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Specification :(In Japanese)シアル酸が付加された糖鎖を持つ遺伝子組換えタンパク質を昆虫細胞で発現させる方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P3598374
Publication number P2003-070469A
Date of registration Sep 24, 2004
Date of issue Dec 8, 2004
Date of publication of application Mar 11, 2003
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)シアル酸が付加された糖鎖を持つ遺伝子組換えタンパク質を昆虫細胞で発現させる方法
IPC (International Patent Classification) C12N 15/09      
A01K 67/04      
C12P 21/02      
FI (File Index) C12N 15/00 A
A01K 67/04 Z
C12P 21/02 F
Number of claims or invention 8
Total pages 10
Application Number P2001-270914
Date of filing Sep 6, 2001
Date of request for substantive examination Sep 6, 2001
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】渡邉 聡子
【氏名】國保 健浩
【氏名】窪田 宜之
【氏名】犬丸 茂樹
Representative (In Japanese)【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
Examiner (In Japanese)【審査官】鈴木 恵理子
Document or reference (In Japanese)国際公開第01/59089(WO,A1)
Field of search C12N 15/00~90
C12P 21/00~02
BIOSIS(DIALOG)
CA(STN)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
昆虫細胞の持つN-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制または害することを含む、シアル酸が付加された糖鎖を有する組換えタンパク質を昆虫または昆虫細胞で発現する方法。
【請求項2】
昆虫がカイコである請求項1記載の方法。
【請求項3】
昆虫細胞の持つN-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制または害し、哺乳動物由来のタンパク質遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を培養し該タンパク質を発現させることを含む、請求項1記載のシアル酸が付加された糖鎖を有する組換えタンパク質を製造する方法。
【請求項4】
N-アセチルグルコサミニダーゼ活性の抑制または害が、N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤の添加により行われる、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物由来のタンパク質遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させる前の昆虫細胞をN-アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤で前処理することを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤が、2-アセトアミド-1、2-ジデオキシノジリマイシンである請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
タンパク質がインターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子およびインターロイキンからなる群から選択される請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
タンパク質がインターフェロン-τである請求項7記載の方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物への投与に有利なシアル酸が付加された組換えタンパク質を昆虫細胞で発現させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖タンパク質のN結合型糖鎖は、タンパク質の生物学的活性や生体内での安定性において重要な役割を果たしている。シアル酸は糖鎖の構成成分の一つであり、N結合型糖鎖の末端に結合し、特に重要である。
【0003】
従来のバキュロウイルスと昆虫細胞を用いた遺伝子組換えタンパク質の発現方法では、発現タンパク質に付加されるN結合型糖鎖は昆虫細胞に特徴的な構造となり、哺乳類で多く見られているシアル酸の付加による修飾であるシアル化はおこらない。すなわち、バキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用いて発現させたタンパク質ではN結合型糖鎖のほとんどはシアル酸の付加がないトリマンノシルコア型である。昆虫細胞ではゴルジ体に局在するN-アセチルグルコサミニダーゼ(GlcNAcase)が昆虫細胞で発現される糖タンパク質に付加されるN結合型糖鎖を昆虫細胞に特徴的な構造に構築する活性を有する。すなわち、合成経路のN結合型糖鎖末端のアセチルグルコサミン残基を加水分解することによりシアル酸の結合し得る糖鎖の伸長が起こらないと考えられる(図6)。昆虫細胞型の糖鎖を持つ組換えタンパク質を動物に投与した場合には、昆虫型糖鎖は異物として認識され、あるいは生体内に長くとどまらないなどの問題が生じていた。このため、昆虫細胞で哺乳類由来のタンパク質を発現させても、動物生体内での安定性が低く、動物への投与には適さなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体内での安定性に優れ、哺乳類本来の持つタンパク質に近い、動物への投与に適した形の、シアル酸が付加された組換えタンパク質を昆虫細胞で発現させる方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、昆虫または昆虫細胞を用いた組換えタンパク質の発現の際、昆虫細胞が持つN-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制、阻害または除去することにより、動物への投与に有利なシアル酸が付加された組換えタンパク質を得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0006】
(1)昆虫細胞の持つN-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制、阻害または除去することを含む、シアル酸が付加された糖鎖を有する組換えタンパク質を昆虫または昆虫細胞で発現する方法。
(2) 昆虫がカイコである(1)の方法。
(3) 昆虫細胞の持つN-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制、阻害または除去し、哺乳動物由来のタンパク質遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を培養し該タンパク質を発現させることを含む、(1)のシアル酸が付加された糖鎖を有する組換えタンパク質を製造する方法。
(4) N-アセチルグルコサミニダーゼ活性の抑制、阻害または除去が、N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤の添加により行われる、(1)~(3)のいずれかの方法。
【0007】
(5) 哺乳動物由来のタンパク質遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させる前の昆虫細胞をN-アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤で前処理することを含む(4)の方法。
(6) N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤が、2-アセトアミド-1、2-ジデオキシノジリマイシンである(4)または(5)の方法。
(7) タンパク質がインターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子およびインターロイキンからなる群から選択される(1)~(6)のいずれかの方法。
(8) タンパク質がインターフェロン-τである(7)の方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、まず哺乳動物由来のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞または昆虫を得ることが必要である。
【0009】
哺乳動物由来のタンパク質は限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコまたはイヌ由来のサイトカイン、増殖因子等の生理活性物質、たとえばインターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンτ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL15、IL17、IL18)、エリスロポイエチン(EPO)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、顆粒球・コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、トロンボポエチン(TPO)、腫瘍壊死因子(TNF)、繊毛上皮細胞刺激ホルモン(hCG)、神経成長因子(NGF)、ウロキナーゼ(UK)、血液凝固第VIII因子(factor VIII)、血液凝固因子(factor IX)、等が挙げられる。該タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ組換えバキュロウイルスは、例えば、分子生物学実験プロトコールIII、1997年、丸善株式会社、p665~p687記載の方法等の公知の方法により得ることができる。すなわち、本発明において製造しようとするタンパク質をコードする遺伝子を含む組み換えベクターとバキュロウイルスDNAを昆虫細胞に導入し、昆虫細胞内においてこの組み換えベクターとバキュロウイルスDNAの間で2重相同組み換えを生じさせることによって作製することができる。バキュロウイルスとしては、例えば、核多角体ウイルス(nuclear polyhedorosis virus)等が挙げられる。
【0010】
昆虫細胞としては、本発明の組み換えベクターとバキュロウイルスDNAを導入することが可能であれば特に制限されるものではないが、例えば、Sf9細胞、Sf21細胞、TN5細胞等が挙げられる。
さらに、このようにして得た組換えバキュロウイルスを昆虫に感染して、哺乳動物のタンパク質遺伝子を発現可能に含む昆虫を得ることもできる。例えば、組換えバキュロウイルスをカイコに感染することにより哺乳動物のタンパク質を発現し得るカイコが得られる。
【0011】
該昆虫細胞または昆虫を、N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制、阻害または除去する条件下で培養または飼育することにより、シアル酸が付加された組換えタンパク質が産生される。N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を抑制、阻害または除去する条件として例えば、N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤の添加が挙げられる。N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤としては、例えば2-アセトアミド-1、2-ジデオキシノジリマイシン(2-ADN) (p-ニトロフェニル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド)が挙げられる。培養昆虫細胞で組換えタンパク質を発現させる場合、培地に添加する阻害剤の濃度に限定はないが、数mM~十数mMが望ましく、2mM~5mMが特に望ましい。昆虫細胞の培養は、例えば、 EX-cell 400培地(JRH Biosciences社製)、 10%牛胎児血清を含むTC100培地(GIBCO BRS社製)等の適当な培地を用い、適温で行うことができる。
【0012】
また、哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含む昆虫に経口、注射等により該阻害剤を投与してもシアル酸が付加された組換えタンパク質を得ることができる。
N-アセチルグルコサミニダーゼ活性阻害剤を含む培地での培養は、予め哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含ませた昆虫細胞を該阻害剤含有培地で培養してもよいが、組換えタンパク質へのシアル酸の付加量を考慮すると、組換えバキュロウイルスを昆虫に感染する前に昆虫細胞を該阻害剤含有培地で前処理して培養しておくのが好ましい。
【0013】
哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含む昆虫を飼育し、または哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含む昆虫細胞を培養し、飼育または培養された昆虫または昆虫細胞からシアル酸が付加された、すなわち動物細胞で産生される動物型の糖鎖を有する組換えタンパク質を得ることができる。例えば培養昆虫細胞を用いる場合、昆虫細胞の培養液、細胞溶解液又は細胞破砕液を取得することによってシアル酸が付加された、組換えタンパク質を得ることができる。昆虫細胞を破砕する方法としては、例えば、遠心分離で昆虫細胞を集め、これを緩衝液に懸濁して懸濁液を作製し、この懸濁液に物理的な衝撃を与える方法が挙げられる。このとき緩衝液としては、例えば、TE緩衝液やリン酸緩衝液、PBS等を使用すればよい。上記懸濁液に物理的な衝撃を与える方法としては、例えば、上記懸濁液に超音波を照射する方法等が挙げられる。
【0014】
また、培養した昆虫細胞を溶解する方法としては、例えば、上記懸濁液にSDS又はTriton X100を1%程度含むPBSを加えて撹拌する方法が挙げられる。昆虫細胞を破砕又は溶解した後、遠心分離して細胞残渣を除去し、上清を取得し、上清から組換えタンパク質を単離・精製することができる。
得られたタンパク質がシアル酸を付加しているかどうかは、例えば、タンパク質を用いてSDS-PAGEを行った後に、PVDF膜やニトロセルロース膜に転写し、レクチンを用いたブロット法により解析することができる。レクチンを用いた解析方法は、例えば、グライコバイオロジー実験プロトコール、細胞工学別冊、1996年、谷口直之他監修、に記載の方法に従って行うことができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕 ウシインターフェロン-τ(boIFN-τ)遺伝子を導入した組換えバキュロウイルスの作製
ウシインターフェロン-τ(boIFN-τ)の鋳型mRNAは、ウシトロホブラスト細胞から、Takahashi, M. et al., (2000) Cloned Animal and placentation, 146-150記載の方法により得た。boIFN-τのORFをコードするcDNAは、RT-PCRにより増幅しプラスミドベクターpCRII(Invitrogen社製)にクローニングした。boIFN-τのcDNA組換えバキュロウイルストランスファーベクターおよび組換えバキュロウイルスはInumaru, S. et al., (1998) Immunol. Cell. Biol. 76, 195-201に記載の方法により構築した。
【0016】
〔実施例2〕 N-アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤を添加してのboIFN-τ遺伝子を含む昆虫細胞の培養
(1)N-アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤を添加した培地を用いてのバキュロウイルスの昆虫細胞への感染
TN5細胞を0~5mMの2-アセトアミド-1、2-ジデオキシノジリマイシン(2-acetamido-1,2-dideoxynojirimycin(2-ADN)、Tront Research Chemicals社製)を含むEX-CELL401培地(JRH Bioscience 社製)を用いて28℃で3日間培養した。次いで、上述のように作製した組換えバキュロウイルスをTN5(TN5B1-4)細胞にmoi=1.0で感染し、さらにEX-CELL401培地(JRH Bioscience 社製)を用いて28℃で3日間培養した。その後、組換えboIFN-τ(rboIFN-τ)を含む培養上清を回収した。
また、組換えタンパク質の糖鎖の付加、すなわちN-グリコシル化の阻害は、組換えバキュロウイルス感染TN5細胞を1μg/mlのツニカマイシン(Sigma社製)を含む培地で3日間培養することにより行った。
【0017】
(2)昆虫細胞の培養上清のSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析
組換えバキュロウイルス感染後3日間培養したTN5細胞の培養上清20μlをサンプルとして還元条件下でSchagger, H. et al.,(1987) Anal. Biochem. 166, 368-379の記載に従い、トリシンSDS-PAGEを行った。電気泳動後、分離されたタンパク質をCBB(Coomassie brilliant blue)G-250を用いて染色し、またはPDFV(polyvinylidene difluoride)膜(Millipore社製)に転写した。タンパク質を転写した膜を5%スキムミルク含有PBSを用いて4℃で一晩ブロッキングを行い、次に0.2μg/mlの抗boIFN-τモノクローナル抗体(片倉産業社製)と室温で1時間反応させ、さらに2000倍希釈したHPR-ウサギ抗マウスIgGと室温でインキュベーションした。タンパク質と結合した抗体は3,3’-ジアミノベンジジン染色により可視化した。CBB染色後およびウエスタンブロット後のバンドの濃さは、デンシトメーターを用いて定量した。
【0018】
ツニカマイシン処理し、N-グリコシル化を阻害した組換えboIFN-τのSDS-PAGEの結果およびウエスタンブロット分析の結果を図1に示した。図1中、レーン1は野生型のウイルスを感染した哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を含まないTN5細胞を用いた分析、レーン2はツニカマイシン不存在下で培養した哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含むTN5細胞を用いた分析、レーン3はツニカマイシン存在下での哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に含むTN5細胞を用いた分析結果を示す。約19.5kDおよび22kDaのタンパク質が培養上清中に認められた(図1A、レーン2)。これらの2つの分子は抗boIFN-τモノクローナル抗体と反応した(図1B、レーン2)。ツニカマイシンでN-グリコシル化を阻害した場合、CBB染色(図1A、レーン3)およびウエスタンブロット分析(図1B、レーン3)で19.5kDの分子のみ認められた。これらの結果は、22kDaの分子はN-グリコシル化されており、19.5kDaの分子はされていないことを示す。
【0019】
図2にGlcNAcase阻害剤の添加の組換えboIFN-τのグリコシル化に対する効果を示す。図2Aは、SDS-PAGE後のCBB染色の結果であり、図2BはSDS-PAGE後のウエスタンブロット分析の結果である。各レーンのサンプルは、レーン1が2-ADNを添加した場合の野生型のウイルスを感染したTN5細胞の培養上清、レーン2は2-AND不存在下の培養で得られた組換えboIFN-τを含む培養上清、レーン3は2-ADN存在下(5mM)の培養で得られた組換えboIFN-τを含む培養上清である。GlcNAcase阻害剤を添加して得たrboIFN-τの分子量は23.3kDaであり、阻害剤を添加しない場合の分子量の22kDaに対して有意に増加した。しかし、図には示されていないが、ツニカマイシンでN-グリコシル化を阻害したグリコシル化されていない組換えboIFN-τの分子量は2-ADNを添加した場合でも19.5kDaのままで変化しなかった。この結果は、N-グリコシル化されたrboIFN-τの分子量の増加は、オリゴ糖部分の増加であること、すなわち2-ADN処理により糖鎖が修飾されたことを示している。
尚、5mMの濃度の2-ADNを添加しても細胞の増殖は影響を受けなかった。
【0020】
(3)レクチンブロット分析
組換えバキュロウイルス感染後3日間培養したTN5細胞の培養上清を用いて、還元条件下でトリシンSDS-PAGEを行った(1レーン当たりのタンパク質量は600ng)。分離されたタンパク質をPVDF膜に転写し、1%BSAを含むPBSを用いて4℃で一晩ブロッキングを行った後に、0.05%Tween20含有200mM TBS(Tris-buffered saline)で洗浄し、5μg/mlのHRP標識Sambucus nigra agglutinin(HRP-SNA、EY laboratory社製)と室温で1時間反応させた。反応した炭化水素は、Renaissanceウエスタンブロットケミルミネッセンスキット(NEN社製)を用いて可視化した。
【0021】
GlcNcaseの活性の阻害が昆虫細胞においてシアル化されている組換え糖タンパク質の産生をもたらすかどうかを調べるために、組換えboIFN-τのN-グリカンの末端構造をα-2、6結合シアル酸を認識し得るレクチンであるSNAを用いたレクチンブロット分析により決定した。
【0022】
TN5細胞のGlcNAcase抑制アッセイは以下のようにして行った。
TN5細胞(2.0×107細胞)をPBSで1回洗浄し1%Triton-X 100を含む1mlの PBSですすいだ。1000×gで5分間遠心分離した後に、上清を酵素源として用いた。50μlの上清を50μlの2-ADNと最終2-ADN濃度が0~5mMとなるように混合し、200μlの基質溶液(0.2Mのクエン酸リン酸緩衝液中の1mg/mlのp-ニトロフェニルベータ-D-アセチルグルコサミド)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。反応を1MのNa2CO3の添加により停止させ、放出されたp-ニトロフェノールの吸収を420nmで測定した。図3に結果を示した。図3AはTN5細胞のGlcNAcase抑制アッセイの結果をTN5細胞におけるパラニトロフェノール形成の程度により示す。図3BはrboIFN-τにおけるシアル酸の検出の結果を示す。また、図3CはCBB染色による発現した組換えboIFN-τの検出の結果を示す。図中レーン1~6は、それぞれ2-ADNの添加濃度が0、0.05、0.5、1、2および5mMの場合の結果を示す。
【0023】
図3Aに示すように、GlcNcase活性は、2-ADNにより濃度依存的に阻害され、5mMの2-ADNで約80%阻害された。
図3Bのレクチンブロット分析および図3CのCBB染色の結果が示すように、SNA反応性バンドは2-ADNの添加により濃度依存的に増加したが、タンパク質の総量は変わらなかった。
【0024】
さらに、組換えboIFN-τのN-グリカンのα-2、6結合シアル化を確認するために以下の2つの実験を行った。まず、転写した膜をシアリダーゼ(Arthobacter ureafaciens由来、Roche Molecular Biochemicals社製)で処理し、レクチンブロット分析を行った。次いで、SNAを10mMの3’シアリルラクトースまたは0.1mMの6’シアリルラクトースでプレインキュベーションし、レクチンブロット分析を行った。図4に結果を示す。図4中、用いたサンプルは、レーン1が2-ADN存在下での野生型ウイルスを感染したTN5細胞の培養上清、レーン2が2-ADN存在下(5mM)の培養で得られた組換えboIFN-τを含む培養上清、レーン3は2-ADN不存在下の培養で得られた組換えboIFN-τを含む培養上清である。図4Aはシアリダーゼ処理しない場合、図4Bはシアリダーゼ処理した場合の結果を示す。図に示すとおり、シアリダーゼ処理により、2-ADN存在下でTN5細胞により発現された組換えboIFN-τは消失した。図4Dは10mMの3’シアリルラクトースでプレインキュベーションした場合の結果、図4Cは0.1mMの6’シアリルラクトースでプレインキュベーションした場合の結果を示す。図が示すように、組換えboIFN-τは2-ADNの存在下で6’シアリルラクトースの処理により消失した。一方、SNAと組換えboIFN-τの結合は、3’シアリルラクトース処理およびMaackia amurensis agglutinin レクチン処理で消失しなかった。Maackia amurensis agglutininレクチンはα-2、3結合シアル酸を認識し組換えboIFN-τとは反応しない。これらの結果は、α-2、3結合シアル酸ではなくα-2、6結合シアル酸がGlcNAcase阻害条件下での組換えboIFN-τのN-グリカンの末端に付加されたことを示す。
【0025】
〔実施例3〕 組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン2(IL2)での検討
シアル化が他の糖タンパク質でも生じるか調べた。IFN-τと同様に、ウシCM-GSFまたはブタIL2遺伝子を含むTN5細胞を作製して培養し、培養上清についてレクチンブロット分析を行った。図5に結果を示す。図5中、AはCBB染色の結果、Bはレクチンブロット分析の結果を示す。各レーンのサンプルは、レーン1および2が組換えGM-CSFで、それぞれ2-ADN存在下で得られたもの、2-ADN不存在下で得られたものである。また、レーン3および4は組換えIL2で、それぞれ2-ADN存在下で得られたもの、2-ADN不存在下で得られたものである。図に示されるように、組換えGM-CSFおよび組換えIL2の分子量は2-ADN存在下で得たものが不存在下で得たものに対して有意に増加していた。また、レクチンブロット分析により組換えGM-CSFおよび組換えIL2がSNAと反応することがわかった。これらの結果は、組換えGM-CSFおよび組換えIL2においてもGlcNAcase活性を阻害した場合α-2、6結合末端シアル化が生じることを示す。
【0026】
【発明の効果】
実施例に示されるように、糖タンパク質の遺伝子を含む昆虫細胞を、GlcNAcase活性を抑制、阻害または除去して培養し、組換え糖タンパク質を得た場合、組換えタンパク質の糖鎖にはシアル酸が結合しており、哺乳動物型であった。従って、本発明により安定性に優れ、哺乳類本来の持つタンパク質に近い、動物への投与に適した、シアル酸が付加された組換えタンパク質を昆虫細胞で大量に発現させることができ、動物およびヒト用医薬品の開発に大いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SDS-PAGEの結果およびウエスタンブロット分析の結果を示す図である。
【図2】GlcNAcase阻害剤の添加の組換えboIFN-τのグリコシル化に対する効果を示す図である。
【図3】シアル化組換えboIFN-τの産生に対する2-ADNの効果を示す図である。
【図4】TN5細胞により発現された組換えboIFN-τがα2、6結合シアル化されていることを示す図である。
【図5】昆虫細胞で産生された組換えGM-CSFおよびIL2がシアル化されていることを示す図である。
【図6】昆虫細胞におけるN-グリコシル化の経路を示す図である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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