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明細書 :リミックスストレート法冷凍生地製パン法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3089281号 (P3089281)
登録日 平成12年7月21日(2000.7.21)
発行日 平成12年9月18日(2000.9.18)
発明の名称または考案の名称 リミックスストレート法冷凍生地製パン法
国際特許分類 A21D  2/00      
A21D  6/00      
FI A21D 2/00
A21D 6/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願平11-168084 (P1999-168084)
出願日 平成11年6月15日(1999.6.15)
審査請求日 平成11年6月15日(1999.6.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591075364
【氏名又は名称】農林水産省北海道農業試験場長
【識別番号】599081082
【氏名又は名称】山内 宏昭
発明者または考案者 【氏名】山内 宏昭
【氏名】桑原 達雄
【氏名】高田 兼則
【氏名】入来 規雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
審査官 【審査官】吉田 一朗
参考文献・文献 特開 平3-119948(JP,A)
調査した分野 A21D 2/00
A21D 6/00
要約 【課題】 冷凍耐性イーストを用いリミックスストレート法で製パンする冷凍生地製パン法とこの製法で得られるパン類に関し、製パン原料として、超強力粉を適当量混合してタンパク質の強度を強化した穀物粉と冷凍耐性イーストを用い、リミックスストレート法で製パンする冷凍生地製パン法と本法によって品質良好なパン類を製造する。
【解決手段】 .冷凍耐性イーストを用いリミックスストレート法で製パンするリミックスストレート法冷凍生地製パン法。.製パン原料の粉が超強力粉含有割合10%以上の超強力粉含有粉であるリミックスストレート法冷凍生地製パン法。.製パン原料の粉が超強力粉含有割合30%以上の超強力粉含有粉であるリミックスストレート法冷凍生地製パン法。.上記.、.又は.記載のリミックスストレート法冷凍生地製パン法により製造されたパン類。
特許請求の範囲 【請求項1】
冷凍なしの生地の発酵力に対する冷凍解凍後の発酵力の割合が、通常の一般イーストに比べ高い冷凍耐性イーストを用いストレート法と同様に発酵した生地の全量をミキサーに戻し再度ミキシングするリミックスストレート法で製パンすることを特徴とする冷凍生地製パン法。

【請求項2】
製パン原料の粉が10%以上の、ピン型のミキサーで通常の強力粉の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上のミキシング時間を示す超強力粉を含有する超強力粉含有粉であることを特徴とする請求項1記載の冷凍生地製パン法。

【請求項3】
製パン原料の粉が30%以上の、ピン型のミキサーで通常の強力粉の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上のミキシング時間を示す超強力粉を含有する超強力粉含有粉であることを特徴とする請求項1記載の冷凍生地製パン法。

【請求項4】
請求項1,2,又は3記載の冷凍生地製パン法により製造されたことを特徴とするパン類。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷凍耐性イーストを用いリミックスストレート法で製パンすることを特徴とする冷凍生地製パン法とこの製法で得られるパン類に関し、更に詳しくは、製パン原料として、超強力粉を適当量混合してタンパク質の強度を強化した穀物粉と冷凍耐性イーストを用い、リミックスストレート法で製パンすることを特徴とする冷凍生地製パン法と本法によって製造される品質良好なパン類に関するものである。

【0002】
【従来の技術】近年、消費者のグルメ嗜好から、焼き立てのパンを求める声が高まっている。冷凍生地製法はこうした要望に応えて開発されたもので、工場で集中的に生産したパン生地を冷凍して配送し販売先で解凍、焼成することにより焼き立てのパンを販売できるものである。また、この製法は、パンの製造工程の途中で生地の冷凍により製造を中断できるため、製パンの時間的制約が低減され製造面からの合理化も達成できる。

【0003】
しかしながら、本製法には、特に前発酵を長くとった場合に冷凍中に酵母の障害や生地の冷凍劣化によりパンの品質が低下するという問題がある。これらの問題の対応策として、これまでに、パン生地への水の配合量の減量、イースト、イーストフードの増量(神田芳文:食品科学、1982秋季増刊、27(1982))、冷凍速度の制御(特開昭59-11134号公報)各種糖質、乳化剤等の改良材の添加(特開平4-141041号公報、特開平5-66097号公報、特開平5-292870号公報、特開平10-117671号公報等)冷凍耐性イーストの開発(特開昭58-158179号公報、特開昭58-201978号公報、特開昭60-221079号公報、特開昭61-254186号公報、特開昭63-254978号公報、特開昭63-294778号公報、特開平2-238876号公報等)に開示されており、特にの冷凍耐性イーストの開発については、イーストメーカーを中心に精力的に行われている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の解決策では、パンの風味、品質等に問題が生じる、適用できるパンの種類に制限がある、コスト高になったりする、等の新たな問題が生じるなどの欠点があり、特に前発酵を長くとる製法の冷凍生地の冷凍中の劣化の問題は十分に解決されていないのが現状である。

【0005】
本発明者らは、上記の問題について鋭意研究を行った結果、前発酵した生地を再度ミキシングするリミックスストレート法冷凍生地製パン法により、コスト高になることなく上記の問題が解決され、更に、製パン原料の粉に超強力粉含有粉を用いることにより、より高品質のパンが冷凍生地製法によって製造できることを見出し、本発明を完成した。

【0006】
【課題を解決するための手段】本願の第1の発明は、凍なしの生地の発酵力に対する冷凍解凍後の発酵力の割合が、通常の一般イーストに比べ高い冷凍耐性イーストを用いストレート法と同様に発酵した生地の全量をミキサーに戻し再度ミキシングするリミックスストレート法で製パンすることを特徴とする冷凍期間中の生地劣化の非常に少ない冷凍生地製パン法を提供するものである。本願の第2の発明は、この冷凍生地製パン法によって品質良好なパン類を製造することである。

【0007】
【発明の実施の形態】本発明の冷凍耐性イーストとは、冷凍なしの生地の発酵力に対する冷凍解凍後の発酵力の割合が、通常の一般イーストに比べ高いものすべてが包含される。このような、冷凍耐性イーストとしては、オリエンタル酵母工業株式会社のFDイースト、鐘渕化学工業株式会社のG、GAイースト、協和発酵株式会社のFRZイースト、旭フーズ株式会社のYFイースト、日本甜菜製糖株式会社のFRイースト、食品総合研究所開発のFRI-413イースト、FRI-501イースト等を挙げることができる。また、一般的に冷凍耐性が高いことが知られているTorulaspora属のイースト、具体例としては、Torulaspora delbruecki、Torulaspora globosa、Torulaspora pretoriensisも本発明の冷凍耐性イーストに包含される。

【0008】
本発明のリミックスストレート法とは、ストレート法と同様に発酵した生地の全量をミキサーに戻し再度ミキシングする製パン法のことであり、再ミキシング前の発酵時間条件等に特に制限はないが、好ましくは30℃、30分~90分である。但し、ストレート法と若干異なる点は、最初のミキシングはアンダーミキシング状態で終了し、再ミキシングの時ミキサー電流値ピーク等を指標に最適生地状態までミキシングすることである。

【0009】
本冷凍生地製法における冷凍工程としては、大玉生地冷蔵、分割生地玉冷凍、成形生地冷凍、ホイロ後生地冷凍等いずれの工程で冷凍する方法も包含される。冷凍方式についても、液体窒素トンネルフリージング、エアブラストフリージング、あるいは冷凍庫内静置による冷凍など、いずれの方法も適用可能であるが、急速冷凍が好ましい。本発明の方法により、冷凍貯蔵された冷凍パン生地は、所望の時に解凍して、必要に応じて寝かし、発酵、ホイロ工程を経て焼成等を行って製品化することができる。

【0010】
本発明でいう超強力粉とは、ピン型のミキサーで通常の強力粉(商品名、日清製粉カメリヤ)の1.2倍以上、更に好ましくは1.5倍以上のミキシング時間(ミキシング時のモーターの電流値のピークまでの時間)を示す小麦粉のことである。このような小麦粉の性質を示す代表的小麦品種、系統としては、Glenlea、Wildcat、Bluesky、VictoriaINTA、カンザス州立大学系統KS831957、北海道農業試験場育成系統PC-338、ホクレン農業協同組合連合会育成系統HW-2号等が挙げられるが、どのような品種、系統からの小麦粉でも上記のような性質を示すものであれば、本発明の超強力粉に包含される。

【0011】
本発明の超強力粉含有粉とは、一般に冷凍生地パンの原料となる穀物粉、例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、トウモロコシ粉等の、一種又は二種以上の粉に10%以上、更に好ましくは、30%以上の超強力粉を混合した粉のことである。但し、本発明の効果を十分に発揮させるためには、上記の超強力粉含有粉のミキシング時間が一般的に冷凍生地製パンに使用される強力粉よりも長いことが重要である。そのため、超強力粉を混合する粉の種類、性質により超強力粉の最適混合割合は適当に決定すればよい。

【0012】
本発明でいうパン類とは、イーストの発酵と生地の冷凍工程を伴って製造されるパン類すべてが包含され、小麦粉にその他の穀物粉、油脂、糖類、粉乳、膨張剤、食塩、調味料、香料、乳化剤、イースト、イーストフード、酸化剤、還元剤、各種酵素類等の原料の全部または一部と水、その他の物を加えて混合発酵後、蒸す、焼く、揚げる、煮る等の加熱調理をすることによってできる食品のことである。例えば、フランスパン、食パンのようなリーンな生地のパン、テーブルロール、バターロール等のロール類、マフィン、ラスク等の特殊パン、クロワッサン、デニッシュ、あんパン、ジャムパン、クリームパン等の菓子パン、肉まん、あんまん等の蒸しパン、発酵ドーナツ等の油揚げパン、更にはピザクラスト等を挙げることができる。

【0013】
本発明の効果は、超強力粉含有粉が小麦粉のみからの混合粉の場合に特にその効果を発揮し、この混合粉中の超強力粉以外の小麦粉がより強い強力粉の方が好適な結果となる。冷凍生地製パン法の条件としては、前発酵時間の長く冷凍による劣化の大きい製法の方が、従来法と本法との差異がより大きくなる。

【0014】
本発明の冷凍生地製パン法によって、従来の前発酵有の冷凍生地製パン法に比べ冷凍が長期にわたって、品質良好なパンが得られる理由については、詳細は不明であるが、以下の理由が推定される。2回のミキシングにより、生地中のL-アスコルビン酸が酸素によってより多く酸化され、酸化剤としての効果を十分に発揮する。ノータイム法と同様リミックス法ではミキシング後直ちに分割、丸目が行われるため生地ダメージが少ない。冷凍耐性イーストに加え、超強力含有粉の使用により生地そのものの冷凍耐性が向上した。

【0015】
〔実施例〕次に表2~3に示す実施例(比較例を含む)に基づいて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。

【0016】
.実施例1~5、比較例1について
表1に示す食パン配合で種々の小麦粉について、冷凍耐性イーストを用いる発酵60分のリミックスストレート法冷凍生地製パン法で製パンを行い、冷凍経時で生地を解凍して山型食パンを製造し、パン品質を従来法(比較例)のパンと比較評価した。なお、本発明のすべての実施例、比較例において、配合は、小麦粉100に対する重量部で示した。パン評価は、比容積を測定後、3人のパネラーにより梨肌、内相、食感、風味について行った。

【0017】
【表1】
JP0003089281B1_000002t.gif【0018】
【表2】
JP0003089281B1_000003t.gif【0019】
【表3】
JP0003089281B1_000004t.gif【0020】以下に製パン工程を示す。
・最初のミキシング:全原料をミキサーに入れ、50rpmで2分ミキシング
・発酵 :30℃、60分
・再ミキシング:全発酵終了生地をミキサーに入れ135rpmでミキシングピーク時間後10秒程度後までミキシング
・分割、丸目 :生地量100gずつ手分割、丸目
・ベンチ :30℃、20分
・成型 :モルダー、シーターにて成型
・冷凍 :-40℃で1時間急速冷凍後ポリエチレン袋に入れ-20℃で保存
・解凍 :30℃、湿度70%で1時間解凍
・ホイロ :38℃、湿度85%で型上1cmまでホイロ発酵
・焼成 :200℃、25分
なお、比較例のストレート法は、再ミキシングなしで、最初のミキシングを135rpmでリミックス法と同条件で行った以外、上記のリミックスストレート法と同様に行った。また、冷凍なしの区では、冷凍、解凍工程なし以外上記の方法と同様に行った。

【0021】
表1の結果から、生地冷凍なしのパンでは、実施例と比較例のパン品質に大きな差はないが、生地冷凍、2週、4週のパンでは、比較例との差が大きくなり、実施例のパンの方が非常に良好な品質であった。また、生地冷凍4週のパンは、比較例のパンがかなり大きく品質が低下するのに対し、超強力粉30%以上混合した小麦粉を使用している実施例3~5では、品質はやや低下したが、長期冷凍した生地からのパンとは思えない良好なパンであった。

【0022】
.実施例6~8、比較例2、3
表2に示す食パン配合で種々の小麦粉について、発酵30分のリミックスストレート法冷凍生地製パン法により製パンを行い、冷凍経時で解凍して山型食パンを製造し、表1と同様の評価を行った。なお、製パン工程は発酵30分にした以外実施例1~5、比較例1と同様に行った。

【0023】
表2の結果から、冷凍なしのパンでは実施例と比較例でパン品質の大きな差はなかった。しかし、冷凍生地からのパンでは比較例に比べ実施例ではパン品質が良好であり特に、冷凍4週の生地からのパンでは、その差が大であった。

【0024】
以上の結果から、発酵時間の短い製法でも、表1の結果ほど比較例との差は大きくないが、本発明の効果が十分にパン品質向上に影響することがわかる。

【0025】
.実施例9~11、比較例4,5
表3に示すバターロール配合で種々の小麦粉について、発酵60分のリミックスストレート法冷凍生地製パン法で製パンを行い冷凍経時で生地を解凍してバターロールを製造し、表1と同様にパン品質の評価を行った。

【0026】
以下に製パン工程を示す。
・最初のミキシング:全原料をミキサーに入れ、50rpmで2分ミキシング
・発酵 :30℃、60分
・再ミキシング:全発酵終了生地をミキサーに入れ135rpmでミキシングピーク時間後10秒程度後までミキシング
・分割、丸目 :生地量40gずつ手分割、丸目
・ベンチ :30℃、20分
・成型 :手でロール型に成型
・冷凍 :-40℃で1時間急速冷凍後ポリエチレン袋に入れ-20℃で保存
・解凍 :30℃、湿度70%で1時間解凍
・ホイロ :38℃、湿度85%で30分ホイロ発酵
・焼成 :200℃、13分
なお、比較例のストレート法は、再ミキシングなしで、最初のミキシングを135rpmでリミックス法と同条件で行った以外、上記のリミックスストレート法と同様に行った。また、冷凍なしの区では、冷凍、解凍工程なし以外上記の方法と同様に行った。

【0027】
表3の結果から、生地冷凍なしのパンでは、すべての区で大きな品質の差はなく、超強力粉含有小麦粉を使用したパンの食感が若干硬い程度であった。これに対し、冷凍生地からのパンでは、全般に比較例に比べ実施例では、パンの品質が良好で、生地冷凍2週の実施例のパンでは、生地冷凍なしのパンに近い品質を示し、生地冷凍4週の実施例のパンでは、長期冷凍にもかかわらず冷凍障害の特徴である梨肌の発生もほとんどないかなり良好なパンが得られた。

【0028】
以上の結果から、バターロールのようなリッチな配合の冷凍生地製法のパンにおいても本発明の効果が十分に発揮されることがわかる。

【0029】
【発明の効果】以上説明したように、冷凍なしの生地の発酵力に対する冷凍解凍後の発酵力の割合が、通常の一般イーストに比べ高い冷凍耐性イーストを用い、ストレート法と同様に発酵した生地の全量をミキサーに戻し再度ミキシングするリミックスストレート法で冷凍生地製パンを行うことにより、生地冷凍経時で従来法に比べ品質良好なパン類を製造することができる。そして、このパン品質は原料にピン型のミキサーで通常の強力粉の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上のミキシング時間を示す超強力含有粉を用いることによって更に向上する。冷凍生地製パン法は、フレシュなパンの提供と製パンの合理化、省力化の両面から、近年特に大きな伸びを示しているが、風味付与のため前発酵を長くとる製法においては、冷凍によるパン品質の低下が大きな問題となっている。本発明は、この問題をほぼ解決するための技術を提供するものである。本発明により、風味の十分にある高品質の焼き立てパンの安定的供給が可能になると共に、製パンやパン類の流通の合理化も達成され、パン類の需要拡大に多大の寄与が期待される。