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明細書 :海洋生物による海域環境浄化施設

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3438026号 (P3438026)
公開番号 特開2001-340884 (P2001-340884A)
登録日 平成15年6月13日(2003.6.13)
発行日 平成15年8月18日(2003.8.18)
公開日 平成13年12月11日(2001.12.11)
発明の名称または考案の名称 海洋生物による海域環境浄化施設
国際特許分類 C02F  3/06      
C02F  3/10      
E02B  1/00      
E02B  3/06      
FI C02F 3/06
C02F 3/10
E02B 1/00
E02B 3/06
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2000-160952 (P2000-160952)
出願日 平成12年5月30日(2000.5.30)
審査請求日 平成12年5月30日(2000.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592031086
【氏名又は名称】徳島大学長
【識別番号】501438153
【氏名又は名称】国土交通省四国地方整備局長
発明者または考案者 【氏名】村上 仁士
【氏名】水口 裕之
【氏名】上月 康則
【氏名】池田 秀文
【氏名】川崎 範夫
【氏名】湯浅 喜雄
【氏名】藤本 光明
【氏名】朝信 英明
【氏名】仁木 秀典
【氏名】犬丸 潤
個別代理人の代理人 【識別番号】100074354、【弁理士】、【氏名又は名称】豊栖 康弘 (外1名)
審査官 【審査官】目代 博茂
参考文献・文献 特開 平3-193192(JP,A)
特開 平6-226280(JP,A)
実開 平3-70704(JP,U)
調査した分野 C02F 3/02 - 3/10
特許請求の範囲 【請求項1】
海底に所定の高さに基礎(1)を設け、この基礎(1)の上に互いに離して一対の垂直壁(3)を配設し、垂直壁(3)の間に生物生息場(6)を設けており、片方または両方の垂直壁(3)の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定しており、
満潮時には垂直壁(3)の上端が海面下に位置して生物生息場(6)に海水が流入し、干潮時に海面よりも上方に突出するようにしており、
さらに、基礎(1)の上に、防波堤、護岸、岸壁のいずれかである海洋構造物(2)と一対の垂直壁(3)とを構築して、垂直壁(3)と海洋構造物(2)との間に微生物領域(4)を設けており、この微生物領域(4)に微生物担体(5)を充填して、微生物担体(5)に生息する微生物が海水を浄化するようにしており、
さらにまた、海洋構造物(2)は、垂直壁(3)の上方まで延長される水平部(2A)を有し、この水平部(2A)と垂直壁(3)との間に、微生物を生息できる微生物生息体(8)を配設している海洋生物による海域環境浄化施設。

【請求項2】
海底に所定の高さに基礎(1)を設けて、この基礎(1)の上に、防波堤、護岸、岸壁のいずれかである海洋構造物(2)と垂直壁(3)とを互いに離して配設して、海洋構造物(2)と垂直壁(3)との間に生物生息場(6)を設けており、垂直壁(3)の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定しており、
満潮時には垂直壁(3)の上端が海面下に位置して生物生息場(6)に海水が流入し、干潮時に海面よりも上方に突出するようにしており、
さらに、海洋構造物(2)が垂直壁(3)の上方まで延長される水平部(2A)を有し、この水平部(2A)と垂直壁(3)との間に、微生物を生息できる微生物生息体(8)を配設している海洋生物による海域環境浄化施設。

【請求項3】
生物生息場(6)の底に通水性のある多孔質層(7)を設けており、この多孔質層(7)は垂直壁(3)の下方まで延長しており、干潮時に、生物生息場(6)の水が多孔質層(7)を通過して外部に排出されるようにしてなる請求項1または2に記載の海洋生物による海域環境浄化施設。

【請求項4】
多孔質層(7)を、微生物領域(4)の底から生物生息場(6)の底まで延長して設けている請求項に記載の海洋生物による海域環境浄化施設。

【請求項5】
垂直壁(3)が、通水性のあるポーラスコンクリートである請求項1又は2に記載される海洋生物による海域環境浄化施設。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として海洋構造物に構築されて海水を浄化する装置に関する。

【0002】
【従来の技術】良好な環境の海では、河川等から流入する窒素やリンが植物プランクトンに摂取され、これが動物に摂餌される。また、死滅したものは、細菌に分解されると共に、海底に堆積する。これは底生生物によって摂餌、さらに、底生生物も大型の動物に摂餌されて系外に運び出される。このように多様性が維持された環境では、物質の循環が滞りなく行われており、水質も良好な状態にある。海域環境浄化とは、多様な生物による滞りのない物質循環という観点を基本にして行われる。

【0003】
しかしながら、富栄養化した海域の特長は、多量に流入した窒素、リン成分が植物プランクトンに摂取されて、これが異常に増殖する。このとき、溶存態有機物が生産される一方で、死滅、堆積して底層部が貧酸素状態となる。この結果、底生生物が貧弱になる。このような系では、海底への物質の堆積傾向が卓越し、生物による堆積物の循環や系外への運び出し作用は小さくなる。したがって、このような問題の解決には汚濁物質の削減を基本に、堆積物の系外への運び出しといった物質循環系の修復が必要となる。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、汚濁物質を有効に削減すると共に、堆積物を生物体の一部として系外に有効に運び出し、物質循環系を修復して海を浄化できる海洋生物による海域環境浄化施設を提供することにある。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の海洋生物による海域環境浄化施設は、海底に所定の高さに基礎1を設け、この基礎1の上に、互いに離して一対の垂直壁3を配設し、一対の垂直壁3でもって、その間に生物生息場6を設けている。垂直壁3は、片方または両方の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定している。この海洋生物による海域環境浄化施設は、満潮時になると、垂直壁3の上端が海面下となって、垂直壁3を越えて生物生息場6に海水が流入する。干潮時には、垂直壁3が海面から上方に突出して、生物生息場6を外部から遮断する。

【0006】
本発明の請求項2の海洋生物による海域環境浄化施設は、海底に所定の高さに基礎1を設けて、この基礎1の上に、海洋構造物2と垂直壁3とを互いに離して配設して、海洋構造物2と垂直壁3との間に、生物生息場6を設けている。垂直壁3の高さは、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定している。この海洋生物による海域環境浄化施設は、満潮時になると、垂直壁3の上端を海面下として、生物生息場6に海水を流入させる。干潮時には、垂直壁3を海面から上方に突出させて、生物生息場6の外部の海と遮断する。

【0007】
さらに、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、好ましくは、生物生息場6の底に通水性のある多孔質層7を設けている。この多孔質層7は、垂直壁3の下方まで延長している。この海洋生物による海域環境浄化施設は、干潮時には、生物生息場6の水を多孔質層7に通過させて外部に排出する。

【0008】
さらに、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、好ましくは、基礎1の上に、海洋構造物2と一対の垂直壁3とを構築して、垂直壁3と海洋構造物2との間に微生物領域4を設け、この微生物領域4に微生物担体5を充填して、微生物担体5に生息する微生物で海水を浄化する。この海洋生物による海域環境浄化施設は、多孔質層7を、微生物領域4の底から生物生息場6の底まで延長して設けることができる。

【0009】
さらに、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、海洋構造物2に、垂直壁3の上方まで延長している水平部2Aを設けている。海洋構造物2の水平部2Aと垂直壁3との間には、微生物が生息できる微生物生息体8を配設している。この海洋生物による海域環境浄化施設は、微生物生息体に生息している微生物によって、より速やかに有機物を分解できる。

【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための海洋生物による海域環境浄化施設を例示するものであって、本発明は海洋生物による海域環境浄化施設を下記のものに特定しない。

【0011】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。

【0012】
図1に示す海洋生物による海域環境浄化施設は、海底に所定の高さに基礎1を設けて、この基礎1の上に、海洋構造物2と一対の垂直壁3を構築している。図の海洋構造物2はコンクリート製の防波堤で、上部に水平方向に延長して水平部2Aを設けている。さらに、図の海域環境浄化施設は、海洋構造物2と基礎1の表面に沿ってケーシング9に構築している。ケーシング9は、海洋構造物2の側面と水平部2Aの下面と基礎1の上面とに設けている。基礎1の上面に構築しているケーシング9は、その上面のレベルを、貧酸素状態としない高さとしている。富栄養化した海域は、海底から貧酸素状態となる。たとえば、海底から2メートルが貧酸素状態となる海域においては、ケーシング9の上面を2メートルよりも高くする。ケーシング9の上面を貧酸素状態としないためである。基礎1は、大きな石を1~5メートルに積み重ねて海底に構築している。ただし、基礎は、コンクリートの廃材を積み重ねて構築することもできる。基礎1の幅は、その上に海洋構造物2と垂直壁3とを構築して、さらに、海洋構造物2と垂直壁3の両側に、海草等を繁茂できる幅とする。さらに、ケーシング9は所定の間隔で隔壁を有し、隔壁に垂直壁3の両端を連結している。

【0013】
図の海洋構造物2は、上部に水平部2Aを設けているコンクリート製の防波堤であるが、海洋構造物は防波堤に限らず、護岸や岸壁とすることもできる。図の海洋構造物2である防波堤は、片方に延長して水平部2Aを設けている。垂直壁3は、一般的には海洋構造物2の湾内側に構築されるので、水平部2Aも湾内側に延長して構築する。海洋構造物2の湾内側の海域が汚れやすく、浄化する必要性が高いからである。ただし、海洋構造物の両側に垂直壁を構築して、湾内側と沖側の両側で海水を浄化して、海域の環境衛生を改善することもでき、また、海洋構造物の沖側に設けることもできる。水平部2Aは、下方に垂直壁3を配設する位置まで延長して構築される。さらに、水平部2Aは、満潮時において、海中に沈まないように、底面を満潮時の海面レベルよりも高くする。ただ、水平部の下面が満潮時に海面に沈むように設計することもできるのは言うまでもない。

【0014】
一対の垂直壁3はコンクリート製で、海洋構造物2から離して構築されて、海洋構造物2との間に微生物領域4を設けている。垂直壁は、通水性のあるポーラスコンクリートで構築することもできる。ポーラスコンクリートの垂直壁は、空隙に海水を浄化する微生物が生息できる。微生物領域4には、微生物担体5を充填している。微生物担体5には、天然石を破砕した礫、多孔質に焼結したセラミック焼結体、多孔質に成形したポーラスコンクリート等が使用できる。微生物担体5には、あらかじめ有効細菌をつけ、この有効細菌で汚濁物質を分解、削滅して海水を浄化する。微生物担体5には、必ずしも有効細菌を植え付ける必要はない。それは、海水に生息している微生物が生息するようになるからである。ただ、構築前に微生物として有効細菌を添加すると、より短期間で微生物が繁殖して、海水を浄化できるようになる期間を短縮できる。

【0015】
一対の垂直壁3は、互いに平行に配設されて、その間に生物生息場6を設けている。生物生息場6は、ナマコやゴカイのように汚濁物質を分解する生物、さらに、エビ、カニ、小魚等の魚介類を生息させる領域である。生物生息場6の幅は、数十cm~数mとする。生物生息場6は、新鮮な海水が入れ換えられ、かつ、ここに生息する生物を外敵から守ために、垂直壁3の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定している。この垂直壁3は、満潮になると海面下になって生物生息場6に海水を流入させる。また、干潮になると、生物生息場6が外部と遮断されて、生物生息場6の生物を外敵から保護し、さらに、ここに生息する生物が外側へ拡散するのを防止して、生物の密度を高く保つことができる。

【0016】
さらに、図に示す海洋生物による海域環境浄化施設は、生物生息場6の底に通水性のある多孔質層7を設けている。多孔質層7は、垂直壁3の下方から生物生息場6の外部まで延長して構築している。多孔質層7は、干潮時に、生物生息場6の水を外部に排出する。また、垂直壁3を越える波浪が生物生息場6に流入するとき、多孔質層7を通過させて生物生息場6の底から外部に海水を排水できる。したがって、生物生息場6の海水を常に新鮮にできる特長がある。図の海洋生物による海域環境浄化施設は、多孔質層7を微生物領域4の底まで延長している。この海洋生物による海域環境浄化施設は、微生物領域4に流入する海水を底から外部に排水して、微生物領域4に新鮮な海水を流入できる。

【0017】
多孔質層7は、ゼオライトやスラグを含有させたポーラスコンクリートで構築される。ただし、多孔質層は、微生物領域と同じように、微生物担体を充填して構築することもできる。

【0018】
さらに、図1に示す海洋生物による海域環境浄化施設は、海洋構造物2の水平部2Aと垂直壁3との間に、微生物が生息できる微生物生息体8を配設している。微生物生息体8には、無数の空隙のある成形体、あるいは、多孔質な固形物を集合したもの使用できる。この微生物生息体8には、あらかじめ、海水を速やかに浄化する微生物、たとえばシュードモナスパウチモビリス菌等の好気性菌を添加している。ただ、微生物生息体8も、微生物を添加することなく、自然に微生物を生息させることもできる。図の海洋生物による海域環境浄化施設は、垂直壁3の外側に微生物生息体8を吊り下げて、海洋構造物2の水平部2Aと垂直壁3との開口部を閉塞している。微生物生息体8は、図2に示すように、水平部2Aと垂直壁3の上端との間に配設して、水平部2Aと垂直壁3との間の隙間を閉塞することもできる。図に示すように、吊り下げている微生物生息体8は、海底の濁りに汚染されず、ここに生息する微生物で有効に海水を浄化できる。

【0019】
以上の海洋生物による海域環境浄化施設は、多孔質層7で生物生息場6と微生物領域4の海水を底から外部に排水して、これ等の領域の海水を新鮮な状態にできるが、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、必ずしも多孔質層を設ける必要はない。

【0020】
さらに、図1の海洋生物による海域環境浄化施設は、両方の垂直壁3の高さを、満潮時に海面下にあって干潮時に海面から突出するようにしているが、片方の垂直壁を満潮時と干潮時の海面レベルの間の高さとして、他方の垂直壁を満潮時の海面レベルよりも高く、あるいは、干潮時の海面レベルよりも低くすることもできる。満潮時の海面レベルよりも高い垂直壁で区画される海洋生物による海域環境浄化施設は、多孔質層を通過して、生物生息場や微生物領域に海水が流入する。また、図2に示すように、生物生息場6と微生物領域4との間に配設している垂直壁3の高さを、干潮時の海面レベルよりも低くしている海洋生物による海域環境浄化施設は、生物生息場6と微生物領域4との海面レベルを同じにできる。

【0021】
さらに、海洋生物による海域環境浄化施設は、図3に示すように、基礎1の上に、海洋構造物2と垂直壁3とを互いに離して配設し、海洋構造物2と垂直壁3との間に生物生息場6を設けることもできる。この海洋生物による海域環境浄化施設は、垂直壁3の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定して、満潮時には垂直壁3の上端を海面下に沈降させて、生物生息場6に海水を流入させ、干潮時には、垂直壁3を海面レベルよりも上方に突出させて、生物生息場6を外部と遮断して、ここに生息する生物を外敵から保護すると共に、生物の外部への拡散を防止して、生物の密度を高く保つことができる。

【0022】
【発明の効果】本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、汚濁物質を有効に削減すると共に、堆積物を生物体の一部として系外に有効に運び出し、物質循環系を修復して海を浄化できる特長がある。それは、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設が、海底に所定の高さに基礎を設け、この基礎の上に、互いに離して一対の垂直壁、または、海洋構造物と垂直壁とを配設し、一対の垂直壁の間、または、海洋構造物と垂直壁との間に生物生息場を設けており、垂直壁の高さを、満潮時と干潮時の水面レベルの間に設定しているからである。この海洋生物による海域環境浄化施設は、満潮時になると、垂直壁の上端が海面下となって、垂直壁を越えて生物生息場に海水が流入し、干潮時には、垂直壁が海面から上方に突出して、生物生息場を外部と遮断するので、生物生息場の生物を外敵から保護できると共に、生物の外部への拡散を防止して生物の密度を高く保ち、物質循環系を修復して海域の環境を保全しながら海を浄化できる。

【0023】
さらに、本発明の海洋生物による海域環境浄化施設は、基礎の上に、海洋構造物と一対の垂直壁とを構築して、垂直壁と海洋構造物との間に微生物領域を設けて、この微生物領域に微生物担体を充填しているので、微生物担体に生息する微生物で海水をより効率よく浄化できる特長がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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