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明細書 :多重サーボアクチュエータ用ファジィコントローラ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3364650号 (P3364650)
公開番号 特開2001-134305 (P2001-134305A)
登録日 平成14年11月1日(2002.11.1)
発行日 平成15年1月8日(2003.1.8)
公開日 平成13年5月18日(2001.5.18)
発明の名称または考案の名称 多重サーボアクチュエータ用ファジィコントローラ
国際特許分類 G05B 13/02      
G05B 11/36      
G05D  3/00      
G05D  3/12      
FI G05B 13/02 N
G05B 11/36
G05D 3/00
G05D 3/12
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願平11-311851 (P1999-311851)
出願日 平成11年11月2日(1999.11.2)
審査請求日 平成11年11月2日(1999.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人 航空宇宙技術研究所
発明者または考案者 【氏名】真柳 光美
個別代理人の代理人 【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男 (外2名)
審査官 【審査官】森林 克郎
参考文献・文献 特開 平4-24802(JP,A)
特開 昭63-276605(JP,A)
特開 平8-255080(JP,A)
調査した分野 G05D 3/00 - 3/20
G05B 11/00 - 13/04
G06F 9/44
B64C 13/40
特許請求の範囲 【請求項1】
ファジィ入力信号として、フォースファイトの検知信号に用いる各系統のシリンダー内ピストン両側の油圧差信号とアクチュエータの入・出力差信号とを用い、ファジィ推論で各系統のファジィ出力を推定し、それを各系統の信号保持回路を介して補正値として各系統へフイードバックして制御を行うことを特徴とする、フォースサミング型の多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化と出力の劣化を抑制するファジィ制御方式。

【請求項2】
請求項1に記載のファジィ制御方式を効果的に実行する為のものであって、ファジィ推論は、推論型にマムダニのmax-min法、非ファジィ化に最大最大法を用い、ファジィ変数の数を最小限の3とし、メンバーシップ関数に単調増加型の関数を用いるが、メンバーシップ関数の設定範囲をファジィ変数の目的に合致させて設定すると共に、多数決の原理をルールベースとした制御ルールを主に構築することにより、制御ルールの数を大幅に減らしたことを特徴とするファジィコントローラ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高信頼性が要求される航空宇宙機の飛行制御システムの各動翼を駆動するフォース・サミング型の電気・油圧式多重サーボアクチュエータ(多重サーボアクチュエータ)の各系統間のフォースファイトの低減化と出力の劣化を抑制するための制御方式に関するものである。

【0002】
【従来の技術】多重サーボアクチュエータは、一般的に高信頼性が要求される産業分野において用いられているが、各アクチュエータ出力を全く同一条件で結合する事は困難であり、各系統間のミスマッチに起因したフォースファイトは本質的に発生するものである。このフォースファイトを避けるため手法として1系統で駆動を行い他系統を待機させるスタンバイ方式と、フォースファイトの低減化にアナログ方式の均等化回路(イコライザ)を用いる方式が一般的に用いられている。後者は故障発生時の出力トランジェント変位が少ないことから、多重サーボアクチュエータに採用されている。しかし、このイコライザ方式は他系統との整合をとることによってフォースファイトを低減化するが、これはアクチュエータ出力の適正化とは無関係の事柄であり、出力の劣化抑制に対しては十分に作用しない。

【0003】
従来技術として、多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化にアナログ型のイコライザが用いられているのであるが、イコライザの入力信号として用いられる各差圧信号は各アクチュエータを各々作動させるものであり、アクチュエータが無負荷の静止状態では本来零になるべきものであるが、フォースファイト現象があると無負荷の静止状態でも信号を発生し、その符号が系統間で異なることからフォースファイトの検知信号として用いられている。従って、イコライザはアナログ的処理で各差圧信号の中間値や平均値を算出し、それを出力信号(基準信号)として出力する。この基準信号と各系統の差圧信号との差分が信号保持回路を経てフォースファイトの低減化信号(補正値)としてサーボアンプにフイードバックされている。

【0004】
各補正値はイコライザからの基準信号と各系統の差圧信号との差分信号である事から、従来技術の欠点・問題点を箇条書きにすると、以下のようにまとめることができる。
イコライザの出力を基準に算出される各補正値は、基準信号と各差圧信号との差分であることからフォースファイトの低減化に有効であるが、多重サーポアクチュエータ出力の劣化抑制に関しては効果的に作用するものではない。
アナログ方式の制御は、最新の制御技術と多くの情報を活用して優れた制御が可能なディジタル方式の制御と比較して機能的にも柔軟さの面でも欠けているから、多重サーボアクチュエータ出力の劣化抑制問題を始めその他の故障判断等の機能的な問題に対して柔軟に対処できず、その発展が望めない。
これら従来技術におけるイコライザの問題点に関しては、最近の制御技術とマイクロ技術の発展を踏まえて捉え直し、アクチュエータ入・出力信号を有効に活用できる優れた制御技術の研究開発が望まれるところである。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、主に電気・油圧式多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低滅化と出力の劣化抑制問題を解決する制御システムを構築し、該制御システムの高信頼性・高精度化を図ることを目的とするものである。

【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気・油圧式多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低滅化と出力の劣化抑制問題を解決するため、各差圧信号、及びアクチュエータの加算出力信号と入力信号との差信号(以下これを単に「アクチュエータ入・出力差信号」という。)をファジィコントローラヘの入力信号として用い、ファジィ制御ルールに基づくファジィ推論で推定した各ファジィ出力を信号保持回路を経た信号(補正値)として各系統ヘフイードバックして多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化と出力の劣化を抑制する。更に、ファジィ推論は推論型にマムダニのmax-min法、非ファジィ化に最大最大法を用い、ファジィ変数の数を最小限の3とし、メンバーシップ関数に単調増加型の関数を用いるが、メンバーシップ関数の設定範囲をファジィ変数の目的に合致させて設定すると共に主なる制御ルールを多数決の原理をルールベースとして採用し、制御ルール数を大幅に減らして計算負荷の減少課題を解決した。

【0007】
【発明の実施の形態】本発明のファジィコントローラは、多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化だけでなく出力の劣化をも抑制するものであり、高信頼性、高精度が要求される産業分野での応用が期待できる。さて、ファジィ制御技術は各種の優れた特徴を有し、各種の制御問題に柔軟に対処できその活用が十分に期待できることから、本発明では前記問題点の解決手段として用い、本発明は次の2段階に分かれ構成される。
ファジィ制御方式
複数ある系統の各差圧信号とその他の情報を入力として活用し、言語的制御ルールによるファジィ推論で推定したファジィ出力から得られる各補正値を用いて前項の問題点を解決する。具体的には、ファジィコントローラヘの入力信号として、各差圧信号、及びアクチュエータの入・出力差信号を用い、ファジィ制御ルールに基づくファジィ推論で推定した各ファジィ出力を各系統の信号保持回路で補正値とし、各系統へフイードバックして多重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化と出力の劣化を抑制するのである。
ファジィコントローラ
ここで本発明のもう一つの特徴点は、のファジィ制御方式を効果的に実現させる為、制御ルールの数を大幅に減らしてファジィ推論上の計算負荷を減少させるようにしたファジィコントローラにある。具体的には、ファジィ推論は推論型にマムダニのmax-min法、非ファジィ化に最大最大法を用い、ファジィ変数の数を最小限の3とし、メンバーシップ関数に単調増加型の関数を用いるが、メンバーシップ関数の設定範囲をファジィ変数の目的に合致させて設定すると共に主なる制御ルールを多数決の原理をルールベースとして採用し、制御ルール数を大幅に減らして計算負荷の減少課題を解決したものである。

【0008】
【実施例1】以下に、航空宇宙機の動翼を駆動する電気・油圧式3重サーボアクチュエータのフォースファイトの低減化と出力の劣化抑制を例として、本発明についてより具体的に詳述する。以下では前項に揚げた2段階に対応して記述すものとし、まず、本発明の原理を詳細に説明する。
本発明におけるファジィ制御方式
図1は、電気・油圧式3重サーボアクチュエータの全体構成とファジィ制御方式の原理図であって、これは系統1,系統2,系統3の3系統からの差圧信号(△P)とその他にアクチュエータの入・出力差信号(Ao)をファジィコントローラヘのファジィ入力(Xi)として採用し、ファジィ推論に基づいてフォースファイトを低減化しかつ出力の劣化を抑制する為の各ファジィ出力(Yi)を推定し、それらを各系統の信号保持回路を経て補正値として各系統へフイードバックするようになっている。さて、ファジィコントローラで用いるファジィ推論は、本発明においては推論型にマムダニのmax-min法、非ファジィ化には最大最大法を、メンバーシップ関数に単調増加型の三角形関数を用いるようにした。従って、一般的に次式の様な言語的制御ルール(R)が用いられる。
R:IF(x is Ai and x is Aj~ and x is Ak) THEN(yis Bi and y is Bj~ and y is Bk)
ここで、x~xはファジィ入力、Ai~Ak、Bi~Bkはファジィ変数そしてy~yはファジィ出力である。Rは、前件部(条件部)で各ファジィ入力が対応するファジィ変数のメンバーシップ関数への適合度を各々決め、各条件を満足する適合度の最小値(最小適合値)が採用され、後件部でこの最小適合値と各メンバーシップから各ファジィ出力が決められる。Rの数がm個の場合、各Rに最小適合値があるから合計m個になるが、非ファジィ化の最大最大法はその中で最大なものを採用する。従って、そのRの適合度から各ファジィ出力が推定される。これが本発明におけるファジィ制御方式である。

【0009】
本発明におけるファジィコントローラ
本発明において前項のファジィ制御方式を効果的に実現する為、制御ルール数を大幅に減らすファジィコントローラの原理を説明する。前述したようにファジィ推論は推論型にマムダニのmax-min法、非ファジィ化に最大最大法、ファジィ変数の数は最小限の3とする。メンバーシップ関数は図2に示す単調増加型の三角形関数(trimf)、入力としては3系統の差圧x~xとアクチュエータ入・出力差信号のxを用いて、前件部の適合度を求め、その適合度と後件部のメンバーシップ関数から各ファジィ出力を求め、それを3系統への信号y~yとする。
y=trimf(x,[a,b,c])
とあらわせるが、ここでa,b,cは三角形の各頂点を表す値である。メンバーシップ関数の設定範囲をファジィ変数の目的に合致させファジィ制御領域の全てを制御ルールで覆う様に設定する。前件部のメンバシップ関数を見た場合、入力に対する適合度は次式で得られる。
x≦aの場合は常に三角形の外になるので f(x;a,b,c)=0
a≦x≦bは正(P)か零(Z)の場合でf(x;a,b,c)=(x-a)/(b-a)
b≦x≦cは負(N)か零(Z)の場合でf(x;a,b,c)=(c-x)/(c-b)
x≧cの場合は常に三角形の外になるので f(x;a,b,c)=0
後件部では前件部で得られた適合度と上式のxをyに置換した式からファジィ出力yを求めることになる。更に表1に示したファジィコントローラのルールベースの内のR4~R9の多数決の原理に基づく効果的なルールベースを採用して、ファジィコントローラを構築することに本発明の特徴がある。
【表1】
JP0003364650B2_000002t.gifなお、表においてP,N,Zは正,負,零を、F,I,Dは固定,増加,減少を意味している。一般的に制御ルールの数(m)は、理論的には次式で与えられる。
m=k
ここで、k:ファジィ変数の数、n:ファジィ入力の数である。
例えば、k=3,n=3の場合、m=27と非常に大きな数になる。しかし、上記の本発明の原理に基づきファジィコントローラを構築すると、m=9 と1/3大幅に減らすことができる。なお、図1に示すようにn=4の場合、一般的にはm=81と非常に大きな数になるが本発明ではm=12と減らすことが見込まれる。

【0010】
次に本発明の作用(作動)をこの実施例に基づいて説明する。以下で説明する本発明の作動は、図1に示した多重アクチュエータの構成要素で行われる。即ち、入力装置1、サーボアンプ2、サーボバルブ3、信号アクチュエータSA、A/D変換器10、ファジィコントローラ11、D/A変換器12、信号保持回路8から成るループを主に行われる。
ファジィ制御方式の作用
ファジィコントローラは、図1に示す3系統からの差圧信号(△P~△P)とアクチュエータの入・出力差信号(Ao)を入力とし、各制御ルールに基づき各ファジィ出力(y~y)を推定し、それを各系統の信号保持回路を経て補正値として各系統へフイードバックする。例えば、系統3が適正であって系統1と系統2のフイードバックゲインに各々10%、5%減の誤差がある場合の作動を考える。補正信号がフイードバックされないと系統1と系統3間でフォースファイトが発生し、アクチュエータ出力は中間位置(5%増)へ作動する。このフォースファイトは、従来のイコライザ方式では系統1へ正の補正値(5%)、系統3へ負の補正値(5%)を各々フイードバックし、減算すると解消できるが、出力の劣化は抑制できない。しかし、本発明によるファジィコントローラは、次式の言語的制御ルールに基づきファジィ出力を推定する。
IF(x is Ai and x is Aj ~ and x is Ak) THEN(yis Bi and y is Bj ~ y is Bk)
ここで、x~x:ファジィ入力、Ai~Ak、Bi~Bk:ファジィ変数
~y:ファジィ出力
従って、アクチュエータの入・出力差信号Aoが正(P)[又は負(N)又は零(Z)]で且つ差圧△Pが零なら、各ファジィ出力(y~y)を各々減少(D)[又は増加(I)、又は固定(F)]にすることによって出力の劣化を抑制できる。この例では、表2のルールベースR10~R12(出力の劣化抑制)をR1~R9(フォースファイトの均等化)に追加することで系統3の補正値(F)を零にできる。この場合系統3のフイードバックゲインには誤差が無いから、正確なアクチュエータ出力が得られる。
【表2】
JP0003364650B2_000003t.gif【0011】ファジィコントローラの動作
ファジィ制御の安定性を得るにはファジィ変数の数は最小限の3必要であるが、メンバーシップ関数に単調増加型の関数として3角形関数を用い、メンバーシップ関数の設定範囲は、各差圧信号(x~x)が信号アクチュエータSA中のロードリミツタ6により±100以内にあり、ファジィ出力(y~y)を±1とし、アクチュエータ入・出力差信号(x)は入力の20%(±0.2)を越えないものとし、ファジィ制御領域の全てを制御ルールで覆う様に、x~x:±100、x:±0.2、y~y:±1と図2の各値に設定し、且つ、効果的な制御ルールとして主に多数決の原理に基づくフォースファイトの均等化制御ルール(表2のR1~R9)とアクチュエータの入・出力差信号Aoによる出力劣化抑制制御ルール(表2のR10~R12)採用してファジィコントローラを構築する。

【0012】
図3(A)において従来のイコライザによる調整状況が、上記した例のように系統3が適正であって系統1と系統2のフイードバックゲインに各々10%、5%減の誤差がある場合の作動として示されている。中段の3系統の検出差圧信号に基づき下段の補正出力が系統1と系統3に作用し、系統1には5%増の、系統3には5%減の補正値が継続的に出力される。この状態でフォースファイトに対応する差圧信号は次第に0に収斂し安定状態に至る。しかしこのとき、上段のアクチュエータ出力はプラス側にドリフトした状態であり、出力劣化を起こしていることがわかる。これはイコライザによる調整はフォースファイトの解消には有効であるが、出力劣化の抑制の機能は持たないことを示している。これに対し、図3(B)に示した本発明のファジィコントロータによれば、中段の3系統の検出差圧信号に基づき下段に示すようなファジィ出力に基づく補正値が各系統に作用する。この補正値はグラフから分かるように滑らかなカーブとその上に間欠的なインパルス状の信号が重畳した形態となっている。ここで滑らかなカーブは各系統の信号保持回路8の出力値で、ファジィ出力の積分値(過去の履歴値)であり、インパルス状の信号がファジィ出力y である。このファジィ出力が間欠的なインパルス状となるのは各ルールの適合度の最大なものが毎回採用され、それが順次出力されるためであり、安定してゆくに従い間欠期間は長くなる。中段の差圧信号はフォースファイトの状況をモニタするものであるが、この制御は単にフォースファイト解消の制御ではなく出力劣化をも抑制するものであるため、その収斂は従来のイコライザによる調整より複雑であるが、次第に収斂していることが見て取れる。そして上段のグラフに示されたとおり、アクチュエータ出力はドリフトのない適正値に安定していることから、本発明のファジィコントロールが多重サーボアクチュエータに有効に機能することがわかる。

【0013】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、図3に示したように多重アクチュエータのフォースファイトの低減化と出力の劣化を抑制が実行できる。この方式は、フォースファイトの低減化と出力の劣化抑制問題のいずれにも対応し、高信頼性・高精度の多重アクチュエータ制御システムを得ることが出来る。ファジィコントローラは単調増加型のメンバーシップ関数の設定範囲をファジィ変数の目的に合致させて設定し、且つ多数決の原理に基づく制御ルールの採用によりルール数を大幅に減少させ、計算負荷を小さくしており、ファジィ制御方式の実現を効果的にしている。
図面
【図2】
0
【図1】
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【図3】
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