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明細書 :骨誘導促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3032824号 (P3032824)
登録日 平成12年2月18日(2000.2.18)
発行日 平成12年4月17日(2000.4.17)
発明の名称または考案の名称 骨誘導促進剤
国際特許分類 C08B 37/10      
FI C08B 37/10
請求項の数または発明の数 7
全頁数 7
出願番号 特願平11-019712 (P1999-019712)
出願日 平成11年1月28日(1999.1.28)
審査請求日 平成11年8月19日(1999.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391026405
【氏名又は名称】東京医科歯科大学長
発明者または考案者 【氏名】河内 敏行
【氏名】高橋 誠
【氏名】四宮 謙一
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
審査官 【審査官】弘實 謙二
調査した分野 C08B 37/10
要約 【課題】 より少ない薬剤量及び低い濃度でも効果的に骨誘導を促進することが可能な新たな骨誘導促進剤を提供する。
【解決手段】 グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする骨誘導促進剤。
特許請求の範囲 【請求項1】
グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする骨誘導促進剤。

【請求項2】
グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸及びケラタンポリ硫酸からなる物質群から選択される物質であることを特徴とする請求項1に記載の骨誘導促進剤。

【請求項3】
脂質がグリセロ脂質である請求項1または2に記載の骨誘導促進剤。

【請求項4】
グリセロ脂質がリン脂質であることを特徴とする請求項3に記載の骨誘導促進剤。

【請求項5】
リン脂質がホスファチジルエタノールアミンである請求項4に記載の骨誘導促進剤。

【請求項6】
グリコサミノグリカンがヒアルロン酸であり、脂質がホスファチジルエタノールアミンである請求項1に記載の骨誘導促進剤。

【請求項7】
グリコサミノグリカンの還元末端に脂質が共有結合していることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の骨誘導促進剤。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する骨誘導促進剤に関する。

【0002】
【従来の技術】医療分野、特に整形外科分野においては、骨誘導促進活性を有する医薬または医療用具について高い要請がある。

【0003】
骨誘導促進活性を有する物質の一つの種類としてグリコサミノグリカンが知られており、例えば特表平8-508973号は、分子量20,000~60,000のヒアルロン酸が0.5 mg/mlの濃度で骨誘導促進活性を有することを開示している。また特開昭62-64367号は、グリコサミノグリカン、コラーゲン、及びアパタイト等の基材からなる人工骨材を開示しており、この人工骨材により骨形成が助長される旨記載されている。

【0004】
しかしグリコサミノグリカン自体は水溶性であるため生体内において急激に拡散し、従って投与の目的部位において長時間高濃度に保ち、その骨誘導促進効果を維持することが困難であった。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、より少ない薬剤量及び低い濃度でも効果的に骨誘導を促進することが可能な新たな骨誘導促進剤を提供することである。

【0006】
【課題を解決するための手段】グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンが知られており、例えば特開平4-80201号、特開平4-80202号、特開平9-30979号等に開示されている。

【0007】
本発明者らは、この物質に着目して鋭意検討を重ねた結果、これらの脂質結合グリコサミノグリカンが骨誘導促進活性を有することを見出し、さらに驚くべきことに、これらの脂質結合グリコサミノグリカンによれば、グリコサミノグリカンを単独で使用する場合と比較して100分の1程度の濃度であっても十分な骨誘導促進効果を得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。

【0008】
従って本発明は、グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする骨誘導促進剤を提供するものである。

【0009】
本発明の好ましい態様によれば、グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸及びケラタンポリ硫酸からなる物質群から選択される物質であることを特徴とする上記骨誘導促進剤;脂質がグリセロ脂質である上記骨誘導促進剤;グリセロ脂質がリン脂質であることを特徴とする上記骨誘導促進剤;リン脂質がホスファチジルエタノールアミンである上記骨誘導促進剤;グリコサミノグリカンがヒアルロン酸であり、脂質がホスファチジルエタノールアミンである上記骨誘導促進剤;グリコサミノグリカンの還元末端に脂質が共有結合していることを特徴とする上記骨誘導促進剤が提供される。

【0010】
尚、本発明の骨誘導促進剤の活性成分である脂質結合グリコサミノグリカンは上記の通り公知の物質であるが、上記特開平4-82836、特開平6-72893号、及び特開平9-30979号は、当該物質をそれぞれ癌転移抑制剤、抗リウマチ剤及び神経疾患の治療剤として使用することが可能であることを開示するものであり、脂質結合グリコサミノグリカンが骨誘導促進活性を有することは開示も示唆もしていない。

【0011】
また、上記の骨誘導促進活性、骨形成の助長を開示するこれまでの技術については、特表平8-508973号はヒアルロン酸を使用するものであり、特開昭62-64367の人工骨材においてはコンドロイチン-4-硫酸を使用しており、いずれもグリコサミノグリカン自体を使用するものであり、グリコサミノグリカンの誘導体を使用することは何ら開示も示唆もしていない。

【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳述する。

【0013】
本発明の骨誘導促進剤は、グリコサミノグリカンに脂質が結合した脂質結合グリコサミノグリカンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする。

【0014】
本発明に使用される脂質結合グリコサミノグリカンに含まれるグリコサミノグリカンは、D-グルコサミンまたはD-ガラクトサミンと、D-グルクロン酸、L-イズロン酸及び/またはD-ガラクトースの2糖の繰り返し単位を基本骨格として構成される多糖であり、動物等の天然物から抽出されたもの、微生物を培養して得られたもの、化学的もしくは酵素的に合成されたもの等のいずれをも使用することができる。具体的には、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等)、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、ケラタンポリ硫酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのグリコサミノグリカンは通常使用される薬理学的に許容される塩であってもよい。

【0015】
これらのグリコサミノグリカンの中では特にヒアルロン酸が好ましい。ヒアルロン酸は、一般に分子量数千~約20,000,000程度であるが、10,000~2,000,000程度が好ましく、15,000~1,000,000がより好ましく、20,000~800,000であることが特に好ましい。

【0016】
また、上述のグリコサミノグリカンに結合させる脂質としては、動物、植物、微生物等の天然物由来、または化学的もしくは酵素的に合成もしくは部分的に分解された複合脂質または単純脂質を使用することができ、リン脂質等のグリセロ脂質、長鎖の脂肪酸、長鎖の脂肪酸アミン、コレステロール類、スフィンゴ脂質、セラミド等いずれも使用できる。特にホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルトレオニン、エタノールアミンプラスマロゲン、セリンプラスマロゲン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルイノシトール等のリン脂質、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール等の中性脂質等のグリセロ脂質が好ましい。特に1級アミノ基を有するリン脂質が好ましい。脂質中のアシル基の鎖長及び不飽和度は特に限定されないが、炭素数6以上のものが好ましい。アシル基としては例えばパルミトイル(ヘキサデカノイル)またはステアロイル(オクタデカノイル)などが例示される。また、これらの脂質は通常使用される薬理学的に許容される塩であってもよい。

【0017】
グリコサミノグリカンの脂質との結合位置は特に限定されるものではないが、グリコサミノグリカンの末端部が好ましく、特に還元末端への結合が好ましい。また、結合の形態は、特に化学結合が好ましく、その中でも共有結合による結合が最も好ましい。

【0018】
グリコサミノグリカンと脂質とが共有結合した脂質結合グリコサミノグリカンの場合、グリコサミノグリカンのカルボキシル基(ラクトンを含む)、ホルミル基(ヘミアセタール基も含む)、水酸基もしくは1級アミノ基、またはグリコサミノグリカンに別途導入された前記基と、脂質のカルボキシル基、ホルミル基もしくは1級アミノ基、または脂質に別途導入された前記基との間で形成される酸アミド結合(-CO-NH-)、エステル結合またはアミノアルキル結合(-CH2 -NH-)によって共有結合したものが好ましい。

【0019】
特に、グリコサミノグリカンの還元末端のピラノース環を開環させ、化学的処理によって形成されたグリコサミノグリカンのカルボキシル基(ラクトンを含む)と、脂質の1級アミノ基との反応によって形成された酸アミド結合(-CO-NH-)、グリコサミノグリカンのウロン酸部分のカルボキシル基と、脂質の1級アミノ基との反応によって形成された酸アミド結合(-CO-NH-)、またはグリコサミノグリカンの還元末端のピラノース環を開環させ、化学的処理によって形成されたグリコサミノグリカンのホルミル基と、脂質の1級アミノ基との反応によって形成されたシッフ塩基を還元して形成されたアミノアルキル結合(-CH2-NH-)により結合されたものが好ましい。

【0020】
なお、上記共有結合に関与するアミノ基、カルボキシル基、ホルミル基(ヘミアセタール基を含む)、水酸基はグリコサミノグリカンまたは脂質に元来存在するもの、これらに化学的処理を施すことによって形成されたもの、あるいは上記官能基を末端に有するスペーサー化合物を、予めグリコサミノグリカンまたは脂質と反応させることによって別途導入されたもののいずれであってもよい。

【0021】
特に好ましい脂質結合グリコサミノグリカンである、脂質がグリコサミノグリカンの還元末端に共有結合した脂質結合グリコサミノグリカンの製造法としては、例えば特開平4-80201号、特開平4-80202号及び特開平9-30979号に開示された方法が挙げられ、例えば以下のような方法が使用できる。

【0022】
還元末端限定酸化法
この方法は、グリコサミノグリカンの還元末端の糖残基であるガラクトース残基、ウロン酸残基またはヘキソサミン残基を還元し、限定酸化(部分酸化)することにより、還元末端のピラノース環を特異的に開環(開裂)させるとともに、該グリコサミノグリカンの還元末端にホルミル基を形成させてアルデヒド化合物とし、このアルデヒド化合物のホルミル基と脂質の1級アミノ基とを反応させてシッフ塩基を形成させ、次いでシッフ塩基を還元し、アミノアルキル結合(-CH2-NH-)を形成させて、グリコサミノグリカンと脂質とを共有結合させる方法である。

【0023】
グリコサミノグリカンの還元末端の糖残基の還元は、グリコサミノグリカンに対して5~50当量程度、好ましくは25~30当量の還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリ塩等)を使用し、適当な水性溶媒(例えば、水、ホウ酸塩緩衝液等)中、通常10~30℃、好ましくは15~25℃で行うことができる。

【0024】
上記還元後、限定酸化を行ってグリコサミノグリカンの還元末端に特異的にホルミル基を有するアルデヒド化合物を製造する。限定酸化は、上記還元後のグリコサミノグリカンに対して1~10当量、好ましくは3~6当量の酸化剤(過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸アルカリ塩等)を用い、通常0~10℃、好ましくは0~4℃で行うことができる。

【0025】
得られたアルデヒド化合物と1級アミノ基を有する脂質(ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質等)とを反応させてシッフ塩基を形成させる反応は、水性溶媒(水、リン酸塩緩衝液等)または適当な有機溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)に上記アルデヒド化合物を溶解した溶液と、適当な有機溶媒(クロロホルム、メタノール等)に脂質を溶解した溶液とを混合し、通常15~60℃の温度で反応させることができる。この反応時または反応終了後に適当な還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリ塩等)を作用させてシッフ塩基を還元することができる。

【0026】
なお、本反応方法で脂質結合グリコサミノグリカンを製造する際に、1級アミノ基を有する脂質の代わりに、1級アミノ基を有する2価官能性のスペーサー化合物(例えば、エチレンジアミン等のアルキレンジアミン、またはリジン等のアミノ酸等)と上記アルデヒド化合物とを反応させて、アミノアルキル結合(-CH2-NH-)を形成させ、次いで上記スペーサー化合物の他方の官能基(例えばアミノ基)と反応し得る官能基(例えば、カルボキシル基)を有する脂質(例えば、モノアシルグリセロールコハク酸エステル等のモノアシルグリセロールジカルボン酸エステル)と反応させてもよい。

【0027】
還元末端ラクトン化法
この方法は、グリコサミノグリカンの還元末端の糖残基であるガラクトース残基、ウロン酸残基またはヘキソサミン残基を酸化することにより、還元末端のピラノース環を特異的に開環(開裂)させて該グリコサミノグリカンの還元末端にカルボキシル基を形成させて、次いでラクトン形成反応に付すことによって該グリコサミノグリカンの還元末端をラクトン構造とし、このラクトンと脂質の1級アミノ基とを反応させて酸アミド結合(-CO-NH-)を形成させることによって、グリコサミノグリカンと脂質とを共有結合させる方法である。

【0028】
グリコサミノグリカンの還元末端の糖残基の酸化は、グリコサミノグリカンに対して2~20当量程度、好ましくは5~15当量程度の酸化剤(ヨウ素、臭素等)を使用し、適当な水性溶媒(例えば、水、リン酸塩緩衝液等)中、通常0~40℃、好ましくは15~30℃で行うことができる。

【0029】
上記酸化反応後、強酸性陽イオン交換樹脂、例えばダウエックス50(商品名;ダウケミカル社製)、アンバーライトIR-120(商品名;オルガノ社製)及び/または酸(塩酸、硫酸等の無機酸、または酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸の酸無水物)で処理することによって、グリコサミノグリカンの還元末端が特異的にラクトン化されたラクトン化合物を製造することができる。

【0030】
得られたラクトン化合物と1級アミノ基を有する脂質(ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質)との反応は、適当な水性溶媒(水、リン酸塩緩衝液等)または適当な有機溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)にラクトン化合物を溶解した溶液と、適当な有機溶媒(クロロホルム、メタノール等)に脂質を溶解した溶液とを混合し、5~80℃、好ましくは30~60℃の温度で反応させればよい。

【0031】
なお、還元末端限定酸化法の場合と同様に、1級アミノ基を有する脂質の代わりに、1級アミノ基を有する2価官能性のスペーサー化合物と上記ラクトン化合物とを反応させて酸アミド結合(-CO-NH-)を形成させ、スペーサー化合物の他方の官能基と脂質の官能基(例えばカルボキシル基)とを反応させてもよい。

【0032】
但し、脂質がグリコサミノグリカンの還元末端に共有結合した脂質結合グリコサミノグリカンの製造方法はこれらの方法に限定されるものではなく、グリコサミノグリカンの還元末端に脂質を結合しうる方法であれば他の任意の方法によっても製造することができる。

【0033】
グリコサミノグリカンの末端以外に脂質を導入する方法としては、例えばグリコサミノグリカンのウロン酸部分のカルボキシル基と脂質の1級アミノ基とを反応させて、酸アミド結合(-CO-NH-)を形成させる方法が挙げられる。

【0034】
上記反応に際し、縮合剤(例えば、1-エチル-3-( 3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等)を用いて酸アミド結合(-CO-NH-)を形成させるか、あるいはウロン酸部分のカルボキシル基を該縮合剤の存在下、活性化剤(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール等)と反応させて活性エステルとした後、該脂質と反応させて酸アミド結合(-CO-NH-)を形成させることができる。

【0035】
尚、上記反応においてはグリコサミノグリカンのウロン酸部分を有機溶媒に溶解可能な塩(トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミンの塩等)とし、反応を有機溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン等)中で行うことが好ましい。

【0036】
脂質結合グリコサミノグリカンの薬理学的に許容される塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;トリアルキルアミン等のアミン塩;及びピリジン等の有機塩基との塩等が挙げられ、特に限定されないが、特にアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。

【0037】
上記のような脂質結合グリコサミノグリカンの具体例としては、ジパルミトイル-L-(α-ホスファチジル)エタノールアミン結合ヒアルロン酸、ジパルミトイル-L-(α-ホスファチジル)エタノールアミン結合コンドロイチン硫酸、ステアロイルパルミトイルホスファチジルセリン結合コンドロイチン硫酸、モノステアロイルグリセロール・コハク酸エステル結合コンドロイチン硫酸、ジパルミトイル-L-(α-ホスファチジル)エタノールアミン結合ヒアルロン酸等が挙げられ、これらの脂質結合グリコサミノグリカンのより具体的な構造、製造方法の詳細等については、特開平4-80201号、特開平4-80202号及び特開平9-30979号等に記載されている。

【0038】
本発明の骨誘導促進剤は、上述の脂質結合グリコサミノグリカンを固体または液体の医薬用担体または希釈剤、すなわち賦形剤、安定剤等の添加剤とともに含む製剤とすることができる。すなわち、水、ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、動植物油脂、ベンジルアルコール、ポリアルキレングリコール、石油樹脂、椰子油、ラノリン等と共に、脂質結合グリコサミノグリカンを0.1重量%~90重量%程度含むように調製することができる。

【0039】
また、本発明の骨誘導促進剤は、様々な成長因子と共に投与することで、本発明の目的である骨折や骨欠損の治癒をより促進することが可能である。上記成長因子としては、線維芽細胞増殖因子(FGF:aFGF、bFGF等)、骨形成タンパク質(BMPs:TGF-β等)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、カルシトロフィックファクター(Calcitrophic factor)(エストロゲン、パラトルモン、1,25(OH)2D3(活性化ビタミンD)、デキサメタゾン等)、または転写因子(cbfa1等)が挙げられるが、本発明の骨誘導促進剤の有効成分である脂質結合グリコサミノグリカンを構成するグリコサミノグリカンと親和性を有する成長因子であって、骨形成能あるいは骨形成に伴う周辺組織の発達を促進する働きを有することがより好ましい。そのような成長因子としては例えばFGF、BMPs、及びVEGF等が挙げられる。上述のグリコサミノグリカンと親和性を有する成長因子を本発明の骨誘導促進剤と共に目的部位(例えば骨折部位や骨欠損部位等)に投与することで、上記成長因子の目的部位からの拡散が遅延するため、目的部位における上記成長因子の働きがより長時間維持される。

【0040】
また更に、上述のグリコサミノグリカンに対して親和性を有する成長因子を、予め本発明の骨誘導促進剤と混合することで、本発明の骨誘導促進剤の有効成分である脂質結合グリコサミノグリカンのグリコサミノグリカンに結合させ、上記成長因子が結合した脂質結合グリコサミノグリカンを有効成分とする骨誘導促進剤を目的部位に投与し、目的部位及びその周辺部に本発明の骨誘導促進剤から上記成長因子を徐放させる薬剤とすることも可能であり、骨折や骨欠損のより早期の治癒を達成することが容易となる。

【0041】
本発明の骨誘導促進剤の剤形及び投与形態としては、細粒剤、軟膏剤または液剤等の剤形にし、骨誘導を促進したい投与の目的部位を切開して直接塗布または液剤であれば切開はせずに注射により投与することができる。また、公知の骨形成の基材または人工骨素材あるいは骨補強材となるハイドロキシアパタイト、チタニウムロッドまたはチタニウムメッシュ等の素材を予め本発明の骨誘導促進剤の液剤等に浸漬してそれら素材の表面に本発明の骨誘導促進剤を結合、吸着または含浸させ、必要に応じて成型し、その後、前記基材等を前記目的部位に導入することで、間接的に本発明の骨誘導促進剤を目的部位に投与して目的の骨誘導促進効果を得ることも可能である。

【0042】
本発明の骨誘導促進剤の投与量は、患者の状態や体重によって適宜選択すべきであるが、有効成分として含有される脂質結合グリコサミノグリカンの重量として一般に1μg~2000 mg/部位程度を投与することが好ましい。

【0043】
本発明の骨誘導促進剤のマウスに対する腹腔内投与での急性毒性(LD50)は、ホスファチジルエタノールアミンを結合したコンドロイチン硫酸及びホスファチジルエタノールアミンを結合したヒアルロン酸の双方で2000 mg/kg以上であったので、生体への投与においても十分な安全性を有していると考えられる。

【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に詳述する。
実施例1
培養細胞に対する脂質結合グリコサミノグリカンの骨細胞誘導活性
(1) ラット頭蓋冠由来細胞の調製
ラットの頭蓋冠由来細胞を、生後3日のWistar系ラット(三協ラボ社より購入)から以下の方法によって単離した。

【0045】
すなわち、ラットを屠殺後、断頭し、頭蓋冠を取り出した。ピンセットにより組織をほぐした後、EDTAを0.04%、コラゲナーゼ(crude type IA:SIGMA社製:0.1%)、トリプシン(0.05%)を含む酵素処理液中に懸濁し、37℃条件下で30分間処理した。その後、酵素処理液を回収し、酵素処理液中に遊離した細胞を、遠心分離によって回収した(RC-I)。組織に再度新たに酵素処理液を添加して37℃で30分間消化し、酵素処理液中に遊離してくる細胞を回収してRC-IIとした。

【0046】
得られたRC-I及びRC-IIを混合して以下で使用した(RC-IとRC-IIを混合した細胞を以下RC-I,II細胞と記載する)。この細胞群は、細胞外マトリクスの分泌が少ない未分化な細胞群であり、骨芽細胞の前駆細胞である。上記RC-I,II細胞は骨芽細胞のマーカー(T.R. Arnett et al, Methods in Bone Biology, 1998, Chapman & Hall)となるアルカリホスファターゼ(ALP)、タイプIコラーゲン(COL1)、及びオステオカルシン(OC)の遺伝子をほとんど発現していなかった。

【0047】
(2) 脂質結合グリコサミノグリカンの調製
特開平4-80201の実施例1に記載された方法に従い、以下のようにして脂質結合グリコサミノグリカンを調製した。

【0048】
500 mgのヒアルロン酸(ナトリウム塩:鶏冠由来、分子量約23,000、HA)を水10 mlに溶解し、0.1 Mヨウ素のメタノール溶液5 mlを加えて室温で6時間反応させた。その後、反応液に0.1 N水酸化カリウムを約5 ml加えて遊離のヨウ素の色を消失させた。この溶液に酢酸カリウム飽和エタノールを加えて生じた沈澱を濾取し、充分にエタノールで洗浄し、減圧乾燥し、分子量約23,000の還元末端酸化ヒアルロン酸(ナトリウム塩)423 mgを得た。

【0049】
400 mgの上記の還元末端酸化ヒアルロン酸を水10 mlに溶解し、50 mlの強酸性イオン交換樹脂(Dowex 50 (H+))を1時間かけて通過させ、390 mgの還元末端ラクトンヒアルロン酸を含む水溶液を得た。

【0050】
上記の水溶液をトリ-n-ブチルアミン中で中和し、凍結乾燥して400 mgの還元末端ラクトンヒアルロン酸のトリ-n-ブチルアミン塩を得た。

【0051】
400 mgの上記で製造した還元末端ラクトンヒアルロン酸トリ-n-ブチルアミン塩を200 mlのジメチルホルムアミドに溶解し、27.6 mgのL-(α-ホスファチジル)エタノールアミン・ジパルミトイルのクロロホルム溶液を加えて、70℃で2時間反応させ、クロロホルムを溜去し、過剰の酢酸ナトリウム水溶液を加えてナトリウム塩にした後、酢酸ナトリウム飽和エタノールを加えた。生じた沈澱を濾取し、0.3 M酢酸アンモニウム溶液に溶解し、疎水クロマトグラフィーカラム(TSKgelフェニルトヨパール650M、400 ml)に吸着させ、0.3 M酢酸アンモニウム水溶液で充分に洗浄し、30%メタノール水溶液で目的とする上記物質を溶出した。30%メタノール水溶液溶出画分を減圧下濃縮し、凍結乾燥して精製し、36 mgのL-(α-ホスファチジル)エタノールアミン・ジパルミトイル結合ヒアルロン酸(以下「HA-PE」と略記する)を得た。

【0052】
(3) 脂質結合グリコサミノグリカンの骨細胞誘導活性の評価
上記で製造したHA-PEを、ハンクス液に5 μg/mlの濃度で溶解し、このハンクス液の2 mlを10 cmのポリスチレン製の培養皿に分注し、4℃で16時間静置することにより培養皿にHA-PEを固着させた。HA-PEを含まないハンクス液で処理した培養皿を対照として用いた。

【0053】
この培養皿に、上記で調製したRC-I,II細胞を1×104 細胞/cm2培養皿となるように播き、10%牛胎児血清(FBS:GIBCO社製)及び1%抗生・抗マイコプラズマ溶液(50μg/ml アスコルビン酸、5 mM β-グリセロリン酸を含む、GIBCO社製)を含むα-最少イーグル培地(MEM:GIBCO社製)で培養した。

【0054】
細胞が飽和状態になった直後、その1週間後、及び2週間後にグアニジン-フェノール-クロロホルム法により細胞の全RNAを抽出して、ノザンブロッティング法により骨芽細胞への分化の指標となるALP、COL1、及びOC遺伝子の発現を解析した。結果を図1に示す。図1中、Et-BrはリボソームRNAについてエチジウムブロミドにより染色した標準を示す。また、上記のノザンブロッティングのイメージを、リボソームRNAについてエチジウムブロミドにより染色したものに対して標準化することによりQuantity Oneプログラム(TOYOBO社製)を用いて数値化して解析した結果を図2に示す。

【0055】
図1及び図2、特に数値化した図2に示した結果から明らかな通り、HA-PEをコートした培養皿で培養したRC-I,II細胞において、顕著にALP、COL1及びOC遺伝子の発現が増強されており、HA-PEは未分化な細胞の骨芽細胞への分化を有意に誘導することが明かとなった。

【0056】
【発明の効果】本発明により、脂質結合グリコサミノグリカンを有効成分として含有する、新たな骨誘導促進剤が提供され、骨折または骨欠損を伴う疾病または傷害の治癒期間の大幅な短縮が可能となる。
図面
【図2】
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【図1】
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