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明細書 :熱電対型温度計の校正方法及び校正装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2990276号 (P2990276)
登録日 平成11年10月15日(1999.10.15)
発行日 平成11年12月13日(1999.12.13)
発明の名称または考案の名称 熱電対型温度計の校正方法及び校正装置
国際特許分類 G01K 15/00      
FI G01K 15/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願平11-003348 (P1999-003348)
出願日 平成11年1月8日(1999.1.8)
審査請求日 平成11年5月12日(1999.5.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391037397
【氏名又は名称】科学技術庁航空宇宙技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】渡邊 光男
【氏名】長谷川 敏
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信 (外2名)
審査官 【審査官】山川 雅也
参考文献・文献 特開 昭60-259919(JP,A)
実開 昭63-181936(JP,U)
調査した分野 G01K 15/00
要約 【課題】 極低温液体の温度測定用の熱電対を液体酸素、液体窒素などの実液を用いて高精度で且つ短時間に校正する。
【解決手段】 真空断熱された容器1内部に極低温液体を充填して、該極低温液体に熱電対31を挿入し、極低温液体に該極低温液体と同種のガスをガス吹き出し管16より吹き出して、極低温液体を撹拌して液内にガスを溶け込むことにより液温度を上昇させて、任意の液温度と該液温度に対応した飽和蒸気圧を創出し、該飽和蒸気圧に対応した極低温液体温度と熱電対の起電力とから校正データを得て、熱電対を校正する。
特許請求の範囲 【請求項1】
断熱された容器内部に極低温液体を充填して、該極低温液体に熱電対型温度計を挿入し、前記容器に充填された極低温液体に該極低温液体と同種のガスを注入制御することによって任意の液温度と該液温度に対応した飽和蒸気圧を創出し、該飽和蒸気圧に対応した極低温液体温度と熱電対型温度計の起電力とから校正データを得ることを特徴とする熱電対型温度計の校正方法。

【請求項2】
前記極低温液体に注入される前記ガスの注入量と前記容器内からのガス放出量を制御して、任意の液温度と該液温度に対応した飽和蒸気圧を得る手順を繰り返すことにより、0気圧から任意圧力までの飽和蒸気圧を得て数多くの校正データを得るようにした請求項1記載の熱電対型温度計の校正方法。

【請求項3】
断熱された容器に、該容器内部に連通する液注入管、ガス放出管、及び容器内に充填された極低温液体内にガスを注入するガス注入管、容器内の気層部圧力を計測する圧力変換器、及び熱電対型温度計を挿入固定する熱電対取付口部を配置し、前記各管にそれぞれその流量を制御する弁が設けられ、且つ前記熱電対型温度計の出力と前記圧力変換器の出力とから前記熱電対型温度計の校正データを得る演算処理装置を備えてなり、極低温液体により熱電対型温度計を校正するようにしたことを特徴とする熱電対型温度計の校正装置。

【請求項4】
前記ガス注入管の端部に容器内に充填された極低温液体内でガスを吹き出すガス吹き出し管が設けられている請求項3記載の熱電対型温度計の校正装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極低温液体の温度等を測定する熱電対等の熱電対型温度計(以下、単に「熱電対」という)を校正する方法及び装置に関する。

【0002】
【従来の技術】従来、極低温の実液(たとえば、液体酸素、液体窒素など)を用いて熱電対を校正する方法として、大気開放状態の実液に熱電対を挿入し、温度と起電力の測定を行い、さらに0℃基準温度装置を用いて0℃状態の温度を測定してこの二点を直線で結ぶ方法が一般的に行われている。しかしながら、この従来の校正方法では流動している極低温液体の温度を正確に測定することは困難を伴うため、正確な校正ができない問題点がある。

【0003】
例えば、測定点である極低温液体の大気開放状態では空気に触れている液上部とその下部では温度差が生じ、また熱電対の起電力の直線性にも固体差が見られる。さらに、経年劣化による起電力の変化等も考えられ、これらが極低温の温度測定に関する精度管理の障害となっている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、極低温の沸点と0℃の二点から校正曲線を求める従来の方法の上記問題点を解消しようとするものであって、その目的とするところは、極低温液体の温度測定用の熱電対を精度良く、かつ随時に極低温の実液を用いて校正できる熱電対の校正方法及び校正装置を提供することにある。

【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決する本発明の熱電対の校正方法は、断熱された容器内部に極低温液体を充填して、該極低温液体に熱電対を挿入し、前記容器に充填された極低温液体に該極低温液体と同種のガスを注入制御することによって任意の液温度と該液温度に対応した飽和蒸気圧を創出し、該飽和蒸気圧に対応した極低温液体温度と熱電対型温度計の起電力とから校正データを得ることを特徴とするものである。前記極低温液体に注入される前記ガスの注入量と前記容器内からのガス放出量とを制御して、任意の液温度と該液温度に対応した飽和蒸気圧を得る手順を繰り返すことにより、0気圧から任意圧力まで飽和蒸気圧を創出でき、種々の温度の極低温液体を得て数多くの校正データを得ることができ、精度の高い校正曲線が得られる。

【0006】
上記校正方法を実施する本発明の熱電対の校正装置は、断熱された容器に、該容器内部に連通する液注入管、ガス放出管、及び容器内に充填された液体内にガスを注入するガス注入管、容器内の気層部圧力を計測する圧力変換器、及び熱電対を挿入固定する熱電対取付口部を配置し、前記各管にそれぞれその流量を制御する弁が設けられ、且つ前記熱電対の出力と前記圧力変換器の出力とから前記熱電対の校正データを得る演算処理装置を備えてなり、極低温の実液により熱電対を校正するようにしたことを特徴とするものである。前記ガス注入管の端部に容器内に充填された極低温液体内でガスを吹き出すリング状などのガス吹き出し管を設けることにより、より効果的に極低温液体を撹拌し、液内の温度と圧力を短時間に上昇させることができて望ましい。

【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による熱電対の校正装置を横から見た断面図である。図中、1は斜線部分を真空断熱された円筒形の容器で、外部からの熱の進入を極力防ぐ構造となっている。該容器の上部には、低温液体貯槽(例えば、液体酸素や液体窒素の貯槽)13から校正用液体である極低温液体(以下、実液という)を注入する液注入口部2、前記実液と同種のガス(例えば、校正用液体が液体窒素である場合は窒素ガス)を供給するためのガス供給口部3、容器内のガスを外部に放出するためのガス放出口部4、5、圧力計及び安全弁を取り付けるための圧力計取付口部6、液面計取付口部8、圧力変換器取付口部9及び熱電対取付口部10がそれぞれ形成されている。

【0008】
液注入口部2には、極低温用ニードル弁などの液注入弁12を有する液注入管11が連結され、その端部に適宜の管継手を介して低温液体貯槽13からの断熱配管を着脱自在に接続できるようになっている。ガス供給口部3は、容器内の実液の撹拌と液温上昇及び容器内圧力を制御するためのガスを供給するためのものであり、該ガス供給口部にはガス供給管15が容器内の底部近くまで延びて取り付けられ、該ガス供給管15の容器内端部にガス吹き出し管16が設けられている。該ガス吹き出し管16は、リング状の管に多数のガス吹き出し孔が形成され、実液内にガスを吹き出すようになっている。また、ガス供給管15の容器外管路には上流側から順に圧力調整弁17、ニードル弁等からなるガス注入弁18が設けられ、その上流端には校正用液体と同種のガスが貯蔵されているボンベに連通した接続パイプが連結されている。

【0009】
ガス放出口部4、5には、容器内のガスを放出して圧力を低下させるためのガス放出管20、21が容器内の気層部に連通するように取り付けられ、該ガス放出管の容器外側端部に極低温用ニードル弁等からなるガス放出弁22、23がそれぞれ取り付けられている。ガス放出弁22は少流量調節用であり、23は多流量調節用である。圧力計取付口部6には、容器内の気層部と連通する圧力導管24が取り付けられ、該圧力導管の端部に容器内の異常な圧力の上昇による損傷を防ぐための安全弁25が取り付けられていると共に、圧力導管に分岐して容器内の圧力を監視するブルドン管式圧力計等の圧力計26が取り付けられている。

【0010】
液面計取付口部8には、容器1に極低温実液の注入及び熱電対の校正時に液位の監視を行うための極低温用差圧式液面計等の液面計27が取り付けられている。なお、28はレベル変換器である。また、圧力変換器取付口部9には、校正時に熱電対の起電力に対する圧力を計測するための圧力変換器29が取り付けられている。圧力変換器29としては、例えば歪ゲージ式圧力変換器等が採用でき、該圧力変換器はコンピュータで構成されるデータ演算処理装置35又はデータ収録装置に連結され、計測された容器1内の気層の圧力をデータ演算処理装置35に収録するようになっている。30は圧力計である。一方、熱電対取付口部10には、熱電対31が容器1内の液層に十分に達するように挿入して取り付けられる。熱電対取付部には例えばコンプレッションフィッティングなどの固定金具で、多数の熱電対31を取り付けることができ、同時に多数の熱電対を校正することができるようになっている。なお、32は温度変換器であり、前記データ演算処理装置35に連結され、計測温度に対応して生じた起電力データをデータ演算処理装置35に収録する。また、33は温度表示盤である。

【0011】
本実施形態の熱電対校正装置は、以上のように構成され、極低温液体を容器1に注入する際は、圧力変換器29及び熱電対31をそれぞれ圧力変換器取付口部9及び熱電対取付口部10に固定し、且つ液注入弁12を全閉にした状態で、液注入管11の上流端部に低温液体貯槽13を接続し、ガス注入弁18を全閉、さらにガス放出弁22、23を全開とした後、液注入弁12を除々に開き液の注入を行う。このとき、液面計27で容器1の液位を監視しながら極低温液体の注入を行い、所定の液位に達したら液注入弁12を閉め、その後低温液体貯槽13を切り離す。

【0012】
熱電対の校正は、以下の手順で、容器1内の圧力と極低温実液温度を所定値に設定して行う。容器1に所定の液位まで実液が充填された上記状態において、圧力調整弁17を任意の所望圧力より若干高い圧力に設定する。さらに、ガス放出弁22、23を閉めた後、ガス注入弁18を開にする。ガス注入弁18を開にすることによってガス吹き出し管16より実液と同種のガス(図の実施形態では、極低温実液として液体窒素LHを採用し、同種のガスが窒素ガスGNである場合を示している。)が吹き出し、容器1内の極低温実液を撹拌する。それにより、実液内にガスが溶け込んで液温が上昇し、且つ容器1内の圧力も共に上昇する。容器1内の圧力が、所定の圧力とほぼ等しい圧力に達したことを圧力計26で確認した後、ガス放出弁22、23を除々に開き、ガスを放出しながら容器1内の圧力及び液温度が上昇も下降もしない状態を少流量調節弁22を操作して創出する。即ち、この状態の圧力が極低温液体の温度に対応した飽和蒸気圧であり、この状態が保たれる。

【0013】
上記飽和蒸気圧は圧力変換器29からデータ演算処理装置35に入力され記憶される。同様に、そのときの液温度は熱電対取付部10に取付られた熱電対30のデータと共にデータ演算処理装置35に取り込まれ記憶される。熱電対取付部10には、複数個の熱電対を取り付けることができ、各熱電対のデータがそれぞれ個別にデータ処理装置に記憶される。従って、この装置によれば、同時に多数の熱電対の校正が可能である。以上のような動作を設定圧力を任意に変えて繰り返すことにより、0気圧(即ち、大気開放状態)から任意圧力まで数多くのデータを得ることができる。

【0014】
なお、本実施形態では、ガス吹き出し管をリング状に形成して底壁部近傍に配置しているので、ガスが容器全体に効果的に供給され実液の撹拌が促進されて、液全体を短時間に均一温度にすることができる。しかも、ガス放出弁を少流量調節用と多流量調節用の2種類設けてあるので、内圧が安定状態に達するまでは多流量調節用のガス放出弁23でガスを放出し、ほぼ安定状態に達したら少流量調節用のガス放出弁22で微調節できるので、短時間に安定状態を得ることができる。

【0015】
以上のようにして得られた圧力情報(即ち、飽和蒸気圧)から、予めデータ処理装置35に入力されている飽和蒸気圧-温度変換テーブルに基づき、そのときの極低温液体の温度を得る。一方、熱電対から得られた起電力に対応する温度を、予めデータ演算処理装置のROMに格納されている起電力表から読み出して求める。そして、両温度を逐次比較することによって任意温度における多数の偏差データを求めることができ、より精度の高い校正曲線を得ることができる。

【0016】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限るものでなく、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。例えば、ガス吹き出し管はリング状に限るものでなく、方形状又は櫛歯状マニホルド配管する等適宜選択できる。また、ガス放出弁を少流量調節用と多流量調節用の2種類設けてあるが、必ずしも2種類設ける必要はない。また、上記実施形態では、熱電対型温度計として熱電対について説明したが、本発明は熱電対のみに限らず、熱電対取付部10の取付アダプタを変更することによって、他の側温センサー例えば白金測定温抵抗体等の熱電対類似形態の温度計の校正も可能である。

【0017】
【実施例】上記実施形態の熱電対型温度計の校正装置を使用して、校正用液体として液体窒素を採用して熱電対の校正を次のようにして行った。低温液体貯槽の飽和圧力を任意に変化させてデータポイントとして低温液体貯槽の圧力を13回測定することにより行った。飽和圧力は、測定圧力(ゲージ圧)+大気圧の絶対圧力であり、校正温度は該飽和圧力から液体窒素の飽和圧力-温度変換により算出した。また、みかけ温度は熱電対出力からJIS C1602より算出したものであり、校正を行わずに得られる従来の測定温度である。その結果を表1に示す。また、図2には表1から得られた校正曲線を示す。以上の実施例ににより、本発明によれば、極低温液体を任意の圧力、温度のデータが随時に数多く取得でき、広範囲で精度の高い校正曲線が得られることが確認された。

【0018】
【表1】
JP0002990276B1_000002t.gif【0019】
【発明の効果】以上のように本発明の熱電対型温度計の校正方法及び校正装置によれば、容器内の極低温液体に該液体と同種のガスを吹き込んで極低温液体を撹拌するので、極低温液体の温度が均一に保たれて正確に温度を検出でき、且つ任意の液温度と該温度に対応する飽和蒸気圧を創出することができるから、0気圧から任意の圧力まで数多くのデータを短時間に取得することができ、極低温液体の温度測定用の熱電対を精度良く且つ短時間に校正することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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