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明細書 :金属間化合物融液を用いた高融点シリサイド結晶成長法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3079265号 (P3079265)
登録日 平成12年6月23日(2000.6.23)
発行日 平成12年8月21日(2000.8.21)
発明の名称または考案の名称 金属間化合物融液を用いた高融点シリサイド結晶成長法
国際特許分類 C30B 29/52      
FI C30B 29/52
請求項の数または発明の数 3
全頁数 4
出願番号 特願平11-248700 (P1999-248700)
出願日 平成11年9月2日(1999.9.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1993年3月28日 社団法人応用物理学会発行の「第46回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 No.0」に発表
審査請求日 平成11年9月2日(1999.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】野瀬 康男
【氏名】立岡 浩一
【氏名】桑原 弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】五十棲 毅
参考文献・文献 松田考司外、「Sb照射下で成長させたMnSi/Si薄膜のTEMによる評価」、日本結晶成長学会誌,Vol.25,No.3,1998,p.A21
調査した分野 C30B 1/00 - 35/00
要約 【課題】 高性能熱電デバイスに好適に用い得る大型・高品質のシリサイドバルク結晶、特にβ-FeSi2 結晶を液相から成長する方法を提供する。
【解決手段】 シリコン基板と高温に保持した金属間化合物融液とを反応させてシリサイド結晶を得る高融点シリサイド結晶成長法である。金属間化合物として鉄アンチモン化合物を用いて、大型で高品質のβ-FeSi2 結晶を生成することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン基板と高温に保持した金属間化合物融液とを反応させてシリサイド結晶を得る高融点シリサイド結晶成長法。

【請求項2】
前記金属間化合物は、シリサイドを構成する金属と、単体で蒸気圧が高いまたは表面偏析しやすい元素とを含む化合物である請求項1に記載の高融点シリサイド結晶成長法。

【請求項3】
前記金属間化合物は鉄アンチモン化合物であり、前記シリサイドはβ-FeSi2 である請求項1または2に記載の高融点シリサイド結晶成長法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリサイド結晶成長法に係り、特に大型・高品質のシリサイドバルク結晶を作製する方法に関する。

【0002】
【従来の技術】シリサイド材料は熱電変換効率が高く、熱電デバイスへの応用が期待される材料として知られている。しかしながらシリサイドは融点が高く、しかも異なる組成比、異なる結晶構造を有する多くの相が存在するので、デバイスへの応用に必要な大きさを有するとともに優れた品質の結晶を作製することが困難である。

【0003】
現在まで、シリサイド結晶は一般に焼結法により作製されているものの、この方法で作製された結晶は品質が劣っており、デバイスの性能劣化を引き起こしている。最近では、化学輸送法により結晶品質の良好な結晶が作製されているが、熱電デバイス応用に必要な大きさを有する結晶を作製することができない。

【0004】
このように、熱電デバイスに応用可能な大型で高品質のシリサイド結晶を作製する方法は、未だ得られていないのが現状である。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、シリサイドは熱電材料として期待される材料であるものの、Fe-Si系シリサイドは複雑な相図を示す。特にβ-FeSi2 の成長を伴う場合には、高温側に異なる相(α相)が存在するため液相からの成長が困難である。

【0006】
そこで本発明は、高性能熱電デバイスに好適に用い得る大型・高品質のシリサイドバルク結晶、特にβ-FeSi2 結晶を液相から成長する方法を提供することを目的とする。

【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、シリコン基板と高温に保持した金属間化合物融液とを反応させてシリサイド結晶を得る高融点シリサイド結晶成長法を提供する。

【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0009】
本発明の方法は、金属間化合物融液を用いてシリサイド結晶を成長させるものである。ここで用いる金属間化合物は、シリサイドを構成する金属と、単体で蒸気圧が高いまたは表面偏析しやすい元素とを含むものであり、次のような特性を有していることが求められる。

【0010】
(1)シリサイドよりも生成エネルギーが小さい。

【0011】
(2)実際的なシリサイドの成長温度で安定である。

【0012】
(3)Siを含む化合物を形成しない。

【0013】
(4)シリサイドとの界面での結晶格子の対称性がよい。

【0014】
こうした金属間化合物に関して鋭意検討した結果、本発明者らは、Fe-Sb系金属間化合物について次のような知見を得た。

【0015】
Fe-Sb系金属間化合物は、Sb過剰な領域において液相線に沿って平衡温度が低下し、628℃から728℃程度の温度領域でFeSb2 と平衡したFe-Sb融液が存在する。この温度領域は、FeSi2 のβ相として安定な温度領域であるので、Fe-Sb融液を用いることによりSi基板上にβ-FeSi2を成長することが可能となる。

【0016】
すなわち、本発明者らは使用する金属間化合物と成長温度とを適切に選択することによって、低温でのシリサイドの液相成長を容易に行うことができることを初めて見出して本発明の結晶成長法を得た。

【0017】
【発明の実施の形態】以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明する。

【0018】
真空槽に保持された準閉管容器中に、シリコン基板と鉄アンチモン化合物とを充填して680℃で所定時間保持し、これらを反応させることにより鉄シリサイドを生成させた。なお、鉄およびアンチモンは、シリコン基板と反応する際に金属間化合物融液の状態であればよいので、これらを別個の原料として準閉管容器に供給することもできる。

【0019】
3時間の熱処理を行うことによって生成した結晶の断面の顕微鏡写真を図1に示す。成長時間3時間では、シリコン基板の周辺に鉄シリサイドが生成しているのが確認される。これは、固定シリコンがわずかに融液中に溶解して、融液中の鉄と反応した結果である。

【0020】
図2には、6時間の熱処理を行うことによって生成した結晶の断面の顕微鏡写真を示す。この場合には、準閉管容器中に充填したシリコン基板が鉄アンチモン化合物融液との反応により全て消費されて、鉄シリサイドが生成していることがわかる。

【0021】
また、12時間の熱処理を行うことによって生成した結晶のX線回折スペクトルを図3に示す。図3のスペクトルから、12時間の熱処理で生成した鉄シリサイド相には、β-FeSi2 相のみが存在していることがわかる。この12時間の熱処理後の結晶は約5mm角の塊状を有しており、本発明の方法により塊状のβ-FeSi2 を生成可能であることが確認された。このように大型で高品質のβ-FeSi2 は、熱電デバイスに好適に用いることができる。

【0022】
本発明の方法においては、原料の総充填量、容器の寸法や形状を変更することによって、任意の寸法や形状の結晶を作製することが可能であり、例えば、容器の寸法を大きくすれば、より大きな結晶(~10cm)を作製することができる。また、容器の形状を変更することによって、棒状やディスク状といった任意の形状の結晶を作製することができる。具体的には、10φ×100mmのような円筒状の容器を用いた場合には棒状の結晶が得られ、100φ×10mmのような皿状の円筒状の容器を用いた場合には、ディスク状の結晶を作製することが可能である。

【0023】
なお、従来の化学輸送法で作製される結晶は高々約2φ×10mm程度の針状結晶であり、本発明により極めて大型の結晶が得られることがわかる。従来の方法では、容器の大きさを変更したところで、より大きな結晶を作製することはできず、得られる結晶の大きさは前述の程度である。

【0024】
このように、金属間化合物の融点がある組成範囲で低くなることを利用し、シリコン基板と融液とを反応させた本発明の方法により、大型・高品質のシリサイドバルク結晶を成長させることが可能となった。しかも、生成した結晶は良好なX線回折結果を示しており、高性能熱電デバイスの作製に好適に用いることができる。

【0025】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、大型・高品質のシリサイドバルク結晶、特にβ-FeSi2 結晶を液相から成長する方法が提供される。

【0026】
本発明により大型バルク結晶を作製することができることに加えて、デバイス応用に必要な不純物を低温で容易にドープすることが可能となる。本発明は、高温側に異なる相が存在するような複雑な相図を示すシリサイドの成長に、特に有効に用いることができる。本発明の方法により得られた大型・高品質のシリサイドバルク結晶は、熱電発電機、固体冷却器、赤外線センサーおよび太陽電池等の多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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