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明細書 :弾性ヒンジ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3488908号 (P3488908)
公開番号 特開2000-220629 (P2000-220629A)
登録日 平成15年11月7日(2003.11.7)
発行日 平成16年1月19日(2004.1.19)
公開日 平成12年8月8日(2000.8.8)
発明の名称または考案の名称 弾性ヒンジ装置
国際特許分類 F16C 11/04      
F16H 35/08      
FI F16C 11/04 V
F16H 35/08
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平11-027211 (P1999-027211)
出願日 平成11年2月4日(1999.2.4)
審判番号 不服 2001-000813(P2001-000813/J1)
審査請求日 平成11年2月4日(1999.2.4)
審判請求日 平成13年1月18日(2001.1.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】大岩 孝彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
参考文献・文献 特開 平1-255711(JP,A)
特開 昭61-260117(JP,A)
特開 平4-189993(JP,A)
特開 平7-317758(JP,A)
米国特許4318522(US,A)
調査した分野 F16C 11/04
F16H 35/08
特許請求の範囲 【請求項1】
2つの部材を連結し、これらの2つの部材間における互いに直交する3つの軸のそれぞれの軸方向に沿う並進移動を阻止しかつ3つの軸のそれぞれの軸を中心とする回転方向の移動を可能とする弾性ヒンジ装置であって、
前記2つの部材の一方に固定されるベースと、
このベースに、その両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第1トーションバーを介して連結された第1中間フレームと、
この第1中間フレームに、その両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第2トーションバーを介して連結された第2中間フレームと、
この第2中間フレームに、その両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第3トーションバーを介して連結された回転部材と、
この回転部材から、前記第1,第2,第3トーションバーのそれぞれに対して斜め方向に延設され、前記2つの部材の他方に結合されるレバーとを備え、
これらの第1,第2,第3トーションバーは、それぞれの軸線を互いに直交させて配置される、弾性ヒンジ装置。

【請求項2】
前記レバーの中心軸と各トーションバーの中心軸とが、回転部材内の同一の点を通る、請求項1に記載の弾性ヒンジ装置。

【請求項3】
前記ベースと、第1,第2中間フレームと、回転部材と、第1,第2,第3トーションバーとは、一体構造に形成される請求項1または2に記載の弾性ヒンジ装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに直交する3つの軸線を中心として回動自在に2つの部材を連結する3自由度弾性ヒンジ装置に関する。

【0002】
【従来の技術およびその課題】一般に、軸部の先端部に設けたボールを相手方部材のソケットに収容し、ボールの中心を通る全ての平面内で回転自在としたボールジョイントは周知である。このようなボールジョイントは、ボールとソケットとが互いに球面に沿ってすべり運動するため、ボールとソケットとの間に間隙が形成され、球面間に摩擦力が発生する。このため、すべり運動部の潤滑を必要とし、また、スティックスリップ、摩耗あるいは発熱等の摩擦の影響を避けることはできず、2つの部材間に高精度の位置決めを必要とする用途には用いることができない。

【0003】
このため、例えば半導体製造装置あるいは走査型プローブ顕微鏡等のサブミクロン以下の高精度で位置決めあるいは再現性を必要とする用途には、弾性ヒンジが用いられることが多い。この弾性ヒンジは、1のビーム状部材の周面あるいは対向面を断面円弧状に切欠き、このような切欠きで形成された小断面積部を中心として回転させるものである。このような弾性ヒンジは、ビームのたわみによる弾性変形を利用したもので、ボールジョイントのような間隙および摩擦がなく、潤滑油も不要であるため、高精度の位置決めあるいは位置再現が可能である。

【0004】
しかし、このようなビームのたわみを利用した弾性ヒンジの場合は、曲げあるいは回転角度が大きくなると、回転する部分の回転中心が移動し、回転誤差が生じる。更に、円弧状の切欠きをビームの周部あるいは対向面に形成するため、この円弧の頂点部に対応する最もくびれた個所では、断面積が極めて小さくなる。このため、剛性が極めて低くなる。また、回転角度も、極めて狭い範囲に制限されてしまう。

【0005】
本発明は、上述に鑑みてなされたもので、2つの部材間の移動量が多くなっても極めて正確に位置決めすることのできる3自由度弾性ヒンジ装置を提供することを目的とする。

【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の弾性ヒンジ装置は、2つの部材を連結し、これらの2つの部材間における互いに直交する3つの軸のそれぞれの軸方向に沿う並進移動を阻止しかつ3つの軸のそれぞれの軸を中心とする回転方向の移動を可能とする弾性ヒンジ装置であって、前記2つの部材の一方に固定されるベースと、このベースに、その両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第1トーションバーを介して連結された第1中間フレームと、この第1中間フレームにその両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第2トーションバーを介して連結された第2中間フレームと、この第2中間フレームに、その両側から外方に向けて同軸状に延びる一対の第3トーションバーを介して連結された回転部材と、この回転部材から、前記第1,第2,第3トーションバーのそれぞれに対して斜め方向に延設され、前記2つの部材の他方に結合されるレバーとを備え、これらの第1,第2,第3トーションバーは、それぞれの軸線を互いに直交させて配置される。

【0007】
この弾性ヒンジ装置は、このレバーの中心軸と各トーションバーの中心軸とが、回転部材内の同一の点を通るのが好ましい。

【0008】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態による弾性ヒンジ装置10の全体を概略的に示し、図2から図4は、図1の弾性ヒンジ装置10を、直交軸X,Y,Z軸の内のそれぞれX-Z軸,X-Y軸およびY-Z軸を含む平面で示す。

【0009】
図示のように、本実施形態の弾性ヒンジ装置10は、この弾性ヒンジ装置10を用いて連結する2つの部材の一方に固定されて静止節を形成する枠状構造のベース12を備える。このベース12の内側には、X軸に沿いかつ互いに同軸状に配置された一対の第1トーションバー14を介して第1中間フレーム16が接続され、この第1中間フレーム16の内側には、Y軸に沿いかつ互いに同軸状に配置された一対の第2トーションバー18を介して第2中間フレーム20が接続されている。更に、この第2中間フレーム20の内側には、Z軸に沿いかつ同軸状に配置された一対の第3トーションバー22を介して、回転子である略立方体状構造の回転部材24が接続され、この回転部材24から、図示のように、第1,第2,第3トーションバー14,18,22のそれぞれに対して斜め方向にレバー26が延びる。このレバー26の先端部は、この弾性ヒンジ装置10を介して連結する上述の2つの部材の内の他方に連結される。

【0010】
各トーションバー14,18,22は、それぞれの中心軸が回転部材24内の特に中心点を通るように配置することにより、レバー26したがって回転部材24の回転位置が高精度で位置決めされる。この場合には、レバー26の中心軸も、回転部材24内の中心点を通ることが望ましい。

【0011】
ベース12と第1,第2中間フレーム16,20とは、剛性構造に形成し、強度の高い材料により、変形を生じさせない寸法に形成することが望ましい。一方、第1,第2,第3トーションバー14,18,22は、ばね鋼等の弾性限度の高い材料で形成し、特に回転角度を大きくする必要のある場合には、超弾性材料等の著しく弾性限度の高い材料で形成することが望ましい。これらのトーションバー14,18,22の太さおよび長さを含む各部の寸法は、回転部材24に作用するモーメントと回転角度の大きさとの関係(ねじり剛性)に応じて決定することができる。

【0012】
なお、上記実施形態では、ベース12と第1,第2中間フレーム16,20と回転部材24と第1,第2,第3トーションバー14,18,22との全てを別部材として形成し、この後、各部材を組立てたものであるが、これらの全ての部材を一体構造に形成してもよいことは明らかである。この場合には、例えばレーザービーム等を使用した3D光造形加工等の加工方法を用いることが可能である。また、ベース12と第1,第2中間フレーム16,20とは、矩形構造に形成してあるが、これに限らず、円形、楕円形あるいは多角形形状に形成してもよく、更に、ベース12については、第1トーションバー14を支えることができるものであれば、適宜の構造に形成することができる。

【0013】
このような弾性ヒンジ装置10の作用は以下の通りである。図1に示すように、ベース12固定されている場合、まず、第1中間フレーム16にX軸回りのモーメントが加わると、第1トーションバー14が弾性的にねじれることにより、第1中間フレーム16はベース12に対してX軸に沿う第1トーションバー14の中心軸線回りに回転する。次に、第2中間フレーム20にY軸回りのモーメントが加わると、この第2中間フレーム20は、外側の第1中間フレーム16に対してY軸に沿う第2トーションバー18の中心軸線回りに回転する。最後に、回転部材24にZ軸回りのモーメントが加わると、回転部材24は第2中間フレーム20に対してZ軸に沿う第3トーションバー22の中心軸線回りに回転する。したがって、回転部材24およびこれに固定されたレバー26は、ベース12に対してX,YおよびZ軸回りの合計3軸回りの回転を行うことができる。逆に、レバー26を固定した場合は、相対的にベース12がX,Y,Zのそれぞれの軸回りの回転運動を行う。

【0014】
この弾性ヒンジ装置10では、ベース12と回転部材24したがってレバー26との間に、すべり運動あるいは転がり運動する部分が全くなく、したがって、間隙によるガタおよび相対運動に起因する摩擦力も発生しない。更に、ベース12と第1,第2中間フレーム16,20とがいずれも剛体として形成され、このような剛体で支えられた各対の第1,第2,第3トーションバー14,18,22が同軸状に配置されているため、各トーションバー14,18,22はたわみ変形することなく、それぞれの中心軸線を中心とした回転方向にのみ弾性変形する。したがって、第1,第2中間フレーム16,20と回転部材24との回転中心は常に各トーションバー14,18,22の中心軸線を通り、しかも、これらのトーションバー14,18,22がたわみを生じないため、回転中心が移動することもない。ベース12に対する回転部材24したがってレバー26の位置を極めて高精度で位置決めし、あるいは、再現することができる。更に、各トーションバー14,18,22は、一様な円形断面の真直棒で形成できるため、従来の弾性ヒンジのように、ビームの周部に断面円弧状の切欠きを形成する必要がなく、したがって、機械的な強度も極めて高く、大きな回転角度範囲で用いることができる。

【0015】
図5から図7は、このような弾性ヒンジ装置10を用いた微動運動機構の例を示す。図5は、半導体製造装置のウエハの位置決めに用いる6自由度テーブル30である。このテーブル30は、3つの直動アクチュエータ32によりZ軸方向に支えられている。更に、このテーブル30の側縁部には、軸方向に駆動する1つの直動アクチュエータ32と、X軸方向駆動する2つの直動アクチュエータ32とが支持台34により、水平に配置されている。これらの6つの直動アクチュエータ32は、いずれも図6に示すように形成してある。

【0016】
すなわち、この直動アクチュエータ32は、一対の対向したL字状部材36a,36bを一対の腕部38で連結し、複数の圧電素子を積層した圧電アクチュエータ40により、これらの腕部38を撓ませつつ、両端部に設けた押圧板42を互いに近接する方向および離隔する方向に移動するものである。これらの押圧板42は、上述の弾性ヒンジ装置10により、L字状部材36a,36bに取付けられ、L字状部材36a,36bに対して任意の傾斜角で保持される。なお、これらの押圧板42の移動量、すなわち直動アクチュエータ32の駆動距離は、圧電アクチュエータ40に供給する駆動電圧パルスの数等適宜の手段で制御することができる。

【0017】
したがって、図5に示すテーブル30は、6つの直動アクチュエータ32により、X,Y,Z軸に沿う3つの並進方向と、X,Y,Z軸を中心とする3つの回転方向との合計6つの運動方向を持つ6自由度機構を形成する。そして、各直動アクチュエータ32および各押圧板42を支える弾性ヒンジ装置10のいずれもすべり運動あるいはころがり運動を行う部位がなく、更に回転中心の移動が全く生じないため、極めて高い精度でテーブル30の位置あるいは姿勢を制御し、所要の配置を再現することができる。

【0018】
図7は、バイオ関連の研究に用いられるマイクロピベット装置であり、(A)はピボットスプリング式、(B)はフレキシブルジョイント式のものを示す。いずれもベースプレート44aとエンドプレート44bとの間を6本の圧電素子駆動リンク46で連結し、これらの圧電素子駆動リンク46を個々に駆動することにより、エンドプレート44bをベースプレート44aに対して所要の位置に位置決めし、あるいは、所要位置を再現することができるものである。符号48はスプリングを示し、符号50は、ガラス製のマイクロピペットを示す。

【0019】
このマイクロピペット装置では、各圧電素子駆動リンク46と、ベースプレート44aおよびエンドプレート44bとの間に、上述の弾性ヒンジ装置10が介挿されている。この場合にも、弾性ヒンジ装置10にすべり運動あるいはころがり運動を行う部位がなく、更に回転中心の移動が全く生じないため、極めて高い精度でエンドプレート44bの位置あるいは姿勢を制御することが可能となる。

【0020】
【発明の効果】以上明らかなように、本発明の弾性ヒンジ装置によれば、摩擦の影響がないためスティックスリップなどがなく、高精度な運動を行うことができると共に、回転中心の移動がないため高い回転精度を維持しつつ、機械的にも高い強度と大きな回転角度範囲を形成することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5
【図7】
6