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明細書 :プロモーター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2981549号 (P2981549)
登録日 平成11年9月24日(1999.9.24)
発行日 平成11年11月22日(1999.11.22)
発明の名称または考案の名称 プロモーター
国際特許分類 C12N 15/09      
C12R  1:18      
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願平10-196343 (P1998-196343)
出願日 平成10年7月10日(1998.7.10)
審査請求日 平成11年1月20日(1999.1.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591127076
【氏名又は名称】農林水産省農業生物資源研究所長
発明者または考案者 【氏名】長谷部 亮
【氏名】富山 雅光
【氏名】阿久津 克己
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】南條 博道
審査官 【審査官】斎藤 真由美
参考文献・文献 Carlsberg Research Communications,53(1988),p.357-370
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
要約 【課題】細菌用プロモータートラップベクターおよびこのベクターを用いて細菌プロモーターを提供すること
【解決手段】制限酵素部位を有する配列、細菌のリボゾーム結合部位配列、およびGFPをコードする配列をこの順に有するベクターを作成する。この制限酵素部位に細菌の染色体を挿入し、GFPの発現をUVで検出する。このベクターでErwinia ananas株のプロモーターを取得する。このErwinia ananas株のプロモーターを用いて効率的な生物的防除剤が製造される。
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号1の第101番目から第171番目の配列を有するプロモーター。

【請求項2】
前記配列が、配列表の配列番号1の配列である請求項1に記載のプロモーター。

【請求項3】
配列表の配列番号2の第168番目から第227番目の配列を有するプロモーター。

【請求項4】
前記配列が、配列表の配列番号2の配列である請求項3に記載のプロモーター。

【請求項5】
配列表の配列番号3の配列を有するプロモーター。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細菌のプロモーターを探索するためのプロモータートラップベクター、およびこのベクターを用いる細菌プロモーターの探索方法に関する。また、本発明は、Erwinia属に属する細菌に由来するプロモーターに関する。

【0002】
【従来の技術】植物の地上部病害を植物の葉面に棲息する細菌(葉面細菌)により防御すること、すなわち生物的防除(バイオコントロール)は、古くから関心がもたれているテーマであり、これまで多くの研究成果が発表されてきた。しかし、室内実験では効果が認められるが、圃場レベルでは期待した効果が得られない事例が多く、実用化段階に到達したものはほとんどない(佐藤ら、農業有用微生物、 p123-135, 養賢堂(東京)(1990))。

【0003】
近年、遺伝子組換え技術を利用して葉面細菌に外来遺伝子を組み込んでより効果的な生物防除微生物剤を開発しようという試みが進められている(伊代住(Iyosumi)ら, Ann. Phytopathol. Soc. Jpn., 62: 559-565 (1996))。

【0004】
ところで、これまで葉面細菌を宿主として組換え微生物を取得する場合において、外来遺伝子発現のスイッチであるプロモーター配列についてあまり考慮されず、主に大腸菌由来のプロモーター配列が利用されてきた。このため組換え葉面細菌では、外来遺伝子を発現させるプロモーターが十分に機能せず、結果的に外来遺伝子の発現量が不十分であるのではないかと指摘されていた。

【0005】
そこで、より精巧かつ効果的な組換え生物防除微生物剤を作出するために、宿主となる葉面細菌由来のプロモーターの探索が望まれている。

【0006】
プロモーターの探索法としては、トランスポゾンを利用する方法とトラップベクターを利用する方法とに大きく分けることができる(ファンオーバービーク(Van Overbeek)ら、Modern Soil Microbiology, p441-477, Marcel Dekker (New York) (1997))。

【0007】
トランスポゾンを利用してプロモーターを探索する方法は、以下の通りである。まず、トランスポゾンの内部にプロモーターを欠如させたレポーター遺伝子を挿入する。ついで、このプロモーターの欠如したレポーター遺伝子を有するトランスポゾンを、自殺プラスミドを介して目的とする宿主細菌に導入すると、トランスポゾン変異によりこのトランスポゾンが宿主細菌のゲノムに挿入される。トランスポゾンが、宿主のゲノムのプロモーター領域の下流に挿入されると、この宿主ゲノムのプロモーター(内在性のプロモーター)の働きでレポーター遺伝子が発現するので、発現したレポーターを探索することにより、プロモーターの下流にレポーター遺伝子が挿入されたクローンを選抜することができる。ついで、このプロモーター遺伝子を単離することができる。

【0008】
しかしながら、このトランスポゾンを用いる探索方法には、上記クローンからプロモーター遺伝子を単離するために、宿主細菌の全ゲノムDNAライブラリーからこのトランスポゾンをプローブとして、プロモーターを含むクローンを別途選抜しなければならないという煩雑さがある。

【0009】
他方、トラップベクター法は、まず、プロモーターを欠如させたレポーター遺伝子が組み込まれたベクターを用意し、このベクターのレポーター遺伝子の上流に宿主全ゲノムDNA断片をショットガンクローニングして、組換えプラスミドを得、ついで、得られた組換えプラスミドを宿主細菌に形質転換し、宿主細菌中でレポーター遺伝子の発現を解析する方法である。宿主ゲノムのDNA断片にプロモーター活性があるとレポーターが発現するので、プロモーター活性を有するクローンを簡単に選抜することができ、プロモーター配列の単離も容易である。

【0010】
上記のように、トランスポゾンを用いる方法およびトラップベクターを用いる方法のいずれの方法においても、レポーター遺伝子が用いられる。レポーター遺伝子としては、これまでにテトラサイクリンやクロラムフェニコール等の抗生物質耐性遺伝子の他に、β-グルクロニダーゼ(GUS)、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ(lux)等の発色・発光遺伝子が利用されてきた。しかし、これらはすべて酵素であるため、酵素反応のための基質を別途添加する必要があるという欠点がある。また、目的とする宿主微生物にもともと抗生物質耐性や類似酵素活性がある場合には、これらレポーター遺伝子を用いることができないという欠点もあった。

【0011】
最近、これらの欠点を補う新しいレポーター遺伝子として、GFP(Green Fluorescent Protein)が注目を集め、利用されるようになってきた(シャルフイ(Chalfie)ら、Science, 263: 802 (1994))。GFPは発光クラゲのもつ発光タンパクであり、このタンパクが蓄積すると紫外線照射下で緑色に発色する。

【0012】
このGFP遺伝子をレポーター遺伝子とする動物細胞用のプロモータートラップベクターが市販されている(例えば、クローンテック(CLONTECH)社が市販しているpEGFP-1)。しかし、これらのベクターは、動物用であるため、細菌のプロモーターをトラップするために用いることはできない。

【0013】
このように、未だ、細菌のプロモーターを効率よく探索するためのベクターは知られておらず、細菌のプロモーターをどのようにして探索し、利用するかについては、ほとんど知られていないのが実情である。そこで、細菌のプロモーターを効率よく探索するためのベクター、および細菌のプロモーターを提供することが望まれていた。

【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を解消するために行われたものであり、細菌用プロモータートラップベクターを提供するとともに、このトラップベクターを用いて葉面細菌Erwinia ananasからの新規なプロモーター配列を提供し、このプロモーターを用いて、より精巧かつ効果的な組換え生物防除微生物剤を作出することが可能となる。

【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、制限酵素部位を有する配列、細菌のリボゾーム結合部位配列、およびGFPをコードする配列をこの順に有する細菌用プロモータートラップベクターであって、該制限酵素部位に細菌のプロモーター配列が挿入されたときに該GFPが発現する、細菌用プロモータートラップベクターに関する。

【0016】
本発明は、また、上記細菌用プロモータートラップベクターの制限酵素部位に遺伝子を挿入し、組換えベクターを作成する工程、該組換えベクターを宿主細菌に導入し、細菌を形質転換し、形質転換体を得る工程、および、該形質転換体がGFPを発現しているか否かを検出する工程を含む、細菌プロモーターの探索方法に関する。

【0017】
また、本発明は、配列番号1の第101番目から第171番目の配列または該配列と70%以上の相同性を有する配列を有し、かつ、該配列番号1の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有する、プロモーターに関する。

【0018】
好適な実施態様においては、前記プロモーターが、配列番号1に記載の配列を有し、かつErwinia属に属する微生物で発現する。

【0019】
さらに本発明は、配列番号2の第168番目から第227番目の配列または該配列と90%以上の相同性を有する配列を有し、かつ、該配列番号2の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有する、プロモーターに関する。

【0020】
好適な実施態様においては、前記プロモーターが、配列番号2に記載の配列を有し、かつErwinia属に属する微生物で発現する。

【0021】
本発明は、さらに、配列番号3に示される配列、または該配列番号3の配列において、1または2以上の塩基の挿入、欠失、あるいは置換を有し、かつ、該配列番号3の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有する、プロモーターに関する。

【0022】
好適な実施態様においては、前記プロモーターが、配列番号3に示される配列を有し、かつErwinia属に属する微生物で発現する。

【0023】
【発明の実施の形態】本発明の細菌用プロモータートラップベクターは、制限酵素部位を有する配列、細菌のリボゾーム結合部位配列、およびGFPをコードする配列をこの順に有している。そして、この制限酵素部位に細菌のプロモーター配列が挿入されたときにGFPが発現する。

【0024】
制限酵素部位を有する配列としては、複数の制限酵素切断部位、すなわち、マルチクローニングサイトを有する配列が好ましい。このような配列は市販品として入手できる。所望の配列が市販されていない場合、当業者は容易に設計し、合成することができる。

【0025】
細菌のリボゾーム結合配列とは、いわゆるシャイン・ダルガノ配列(SD配列)として知られているプリンに富んだ配列であり、16SrRNAの3’末端の配列CCUCCUUAと結合する配列をいう。

【0026】
GFP(Green Fluorescent Protein)をコードする配列は、公知である(シャルフイら、前出)。また、改良型GFPも使用できる。従って、本発明でGFPというときは、改良型GFPを含む。なお、改良型GFPは、蛍光発色の効率が高められたGFPを意味し、例えば、GFPの65番目のアミノ酸セリン(Ser)がトレオニン(Thr)で置換され、蛍光発色の効率が高められたEGFP(Enhanced green fluorescent protein)(Tslenら、NATURE vol.73、1995)等が含まれる。

【0027】
これらの配列を有する細菌用プロモータートラップベクターは、さらに、細菌の菌体内で複製し得るように複製開始点(Ori)を有していることが必要であり、さらに、形質転換体の選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子)を有することが好ましい。

【0028】
本発明の細菌用プロモータートラップベクターは、一般的に細菌に用いられている市販のベクターを出発材料として作成できる。市販のベクターの適切な部位に、制限酵素部位とGFPをコードする配列とリボゾーム結合配列とを、当業者に周知の手順に従って行えばよい。

【0029】
また、細菌用プロモータートラップベクターは、動物用プロモータートラップベクターからも作成される。例えば、複製開始点(Ori)と薬剤耐性遺伝子とを有するベクターの適当な部位に、制限酵素部位を有する配列、細菌のリボゾーム結合部位配列、およびGFPをコードする配列をこの順に挿入することにより作成される。作成方法は、当業者に周知の組換えDNA技術および手法が用いられる。

【0030】
以下、市販のプラスミドpEGFP-1(CLONTECH社)を出発ベクターとして用いて、本発明の細菌用プロモータートラップベクターを構築する例を、図1に基づいて説明する。

【0031】
プラスミドpEGFP-1は、動物用プロモータートラップベクターであり、図1の左上に示されている。このプラスミドpEGFP-1は、改変型のEGFP遺伝子を有しているが、EGFPを発現するためのプロモーター配列がなく、SD配列もない。しかし、マルチクローニングサイトを有し、細菌のOri(pUC ori)とカナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子とを有しているため、細菌中でも複製可能であり、かつ形質転換された細菌が薬剤耐性でスクリーニングされるので、この骨格部分を用いることができる。そこで、まず、プラスミドpEGFP-1から、EGFP遺伝子を取り除いた骨格を準備する。

【0032】
他方、市販のプラスミドpEGFP(CLONTECH社)(図1の右上)は、E.coliのLacプロモーターとSD配列とを有し、その下流にEGFP遺伝子を有している細菌発現用ベクターである。このプラスミドpEGFPからSD配列とEGFP遺伝子配列とを切り出し、これを上記準備した骨格に挿入することにより、目的の細菌用プロモータートラップベクターが作成される。

【0033】
得られたベクターの一例は、図2に示されるpEGFP-V1である。このベクターは、マルチクローニングサイトとSD配列とEGFP遺伝子配列とをこの順に有し、薬剤(カナマイシン/ネオマイシン)耐性遺伝子と、細菌中で機能するpUCのOriを有する。

【0034】
以下、このベクターを用いてプロモーターを探索する方法を説明する。まず、特定の細菌から常法により全ゲノムDNAを取り出し、全ゲノムDNAを制限酵素で切断する。制限酵素は、マルチクローニングサイトに対応する制限酵素を用いるか、挿入可能な配列を生じる制限酵素を用いればよい。ゲノムDNAの大きさが、約100~1000bpとなるように制限酵素で切断することが好ましい。また、DNAは合成したものであってもよい。

【0035】
得られたゲノムDNAを上記プロモータートラップベクターのマルチクローニングサイトに組み込んで、組換えプラスミドを作成する。この組換えプラスミドを細菌に導入して、細菌を形質転換する。カナマイシン(ネオマイシン)を含有する寒天培地で生育した形質転換株にUV(365nm)を照射し、発光するクローンを選択することにより、プロモーターを有する形質転換体が検出される。検出された形質転換体の中から発光強度の高いものを選択すると、活性が高いプロモーターが取得できる。

【0036】
このプロモータートラップベクターを用いて、葉面細菌Erwinia ananas のプロモーターが探索できる。例えば、Erwinia ananas の全ゲノムDNAを単離し、これを、例えば、制限酵素Sau3AIで分解して、ゲノムDNA断片を準備する。そして、例えば、上記プラスミドpEGFP-V1のマルチクローニングサイトのBglII部位に、ゲノムDNA断片をクローニングし、Erwinia ananas に導入して形質転換株を得、カナマイシン耐性株を得て、EGFPの発現をUVで検出してプロモーターを得る。

【0037】
得られたプロモーターを含むDNA断片は、常法により単離され、配列が決定される。

【0038】
上記の例示の方法により、配列番号1、2および3のErwinia ananas のプロモーターが得られる。

【0039】
配列番号1に示される配列は、Erwinia ananas MAFF 301714から得られたプロモーター配列である。この配列番号1のプロモーター配列のホモロジー検索をDBJデータベースで行った結果、配列番号1の101~171番目の配列とE.colienvAプロモーターの52~122番目の配列とは、67%の相同性を示し、配列番号1の101~171番目の配列がプロモーターである可能性が高い。

【0040】
従って、配列番号1の第101番目から第171番目の配列または該配列と70%以上の相同性を有する配列を有し、かつ、該配列番号1の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有するプロモーターは、E.coliのenvAプロモーターとは異なり、Erwinia属の微生物で発現するプロモーターである。このような配列は、当業者に周知の手段で行われる。例えば、部位特異的突然変異法により、1または2以上の塩基の置換、欠失、挿入が行われ、あるいは、DNA合成により、配列番号1の第101番目から第171番目の配列と70%以上の相同性を有する配列が合成され、これを含む配列も合成される。そして、得られた配列をプロモータートラップベクターにクローニングし、GFPまたはEGFPの発現の程度で、得られた配列のプロモーター活性を調べればよい。

【0041】
配列番号2に示される配列は、Erwinia ananas MAFF 301714から得られたプロモーター配列である。この配列番号2のプロモーター配列のホモロジー検索をDBJデータベースで行った結果、配列番号2の168~227番目の配列とE.colifabBプロモーターの137~196番目の配列とは、83%の相同性を示し、配列番号1の168~227番目の配列およびその近傍がプロモーターである可能性が高い。

【0042】
従って、配列番号2の第168~227番目の配列または該配列と90%以上の相同性を有する配列を有し、かつ、該配列番号2の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有するプロモーターは、E.coliのfabBプロモーターとは異なり、Erwinia属の微生物で発現するプロモーターである。このようなプロモーターは、配列番号1において記載したと同様の、当業者に周知の手法を用いて得ることができる。

【0043】
配列番号3に示される配列は、Erwinia ananas MAFF 301714から得られたプロモーター配列である。この配列番号3のプロモーター配列のホモロジー検索をDBJデータベースで行った結果、高い相同性を示す配列は見出せず、新規なプロモーターである可能性が高い。そして、この配列番号3の配列において、1または2以上の塩基の挿入、欠失、あるいは置換を有し、かつ、該配列番号3の配列と同等またはそれ以上のプロモーター活性を有するプロモーターは、上記配列番号1と相同性の高いプロモーターを作成するのと同様の、当業者に周知の手法を用いて得ることができる。

【0044】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例にのみ限定されない。

【0045】
(実施例1:プロモーター捕獲ベクターpEGFP-V1の構築)図1は、CLONTECH社の市販のプラスミドpEGFP, pEGFP1をもとにプロモーター捕獲ベクターpEGFP-V1を構築する模式図である。pEGFPを、制限酵素SmaIおよびNotIを用いて消化し、アガロース電気泳動によりEGFP遺伝子を含まないベクター部分を回収し、さらにセルフライゲーションを防ぐためアルカリフォスファターゼにより脱リン酸化処理をした。次にpEGFP1を制限酵素BsrBIおよび NotIを用いて消化し、細菌の翻訳の開始に必要なRBS(リボソーム結合部位、SD配列)とEGFPを含む約800bpのDNA断片を回収した。このDNA断片と上記EGFP遺伝子を含まないベクター部分とをライゲーションして、pEGFP-V1を構築した。pEGFP-V1の構造を、図2に示す。

【0046】
なお、コントロールベクターとしてpEGFPのRBSの上流にあるEco47IIIサイトにlacプロモーターを連結したpEGFP-V1 placを構築した(図1右下参照)。

【0047】
このpEGFP-V1をプロモータートラップベクターとして、Erwinia ananasのプロモーターの探索に用いた。

【0048】
(実施例2:Erwinia 属の細菌のプロモーターの単離)イネの葉面から分離された細菌Erwinia ananas MAFF 301714株のプロモーターを探索、単離した。Erwinia ananasは植物体葉面で生存・定着する能力があり、植物病害の生物防除微生物剤(バイオコントロールエージェント)として最近、注目を集めている株である。この株は、農林水産省生物資源研究所に保存されており、希望者には随時分譲されている。

【0049】
(1)E.ananas MAFF 301714株の全ゲノムDNAの調製
まず、常法によりE.ananas MAFF 301714株の全ゲノムDNAを抽出・精製した後、4塩基認識の制限酵素Sau3AIを用いて完全に消化し、アガロース電気泳動にかけ、約100~1000bpのDNA断片を分離・回収した(図3左上)。

【0050】
(2)組換えプラスミドの調製と形質転換
他方で、pEGFP-V1をBglIIで消化し、セルフライゲーションを防ぐため脱リン酸化処理を行った(図3右上)。このBglIIでカットしたベクターと、上記分離した約100~1000bpのDNA断片とをライゲーションし、エレクトロポレーション法によりErwinia ananas MAFF 301714株に導入した(図3中段)。カナマイシン40ppm含有LB平板培地にて30℃、3日間培養後、約2000クローンの形質転換コロニーを得た(図3下)。紫外線(UV365nm)照射下でGFPの活性を観察したところ、そのうち27クローンが紫外線照射下で発光した。この27クローンをポジティブクローンとして単離した。

【0051】
(実施例3:ポジティブクローンの解析と配列決定)
(1)ポジティブクローンの解析
27クローンのうち、比較的早期に強い発光を呈した10クローン(PCF1, 3, 5,6, 9, 10, 13, 15, 26, 27)について、プラスミドを回収し、制限酵素Eco47III及びEcoRIにより二重消化し、アガロース電気泳動にかけ、挿入DNA断片の存在及びその大きさを確認した。その結果、ポジティブクローンから回収したDNAには、大きさの異なる挿入断片(250bp~1700bp)が確認された(図4参照)。

【0052】
(2)分光蛍光光度計によるGFP活性の測定
分光蛍光光度計により得られた発光を定量的に解析した。10個のポジティブクローンを、カナマイシンを50ppm含むLB液体培地で、30℃で振とう培養し、経時的にサンプリングし、集菌後、滅菌水に再び懸濁し、菌数をOD=1に調整した後、分光蛍光光度計によりGFPの発光強度を測定した。なお、ポジティブコントロールとしてpEGFP-V1placを導入したE.ananasを、また、ネガティブコントロールとして元株Erwinia ananas MAFF 301714株を用いた。

【0053】
供試した10クローンとも培養開始14時間後で既に発光強度に差が認められた。その後、経時的に発光強度は増大していったが、各クローンの相対的な関係には変化がみられなかった(図5参照)。この中から、ポジティブクローンの発光強度と同等あるいはこれを上回るクローンとして3クローン(PCF1, 9, 15)を選抜した。

【0054】
(3)プロモーター活性を示したDNA断片の塩基配列の決定
得られた3クローンについて常法によりDNAを精製後、配列決定した。pEGFP-V1のBglIIサイトの上流側及び下流側の蛍光プライマーを合成し、Auto Read Sequencing Kitを使用したダイデオキシ反応後、DNA Sequencerにより配列を決定した。

【0055】
PCF1は全長411bpであった(配列番号1)。その配列のホモロジー検索を行ったところ、101~171番目の配列とE.coli envAプロモーターの52~122番目の配列とが67%の相同性を示し(図6)、配列番号1の101~171番目の配列がプロモーターである可能性が高いことが示された。

【0056】
PCF9は全長458bpであった(配列番号2)。その配列のホモロジー検索を行ったところ、配列番号2の168~227番目の配列と大腸菌の脂肪酸基質輸送タンパク合成遺伝子(fabB)のプロモーターの137~196番目の配列とは、83%の相同性を示し(図7)、配列番号の168~227番目の配列がプロモーターである可能性が高いことが示された。

【0057】
これら相同性を示した大腸菌のプロモーターは細菌の生存に必須な遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)のプロモーターであり、今回得られたE.ananas由来のプロモーターも同様に、ハウスキーピング遺伝子、すなわち常時発現型のプロモーターと考えられる。

【0058】
PCF15は全長214bpであった(配列番号3)が、既知の遺伝子とホモロジーを示すものはなく、新規なプロモーター配列である。しかし、常時発現型か条件誘導型のプロモーターであるのかは不明であった。

【0059】
【発明の効果】本発明のプロモータートラップベクターを用いて、細菌のプロモーターのスクリーニングが効率よくできる。特に、葉面細菌であるErwinia属の細菌のプロモーターが探索できる。得られたErwinia属の細菌のプロモーターを用いることにより、外来遺伝子、例えば、キチナーゼ遺伝子等を効率よく発現して、精巧かつ効果的な組換え生物防除微生物剤を作出することができる。

【0060】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> National Institute of Agrobiological Resources Ministry of Agric
ulture Forestry and Fisheries
<120> Promoter trap vector and method for isolating promoters of Genus
Erwinia using the vector
<130> P198N07015
<160> 3
<210> 1
<211> 411
<212> DNA
<213> Erwinia ananas
<220>
<221> promoter
<222> (101)… (171)
<223> n (A or C or G or T or U) or (unknown or other base)
<400> 1
gatcagagtg cacagtcaaa caaagagccc gattaccttg atattccggc gttttgcgca 60
agcaggccga ctaggaataa ccttataatt gggattcccg ctctttgtgc taaagtgttc 120
gcccgctggt aacgtatact ggcggtcgga aagcgatatt gcgagataat aacgatgatc 180
ccgtctacgg gtttttcata ccatcgggta taattacgca tcctcatcgg ggcgctgaag 240
atgcccagcg cagcaaggcc gtgtgaaatc cggccaatgt accgggatgt cccgctatct 300
gtgttgttct gggcttccca cngcngttca ggcgtaaagg tttcaagacg gggatcgtta 360
gcgcgctgaa acaagatttt ccctggctga tgggcaccag taactacgat c 411
<210> 2
<211> 458
<212> DNA
<213> Erwinia ananas
<220>
<221> promoter
<222> (168)… (227)
<400> 2
gatcctcacg ccgtcagtct gggttaaaga aagaaggacc tccggccagt attgtgtcat 60
cgcgtgtgaa cgtttattga tccgcatcgt cagattgcga ttgctaaccc aatggcgctg 120
cccgttcgtg tctaagctga tcttatcggt cggcgtgaca tgacgcaaat ttacaaaagg 180
aaatggctga tcggacttgt tcggcgtaca agtgtaagct agagtgctcg tcaaataaca 240
gaagtggtga ggaagattga atgaaacgtg ctgtgattac tggcttaggg atcaccttgt 300
ttctgtgggc aatggcaacc tttgccacgg tccccggcct gcagatctgt ccctgattgc 360
cagaaagcag cttgccccgc cgcgtggctt ttgttgagca acatgcgtta accagcgcca 420
atatgaccgt acgtgatgtc gtaaagcttg gaaggatc 458
<210> 3
<211> 214
<212> DNA
<213> Erwinia ananas
<220>
<221> promoter
<222> (1)…(214)
<400> 3
gatctgtggc gccctgagtc ttgttacggt aagtctaaaa cgtgcaggga tctgtcctct 60
gatggattaa ggctttcttc acgctttatt acgttaagga aatcacaatg aatctgatga 120
ataattgtgc atcgcctgcc gcagatgtta tattaaaata taatattcgg aggtgctcta 180
tgtataccac tcgtctgaaa aaggttggcg gatc 214
図面
【図6】
0
【図7】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図4】
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【図5】
5
【図3】
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