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明細書 :ネオスポーラ感染判別方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3016021号 (P3016021)
登録日 平成11年12月24日(1999.12.24)
発行日 平成12年3月6日(2000.3.6)
発明の名称または考案の名称 ネオスポーラ感染判別方法
国際特許分類 G01N 33/569     
C12Q  1/04      
G01N 33/531     
G01N 33/543     
C12R  1:90      
FI G01N 33/569 A
C12Q 1/04
G01N 33/531
G01N 33/543
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願平10-317776 (P1998-317776)
出願日 平成10年11月9日(1998.11.9)
審査請求日 平成10年11月9日(1998.11.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591111248
【氏名又は名称】農林水産省家畜衛生試験場長
発明者または考案者 【氏名】清水 眞也
【氏名】山根 逸郎
【氏名】國保 健浩
【氏名】衛藤 真理子
【氏名】志村 亀夫
【氏名】播谷 亮
【氏名】浜岡 隆文
【氏名】猪島 康雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
審査官 【審査官】亀田 宏之
調査した分野 G01N 33/569
C12Q 1/04
G01N 33/531
G01N 33/543
要約 【解決手段】 以下の工程(a)~(e)を含むことを特徴とするネオスポーラ感染判別方法である。
(a)ネオスポーラ抗原を固相に固定化した後、余剰のネオスポーラ抗原を除去する工程
(b)前記固相にホニュウ類以外の生物由来の抗体を加えた後、余剰の抗体を除去する工程
(c)前記固相に対象動物の血清を加えた後、抗原抗体複合体以外の物質を除去する工程
(d)前記抗原抗体複合体を標識プロテインAGを利用して検出する工程
(e)前記抗原抗体複合体の存在の有無により、対象動物の血清中のネオスポーラ抗原に対する抗体の有無を判別し、これによって対象動物のネオスポーラ感染の有無を判別する工程
【効果】 対象動物のネオスポーラ感染の有無を精度よく判別できる。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程(a)~(e)を含むことを特徴とするネオスポーラ感染判別方法。
(a)ネオスポーラ抗原を固相に固定化した後、余剰のネオスポーラ抗原を除去する工程
(b)前記固相にホニュウ類以外の生物由来の抗体を加えた後、余剰の抗体を除去する工程
(c)前記固相に対象動物の血清を加えた後、抗原抗体複合体以外の物質を除去する工程
(d)前記抗原抗体複合体を標識プロテインAGを利用して検出する工程
(e)前記抗原抗体複合体の存在の有無により、対象動物の血清中のネオスポーラ抗原に対する抗体の有無を判別し、これによって対象動物のネオスポーラ感染の有無を判別する工程
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はネオスポーラ感染判別方法に関する。

【0002】
【従来の技術】ネオスポーラ(Neospora cuninum)は1988年に確認された新種の原虫であり、多種の哺乳動物(牛、犬、山羊、羊、馬、鹿等)へ感染することが報告されている(Dubey J.P. and Lindsay D.S., Vet. Parasit., 1996, 67, pp1-59) 。哺乳動物にネオスポーラが感染すると、犬では感染すると成犬、幼犬ともに神経症状を呈する。成牛では通常感染しても症状は認められない。しかし、母牛では死産、流産が発生し、また、虚弱児あるいは神経症状を伴った新生児の出産が発生する。ネオスポーラによる牛における死産、流産は妊娠中期に起こるため搾乳牛においては、出産後の牛乳の生産は不可能となる。また、幼牛の死流産は、肉牛および乳牛の生産計画を大きく狂わし、畜産経営に大きな被害を与える。死流産の原因としては、ウイルスが大きく関与していると考えられているが、ネオスポーラに起因する例も相当数存在すると考えられている。従って、ネオスポーラ感染の有無を判別することは、畜産業等において非常に重要である。

【0003】
ネオスポーラの感染経路としては、胎盤感染が報告されているが(Andersonet al., 1991, J. Am. Vet. Med. Assoc. 198, pp214-244、Thurmond et al., 1995, J. Para., 81, pp364-367)、胎盤感染以外の感染経路は現在のところ不明である。従って、現時点では、ネオスポーラに感染した母動物の摘発が、ネオスポーラ感染を予防する有効な手段であると考えられている。対象動物がネオスポーラに感染しているか否かは、一般的に、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在しているか否かにより判別され、その判別手法として間接蛍光抗体法、ELISA法等が用いられている。ELISA法を用いた判別方法は、一般的に以下の方法により行われている。

【0004】
ネオスポーラを捕捉用免疫反応体として固相に固定化した後、これに対象動物の血清を加え、ネオスポーラとネオスポーラに対する抗体とを反応させて抗原抗体複合体を形成させる。抗原抗体複合体以外の物質を洗い流した後、抗原抗体複合体中のネオスポーラに対する抗体に結合し得る酵素標識2次抗体を加え、抗原抗体複合体と酵素標識2次抗体とを結合させる。未反応の酵素標識2次抗体を洗い流した後、酵素の基質を加え、酵素と基質とを反応させる。反応による吸光度の変化によって抗原抗体複合体の存在の有無を確認する。その結果、抗原抗体複合体が存在する場合には、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在していること、すなわち、対象動物がネオスポーラに感染していることが明らかとなり、一方、抗原抗体複合体が存在しない場合には、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在しないこと、すなわち、対象動物がネオスポーラに感染していないことが明らかとなる。

【0005】
しかし、上記ELISA法においては、被検血清或いは酵素標識2次抗体が非特異的反応を起こし、ネオスポーラ未感染の対象動物の血清(陰性血清)が擬陽性を示すことが多く、対象動物のネオスポーラ感染を明確に判別することが困難であった。なお、このような被検血清或いは酵素標識2次抗体の非特異的反応の原因は、現在のところ特定されていない。

【0006】
このような状況の下、CI ELISA法(競合法によるエライサ法)(Baszler TV et al., J.Clin.Microbiol., 1996, 34(6), 1423-1428 )、全原虫体を抗原として用いたELISA法(Williams DJ et al., Vet.Rec., 1997, 29, 140(13), 328-331 )、組換え抗原を利用したELISA法(Louie K et al., Clin.Diagn. Lab. Immunol., 1997, 4(6), 692-699)、ISCOM ELISA法(Bjorkman C et al., Vet. Parasitol., 1997, 68(3), 251-260 )、カイネティックELISA法(Pare J et al.,J.Vet.Diagn.Invest., 1995, 7(3), 273-275)等の、反応特異性を高めた種々のELISA法が報告されている。

【0007】
しかし、これらの方法によっても十分な特異反応が得られない場合が多く、また、十分な特異反応が得られる場合であっても、ELISA法の特色である簡便性、高感度等の利点が失われ、実用性に乏しいものとなっている。従って、現時点においては、非特異的反応が起こるため判別に熟練を要し、さらに判別に主観が入るため結果の統一性がない等の問題があるものの、間接蛍光抗体法がネオスポーラ感染の血清判別方法の標準的手法となっている。そこで、対象動物のネオスポーラ感染の有無を精度よく判別でき、かつ操作も簡便であるネオスポーラ感染判別方法の開発が切望されている。

【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、対象動物のネオスポーラ感染の有無を精度よく判別でき、かつ操作も簡便であるネオスポーラ感染判別方法を提供することを目的とする。

【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ネオスポーラの血清反応における非特異反応の原因の可能性の一つとして、ネオスポーラ抗原そのものがイムノグロブリンを非特異的に吸着する可能性があると考えるに至った。そこで従来のエライサ法を用いたネオスポーラ感染判別方法において、ネオスポーラ抗原そのものがイムノグロブリンを非特異的に吸着する部位をプロテインAGとは反応しないニワトリ血清中のニワトリイムノグロブリンによりブロッキングし、さらに酵素標識2次抗体を用いるかわりに酵素標識プロテインAGを用いることにより、酵素標識2次抗体を用いた場合に生じるような非特異反応を除去することができることを見出した。プロテインAGを使用することによりネオスポーラ感染を判別できる対象動物の範囲が広範なものとなることを見出した。さらに、プロテインAGを用いたELISA法は、他のネオスポーラに類似した寄生虫に感染した動物の血清とは交差反応を起こさず、ネオスポーラ感染を特異的に判別できることを見出した。

【0010】
以上の知見により本発明は完成されるに至った。即ち、本発明は、以下の工程(a)~(e)を含むことを特徴とするネオスポーラ感染判別方法である。
(a)ネオスポーラ抗原を固相に固定化した後、余剰のネオスポーラ抗原を除去する工程
(b)前記固相にホニュウ類以外の生物由来の抗体を加えた後、余剰の抗体を除去する工程
(c)前記固相に対象動物の血清を加えた後、抗原抗体複合体以外の物質を除去する工程
(d)前記抗原抗体複合体を標識プロテインAGを利用して検出する工程
(e)前記抗原抗体複合体の存在の有無により、対象動物の血清中のネオスポーラ抗原に対する抗体の有無を判別し、これによって対象動物のネオスポーラ感染の有無を判別する工程

【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のネオスポーラ感染判別方法は、以下の工程(a)~(e)を含む。
(a)ネオスポーラ抗原を固相に固定化した後、余剰のネオスポーラ抗原を除去する工程
(b)前記固相にホニュウ類以外の生物由来の抗体を加えた後、余剰の抗体を除去する工程
(c)前記固相に対象動物の血清を加えた後、抗原抗体複合体以外の物質を除去する工程
(d)前記抗原抗体複合体を標識プロテインAGを利用して検出する工程
(e)前記抗原抗体複合体の存在の有無により、対象動物の血清中のネオスポーラ抗原に対する抗体の有無を判別し、これによって対象動物のネオスポーラ感染の有無を判別する工程

【0012】
以下、各工程ごとに説明する。
(1)工程(a)
工程(a)は、ネオスポーラ抗原を固相に固定化した後、余剰のネオスポーラ抗原を除去する工程である。ネオスポーラは、例えば、ネオスポーラ感染細胞の培養物から、常法に従ってネオスポーラを分離・精製することにより得ることができる。

【0013】
ネオスポーラを固定化する固相は、ネオスポーラを固定化し得る限り、いかなるものであってもよい。例えば、プラスチック(ポリスチレン、ポリビニール、ポリカーボネート等)、ニトロセルロース膜、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、ガラス等を固相として使用することができる。

【0014】
ネオスポーラの固相への固定化は、常法に従って行うことができる。例えば、物理的吸着、共有結合、架橋等によってネオスポーラを固相に固定化することができる。ネオスポーラを固相に固定化する際、例えば界面活性剤によりネオスポーラを可溶化しておくのが好ましい。固相化されなかった余剰の抗原はTween 20添加(0.01%)PBSで洗い流す。

【0015】
(2)工程(b)
工程(b)は、前記固相にホニュウ類以外の生物由来の抗体を加えた後、余剰の抗体を除去する工程である。この工程により、ネオスポーラ抗原中のイムノグロブリンと非特異的に結合する部位がマスキングされ、非特異的な抗原抗体反応を抑制できる。ここで使用するホニュウ類以外の生物由来の抗体としては、プロテインAGと結合しないものであればどのようなものでもよいが、ニワトリ由来の抗体が好ましい。

【0016】
また、この工程においては、固相中のネオスポーラが固定化されていない部分を適当なブロッキング剤でブロッキングすることが好ましい。ブロッキング剤としては、ブロックエース(大日本製薬製)等の市販のブロッキング剤を使用することができる。余剰のブロッキング剤及びホニュウ類以外の生物由来の抗体は洗浄により除去する。

【0017】
(3)工程(c)
工程(c)は、前記固相に対象動物の血清を加えた後、抗原抗体複合体以外の物質を除去する工程である。ここで、「対象動物」とは、ネオスポーラ感染の有無を判別しようとする動物を意味する。本発明の対象動物は、ネオスポーラに感染した場合に、プロテインAGが結合し得るネオスポーラに対する抗体を産生する動物である限り特に限定されない。例えば、ウシ、サル、クマ、シカ、イノシシ、タヌキ、ヌートリア、ハクビシン、カモシカ、犬、猫、ネズミ等ほとんど全ての哺乳類を対象とすることができる。

【0018】
対象動物の血清は、常法に従って調製することができる。例えば、採血後、血液が十分に凝固した後室温で3000rpm 、15分程度遠心し、その上清を分離し、血清とすることにより、対象動物の血清を調製することができる。対象動物がネオスポーラに感染している場合には、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が含まれている。従って、ネオスポーラ抗原が固定化された固相に対象動物の血清を加えることにより、対象動物がネオスポーラに感染している場合には、固相に固定化されたネオスポーラ抗原と対象動物の血清中に含まれているネオスポーラに対する抗体とが反応し、抗原抗体複合体が形成される。一方、対象動物がネオスポーラに感染していない場合には、このような抗原抗体複合体は形成されない。

【0019】
引き続き前記固相に固定化されたネオスポーラ及びそれに結合したネオスポーラに対する抗体からなる抗原抗体複合物以外の物質を除去する。抗原抗体複合体以外の物質を除去は、常法に従って行うことができる。例えば、Tween 20添加(0.01%)リン酸緩衝液(PBS)で洗浄することにより抗原抗体複合体以外の物質を除去することができる。抗原抗体複合体以外の物質が残存している場合には、標識プロテインAGが抗原抗体複合体に結合するほか、抗原抗体複合体以外の物質(例えば、対象動物の血清中に含まれる他の抗体)にも結合してしまうため、以下の工程(d)における標識プロテインAGを利用した抗原抗体複合体の検出の精度が低下する。従って、本工程における抗原抗体複合体以外の物質の除去は、十分に行う必要がある。

【0020】
(4)工程(d)
工程(d)は、前記抗原抗体複合体を、標識プロテインAGを利用して検出する工程である。プロテインAGは市販のものを使用することができる。標識プロテインAGの標識は、抗原抗体複合体を検出し得る限り特に限定されない。このような標識としては、例えば、酵素、蛍光色素、アイソトープ等を使用することができる。酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられ、蛍光色素としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)<HAN>、テトラメチル</HAN><HAN>ロータ゛ミンイソチオシアネート</HAN>(TRITC)、テキサスレッド、フィコエリスリン等が挙げられ、アイソトープとしては、例えば、125I、3H、14C等が挙げられる。

【0021】
標識プロテインAGを利用した抗原抗体複合体の検出は、プロテインAGの標識の種類に応じて、常法に従って行うことができる。例えば、標識として酵素を使用する場合には、酵素標識プロテインAGを固相に加えて抗原抗体複合体と酵素標識プロテインAGとを結合させた後、抗原抗体複合物と反応しなかった遊離の酵素標識プロテインAGを洗浄除去し、該酵素の基質を加えて酵素と基質とを反応させ、反応産物による発色や反応前後の吸光度の変化に基づいて抗原抗体複合体を検出することができる。また、標識として蛍光色素を使用する場合には、蛍光標識プロテインAGを固相に加えて抗原抗体複合体と蛍光標識プロテインAGとを結合させ、未反応の蛍光標識プロテインAGを十分に除去した後、蛍光顕微鏡等により蛍光を観察することによって抗原抗体複合体を検出することができる。また、標識としてアイソトープを使用する場合には、アイソトープ標識プロテインAGを固相に加えて抗原抗体複合体とアイソトープ標識プロテインAGとを結合させ、未反応のアイソトープ標識プロテインAGを十分に除去した後、放射能を測定することによって抗原抗体複合体を検出することができる。

【0022】
(5)工程(e)
工程(e)は、前記抗原抗体複合体の存在の有無により、対象動物の血清中のネオスポーラに対する抗体の有無を判別し、これによって対象動物のネオスポーラ感染の有無を判別する工程である。前記工程(d)によって抗原抗体複合体が検出された場合には、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在していると判別できる。一方、抗原抗体複合体が検出されない場合には、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在していないと判別できる。対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在している場合には、対象動物がネオスポーラに感染していると判別できる。一方、対象動物の血清中にネオスポーラに対する抗体が存在していない場合には、対象動物がネオスポーラに感染していないと判別できる。

【0023】
【実施例】〔実施例1〕ネオスポーラ抗原の調製
ネオスポーラJPA1株(Yamane et al., Vet. Rec., 1996, 138, pp652、Yamaneet al., Res. Vet. Sci. 1997, 63, pp77-80 )をVERO細胞に接種した後、37℃で培養した。ネオスポーラが増殖した時点でVERO細胞ごとかき集め、リン酸緩衝液(pH7.2)(以下、「PBS」という)に浮遊させ、23Gの注射針を通過させて細胞を破壊した。細胞破壊物にPBSを加え遠心洗浄した後、PBSに再浮遊させ、セファデックス25GMカラム(ファルマシアバイオテック社製)を通過させてネオスポーラを精製した。精製したネオスポーラのタキゾイド以外の混入物が確認された場合には、パーコールによる比重遠心法でさらに精製した。精製後、タキゾイド以外の混入物がほとんど存在しないことを鏡検により確認した。この精製ネオスポーラを、以下「ネオスポーラ抗原」とよぶ。精製したネオスポーラのタキゾイドにPBSを加え遠心洗浄した後、PBSに再浮遊させ、少量ごと分注し、使用時まで-80℃で保存した。保存ネオスポーラ抗原のタンパク質濃度は250μg/mlであった。

【0024】
〔実施例2〕プロテインAGを用いたELISA法によるネオスポーラ感染の判別
ネオスポーラ抗原と0.04%Triton x-100を含むPBSとを同量混合した後、数時間静置し、ネオスポーラ抗原を可溶化した。可溶化したネオスポーラ抗原を炭酸緩衝液(pH9.6)で40倍に希釈し、この希釈液を96ウェルELISAプレート(Maxsorp,Nunc)に100μl/wellずつ分注した。36℃で1時間静置した後、0.01%Tween20を含むPBS 400μl/wellで4回洗浄し、余剰のネオスポーラ抗原を洗い流した。その後、5%ニワトリ血清及び2%ブロックエース(大日本製薬社製)を含むPBSを100μl/wellずつ分注し、36℃で1時間静置しブロッキングした。ブロッキング後、0.01%Tween20を含むPBS 400μl/wellで4回洗浄した。

【0025】
ネオスポーラ感染が確認されたウシ血清(以下、「ウシ陽性血清」という)(蛍光抗体価3200倍)及びネオスポーラ未感染が確認されたウシ血清(以下、「ウシ陰性血清」という)(蛍光抗体価10倍以下)を、0.01%Tween20及び2%ブロックエースを含むPBSで100倍に希釈し、各々、100μl/mlずつ分注した。36℃で1時間静置した後、0.01%Tween20を含むPBS 400μl/wellで4回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識プロテインAG(Prozyme)又はペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリン(Cappel)を0.01%Tween20及び2%ブロックエースを含むPBSで各々1500倍、2000倍に希釈し、各々、100μl/wellずつ分注した。36℃で1時間静置した後、0.01%Tween20を含むPBS 400μl/wellで4回洗浄した。

【0026】
次いで、発色液(ABT:2.2. Azino di(3.etylbenzthioline sulfate(6))を100μl/wellずつ分注した。36℃で1時間静置した後、反応停止液(5%SDS溶液)を100μl/wellずつ分注し、吸光度を測定した。ネオスポーラ抗原を吸着させていないウェルに上記と同様の操作を施し、吸光度を測定し、試料のバックグランドとした。また、プレートごとの揺らぎを補正するため、各プレートに標準陽性血清のウェルを設けて、得られた吸光度を次式により補正し、ELISA値とした。

【0027】
なお、標準陽性血清とは、血清反応におけるデータのばらつきを補正するために用いる血清のことをいい、本試験で用いているネオスポーラ標準陽性血清は、ネオスポーラ感染牛に由来し、ネオスポーラ間接蛍光抗体価3200倍、ネオスポーラのELISAによる吸光度はほぼ1.0で、ネオスポーラ類似寄生虫に対する抗体陰性の血清である。また、標準陽性血清を用いることにより、血清反応におけるデータのばらつきを補正するばかりでなく、各血清反応において予定された結果が得られたか否かにより、血清反応が正確に行われたかの判定も行える。

【0028】
【数1】ELISA値=(試料の吸光度-試料のバックグラウンド)/(標準陽性血清の吸光度-標準陽性血清のバックグラウンド)
ウシ陽性血清及びウシ陰性血清について、ペルオキシダーゼ標識プロテインAG及びペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリンを用いて測定した吸光度を図1に示す。図1中、縦軸は吸光度を示し、横軸の「PAG」はペルオキシダーゼ標識プロテインAGを、「IgG」はペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリンを意味する。また、「NS」はウシ陰性血清を、「PS」はウシ陽性血清を意味する。

【0029】
図1に示すように、ウシ陰性血清(17例)の吸光度は、ペルオキシダーゼ標識プロテインAGを使用した場合には0.116±0.078であり、ペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリンを使用した場合には0.219±0.058であった。一方、ウシ陽性血清(6例)の吸光度は、ペルオキシダーゼ標識プロテインAGを使用した場合には0.793±0.241であり、ペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリンを使用した場合には0.761±0.173であった。

【0030】
陰性17例の平均において、吸光度はペルオキシダーゼ標識抗ウシイムノグロブリンを用いた場合0.219でペルオキシダーゼ標識プロテインAGを用いた場合0.116で明らかな吸光度の減少が認められた。一方、陽性6例の吸光度に大きな違いは認められなかった。この結果、陰性血清の吸光度と陽性血清の吸光度の差がペルオキシダーゼ標識プロテインAGを用いた方が大きくなることが判明した。

【0031】
以上の結果より、プロテインAGを使用することにより、抗ウシイムノグロブリンを使用した場合に起こるような非特異的反応を顕著に低減することができ、ネオスポーラ非感染ウシ血清とネオスポーラ感染ウシ血清とを明確に判別できることが判明した。

【0032】
〔実施例3〕プロテインAGを用いたELISA法による判別と間接蛍光抗体法による判別との比較
ウシ陰性血清(57例)及びウシ陽性血清(30例)について、実施例2のELISA法によりELISA値を測定するとともに、間接蛍光抗体法により抗体価を測定し、得られたELISA値と抗体価とを比較した。間接蛍光抗体法は、以下のように実施した(Conrad et al., Parasit. 1993. 106, pp239-249, Yamane et al., Res. Vet. Sci. 1997, 63, pp77-80) 。

【0033】
ネオスポーラのJPA1株をVERO細胞に接種培養し、ネオスポーラが増殖した時点で細胞ごとかき集めリン酸緩衝液(PBS, pH7.2) に浮遊させ、23G注射針を通過させ細胞を破壊後、PBSで遠心洗浄し、PBSに再浮遊させセファデックス25GMカラムを通過させ、混入物を取り除き、精製したネオスポーラタキゾイトとする。このタキゾイトを4000-40000/mlの濃度にPBSで希釈し、ウェル付きスライドグラスに20-25μl/well分注後、風乾し、1%パラホルムアルデヒド(PBS)に5分浸析し、PBSですすぎ、風乾後-20℃にて保存する(このスライドグラスを抗原スライドと呼ぶ)。被検血清をPBSで200,400,800,1600倍に希釈する。抗原スライドをPBSに5分洗浄後、乾燥させ、希釈した被検血清を10μl/well毎分注する。湿箱に入れ、37℃1時間反応させる。PBSで洗浄し、乾燥させ、500倍に希釈したFITC標識抗ウシIgG抗体10μl/wellを分注し、湿箱に入れ、37℃1時間反応させる。PBSで洗浄し、25%グリセリンPBSを数滴垂らし、カバーグラスをかけ蛍光顕微鏡で観察する。蛍光顕微鏡を用い400 倍の倍率で観察し、虫体全体に蛍光が認められるものを陽性とする。血清希釈200倍以上で陽性と判断されたものを陽性とする。

【0034】
ELISA値と抗体価との比較結果を図2に示す。図2に示すように、間接蛍光抗体法で200倍以下の抗体価を示すウシ陰性血清の約96.5%(57例中55例)が、0.3以下のELISA値を示し、間接蛍光抗体法で200倍以上の抗体価を示すウシ陽性血清の約96.7%(30例中29例)が、0.4以上のELISA値を示した。この結果より、ELISA値が0~0.3である血清を陰性と、0.3~0.4である血清を擬陽性と、また0.4以上である血清を陽性とする判定基準が得られた。

【0035】
〔実施例4〕交差反応の有無の確認
実施例2において使用したウシ陽性血清及びウシ陰性血清の代わりに、Sarcocystis cruzi、Hammondia hammondi、Toxoplasma gondii又はBesnoitia wallacei等の寄生虫に感染したウシ、ウサギ、ヤギ、ブタ、マウス又はネコの血清を使用し、実施例2と同様にして吸光度を測定・補正し、ELISA値を求めた。その結果を図3に示す。図3中、「b」はウシ血清、「r」はウサギ血清、「g」はヤギ血清、「p」はブタ血清、「m」はマウス血清、「c」はネコ血清を表す。

【0036】
図3に示すように、Sarcocystis cruzi、Hammondia hammondi、Toxoplasma gondii又はBesnoitia wallaceiに感染したウシ、ウサギ、ヤギ、ブタ、マウス又はネコの血清のいずれにおいても、ELISA値は0.4以下であり、陽性とは判別されなかった。従って、実施例2のELISA法は、他の寄生虫に感染した動物の血清とは交差反応を起こさず、ネオスポーラ感染を特異的に判別できることが判明した。

【0037】
【発明の効果】本発明により、ネオスポーラ感染の判別方法が提供される。本発明のネオスポーラ感染の判別方法によれば、対象動物のネオスポーラ感染の有無を精度よく判別することができる。また、本発明のネオスポーラ感染の判別方法は、操作も簡便であるとともに、広範な哺乳動物に適用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2