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明細書 :イネいもち病菌圃場接種法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3184893号 (P3184893)
公開番号 特開2000-270677 (P2000-270677A)
登録日 平成13年5月11日(2001.5.11)
発行日 平成13年7月9日(2001.7.9)
公開日 平成12年10月3日(2000.10.3)
発明の名称または考案の名称 イネいもち病菌圃場接種法
国際特許分類 A01G  7/00      
FI A01G 7/00 604Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 4
出願番号 特願平11-077273 (P1999-077273)
出願日 平成11年3月23日(1999.3.23)
審査請求日 平成11年3月23日(1999.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591169618
【氏名又は名称】農林水産省東北農業試験場長
発明者または考案者 【氏名】石黒 潔
【氏名】濱嵜 孝弘
【氏名】中島 隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特開 平10-210869(JP,A)
調査した分野 A01G 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
日没時に圃場の特定の稲株にいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧し、その稲株を長波透過率の高い被覆資材で翌日の日の出時まで覆うことによりいもち病菌の接種を行うことを特徴とするイネいもち病菌圃場接種法。

【請求項2】
上記長波透過率の高い被覆資材を、農業用ポリエチレンフィルムとしたことを特徴とする請求項1記載のイネいもち病菌圃場接種法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農学研究分野で圃場においてイネいもち病菌を接種するためのイネいもち病菌圃場接種法に関する。

【0002】
【従来の技術】イネは施肥管理や冷温遭遇等の種々の環境条件により、いもち病に対する感受性が変動すると考えられており、的確な防除法確立のためには感受性の変動機構を正確に把握しておく必要がある。したがって、圃場で栽培されているイネにいもち病菌を接種して感受性を評価することが必須となるが、これまで、本田圃場のイネに安定していもち病菌を接種する方法がなかった。

【0003】
そのため、これまでは、ポットで栽培したイネ、あるいは圃場から掘り上げてポットに移したイネを屋内の人工接種装置に持ち込んでいもち病菌の噴霧接種を行って、いもちの病菌感受性の評価を行ってきたが、自然条件のイネのいもちの病菌感受性を直接評価できない欠点があった。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、いもち病の的確な防除法を確立するためには、本田圃場で栽培されてるイネに対して自然条件に近い方法でいもち病菌を接種し、感受性を直接評価する必要がある。自然条件下でいもち病の感染が成立するためには、稲体に付着したいもち病菌の胞子が発芽し稲体に侵入しなくてはならないが、その過程には10時問以上にわたり稲体が濡れている条件が必須である。しかし、自然条件下では、降雨や長時間の結露等がなければそのような条件は得られない。したがって、圃場でいもち病菌を安定して接種するためには、多様な気象条件下でも稲体の濡れ時間を長時間確保する方法が必須であった。

【0005】
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、圃場においてイネいもち病菌を効率よく接種するための、イネいもち病菌圃場接種法を提供することを目的とする。

【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、以下の手段、構成を有している。

【0007】
A.日没時に圃場の特定の稲株にいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧し、その稲株を長波透過率の高い被覆資材で翌日の日の出時まで覆うことによりいもち病菌の接種を行うことを特徴としている。

【0008】
B.上記長波透過率の高い被覆資材を、農業用ポリエチレンフィルムとしたことを特徴としている。

【0009】
【作用】上記の手段、構成により本発明のイネいもち病菌圃場接種法は、以下の作用を行う。

【0010】
.請求項1の手段、構成によって、圃場条件下で確実にいもち病菌の接種が可能となる。また、稲株を覆う枠と被覆資材のみで他に動力や特別な装置を必要とせず、簡単で汎用性が広いいもち病菌圃場接種法が得られる。

【0011】
.請求項2の手段、構成によって、長波透過率が高く、放射冷却が大であり、稲体に安定して結露を形成、維持させることができ、いもち病菌の接種効率が高められる。また、農業用ポリエチレンフィルムは安価で入手も容易であり、加工も簡単、容易である。

【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面及び表を参照して、本発明の一実施の形態を具体的に説明する。

【0013】
夜間の結露は、物体からの長波放射により物体の温度が周囲の気温より低下する放肘冷却現象により生ずることが知られている。風が有れば物体と境界層の間で熱交換が盛んとなり、結露は生じにくい。風を遮ることのできる被覆資材で接種を行う稲株を被覆した場合、多くの被覆資材では長波透過率が低く、放射冷却を強く抑制するので、物体の温度低下は起こりにくく、結露を生じにくい。

【0014】
しかし、長波透過をほとんど抑制しない農業用ポリエチレン被覆資材(フィルム)で日没から日の出まで稲株を被覆すれば、安定して稲体に結露を形成、維持させることができる。すなわち、図1(a)に示すように、日の入り時にいもち病菌胞子の懸濁液を接種対象となる稲株1に噴霧し、直後に枠2により稲株1を覆い、枠2全体を農業用ポリエチレンフィルム3で被覆し、日の出時にその被覆を取り去ることにより、その期間中確実に結露を形成させることが可能となり、確実な接種が可能となった。接種は晴天、雨天、曇天のいずれの気象条件でも可能であることも確認している(表1参照)。

【0015】
図1(b)は、(a)図における農業用ポリエチレンフィルム3に代えて、農業用ビニールフィルム・アルミ蒸着フィルム4を用いた場合を示し、本発明によるイネいもち病菌圃場接種法を実施するにあたり、各種資材で被覆したイネからの長波放射と被覆資材の透過性を調べたものである。図において、矢印はイネからの長波放射量を示し、農業用ポリエチレンフィルム3では長波透過率が高いので、イネ表面の温度が下がりやすい傾向がある。農業用ポリエチレンフィルム3では、放射冷却が大であり、安定して稲体1に結露を形成、維持させることができ、いもち病菌の接種効率を高めることができた。これに対して農業用ビニールフィルム・アルミ蒸着フィルム4においては放射冷却が小であり、いもち病菌の接種効率は低かった。

【0016】
各種被覆資材で夜間に稲体を被覆していもち病菌を無傷接種(噴霧)した場合の接種効率を表1に示す。この表から明らかなように、被覆資材に農業用ポリエチレンフィルム3を用いた場合に最も良い接種効率を示している。

【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のイネいもち病菌圃場接種法によれば、以下のような作用効果を奏することができる。

【0018】
.日没時に圃場の特定の稲株にいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧し、その稲株を長波透過率の高い被覆資材で翌日の日の出時まで覆うことによりいもち病菌の接種を行うので、圃場条件で確実にいもち病菌の接種が可能である利点のほか、稲株を覆う枠と被覆資材のみで他に動力や特別な装置を必要とせず、非常に汎用性が広い方法である。また、圃場のイネの感受性の評価以外に、圃場のイネに施用した殺菌剤の残効期間の評価等にも使用可能で、応用場面は極めて多いものである。

【0019】
.長波透過率の高い被覆資材を、農業用ポリエチレンフィルムとしたので、長波透過率が高く、放射冷却が大であり、稲体に安定して結露を形成、維持させることができ、いもち病菌の接種効率を高めることができる。また、農業用ポリエチレンフィルムは安価で入手も容易であり、加工も簡単、容易である。

【0020】
【表1】
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図面
【図1】
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