビニルアルコールなどのような非イオン性重合体とも均一に混合できるし、ポリエチレンイミンのようなカチオン性の水溶性重合体の水溶液とも混合できる。一連のポリアリルアミン化合物はアルカリ性pH領域で水に不溶となってしまうため、溶解性を良くするため通常は酸性溶液で保存することが多い。

【0003】
かかるポリアリルアミンは細胞の増殖を促す素材として知られており、例えば特開平2-181628号公報には、ポリアリルアミンを各種基質表面に塗布することで、耐久性に富み、また優れた生体細胞付着性および細胞培養機能を持つ細胞培養床基材を製造する方法が開示されている。この場合、ポリアリルアミン分子側鎖のアミノ基を正に荷電させたものを各種基質表面に塗布し、所期の目的を達成している。これらの基質の表面は通常負に帯電しているので、ポリアリルアミンが静電気的に基質表面にイオン結合するため、両者の間の結合は強く、ポリアリルアミンは基質表面から剥がれ難くなるものとされている。

【0004】
また、生体高分子は生体細胞を付着させ、増殖させることができることが知られている。

【0005】
ポリアリルアミンおよび生体高分子は、それぞれ、優れた生体機能を持つため、医用分野等の先端領域で付加価値の高い利用が可能であるが、所望の目的を達成し得るような任意量の生体高分子を含有するポリアリルアミン複合体であって、各成分が持つそれぞれの優れた機能を兼ね備え、またはそれぞれの単独の機能を相乗的に兼ね備えた素材はいままでに得られていなかった。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記特開平2-181628号公報に記載された各種基質としての合成重合物、ガラス、金属、細孔質濾紙の帯電程度は、基質により異なり、いずれの基質も同程度に十分に負に帯電している訳ではない。そのため、細胞培養床基質の種類によっては細胞培養床基材のポリアリルアミンと該基質との間の相互作用力に強弱の差が生じ、ポリアリルアミンの被膜が細胞培養溶液と接する過程で細胞培養床基質表面から剥がれてしまう危険性があり、実用上問題となっている。細胞培養床基質表面から剥がれず、所期の目的を達成することのできる細胞培養床基材の開発が強く望まれていた。

【0007】
また、正の電荷を持つポリアリルアミンの水溶液を蒸発乾固させることで膜状に成形することはできるが、この膜状成形物は吸湿性が高いため、大気雰囲気中に放置すると大気中の水蒸気を吸着して溶解してしまうので、大気中で安定な膜状成形物を調製することはできなかった。また、ポリアリルアミン自体は、成形性が悪く、ポリアリルアミン単独から膜状、塊状等の成形物を調製することは困難であり、またポリアリルアミンを水不溶性にするための適当な不溶化処理方法も無いため、物理的に均一な水溶性および水不溶性成形物を製造することは甚だしく困難であった。

【0008】
本発明は、生体高分子とポリアリルアミンとを水性溶液もしくは水性分散液状態で均一に混合した混合水性溶液または水性分散液を基質の上で乾燥乾固することにより、細胞の付着・増殖性に優れ、また強度等の物性にも優れ、さらに成形性の良い生体高分子/ポリアリルアミン複合体(以下、単に「複合体」と略記することもある)、およびその複合体を効率的かつ経済的に製造する方法を提供することを課題とする。

【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリアリルアミン自体の成形性や強度等の物性の欠点を改善すると共に、その機能特性を活かしてこれを細胞培養床基材に応用しようとの考えから、ポリアリルアミンと分子レベルで均一に混合でき、かつポリアリルアミンとの間に強い分子相互作用が働くことで、優れた均一な複合体となり得る第二物質の開発を行ってきた。ここで、「ポリアリルアミンと分子レベルで均一に混合できる」とは、ポリアリルアミンと第二物質とを水性溶液状態で混合し、この混合水性溶液をポリエチレン等の基質の上に拡げて蒸発乾固する過程で、水性溶液の構成成分の分子間凝集性が密となり、相分離を起こさず、ドメイン構造を取らない均一な構造を持った複合体となることを意味する。

【0010】
本発明者らは、ポリアリルアミンと第二物質とが持つそれぞれの優れた機能を兼ね備えた、またはそれぞれの単独の機能を相乗的に兼ね備えた物性を持つ複合体を得るための一手段として、第二物質として生体高分子を用い、両物質の分子間に働く分子相互作用が良好な基材に関して鋭意検討してきた。その結果、両性電解質である生体高分子と正の電荷を持つポリアリルアミンとの複合体が、強度等の優れた物性を有し、生体細胞の付着・増殖を増強する作用のあることを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0011】
本発明の生体高分子/ポリアリルアミン複合体は、生体高分子とポリアリルアミンとを水性溶液または水性分散液状態で混合し、水分を蒸発除去して乾固せしめることにより、両物質の分子間の相互作用を高め、分子間凝集状態を向上させて得られる水溶性および水不溶性複合体である。両性電解質である生体高分子と正の電荷を持つポリアリルアミン分子とを分子レベルで相互作用を持たせることにより製造できる。水不溶性複合体を調製するためには、例えば、水溶性複合体を、水とアルコールとの混合水溶液に、エポキシ化合物、アルデヒド、または両者の化合物を混合した水不溶化薬剤水溶液で処理してもよい。

【0012】
本発明の複合体を調製するために利用できる生体高分子としては、昆虫由来、例えばカイコ由来の絹蛋白質繊維から得られる絹蛋白質、羊毛ケラチン、コラーゲン、クモの糸、あるいは海性蛋白質である足糸等の蛋白質がある。これらの生体高分子は約20種類のアミノ酸から構成され、カルボキシル基等の酸性基と、アミノ基等の塩基性基とを分子内に有している両性電解質であるため、その荷電状態は、等電点を境にして大幅に変化する。すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸等の負に荷電可能な酸性アミノ酸残基、およびリジン、アルギニン、ヒスチジン等の正に荷電可能な塩基性アミノ基を含んだ両性電解質であるため、これらの生体高分子の環境pHを変えると、負あるいは正に荷電するようになる。

【0013】
本発明で用いるポリアリルアミンは、特に制限されず、中和処理したものであっても、中和処理しないものであってもよく、正の電荷を持ち、化学反応性の大きな第1級アミノ基を側鎖に含む直鎖のオレフィン系重合体であり、水によく溶け、水の中では正に荷電するものであればよい。ポリアリルアミンの分子側鎖の第1級アミノ基は、化学反応性が高いので、所望によりこの部位を化学修飾することにより多様な機能の置換基を導入することができる。

【0014】
本発明の複合体の製造方法によれば、絹蛋白質等の生体高分子とポリアリルアミンとを水性溶液または水性分散液状態で混合して、水分を蒸発することで膜状、ゲル状、粉末状または繊維状の様々な形態の複合体を製造することができる。該複合体は、細胞の付着・増殖を強化する機能を持つと共に、この複合体に医薬品、生理活性物質、抗生物質、酵素、ホルモン、生体細胞、微生物、抗原、抗菌成分、または抗菌性金属等を包括固定化できるので、これらの物質を担持する担体としても利用できる。

【0015】
ポリアリルアミン塩酸塩(PAA-HCl:日東紡績(株)製、商品名)は、これを試験魚(コイ)に与えた評価では蓄積性の毒性は認められず、変異原生もなく、また、マウスによる経口急性毒性(LD50)は1600mg/kg、ヒメダカを用いた魚毒性は48時間のTLmが0.50ppmであるので、毒性は極めて軽微である(原田亨、高分子加工、33巻、10号、21(1984))。また、絹蛋白質、羊毛ケラチン等は天然生体高分子であり、いずれの素材も生体組織には毒性を示さない。そのため、生体高分子/ポリアリルアミン複合体は生体組織に毒性を及ぼさないものと考えられる。

【0016】
【発明の実施の形態】本発明で用いることのできる生体高分子としては上記したようなものがある。例えば、絹蛋白質繊維としては、家蚕(Bombyx mori)幼虫から得られる家蚕絹糸の他に、野蚕に属する柞蚕、天蚕、エリ蚕、ムガ蚕、シンジュ蚕の幼虫から得られる野蚕絹糸またはこれらの繊維製品の何れであっても使用できる。また、絹蛋白質としては、カイコが吐糸して作る繭繊維の外側を膠着するセリシン、または該セリシンを除去して得られる絹フィブロイン繊維を中性塩水溶液中に溶解した後、セルロース製の透析膜を用いて透析して得た水溶性絹フィブロイン、またはカイコ体内より取り出した絹糸腺内の水溶性絹セリシンもしくは水溶性絹フィブロインも使用できる。

【0017】
生体高分子の構造、化学特性、物理的特性を論ずる場合、生体高分子として絹フィブロインを用いて説明することにより生体高分子の全容が理解し易い。そこで、本発明においては、具体的な生体高分子として絹フィブロインを用い、これとポリアリルアミンとを混合(以下、複合化と呼ぶこともある)することで調製できる複合体を例に取り以下詳細に説明する。

【0018】
絹フィブロインは絹蛋白質繊維(絹糸)を溶解させて、以下のようにして調製できる。絹糸を溶解させるには、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、チオシアン酸リチウムなど従来既知の中性塩を用いて行われる。すなわち、濃厚な中性塩水溶液中に絹糸を入れて加熱し、溶解した水溶液をセルロース透析膜に入れて、両端を縫糸でくくり、室温の水道水または純水中に4~5日間入れて置換し、リチウムイオンを完全に除くことで純粋な絹フィブロイン水溶液を得る。この絹フィブロイン水溶液をポリエチレン膜等の基質表面に拡げ、送風乾燥して、水分を蒸発せしめることにより、透明な絹フィブロイン膜を調製することができる。乾燥固化直後の絹フィブロイン膜は水に溶解するが、所望により絹フィブロインの貧溶媒であるアルコール等の有機溶媒中に絹フィブロイン膜を浸漬し、処理すると、絹フィブロイン分子間の凝集性が向上して、絹フィブロイン膜は容易に水に不溶性になる。

【0019】
中性塩水溶液で絹蛋白質繊維を溶解する際、中性塩濃度、溶解温度、および溶解時間を制限することにより絹蛋白質の分子量を低下させないように配慮することができる。中性塩濃度は8.0~9.8M程度であればよく、溶解温度は25~70℃程度であればよい。溶解温度は60℃以下が好ましい。溶解温度が高温になると絹フィブロインの分子量が低下し、絹フィブロインの高分子性が失われてしまう危険性があるからである。また、溶解時間は1~20分程度に設定することが好ましい。中性塩の中でも絹蛋白質繊維の溶解力に優れたリチウム塩が好ましく用いられる。特に臭化リチウムが好ましい。8M以上、好ましくは8.5M以上の臭化リチウムであれば、55℃以上で15分程度で絹蛋白質繊維は溶解する。

【0020】
本発明で用いることのできるポリアリルアミンは、アリルアミンが重合したものであって、前記したような物性を有するものであり、例えば塩酸塩であってもよいし、塩酸を外した遊離形であってもよい。具体的には、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド-二酸化イオウ共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、ジアリルアミン塩酸塩-二酸化イオウ共重合物、ポリアリルアミン・塩酸塩、ポリアリルアミン等がある。これらはいずれも日東紡績(株)から、例えば、PAA-HCl-3L、PAA-HCl-3S、PAA-HCl-10L、PAA-HCl-10S(商品名)等として市販されている。

【0021】
本発明の複合体は、絹フィブロインのような生体高分子とポリアリルアミンとを水性溶液または水性分散液状態で混ぜ、均一な水性溶液または水性分散液とした後、この混合液を基質上に拡げ、水分を蒸発させることにより、均一の組成を持つ複合体として製造できる。すなわち、絹フィブロインのような生体高分子およびポリアリルアミンの各物質の水性溶液もしくは水性分散液をそれぞれ別個に調製して、その後両者を均一に混合した混合液を用いて、または、両物質を均一に混合したものの水性溶液もしくは水性分散液を用いて、または、一方を溶解・分散せしめた液に他方を溶解・分散せしめて均一に混合した一つの水性溶液または水性分散液を用いて、これをポリエチレン膜、ポリスチレン膜等の基質上に拡げ、水分を蒸発させることによって製造できる。

【0022】
複合体を水不溶化させるには、水、メタノール等の有機溶媒との混合水溶液にエポキシ化合物、アルデヒド等、または両化合物を添加して得た不溶化薬剤水溶液に水溶性複合体を浸漬処理すればよい。エポキシ化合物、アルデヒド、その他の試薬は、水、メタノールの混合水溶液組成に均一に混じる範囲であれば、使用用途に応じて自由に変えることができる。水、メタノールの混合液へのアルデヒドの溶解量はエポキシ化合物に比べて多いのが一般的である。エポキシ化合物を用いる場合には、水、メタノールの混合液組成で水の含量が多いと、エポキシ化合物のエポキシ基が水と反応し開環し易いので、エポキシ化合物を添加する場合には水の量は少な目にするとよい。

【0023】
エポキシ化合物としては、一官能基のエピクロロヒドリン、あるいは二官能基のエチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ化合物を利用できる。その他に、一官能性、二官能性もしくは多官能性のエポキシ化合物であればいずれも利用できる。メタノール等のアルコールと水とからなる混合水溶液にエポキシ化合物あるいはグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒドの少なくとも1つを含ませた不溶化薬剤水溶液に複合体を浸漬処理することにより、絹フィブロインのような生体高分子とポリアリルアミン相互間に架橋結合が導入されるので、複合体は水不溶性となる。

【0024】
不溶化の程度は、不溶化薬剤水溶液の化学組成を変えることにより達成できる。不溶化処理のための最も望ましい薬剤は、クロロオキシラン、水、メタノール(5:10:85容量%)からなる不溶化薬剤水溶液である。メタノール濃度は、一般に20~85容量%の範囲で、好ましくは40~70容量%の範囲で用いられる。

【0025】
分子側鎖が正に荷電する窒素原子を持つ未中和のポリアリルアミン水溶液に絹フィブロイン水溶液を混ぜた場合、一定濃度未満の絹フィブロイン水溶液であれば両水溶液は均一に混合し、この混合水溶液を蒸発乾固させると各成分が均一に混ざり合った複合体を調製することができるが、絹フィブロイン水溶液が一定濃度以上になると、両水溶液は均一に混合できず、分離・白濁してしまい、その結果、両物質の混合水溶液を蒸発乾固させても、各成分が均一に混ざり合った複合体を調製することができない。これは、絹フィブロインとポリアリルアミンとの間に静電気的な反発が生じ、絹フィブロインとポリアリルアミンとが水溶液状態では分離してしまい、均一に混合できないからである。その結果、構造的に均一な絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体を調製することができない。また、絹フィブロインの等電点はpH=3.8~4.0であるため、絹フィブロインと酸性pHを示すポリアリルアミンとを水溶液状態で混合すると、絹フィブロインのpHが等電点以下となり、絹フィブロインが凝固してしまい、ポリアリルアミンとの均一な複合体を調製することができない。

【0026】
任意量の絹フィブロインを含むポリアリルアミン複合体を相分離を起こすことなく調製するには、複合体を製造するに先だって、ポリアリルアミン水溶液を好ましくは中性付近からアルカリ性領域までのpHを有するように、さらに好ましくは中性付近のpHを有するようにしておけばよく、この場合、ポリアリルアミンと絹フィブロインとは分子レベルでよく混じり合い、全pH領域にわたって相分離が起こることはない。ポリアリルアミンのpHを中性付近に調整することにより絹フィブロインとの相溶性が向上するのは次の理由によるものであろうと考えられる。ポリアリルアミンの分子側鎖には、正に荷電した窒素原子があり、塩酸存在下では、ポリアリルアミンの窒素原子には、負に荷電する塩素イオンが結合して電荷は打ち消されている。そのため、未中和のポリアリルアミンは、両性電解質の絹フィブロインとは何の相互作用も起こさないので、ポリアリルアミンと一定量以上の絹フィブロインとを水溶液状態で混合すると両者は分離してしまい、均一な構造の複合体にはならない。しかし、ポリアリルアミンをアルカリ薬剤で中和することで、正に荷電する窒素原子の電荷状態が露呈し、この部分と、絹フィブロインの分子側鎖のうち負に荷電するグルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸残基部分との間でイオン結合が起こるか、またはポリアリルアミンの正に荷電した側鎖部分と絹フィブロインのペプチド主鎖もしくは分子側鎖との間で水素結合、疎水結合が形成されるため、両者は水溶液中で均一に混じるようになると考えられる。ポリアリルアミン水溶液を中和すれば、これと絹フィブロイン水溶液とを混合しても絹フィブロインのpHが等電点以下とならず、絹フィブロインが凝固することもないので、絹フィブロインとポリアリルアミンとを水溶液状態で均一に混合させる上で有益である。この結果、絹フィブロイン/ポリアリルアミン混合水溶液を蒸発乾固することにより成形性に優れた均一な複合体が得られる。

【0027】
上記したように、本発明の複合体を調製するに先立って、所望により、ポリアリルアミンのpHを中性付近に調製しておくことにより、このポリアリルアミンは任意量の絹フィブロインと混じるようになる。安定に保存するという便宜上の理由で、ポリアリルアミン水溶液のpHは通常酸性側になっているため、アルカリ薬剤を加えて中性処理をすると良い。中性処理に用いることができる薬剤は従来既知のアルカリ薬剤であればいずれの薬剤でも利用可能である。アルカリ薬剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、アンモニア等のような水溶液にしたときアルカリ性を示すものであればいずれのアルカリ薬剤であっても同様に利用できる。濃厚なアルカリ水溶液の場合は、水で十分に希釈したものをポリアリルアミンに加えて中和することが好ましい。

【0028】
上記のアルカリ薬剤のうち、アンモニアが最も好ましい。これは、生体高分子/ポリアリルアミンの混合水溶液を蒸発乾固せしめる過程で除去でき、かつ調製後の複合体に残留することがないからである。アンモニアの希薄水溶液をポリアリルアミン水溶液に少しずつ滴下して、ポリアリルアミン水溶液のpHをpH試験紙を用いあるいはpHメーターで7付近に調整するとよい。pH7に調整したポリアリルアミン水溶液に絹フィブロイン水溶液を加え、ガラス棒で注意深く静かに攪拌し、室温で所定の時間、例えば15分程度静置したのち、ポリエチレン膜等の基質上に拡げ、送風乾燥し、水分を蒸発せしめることで複合体が製造できる。こうして調製される複合体は、2つの成分が均一に混じり、分子間相互作用の良好なものとなる。なお、水に対する溶解性は絹フィブロインの含有量の違いによって異なる。水溶性の複合体は、所望により、次のような不溶化処理を行って水不溶性に変えることができる。

【0029】
また、前記したように、これら複合体に不溶化薬剤水溶液からなるゲル化剤、すなわち不溶化薬剤を適用することによってゲル状の水不溶性複合体を調製することができるが、その他に既知の凍結乾燥法に従って粉末状の水不溶性複合体を調製することができる。このような簡単な処理で、絹フィブロインの分子凝集状態が向上し、その結果絹フィブロインが不溶化する。この不溶化した絹フィブロインのマトリックスにポリアリルアミンが物理・化学的に捕捉されるので、絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体は、特別な架橋用の化学薬剤を使わなくとも不溶化することができる。また、不溶化方法としては、この他に、両物質を静電気的に結合する方法もある。すなわち、水溶液中で、正の電荷を持つポリアリルアミンと、正と負の電荷のうち負の電荷を有するグルタミン酸、アスパラギン酸残基を持つ絹フィブロインとはイオン結合、水素結合、その他の化学結合により結合するため両者が結合して不溶化する。不溶化処理後は、ポリアリルアミンや絹フィブロインが複合体から溶出することはない。

【0030】
本発明の複合体には、医薬品、生体細胞、抗菌性金属成分、抗生物質等の有効成分を固定化させることができる。複合体に固定できる有効成分の種類および量は特に制約されるものでなく、目的に合わせて任意に決めることができる。有効成分としては、水溶解性のものが望ましい。有効成分を含んだ複合体を調製するには、絹フィブロイン(絹蛋白質)のような生体高分子の水溶液と中性処理後のポリアリルアミン水溶液との混合水溶液に有効成分を溶解、または分散させ、混合水溶液を緩やかに注意深く攪拌した後、ポリスチレン、ポリエチレン等の基質膜上に拡げて水分を蒸発すればよい。有効成分を含んだ混合水溶液を調製する場合、絹蛋白質のような生体高分子およびポリアリルアミンの好ましい濃度はいずれも0.01~10重量%、更に好ましくは0.1~5重量%である。生体高分子濃度が10重量%を超えると、成形性が低下するため好ましくなく、また、生体高分子濃度が0.01重量%未満だと、濃度が希薄すぎるので、生体高分子の水溶液の使用量を多くしなければならず、両水溶液を混合する際の効率が悪くなる。また、生体高分子の希薄水溶液を用いると、ポリアリルアミン水溶液との混合水溶液の蒸発乾燥時間が長くなり、目的物調製上の効率も低下するため好ましくない。

【0031】
【実施例】次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(1)実施例で使用するポリアリルアミンの種類
表1に以下の実施例で使用するポリアリルアミンの名称、分子量ならびに特徴を示す。なお、表1に記載した水溶性カチオン系高分子のポリアリルアミンは日東紡績(株)から市販されており、化合物の名称はすべて日東紡績(株)の商品名に従った。これらのポリアリルアミンの詳細は次の通りである。

【0032】
PAS-A-120Lはジアリルジメチルアンモニウムクロライド-二酸化イオウ共重合物であり、PAS-H-10Lはジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物であり、PAS-92はジアリルアミン塩酸塩-二酸化イオウ共重合物であり、PAA-HCl-10Lはポリアリルアミン・塩酸塩であり、PAA-10Cはポリアリルアミンである。

【0033】
【表1】
JP0003151665B2_000002t.gif(2)実施例で得られた絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体の構造特性を調べる目的で次の項目の試験を行った。

【0034】
(2-1)機械的特性:複合体膜の機械的性質(強度および伸度)を測定し、切断時の複合体膜の試料の強度と伸度を評価した。測定条件は、試料の長さ15mmおよび幅2mm、膜厚10μm、引張り速度4mm/min、チャートスピード500mm/min、チャートスケール200gであり、(株)島津製作所製引張り試験機(オートグラフ、形式AGS-5D)により測定した。

【0035】
(2-2)フーリエ変換赤外吸収スペクトル
パーキンエルマー社製のFT-IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)測定装置を用いて複合体の分子形態に関する吸収スペクトルを観察した。測定波数は、2000~400cm-1、測定繰り返し数は20回であった。

【0036】
(2-3)含水率、試料重量流出率
複合体膜を20℃の水に浸漬し、その処理前後で複合体膜の試料に何%の水が入ったか(含水率)、また、複合体膜を20℃の水に24時間浸漬処理することで試料重量の何%が流出したか(試料重量流出率)を次式により求めた。

【0037】
含水率 = [(Wb-Wc)/Wc] ×100(%)
試料重量流出率 = [(Wa-Wc)/Wa] ×100(%)
但し、Wa、Wb、Wcはそれぞれ次のことを意味する。

【0038】
Wa:20℃の水中に浸漬する前、85℃で3時間乾燥した試料重量。

【0039】
Wb:20℃の水中に24時間浸漬し、吸水率が平衡状態にある試料重量。

【0040】
Wc:吸水後に標準状態で風乾し、15℃で3時間乾燥した試料重量。

【0041】
(2-4)熱分解挙動
理学電機(株)製示差熱走査測定装置(DSC-10A)を用い、複合体膜の試料重量2.2mg、DSCレンジ2.5mcal/s、昇温速度10℃/分で、測定を200cc/分の窒素気流中で行った。この測定において180℃以上に現れる吸熱ピーク温度を試料の熱分解温度とした。
(3)複合体膜の植物病原細菌の増殖に及ぼす阻害効果による抗菌性評価
植物性病原細菌として、普遍的な植物性病原細菌の代表であって、耐性菌が出現しやすく、多くの植物を犯す多犯性の腐敗病菌であり、植物性病原細菌の中でも数少ないグラム陽性菌としてトマトかいよう病菌(学術名:Corynebacteriummichiganese pv. michiganese)を選んだ。

【0042】
実施例中の細菌に対する抗菌活性評価は下記の方法により行った。

【0043】
細菌に対する抗菌活性検定法:加熱溶解後55℃に保持した半合成脇本培地またはキングB培地25mlと、検定菌(濃度109/ml)2mlとを混合し、この混合物をシャーレに流し込んで平板状に固めた。この菌液混合平板培地上に約1cm四方の複合体膜の試料を置き、試料全体を培地に密着させた。これを20~25℃に保ち、所定の経過時間毎に検定試料付近の培地での菌増殖阻害程度を、試料の周囲に現れる阻止円の大きさを実測し、mm単位の表示で評価した。
(4)複合体膜の大腸菌の増殖に及ぼす阻害効果による抗菌性評価
上記トマトかいよう病原細菌の増殖に及ぼす阻害効果の評価方法と同様の方法で大腸菌の増殖に及ぼす阻害効果を評価した。大腸菌として、PROMEGA 社製のStrain: JM109 を使用し、培地として、LB培地、LB寒天培地を使用した。蒸留水100mL当たりのLB培地組成は次の通りであった。ポリペプトン 1.0g、酵母エキス 0.5g、塩化ナトリウム 1.0gの組成から構成された培地であり(LB寒天培地の場合は、さらに、寒天 1.5g)、滅菌後の培地のpHを7.0-7.4に調整した。具体的な培養手法は次の通りである。

【0044】
(i)LB培地で培養温度35℃で振盪しながら、一昼夜、大腸菌を増殖させた。

【0045】
(ii)約60℃で溶解したLB寒天培地と、増殖した前記大腸菌の入ったLB培地を等量宛混合し、滅菌済みの容器に注入した。

【0046】
(iii)培地が固化した後、被検試料を培地表面に置いた。

【0047】
(iv)一定時間の培養後、阻止円の大きさを観察した。
(5)昆虫細胞の付着・増殖実験
カイコの粉末体液(日本農産工業(株)製)5%、牛胎児血清5%(Gibco社製)を含むGrace培地(Sigma社製、G8142)、および1%のペニシリン・ストレプトマイシンの混合抗生物質を含む培地を用いて柞蚕由来の細胞Ae細胞、あるいは家蚕由来のBm細胞の培養実験を行った。細胞の付着状態は培養後1日目、倒立顕微鏡(Olympus 1MT-2型)を用いて同一の培養プレートに付き、4視野を観察し、視野の下で培養プレートを左右に揺り動かして、細胞培養床底面に付着した細胞および培養液に浮遊した細胞を目視で観察した。視野下における細胞の全体数に対する付着細胞数の割合を目視で3回測定し、その平均値を細胞付着状態(以下、「細胞付着」と略記する)として評価した。細胞培養数は2日目に、血球計算盤で観察した。絹フィブロイン含有量が異なる各種複合体膜表面での柞蚕(Ae)および家蚕(Bm)昆虫細胞の付着・増殖状態を観察した。
(6)マウス由来の繊維芽細胞の付着増殖実験
細胞培養基材表面におけるマウス由来の繊維芽細胞(L929)の付着・増殖を観察した。用いたL929は、1940年にEarle によって初代培養が開始されたマウス繊維芽細胞のシリーズの1株でSanfordによってクローニングされたものである。L929のCell No.はRCB0091(理化学研究所)である。5%の牛胎児血清、HEPES 20mM(Sigma 社製)、グルタミンを含んだMEM培地(Gibco社製)を用い、37℃における細胞培養、4日目のL929繊維芽細胞の付着状態を倒立顕微鏡(Olympus社製)で調べた。なお、培養開始時の細胞数は1.5×105個/mlであった。
実施例1 絹フィブロインとポリアリルアミンとの水溶液状態での相溶性評価
絹フィブロイン水溶液を次の方法で調製した。2.5gの家蚕絹糸を55℃の8.5M臭化リチウム水溶液20mL中で完全に溶解させた後、この水溶液をセルロース製透析膜に入れて、5℃で5日間蒸留水で置換して、不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製した。かくして調製された絹フィブロイン水溶液に蒸留水を加え、絶乾濃度が6%となるように絹フィブロイン水溶液の原液を調製した。この絹フィブロイン水溶液原液に水を加えて3%の絹フィブロイン水溶液を調製した。調製する複合体の重量基準で、絹フィブロインとポリアリルアミンとの混合割合が一定となるように3%絹フィブロイン水溶液と6%の各種ポリアリルアミン水溶液とを所定量混合した。混合した直後の水溶液において2種類のポリマーが良好に混じり合うか否かを目視により観察した。得られた結果を表2に示す。

【0048】
なお、相溶性は次の3段階により評価した。

【0049】
○:透明状態で良く混じり合う。

【0050】
△:混じり合わず溶液が白濁する。

【0051】
×:絹フィブロインとポリアリルアミンとが水溶液状態で相分離してしまう。 また、表2中の溶解性は、上記混合水溶液をポリエチレン膜上に拡げ、乾燥乾固して得た複合体膜を水中に浸漬した時のその溶解挙動を目視で次の二段階で評価したものである。

【0052】
複合体膜の溶解挙動:
○:複合体膜が水によく溶ける。

【0053】
△:複合体膜の一部水に溶ける。

【0054】
【表2】
JP0003151665B2_000003t.gif表2は、一切中和処理をしない各種ポリアリルアミンを用いた場合の相溶性、溶解性についての結果であり、絹フィブロインとポリアリルアミンの比率を変えた時に、各成分が水溶液状態で分離するかしないかを簡易的に事前評価したものである。この結果から、ポリアリルアミンの種類によっても異なるが、絹フィブロイン含量はおよそ80~90重量%以下であると両者は均一に混じる。ただし、ポリアリルアミンのpHを中性付近に調整すると、以下述べるように、任意量の絹フィブロインと均一に混じるようになる点において表2の結果とは異なる。
実施例2 複合体膜の調製方法
ポリアリルアミン水溶液に水を加えてpHが3~5になるように調整し、この水溶液を、ポリアリルアミンが25重量%含まれるように、3%絹フィブロイン(以下これをSFと略記することもある)水溶液に添加し、混合した。この混合液を基質(ポリエチレン膜)上に拡げ、25℃で送風乾燥し、厚さ100μmの複合体膜を調製した。用いたポリアリルアミンは、表1に示した日東紡績株式会社製の商品名PAS-A-120L、PAS-H-10L、PAS-92、PAA-HCl-10L、PAA-10Cである。

【0055】
PAA-10Cの場合、この水溶液(pH=11)に絹フィブロイン水溶液を加えると乳白濁し、30分放置するとオイル状のPAA-10Cがビーカ底に沈殿した。そこで、SFとPAA-10Cとを複合化させ透明な複合体膜をつくるため、次のように工夫した。3%絹フィブロイン水溶液にpH=11のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)を加え、さらに6%PAA-10C水溶液をポリアリルアミンが25重量%になるように加えた。良好に混合でき、両物質が分離することはなかった。この混合液をポリエチレン膜上に拡げ、25℃で送風乾燥して透明な複合体膜の試料を作成した。
実施例3 複合体のFT-IR解析
実施例1と同様の方法で、表1記載のポリアリルアミンを用い、絹フィブロインとポリアリルアミンとの複合体を調製した。すなわち、複合体中に絹フィブロインが75重量%含まれるように、絹フィブロイン水溶液と未中和のポリアリルアミン水溶液とを均一に分子レベルで混合し、ポリエチレン膜上に拡げ、乾燥乾固せしめて複合体膜を調製した。絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体の分子構造特性を明らかにするため、この複合体膜の試料を用いて、フーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)をパーキンエルマー社製の測定装置で測定した。測定波数領域は2000~400cm-1であり、測定繰り返し数は20回であった。吸収ピーク位置の数を求め、ピーク強度を、非常に強(VS)、強(S)、中(M)、弱(W)の4段階で示した。得られた結果を表3に示す。表3において、例えばSF/PAA-10C(75/25)とは、別々に調製した濃度が3%の絹フィブロイン水溶液と濃度が6%のポリアリルアミン(PAA-10C)水溶液とを、絹フィブロインとポリアリルアミンとの重量割合が75%と25%となるように均一に混合し、更に、この混合液に水を適宜加えて絹フィブロインとポリアリルアミンとを合計した混合水溶液の濃度が1%となるように混合し、その後この混合水溶液を基質上に拡げ、蒸発乾固せしめて調製した複合体膜を意味する。表3中の他の複合体膜も同じように調製された膜を意味する。また、以下の表4および6記載の複合体膜の場合も同じである。

【0056】
【表3】
JP0003151665B2_000004t.gif表3から明らかなように、絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体のFT-IRスペクトルには、絹蛋白質に由来する特有な吸収ピークと、ポリアリルアミンに由来する特有な吸収ピークとが重複して現れていることが分かる。このことは、複合体は絹フィブロイン分子とポリアリルアミン分子とから構成され、両者が複合化した結果、全く新たな化学結合が形成することのないことを意味する。
実施例4 DSCによる組成成分間の分子相互作用の推定
ポリアリルアミン膜、絹フィブロイン(SF)膜、および絹フィブロインの含量が異なる絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体膜を次のようにして製造した。表4に示した5種類のポリアリルアミン(PAA-10C、PAA-HCl-10L、PAS-H-10L、PAS-A、PAS-92)を用い、実施例1と同様の方法で絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体膜を調製し、またポリアリルアミン単独の膜およびSF単独の膜も同様にして調製した。

【0057】
上記のようにして調製した複合体膜を用いてDSC測定を行い、これらの熱挙動を調べた。100℃以上の温度領域に現れる吸熱ピーク温度を調整した。得られた結果を表4に示す。表4中で表示温度に付された英文字は吸熱ピークの形態を意味し、Bは幅広いピーク、VBは非常に幅広いピークであることを意味する。

【0058】
【表4】
JP0003151665B2_000005t.gif表4から明らかなように、絹フィブロインのDSC吸熱ピークは280℃に表れるが、絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体において、絹フィブロインの含量が異なることにより吸熱ピーク温度位置が若干変化することが分かる。このことは、絹フィブロインとポリアリルアミンとの間に、水素結合、イオン結合、疎水結合等の、何らかの分子間の凝集作用を高めるような物理的結合が生ずることを示唆している。
実施例5 不溶化処理方法の検討
実施例1と同じ方法により表5に示した複合体膜を調製し、これらの複合体膜について水不溶化程度を次のようにして評価した。複合体膜を水不溶化させるため不溶化薬剤水溶液として、クロロオキシラン(別称:エピクロロヒドリン、関東化学株式会社製)、水、メタノール(5:10:85容量%)から調製した水溶液を用いた。表5に示した複合体膜をこの不溶化薬剤水溶液2.5mL中に浸漬して3分間静置した。その後複合体膜を取り出して、さらに50%メタノール水溶液で洗浄し、室温で乾燥させることで水溶解程度の異なる複合体膜を調製した。こうして調製した複合体膜の水不溶化試料を水に漬け込み、30分間にわたって試料の溶解状態を目視により観察した。得られた結果を表5に示す。表5において、複合体膜の溶解状態は、次の三段階で評価した。

【0059】
○:水に不溶。

【0060】
△:浸漬直後は水に不溶、次第に水を吸って溶解しはじめる。

【0061】
×:水に浸漬直後に溶け出す。

【0062】
【表5】
JP0003151665B2_000006t.gif表5から明らかなように、いずれのポリアリルアミンも単独では高い吸湿性を示し、水に溶解する性質がある。しかし、本発明の場合には、ポリアリルアミンが両性電解質の絹フィブロインの負の電荷をもつアミノ酸側鎖とイオン結合して、絹フィブロイン含有率が50重量%以上の範囲でその複合体膜は水不溶性となる。ただし、一部のポリアリルアミンでは25重量%程度でも不溶化する場合がある。
実施例6 複合体膜の機械的特性
乾燥時の機械的特性:3%絹フィブロイン水溶液6mLと6%ポリアリルアミン水溶液4mLとを混合し、ガラス棒で静かに攪拌し、この混合液をポリエチレン膜表面に拡げ、室温で水分を蒸発させて絹フィブロインとポリアリルアミンとを75重量%と25重量%との比率で含む複合体膜を調製した。かくして得られた複合体膜の強度と伸度を測定し、得られた結果を表6に示す。

【0063】
【表6】
JP0003151665B2_000007t.gif乾燥時の機械的性質では、絹フィブロイン膜は切断伸度がわずか0.6%という脆い性質を示すが、ポリアリルアミンと複合化することで伸び易くなる。

【0064】
湿潤時の複合体膜の機械的特性:上記と同様にして得た複合体膜を24時間水中に入れて水分が平衡状態に達した後、この複合体膜の機械的特性を調べ、得られた結果を表7に示す。

【0065】
【表7】
JP0003151665B2_000008t.gif表7から明らかなように、吸水した複合体膜は、乾燥状態の複合体膜と比べ、強度は悪くなるが、伸度は高くなり、伸びやすくなることが分かる。
実施例7 人工皮膚への応用
実施例1と同様にして得られた複合体膜を実施例5と同様の不溶化混合水溶液中に15秒間浸漬する簡単な処理で、98重量%の水分を長時間保持するハイドロゲル状物質を得た。このゲル状物質をそのまま皮膚に塗布して乾燥させると、弾性的な被膜が得られた。前記実施例6からも明らかなように、乾燥状態の絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体膜は、切断伸度が微少である絹フィブロイン膜の欠点を補った特性を示し、伸び易く(表6)、また、水を吸った状態では、複合体膜の伸度は更に増加して弾性的となった(表7)。

【0066】
絹フィブロイン自体は、手術用素材として生体内に埋め込まれて利用されており、生体組織に悪影響を及ぼさないものであり、また、ポリアリルアミンは、生体細胞や組織などの培養支持台への固定化材(特開平2-181628および2-191629号公報)として利用されるものであるため、本発明の複合体は創傷被覆材等の医療用素材として利用できるものといえよう。
実施例8 複合体膜表面における昆虫細胞の増殖実験
細胞培養床基材の調製方法:以下述べるように、3%絹フィブロイン水溶液および6%ポリアリルアミン水溶液を原液として、絹フィブロインの含量(100、90、75、50、25、0重量%)が異なる絹フィブロイン/ポリアリルアミン混合水溶液を調製し、この混合水溶液1.2mLを細胞培養容器に入れ、培養容器を被覆し、細胞培養床を調製した。6%ポリアリルアミン水溶液の原液は、ポリアリルアミン水溶液にアンモニア水溶液の希薄溶液を少量ずつ添加し、pH試験紙でポリアリルアミン水溶液のpHを7前後に調整して調製した。これを原液に用いて、以下述べるように中和処理した細胞培養床基材を製造した。

【0067】
別々に調製した3%絹フィブロイン水溶液と6%ポリアリルアミン水溶液とを、絹フィブロインの重量割合が100、90、75、50、25、0重量%となるように、均一に混合し、更に、この混合液に水を適宜加えて絹フィブロインとポリアリルアミンとを混合した水溶液をその濃度が1%となるように調製した。このようにして調製した混合水溶液1.5mLを細胞培養容器(24穴、BectonDickinson Company、商品名FALCON 3047)に入れ、室温で30分静置した。混合溶液をデカンテーション法で完全に除去し、20℃で1日風乾させ、細胞培養容器表面に複合体の薄膜を形成させた。次いで、この複合体膜を水不溶化させるため、クロロオキシラン(別称:エピクロロヒドリン、関東化学株式会社製)、水、メタノール(5:10:85容量%)からなる不溶化薬剤水溶液2.5mLをこの複合体膜に適用して3分間静置した。次いで、溶液を除去した後、標準状態で風乾させ、さらに40℃で30分乾燥させた。メタノールを2mL加えて洗浄し、風乾後40℃で15分乾燥させた。例えば、3%の絹フィブロイン水溶液と6%のポリアリルアミン水溶液とから絹フィブロインとポリアリルアミンとの重量割合が90%と10%である複合体膜を調製するための各水溶液および水の添加量は次の通りであった。

【0068】
絹フィブロイン ポリアリルアミン 水の添加量
360μl 20μl 820μl
絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体膜の調製条件を表8に示す。

【0069】
【表8】
JP0003151665B2_000009t.gif昆虫細胞の培養実験(1):昆虫細胞を用いて細胞の付着・増殖状態を観察した。ポリアリルアミン水溶液として中和処理しないものを用い、絹フィブロインとポリアリルアミンとを複合化させて細胞培養床基材を作った。絹フィブロイン含量が異なる各種複合体膜で被覆された細胞培養床表面での柞蚕(Ae)および家蚕(Bm)昆虫細胞の付着状態(以下、Ae、Bm付着と略記)と増殖状態(以下、Ae、Bm増殖と略記)を観察し、細胞数を測定した。得られた結果を表9に示す。

【0070】
【表9】
JP0003151665B2_000010t.gif昆虫細胞の培養実験(2):昆虫細胞を用いて細胞の付着・増殖状態を観察した。アルカリ薬剤を加えて中和処理したポリアリルアミン水溶液を用い、絹フィブロインとポリアリルアミンとを複合化させて細胞培養床基材を作った。絹フィブロイン含量が異なる各種複合体膜で被覆された細胞培養床表面での柞蚕(Ae)および家蚕(Bm)昆虫細胞の付着状態(以下、Ae、Bm付着と略記)と増殖状態(以下、Ae、Bm増殖と略記)を観察し、細胞数を測定した。得られた結果を表10に示す。

【0071】
【表10】
JP0003151665B2_000011t.gifなお、表9および10における細胞増殖の数は、血球計算盤により求めた10-4ml当たりの細胞数を示すため、培養後の細胞数の実測値は、上記の表の値に104を乗じた数となる。

【0072】
表9および10から分かるとおり、付着性細胞に分類される柞蚕細胞(Ae細胞)は、生体高分子/ポリアリルアミン複合体膜において、絹フィブロイン含量が75~25重量%の範囲で増殖状態が良好になった。また、付着状態も良好であった。ポリアリルアミンとしては、未中和状態のPAS-92、中和状態のPAS-H-10Lが特に良好である。また中和状態のPAA-HCl-10L表面において絹フィブロインが50~25重量%の複合体膜表面ではAe細胞は死亡しており、丸形の細胞に果粒細胞が確認された。半浮遊細胞の家蚕由来のBm細胞は絹フィブロイン含有率が50%付近において増殖状態が良好になった。ポリアリルアミンとしては、未中和状態のPAA-HCl-10L、中和状態のPAS-92が特に良好である。また生体高分子/ポリアリルアミン複合体膜において、中和試料を用いた方が未中和試料よりも、Ae、Bm細胞の増殖はいずれも良好であった。

【0073】
ポリアリルアミンを中和処理をした後、絹フィブロインを加えることでAeおよびBmの昆虫細胞の増殖数が増加しかつ付着性が良好であった理由は次のように考察できる。ポリアリルアミンは塩酸性pH領域でポリアリルアミンの塩酸塩となっているが、アンモニア水を少量ずつ添加してpHをアルカリ側に調整すると塩酸塩が除去されて、分子側鎖がNH2のポリアリルアミンとなる。これと両性電解質の絹蛋白質分子とは分子レベルでよく混じり合い相溶性に優れた複合体が製造できるため、生体細胞の付着性と増殖性とが向上したものと考えられる。
実施例9 マウス由来の繊維芽細胞による付着・増殖実験
複合体膜表面でのマウス由来の繊維芽細胞(L929)の培養4日目の細胞の付着・増殖状態を観察し、細胞数を測定した。得られた結果を表11に示す。

【0074】
なお、表11におけるContとは、市販培養プレート表面への細胞付着・増殖状態を意味する。また、細胞増殖の数は、血球計算盤により求めた10-4ml当たりの細胞数を示すため、培養後の細胞数の実測値は、上記の表の値に104を乗じた数となる。

【0075】
【表11】
JP0003151665B2_000012t.gif表11における細胞の付着状態:
+++ 細胞が細胞容器表面に非常に強く付着している。

【0076】
++ 細胞が細胞容器表面に良く付着している。

【0077】
+ 細胞が細胞容器表面に普通に付着している。

【0078】
- 細胞が細胞容器表面に付着していない。

【0079】
表11における細胞の付着・増殖状態の観察結果:
*1 一部の細胞が培地表面に浮上する。凝集塊はない。

【0080】
*2 細胞が培地表面に浮上する。凝集塊を形成。

【0081】
*3 細胞中に顆粒状物質が見られ、細胞の内容物が外に流出している。

【0082】
*4 細胞の足糸は伸展し、紡錘形で張り付く。細胞の付着状態は良好で一部細胞が培地表面に浮く。

【0083】
*5 細胞増殖数多い。細胞培養床表面に良く付着している。

【0084】
*6 細胞が細胞培養基材表面に良く伸展し、細胞の増殖数も多い。

【0085】
表11からPAA-HCl-10Lと絹フィブロインとからできる複合体膜表面ではマウス由来の繊維芽細胞の増殖数は、絹フィブロイン含有率90~50重量%で良好な値となった。PAS-H-10Lと絹フィブロイン(絹フィブロイン含有率90重量%付近)との複合体膜表面では繊維芽細胞が強く付着していることが確認された。
実施例10 複合体への金属イオン吸着(Ag、Co)
3%の絹フィブロイン水溶液3mLと6%のPAA-10C水溶液2mLとを混合し、静かに攪拌した後、混合液をポリエチレン膜上に拡げ、室温で乾燥固化させて絹フィブロインとPAA-10Cとからなる複合体膜を調製した。水に対して不溶化させるため、実施例5と同様の方法で不溶化薬剤水溶液に該複合体膜を30秒間浸漬し、取り出した後、50容量%メタノール水溶液で洗浄し、室温で乾燥させて、水不溶化複合体(PAA/SFと略記する)膜を調製した。

【0086】
得られた水不溶化複合体膜に金属イオンを次のようにして吸着させた。まず、4mLの水に339.7mgの硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)を溶解させ、0.5mMの硝酸銀水溶液を調製した。この中に硝酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)を505.6mg加え、1Nのアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)でこの水溶液のpHを11.4に調整し、次いで水を加えて溶液の全量が60mLとなるようにして金属イオン水溶液を調製した。この銀イオンを含む金属イオン水溶液に上記の複合体膜を入れ、25℃で5時間静置し、取り出した後、室温で風乾させた。このようにして銀イオンが吸着・配位された複合体(以下、PAA/SF-Agと略記する)膜を調製した。

【0087】
硝酸銀の変わりに硝酸コバルト(和光純薬工業株式会社製)を用いて、上記と同様にしてコバルトが配位された水不溶化複合体(以下、PAA/SF-Coと略記する)膜を調製した。また、3%絹フィブロイン水溶液をポリエチレン膜に拡げ、水分を蒸発させて絹フィブロイン(以下、SFと略記する)膜を調製し、これを銀、またはコバルトの金属イオン水溶液に25℃、5時間浸漬処理することで銀またはコバルトが吸着・配位された絹フィブロイン(以下、SF-Ag、SF-Coと略記する)膜を調製した。

【0088】
トマトかいよう病細菌の増殖に及ぼすこれら金属イオン吸着膜の阻害効果を評価した。黒い布で覆った暗の区で培養を実施して、抗菌性を評価した。得られた結果を表12に示す。

【0089】
【表12】
JP0003151665B2_000013t.gif表12から明らかなように、絹フィブロインそのものに金属を配位させるよりも、絹フィブロイン/ポリアリルアミン複合体に金属を配位させた方が抗菌活性が高まることがわかる。

【0090】
次に、トマトかいよう病細菌の代わりに大腸菌を用い、大腸菌の増殖に及ぼす金属イオン吸着膜の阻害程度を調べた。得られた結果を表13に示す。

【0091】
【表13】
JP0003151665B2_000014t.gif表13から明らかなように、本発明の金属イオン吸着膜はいずれも大腸菌の増殖を阻害することがわかる。

【0092】
また、実施例10と同じ方法で、Ag、Coの代わりにCuまたはZnを吸着・配位した水不溶化複合体はトマトかいよう病細菌および大腸菌の増殖を抑制した。

【0093】
かくして、本発明の複合体は各種物質を担持する担体として有用である。

【0094】
上記実施例では、生体高分子として、絹フィブロインのような代表的な絹蛋白質について記載したが、上記した他の生体高分子についても同様な結果が得られる。

【0095】
【発明の効果】本発明の生体高分子/ポリアリルアミン複合体は、絹フィブロイン等の生体高分子とポリアリルアミンとを所定の条件下で複合化したものであり、両方の性質を兼ね備えしかも単独の素材には無い機械的性質、またはそれぞれの素材が持つ生化学特性を相乗的に兼ね備えている。

【0096】
本発明の複合体によれば、その表面に昆虫細胞およびマウス由来の繊維芽細胞等の生体細胞を効率的に付着させることができ、またそこで該細胞を増殖させることもできる。さらに、該複合体は、絹フィブロイン等の生体高分子の持つ細胞の付着・増殖性に加えて、ポリアリルアミンの持つ細胞増殖機能をも兼ね備えている。そのため、本発明の複合体は、固定化酵素、医用材料、生体成分分離用担体、免疫測定法、細胞培養床基材等に利用できる。

【0097】
本発明の複合体は、側鎖に正の電荷を持つポリアリルアミンと両性電解質の生体高分子とからなるため、両分子間でイオン結合が生じ、分子凝集性が強い素材である。そのため、かかる複合体に有効成分を包括させることによって、医薬品・生理活性物質等を含むことのできる徐放担体とすることができるので、この複合体は長時間にわたって医薬品・生理活性物質等を継続して徐放することが可能な徐放担体(Drug delivery Device)として利用できる。この複合体は、抗菌性金属を確実に包括し得るので、耐久性に富んだ抗菌材料として利用できる。

【0098】
本発明の複合体はまた、細胞、酵素、ホルモンなどの生理活性物質を組み込むことができるので、より生体の機能に近い人工臓器材料として利用することが可能である。さらに、本発明の複合体は、人工血管、コンタクトレンズ、傷創被覆材、皮内注入用素材等の生医学材料としても活用できる。