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明細書 :磁力支持用風洞模型

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3491041号 (P3491041)
公開番号 特開2003-098032 (P2003-098032A)
登録日 平成15年11月14日(2003.11.14)
発行日 平成16年1月26日(2004.1.26)
公開日 平成15年4月3日(2003.4.3)
発明の名称または考案の名称 磁力支持用風洞模型
国際特許分類 G01M  9/06      
G01B 11/00      
FI G01M 9/06
G01B 11/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願2001-294335 (P2001-294335)
出願日 平成13年9月26日(2001.9.26)
審査請求日 平成13年10月15日(2001.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人航空宇宙技術研究所
発明者または考案者 【氏名】澤田 秀夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信 (外3名)
審査官 【審査官】本郷 徹
参考文献・文献 特開2000-346740(JP,A)
実開 平3-10239(JP,U)
澤田秀夫、河野敬、国益徹也,60cm磁力支持装置の低速風洞への応用,日本航空学会第31期年会講演会講演集,日本,社団法人 日本航空宇宙学会,2000年 3月,222-225
調査した分野 G01M 9/06
G01B 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
磁力支持天秤装置を備えた風洞を使用した風洞試験に用いられ前記磁力支持天秤装置との間に作用する磁力によって浮上支持される磁石体を備えている風洞模型において、透明樹脂製の外形体と、前記外形体の内部に取り付けられ前記外形体を通して光学的に検出可能なマークを持つマーク体とを備えていることを特徴とする磁力支持用風洞模型。

【請求項2】
前記マーク体は、表面に前記マークが付された前記磁石体から成っていることを特徴とする請求項1に記載の磁力支持用風洞模型。

【請求項3】
前記磁石体は、中心軸線が前記風洞模型の前後軸に沿って配置される円柱形磁石であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁力支持用風洞模型。

【請求項4】
前記外形体は、薄殻状に樹脂成形されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の磁力支持用風洞模型。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁力支持天秤装置を備えた風洞を使用した風洞試験において用いられ、磁力支持天秤装置と内部に有する磁石との間で作用する磁力によって磁気支持される磁力支持用風洞模型に関する。

【0002】
【従来技術】従来、物体の空力的な特性を模型で得るため風洞設備の測定部において模型を支持体で支持することが一般的に行われてきたが、支持体自体が模型表面における空気流れに影響を及ぼすので、試験結果をそのまま模型の空力特性として採用することができない。そこで、風洞試験において、模型を磁力で支持することが提案されている。模型を磁力支持することによって支持体が不要となるので、支持体が存在することによる、模型周りの空力的な影響を取り除くことができる。

【0003】
模型を磁力支持する風洞試験では、模型の位置や姿勢を測定するために、模型表面にマークを付設したり塗装面を設ける必要がある。即ち、気流の中に置いた模型には重力、空気抵抗、揚力が作用し、時々刻々、模型の位置や姿勢を変えようとするので、これらの模型に作用する力及びモーメントに対抗して、模型を所定の位置及び姿勢に保つように、模型支持の磁力の大きさと向きを制御する必要がある。模型の位置や姿勢の測定に際しては、その測定のために模型に影響が生じてはならないので、外部から光学的に観測することが好ましい。そのため、模型表面にマークを付設したり塗装面を形成して、そのマークや塗装面を観測することで模型の位置や姿勢が測定される。

【0004】
しかしながら、風洞試験では空力特性を求めるべき物体が異なると模型も当然に形状が異なるために、所定の外形を有する模型を個別に製作し、模型毎にその表面にマークや塗装を施し、且つ模型位置姿勢測定センサの較正試験を実施する必要がある。これらの模型製作、塗装作業及び較正試験は、風洞試験のための準備作業であるが、長い時間と人手による労力とを費やすとともに、模型の製作コストも高価になり、風洞試験の時間やコストの観点で効率的な実施の妨げとなっている。また、マークや塗装自体が、模型の周りでの気流に影響を与えることがあってはならない。

【0005】
ところで、風洞試験においては、満足できる空力的な試験結果を得るには、模型周りの気流を定めることになる模型外形については、正に試験をしようとする実際の物体の外形と同じ又は縮尺した外形である必要があるが、模型の位置や姿勢は、必ずしも模型表面の情報に基づいたものである必要はない。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、磁気浮上支持式の風洞試験において空力的な試験結果を得るための模型の外形については、従来と同様に実物の外形と同じ又は縮小した外形とするが、模型の位置や姿勢を測定するための測定対象については、外形とは別体化を図って、模型内部に設けられるマークの測定を可能にする点で解決すべき課題がある。

【0007】
この発明の目的は、模型の位置や姿勢を測定するための測定対象を模型外形とは別に測定用のマーク体として模型内部に設けることで、風洞試験のための準備作業となる模型製作、塗装作業及び較正試験のうち、模型毎のマークの形成や較正試験を省略して、模型を低コストで製作し、風洞試験を時間やコストの観点で効率的に実施することを可能にする風洞模型を提供することである。

【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明による磁力支持用風洞模型は、磁力支持天秤装置を備えた風洞を使用した風洞試験に用いられ前記磁力支持天秤装置との間に作用する磁力によって浮上支持される磁石体を備えている風洞模型において、透明樹脂製の外形体と、前記外形体の内部に取り付けられ前記外形体を通して光学的に検出可能なマークを持つマーク体とを備えることを特徴としている。

【0009】
この磁力支持用風洞模型によれば、外形体は、透明樹脂材料を用いて、例えば実物を縮尺した形状に製作され、この外形体の内部に外形体を通して光学的に検出可能なマークを持つマーク体が、模型の位置・姿勢を測定する測定用として取り付けられる。外形体が位置や姿勢を変えると外形体内部のマークも位置や姿勢を変え、外形体が透明であることから、そのマークの位置や姿勢の変化が外形体に妨げられることなく外部から光学的に測定される。外形体の製作は、模型毎に行わざるを得ないが、製作されたマーク体は互換性があり、別の模型に用いたマーク体をそのまま利用することも可能である。また、そのようなマークについては、一度、センサ較正試験を実施してそのデータを保存しておけば、そのマークを持つマーク体を別の模型に用いた場合も、そのセンサ較正試験データをそのまま利用可能である。また、マーク体は模型の内部に取り付けられているので、マーク及びマーク体が模型の周りの流れに影響を与えることもない。

【0010】
この磁力支持用風洞模型において、前記マーク体を、表面に前記マークが付された前記磁石体よって構成することができる。外形体の内部には、風洞に備わる磁力支持天秤装置と磁気相互作用をする磁石体が配設されているので、その磁石体を利用して、磁石体の表面にマークを付してマーク体とすることが好ましい。マークと磁石体とが一体化されるので、同じマーク体を異なる外形体の模型に用いるときに、磁石体についての標準重りを用いた磁力較正試験に関しても、センサ較正試験と同様、再度行う必要がない。

【0011】
この磁力支持用風洞模型において、前記磁石体は、中心軸線が前記風洞模型の前後軸に沿って配置される円柱形磁石とすることができる。磁石体を円柱形磁石とすることで、磁力支持天秤装置からの磁気線との相互作用を有効に引き出し、模型の変位や姿勢を効率良く制御することが可能になる。特に飛翔体を試験対象として行われる磁力支持天秤装置の制御性の観点から、円柱形磁石の中心軸線は、模型の前後方向に沿って配置することが好ましい。

【0012】
この磁力支持用風洞模型において、前記外形体は、薄殻状に樹脂成形することができる。透明樹脂は、ブロー成形や型成形によって薄殻状に形成される。外形体を薄殻状に樹脂成形することにより、外形体に用いる樹脂量が減少し、製作コスト上、有利である。また、模型の重さも軽量化を図ることができる。

【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明による磁力支持用風洞模型の実施例を説明する。図1はこの発明による磁力支持用風洞模型の一実施例を示す斜視図、図2はこの発明による磁力支持用風洞模型の別の実施例を示す斜視図、図3はこの発明による磁力支持用風洞模型が適用される磁力支持型風洞の説明図、図4は図3に示す磁力支持型風洞における磁力支持天秤装置の概念図である。

【0014】
先ず、図3及び図4を参照して、磁力支持型風洞及びそれにおける磁力支持天秤装置の概要を説明する。磁力支持天秤装置20は、模型支持に伴う支持装置と気流との干渉を避けるため、磁力支持用風洞模型(以下、実施例の説明においては「風洞模型」という)1を磁気の力で気流中に支持する装置であり、支持干渉のない風洞試験を実現することができる。風洞模型1には、磁化された物質、超伝導コイルのような電流を流し続けているコイル、或いは永久磁石等から成る磁石体が搭載される。風洞模型1の磁石体には、風洞の測定部の周りに配置したコイルに電流を通じることにより生じた外部磁場との磁気作用によって磁気力が生じ、風洞模型1を磁気的に浮上支持させることができる。外部磁場は、コイル23~26と、コイル27~30から成る二つの磁気回路21,22と、その外側の空芯コイル31,32とによって発生され、磁気回路21,22の各コイルに流れる電流を調節することにより、磁気回路21,22内のy-z面内での磁場の強さと方向及びそれらのx軸方向の変化率を連続的に変化させることができる。また、空芯コイル31,32に流れる電流を調節することによりx軸方向磁場の強さのx軸方向で見た変化率を制御でき、都合5軸の制御が可能である。

【0015】
風洞には、風洞模型1とコイル23~32の他に、各コイルを駆動する電源系、風洞模型1の位置と姿勢とを計測する計測系(図1に示す測定装置36)、風洞模型1の位置と姿勢とを制御する制御系が組み込まれている。図4に示すように、計測系であるカメラ33が検出した風洞模型1の位置姿勢に関する計測データは、パソコン等の計算機34に送信され、計算機34での演算結果をアンプ35にて増幅した後、各コイル23~32に制御された駆動電流を通じている。

【0016】
図1に示す風洞模型1は、透明樹脂製の外形体2と、外形体2内に取り付けられたマーク体3とを備えている。この例では、風洞模型1は球形模型として形成されている。外形体2を形成する透明樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等、透明であって且つ適度の強度を有するものであればよい。これらの樹脂は、ブロー成形、型押し成形等の適宜の成形手段によって薄殻状に形成される。外形体2を薄殻状に形成することにより、外形体2に用いる樹脂量が減少し、製作コスト上有利であり、後述する磁石体4の重さを考慮して模型1の軽量化にも寄与している。

【0017】
また、風洞模型1は、磁力支持天秤装置20からの磁場と磁気相互作用をする円柱形磁石から成る磁石体4を備えている。マーク体3は、磁石体4の表面の中央位置に光学的測定用のマーク5を付すことで構成されている。マーク5は、表面塗装にて形成されるが、これに限ることはなく、例えば、付設場所がずれることがなく且つ破損や汚れが付きにくいものであれば、テープの貼着等、任意の構造のものを採用することができる。外形体2は透明樹脂で製作されているので、外部から外形体2を透して光学的にマークを検出することが可能であり、そうして得られた測定データによって、風洞模型1の位置と姿勢とを高精度で測定することができる。

【0018】
この実施例では、外形体2は、それぞれ半球殻から成る二つの半割り2a,2bに製作し、両者を接着剤にて接合することで構成されている。半割り2a,2b状態のときに、内部にマーク体3を収容し、マーク体3の両端部3a,3bをそれぞれ半割り2a,2bに一体的に取り付けることで、模型1が製作される。

【0019】
図2は、この発明による風洞模型の別の実施例を示す斜視図である。図2に示す風洞模型11は、円柱形模型である。風洞模型11は、外形体12と外形体12内に収容され且つ外形体12に一体的取り付けられたマーク体13とを備えている。外形体12は、透明樹脂から形成された円筒部16及び両端の円板部17a、15bから成り、各部分をそれぞれ別々に製作した3ピース又は絞り成形のように一方の円板部17aを円筒部16と同時に成形した2ピースとして成形される。マーク体13は、円柱形磁石14と、その表面の中央部に付されたマーク15とから成り、外形体12の大きさが適合すれば、先の実施例で用いられたマーク体3と全く同じ構造のものとすることができる。同じ構造のマーク体を利用することにより、新たに製作することなくマーク体を使用することができ、また較正試験も、先の実施例で行った磁力及びセンサの各較正試験のデータをそのまま用いることができ、較正用のデータを取り直す必要もない。

【0020】
上記の実施例では、マーク体3,13は、磁石体4,14の表面にマーク5,15を塗装等の手段によって付すことで形成されていたが、マーク体3,13を磁石体4,14を覆う環状体等の、磁石体4,14とは別体として製作して、磁石体4,14と組み合わせて用いることも可能である。また、マーク体3, 13は、幾つかの大きさ又は磁力の強さ等の磁石体4,14との組合わせとして、予めモジュール化しておくのが好ましい。モジュール化しておくことにより、模型の大きさに応じて適当なモジュールを選択し、選択したモジュールを外形体2の内部に配置させることで、磁力支持用風洞模型を簡単に製作することができる。

【0021】
【発明の効果】以上説明したように、この発明による磁力支持用風洞模型によれば、外形体の製作については風洞模型毎に行わざるを得ないが、マーク体については互換性を持って製作可能であり、他の磁力支持用風洞模型に用いたマーク体をそのまま利用することができる。従って、磁力支持用風洞模型毎に塗装等のマークの形成作業を行う必要がなくなる。また、そのようなマーク体については、一度、センサ較正試験及び磁力較正試験を実施してそのデータを保存しておけば、そのマーク体を他の外形体を有する磁力支持用風洞模型に用いた場合も、それらの較正試験データを利用することができるので、磁力支持用風洞模型毎にマーク体の較正試験を行う必要がなくなる。このように、この発明による磁力支持用風洞模型によれば、マークの形成や各較正試験を個々に行う必要がなく、高効率に姿勢設定を行うことが可能になるので、風洞試験に要する時間の短縮化や効率的な運用に貢献することができる。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3