VARIABLE RESISTANCE DEVICE AND METHOD FOR PRODUCING SAME
外国特許コード | F200010218 |
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整理番号 | 18T185P,(S2019-0465-N0) |
掲載日 | 2020年9月15日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2020JP019937 |
国際公開番号 | WO 2020235591 |
国際出願日 | 令和2年5月20日(2020.5.20) |
国際公開日 | 令和2年11月26日(2020.11.26) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
VARIABLE RESISTANCE DEVICE AND METHOD FOR PRODUCING SAME
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発明の概要(英語) | The purpose of the present invention is to provide a novel variable resistance device, the resistance state of which is variable. Consequently, one of typical variable resistance devices according to the present invention is provided with: an organic film; and a first electrode and a second electrode, which at least partially face each other, with the both surfaces of the organic film being interposed therebetween. This organic film is characterized in that: (1) π-type organic molecules having redox activity are contained therein; (2) the π-type organic molecules show π-π stacking in the stacking direction of the organic film; and (3) the π-type organic molecules show orientation anisotropy. For example, one suitable example of these π-type organic molecules is 2, 5, 8-tri(4-pyridyl)1, 3-diazaphenalene showing orientation anisotropy (so-called “aniso-TPDAP”). |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART Non-volatile variable resistance memory is known as next-generation memory. Devices that utilize the formation and erasing of metal oxide filaments are known as such variable resistance memory. An organic ferroelectric memory using a ferroelectric organic material is also known as a variable resistance memory. Furthermore, an organic memory having a floating gate structure is also known as a variable resistance memory. PTL 1 discloses, as a variable resistance memory, a non-volatile memory device including a storage layer of a polyimide film in which electrically chargeable microparticles are dispersed between a first conductive portion and a second conductive portion. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DJ DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JO JP KE KG KH KN KP KR KW KZ LA LC LK LR LS LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN WS ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL ST SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
可変抵抗デバイスおよびその製造方法
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発明の概要 | 本発明は、抵抗状態が可変する新たな抵抗可変デバイスを提供することを目的とする。 このため、代表的な本発明の可変抵抗デバイスの一つは、有機膜と、有機膜の両面を挟んで少なくとも一部が対向する第1電極および第2電極とを備える。この有機膜は、(1)酸化還元活性を有するπ型有機分子を含み、(2)有機膜の積層方向にπ型有機分子はπ-πスタッキングを示し、(3)π型有機分子が異方性の配向を示す、ことを特徴とする。例えば、このようなπ型有機分子の好適な一例としては、異方性の配向を示す2,5,8-tri(4-pyridyl)1,3-diazaphenalene(「aniso-TPDAP」という)があげられる。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 有機膜と、前記有機膜の両面を挟んで少なくとも一部が対向する第1電極および第2電極とを備え、 前記有機膜は、 (1)酸化還元活性を有するπ型有機分子を含み、 (2)前記π型有機分子は前記有機膜の積層方向にπ-πスタッキングの状態であり、 (3)前記有機膜の内部の前記π型有機分子は異方性の配向である、 ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項2] 請求項1に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記π型有機分子は、次の一般式で表される [化1] (省略) ただし、式中のY1~Y3は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して、炭素数1から60の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)、-NR2、芳香族基、水酸基、カルボン酸で置換されていてもよい、 ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項3] 請求項1または2のいずれか一項に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記有機膜の面方向に並ぶ前記π型有機分子の分子間にH…Nの水素結合を備える ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項4] 請求項1~3のいずれか一項に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記第1電極と前記第2電極との間にターンオン電圧を一旦印加することにより前記有機膜の積層方向を低伝導状態から高伝導状態に状態遷移させ、 前記第1電極と前記第2電極との間に前記ターンオン電圧と逆方向のターンオフ電圧を一旦印加することにより前記有機膜の積層方向を前記高伝導状態から前記低伝導状態に状態遷移させる ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項5] 請求項4に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記第1電極と前記第2電極との間に、前記ターンオン電圧および前記ターンオフ電圧を超えない範囲で電圧または電流を与えることにより、前記高伝導状態または前記低伝導状態を記憶データとして読み出すメモリデバイスとした ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項6] 請求項5に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記第1電極を前記有機膜の一方の面側に共通電位を与える共通電極として配置し、 前記第2電極を前記有機膜の他方の面側に個別の電位を与える複数の電極として配列することにより、 メモリ集積デバイスとした ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項7] 請求項4に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記第1電極と前記第2電極との間に、前記ターンオン電圧および前記ターンオフ電圧を超えない範囲で電圧または電流を与えることにより、前記高伝導状態をスイッチON状態として利用し、前記低伝導状態をスイッチOFF状態として利用するスイッチングデバイスとした ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項8] 請求項1~3のいずれか一項に記載の可変抵抗デバイスにおいて、 前記第1電極を、チャネル経路を形成可能な材料とし、 前記第1電極の前記チャネル経路を制御するゲート機構を備え、 前記ゲート機構を介して前記チャネル経路を開方向に制御して、前記第1電極の前記チャネル経路、前記有機膜の積層方向、および前記第2電極にターンオン電圧を印加することにより、トランジスタとした ことを特徴とする可変抵抗デバイス。 [請求項9] 請求項1~8のいずれか一項に記載の可変抵抗デバイスを製造する方法において、 前記第1電極、前記有機膜、および前記第2電極を形成する形成工程を備え、 前記有機膜の形成工程において、前記有機膜の形成温度により、前記異方性の配向をコントロールする ことを特徴とする可変抵抗デバイスの製造方法。 [請求項10] 請求項9に記載の可変抵抗デバイスの製造方法において、 前記有機膜の形成工程において、前記有機膜の膜厚設定により、 前記可変抵抗デバイスがターンオンするターンオン電圧、および前記可変抵抗デバイスがターンオフするターンオフ電圧をコントロールする ことを特徴とする可変抵抗デバイスの製造方法。 |
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明細書 |
技術分野 [0001] 本発明は、可変抵抗デバイスおよびその製造方法に関する。 背景技術 [0002] 次世代メモリとして、不揮発性の抵抗可変型メモリが知られている。 このような抵抗可変型メモリとして、金属酸化物のフィラメントの形成および消去を利用するデバイスが知られる。 [0003] また、抵抗可変型メモリとして、強誘電性の有機物を使用する有機強誘電性メモリも知られる。 [0004] さらに、抵抗可変型メモリとして、フローティングゲート構造の有機メモリも知られる。 [0005] また、特許文献1には、抵抗可変型メモリとして『第1導電部と第2導電部との間に、帯電可能な微小粒子を分散させたポリイミド膜の記憶層を有する不揮発性記憶装置』が開示される。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1 : 特開2014-027185公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] このような抵抗可変型メモリでは、高集積化、耐久性、または大気安定性の観点において、更なる向上が望まれる。 [0008] そこで、本発明は、抵抗状態が可変する新たな抵抗可変デバイスを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0009] 上記課題を解決するために、代表的な本発明の可変抵抗デバイスの一つは、有機膜と、有機膜の両面を挟んで少なくとも一部が対向する第1電極および第2電極とを備える。この有機膜は、(1)酸化還元活性を有するπ型有機分子を含み、(2)π型有機分子は有機膜の積層方向にπ-πスタッキングの状態であり、(3)π型有機分子は異方性の配向である、ことを特徴とする。 発明の効果 [0010] 本発明により、抵抗状態が可変する有機膜を備えた抵抗可変デバイスが提供される。 それ以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。 図面の簡単な説明 [0011] [図1] 図1は、実施例1の可変抵抗デバイス10の構造を示す模式図である。 [図2] 図2は、有機膜13に含まれるπ型有機分子の一般式を示す図である。 [図3] 図3は、1,3-diazaphenalenylの酸化還元活性を説明する模式図である。 [図4] 図4は、TPDAPである2,5,8-tri(4-pyridyl)1,3-diazaphenaleneの分子構造を示す図である。 [図5] 図5は、有機膜13の面方向におけるTPDAPの分子間のネットワークを示す図である。 [図6] 図6は、有機膜13の積層方向におけるTPDAPの状態を示す図である。 [図7] 図7は、TPDAPを膜材料として有機膜13を生成する方法を説明する図である。 [図8] 図8は、形成温度Ts=80°Cで形成された有機膜13の特性を示す図である。 [図9] 図9は、形成温度Ts=25°Cで形成された有機膜13の特性を示す図である。 [図10] 図10は、有機膜13の配向状態による電気的特性の違いを示す図である。 [図11] 図11は、可変抵抗デバイス10の基本動作を説明する図である。 [図12] 図12は、有機膜の膜厚による電圧-電流特性を示す図である。 [図13] 図13は、セルサイズによる電圧-電流特性を示す図である。 [図14] 図14は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の面方向の絶縁特性を示す図である。 [図15] 図15は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の不揮発性の経時変化を示す図である。 [図16] 図16は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の高温下における不揮発性の経時変化を示す図である。 [図17] 図17は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の書き換えの耐久性を示す図である。 [図18] 図18は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の大気安定性を示す図である。 [図19] 図19は、可変抵抗デバイス10をメモリ集積デバイスとして使用する際の電圧配分の一例を示す図である。 [図20] 図20は、実施例2の有機電界効果トランジスタ300を説明する図である。 発明を実施するための形態 [0012] 以下、図面を用いて実施例を説明する。 実施例 1 [0013] 《可変抵抗デバイス10の構造》 図1は、実施例1の可変抵抗デバイス10の構造を示す模式図である。 [0014] 同図において、可変抵抗デバイス10は、基板11、第1電極12、有機膜13、および複数の第2電極14を備える。 [0015] 基板11は、例えば、シリコン基板Siと、その表面を酸化して形成された絶縁層SiO 2とから構成される。 [0016] 第1電極12は、例えば金Auを電極材料として、絶縁層SiO 2の面上に形成される。 [0017] なお、以下では、有機膜13について、膜の広がる二次元方向を「面方向」といい、有機膜13の膜厚の方向を「積層方向」という。 [0018] 有機膜13は、第1電極12の面上に形成され、次の特徴を有する。 (1)有機膜13は、酸化還元活性を有するπ型有機分子を含む。 (2)π型有機分子は、有機膜13の積層方向に、π-πスタッキングの状態である。 (3)有機膜13に含まれるπ型有機分子は、異方性の配向を示す。 [0019] ここで、π-πスタッキングの状態とは、π型有機分子がπ-πスタッキングによる分子間相互作用により、分子を構成する原子が積層方向に沿って自己整列している状態を意味する。例えば、芳香族有機分子の少なくとも2つの芳香環が重なって配置した状態、または僅かずつずれて配置した状態の双方を意味する。 [0020] 異方性の配向とは、有機膜13に含まれるπ型有機分子またはその結晶が整列した状態を意味する。 [0021] 複数の第2電極14は、例えば金Auを電極材料として、所定の可変抵抗セル(メモリセル)の配列パターンに従って有機膜13の面上にパターン形成される。 [0022] このような構成の可変抵抗デバイス10では、データ記録・データ消去・データ読み出しのための回路(不図示)および配線パターン(不図示)によって、共通電圧Voが第1電極12に与えられ、個別に制御された制御電圧Vxが複数の第2電極14それぞれに与えられる。 [0023] 以上の酸化還元活性、異方性の配向、およびπ-πスタッキングの両条件が揃うことにより、有機膜13の積層方向にはπ型有機分子が原子単位に自己整列して電流(キャリア)の伝搬路が形成される。この伝搬路内を酸化還元するなどしてキャリア導入やキャリア排出を行うことにより、有機膜13の積層方向には抵抗変化(高伝導状態・低伝導状態)が生じるようになると考えられる。 [0024] 《π型有機分子の説明》 次に、π型有機分子について説明する。 [0025] 図2は、有機膜13に含まれるπ型有機分子の一般式を示す図である。 このπ型有機分子の一般式の中央には、3環からなってπ電子共役系を有する1,3-diazaphenalenyl(ジアザフェナレニル)を有する。 [0026] 図3は、この1,3-diazaphenalenylの酸化還元活性を説明する模式図である。 同図に示すように、1,3-diazaphenalenylをベースとするπ型有機分子は酸化還元活性を有する。 [0027] さらに、この1,3-diazaphenalenylは、1,3位にアクセプター(N)およびプロトンドナー(NH)となる官能基を備える。 [0028] この構造により、π型有機分子は、酸化還元活性に加えて、プロトン授受能や電子ドナー性も有する。 [0029] また、1,3-diazaphenalenylは分子間に水素結合を形成することが特徴で、集積された分子間のネットワークが構築可能になる。 [0030] この1,3-diazaphenalenylの2,5,8位には、Y1,Y2,Y3がそれぞれ配置される。 [0031] Y1~Y3それぞれは、炭素数1から60の飽和又は不飽和の炭化水素基であって、これら炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよい。また、これら炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す)、-NR2、芳香族基、水酸基、カルボン酸で置換されていてもよい。なお、これらのY1~Y3は、同一又は異なっていてもよい。 [0032] 《TPDAPの説明》 続いて、π型有機分子の代表例として、TPDAPについて説明する。 [0033] 図4は、TPDAPと呼ばれる2,5,8-tri(4-pyridyl)1,3-diazaphenaleneの分子構造を示す図である。 同図において、1,3-diazaphenalenylの2,5,8位には、Y1~Y3として4-pyridyl(ピリジル)がそれぞれ配置される。 [0034] 図5は、有機膜13の面方向におけるTPDAPの分子間のネットワークを示す図である。 [0035] 同図に示すように、TPDAPの分子の面方向には、NH…NタイプやCH…NタイプによるH…Nの水素結合が作用し、密に集積されたネットワークが構成される。 [0036] 図6は、有機膜13の積層方向におけるTPDAPの状態を示す図である。 同図に示すように、TPDAPの結晶内では、π-πスタッキングの作用により分子を構成する原子が積層方向に自己整列するため、密に積層される。このように積層方向に自己整列して密に積層することにより、電流(キャリア)の伝搬路が積層方向に形成可能になる。 [0037] なお、このようなTPDAPの生成方法については、次の文献に例示がある。 [0038] Jin Young Koo他『Redox-active Diazaphenalenyl-based Molecule and Neutral Radical Formation』,The Chemical Society of Japan,Chem. Lett. 2015, 44, 1131頁-1133頁 [0039] 《有機膜13の成膜方法》 次に、実施例1における有機膜13の膜生成について説明する。 [0040] 図7は、TPDAPを膜材料として有機膜13を生成する方法を説明する図である。 同図において、蒸着装置201は、高真空ポンプ202と、TPDAPのサンプル203を配置したフィラメントボート204と、基板11を配置した保持具205を備える。 [0041] 高真空ポンプ202は、蒸着装置201内を例えば1E-6Torr程度の真空レベルに遷移させる。 [0042] この状態で、フィラメントボート204は、TPDAPのサンプル203を、例えば230°C程度に加熱して蒸散させる。 [0043] 蒸散されたTPDAPの結晶は、基板11の表面に蒸着し、有機膜13を生成する。 [0044] この場合、蒸散密度および蒸着時間の調節により有機膜13の膜厚が設定される。 [0045] さらに、保持具205を介して基板11の温度を設定して有機膜13の形成温度Tsを調節することにより、有機膜13の結晶や分子の配向をコントロールすることができる。 ここでは、形成温度Ts=80°Cと、形成温度Ts=25°Cとの2例について説明する。 [0046] 図8の上段[A]は、形成温度Ts=80°Cの条件で生成された有機膜13について、微小角入射広角X線散乱(以下「GIWAXS」ともいう)を実測した2次元パターンを示す図である。 [0047] 形成温度Ts=80°Cの条件では、GIWAXSの2次元パターンにおいてX線が広角に散乱していることから、図8の下段[B]に模式的に示すように、有機膜13の配向は、積層方向に揃わない等方性を示すものと認められる。 [0048] 一方、図9の上段[A]は、形成温度Ts=25°Cの条件で生成された有機膜13について、微小角入射広角X線散乱を実測した2次元パターンを示す図である。 [0049] 形成温度Ts=25°Cの条件では、GIWAXSの2次元パターンにおいてX線の散乱が小さいことから、図9の下段[B]に模式的に示すように、有機膜13の配向は、積層方向に整列した異方性を示すものと認められる。この異方性の配向を示す有機膜13の内部では、積層方向のπ-πスタッキングの作用が相乗し、TPDAP分子を構成する原子が積層方向に自己整列する。 [0050] このように、有機膜13の形成温度により、異方性の配向をコントロールすることが可能になる。 [0051] 《配向状態による有機膜13の電気的特性の違い》 続いて、配向状態による有機膜13の電気的特性の違いについて説明する。 [0052] 図10の上段[A]は、等方性の配向を示す有機膜13について、積層方向の電圧-電流特性を測定した結果である。同図に示されるように、等方性の有機膜13では、積層方向の電圧-電流特性に非連続な臨界変化は生じない。 [0053] 一方、図10の上段[B]は、異方性の配向を示す有機膜13について、積層方向の電圧-電流特性を測定した結果である。同図の横軸は有機膜13の積層方向に印加した電圧値を示し、同図の縦軸は有機膜13の積層方向に流れる電流の大きさ(絶対値)を示す。同図に示されるように、異方性の有機膜13に限って、積層方向の電圧-電流特性に非連続な臨界変化が生じる。 [0054] 《可変抵抗デバイス10の基本動作》 可変抵抗デバイス10は、第1電極12と第2電極14によって、異方性の有機膜13に対し積層方向に電圧を印加するため、図10[B]に示す電圧-電流特性に従って動作する。 [0055] 図11は、この可変抵抗デバイス10の基本動作を説明する図である。 [0056] 同図において、横軸は、第2電極14と第1電極12との間の電圧差(Vx-Vo)を示す。縦軸は、有機膜13の積層方向を介して第2電極14と第1電極12との間に流れる電流の大きさ(絶対値)を示す。 [0057] 可変抵抗デバイス10の電気的な初期状態では、電圧差(Vx-Vo)=0.5[V]の印加に対して、1ナノアンペア程度の微弱な漏れ電流しか流れず、低伝導状態を示す。 [0058] この低伝導状態は、第1電極12と第2電極14とを電気的に短絡しても、オープン状態にしても、再現されるために不揮発性の性質を有する。 [0059] この低伝導状態において、第2電極14と第1電極12との間にターンオン電圧(図11では約3V)を印加すると、電圧-電流特性に非連続な臨界変化が生じ、高伝導状態に移行する。 [0060] この高伝導状態では、電圧差(Vx-Vo)=0.5[V]の印加に対して、1ミリアンペア程度の電流が流れる。 [0061] この高伝導状態も、第1電極12と第2電極14とを電気的に短絡しても、オープン状態にしても、再現されるために不揮発性の性質を有する。 [0062] この高伝導状態において、第2電極14と第1電極12との間にターンオフ電圧(図11では約-1.5V)を印加すると、電圧-電流特性に非連続な臨界変化が生じ、低伝導状態に復帰する。 [0063] この場合、低伝導状態と高伝導状態の抵抗比は、「10の6乗」倍ほどの大きなオンオフ抵抗比を示す。 [0064] このように、可変抵抗デバイス10は、図11に示す矢印の向きに沿って低伝導状態と高伝導状態のサイクル軌道を経由し、状態遷移を繰り返す。 このことは、酸化還元活性を有する有機膜の分子配列がメモリ効果を引き起こしていることが原因と考えられる。 [0065] 《有機膜13の膜厚依存性》 なお、前述したターンオン電圧およびターンオフ電圧は、図12に示すように、有機膜13の膜厚に依存して変化する。 図12は、図11の場合と同様に第2電極14と第1電極12との間に電圧を印加した場合の有機膜の膜厚による電圧-電流特性を示す図である。 図12に示されるように、TPDAP膜厚を65nm、100nm、130nmと変化させた場合、膜厚65nmの場合は、ターンオン電圧が約2V強、ターンオフ電圧が約-1Vとなり、膜厚100nmの場合は、ターンオン電圧が約3V強、ターンオフ電圧が約-1.5Vとなり、膜厚130nmの場合は、ターンオン電圧が約3.5V強、ターンオフ電圧が約-2Vとなる。 このことから、本実施形態の可変抵抗デバイスには、電圧-電流特性に膜厚依存性があることがわかる。 [0066] そのため、有機膜13を薄膜化することにより、可変抵抗デバイス10の駆動電圧を低電圧化することが可能になる。また、有機膜13を厚膜化することにより、可変抵抗デバイス10を抵抗、スイッチ、または記録媒体として利用可能な電圧範囲を拡大することが可能になる。 そして、ターンオフ電圧にも膜厚依存性があることから、本実施形態の可変抵抗デバイスの抵抗可変メカニズムは、有機膜中に金属イオンが移動し、細いフィラメントが形成されて電極間がつながるメカニズム(いわゆる「フィラメント形成機構」)ではないことが推測される。 [0067] 《セルサイズ依存性》 図13は、図11の場合と同様に第2電極14と第1電極12との間に電圧を印加した場合のセルサイズによる電圧-電流特性を示す図である。 図12に示されるように、セルサイズを50μm、100μmと変化させた場合、セルサイズ50μmの場合は、ターンオン電圧が約3.5V、ターンオフ電圧が約-1.5Vとなり、セルサイズ100μmの場合は、ターンオン電圧が約3.7V強、ターンオフ電圧が約-1.7Vとなることがわかる。 ちなみに、本実施形態におけるセルサイズとは、図1に示す第2電極14の直径を示している。 このことから、本実施形態の可変抵抗デバイスには、電圧-電流特性にセルサイズ依存性があることもわかる。 [0068] 《有機膜13の面方向の絶縁特性》 続いて、異方性の有機膜13について、面方向の絶縁特性を説明する。 [0069] 図14は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)の面方向における電圧-電流特性を測定した結果を示す図である。異方性の有機膜13は、面方向には極微弱な漏れ電流しか流れず、優れた絶縁特性を示す。 [0070] このように、有機膜13それ自体が面方向の絶縁特性を有するため、可変抵抗デバイス10の可変抵抗セル(メモリセル)の隣接境界域(図1に示す第2電極14の配列の隙間)には、周囲から電気的に隔離するための絶縁構造を別途設ける必要がない。そのため、可変抵抗デバイス10は、図1に示すように、簡易な基本構造で構成することができる。 [0071] その結果、可変抵抗セル(メモリセル)の微細化および高集積化が容易になる。特に、aniso-TPDAPが積層方向に整列する分子の列単位に独立して機能し得ることを勘案すると、原理的には可変抵抗セル(メモリセル)の第2電極14の面積を分子サイズのオーダーまで微細化し高集積化することが可能になる。 [0072] 《不揮発性の経時安定性》 図15は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)について、不揮発性の経時安定性を測定した結果を示す図である。 [0073] 同図に示すように、低伝導状態および高伝導状態のいずれにおいても、計測された時間範囲において電流量に目立った変化は見られず、可変抵抗デバイス10としての不揮発性は良好に維持されている。 [0074] 《不揮発性の高温耐久性》 図16は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)について、高温下での耐久性を示す図である。コンピュータの動作する摂氏120度の高温下であっても、低伝導状態および高伝導状態のいずれにおいても、計測された時間範囲において電流量に目立った変化は見られず、可変抵抗デバイス10としての不揮発性は良好に維持されている。 [0075] 《書き換えの耐久性》 図17は、異方性の有機膜13(aniso-TPDAP)について書き換えの耐久性を測定した結果を示す図である。 同図に示すように、低伝導状態および高伝導状態のいずれにおいても、計測された書き換え回数の範囲において、電流量に目立った変化は見られず、書き換え(ターンオンとターンオフ)を繰り返しても、可変抵抗デバイス10としての耐久性は良好に維持されている。 [0076] 《可変抵抗デバイス10の大気安定性》 図18は、有機膜13(aniso-TPDAP)を、水蒸気を含ませた窒素ガスに繰り返し晒して、水蒸気下での大気安定性を測定した結果を示す図である。 同図に示すように、水蒸気を含ませた窒素ガスの有無にかかわらず、有機膜13に流れる電流量に目立った変化は見られない。したがって、可変抵抗デバイス10は、水蒸気下において高い大気安定性を示す。 [0077] このような結果は、有機膜13(aniso-TPDAP)の分子間ネットワークが高充填構造であるために外部分子の侵入スペースが少なく、空気中の分子が有機膜13の内部に侵入しにくいためと考えられる。 [0078] さらに、有機膜13において可変抵抗セル(メモリセル)を形成する各領域は、第2電極14で実質的に被覆されているためとも考えられる。仮に、第2電極14の配列の隙間から空気中の分子が有機膜13(aniso-TPDAP)の内部に侵入しても、有機膜13(aniso-TPDAP)それ自体の面方向の絶縁特性ゆえに可変抵抗セル(メモリセル)の電気的特性に影響を及ぼしにくいためとも考えられる。 [0079] このような大気安定性により、デバイスの製造過程において、有機膜13(aniso-TPDAP)は空気中の分子により汚染されにくくなるため、可変抵抗デバイス10の製造時の空気洗浄レベルを低くできる、製造歩留りが高くなるなどの実用的な利点がある。 [0080] 《可変抵抗デバイス10のメモリ集積デバイスとしての利用》 図19は、可変抵抗デバイス10をメモリ集積デバイスとして使用する際の電圧配分の一例を示す図である。 同図に示すように、第1電極12には、共通電圧Vo=1.75[V]が印加される。 [0081] メモリ読み出し時、第2電極14には、制御電圧Vx=2.25[V]が印加される。この状態で有機膜13の積層方向にはVx-Vo=0.5[V]の読み出し電圧が印加される。このときに第2電極14がカバーするメモリセルに流れる電流を検出して二値判定することにより、当該メモリセルの記憶データ(高伝導状態・低伝導状態)が読み出される。 [0082] また、メモリのセット(書き込み)時、第2電極14には、制御電圧Vx=4.75[V]が印加される。この状態で有機膜13の積層方向にはVx-Vo=3.0[V]のターンオン電圧が印加される。このときに第2電極14がカバーするメモリセルは、不揮発的に高伝導状態に移行し、当該メモリセルの記憶データはセットされる。 [0083] 一方、メモリのリセット(消去)時、第2電極14には、制御電圧Vx=0.25[V]が印加される。この状態で有機膜13の積層方向にはVx-Vo=-1.5[V]のターンオフ電圧が印加される。このときに第2電極14がカバーするメモリセルは、不揮発的に低伝導状態に移行し、当該メモリセルの記憶データはリセットされる。 [0084] 《可変抵抗デバイス10のスイッチングデバイスとしての利用》 図1に示した可変抵抗デバイス10は、スイッチングデバイスとしての利用も可能である。この場合、第1電極12と第2電極14との間にターンオン電圧およびターンオフ電圧を超えない範囲で電圧または電流を与えることにより、有機膜13の高伝導状態をスイッチON状態として利用し、有機膜13の低伝導状態をスイッチOFF状態として利用する。 [0085] ちなみに、スイッチON状態のON抵抗を下げたり、ON電流の絶対定格値を大きくしたい場合には、複数の第2電極14を並列に接続する、あるいは第2電極14の電極面積を拡大するといった調整が可能である。 実施例 2 [0086] 実施例2では、可変抵抗デバイスをトランジスタに応用する実施例について説明する。 図20の上段[A]は、有機電界効果トランジスタ300の構成を示す模式図である。 [0087] 同図において、有機電界効果トランジスタ300は、N-typeSi層からなるゲートGと、SiO 2からなる絶縁層302と、第1電極としてチャネル経路を形成可能なグラフェン303と、aniso-TPDAPを含む有機膜304と、有機膜304の上面に金Auパターンからなる第2電極としてのドレインDおよびソースSとを備える。 [0088] この有機膜304は、実施例1の有機膜13と同じであるため、ここでの重複説明を省略する。 [0089] ゲートGおよび絶縁層302は、グラフェン303のチャネル経路を制御するゲート機構として機能する。 [0090] 一方、ドレインDとソースSとの間には、電圧Vdsが印加される。 この状態で、ゲートGに電圧を印加して、グラフェン303のチャネル経路を開方向に変化させると、グラフェン303の面方向の等価抵抗が低下する。 [0091] そのため、ドレインDとソースSとの間に印加される電圧Vdsの内で、グラフェン303に分圧される電圧分が低下する。 [0092] この作用により、電圧Vdsが印加される直列経路において、有機膜304の積層方向に分圧されていた電圧が上昇し、有機膜304のターンオン電圧を超える。その結果、ドレインDまたはソースSの一方に接する有機膜304の積層方向がターンオンする。 [0093] すると、電圧Vdsは、ドレインDまたはソースSの他方に接する有機膜304の積層方向に集中的に印加され、有機膜304のターンオン電圧を超える。その結果、ドレインDまたはソースSの他方に接する有機膜304の積層方向もターンオンする。 [0094] このように、ドレインDまたはソースSの両方に接する有機膜304の積層方向が共にターンオンする。この状態では、ゲートGの印加電圧によってグラフェン303のチャネル制御を行って、ドレインDに流れるドレイン電流を制御することが可能になる。 [0095] 図20の中段[B]は、有機電界効果トランジスタ300のゲート電圧-ドレイン電流の特性を示す図である。 [0096] ターンオフ状態の有機膜304により、ゲート電圧の閾値電圧(約12V)の直前では、ドレイン電流は殆ど流れない。しかし、ゲート電圧が閾値電圧を超えて有機膜304がターンオンすることにより、ドレイン電流は(10の6乗)倍ほども急激に増加する。 [0097] 一般に、グラフェンをチャネル経路に使用する有機電界効果トランジスタは、オンオフ電流比は低い。しかしながら、積層方向の電流バリア層としてaniso-TPDAPを含む有機膜304を追加することにより、オンオフ電流比を(10の6乗)倍程度まで引き上げることが可能になる。 [0098] なお、図20の下段[C]のデバイス構成については後述する。 [0099] 《実施例の補足事項》 なお、実施例1,2では、有機膜13を蒸着法により成膜している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、π型有機分子を溶媒に溶かして溶液として基板11に滴下ないし塗布し、溶液濃度や遠心力などによって有機膜13の膜厚をコントロールしてもよい。ここで溶媒とは例えば一般的な有機溶媒を指し、π型有機分子を溶解するものであれば限定されない。 [0100] また、実施例1,2では、第1電極12および第2電極14との間に、ターンオン電圧およびターンオフ電圧を超えない範囲で読み出し電圧を印加することによって高伝導状態または低伝導状態を記憶データとして読み出している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、第1電極12および第2電極14との間に、ターンオン電圧およびターンオフ電圧を超えない範囲で読み出し電流を流すことによって高伝導状態または低伝導状態を記憶データとして読み出してもよい。 [0101] さらに、実施例1,2では、複数の第2電極14を設けることにより、可変抵抗デバイスを集積素子としている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第1電極および第2電極を1対のみ設けることにより、可変抵抗デバイスを単体素子としてもよい。 [0102] なお、実施例2では、ドレインDおよびソースSの下に有機膜304を設ける。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ドレインDおよびソースSの一方の下の有機膜304を省略してもよい(図20の下段[C]を参照)。このような構成においても、ドレインDおよびソースSの他方の下の有機膜304が電流バリアとして機能するため、高いオンオフ電流比の有機電界効果トランジスタを得ることが可能になる。 符号の説明 [0103] 10…可変抵抗デバイス、11…基板、12…第1電極、13…有機膜、14…第2電極、201…蒸着装置、202…高真空ポンプ、203…サンプル、204…フィラメントボート、205…保持具、300…有機電界効果トランジスタ、302…絶縁層、303…グラフェン、304…有機膜、D…ドレイン、G…ゲート、S…ソース |
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『 VARIABLE RESISTANCE DEVICE AND METHOD FOR PRODUCING SAME 』に関するお問合せ
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