DROSS GENERATION SUPPRESSION METHOD, METAL REFINEMENT METHOD, AND METAL REFINEMENT APPARATUS
外国特許コード | F210010276 |
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掲載日 | 2021年1月27日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2020JP017050 |
国際公開番号 | WO2020218237 |
国際出願日 | 令和2年4月20日(2020.4.20) |
国際公開日 | 令和2年10月29日(2020.10.29) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
DROSS GENERATION SUPPRESSION METHOD, METAL REFINEMENT METHOD, AND METAL REFINEMENT APPARATUS
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発明の概要(英語) | This dross generation suppression method involves: setting an environmental atmosphere, in which a metal-containing object is placed, to a condition of having a water content less than that of the air environment of the periphery of the environmental atmosphere; and heating and melting the metal-containing object. |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART In the metal production process, heating and melting and molten metal treatment are performed. In the plating treatment, a plating bath in which a metal is melted is used, and in many cases, the metal is melted when the metal is bonded. Dross is mainly generated at the interface in contact with the atmosphere in the melt when such a melting treatment is performed. The main component of the dross is an oxide of a metal. The molten metal is oxidized at a rate of as many% of the molten amount to form dross (oxide). Dross reduces metal recovery efficiency and has a large environmental load. The inclusion of dross in the product causes troubles. For example, Non-Patent Document 1 describes a method of efficiently separating metal from dross. |
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国際特許分類(IPC) | |
指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DJ DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JO JP KE KG KH KN KP KR KW KZ LA LC LK LR LS LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN WS ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN ST TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
ドロスの発生抑制方法、金属の精錬方法および金属精錬装置
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発明の概要 | このドロスの発生抑制方法は、金属含有物が配置される環境雰囲気を、前記環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、前記金属含有物を加熱溶融させる。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 金属含有物が配置される環境雰囲気を、前記環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、前記金属含有物を加熱溶融させる、ドロスの発生抑制方法。 [請求項2] 前記環境雰囲気の水分量の制御を行いつつ、前記金属含有物を加熱溶融させる、請求項1に記載のドロスの発生抑制方法。 [請求項3] 前記水分量の制御は、前記水分量が増加しないように行われる、請求項2に記載のドロスの発生抑制方法。 [請求項4] 前記加熱溶融の際の環境雰囲気における水分量が2000ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のドロスの発生抑制方法。 [請求項5] 前記金属含有物が、アルミニウムの単体、又は、マグネシウム、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、チタン、セリウム、トリウム、ベリリウムからなる群から選択される少なく一つ以上の元素とアルミニウムとの合金を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のドロスの発生抑制方法。 [請求項6] 金属含有物が配置される環境雰囲気を、前記環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、前記金属含有物を加熱溶融させ、前記金属含有物から金属を取り出す、金属の精錬方法。 [請求項7] 前記加熱溶融を行った後に、溶湯処理を行い、 前記溶湯処理を大気環境より水分が少ない条件で行う、請求項6に記載の金属の精錬方法。 [請求項8] 内部に閉じられた反応空間を形成し、金属含有物を格納できる筐体と、 格納された前記金属含有物を加熱する加熱部と、 前記筐体に接続され、前記筐体内にガスを供給する供給部と、 前記供給部に接続され、前記筐体内の水分を低減する除湿部と、を備える、金属精錬装置。 [請求項9] 前記筐体に接続され、前記筐体からガスを排出する排出部をさらに備え、 前記排出部は、前記除湿部と接続されている、請求項8に記載の金属精錬装置。 [請求項10] 金属含有物を収容する炉本体と、 前記炉本体の開口面を覆う遮水層と、 収容された前記金属含有物を加熱する加熱部と、を備える、金属精錬装置。 |
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明細書 |
技術分野 [0001] 本発明は、ドロスの発生抑制方法、金属の精錬方法および金属精錬装置に関する。本願は、2019年4月23日に、日本に出願された特願2019-082166号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 背景技術 [0002] 金属の生産プロセスでは、加熱溶融、溶湯処理が行われる。メッキ処理を行う際には、金属が溶融したメッキ浴を用い、金属の接合時には金属を溶融させる場合が多い。このような溶融処理を行った際の溶融物において主として大気との接触界面にはドロスが生じる。ドロスの主成分は、金属の酸化物である。溶融した金属は、溶融量の数%もの割合が酸化し、ドロス(酸化物)となる。ドロスは、金属の回収効率を低減させ、環境負荷が大きい。製品中にドロスが介在すると不具合の原因となる。例えば、非特許文献1には、ドロスから金属を効率的に分離する方法が記載されている。 先行技術文献 非特許文献 [0003] 非特許文献1 : Takehito Hiraki, Tetsuya Nagasaka, J Mater Cycles Waste Manag (2015) 17:566-573. 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0004] 例えば非特許文献1は、ドロスの処理方法が記載されており、ドロスを根本的に減らすことについては記載されていない。原理的には、酸化剤となる酸素を完全に遮断すれば、ドロスの発生を抑制できるが、技術的にもコスト的にも現実的ではない。 [0005] 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ドロスの発生を容易に抑制できるドロスの発生抑制方法及び金属の精錬方法を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0006] 本発明者らは、酸素共存下でも水分を減らすことができれば、ドロスの発生を飛躍的に抑制できることを見出した。すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。 [0007] (1)第1の態様にかかるドロスの発生抑制方法は、金属含有物が配置される環境雰囲気を、前記環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、前記金属含有物を加熱溶融させる。 [0008] (2)上記態様にかかるドロスの発生抑制方法において、前記環境雰囲気の水分量の制御を行いつつ、前記金属含有物を加熱溶融させてもよい。 [0009] (3)上記態様にかかるドロスの発生抑制方法において、前記水分量の制御は、前記水分量が増加しないように行ってもよい。 [0010] (4)上記態様にかかるドロスの発生抑制方法において、前記加熱溶融の際の環境雰囲気における水分量が2000ppm以下であってもよい。 [0011] (5)上記態様にかかるドロスの発生抑制方法において、前記金属含有物が、アルミニウムの単体、又は、マグネシウム、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、チタン、セリウム、トリウム、ベリリウムからなる群から選択される少なくとも一つ以上の元素とアルミニウムとの合金を含んでもよい。 [0012] (6)第2の態様にかかる金属の精錬方法は、金属含有物が配置される環境雰囲気を、前記環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、前記金属含有物を加熱溶融させ、前記金属含有物から金属を取り出す。 [0013] (7)上記態様に係る金属の精錬方法において、前記加熱溶融を行った後に、溶湯処理を行い、前記溶湯処理を大気環境より水分が少ない条件で行ってもよい。 [0014] (8)第3の態様にかかる金属精錬装置は、内部に閉じられた反応空間を形成し、金属含有物を格納できる筐体と、格納された前記金属含有物を加熱する加熱部と、前記筐体に接続され、前記筐体内にガスを供給する供給部と、前記供給部に接続され、前記筐体内の水分を除湿する除湿部と、を備える。 [0015] (9)上記態様にかかる金属精錬装置は、前記筐体に接続され、前記筐体からガスを排出する排出部をさらに備え、前記排出部は、前記除湿部と接続されていてもよい。 [0016] (10)上記態様にかかる金属精錬装置は、金属含有物を格納する炉本体と、前記炉本体の開口面を覆う遮水層と、収容された前記金属含有物を加熱する加熱部と、を備えてもよい。 発明の効果 [0017] 上記態様にかかるドロスの発生抑制方法及び金属の精錬方法によれば、ドロスの発生を容易に抑制できる。 図面の簡単な説明 [0018] [図1] アルミニウム合金を大気環境で加熱溶融させた後の溶融物の断面図である。 [図2] ドロスの発生理由を模式的に示した図である。 [図3] 金属精錬方法のフロー図である。 [図4] 本実施形態にかかる金属精錬装置の第1の例の模式図である。 [図5] 本実施形態にかかる金属精錬装置の第2の例の模式図である。 [図6] 本実施形態にかかる金属精錬装置の第3の例の模式図である。 [図7] 本実施形態にかかる金属精錬装置の第4の例の模式図である。 [図8] 本実施形態にかかる金属精錬装置の第5の例の模式図である。 [図9] 実施例及び比較例に用いた装置の模式図である。 [図10] 実施例1の処理後のAlMgインゴットの表面を撮影した写真である。 [図11] 比較例1の処理後のAlMgインゴットの表面を撮影した写真である。 [図12] 実施例2の結果を示す図である。 発明を実施するための形態 [0019] 以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。 [0020] 「ドロスの発生抑制方法」 まずドロスについて説明する。図1は、アルミニウム合金を大気環境で加熱溶融させた後の溶融物の断面図である。溶融物は、金属層Mとドロス層Dとを有する。金属層Mは、溶融した金属含有物に含まれる金属が固化した層である。ドロス層Dは、加熱溶融によって生じる副産物(ドロス)を含む層である。ドロスは、溶融した金属の酸化物を主成分とし、未回収の金属や窒化物、また実操業においては、ドロス層と金属層を分離する目的等で投入されるフラックス由来の塩化物、フッ化物等を含む。ドロスは、様々な金属を溶融、溶湯処理する際に生じる。ドロスは、スラグ、ノロ、灰と言われる場合がある。 [0021] 溶融、溶湯処理時に生じるドロスは、様々な問題の原因となる。例えば、ドロスの発生量が増えると、溶融物から取り出せる金属量が減少する。またドロス層Dは、溶融物の表面側からの熱伝達を阻害し、溶融、溶湯処理に要するエネルギー量の増加の原因となる。またドロスは、溶解炉等の耐火れんが等に固着し、耐火れんがの劣化の原因となる。またドロスが金属層M内に介在すると、製品の品質低下の原因となる。またドロスにより溶融物から取り出せる金属量が減少すると、金属中に含まれる不純物濃度が濃化し、製品の品質低下の原因となる。 [0022] 本実施形態に係るドロスの発生抑制方法は、金属含有物が配置される環境雰囲気を、環境雰囲気の周囲の大気環境より水分が少ない条件とし、金属含有物を加熱溶融させる。 [0023] 金属含有物は、ドロスを発生させる金属を含む。金属含有物は、例えば、アルミニウムの単体金属、又は、マグネシウム、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、チタン、セリウム、トリウム、ベリリウムからなる群から選択される少なく一つ以上の元素とアルミニウムとの合金である。金属含有物は、例えば、アルミニウム合金である。金属含有物がアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、チタン、セリウム、トリウム、ベリリウムからなる群から選択されるいずれかを含むと、水との反応で酸化し、ドロスを形成しやすくなる。またマグネシウムのように水素を吸蔵しやすい元素は、後述する図2に記した反応が促進され、ドロスの発生が促進する。 [0024] 金属含有物の一例としてアルミニウム合金がある。アルミニウム合金は、ドロスが発生しやすく、ドロスの処理が問題となっている。 [0025] アルミニウム合金は、純アルミニウム系合金(JIS規格における1000番系)、Al-Cu系合金(JIS規格における2000番系)、Al-Mn系合金(JIS規格における3000番系)、Al-Si系合金(JIS規格における4000番系)、Al-Mg系合金(JIS規格における5000番系)、Al-Mg-Si系合金(JIS規格における6000番系)、Al-Zn-Mg系合金(JIS規格における7000番系)、Al-Li系合金(JIS規格における8000番系)等のいずれの場合でもドロスが生じる。 [0026] 合金元素が、マグネシウムやリチウムの場合は、結晶構造内に水素を取り込みやすく、水との反応によりドロスが特に発生しやすい。例えば、Al-Mg系合金は、純アルミニウム系合金よりドロスが発生しやすい。合金元素は、例えば、合金中に数%のオーダーで含まれる。合金元素の存在比率は、例えば、重量パーセント濃度で10%以下である。マグネシウムのような合金元素の存在比率が多いと、ドロスは発生しやすくなる。 [0027] 金属含有物を加熱溶融させる際の温度は、金属含有物を構成する金属種によって決定される。金属含有物を加熱溶融させる際の温度は、金属含有物を加熱溶融できる範囲の中で低い方が、ドロスの発生を抑制できる。例えば金属含有物がアルミニウム合金の場合は、700℃以上1300℃以下とすることが好ましく、740℃以上800℃以下とすることがより好ましい。また例えば金属含有物がマグネシウム合金の場合は、600℃以上1200℃以下とすることが好ましい。例えば金属含有物が亜鉛合金の場合は、300℃以上800℃以下とすることが好ましい。温度が高いほど、ドロスは発生しやすくなる。 [0028] 加熱溶融の際の環境雰囲気は、大気環境より水分が少ない条件とする。例えば、環境雰囲気における水分量は、好ましくは体積分率で2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppmであり、さらに好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。水分量は、露点計で測定される露点温度から換算できる。水分量2000ppmは露点温度-13℃程度であり、水分量1200ppmは露点温度-18℃程度である。加熱温度が高いほど環境雰囲気における水分量は少ないことが好ましい。例えば、加熱温度を740℃以上800℃以下とする場合は、環境雰囲気における水分量を好ましくは5000ppm以下とし、より好ましくは4000ppm以下とし、さらに好ましくは2000ppm以下とする。 [0029] 金属含有物には、ベリリウムを添加してもよい。ベリリウムは、溶融した金属の表面に緻密な表面酸化膜を形成する。表面酸化膜は、金属含有物と酸素又は水素とが接することを阻害するバリアであり、金属含有物と酸素又は水素との反応を抑制する。 [0030] 本実施形態に係るドロスの発生抑制方法によれば、酸素共存環境下にもかかわらず、予想を超えてドロスの発生を抑制できる。 [0031] 例えば、金属含有物がアルミニウム合金の場合、アルミニウムの酸化は以下の2つの反応式により生じる。 4Al+3O 2→2Al 2O 3・・・(1) 2Al+3H 2O→3H 2+Al 2O 3・・・(2) すなわち、アルミニウムは酸素又は水分と反応し、ドロスを生み出す。 [0032] 本実施形態に係るドロスの発生抑制方法は、反応式(1)が起こりうる環境下にもかかわらず、反応式(2)を抑制することで、ドロスの発生を効果的に抑制できる。ドロス(酸化物)の生成に酸素と水分が影響することは予想できるが、酸素が存在する環境下にも関わらず、水分量を減らすことでドロスの発生量が大幅に低減することは、当業者の予想を超えるものである。この理由は明確ではないが以下の点が関係しているのではないかと考えられる。 [0033] 図2は、ドロスの発生理由を模式的に示した図である。図2は、溶融した溶融液の断面のイメージであり、溶融液は溶融領域Meと表面領域Sとを有する。ドロスの発生の原因となる酸素や水は、表面領域S側から溶融液に侵入する。侵入した酸素や水は、アルミニウムと反応し、酸化物を生み出す。 [0034] アルミニウムと酸素との反応は反応式(1)で表され、酸化アルミニウムのみが生じる。反応式(1)は副生成物を生み出さず、反応は表面領域Sで完結すると考えられる。これに対し、アルミニウムと水との反応は反応式(2)で表され、酸化アルミニウムと、副生成物として水素が生じる。水素は、溶融液中に広がる。反応式(2)の場合、副生成物として生じた水素が溶融領域Meまで影響を及ぼす。この関係は、金属種がアルミニウムの場合に限られるものではなく、他の金属元素の場合においても同様である。 [0035] 酸素によるドロスの発生は表面領域Sで収まるのに対し、水によるドロスの発生は溶融領域Meまで影響を及ぼしていると考えられる。すなわち、環境中における水分を抑制すれば、ドロスが発生する反応を表面領域Sで留めることができ、酸素共存環境下でもドロスの発生を効果的に抑制できているのではないかと考えられる。 [0036] 例えば、マグネシウムは、水素吸蔵合金に挙げられるように、水素と反応しやすい。アルミニウム合金がマグネシウムを含む場合に、ドロスが発生しやすくなるということは、上記考察とも矛盾しない。マグネシウムが反応式(2)で生じた水素をより溶融領域Meの深部まで引き寄せ、反応が促進されていると考えられるためである。 [0037] また本実施形態にかかる方法によれば、溶融体における気泡の発生を抑制できる。本実施形態にかかる方法によると、環境中における水分が抑制されており、上記の反応式(2)が抑制される。すなわち、溶融体の内部において水素が発生しにくく、溶融体に水素が取り込まれにくい。溶融体に取り込まれた水素は、凝固時に気泡の発生の原因となる。気泡は、精錬された金属における欠陥となる。 [0038] 「金属の精錬方法」 本実施形態に係る金属の精錬方法は、上記のドロスの発生抑制方法を用いる。図3は、金属精錬方法のフロー図である。金属の精錬方法は、原料を加熱溶融する溶融処理と、加熱溶融した溶融物(溶湯)を調整する溶湯処理と、溶融物を鋳造する鋳造処理と、を有する。本実施形態に係る金属の精錬方法は、スクラップ等から金属を製造する方法である。 [0039] 溶融処理は、原料を加熱溶融する工程である。溶融処理は、ドロスが発生する工程である。本実施形態に係る溶融処理は、上記のドロスの発生抑制方法を適用する。溶融処理は、原料を大気環境より水分が少ない条件で加熱溶融させる。 [0040] 原料は、例えば、切削屑、スクラップ、インゴット等の金属含有物である。金属含有物は、ドロスの発生抑制方法において提示したものと同様である。加熱溶融温度、加熱溶融の際の環境雰囲気も、ドロスの発生抑制方法において提示したものと同様である。 [0041] 溶湯処理は、溶融液(溶湯)にフラックスや合金元素を添加し、溶湯を調整する工程である。溶湯処理は、ドロスが発生する工程である。本実施形態に係る溶湯処理は、上記のドロスの発生抑制方法を適用する。溶湯処理は、大気環境より水分が少ない条件で行う。溶湯処理の際の環境雰囲気は、ドロスの発生抑制方法において提示したものと同様である。 [0042] 鋳造工程は、溶湯を冷やし再度固める工程である。溶湯を固めることで、固体の金属が生成される。 [0043] 上述のように、本実施形態に係る金属の精錬方法によれば、各工程で発生するドロスを抑制できる。そのため、ドロスの生成に伴うエネルギー損失及びコストの増加を抑制できる。またドロスの生成に伴う不純物の濃化や介在物の増加が抑制され、製品の品質を向上することができる。さらに、溶湯と大気中の窒素等との反応により生成した窒化物と水との反応を抑制し、悪臭の原因となるアンモニアの発生を抑制することができる。さらに、溶融体への水素の取り込みが抑制され、気泡欠陥の発生を抑制することができる。 [0044] 「金属精錬装置」 本実施形態にかかる金属精錬装置は、上述の溶融処理、溶湯処理に用いられる装置であり、金属含有物を大気環境より水分が少ない条件で加熱溶融できる。 [0045] 図4は、本実施形態にかかる金属精錬装置の第1の例の模式図である。第1の例にかかる金属精錬装置ME1は、筐体Cと加熱部Hと供給部p1と除湿部Dhと排出部p2とポンプPと露点計Dpを有する。 [0046] 筐体Cは、内部に閉じられた反応空間Rを形成する。筐体C内には、金属含有物mを格納できる。金属含有物mは、例えば、坩堝CR内に収容され、坩堝CR内で溶融する。加熱部Hは、金属含有物mを加熱する。加熱部Hは、例えば、ヒータ、バーナー等である。加熱部Hは、例えば、筐体Cの外側から金属含有物mを加熱する。加熱部Hは、加熱により自身から水分を放出しないものであれば、筐体C内に設置してもよい。 [0047] 供給部p1及び排出部p2は、筐体Cに接続されている。供給部p1は、筐体C内にガスを供給する。排出部p2は、ポンプPに接続され、筐体Cからガスを排出する。供給部p1は、例えば、筐体C内にガスを供給する送気管である。排出部p2は、例えば、筐体Cからガスを吸い出す吸気管である。第1の例にかかる金属精錬装置ME1において、供給部p1及び排出部p2は、除湿部Dhに接続されている。第1の例にかかる金属精錬装置ME1は、除湿部Dhを介してガスが循環する。除湿部Dhは、反応空間R内の水分量を低減する。除湿部Dhは、例えば、シリカゲル等の乾燥剤を有する。 [0048] 図5は、本実施形態にかかる金属精錬装置の第2の例の模式図である。第2の例にかかる金属精錬装置ME2は、筐体Cと加熱部Hと供給部p1と除湿部Dhと排出部p2とポンプPと露点計Dpを有する。第2の例にかかる金属精錬装置ME2は、排出部p2が除湿部Dhに接続されていない点が、第1の例と異なる。第2の例において、第1の例と同様の構成については説明を省く。反応空間R内の空気は循環せず、一方向にフローしている。加熱部Hで生じた熱は、筐体Cの壁面を介し、坩堝CR内の金属含有物mに伝わり、金属含有物mが溶融する。加熱部Hは、多量の水分を排ガスに含む天然ガスバーナー等でもよい。 [0049] 図6は、本実施形態にかかる金属精錬装置の第3の例の模式図である。第3の例にかかる金属精錬装置ME3は、筐体Cと加熱部Hと供給部p1と除湿部Dhと排出部p2とポンプPと露点計Dpを有する。第3の例にかかる金属精錬装置ME3は、加熱部Hが供給部p1する間接加熱方式である点が、第2の例と異なる。第3の例において、第2の例と同様の構成については説明を省く。供給部p1内には、除湿部Dhで除湿された乾燥気体が流れる。乾燥気体は、加熱部Hで加熱され、金属含有物mに送られる。加熱された乾燥気体は、金属含有物mを加熱し、溶融する。 [0050] 図7は、本実施形態にかかる金属精錬装置の第4の例の模式図である。第4の例にかかる金属精錬装置ME4は、炉本体CRと遮水層WBと加熱部Hとを有する。炉本体とは、少なくとも金属含有物と、該金属含有物を周辺環境から隔離するための境界部材とからなる。金属含有物mは、炉本体CR内に収容される。遮水層WBは、炉本体CRの開口面を覆う。遮水層WBは、水分の透過を抑制する膜である。遮水層WBは、例えば、炭素板である。気相中の水分は、C+H 2O=CO+H 2の反応により除去される。加熱部Hは、金属含有物mを加熱し、金属含有物mを溶融する。加熱部Hは、例えば、バーナーである。バーナーの排ガスに含まれる水分は、遮水層WBで反応し、金属含有物mまでは至りにくい。遮水層は、金属含有物の表面を乾燥状態に保つための層が形成されていればよく、たとえば加熱した乾燥気体を供給することで形成してもよい。加熱した乾燥気体を用いることにより、加熱部を兼ねることができる。 [0051] 図8は、本実施形態にかかる金属精錬装置の第5の例の模式図である。第5の例にかかる金属精錬装置ME5は、加熱部Hとガス管Gpとを有する。加熱部Hは、例えば、バーナーである。ガス管Gpは、加熱部Hの周囲を覆い、加熱部Hとガス管Gpとの間に乾燥したシールドガスを供給する。シールドガスは、例えば、アルゴン、二酸化炭素、空気である。金属含有物m1、m2は、加熱部Hにより加熱され溶融体melとなる。ガス管Gpからシールドガスを供給することで、溶融体melに水分が供給されることを抑制できる。 [0052] 以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。 実施例 [0053] 図9は、実施例及び比較例に用いた装置の模式図である。装置100は、反応管10と電気炉20とデータロガー30と加湿装置40とガス供給部50と露点計70とを有する。 [0054] 反応管10は、載置台11と熱電対12と支持台13と重量計14と窓15とを有する。反応管10は、縦型の石英反応管である。載置台11は坩堝60を載置する。載置台11は、支持台13で支持され、裏面に熱電対12が設置されている。熱電対12は、坩堝60の温度を測定する。重量計14は、坩堝60の重量変化を検知する。坩堝60内の溶融液の状態は、窓15から確認できる。 [0055] 電気炉20は、坩堝60の周囲に配置され、坩堝60を加熱する。電気炉20は、高周波誘導加熱炉を用いた。データロガー30は、坩堝60の温度変化及び重量変化を記録する。加湿装置40は、反応管10に接続され、反応管10に供給されるガスの水分量を決定する。ガス中の水分量は露点計70にて測定する。露点計はテクネ計測のTK-100を用いた。 [0056] ガス供給部50は、反応管10に接続され、反応管10にガスを供給する。ガス供給部50は、ボンベ51と脱水分カラム52と脱酸素カラム53とマスフローコントローラー54とを有する。ボンベ51は、G1グレードのアルゴン、窒素及び酸素のボンベをそれぞれ準備した。脱水分カラム52は、日化精工製脱水分カラムDC-A4を用いた。脱酸素カラム53は、アルゴンと窒素のボンベ51のみに接続される。脱酸素カラム53は、日化精工製脱酸素カラムGC-RXを用いた。マスフローコントローラー54は、反応管10へ供給するアルゴン量、窒素量、酸素量をそれぞれ調整する。 [0057] (実施例1) AlMgインゴットを2cm角程度に切断したものを約50g分秤量した。AlMgインゴットは、Mgを重量パーセント濃度で10%含む。この原料を坩堝60と同じ坩堝に投入し、アルゴンガス雰囲気にて高周波誘導加熱炉で予備溶融して塊状とし、表面にわずかに生成したドロスはカッターで切断した。得られた塊状サンプルを坩堝60内に投入して加熱溶融した。坩堝60は、緻密質アルミナるつぼを用いた。 [0058] ガスは、窒素の供給量を780cc/min、酸素の供給量を210cc/min、アルゴンの供給量を10cc/minとし、計1000cc/minのガスを供給した。ガスが合流後に、ガスの露点を10秒間隔で測定した。4回再現性試験を行い、露点は-15.2℃~-23.3℃の範囲内であった。これは、水分量換算で、761ppm~1631ppmに対応する。 [0059] 上記条件で、Al-10%Mgインゴットを800℃で90分間、加熱した後、冷却した。図10は、実施例1の処理後のAlMgインゴットの表面を撮影した写真である。実施例1におけるインゴットの重量変化率は1%以下であった。 [0060] (比較例1) 合流後のガスを室温の超純水約500mLに吹き込み、加湿して供給した点が実施例1と異なる。加湿後の水分量は露点で約20℃(2.3%)であり大気環境の水分量と同等であった。図11は、比較例1の処理後のAlMgインゴットの表面を撮影した写真である。比較例1におけるインゴットの重量変化率は12.6%以下であった。 [0061] 実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1はインゴットの重量変化が少なく、見た目にもドロスは確認されなかった。実施例1は、Mgを重量パーセント濃度で10%含むにもかかわらず、ドロスの発生を顕著に抑制している。 [0062] (実施例2) 実施例2は、反応空間内の水分量と加熱温度を変えて、ドロスの発生傾向を求めた。 図12は、約40gのAl-4.5質量%Mg合金溶湯を、異なる水分量の空気雰囲気(N 2:79vol%、O 2:21vol%)下で、所定の温度で90分加熱した際の重量増加率(図12におけるカッコ内の数値:質量%)を求めた。反応空間内の水分量と加熱温度とは、実験により条件を変えた。図12には、重量増加率が0.1%、1.0%、5.0%となる仮想線を点線で示した。 [0063] 実験した反応空間内の水分量と加熱温度の関係を以下に示す。坩堝に設置された合金溶湯は、予め乾燥アルゴン雰囲気下で加熱溶解されており、その比表面積は約2.0cm 2/gである。 加熱温度:800℃、水分量:10734ppm、重量増加率:6.2質量% 加熱温度:800℃、水分量:6232ppm、重量増加率:3.0質量% 加熱温度:800℃、水分量:3396ppm、重量増加率:0.53質量% 加熱温度:750℃、水分量:8492ppm、重量増加率:5.7質量% 加熱温度:750℃、水分量:4941ppm、重量増加率:3.3質量% 加熱温度:730℃、水分量:8732ppm、重量増加率:1.1質量% 加熱温度:730℃、水分量:4504ppm、重量増加率:0.16質量% [0064] 図12に示すように、水分濃度が高いほど重量増加率が高くなり、ドロスの発生が増加する傾向にあった。またその傾向は、加熱温度が高いほど顕著であった。 符号の説明 [0065] 10 反応管、11 載置台、12 熱電対、13 支持台、14 重量計、15 窓、20 電気炉、30 データロガー、40 加湿装置、50 ガス供給部、51 ボンベ、52 脱水分カラム、53 脱酸素カラム、54 マスフローコントローラー、60,CR 坩堝、70,Dp 露点計、100 装置、C 筐体、Dh 除湿部、H 加熱部、ME1,ME2,ME3 金属精錬装置、P ポンプ、p1 供給部、p2 排出部、R 反応空間、WB 遮水層、Gp ガス管 |
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