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Specification :(In Japanese)医療用被覆部材

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P3714471
Publication number P2003-310744A
Date of registration Sep 2, 2005
Date of issue Nov 9, 2005
Date of publication of application Nov 5, 2003
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)医療用被覆部材
IPC (International Patent Classification) A61L 33/00      
A61L 31/00      
C23C 16/26      
C30B 29/04      
FI (File Index) A61L 33/00 Z
A61L 31/00 Z
C23C 16/26
C30B 29/04
Number of claims or invention 4
Total pages 7
Application Number P2002-122237
Date of filing Apr 24, 2002
Date of request for substantive examination Mar 1, 2005
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】鈴木 哲也
【氏名】島田 厚
【氏名】佐藤 学
Accelerated examination, or accelerated appeal examination (In Japanese)早期審査対象出願
Representative (In Japanese)【識別番号】100105061、【弁理士】、【氏名又は名称】児玉 喜博
Examiner (In Japanese)【審査官】川口 裕美子
Document or reference (In Japanese)特開2001-029447(JP,A)
特開平09-040494(JP,A)
特開平11-100294(JP,A)
Field of search A61L 15/00-33/00
C23C 16/26,50
C30B 29/04
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
フッ素を含有したダイヤモンド様炭素膜を被覆し、被膜表面から深さ0.1μm以内のフッ素濃度10~40at%とし、0.1μmより深い領域のフッ素濃度を10at%未満とすることを特徴とする医療用被覆部材。
【請求項2】
被膜表面から深さ0.1μm以内の水素濃度が、2~30at%であることを特徴とする請求項1記載の医療用被覆部材。
【請求項3】
該ダイヤモンド様炭素膜が、0.2~2μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用被覆部材。
【請求項4】
カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、ペースメーカーリード、体内留置用器材、注射針、メス又は傷口保持部品に用いることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の医療用被覆部材。
Detailed description of the invention (In Japanese)
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐付着性や耐擬着性を有し、さらに基材のへ強固な密着性及び高い耐摩耗性を併せ持つ医療用部材に関する。
また、本発明は、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、ペースメーカーリードなどの体内留置用器材や注射針、メス、(傷口保持部品)などの人体組識,血液等と直接的に接触する各種医療用部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、医療機器にDLCを被覆し、被膜全体に弗素を含有することが開示されており、以下に記載する発明が知られている。
例えば、特開平11-313884号公報には、ステント基材と、ステント基材の少なくとも表面の一部に注入された炭素イオン注入層と、該炭素イオン注入層の上に成膜されたダイヤモンドライクカーボン膜とを具備したことを特徴とする生体留置用ステントさらにダイヤモンドライクカーボン膜が積層されている生体留置用ステントが、特開2001-29447公報には、医療器本体の表面の少なくとも一部を、原子比(F/F+C+H)が60%以上であるフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆したことを特徴とする体内埋込み医療器が、特開2001-238962号公報には芯線体とその表面に形成されたDLC被膜とを有することを特徴とする医療用挿通線体がそれぞれ開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の技術は、弗素添加は、抗血栓性についての特性は向上するものの、基材の使用時の変形で剥離しやすくなることや、機械的な耐摩耗性が低下するという問題があった。
そのため、血液、組織液や血管、生体組織などの人体組識はおろか使用される医薬品に対する耐付着性や耐擬着性を有し、さらに基材のへ強固な密着性及び高い耐摩耗性を併せ持つ医療用部材が求められていた。
【0004】
【問題を解決するための手段】
上記状況に鑑み、弗素を含有したダイヤモンド様炭素膜を被覆し、被膜表面から深さ0.1μm以内の弗素濃度が10~40at%とした医療用被覆部材とすることによって、上記課題を解決した。
本発明の上記医療用被覆部材においては、被膜表面からの深さが、0.1μmより深い領域において、弗素濃度がない方が機械的な耐摩耗性や基材との密着性が優れるが、10at%未満の低濃度であれば存在しても良く、基材に対して連続的に濃度が漸減しても良い。
【0005】
また、弗素と同じ領域に存在する被膜表面から深さ0.1μm以内の水素濃度を2~30at%に制御することによって、血液、組織液や血管、生体組織などの人体組識はおろか使用される医薬品に対する耐付着性や耐擬着性を維持しつつ、機械的な特性の低減を抑制できるため好ましい。水素濃度が2at%未満では被膜内の圧縮残留応力が増大するために剥離しやすくなり、30at%より多くては機械的な特性(硬さ、結晶性)が低下する。そのため、被膜表面から深さ0.1μm以内の水素濃度を2~30at%と定めた。水素濃度は、5~15at%がより好ましい。
【0006】
さらに、該ダイヤモンド様炭素膜が、SP2結合とSP3結合を有し、かつ、被膜と部材の界面から0.1μm以内にSP3/SP2比が高い領域を有することによって、基材である医療用部材との密着性が向上するため好ましい。
前記ダイヤモンド様炭素膜の膜厚が0.2~2μm以下に制御することによって所望の性能がより発揮されるため好ましい。
【0007】
【発明の実施の態様】
本発明の医療用被覆材では、部材のダイヤモンド様炭素膜表面側に弗素付加領域を有し、基材側の弗素含有量を低く制限することによって、血液、組織液、血管や生体組織などの人体組識はおろか使用される医薬品に対しても優れた耐付着性や耐擬着性を有し、さらに基材のへ強固な密着性及び高い耐摩耗性を併せ持つ医療用被覆材が得られたものである。
【0008】
本発明における医療用被覆材としては、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、ペースメーカーリードなどの体内留置用器材や注射針、メス、(傷口保持部品)などの直接人体に接触する部材の外に、治療時の排出容器、バット等の容器などが挙げられるが、直接人体に接触する部材において特に効果が顕著である。本発明の医療用被覆材に用いる材質は、ステンレス鋼、プラチナ合金、金合金、タンタル合金などの金属や、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂、さらにアルミナ等のセラミック及びガラスなどが挙げられるが、これら実例に拘泥されるわけではない。これら基材は、多孔質であっては被膜の密着性が劣るため、緻密質であることが好ましい。
【0009】
本発明の医療用被覆材におけるダイヤモンド様炭素膜の被覆は、物理蒸着法や化学蒸着法によって実現できるが、複雑形状に均一に被覆できることや、弗素の部分添加が容易であるという観点からはプラズマCVD法が好ましい。
【0010】
また、ダイヤモンド様炭素膜は、水素などのキャリアガスと炭素源となるメタン、エタン、プロパン、ベンゼンなどを被覆する部材と共に真空装置内に装入し、導入したガスをイオン化させることによって、部材表面に形成するものである。弗素の部分付加は、弗素を含むガス、例えば、C2F6 、CF4 などを前記キャリアガス、炭素源ガスと同時に装置内に導入すうることによって弗素が付加された領域を有するダイヤモンド様炭素膜が得られる。被膜内の弗素濃度は導入する弗素含有ガスの分圧、装置内真空度によって制御し、付加領域は、弗素含有ガスを導入するタイミングにより制御する。
【0011】
本発明では、血液や筋肉、血管などの人体組識はおろか使用される医薬品に対しての耐付着性や耐擬着性は、表面から0.1μm以内の弗素濃度を10~40at%に制御することで所望の効果が得られることが明らかになった。さらに、表面から0.1μm以内の弗素付加領域内の水素濃度を2~30at%に制御することによって、血液や筋肉、血管などの人体組識はおろか使用される医薬品に対する耐付着性や耐擬着性を維持しつつ、機械的な特性の低減を抑制するものである。具体的には、導入ガス中の水素分圧を下げることによって得られる。
【0012】
また、基材との密着性は、被膜と部材の界面から0.1μm以内にSP3/SP2比が高い領域を有することによって向上することが明らかとなった。炭素被膜のとり得る結晶構造としては種々あるが、本発明は、SP3結合(ダイヤモンド結合)とSP2結合(グラファイト結合)を含み、部材との界面付近のSP2量を多くすることによって、被膜の密着性を向上させるものである。SP3結合(ダイヤモンド結合)は、最も強固な結合であるため、機械的な特性は優れるものの、SP2結合がSP3結合より多い場合は耐摩耗性が低下するものの、応力を分散する効果が発揮されるため、部材との密着性が向上するものである。特にSP3/SP2比が0.01~10では、高い密着性と優れた耐摩耗性を発揮するため好ましい。
【0013】
以上の効果は、生体内埋め込み医療器など直接人体に接触する機器において特に効果が顕著であるが、冠動脈ステントを例に挙げてより詳細に説明する。
冠動脈ステントは冠動脈内に留置され、狭くなった血管病変部で膨らむように設計されている。このときに、血液や血管組識と接触するとそこに血栓が形成されてしまう。そこで、表面にダイヤモンド様炭素膜であって、なおかつ弗素を付加することによってこの問題は解消するが、ステント拡張時に、当然被覆材も基材にあわせて変形するのであるから、剥離し易くなってしまう。
【0014】
さらに、ステントを挿入するときには、カテーテルやガイドワイヤーなどの医療器具等と合せて使用されることから、摩滅や傷が入ることによって確実な手技操作が望めない。そこで、本発明のようにダイヤモンド様炭素膜を被覆した部材であって、ごく表面のみに特定濃度の弗素付加領域を設けることによって、優れた抗血栓性や生体適合性を有し、かつ、強固な密着性及び高い耐摩耗性を併せ持つステントが得られる。
【0015】
特にステントにおいては、時間の推移によるステントの変形が起り得るが、これはステントと血管組識による応力の集中や応力の不均一な負荷によるものである。本発明品によっては、優れた耐凝着性を有することから応力がステント全体に均一に負荷されるため変形を抑制し、なおかつ弗素負荷領域より深部では耐変形性に優れるSP3結合、SP2結合を有する構造であるため、時間の経過による劣化も防止されるという効果を発揮する。
以下に具体的に実施例を挙げて説明する。
【0016】
【実施例1】
試験用の基板として、30×30×5mm形状でSUS316製を用いた。
基材は、表1に示す種々の被覆を行い評価に用いた。
成膜はプラズマCVD装置を用いた。基材を洗浄後、成膜装置内に装入し、アルゴンイオンボンバードによりイオン洗浄した。
DLCの成膜は、水素95%、ベンゼン5%の混合ガスを真空度1×10-3まで導入し、弗素附加領域では、真空度が一定になるように制御しつつC2F6 を2%の割合で混入させた。
装置内では、プラズマを発生させるさせるために13.56MHz、電力1kWの高周波電力を投入し、成膜した。SP2結合とSP3結合の比は、投入電力を200WでSP2結合の多い領域を形成し、連続的に1kWまで電力を上昇させた。
比較としてTiNを被覆形成するものは、HCD(ホローカソード)型PVD装置でアルゴン-窒素の混合プラズマ中でTiを蒸着することによりTiNを成膜した。膜厚は1.1μmとした。
【0017】
【表1】
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【0018】
得られた試料は、3種の試験により評価を行なった。
(1)試験1:血液を3cc滴下して固着させた後、粘着テープで引き剥がし試験 を行なった。
試料に残留している硬化血液付着量を比較した。
(2)試験2:ダイヤモンド圧子で0~10Nまで連続的に荷重を増加させながら 皮膜上から引掻いた時に被膜が剥離するまでの臨界荷重を比較した。
5N以下で剥離:▲、6~10Nで剥離:○、剥離なし(微少欠損):◎
(3)試験3:リング状(30Φ)の炭素鋼(S20C)を0.2m/sで回転させつつ、100g の荷重で試料被覆面を血液中で摺動させ、10min後の摩耗量を摩耗幅で比較した。
5mm以上:×、3~5mm:△、1~3mm:○、1mm以下:◎
【0019】
【表2】
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【0020】
【実施例2】
試験用の基板を15φ×0.3mm形状とした、発明品1、2、比較品3、4をラット皮下に埋植し、以下の試験により評価した。
試験4:ラット皮下に埋植後、1週間後の急性期炎症反応を血液学的に評価するために、血液中の成分、IL-1β、TNF-α、C3aを表3に比較評価した。
試験5:ラット皮下に埋植後、12週間後の慢性期組識反応を病理組識学的に評価するために、好中球、リンパ球を表4に比較評価した。
試験6:ラット皮下に埋植時に、二つ折りにし、12週間後の被膜剥離及び生体反応状態について表5に比較評価した。
【0021】
【表3】
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【0022】
【表4】
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【0023】
【表5】
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【0024】
表3、4から明らかなように、生体適合性は優れていることがわかった。さらに、被膜の密着性及び生体の付着性を評価した結果、表5から明らかなように比較品では被膜の剥離、もしくは生体の付着(癒着)が発生していたものの、本発明品は被膜の密着性及び生体付着状態についても優れた性能を示した。
【0025】
【発明の効果】
本発明では、DLC被膜の含有フッ素濃度、水素濃度、SP2/SP3比及び膜厚を適切に調整することによって医療用部材の表面にDLC被膜を形成するものであり、このようにして得られた表面にDLCを被覆した医療用被覆部材は、耐付着性が優れ、耐凝着性とともに、機械的な耐摩耗性及び密着性を併せ持っている。また、血液や筋肉、血管などの人体組織あるいは医薬品に対する耐付着性や耐擬着性を維持しつつ、機械的な特性を抑制できる。されに、本発明の医療用DLC被覆部材は、耐摩耗性が向上し、基材に対するDLC被膜の密着性が改善され、さらに得られた医療用器材は実用的な、かつ、安定性が著しく優れた部材であることがわかった。