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明細書 :高分子素材のドープ、高分子素材からなるマイクロビーズおよびそのビーズの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2972877号 (P2972877)
登録日 平成11年9月3日(1999.9.3)
発行日 平成11年11月8日(1999.11.8)
発明の名称または考案の名称 高分子素材のドープ、高分子素材からなるマイクロビーズおよびそのビーズの製造方法
国際特許分類 C08L101/00      
C08J  3/09      
C08J  3/12      
C08J  9/28      
C08L  5/00      
C08L 89/00      
FI C08L 101/00
C08J 3/09
C08J 3/12
C08J 9/28
C08L 5/00
C08L 89/00
請求項の数または発明の数 15
全頁数 14
出願番号 特願平10-209704 (P1998-209704)
出願日 平成10年7月24日(1998.7.24)
審査請求日 平成10年7月24日(1998.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391030284
【氏名又は名称】農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】塚田 益裕
【氏名】グワンリン シェン
【氏名】白田 昭
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】北村 欣一 (外3名)
審査官 【審査官】藤本 保
参考文献・文献 特開 平9-136985(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00 - 101/14
要約 【課題】 粒径のバラツキが無い均一な絹タンパク質マイクロビーズの提供。
【解決手段】 絹タンパク質を溶解する際に、絹タンパク質分子間の水素結合を切断しつつ、溶解に伴う絹タンパク質の分子量低下を抑え、かつ絹タンパク質の高分子性の低下を防止させることが可能なジクロロ酢酸等の第一溶媒と、該第一溶媒と相溶性があり、溶解処理に伴う絹タンパク質の分子量低下を抑えつつ、絹タンパク質の溶解性を向上させる働きを有する塩化メチレン等の第二成分溶媒とからなり、該第一溶媒と第二溶媒との混合比率が、50-95:50-5v/v%である混合溶媒に絹タンパク質を溶解してドープを作製し、このドープを細孔ノズルから凝固浴中に滴下し、凝固させて、絹タンパク質マイクロビーズを調製する。その際、該ドープに塩化ナトリウム等の中性塩を添加し、凝固後に溶出させれば、得られる ビーズは多孔質状となる。
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子素材を溶解する働きを有する第一溶媒と該高分子素材の分子の切断を防止する作用を有する第二溶媒との混合有機溶媒に該高分子素材を溶解してなり、該第一溶媒が、高分子素材の分子間の水素結合を切断しつつ、溶解に伴う高分子素材の分子量低下を抑え、かつ高分子素材の高分子性の低下を防止することができるジクロロ酢酸、またはトリクロロ酢酸であることを特徴とする高分子素材のドープ。

【請求項2】
前記第二溶媒が、前記第一溶媒と相溶性があり、溶解処理に伴う高分子素材の分子量低下を抑えつつ、該高分子素材の溶解性を向上させる働きを有する塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルムから選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載の高分子素材のドープ。

【請求項3】
前記第一溶媒と第二溶媒との混合比率が、50-95:50-5v/v%であることを特徴とする請求項1または2記載の高分子素材のドープ。

【請求項4】
前記混合有機溶媒により高分子素材を溶解する際の溶解温度が、5-50℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高分子素材のドープ。

【請求項5】
前記高分子素材の濃度が5-20v/vであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高分子素材のドープ。

【請求項6】
前記高分子素材が絹フィブロイン、絹セリシン、化学修飾した羊毛ケラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、キチン、キトサン、プルラン、サッカロース、デキストリン、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高分子素材のドープ。

【請求項7】
前記請求項1~6のいずれかに記載の高分子素材のドープから得られる高分子素材のマイクロビーズ。

【請求項8】
前記高分子素材のマイクロビーズが多孔質状であることを特徴とする請求項7記載の高分子素材のマイクロビーズ。

【請求項9】
生理活性物質、抗生物質、酵素、医薬品、または毒素の有効成分を含有することを特徴とする請求項7または8に記載の高分子素材のマイクロビーズ。

【請求項10】
高分子素材を溶解する働きを有する第一溶媒と該高分子素材の分子の切断を防止する作用を有する第二溶媒との混合有機溶媒に高分子素材を溶解して高分子素材のドープを形成し、次いで該凝固浴中に配設した一定の口径を有する細孔ノズルから該高分子素材のドープを凝固浴中に吐出し、または凝固浴表面から上方の一定の距離を隔てた位置に配設した該細孔ノズルから該高分子素材のドープを凝固浴中に滴下して、該高分子素材を凝固させ、高分子素材からなるマイクロビーズを調製することを特徴とする高分子素材のマイクロビーズの製造方法。

【請求項11】
前記凝固浴がメタノール、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、水から選ばれる少なくとも一種の溶媒からなることを特徴とする請求項10記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。

【請求項12】
前記高分子素材のドープとしてこれに中性塩を添加したものを使用すること、また前記凝固させて得られた高分子素材のビーズを水中に入れ、該中性塩のみを溶出させて、多孔質状の高分子素材からなるマイクロビーズを得ることを特徴とする請求項10または11記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。

【請求項13】
前記中性塩が前記混合有機溶媒に対して溶解度が低く、水に対して高い溶解度を示すものであることを特徴とする請求項12記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。

【請求項14】
前記中性塩が塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる塩であることを特徴とする請求項12または13記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。

【請求項15】
前記中性塩をドープ中に10~20wt%の量で添加し、凝固浴中で高分子素材を凝固させてマイクロビーズを調製した後、このマイクロビーズを水中に入れて中性塩のみを溶出することを特徴とする請求項12~14のいずれかに記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子素材からなり、バラツキが無く、均一微細粒径のマイクロビーズ、該マイクロビーズの製造方法、および該マイクロビーズを製造するための高分子素材のドープに関するものである。

【0002】
【従来の技術】天然素材または高分子素材から形成される形状が微細なビーズ(以下、マイクロビーズと略記することもある)は、医薬品、生理活性物質、香料、化粧品、接着剤、塗料、酵素、抗生物質、肥料成分、農薬、フェロモン等を包含・担持し、その有効成分の放出制御効果を狙う素材であり、各種産業資材として利用できる。

【0003】
マイクロビーズの素材としては、従来、ポリ塩化ビニル、ポリアミド-ポリ尿素、ポリ-尿素、ゼラチン、ナイロン、ポリウレタン、メラミン樹脂が用いられていた。マイクロビーズは、従来から、医薬・医療用、香料用、化粧品用、接着剤・塗料用、複写・記録表示用の材料等、各種産業資材として、また成分輸血の現場で利用できるバイオセパレーター担体として、または血漿浄化材の担体として幅広く利用されてきた。

【0004】
粒径が小さく、サイズのバラツキが無いマイクロビーズは、固定化酵素用担体として化学分野、医療分野、食品産業分野、工業プロセス分野等幅広い各種産業分野で利用できる。例えば、タンパク質からなるマイクロビーズは、各種産業資材として多面的に利用でき、特に、アフィニティークロマトグラフィー用担体、細胞培養用担体、医薬補助剤等として利用でき、また医薬品、生理活性物質、ホルモン、ワクチン等を包含・担持させるためのマイクロカプセル化基材としても優れた特性を発揮する。農薬、肥料等をカプセル化したマイクロビーズは、持続効果が必要とされる土壌改質材として有効である。また、微量であっても新規な機能を持つ飼料成分、家畜飼料、または養魚飼料のための担体としても利用できる。微細でサイズのバラツキが無いマイクロビーズは、ファインケミカル分野で特殊な利用が可能となる。

【0005】
かかるマイクロビーズは、高分子素材に溶媒を加えて溶解し、均一で濃厚な溶液(以下、ドープという)とし、このドープを高分子凝固作用を有する溶媒からなる凝固浴中に滴下し、凝固浴中で試料分子が凝固する性質を利用する等の複雑な方法で製造されていた。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】有効成分を担持するためのマイクロビーズは、従来から種々の素材を用いて製造されていたが、マイクロビーズ素材と有効成分との分子間相互作用を考慮した分子設計に基づく素材の開発は極めて遅れており、いまだ満足すべきものは開発されていないのが現状である。従来の素材からなるマイクロビーズの場合、ビーズから有効成分が放出される速度を調節することは困難であった。また、マイクロビーズの素材となる物質を化学合成し、その後、粒径が均一なマイクロビーズを製造しなければならず、繁雑な調製作業と熟練とが必要であった。

【0007】
マイクロビーズは、通常、素材となる物質を溶解したドープを細孔ノズルから凝固浴中に吐出させ、凝固浴中で凝固させて製造されている。しかし、マイクロビーズのサイズおよびマイクロビーズ中に包含される医薬品等の有効物質の徐放速度に影響を及ぼすビーズの多孔質状態は、ドープを凝固浴に入れる際の脱溶媒の速さ、ビーズへの凝固液の浸透、拡散速度等により大幅に変化してしまうため、またビーズを調製するための微妙な条件の差がビーズのサイズを変えてしまうため、サイズが均一なマイクロビーズを製造するには、繁雑な調製作業と熟練とが必要であった。さらに、従来法では、ドープを経済的に、しかも効率的に多量生産することは困難であった。

【0008】
上記のような問題があるため、収率、効率、経済面で優れ、かつ取り扱いが容易な調製作業により、均一微細粒径の有機高分子素材からなるマイクロビーズを製造するための技術開発が強く望まれていた。

【0009】
したがって、本発明は、上記問題点を解決して、粒径のバラツキが無く、微細なタンパク質のような高分子素材からなるマイクロビーズ、およびその有効な製造方法、ならびにそのビーズを製造するためのタンパク質のような高分子素材のドープを提供することを課題としている。

【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、昆虫由来の生体高分子の新しい利用技術の開発について鋭意検討を進めてきた中で、絹タンパク質等の生体高分子を各種の有機溶媒に溶解させるための基本的な実験を積み重ね、例えば絹フィブロイン繊維を有機溶媒中に直接溶解させて得た絹タンパク質ドープを細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下することで、サイズの揃ったマイクロビーズを調製することができることを見出し、上記課題を解決して本発明を完成させるに至った。

【0011】
すなわち、例えば家蚕生糸(繭糸)、野蚕生糸、およびそれらの生糸を精練して得られる絹フィブロイン繊維を有機溶媒に溶解させて、絹タンパク質ドープとし、このドープを例えば注射筒等に入れ、圧力を加えて注射針の細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下させ、または凝固浴中に吐出させ、その後、さらに凝固浴中に所定時間放置することでタンパク質を凝固せしめた後、ドープに含まれる有機溶媒を除去することによりサイズの揃った均一なマイクロビーズを製造することができること、また、絹タンパク質ドープに溶解し難い中性塩を該ドープに添加し、これを細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下させ、または凝固浴中に吐出させて凝固せしめ、その後、さらに凝固浴中に所定の時間放置することによりタンパク質素材を完全に凝固せしめ、次いでドープに含まれる有機溶媒を除去することによりマイクロビーズ形状とし、しかる後、濾紙により濾取したマイクロビーズを中性塩のみを溶解する溶媒・溶液中に入れて中性塩だけを溶解除去することにより多孔質状態の絹タンパク質のマイクロビーズを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0012】
本発明者らは、まず、タンパク質繊維を溶解するために最適な有機溶媒を探索するに際し、単独の溶媒では所定の目的に合致するものがないことから、複数の有機溶媒を組み合わせ、最適な溶解条件を探究し、種々の溶媒の組み合わせの中から、タンパク質ビーズを製造するために適した混合溶媒とタンパク質ドープ濃度とを明らかにした。この結果に基づいて行ったその後の研究によって、種々の高分子素材について、例えば(1)絹フィブロインまたは絹セリシン等の絹タンパク質、化学修飾した羊毛ケラチン(例えば、カルボキシメチルケラテイン)等の天然高分子素材、(2)ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の高分子ビニル化合物、(3)キチン、キトサン、プルラン(多糖類)、サッカロース、デキストリン等の天然高分子素材について、種々の混合有機溶媒、すなわち高分子素材を溶解する働きを有する第一溶媒と該高分子素材の分子の切断を防止する作用を有する第二溶媒との混合有機溶媒が、これらの高分子素材を溶解し、ドープを作製するのに適していることが分かった。上記化学修飾した羊毛ケラチンとは、羊毛ケラチン分子間のS-S結合を還元反応により切断し、その後の反応でS-S結合が再結合しないように、この部分を例えばカルボキシメチル基で修飾した試料を意味する。

【0013】
第一溶媒は、高分子素材分子間の水素結合を切断しつつ、溶解に伴う高分子素材の分子量低下を抑え、かつ高分子素材の高分子性を保持することができるものであり、例えばジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、その混合物等が望ましい。高分子性とは、溶解処理後も素材本来の高分子量が保存でき、分子量の低下のないことを意味する。また、第二溶媒は、第一溶媒と相溶性があり(分子レベルで混ざり合い、分離することがない)、溶解処理に伴う高分子素材の分子量低下を抑えつつ、高分子素材の溶解性を向上させる働きを有するものであり、例えば塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、その混合物等が望ましい。例えば、カイコ由来の絹フィブロイン繊維を溶解するには、ジクロロ酢酸(DCAと略記することもある)と塩化メチレン(MCと略記することもある)との混合有機溶媒が最適であることが分かった。第一溶媒と第二溶媒との混合比率は、50-95:50-5v/v%であればよい。

【0014】
本発明の高分子素材のドープは、上記第一溶媒と第二溶媒との混合有機溶媒に高分子素材を溶解してなるものである。

【0015】
本発明の高分子素材のマイクロビーズは、上記ドープから得られるものである。すなわち、上記のような作用をするDCA等の第一溶媒とMC等の第二溶媒との混合有機溶媒中に、高分子素材を溶解させて、高分子素材のドープを得、続いて、このドープを凝固溶媒中に滴下し、高分子素材の凝固速度を一定に保ちつつ凝固させることにより、一定粒径で、圧力をかけても変形し難いという機械的強度に優れた、高分子素材のマイクロビーズを効率的且つ経済的に製造することができる。高分子素材のドープを調製するための混合有機溶媒としては、特に制限はなく、上記したように、高分子素材の分子量低下が起こり難い溶媒で、高分子素材の溶解性を向上させる働きを持つ溶媒であれば利用できる。高分子素材の分子量低下を防止しながら高分子素材を溶解させるために用いる第一溶媒としては、DCAが好ましく用いられる。また、高分子素材の溶解を促し、かつ沸点が低く、エタノール等の凝固浴で除去され易い第二溶媒としては、MC、またはクロロホルムが好ましく用いられる。このMCは、DCA処理時における高分子素材の分子量低下を抑えつつ、高分子素材の溶解性を向上させる働きがある。

【0016】
本発明で用いる第一溶媒と第二溶媒との混合比率、例えばDCAとMCの混合系における混合比率は、DCA量50-95v/v%に対して後者のMC量は50-5v/v%であればよく、好ましくはDCA量60-80v/v%に対して後者のMC量は40-20v/v%である。DCA量が95v/v%を超えると高分子素材の溶解性は著しく向上するが、高分子素材の分子鎖が切断され、分子量低下が顕著となり、最終製品の高分子素材のビーズにした場合、素材が持つ本来の高分子性が失われ、機械的特性等の実用性機能が劣悪化してしまう。一方、DCA量が50v/v%未満だと高分子素材の溶解性が不十分となり、所望の均一な高分子素材のドープが得られなくなる。

【0017】
DCAとMCの混合溶媒中に高分子素材を溶解させる際に、高分子素材の分子量低下を抑えながら、均一な高分子素材のドープを得るためには、高分子素材を穏やかな条件で溶解させることが望ましく、そのために温度は低温度領域の方が良好な結果が得られる。溶解温度は、5-50℃の範囲で良く、好ましくは5-30℃、特に好ましくは10-15℃である。溶解濃度が高すぎると高分子素材を溶解させる程度が過度となり、高分子素材の分子量が低下し、高分子素材の高分子性が失われてしまう恐れがある。また、溶解温度が低過ぎると溶解量が上がらず効果的ではない。

【0018】
高分子素材を充分に溶解するには、容器中にDCAとMCとの混合溶液を入れ、所定の大きさに切断した高分子素材をその中に入れスタラーチップを用いてDCA/MCの混合溶液をスタラー攪拌すると良い。そのための溶解時間は、通常20分-5時間が妥当であり、望ましくは、45分-90分である。

【0019】
本発明のマイクロビーズの製造方法によれば、高分子素材のドープ中に抗生物質や生理活性物質等の有効成分を溶解し、これを凝固浴中に滴下させることにより有効成分を含有し、徐放担体等の各種工業資材として利用できる一定粒径のビーズまたは多孔質ビーズを製造することができる。

【0020】
高分子素材の多孔質状態のビーズは、上記のように先ず高分子素材のドープを調製した後、DCA/MC等の混合有機溶媒に対しては溶解度が低く、水に対しては高い溶解度を示す中性塩で微粉末化したものを添加し、この中性塩を含む高分子素材のドープを細孔ノズルから凝固浴に滴下し、所定の時間放置(例えば、室温で10-20分間)し、高分子素材を凝固させて高分子素材のビーズを製造し、次いで濾紙またはガラスフィルター等でビーズを濾取し、濾取したビーズを中性塩溶解作用を持つ水等の溶媒中に所定の時間放置して中性塩を除去することにより製造できる。ここで利用できる中性塩は、通常の中性塩であれば種類を問わず利用できるが、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を利用できる。これらの中性塩の中で、使用する有機溶媒に溶けず、水溶液に対して高い溶解性を示す中性塩であって、かつ生体組織に無害で、安価なものとして塩化ナトリウムが最も好ましく利用できる。得られた多孔質状態のビーズは表面積が広いので生理活性物質等の徐放担体として利用できる。

【0021】
本発明のマイクロビーズの化学成分は、生理活性物質等の有効成分と強い分子相互作用を持つため、マイクロビーズ表面に酵素もしくは免疫抗体を化学的、または物理的に結合させることもできる。例えば、免疫グロブリンなどの抗原・抗体を粒子表面および/または内部に固定化することにより、免疫担体として利用できる。また、本発明のビーズまたは多孔質状態のビーズは、保湿性に優れているため、化粧品材料としても利用できる。有効表面積の広い微粒子という特徴を活して、さらに効率的な酵素機能を発揮させることも可能である。

【0022】
本発明に用いる混合有機溶媒はまた、種々の高分子素材を溶解させることができ、その結果、良好な機能と形態を持つマイクロビーズを製造させることが可能である。本発明で用いられる上記のような絹タンパク質、キチン、キトサン等の高分子素材は、生体組織に埋め込んでも、いずれも抗原とはなり難い。また、本発明のタンパク質ビーズは、所定の時間後生体内の酵素により分解されるという特徴を持っている。

【0023】
本発明においてドープを凝固浴に滴下するための手段には特に制限はなく、細孔ノズルを有する容器であればよい。

【0024】
本発明ではまた、前記細孔ノズルの口径、高分子素材のドープ濃度、ノズル押し出し圧力、凝固浴の溶媒濃度、凝固浴の種類、凝固浴中での高分子素材ビーズの放置時間等を任意に変えることによって、得られる高分子素材のビーズの直径を所望の値に任意に変化させることが可能である。

【0025】
【発明の実施の形態】本発明で用いることができる高分子素材としては、上記したような各種天然高分子素材、高分子ビニル化合物であれば特に制約無く利用できるが、天然のタンパク質繊維のような形態のものを原材料として使用することが望ましい。例えば、家蚕由来の絹機維、またはその近縁種のクワコ由来の絹繊維であっても良いし、野蚕由来の天蚕、柞蚕、ひま蚕、エリ蚕等の絹繊維であっても良い。また、動物由来の羊毛繊維またはスパイダーシルクであっても同様に利用できる。以下、タンパク質材料として、絹タンパク質を代表例に挙げて説明する。

【0026】
家蚕幼虫や野蚕幼虫が吐糸して作り出すのが繭糸である。これらの繭糸の外側は、セリシンで覆われている。絹フィブロイン繊維を得るには、絹セリシンを精練処理により除去することが必要である。家蚕繭糸であれば、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液で煮沸処理すると絹セリシンは除去され、野蚕繭糸であれば、例えばメタケイ酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸のような混合溶液で加熱処理すると絹セリシンは除去され得る。また、絹セリシンは、家蚕繭糸をアルカリ溶液で煮沸処理し、これをセルロース製透析膜中で透析することで調製できる。

【0027】
絹タンパク質繊維を溶解させるには、絹タンパク質を溶解する働きを有する第一溶媒(例えば、DCA、トリクロロ酢酸(以下、TCAと略記することもある。)等)と、絹タンパク質の分子量の低下を防止する機能を持つ第二溶媒(例えば、MC、テトラクロロエチレン、クロロホルム等)との組み合わせを使用する。例えば、DCAとMC、DCAとクロロホルム、またはDCAとテトラクロロエチレンの組み合わせが好ましく用いられる。タンパク質を溶解させるために用いられる第一溶媒としては、DCA、TCAが好ましい。第二有機溶媒としては、MCが好ましく、この第二溶媒は、絹フィブロインの分子量を低下させる程度を軽減するため、絹フィブロインドープの粘度を低下させるため、またドープへの絹フィブロインの溶解度を上げるために有効である。MCの代わりに用いられるものとしては、クロロホルムが挙げられる。第一溶媒と第二溶媒の組み合わせでは、DCAとMCの組み合わせが最も望ましい。

【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明するに当たり、便宜上、混合溶媒の代表例としてDCAとMCとの組み合わせを用いるが、これは本発明を何ら限定するものではない。

【0029】
本発明では、絹タンパク質を溶解するための、DCA、MCの混合系での両者の混合比率は、DCA量50-95v/v%に対して、MC量は50-5v/v%が好ましく、容積比でDCA:MCが80:20であるものが最も好ましい。DCA量が95v/v%を超えると、絹タンパク質繊維の溶解性は著しく向上するが絹タンパク質の分子量低下が顕著となり、絹タンパク質本来の高分子性を保持した絹タンパク質のビーズの製造は難しい。

【0030】
ドープ中に含まれる絹タンパク質濃度は5-20v/v%、好ましくは8-14v/v%が良い。ドープ中の絹タンパク質濃度が5v/v%未満であっても、20v/v%超えても凝固浴中におけるマイクロビーズの凝固状態が劣悪となり、サイズのバラツキが無い真球状のマイクロビーズが得られ難い。混合有機溶媒中の絹タンパク質濃度が5v/v%未満であると、凝固過程でできる絹タンパク質マイクロビーズにはその分だけDCA/MC混合有機溶媒が多く含まれ、これを除去するには、凝固過程で絹タンパク質マイクロビーズを凝固浴中に長時間放置する必要があり、製造効率上好ましくない。一方、混合有機溶媒に含まれる絹タンパク質濃度が20%を超えると、凝固浴中では均一な形状のマイクロビーズが得られ難くなる。また、サイズが小さいマイクロビーズを調製するには、低濃度の絹タンパク質ドープを用い、所望のビーズサイズに応じて微細な口径のノズルから凝固浴中に絹タンパク質ドープを滴下することが望ましい。

【0031】
絹繊維等のタンパク質繊維を充分に溶解するには、例えば三角フラスコ等の容器にDCAとMCとの混合溶液を入れ、ハサミで細かに切断(例えば、3~5mmに切断)したタンパク質繊維をその中に入れ、スタラーチップを用いてDCA/MCの混合溶液をスタラー攪拌すると良い。絹繊維を溶解させるための溶解時間は、通常20分-5時間が妥当であり、望ましくは、45分-90分である。その後に、室温に所定の時間静置して、溶媒中の泡を極力除去するとよい。

【0032】
本発明で凝固浴として利用できる有機溶媒は、メタノール、エタノールなどのアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、もしくはアセトン等またはそれらの混合物のようなタンパク質繊維を凝固させる作用のある有機溶媒であれば、いずれも利用できる。アルコールであれば60-100v/v%の濃度のものがタンパク質を効果的に凝固させることができ、アルコール濃度が60-80%のものが好ましく用いられる。アルコール濃度が低すぎると、タンパク質を凝固させる能力が弱まってしまう。これらの混合溶媒、例えばアルコールとN,N-ジメチルホルムアミドとの混合溶媒も利用できる。あるいはまた、絹フィブロイン分子の凝集性を高める作用のあるものであればアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド以外の有機溶媒であっても種類を問わず利用できる。

【0033】
本発明のタンパク質マイクロビーズまたは多孔質状態のマイクロビーズに包含・担持できる酵素、医薬品、生理活性物質、触媒、抗生物質などの有効成分は使用目的に合わせて選択できる。水溶性のものであっても、水不溶性のものであっても同様に利用できる。好ましくは、DCA/MCなどの成分からなる混合溶媒に分散、溶解するものであり、分散・溶解した際に、有効成分の活性が失われないものであればいかなる種類の有効成分であっても利用できる。

【0034】
このように、タンパク質マイクロビーズに包含・担持することができる有効成分は、タンパク質マイクロビーズの原材料であるタンパク質ドープに溶解できるもの、または分散可能なものであれば何れも利用できる。タンパク質ドープに溶解または分散せしめる有効成分の量は、およそ0.005-0.5重量%で良く、望ましい有効成分量は、0.01-0.03重量%である。しかしながら、もちろんタンパク質ドープ中の有効成分量は所望の有効成分の活性度合いにより自由に変えることができ、上記のような使用用途に合わせて自由に決めることができる。

【0035】
本発明の大きな特徴の一つは、有効成分を溶解、分散せしめたタンパク質ドープを用いることにより、前記したようなビーズ調製工程を経て有効成分を含む絹タンパク質のマイクロビーズまたは絹タンパク質の多孔質状態のマイクロビーズを製造できる点にある。また、凝固浴の種類、凝固時間、またはビーズの大きさを調整することにより有効成分の徐放速度の制御されたマイクロビーズを製造することもできる。

【0036】
絹タンパク質の多孔質体構造を持つマイクロビーズを製造するには、タンパク質マイクロビーズを調製する方法と同様に行うが、第一溶媒と第二溶媒との混合比率が、20-30v/v%対80-70v/v%からなる混合溶媒中に絹タンパク質の濃度が5-20wt%となるように絹タンパク質繊維を溶解させて行う。

【0037】
絹タンパク質の多孔質体構造を持つマイクロビーズを製造する際には、タンパク質ドープに、DCA/MC等の混合溶媒に対しては溶解度が低く、水に対しては高い溶解度を示す中性塩を入れておくと良い。この目的で利用可能な中性塩としては、前記したような多様な中性塩が挙げられる。DCA/MCのような混合溶媒に添加できる中性塩の量は、通常、10-20wt%である。

【0038】
絹タンパク質をDCA/MCなどの混合溶媒に溶解し、かつ塩化ナトリウム等の中性塩を微粉末化したものを添加して得た絹タンパク質ドープを細孔ノズルを通してエタノール等の凝固浴中に滴下し、室温度で10-20分放置する。その後、ガラスフィルターでマイクロビーズを濾取し、中性塩溶解作用を持つ水等の中に30分程度放置して多孔質体構造を持つマイクロビーズを調製する。かかるマイクロビーズは表面積が広いので生理活性物質等の有効成分の徐放担体として利用できる。

【0039】
本発明においてドープを凝固浴に滴下するための手段として、例えば注射筒等を用いることができる。

【0040】
また、本発明の絹フィブロインビーズは、水分との親和性が高い絹タンパク質であるため、組織培養によって養成した不定胚や不定芽を包み込む包理剤(カプセル材)として利用できる。従来、不定胚のカプセル材としてはアルギン酸カルシウムが用いられていたが、これは乾燥に弱く、野外の土壌に直接播種すると直ぐに乾燥してしまうという欠点があった。

【0041】
【実施例】次に本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれらの例に限定されるものではない。

【0042】
実施例中の細菌活性の評価は次の方法に基づいて行った。

【0043】
抗菌性評価:抗菌活性検定に先立って、以下の実施例で用いる高分子素材のビーズは70%エタノールで2分間処理し殺菌した。抗菌性評価のために用いた植物病原細菌は、植物由来のファイトアレキシンあるいは抗生物質に明瞭な抗菌活性を示し、トマトの重要な病原細菌であり、植物病原細菌の中でも数少ないグラム陽性菌としてのトマトかいよう病細菌(Corynebacterium michiganese pv. michiganese)を選んだ。

【0044】
トマトかいよう病細菌に対する抗菌活性検定法:加熱溶解後55℃に保持した脇本半合成培地と、検定菌の胞子液(濃度105~106個/ml)2mlとを混合してシャーレに流し込んで平板状に固め、2日後の阻止円の大きさ(mm)を評価した。

【0045】
また、以下の実施例では、ドープを凝固浴に滴下するために、細孔ノズルを有する容器として注射筒を用いたが、注射筒に限らず、細孔ノズルを有するものであればよい。

【0046】
実施例1
絹タンパク質の溶媒として、DCAとMCとの比率が70と30v/v%とから成る混合有機溶媒(以下、DCA/MC(70/30))を調製した。0.22gの絹フィブロイン繊維を25℃で2mlのDCA/MC(70/30)に溶解し、6時間かけて、11wt%(0.11g/ml)の絹フィブロインドープを調製した。続いて、抗生物質を含んだ絹タンパク質ビーズを製造するため、このドープ中に、抗生物質のリファンピシン、またはテトラサイクリンを10mgづつ溶解させた。こうして調製された抗生物質含有絹タンパク質ドープを注射針の細孔ノズルを通して、凝固浴表面から上方の5cm隔てた位置から、100%のエタノールから成る凝固浴に一滴づつ滴下した。凝固浴に滴下したタンパク質ドープの粒状滴は、各滴中に含まれるDCA/MCの混合有機溶媒がエタノールと順次交換されながら、タンパク質の凝固が進む。このようにして、直径約2mmの絹フィブロインマイクロビーズを調製した。凝固浴での放置時間を5分、10分、30分、1時間、2時間、5時間とした。トマトかいよう病細菌の増殖阻害に及ぼす効果を調べるため、所定時間培養後、マイクロビーズの周辺に現れる阻止円の直径を測定した。阻止円の評価は、抗菌実験開始後2日目に行った。得られた結果を表-lに示す。R1~R6、T1~T6は、絹タンパク質マイクロビーズ中にリファンピシンまたはテトラサイクリンをそれぞれ含んだマイクロビーズであり、それぞれの1~6は、マイクロビーズ調製時の凝固浴中滞留時間が5分、10分、30分、l時間、2時間、5時間に対応したものである。なお、表中のAPはマイクロビーズの周辺に現れる阻止円の直径(mm)を意味する。

【0047】
【表1】
JP0002972877B1_000002t.gif【0048】表-1から、本発明の絹フィブロインビーズの徐放効果は優れており、凝固浴中におけるビーズの放置時間を変えることで抗生物質の徐放速度を制御できることが分かる。

【0049】
実施例2:ビーズの高分子性保持の検証
実施例1と同様の方法で調製した絹タンパク質マイクロビーズの高分子性を評価するため、理学電機製の示差走査熱量計(DSC)により試料の熱分解挙動を分析した(測定条件:昇温速度10℃/分、窒素雰囲気、試料重量2.2mg)。変性程度が軽微な対照区の絹フィブロイン膜は、次のようにして調製した。2.5gの家蚕絹糸を55℃、8.5M臭化リチウム水溶液20ml中に完全に溶解させた。この水溶液をセルロース性透析膜に入れて、5℃で、5日間純水と置換することで不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製した。かくして、調製された絹フィブロイン水溶液に蒸留水を加え、絶乾重量測定法による濃度が0.3%となるように絹フィブロイン水溶液の原液を調製した。この原液をポリエチレン膜上に広げ、20℃で1昼夜かけて水分を蒸発させ、透明な絹膜を作成し、これを対照区の絹フィブロイン膜として用いた。

【0050】
対照区の絹フィブロイン膜は、DSC曲線上285℃に熱分解により主要な吸熱ピークが現れた。実施例1のマイクロビーズは、288℃に熱分解による吸熱ピークが現れており、対照区の絹フィブロイン膜とほぼ同一温度で熱分解することからDCA/MCの混合有機溶媒処理で絹フィプロインの分子量が低下しないことが確かめられた。

【0051】
実施例3
DCAとMCとの混合比率が90と10v/v%とから成る混合有機溶媒(以下、DCA/MC(90/10)に家蚕絹フィブロインが10wt%含まれるように、絹フィブロイン繊維を25℃で30分溶解させて絹ドープを調製した。このドープを凝固浴表面から上方5cmの位置から注射針の細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下し、実施例1と同様にしてマイクロビーズを製造した。但し、凝固浴として、エタノールと水の系(E/W系)、ジメチルスルホキシド(DMSO)と水の系(D/W系)の2種類を用いて行った。エタノールと水との混合割合が20/80、40/60、60/40、80/20、100/0となるようにしたE/W系の区と、DMSOと水との混合割合が20/80、40/60、60/40、80/20、100/0となるようにしたDMSO/W系の区との混合溶液各10mlを10ml容のメスシリンダーに入れ、液面下2cmの位置より1ml容量の注射筒に入れた絹フィブロインドープをゲージ12の針(5cc輸血用血針細、KK大祐堂製)から凝固浴中にゆっくり吐出させた。絹ドープが粒状となって、凝固浴中を次第に沈降し、マイクロビーズが調製された。凝固浴中で12時間放置した後、メスシリシダーの底からマイクロビーズを取り出した。これらのマイクロビーズの成形状態、透明性、硬度、サイズを測定した。得られた結果を表-2に示す。成形性は(+:良いもの、-:悪いもの)として、透明性は(++:良好、+:普通,-:不透明)として、硬度は(+:ピンセットで触れて堅いもの,-:柔らかいもの)として評価し、得られたビーズの直径はマイクロメーターで評価し、その値をサイズ(mm)欄に表記した。

【0052】
【表2】
JP0002972877B1_000003t.gif【0053】表-2から明らかなように、E/W系の凝固浴ではエタノールと水との比率は60/40-100/0であると良好なビーズが得られ、DMSO/W系の凝固浴ではDMSOと水との比率は40/60-100/0であると良好なビーズが得られる。

【0054】
実施例4:各種高分子素材からなるドープの最適凝固浴の検証
DCA/MC(80/20)の混合有機溶媒に、絹タンパク質の絹セリシン(Ser)、ポリビニル化合物であるポリビニルアルコール(PVA)もしくはポリビニルピロリドン(PVP)、またはポリアクリルアミド(PAAm)の高分子素材がそれぞれ5wt%含まれるように溶解した。凝固浴として、100%のエタノール、DMSO、アセトンの各溶液10mlを10ml容のメスシリンダーに秤量し、上記高分子溶液をガラス棒を用いて凝固浴中に滴下させ、凝固浴中で高分子素材が凝固する状況を目視で観察した。得られた結果を表-3、4、5に示す。

【0055】
得られたマイクロビーズの凝固状況は次の基準により評価した。+:良好(凝固浴中に滴下した高分子素材が良好なビーズ形態となる。)±:やや良好、-:不良(ビーズ形態とならず高分子溶液のまま糸を曳く形態となる。)

【0056】
【表3】
JP0002972877B1_000004t.gif【0057】
【表4】
JP0002972877B1_000005t.gif【0058】
【表5】
JP0002972877B1_000006t.gif【0059】PVAのマイクロビーズを製造するための凝固浴はエタノールが妥当である。PAAmを凝固させるにはDMSOまたはアセトンが好ましい。

【0060】
実施例5:多孔質状マイクロビーズの調製
DCAとMCとの混合比率が30と70v/v%とから成る混合有機溶媒(DCA/MC(30/70)に絹フィブロイン繊維を10wt%となるように溶解させた。その後、めのう鉢とめのう棒を用いて微細に砕いた塩化ナトリウムを混合有機溶媒の20wt%となるように分散させた。かくして得られたタンパク質ドープを注射筒に入れ、圧力を加えながら注射針の細孔ノズルより、100%エタノール中に順次滴下し、エタノール中に15分放置して凝固させた。その後、ガラスフィルターでマイクロビーズを濾取し、続いて、マイクロビーズを水の中に30分放置してマイクロビーズ内部から塩化ナトリウムを溶出させ、多孔質状態のマイクロビーズを調製した。かくして得られたマイクロビーズの多孔度合はほぼ10~20%であった。この多孔度合は使用する中性塩の量によって自由に調節することができる。

【0061】
実施例6:凝固浴の検証
10wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(30/70)ドープを20ml容量の注射筒に入れ、注射針(TSK、18G)の細孔を通して凝固浴中に吐出させた。20ml容のガラス瓶に15mlの異なる5種類の凝固浴(水、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール(MET)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール(ET))を満たし、絹フィブロインドープを少量ずつ凝固浴に滴下し、凝固浴の底面に蓄積するビーズ状試料の形態を観察した。得られた結果を表-6に示す。

【0062】
【表6】
JP0002972877B1_000007t.gif【0063】表-6から明らかなように、絹フィブロインマイクロビーズを調製するための凝固浴としては、DMF、メタノール、DMSO、エタノールが適している。

【0064】
実施例7
市販品のキチン(和光純薬株式会社製)、キトサン(和光純薬工業株式会社製)、プ ルラン(東京化成工業株式会社製)、サッカロース(和光純薬工業株式会社製)、もしくはデキストリン(半井化学薬品株式会社製)、または以下のように調製した羊毛(CMK)をそれぞれ3-4mg秤量し、これを25℃の2mlのDCA/MC(80/20)に入れ溶解状態を観察した。得られた結果を表-7に示す。

【0065】
羊毛(CMK)は、羊毛ケラチンを次のように化学修飾したカルボキシメチルケラテインである。すなわち、メリノ種羊毛繊維(64’S)に含まれる色素、脂肪分を、ベンゼン-エタノール(50/50v/v%)の混合溶液を用いて、ソックスレー抽出器で2.5時間処理することで除去した。かくして得られた羊毛繊維を繊維長が約1cmとなるように細断し、その8.18gを三つ口フラスコに投入し、これに450mlの8M尿素水溶液を加えた。窒素ガスをパージさせ、アスピレーターで15分間三つ口フラスコ内を45mmHg程度に減圧させ、急激に大気圧に戻す操作を3~4回繰り返した。窒素置換が完了した後、三つ口フラスコ内に4.8mlのメルカプトエタノールを加えて、8M尿素水溶液中で2~3時間放置した。更に、約100mlの5N-KOH溶液を微量づつ加えて三つ口フラスコの混合溶液のpHを10.5に調節した。室温で3時間かけて羊毛繊維が完全に溶解するのを待った。繊維状の羊毛繊維が溶解したものがケラテイン水溶液である。セルロース透析膜を用いケラテイン水溶液を純水で2日間透析した。こうして調製した0.01%のケラチン水溶液450mlに、室温で9.5gのヨード酢酸を加えてケラチンのS-カルボキシメチル化反応を1時間行った。5N-KOH水溶液でケラチン溶液のpHを8.5に調整し、S-カルボキシメチルケラテインの水溶液を得た。セルロース製の透析膜を用いてこの水溶液を純水で2日間透析し、純粋なS-カルボキシメチルケラテイン水溶液を得た。このようにして調製されたS-カルボキシメチルケラテイン水溶液を東西通商株式会社製の真空凍結乾燥機(WFD2700-ES-R型)を用いて乾燥させ、粉末状のカルボキシメチルケラテインを調製し、これを上記のようにDCA/MC混合溶媒に溶解せしめた。

【0066】
【表7】
JP0002972877B1_000008t.gif【0067】表-7から明らかなように、DCA/MC(80/20)は、キチン、キトサン、プルラン、サッカロース、デキストリン、羊毛(CMK)を良好に溶解する有機混合溶媒である。

【0068】
実施例8:リファンピシン含有家蚕絹フィブロインマイクロビーズの調製方法と徐放体機能
10wt%(mg/ml)リファンピシンと11wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/30)を20ml容量の注射筒に入れ、注射針(18G)の細孔ノズルを通して凝固浴中に吐出させた。50ml容のガラス製メスシリンダー(長さ17cm、1.6cmφ)に凝固溶媒として100%のエタノールを満たし、絹フィブロインドープを注射針の細孔から注意深く滴下させ、絹フィブロインマイクロビーズを調製した。得られた絹フィブロインマイクロビーズの形態を観察したところ、ビーズサイズはDCA/MCの混合溶媒を含んだ状態で1.4mmであり、溶媒を除去する前のマイクロビーズの重量は2.2mgであった。このビーズが徐放体として利用できるかどうか次のようにして検討した。10ml容のガラス瓶に7mlの水を入れ、この中にビーズを浸漬し、3分、1時間、1日、2日、4日の放置時間毎にビーズを取り出し、このビーズの抗菌性を調べるため、トマトかいよう病細菌の増殖阻害に及ぼす影響を調べた。得られた結果を表-8に示す。

【0069】
【表8】
JP0002972877B1_000009t.gif【0070】表-8から明らかなように、水中での徐放実験では、4日後もリファンピシンの抗菌活性は失われなかった。

【0071】
また、上記試料マイクロビーズを0.2%グルタルアルデヒド(GA)水溶液に室温で3分間入れ、高分子素材の分子間に架橋を形成させ水不溶化させたマイクロビーズを得、この水不溶化マイクロビーズについて、トマトかいよう病細菌の増殖阻害を評価した。

【0072】
【表9】
JP0002972877B1_000010t.gif【0073】なお、絹フィブロインマイクロビーズを水不溶化するには、グルタルアルデヒド水溶液で不溶化処理する他に、メタノール溶液による処理も有効であった。

【0074】
実施例9:絹フィブロインおよび/またはキチンビーズ
キチンおよび/または家蚕絹フィブロインの成分からなるマイクロビーズを次のようにして調製した。キチンとして和光純薬工業株式会社製の市販品を用い、家蚕絹糸として絹フィブロイン繊維を用いて次の3種のドープ:(l)5wt%絹フィブロインを含むDCA/MC(70/30)ドープ、(2〉2wt%のキチンおよび3wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/30)ドープ、ならびに(3)5wt%のキチンを含むDCA/MC(70/30)ドープを調製した。これら3種類のDCA/MCドープのそれぞれに、テトラサイクリン、またはリファンピシンをそれぞれ10mg/mlづつ添加したものを2ml容量の注射筒に入れ、注射筒を加圧しながら注射針(23G)の細孔ノズルを通してエタノール凝固浴中に滴下し、マイクロビーズを調製した。

【0075】
凝固浴用の力ラムは、直径11mmφ、長さ50cmのガラス管を用い、底辺から50cmまで100%のエタノールを満たした。凝固浴カラムに上記3種類のDCA/MCドープを別々に滴下し凝固浴の中で球状のマイクロビーズを調製した。かくして得られたビーズ試料の徐放機能を調べるため、50ml容のビーカーに30mlの水を入れたものに各ビーズ試料をそれぞれ一定時間浸漬し、表-10に示す放置時間ごとの、ビーズ中の抗生物質の徐放量の違いをトマトかいよう病細菌の増殖抑制評価により調べた。得られた結果を阻止円の大きさ(mm)で表-10に示す。表中、R-1~R-3はリファンピシン含有試料、またT-1~T-3はテトラサイクリン含有試料を示す。

【0076】
【表10】
JP0002972877B1_000011t.gif【0077】表-10から明らかなように、水不溶性の抗生物質であるリファンピシンを含む絹タンパク質、絹タンパク質/キチン、キチンの各ビーズは放置時間が1日になっても抗菌性機能の減少程度は軽微であるが、水溶性のテトラサイクリンを含むビーズは数時間で抗菌性機能が減少し易い。

【0078】
実施例10
実施例9記載の方法に従って、キチン(和光純薬工業株式会社製の市販品)またはキトサン(和光純薬株式会社製の市販品)から、12wt%のキチン(またはキトサン)を含むDCA/MC(80/20)ドープを調製し、このドープを実施例9と同様に100%のエタノールからなる凝固浴中に一滴づつ滴下することで、キチン(またはキトサン)マイクロビーズを調製した。

【0079】
実施例11
実施例7記載のようにして調製した粉末状のカルボキシメチルケラテインをビーズ素材として用いた。実施例9記載の方法に従って、この粉末状のカルボキシメチルケラテインから、9wt%のカルボキシメチルケラテインを含むDCA/MC(80/20)ドープを調製し、このドープを実施例9と同様に100%のエタノールからなる凝固浴中に一滴づつ滴下することで、カルボキシメチルケラテインマイクロビーズを調製した。

【0080】
実施例12:キチンと絹タンパク質とのブレンドビーズ
5wt%のキチン、または5wt%の絹フィブロインをそれぞれ含むDCA/MC(70/30)ドープを調製した。キチンと絹フィブロインとの比率が異なるビーズを製造するため、キチンドープと絹フィブロインドープとの割合を次のように変えたものを調製した。それぞれのドープを5ml容量の注射筒に入れ、凝固浴表面から上方3cmの位置から注射針(23G)の細孔ノズルよりエタノール凝固浴中に一滴づつ滴下し凝固させることで、フィブロイン/キチンビーズを製造した。製造条件を表-11に示す。調製したビーズはすべて真球状の形の整ったマイクロビーズであった。

【0081】
【表11】
JP0002972877B1_000012t.gif【0082】実施例13
6wt%のポリビニルアルコール(PVA)を含むDCA/MC(70/30)有機混合溶媒、および9wt%の家蚕絹フィブロイン(SF)を含むDCA/MC(70/30)有機混合溶媒をそれぞれ調製した。両溶液を下記の表に示すような割合で混合させてマイクロビーズ調製用のドープをそれぞれ1mL宛作り、このドープを2ml容量の注射筒に入れ、25ゲージの注射針の細孔ノズルを通してドープの上方3cmの位置から、直径1cmφ、高さ50cmのガラスチューブに満たしたエタノール凝固浴中に順次滴下することにより、形の整ったマイクロビーズを調製した。調製条件、調製組成を表-12に示す。

【0083】
【表12】
JP0002972877B1_000013t.gif【0084】表-12からPVA量が増えると凝集性が減少することが分かる。

【0085】
実施例14
9wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/30)混合有機溶媒を調製した。別に3wt%のキトサンを含むDCA/MC(70/30)混合有機溶媒を調製した。両溶液を下記に示す割合で混合してマイクロビーズ調製用のドープをそれぞれ1ml宛作った。このドープを2ml容量の注射筒に入れ、25ゲージの注射針の細孔ノズルから、直径1cmφ、高さ50cmのガラスチューブに満たしたエタノール凝固浴中に順次滴下することによりリファンピシン(R)、またはテトラサイクリン(T)を含有するマイクロビーズを調製した。ビーズの調製条件、組成比率、抗生物質(テトラサイクリンTCまたはリファンピシンRC)の含有率、および試料の周辺に現れる阻止円の直径(AP)を表-13に示す。

【0086】
【表13】
JP0002972877B1_000014t.gif【0087】実施倒15
2mlのDCA/MC(70/30)混合有機溶媒に8%となるように家蚕絹フィブロイン繊維を入れて室温で3時間かけて溶解させた。2~3分で繊維が溶け始めゲル状になる。スタラーチップを入れて攪拌する。このようにして調製した絹フィブロインドープを2mlのテルモ注射筒に入れ、注射針(25G×5/8”、0.50×16mm)を通してエタノールで満たした1cmφ×55cmのカラム内に滴下した。エタノール中に1時間放置した後、マイクロビーズを濾紙で濾別した。このビーズを水に入れると白濁して結晶化した。水溶液より取り出した直後のビーズサイズ(直径)、および取り出した後の時間経過によるビーズサイズの変化ならびにビーズの堅さを調べ、以下の表-14に示す。

【0088】
【表14】
JP0002972877B1_000015t.gif【0089】表-14から明らかなように、凝固浴より取り出した直後の直径0.85mmのビーズは、標準状態(20℃、65%R.H.)で放置すると時間の経過につれて直径が次第に減少し、それに伴いビーズが堅くなった。

【0090】
実施例16
実施例3と同じ方法で調製した1.5mlの絹フィブロインドープに約10mgの植物の種子(品種名 Lobelia, Watkins 社製, New Zealand)を入れ、種子がドープ中で均一に混合するように3分間スターラーで攪拌した後、2ml容の注射筒に入れ、5ml輸血針細(サイズ:18.8、発売元:KK大祐堂)を用いてエタノールからなる凝固浴に滴下し、植物の種子を含んだ絹フィブロインビーズを調製した。光学顕微鏡で観察したところ、絹フィブロインビーズに種子が確かに含有していることが確認された。

【0091】
従って、本発明の絹フィブロインビーズは、組織培養によって養成した不定胚や不定芽を包み込む包理剤(カプセル材)として利用できることが分かる。従来、不定胚のカプセル材としてはアルギン酸カルシウムが用いられていたが、これは乾燥に弱く、野外の土壌に直接播種すると直ぐに乾燥してしまうという欠点があった。しかし、本発明のビーズは水分との親和性が高い絹タンパク質であり保水性に優れているため乾燥に強かった。

【0092】
【発明の効果】本発明によれば、特定の混合有機溶媒を所定の混合比率で用いるので、これに高分子素材を溶解するに際し、所定の温度で、この素材が分子量の低下を起こすこともなく溶解されて有用な高分子素材のドープが提供され得るという効果がある。また、このドープを細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下することにより粒径の揃ったマイクロビーズが提供され、またこのドープ中に特定の中性塩を添加したものを凝固浴中に滴下し、凝固させた後、これを水中に入れ、中性塩だけを除去することにより粒径の揃った多孔質状のマイクロビーズが提供され得るという効果がある。さらに、本発明の製造方法によれば、煩雑な調製作業や熟練を必要としないので、均一微細粒径のマイクロビーズを容易に製造することができる。

【0093】
なお、本発明のタンパク質マイクロビーズに、例えば生理活性物質、抗生物質、酵素、医薬品、毒素等の有効成分を包含・担持・封入せしめることにより、以下詳細に述べるような、各種産業分野で有効に利用できる。

【0094】
本発明のマイクロビーズは、内部に空隙のある中空ビーズとすることもできるので、内部に封入・担持せしめた生体細胞、細菌、抗生物質、生理活性物質等は、壁素材を通して外部に徐放させることができる。

【0095】
本発明のタンパク質マイクロビーズは、医薬品、生理活性物質、ホルモン、ワクチン等のマイクロカプセル基材としても優れており、農薬、肥料等をビーズ中に封入してカプセル化したものは土壌改質材として利用できる。

【0096】
本発明のタンパク質マイクロビーズは、例えば、有効成分の分離手法として定着しているクロマトグラフィー用の充填剤(例えば、アフィニティクロマトグラフィー用担体)、細胞培養用担体および医薬補助材として利用でき、医薬品、生理活性物質、ホルモンおよびワクチン等のマイクロカプセル化基材として利用でき、また微量でも有効な飼料成分や食品素材を封入しカプセル化したタンパク質マイクロビーズは、家畜飼料や養魚飼料として利用することもできる。また、農薬、もしくは肥料成分を担持させたものは土壌改質材として利用できる。さらに、細菌等の微生物を封入、固定化したタンパク質マイクロビーズは、紫外線等のタンパク質変成要因に対する微生物の保護作用があるため天敵微生物保護材のような生物防除材として利用でき、また細菌等の微生物や生理活性物質等を封入した場合、封入された細菌等の微生物や生理活性物質の生物的および生理的な活性を長く保つことが可能となり、封入された生理活性物質、微生物の活性低下を防止する上で有効である。

【0097】
生体細胞、細菌、抗生物質、生理活性物質等を本発明のタンパク質ドープと混合することにより、または調製後のタンパク質マイクロビーズをこれら生理活性物質の溶液に浸漬することにより、これらの物質などをタンパク質マイクロビーズに含有させることができる。

【0098】
本発明のマイクロビーズは粒径が揃っているので、ファインケミカル分野等で特殊な利用が可能となる。また、本発明による生体高分子を成分とするマイクロビーズを感圧複写紙の分野で応用する場合には、塗抹工程時の乾燥性を向上させることができ、また発色印字性を大幅に改善することもできる。このように、本発明のマイクロビーズは農業、工業、医学、食品等の広い分野で有効に利用できる。

【0099】
絹フィブロイン、絹セリシン、羊毛等の天然生体高分子は、物理化学特性、吸着特性、生体適合性および微生物による分解性が良好であるため、医薬・医療用、香料用、化粧品用、接着剤・塗料および複写・記録表示用の材料等として、幅広い産業分野で利用できる生体高分子である。一方、粒径が均一な多孔質ビーズは酵素等の固定化用担体として化学分野、医療分野、食品分野および工業プロセス分野等幅広い各種産業分野で利用されている。そこで、本発明のような生体高分子の均一粒径のマイクロビーズ、多孔質状態のマイクロビーズが提供できれば、多様な方面で利用・活用することが期待できる。

【0100】
本発明によれば、担持または封入せしめた医薬品、生理活性物質、抗生物質等の徐放速度、徐放量さらには生分解性の程度を、高分子素材のドープ濃度、凝固溶媒、凝固時間を制御することで簡単に変えることができる。この作用のため高分子素材のマイクロビーズは、体内の酵素による分解程度を制御することも可能である。

【0101】
本発明の高分子素材のマイクロビーズは、生体適合性が良く、生体組織体内に入れても抗原とはなり難い。これに生理作用を持つ医薬品を固定化させて、それをヒト等の体内に埋め込んで使用しても問題は起り難い。そのため、特に、抗ガン作用を持つ医薬品を封入したタンパク質マイクロビーズは、特定患部の治療のためのミサイルキャリアーとして先端的な医療分野で利用できる。また、タンパク質マイクロビーズは、所定の時間経過後、体内の酵素により分解される得る。

【0102】
本発明の均一微細粒径のタンパク質マイクロビーズおよび多孔質マイクロビーズは、薬物デリバリーシステム用担体として、さらには化粧ファンデーション用素材を含めた広い意味での化粧品材料としても利用できる。また、かかるビーズに酵素や生体細胞等を付着、固定することにより、バイオリアクターとして、食品工業分野その他の広い産業分野においても利用できる。また、ビーズの表面および/または内部に酵素若しくは免疫抗体等を結合させることにより、免疫担体としても利用できる。また、タンパク質マイクロビーズに酵素を固定化させれば、酵素活性の安定性を高めるだけでなく、有効面積の広い微粒子という特徴を生かして、さらに効果的な酵素機能を発揮させることが可能である。

【0103】
本発明によれば、高分子素材のマイクロビーズの壁素材の物質透過量を加減することで、医薬品、生理活性物質、抗生物質等の徐放速度、徐放量、生分解性の程度を簡単に制御できる。さらには、高分子素材のマイクロビーズは生体内の酵素により次第に分解が進むので、生分解性素材としても利用できる。

【0104】
また、本発明の絹フィブロイン等の高分子素材のマイクロビーズは、水分との親和性が高い素材からなるため乾燥に強いので、組織培養によって養成した不定胚や不定芽を包み込む包理剤(カプセル材)として利用できる。