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明細書 :放射線検出器の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3239164号 (P3239164)
公開番号 特開2001-042097 (P2001-042097A)
登録日 平成13年10月12日(2001.10.12)
発行日 平成13年12月17日(2001.12.17)
公開日 平成13年2月16日(2001.2.16)
発明の名称または考案の名称 放射線検出器の製造方法
国際特許分類 G21K  5/00      
H01L 31/09      
FI G21K 5/00 Z
H01L 31/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願平11-219860 (P1999-219860)
出願日 平成11年8月3日(1999.8.3)
審査請求日 平成11年8月3日(1999.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】畑中 義式
【氏名】青木 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 輝雄
参考文献・文献 特開 平5-335726(JP,A)
特開 平4-34232(JP,A)
特開 平11-114690(JP,A)
特開 平8-187588(JP,A)
特開 平10-56180(JP,A)
特開 平6-308300(JP,A)
特開 平6-93445(JP,A)
特開 平8-152500(JP,A)
特開 平8-134631(JP,A)
特開 平8-225931(JP,A)
特開 平1-164071(JP,A)
望月大介、他6名“高エネルギー放射線画像検出器のためのパターンレーザードーピングの研究”,電子情報通信学会技術研究報告,平成11年6月25日,第99巻,144号,p.7-12
調査した分野 G21K 5/00
H01L 31/09
特許請求の範囲 【請求項1】
化合物半導体の表面に所定の導電型の不純物を含む化合物を付着し、窒素又は不活性ガスの高圧雰囲気中でレーザー光を前記化合物半導体に照射することによって、前記不純物ドーパントを前記化合物半導体にドーピングし、次に、化合物半導体の所望の箇所に真空雰囲気中でレーザー光を照射して、アブレーションによって前記レーザー光によって照射された部分を取り除いて前記化合物半導体の表面の清浄処理及び素子分離を同時に行うことにより、前記化合物半導体への前記不純物ドーパントのドーピングから前記化合物半導体の表面の清浄処理及び素子分離までの処理を一連のプロセスとして行うことを特徴とする放射線検出器の製造方法。

【請求項2】
請求項1に記載の半導体検出器の製造方法において、前記レーザー光は紫外線レーザー装置から放出されたものであることを特徴とする放射線検出器の製造方法。

【請求項3】
請求項1に記載の半導体検出器の製造方法において、前記化合物半導体は放射線検出用の結晶からなることを特徴とする放射線検出器の製造方法。

【請求項4】
請求項1に記載の半導体検出器の製造方法において、前記化合物半導体は、II-VI族化合物半導体であることを特徴とする放射線検出器の製造方法
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガンマ線を含む電磁波などの放射線の検出に用いられる放射線検出器の製造方法に関する。

【0002】
【従来の技術】従来高エネルギーの放射線を検出する場合、ガスの放電を利用したもの、固体の光電効果を利用したものがあり、前者は、ガスの密度が低いことから高感度なものが得られないことと、エネルギー分解能が悪いことが難点である。しかし、このガスの放電を利用したものは簡便なことからしばしば使われる。

【0003】
固体の光電効果を利用した放射線検出器は、放射線からの可視光の発光を光検知技術で検出するものと、半導体の内部光電効果により検知電流として取り出すものに分けられる。可視光発光によるものは光の散乱による空間的広がり、発光時間の寿命に係わる応答時間により、空間分解能、時間分解能が余り良くない。半導体の内部光電効果を利用した半導体検出器は、空間的にもエネルギー的にも高分解能の検出器である。半導体としてゲルマニウムを用いたものがあるが、放射線の検出に使用するためには液体窒素温度に冷却しなければならない。又、使用中に室温まで温度が上昇するとゲルマニウム中に包含しているリチュウム(Li)が結晶の広範囲に拡散して使用不能となるという問題点を有する。従って、ゲルマニウムを用いた半導体検出器を使用する際には、動作中のみならず、絶えず液体窒素温度を保って保存しなければならない。このことは、通常の放射線検出器として用いるには、大変に面倒であり、持ち運びに不便であることを意味する。

【0004】
これらのことから、半導体を用いた放射線検出器において、室温で動作可能な高分解能のものが求められている。高エネルギーの放射線を吸収させるためには、重い原子で構成された化合物半導体が必要である。そのため、これまで、PbO、PbI、HgI、CdTe、TlI等が研究されている。これらの中で、PbOは空気中で反応し使用不能となるので不適当である。PbIとHgIは結晶成長が極めて難しく、大型のものを製造することが困難であるし、また、加工も難しい。

【0005】
しかし、CdTe及びCdZnTeなどCdTeを中心とした化合物半導体はバンドギャップの大きさ、キャリヤーの移動度の大きさ等半導体としての取り扱いに最も適した材料である。CdTeはII-VI族半導体でn型及びp型の作製が可能な材料である。しかしながら、熱プロセスに弱く、摂氏300度以上ではドーパントが補償されて高抵抗になるか、又は、全体が低抵抗になるかが、結晶の性質で左右されてpn接合などデバイス構成が不能となる。放射線検出用CdTe結晶では高抵抗とするために塩素(Cl)のドーピングがされているが、この補償効果が不能となるために、特性が悪化する。これまでn-CdTeはインジウム(In)を熱拡散して作製していたが、次の理由により検出器の動作の安定性に問題があった。すなわち、Inは原子半径が大きいので、結晶格子に歪みが入り、結晶欠陥が多く発生するため、その欠陥準位にキャリアーが捕まってしまうことにより、素子内に電界分布の変化が生じ安定性に問題があった。p-CdTeは白金又は金の金属電極を付けショットキー接合電極としてp-CdTeの代わりとしていた。

【0006】
上記のように、これまで、このようなCdTe系のII-VI化合物半導体でpn接合を制御された形でデバイス化する技術は確立していない。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、放射線検出器のうち、ガス検出器は検出効率が低く、固体検出器は可視光を用いたものは空間分解能や時間分解能が良くないという問題を有している。また、固体検出器としての、半導体検出器については、ゲルマニウムを用いたものは、冷却しなければならないという問題を有し、更に、化合物半導体を用いたものでは、結晶成長が困難であるといった問題や熱プロセスに弱い等の問題がある。

【0008】
本発明は、熱プロセス及び機械的加工プロセスに極めて弱い化合物半導体の処理を容易、かつ確実に行うことを可能とする放射線検出器を製造する方法を提供することを目的とする。

【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を講じた。

【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、化合物半導体の表面に所定の導電型の不純物を含む化合物を付着し、窒素又は不活性ガスの高圧雰囲気中でレーザー光を前記化合物半導体に照射することによって、前記不純物ドーパントを前記化合物半導体にドーピングすることを特徴とする。ドーピング(pn接合の形成)にレーザー光(エキシマレーザー)を用い、ごく短い時間(20ns程度)の照射なので、ごく表面のみの加熱にとどまり、内部は加熱されず、熱プロセスとはならない。すなわち、本発明では熱プロセスを必要としないので、熱に弱い化合物半導体に対してドーピング(pn接合の作製)を行うことができる。また、光照射をパターン状にすることにより、模様状の多数の独立のpn接合を同時に、高密度に形成できる。

【0011】
本発明の更に連続した一連の半導体装置の製造方法は、化合物半導体に真空雰囲気中でレーザー光を照射することによって前記化合物半導体の表面の清浄処理及び素子分離を行うことを特徴とする。レーザー光のパワーの適正化と真空環境により、表面清浄化と素子分離を行うことが出来る。これにより空間分解能の大きな画像検出器を形成出来る。

【0012】
上記の半導体製造方法における好ましい実施態様は以下の通りである。

【0013】
(1) 前記レーザー光は紫外線レーザー装置(例えば、エキシマレーザー装置)から放出されたものであること。

【0014】
(2) 前記化合物半導体は放射線検出用の結晶からなること。ここで、化合物半導体は、例えば、CdTeを基本として、CdSe、CdZnTe、CdSeTe、CdHgTe、HgI等の放射線用の結晶とすることが好ましい。

【0015】
上記の製造方法は適宜組み合わせて適用することが可能であり、それにより、同時に同じ装置でエキシマレーザーを用いて真空中でpn接合の端面処理が出来るので簡単及び効率的に加工(pn接合の作製、素子分離等)を行うことができる。また、素子分離をエキシマレーザーでドーピングと同時に出来るので微細化が可能になる。なお、CdTeのようなII-VI族半導体のpn接合ダイオードの接合形成と素子分離若しくは素子端面処理を同時に行えるので、汚染の心配がなく高性能の素子を作成出来る。

【0016】
また、表面の清浄化処理についても、CMP(化学機械的研磨)を用いることがないので、機械加工プロセスに極めて弱い材料にも適用可能である。

【0017】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の特徴は、放射線検出器の検出部を製造する際に、高温に加熱しないで、不純物を結晶中に拡散させること、及び素子を作るための加工を熱加工なしで行うことである。

【0018】
図1は、本発明の一実施形態を示す工程断面図である。

【0019】
図1(a)は、放射線検出器の素子部の断面図であって、真性II-VI族化合物半導体1の例えば片方の面2をn型とし、他方の面3をp型として、p-i-n構造を形成し、両側に電極4、5を形成する。このような構造において、γ線9が入射して半導体内で吸収されることにより電子7と正孔8の対が生成され、これが各電極4、5にそれぞれ移動することにより電流として検出される。

【0020】
本発明では、図1(a)に示すようなp型層又はn型層を形成するのにレーザーを用いた不純物の拡散を用いている。更には、図1(b)に示すように、図1(a)に示す工程に引き続いて素子分離などを行うことを特徴としている。本発明では、レーザーとして、強力な紫外線レーザーを用いている。不純物拡散をするときには高圧ガス環境下で行い、次に、電極を取り付けて、図1(a)に示すような構造とする。続いて、真空環境下でウェハにエキシマレーザーを照射するとレーザーによるアブレーションが起こり、レーザーの照射されたところが取り除かれて、分離溝6が形成される。この様子を図1(b)に示す。このようにして、所望の配列を有する素子をウェハ上に作ることが出来る。例えば、このようにして構成した素子列について、リニヤセンサーとして構成したものを図2に示し、エリヤセンサーとして構成したものを図3に示す。

【0021】
図4は、本発明の素子を製造する製造装置の概略を示す図である。

【0022】
エキシマレーザー10から出たレーザー光12は光学系11によって強度調整や位置調整をされて、ミラー13で反射され、製造装置の石英窓14を通りレーザー照射室15に入る。ここで、レーザー照射室15は高圧の5~10気圧まで耐えられるように作られている。レーザー照射室15の隣りには真空蒸着室20があり、ドーパントの含まれた化合物、例えばNaTe、NaSe等の蒸着を行えるようになっている。また、最終的に電極を蒸着するときも高真空中の環境下で真空蒸着室20で行われる。なお、21は蒸着用のヒーターで有り、23は真空蒸着室20の真空度を測定するための真空計である。またレーザー照射室15はバルブ19を開けることにより、高真空にすることができるようになっており、真空中でウェハ1にレーザーを照射することにより、アブレーションを起こさせ、素子分離加工が出来る。なお、レーザー照射室15と真空蒸着室20との間のウェハ1の移動はゲートバルブ18を開閉することによって行われる。また、レーザー照射室15中の圧力は圧力計17で常時監視されている。

【0023】
以下、素子の製造プロセスを図4及び図5を参照して説明する。

【0024】
化合物半導体例えば、CdTeのウェハ1を真空蒸着容器20に設置し、真空バルブ22を開として、真空ポンプ26で真空に排気した後に、ドーパントを含む化合物27として例えばNaTeを例えば300オングストロームの厚さで蒸着する(図5(b))。次に、ゲートバルブ18を開きウェハ1をレーザー照射室15に移し、基板ホルダー16上に設置される。この基板ホルダー16は移動可能であるように構成されている。そして、窒素又はアルゴンガスを高圧ガスボンベ25から高圧ガス注入バルブ24を開いてレーザー照射室15に5~10気圧程度導入し、レーザー照射室15を高圧雰囲気とする。ここで、レーザー光12を照射するまでの間にドーパントを含む化合物を空気中若しくは水分を含む雰囲気に触れさせないことが肝要なことである。もし、化合物27を蒸着した後、空気中に取り出すと、蒸着した化合物27が酸化又は加水分解して、それ以後のレーザードーピングプロセスで良好な結果が得られない。

【0025】
次に、図4において、レーザー10を動作させ、また、レーザー光12のビームを形成する事により、ウェハ1上にレーザー光12をパターン状に照射する(図5(c))。レーザー照射、ことに紫外線レーザー照射によって極薄の、例えば、1000オングストローム以下の薄い層がドーパントの拡散の影響により、例えば、p型化してp型層3が形成される。このウェハ1を真空蒸着容器20に移し、電極となるべき金属4を蒸着する(図5(d))。さらにウェハ1をレーザー照射室15に移し、高真空に排気して、紫外線レーザーを照射して素子間分離を行うために、先にレーザー照射してドーパント拡散を行った以外の部分をアブレーションによって取り除いて素子分離を行う。このようにして分離溝6が形成される。この一連のプロセスにより素子が形成される。なお、ここでは、特に示さなかったが、反対側のn型又はp型層の形成はあらかじめ何らかの方法を用いて行っておけば、図1(b)に示すような素子とする事が出来る。

【0026】
また、このプロセスで電極4を付けないで、ウェハ1(化合物半導体)の表面、若しくはドーパントの拡散を行った表面を高真空中においてレーザー光12を照射すること、特にレーザー光12の強度を適当に調整することによって、表面に付着した汚染物質又は酸化層を除去することができる。このような操作で表面清浄化することもできる。

【0027】
上記のように、本発明によればドーピングから素子分離、素子端面処理、更には清浄化処理まで一連の工程が連続して熱プロセスを必要とすることなくレーザー照射の1パルス当たり20nsの短時間の処理によって出来るために、従来では困難であった化合物半導体のp型層やn型層の形成と微細なパターン状の放射線検出器を作製出来るようになる。

【0028】
化合物半導体としては、CdTeを基本としてCdSe、CdZnTe、CdSeTe、CdHgTe、HgI等の放射線用の結晶とすることが望ましい。

【0029】
上記化合物半導体の表面には付着するドーパントを含む化合物はp型とするためには、NaSe、NaTe等I-VI族化合物が好ましい。また、n型とするためには、CdCl、CdI等が好ましい。

【0030】
本発明によれば、熱プロセスを要することなく一連の工程で、不純物のドーピングによるpn接合の形成から、アブレーションによる素子分離、端面処理、或いは表面清浄化までが可能となるので、容易かつ確実に放射線検出器を製造することが出来る。

【0031】
図6は、本方法で製造したp-i-nのCdTeダイオード構造の電流電圧特性を示す図である。ここで、電極面積を2×2mmのものとすると、順方向には電極より電流の注入が生じて高い電流値が得られている。一方、逆方向はリーケージ電流は少なく1nA/cm以下であることがわかる。これは素子分離及び素子端面の処理が有効に作用した結果であるものと考えられる、更に、本方法で製造した放射線検出器で放射線のエネルギー分析を測定した図を図7に示す。コバルト-57からの122keVのγ線が分解能良く測定されていることがわかる。

【0032】
本発明は、上記の発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変形して実施できるのは勿論である。

【0033】
【発明の効果】本発明によれば熱プロセスを要することなく一連の工程で、不純物のドーピングによるpn接合の作製から、アブレーションによる清浄化までが可能になるので、容易、かつ確実に放射線検出器を製造することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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