SHEET-LIKE PARTICLES OF ZEOLITE AND METHOD FOR PRODUCING SAME
外国特許コード | F210010306 |
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整理番号 | SHW002-01WO |
掲載日 | 2021年1月29日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2020JP023067 |
国際公開番号 | WO 2020250985 |
国際出願日 | 令和2年6月11日(2020.6.11) |
国際公開日 | 令和2年12月17日(2020.12.17) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
SHEET-LIKE PARTICLES OF ZEOLITE AND METHOD FOR PRODUCING SAME
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発明の概要(英語) | The present invention provides: a method for producing sheet-like particles of zeolite, said particles being not obtained by a top-down method; and sheet-like particles of zeolite having an eight-membered oxygen ring structure, said particles being obtained by the production method. Sheet-like particles of zeolite according to the present invention have an eight-membered oxygen ring structure. The sheet-like particles have a thickness of 1 nm to 100 nm; and the aspect ratio ((maximum particle width)/thickness) of the sheet-like particles is 100 or more. |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART Zeolites are compounds having a regularly arranged pore structure, have adsorption separation ability, ion exchange ability, shape selectivity, and the like due to their specific structure, and are widely used industrially. Various methods have been reported as the method of producing zeolite, but the zeolite is typically produced by hydrothermal synthesis. This hydrothermal synthesis method is a method in which a gel-like substance or slurry is prepared by mixing a raw material of zeolite and liquid water, and crystals of zeolite are precipitated by heating the prepared gel-like substance or slurry under prescribed pressure conditions. Zeolite crystals obtained by hydrothermal synthesis are separated from liquid water contained in the gel-like substance or slurry by performing operations such as centrifugation or decantation. Furthermore, an example of a method of producing zeolite other than the hydrothermal synthesis method is the dry gel conversion (DGC) method. This method includes drying a gel-like substance obtained by mixing a raw material of zeolite and water, and bringing the obtained dried gel into contact with gaseous water in a container in the presence of a structure directing agent (, for example, Patent Document 1). Zeolites are often used as high-performance catalysts in petrochemicals, synthetic chemicals, and the like. However, despite having the potential as a high-performance catalyst, there has been problems in particular in that the pores are quickly clogged with by-products, inducing deactivation of the catalyst. As a method to solve this problem, it is proposed to use a thin sheet zeolite (zeolite nanosheet) having a thickness of 1 ~ 100 nm. As a method of synthesizing the zeolite nanosheet, a method of obtaining a nanosheet by peeling zeolite having a layered structure (, a method of synthesizing using a suitably designed bifunctional surfactant (, and a method of synthesizing the zeolite nanosheet using a suitably designed bifunctional surfactant (have been proposed. For example, in the bottom-up method, MFI type zeolite nanosheets and MTW type zeolite nanosheets are disclosed (, for example, Patent Document 2). On the other hand, various methods have been investigated regarding the method of producing nanosheets. For example, Patent Document 3) discloses a method for producing a metal-organic framework nanosheet in which a sheet-like metal-organic framework is formed between two monomolecular layers constituting one bilayer film when the bilayer film forms a hyperswollen lamellar phase in a solvent. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DJ DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JO JP KE KG KH KN KP KR KW KZ LA LC LK LR LS LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN WS ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN ST TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
ゼオライトのシート状粒子及びその製造方法
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発明の概要 | トップダウン法で得られない、ゼオライトのシート状粒子を製造する方法及びその製造方法で得られた酸素8員環構造を有するゼオライトのシート状粒子を提供する。本発明のゼオライトのシート状粒子は、酸素8員環構造を有する。前記シート状粒子の厚みが1nm~100nmであり、前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 酸素8員環構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である ことを特徴とするゼオライトのシート状粒子。 [請求項2] 前記ゼオライトのシート状粒子が複数存在しており、当該シート状粒子同士が実質的に凝集していない状態で存在している、請求項1記載のゼオライトのシート状粒子。 [請求項3] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「CHA」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、20nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライトのシート状粒子。 [請求項4] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「PHI」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、 ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライトのシート状粒子。 [請求項5] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「SOD」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のc(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、 ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライトのシート状粒子。 [請求項6] 溶媒中に二分子膜を形成し、 前記溶媒中に、 アルミニウム原子源と、 ケイ素原子源、及びリン原子源からなる群から選択される少なくとも1種以上の原子源と、 を添加して、二分子膜の超膨潤ラメラ相を形成し、 1の二分子膜を構成する2つの単分子相の間にゼオライトの前駆体のシート状粒子を形成する第一工程と; 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子を、容器内でガス状の水と接触させ、ゼオライトのシート状粒子を形成する第二工程と; を含むことを特徴とする、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項7] 前記超膨潤ラメラ相の形成における系全体に占める前記溶媒の質量割合が、90質量%以上である、請求項6記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項8] 前記超膨潤ラメラ相の形成における系に含まれる前記溶媒が、炭化水素系溶媒と水とを含む混合溶媒であり、当該混合溶媒における両者の質量比が、炭化水素系溶媒:水=85:15~99.99:0.01である、請求項6又は7記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項9] 前記溶媒中に含まれる水の含有量が、5質量%以下である、請求項8記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項10] 前記第二工程において、 構造規定剤の存在下で、ガス状の水と接触させることを特徴とする、 請求項6~9のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項11] 前記ゼオライトのシート状粒子が、IZAコードである「SOD」、「PHI」、「CHA」、「MFI」で表される構造を有する、 請求項6~10のいずれか1項に記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項12] 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子同士が、実質的に凝集していない状態で超膨潤ラメラ相中に存在している、請求項6~11のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項13] 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、 請求項6~12の何れか1項に記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項14] 前記ゼオライトのシート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記ゼオライトのシート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、 請求項6~13の何れか1項に記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項15] 前記ゼオライトが、アルミノシリケートである、請求項6~14の何れか1項に記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [請求項16] 反応活性化成分として請求項1~5のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子を含む膜反応器用触媒組成物。 [請求項17] 活性化させる反応がATO反応、MTO反応、PPTO反応およびPLTO反応からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応である請求項16に記載の膜反応器用触媒組成物。 ここで、ATO反応、MTO反応、PPTO反応およびPLTO反応とは、それぞれ、アセトンからオレフィン類へ(Acetone to Olefines)の反応、メタノールからオレフィン類へ(Methanol to Olefins)の反応、プロパンからオレフィン類へ(Propane to Olefins)の反応、プロピレン-オレフィン類(Propylene to Olefins)の反応を意味する。 [請求項18] 反応活性化成分として請求項1~5のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子を含む廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤。 [請求項19] 廃プラスチックと、反応活性化成分として請求項1~5のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子とを混合する混合工程と、 前記混合工程で得られた混合物を加熱分解する加熱分解工程と 含む廃プラスチックのリサイクル処理法。 |
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明細書 |
技術分野 [0001] 本発明は、ゼオライトのシート状粒子及びその製造方法に関する。 本願は、2019年6月14日に、日本国に出願された特願2019-111523号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 背景技術 [0002] ゼオライトは、規則的に配列した細孔構造を持つ化合物であり、その特異な構造から、吸着分離能、イオン交換能、形状選択能等を有しており、工業的にも幅広く利用されている。 [0003] ゼオライトの製造方法としては種々の方法が報告されているが、一般的に、水熱合成法で製造されている。 この水熱合成法は、ゼオライトの原料と液状の水とを混合してゲル状物質又はスラリー状物質を調製し、調製したゲル状物質又はスラリー状物質を所定の圧力条件下で加熱することによりゼオライトの結晶を析出させる方法である。水熱合成法で得られたゼオライトの結晶は、ゲル状物質又はスラリー状物質に含まれる液状の水から遠心分離やデカンテーション等の操作を行うことにより分離されている。 [0004] また水熱合成法以外のゼオライトの製造方法として、ドライゲルコンバージョン(DGC)法が挙げられる。この方法は、ゼオライトの原料と水とを混合して得られたゲル状物質を乾燥し、得られた乾燥ゲルを、構造規定剤の存在下、容器内でガス状の水と接触させて製造するものである(例えば、特許文献1)。 [0005] また、ゼオライトは、石油化学や合成化学などにおいて、高性能触媒としてよく使用されている。しかしながら、高性能触媒としての可能性を有するにもかかわらず、特に、細孔は副生成物で急速に詰まり、触媒の失活を誘発する課題があった。この課題を解決する方法として、厚みが1~100nmである薄いシート状ゼオライト(ゼオライトナノシート)を用いることが提案されている。そのゼオライトナノシートの合成法としては、層状構造を有するゼオライトを剥離してナノシートを得る方法(トップダウン法)や、適切に設計された二官能性界面活性剤を用いて合成する方法(ボトムアップ法)が提案されている。例えば、ボトムアップ法では、MFI型ゼオライトナノシート及びMTW型ゼオライトナノシートが開示されている(例えば、特許文献2)。 [0006] 一方、ナノシートの製造方法に関して種々の方法が検討されてきた。例えば、溶媒中に二分子膜が超膨潤ラメラ相をなす場合において、1の二分子膜を構成する2つの単分子層の間にシート状の金属有機構造体を形成し、金属有機構造体ナノシートの製造方法を開示されている(例えば、特許文献3)。 先行技術文献 特許文献 [0007] 特許文献1 : 特開2001-114511号公報 特許文献2 : 特表2012-530680号公報 特許文献3 : 国際公開第2018/016650号 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0008] しかしながら、層状ゼオライトを原料として、トップダウン法でゼオライトナノシートを形成することができるが、ナノシート同士が凝集する課題があった。また、目的のゼオライトの結晶構造が層状ではない場合、トップダウン法でゼオライトナノシートを製造することができない。また特許文献2に記載されているボトムアップ法では、特定のゼオライト用に最適化されているため、MFI型およびMTW型ゼオライトナノシートに制限されている。その方法で他の結晶構造のゼオライトナノシートを製造する例は開示されていない。 また、特許文献3において、ゼオライトナノシートに関する記載がなく、特に、種々の結晶構造を有するゼオライトナノシートを製造する方法について開示がない。 [0009] 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、種々の結晶構造を有するゼオライトナノシートの製造方法を提供することを目的とする。また、酸素8員環構造を有するゼオライトのシート状粒子、特に、CHA型、SOD型、PHI型結晶構造を有するゼオライトのナノシートを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0010] 本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。 [1] 酸素8員環構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である ことを特徴とするゼオライトのシート状粒子。 [2] 前記ゼオライトのシート状粒子が複数存在しており、当該シート状粒子同士が実質的に凝集していない状態で存在している、[1]記載のゼオライトのシート状粒子。 [3] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「CHA」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、20nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のゼオライトのシート状粒子。 [4] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「PHI」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のゼオライトのシート状粒子。 [5] International Zeolite Association(IZA)の構造コードである「SOD」で表される構造を有するゼオライトのシート状粒子であって、 前記シート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記シート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のゼオライトのシート状粒子。 [6] 溶媒中に二分子膜を形成し、 前記溶媒中に、 アルミニウム原子源と、 ケイ素原子源、及びリン原子源からなる群から選択される少なくとも1種以上の原子源とを添加して、二分子膜の超膨潤ラメラ相を形成し、 1の二分子膜を構成する2つの単分子相の間にゼオライトの前駆体のシート状粒子を形成する第一工程と; 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子を、容器内でガス状の水と接触させ、ゼオライトのシート状粒子を形成する第二工程と; を含むことを特徴とする、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [7] 超膨潤ラメラ相の形成における系全体に占める溶媒の質量割合が、90質量%以上である、[6]記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [8] 超膨潤ラメラ相の形成における系に含まれる溶媒が、炭化水素系溶媒と水とを含む混合溶媒であり、当該混合溶媒における両者の質量比が、炭化水素系溶媒:水=85:15~99.99:0.01である、[6]又は[7]記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [9] 前記溶媒中に含まれる水の含有量が、5質量%以下である、[8]記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [10] 前記第二工程において、 構造規定剤の存在下で、ガス状の水と接触させることを特徴とする、[6]~[9]の何れかに記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [11] 前記ゼオライトのシート状粒子が、IZAコードである「SOD」、「PHI」、「CHA」、「MFI」で表される構造を有する、[6]~[10]の何れかに記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [12] 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子同士が、実質的に凝集していない状態で超膨潤ラメラ相中に存在している、[6]~[11]の何れかに記載のゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [13] 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記ゼオライトの前駆体のシート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、[6]~[12]の何れかに記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [14] 前記ゼオライトのシート状粒子の厚みが1nm以上、100nm以下であり、 前記ゼオライトのシート状粒子のアスペクト比(粒子中の最大幅/厚み)が100以上である、[6]~[13]の何れかに記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [15]前記ゼオライトが、アルミノシリケートである、[6]~[14]の何れかに記載の、ゼオライトのシート状粒子の製造方法。 [16]反応活性化成分として[1]~[5]のいずれか1項に記載のゼオライトのシート状粒子を含む膜反応器用触媒組成物。 [17]活性化させる反応がATO反応、MTO反応、PPTO反応およびPLTO反応からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応である[16]に記載の膜反応器用触媒組成物。 ここで、ATO反応、MTO反応、PPTO反応およびPLTO反応とは、それぞれ、アセトンからオレフィン類へ(Acetone to Olefines)の反応、メタノールからオレフィン類へ(Methanol to Olefins)の反応、プロパンからオレフィン類へ(Propane to Olefins)の反応、プロピレン-オレフィン類(Propylene to Olefins)の反応を意味する。 [18] 反応活性化成分として[1]~[5]の何れか1項に記載のゼオライトのシート状粒子を含む廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤。 [19] 廃プラスチックと、反応活性化成分として[1]~[5]の何れか1項に記載のゼオライトのシート状粒子とを混合する混合工程と、 前記混合工程で得られた混合物を加熱分解する加熱分解工程と 含む廃プラスチックのリサイクル処理法。 発明の効果 [0011] 本発明によれば、トップダウン法で得られない、酸素8員環構造を有するゼオライトのシート状粒子を提供することができる。また、トップダウン法で得られないゼオライトのシート状粒子を製造する方法を提供することができる。特に、凝集せずに安定してゼオライトナノシート及びそれを製造する方法を提供することができる。 図面の簡単な説明 [0012] [図1] 実施例1で得られたアルミノシリケートナノシートとOBSとの混合物のTEM画像である。 [図2] 実施例1で得られたアルミノシリケートナノシートとOBSとの混合物のAFMデータである。 [図3] 実施例1で得られたアルミノシリケートナノシートとOBSとの混合物のAFMデータである。 [図4] 実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのXRDデータである。 [図5] 実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのTEM画像である。 [図6] 実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのAFMデータである。 [図7] 実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのAFMデータである。 [図8] 図8Aは実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのEDX画像(O)であり、図8Bは実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのEDX画像(Na)であり、図8Cは実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのEDX画像(Al)であり、図8Dは実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのEDX画像(Si)であり、図8Eは実施例2で得られたCHA型ゼオライトナノシートのSEM画像である。 [図9] 実施例3で得られたPHI型ゼオライトナノシートのXRDデータである。 [図10] 実施例3で得られたPHI型ゼオライトナノシートのTEM画像である。 [図11] 実施例4で得られたMFI型ゼオライトナノシートのXRDデータである。 [図12] 実施例4で得られたMFI型ゼオライトナノシートのTEM画像である。 [図13] 実施例4で得られたMFI型ゼオライトナノシートのAFMデータである。 [図14] 実施例4で得られたMFI型ゼオライトナノシートのAFMデータである。 [図15] 実施例5で得られたSOD型ゼオライトナノシートのXRDデータである。 [図16] 実施例5で得られたSOD型ゼオライトナノシートのTEM画像である。 [図17] アルミノシリケート(ラメラ中)のDLSデータである。 [図18] アルミノシリケート(遠心分離後)のDLSデータである。 [図19] アルミノシリケート(濾過後)のDLSデータである。 [図20] CHA型ナノシートのDLSデータである。 [図21] CHA型ナノシート(濾過1回)のDLSデータである。 [図22] CHA型ナノシート(濾過3回)のDLSデータである。 [図23] SOD型ナノシートのDLSデータである。 [図24] SOD型ナノシート(濾過後)のDLSデータである。 [図25] MFI型ナノシートのDLSデータである。 [図26] MFI型ナノシート(濾過後)のDLSデータである。 [図27] アセトンとオレフィンとの反応のためのガスラインを示す模試図である。 [図28] CHA型ゼオライトナノシートとバルク試料とのアセトン変換反応の時間経過を示すデータである。(「NSs」:ゼオライトナノシートを用いる実施例;「Bulk」:バルク試料のゼオライト(CHA型)用いる比較例。図30、図32、図34においても同様である。) [図29] メタノールとオレフィンとの反応のためのガスラインを示す模試図である。 [図30] CHA型ゼオライトナノシートとバルク試料とのメタノール変換反応の時間経過を示すデータである。 [図31] プロパン-オレフィン反応用ガスラインを示す模試図である。 [図32] CHA型ゼオライトナノシートとバルク試料とのプロパン変換反応の時間経過を示すデータである。 [図33] プロピレン-オレフィン反応用ガスラインを示す模試図である。 [図34] CHA型ゼオライトナノシートとバルク試料とのプロピレン変換反応の時間経過を示すデータである。 [図35] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すTGの実験結果である。 [図36] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すDTAの実験結果である。(「CHA-NSs」:CHA型ゼオライトナノシートを低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する実施例;「Bulk」:バルク試料のゼオライト(CHA型)を低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する比較例;「LDPE」:ゼオライトを添加せず、低密度ポリエチレン(LDPE)のみの比較例。図37~42においても同様である。) [図37] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すConversionの実験結果である。 [図38] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すDTGの実験結果である。 [図39] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すTGの実験結果である。 [図40] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すDTAの実験結果である。 [図41] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すConversionの実験結果である。 [図42] ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果を示すDTGの実験結果である。 発明を実施するための形態 [0013] 以下、本発明の実施形態に係るゼオライトのシート状粒子の製造方法を説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定がない限り、本発明を限定するものではない。 [0014] (ゼオライト) ゼオライトは、通常、結晶性を有し、開かれた規則的なミクロ細孔(以下、単に「細孔」ということがある)を形成している多孔質結晶性化合物をいい、四面体構造をもつTO 4単位(Tは、ゼオライトを構成する酸素以外の元素をいう。例えば、Si、Al、P,Ga等が挙げられる)が酸素原子を共有して三次元的に連結した構造を有している。これらは通常、例えば、アルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェート、アルミノフォスフェート等から構成される多孔質結晶性化合物が相当する。 [0015] (ゼオライトのシート状粒子の製造方法) 本発明の一実施形態(本実施形態ともいう)のゼオライトのシート状粒子を製造する方法は、当該ゼオライトの前駆体のシート状粒子を製造する第一工程と、前記前駆体のシート状粒子から、ゼオライトのシート状粒子を製造する第二工程とを備える。 ここで「ゼオライトの前駆体」とは、多孔質結晶性化合物であるゼオライトを構成する構成単位に相当する化合物をいい、具体的にはアルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェート、アルミノフォスフェート等が挙げられる。これらの前駆体は結晶性化合物でも非晶質化合物であってもよい。 [0016] 以下、ゼオライトがアルミノシリケートである場合を具体例として詳述する。 すなわちゼオライトがアルミノシリケートである場合、ゼオライトの前駆体である、アルミノシリケートのシート状粒子を製造する第一工程と、前記アルミノシリケートのシート状粒子から、ゼオライトのシート状粒子を製造する第二工程とを備える。 前記第一工程は、溶媒中に二分子膜を形成し、前記溶媒中に、アルミニウム原子源と、ケイ素原子源及びリン原子源からなる群から選択される少なくとも1種以上の原子源とを添加して、二分子膜の超膨潤ラメラ相を形成し、1の二分子膜を構成する2つの単分子相の間にアルミノシリケートのシート状粒子を形成することを特徴とする。 前記第二工程は、前記アルミノシリケート粒子を、容器内でガス状の水と接触させることを特徴とする。 [0017] <第一工程> 第一工程において、超膨潤ラメラ相を利用して、ゼオライトの前駆体であるアルミノシリケートのシート状粒子を製造する。 [0018] 本実施形態では、まず、超膨潤ラメラ相を形成し、そしてアルミノシリケートの原料を添加する。超膨潤ラメラ相を形成する方法としては、溶媒中に二分子膜を形成し、前記溶媒中に両親媒性物質を添加して、二分子膜の超膨潤ラメラ相を形成する。 [0019] 超膨潤ラメラ相(Hyper-swollen Lamellar Phase)とは、溶媒で膨潤された特異的なラメラ相をいう。より具体的には、ラメラ相を構成する複数の二分子膜が、溶媒の層を挟んで、層状に積み重なった相をいう。 超膨潤ラメラ相を構成する相は、可視光領域でのBragg反射により呈色が観察されることがある。また、超膨潤ラメラ相を構成する相の存在は、偏光フィルムを貼付した透明容器(具体的には例えば、偏光フィルムを、偏光軸を45度傾けて巻き付けた透明容器)内に対象物を入れて、これを実際に目視することで確認してもよい。この場合には、対象物が有する複屈折性により生じる色彩が観察できれば、当該対象物に含まれる特徴的な光学組織の存在が確認できる。超膨潤ラメラ相は、超膨潤リオトロピックラメラ相(Hyper-swollen Lyotropic Lamellar Phase)であってもよい。 [0020] 超膨潤ラメラ相において、超膨潤ラメラ相の形成における系全体に占める溶媒の質量割合は、本発明の目的を満たす限りにおいて特に限定はされないが、通常90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。上限は溶質と溶媒との間で超膨潤ラメラ相を形成できる範囲であれば特に限定はされず、用いる溶質と溶媒の間で超膨潤ラメラ相を形成し得る限界の濃度が理論的な上限である。前記「全体」とは、溶質と溶媒とを含む混合しているものすべての合計を意味する。超膨潤ラメラ相において、全体に占める溶媒の質量割合の上限は、例えば、99質量%としうる。 [0021] 超膨潤ラメラ相において、隣接する二分子膜間の距離(本明細書において「層間距離」ともいう。)は、特に限定はされず、用いる材料や目的とする用途に応じ、適宜設定することができるが、通常50nm以上1000nm以下である(両端の値を含む、以下同じ)。層間距離は、目的とするナノシートの薄さを保ちながら、合成できる量を確保する場合、薄過ぎず、濃過ぎない方が好ましく、例えば好ましくは100nm以上500nm以下である。二分子膜間の層間距離は、ある二分子膜の溶媒に親和的な部分の端部から、前記二分子膜に隣接する他の二分子膜の溶媒に親和的な部分の端部までの距離を意味する。また前記層間距離は、二分子膜を構成する分子(両親媒性分子)の含量に依存しうる。 [0022] 二分子膜自体の厚さは、特に限定はされないが、通常は1nm以上20nm以下である。 [0023] 超膨潤ラメラ相は、非イオン性両親媒性物質の溶液においても、各層のうねり、ないしヘルフリッヒ(Helfrich)相互作用により、安定に維持される。 [0024] 超膨潤ラメラ相の二分子膜内でアルミノシリケートを合成することにより、アルミノシリケートのシート状粒子を作製できる。特に、アルミノシリケートのナノシートを作製できる。 [0025] 超膨潤ラメラ相を形成した後、前記溶媒中に、アルミノシリケートの原料としてケイ素原子源およびアルミニウム原子源を添加して、1の前記二分子膜を構成する2つの単分子層の間にアルミノシリケートのシート状粒子を形成する。アルミノシリケートの原料としてリン原子源およびアルミニウム原子源を添加してもよく、アルミノシリケートの原料としてケイ素原子源、リン原子源およびアルミニウム原子源を添加してもよい。 [0026] また、アルミノシリケートの原料の組成として、ケイ素原子源/アルミニウム原子源のモル比は、特に制限することがなく、製造するゼオライトのシート状粒子の組成比により、適宜で設定することができる。例えば、CHA型ゼオライトのシート状粒子を製造する場合、ケイ素原子源/アルミニウム原子源のモル比(Si/Alモル比)は、通常5以上、150以下であり、好ましくは100以下であり、より好ましくは60以下である。 [0027] アルミノシリケートのシート状粒子の製造方法では、疎水性部分が溶媒側を向くことによって、1の二分子膜を構成する2つの単分子層の親水性部分の間で、シート状粒子が形成される。混合する溶媒と両親媒性分子との組み合わせを変えることにより、二分子膜の疎水性部分と親水性部分とは、上記のように配置される。本開示では、溶媒に非親和的な部分同士の間でナノシートを形成するため、溶媒の種類に応じて、親水性の反応場のみならず、疎水性の反応場でも、ナノシートを製造することができる。 [0028] 前記アルミノシリケートのシート状粒子の製造方法の本実施形態における溶媒としては、有機溶媒が好ましい。前記有機溶媒は、炭化水素系溶媒であってもよい。 炭化水素系溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-へプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。また、前記溶媒としては、炭化水素系溶媒のみであってもよく、炭化水素系溶媒と他の有機溶媒とを組み合わせものであってもよい。 前記他の有機溶媒としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒;1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メチルアニソール等のエーテル系溶媒などが挙げられる。 前記溶媒として、炭化水素系溶媒と他の有機溶媒とを使用する場合、両者の質量比は、炭化水素系溶媒:他の有機溶媒=80:20~99.99:0.01が好ましく、85:15~99.9:0.1がより好ましい。 これらの製造方法は、水を含んでいてもよい。例えば、溶媒が前記炭化水素系溶媒と水とを含む場合(好適には、さらに両親媒性物質が陰イオン性両親媒性物質である場合)には、両者の質量比は、炭化水素系溶媒:水=85:15~99.99:0.01が好ましく、90:10~99.9:0.1がより好ましい。 また、これらの好適な実施形態においては、溶媒は、水と有機溶媒との混合液であってもよい。さらに、他の好適な実施形態においては、溶媒として、水に代えてまたは水に加えて、目的とするナノシートを合成する際の反応の種類に応じて、塩酸、硝酸、硫酸等の酸性水溶液;水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液を使用してもよい。 [0029] 本実施形態において、両親媒性物質は特に限定はされないが、陰イオン性両親媒性物質であってもよい。陰イオン性両親媒性物質としては、例えば、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤等が挙げられる。 スルホン酸型界面活性剤としては、例えば、α-スルホミリスチン酸メチルナトリウム、α-スルホステアリン酸メチルナトリウムなどのα-スルホ脂肪酸メチルエステル塩(CH 3(CH 2) sCH(SO 3Na)CO℃H 3)、式中、sは8~20であってもよい。)などのα-スルホ脂肪酸エステル塩;p-トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ヘキシルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸ナトリウムなどのアルカンスルホン酸塩;炭素数8~26のα-オレフィンスルホン酸塩などが挙げられる。 硫酸エステル型界面活性剤としては、例えば、ヘキシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウムなどのR 1-OSO 3Na(R 1=炭素数8~18の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基);ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリン酸モノグリセリド硫酸ナトリウムなどの脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩;R 2CONHCH 2CH 2OSO 3Na(R 2=炭素数7~20の脂肪酸)などの脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩;などが挙げられる。 カルボン酸型界面活性剤としては、例えば、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロノナン酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム等のアルキロイルサルコシン類;ココイルグルタミン酸ナトリウム((HO℃CH 2CH 2CH(NHCOR 3)COONa)、式中、R 3は炭素数11~17のアルキル基を表す。)などが挙げられる。 リン酸エステル型界面活性剤としては、例えば、ラウリルリン酸;ラウリルリン酸ナトリウム、ヘキシルリン酸ナトリウム、オクチルリン酸ナトリウム、デシルリン酸ナトリウム、ドデシルリン酸ナトリウム、テトラデシルリン酸ナトリウム、ヘキサデシルリン酸ナトリウムなどのモノアルキルリン酸ナトリウム;ラウリルリン酸カリウム、ヘキシルリン酸カリウム、オクチルリン酸カリウム、デシルリン酸カリウム、ドデシルリン酸カリウム、テトラデシルリン酸カリウム、ヘキサデシルリン酸カリウムなどのモノアルキルリン酸カリウム;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、リオキシエチレントリデシルエーテルリン酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記した陰イオン性両親媒性物質のアルキル基としては、炭素数8~20が好ましい。 上記のうち、超膨潤ラメラ相の安定化により適しているイオン性の界面活性剤である点でアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、超膨潤ラメラ相の発現温度が反応温度により適している点でオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。 [0030] また、本実施形態において、溶媒は、両親媒性物質の安定化のために、界面活性助剤を含めていてもよい。界面活性助剤としては、一価アルコール、グリコール系多価アルコールおよびその誘導体などが挙げられる。 一価アルコールとしては、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールなどの炭素数1~10の一価アルコール;コレステロール、アルケニルコハク酸コレステリル、コレスタノール、炭素数12~36(好ましくは炭素数14~28)の飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を有するコレステリルエステル、デヒドロコレステロールなどのコレステロールおよびその誘導体などが挙げられる。 グリコール系多価アルコールまたはその誘導体としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-1-メチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコールなどのジオール類;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのポリオール類などが挙げられる。 [0031] 本実施形態においては、溶媒が炭化水素系溶媒および水であり、両親媒性物質が陰イオン性両親媒性物質であり、さらに溶媒が界面活性助剤を含むものであってもよい。これらの製造方法においては、水を含む混合溶媒を使用する場合、水の含有量は、特に限定されないが、溶媒中、5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。 [0032] 本実施形態において、ゼオライトナノシート粒子の前駆体の製造には、通常、前記前駆体を構成する各原子の原子源として用いられる既知の化合物を原料として用いることができる。 本実施形態に用いるケイ素原子源としては、特に限定はされず、製造するゼオライトの種類に応じ適宜選択して用いることができるが、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)等のテトラアルコキシシラン;テトラアルキルオルソシリケート;シリカ;シリカゲル、熱分解法シリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ類;ケイ酸ナトリウム;カオリナイト;珪藻土;ケイ酸アルミニウム等が例挙げられる。好ましくはテトラアルコキシシランが膨潤溶媒として使用した有機溶媒との親和性の点で好ましく、コストと反応速度との点でTEOSがより好ましい。 [0033] 本実施形態に用いるアルミニウム原子源としては、特に限定はされず、製造するゼオライトの種類に応じ適宜選択して用いることができるが、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩;アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシド;アルミン酸塩;酸化アルミニウム;オキシ水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム;アルミナホワイト;フッ化アルミニウム;等が挙げられる。 [0034] 本実施形態において、リンを含むゼオライト(シリコアルミノフォスフェート、アルミノフォスフェート等)を製造する際には、そのリン原子源としては特に限定されず、製造するゼオライトの種類に応じ適宜選択して用いることができるが、通常、リン酸又はリン酸アルミニウム等のリン化合物が挙げられる。 [0035] 本実施形態に係るアルミノシリケートのシート状粒子は、ケイ素、アルミニウム以外にその他の元素を含んでもよい。その他の金属元素を含むアルミノシリケートのシート状粒子を製造する場合、上記アルミノシリケートの原料として、その他の金属元素の金属アルコキシドを含んでも良い。 例えば、その他の金属がFe又はGaである場合、Fe及びGaのうち一方又は両方を有する無機酸塩、有機酸塩、有機金属化合物等であり、必要に応じて適宜選択される。無機酸塩としては、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等が挙げられ、有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等が挙げられ、有機金属化合物としては、ペンタカルボニル、フェロセン等が挙げられる。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、又は微粉末状の酸化物を用いてもよい。 [0036] 〔第一工程の具体例〕 本実施形態の製造方法の第一工程の好ましい例を説明する。まず、オルトケイ酸テトラエチル (TEOS)などのケイ素原子源と水とを混合する。そして、その混合液に、さらに水酸化ナトリウムを加えて溶解する。次に、1-ペンタノールとp-オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム(OBS)とを含む両親媒性物質を前記混合液に加えて溶解される。OBSを溶解した後の混合溶液に有機溶媒であるデカンを加えた後、これを60℃で24時間攪拌する。攪拌後の混合溶液にエタノールを加えた後、得られる沈殿物を分離・乾燥することにより、白色粉末が得られる。白色粉末は、アモルファスのアルミノシリケートのシート状粒子とOBSとの混合物である。 得られるアモルファスのアルミノシリケートのシート状粒子は、厚みが2~100nmであり、アスペクト比(「粒子中の最大幅/厚み」の意味)が100以上であるナノシートであることが好ましい。 厚み、アスペクト比の調整には、前記二分子膜の厚み、原料組成比、反応温度、反応時間等の条件を適宜組み合わせて調整することができるが、例えば反応時間を調整することによりアスペクト比を調整することが可能である。 [0037] 本実施形態において、上記超膨潤ラメラ相中に形成されているアルミノシリケートのシート状粒子(「アルミノシリケートのシート状粒子」を「アルミノシリナノシート」を言うこともある。)は、複数存在しており、シート状粒子同士が、実質的に凝集していない状態で超膨潤ラメラ相中に存在していることが好ましい。 例えば、上記第一工程の具体例において、混合溶液にデカンを加えた後、60℃で24時間攪拌し、攪拌後の混合溶液にエタノールを加えた前、形成されたアルミノシリケートのシート状粒子が実質的に凝集していない状態で超膨潤ラメラ相中に存在していることが好ましい。凝集状態の評価は、例えば、実施例で後述する動的光散乱法(DLS)を用いることができる。 [0038] その他の具体例を詳細に説明する。 スクリュー管でTEOSと、脱イオン水とを混合する。得られた混合溶液に水酸化ナトリウムを加え溶解させる。次いで、1-ペンタノールを前記スクリュー管に加えたのちに、OBSを加え、これを溶解させる。 得られた混合溶液にデカンを加え、次いでアルミニウムトリイソプロポキシドを加える。得られた混合液をホットスターラーで攪拌する。 詳細な反応条件は以下に示す。 [0039] 膨潤溶媒としては、デカンと1-ペンタノールとを用いる。膨潤溶媒の使用量は、超膨潤ラメラ相の形成における系全体に対して、通常90質量%以上であり、好ましく95質量%以上であり、より好ましく98質量%以上である。後述べる実施例では、98質量%を用いた。 [0040] 水の含有量は通常は、5質量%以下であり、好ましく2質量%以下であり、より好ましく1.5質量%以下である。後述べる実施例では、1.1質量%であった。 [0041] OBSの量は、通常3質量%以下であり、好ましく2質量%以下であり、より好ましく1質量%以下である。後述べる実施例では、0.95質量%であった。 [0042] 1-ペンタノールの量は、通常15質量%以下であり、好ましく12質量%以下であり、より好ましく10質量%以下である。後述べる実施例では、8.4質量%であった。 [0043] Si/Alの比は、通常1~150であり、好ましく1~100であり、より好ましく1~60である。後述べる実施例では、21であった。 [0044] NaOH/Alの比は、通常0~20であり、好ましく0~10であり、より好ましく0~5である。後述べる実施例では、4.1であった。 [0045] 反応温度は通常25℃~90℃であり、好ましく40℃~80℃であり、より好ましくより好ましく60℃~70℃である。後述べる実施例では、64℃であった。 [0046] 攪拌速度は、通常0~1000rpmであり、好ましく100~500rpmであり、より好ましく200~300rpmである。後述べる実施例では、200rpmであった。 [0047] 反応時間は、通常15h~40hであり、好ましく18h~30hであり、より好ましく22h~26hである。後述べる実施例では、24hであった。 [0048] <第二工程> 第一工程において、第一工程で得られたアルミノシリケートのシート状粒子から、ドライゲルコンバージョン(DGC)法を用いて、容器内でガス状の水と接触させることにより、ゼオライトのシート状粒子を製造する。アルミノシリケートのシート状粒子に構造規定剤を添加しても良い。すなわち、第一工程で得られたアルミノシリケートのシート状粒子から、ドライゲルコンバージョン(DGC)法を用いて、構造規定剤存在下、ガス状の水と接触させることにより、ゼオライトのシート状粒子を製造することが好ましい。 [0049] 〔構造規定剤〕 構造規定剤(SDA:structure-directing agents)は、前記アルミノシリケートのシート状粒子をガス状の水と接触させる際に容器内に存在させてもよい。 構造規定剤としては、アミン、イミン、四級アンモニウム塩が使用できる。具体的には、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、ピリジン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、N-エチルブチルアミン、ジプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、トリプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ジイソプロピルアミン、テトラエチルアンモウムハイドロオキサイド、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH:N,N,N-trimethyladamantammonium hydroxide)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)等が挙げられるが、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N-メチルブチルアミン、TMAOH、TEAOH、TMAdaOH、TPAOHが好ましく、トリエチルアミン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、TMAOH、TEAOH、TMAdaOH、TPAOHが特に好ましく挙げられる。 [0050] 〔ドライゲルコンバージョン(DGC)法〕 本発明のゼオライトのシート状粒子の製造方法は、まず、アルミノシリケートのシート状粒子を乾燥させることにより固体を得る。その後、得られた固体を、容器内でガス状の水と接触させることによりゼオライトのシート状粒子が製造される。本発明において、このように固体を、ガス状の水と接触させる方法をドライゲルコンバージョン(DGC)法と称する。アルミノシリケートのシート状粒子には、必要に応じて構造規定剤を混合してもよい。 [0051] アルミノシリケートのシート状粒子と構造規定剤とを混合する順序は、特に制限はないが、通常は、アルミノシリケートのシート状粒子に構造規定剤を混合する。DGC法を行う際に水と共に容器に入れてもよい。 [0052] なお、アルミノシリケートのシート状粒子と構造規定剤とを混合する時には、分散性を高めるため、水等の溶媒を用いてもよい。この場合、この混合物がその形状を保つことができる程度となるまで溶媒を除去することにより乾燥固体を得る。 [0053] 乾燥固体は、粉末状、粒状又はその他の形状の成形体でも、基体に担持された形態でもよい。乾燥固体を粒状とする方法としては、押出法、噴霧乾燥法、撹拌造粒法、転動造粒法等の公知の造粒方法を挙げることができる。その他の形状の成形体としては、例えばハニカム状の成形体が挙げられ、通常、必要に応じてバインダー成分等を添加した後、押出成形により成形される。また、基体に担持された形態とする方法としては、例えば、セラミックスペーパー製のコルゲート紙からなるハニカム状物質をゲル状又はスラリー状の原料混合物に浸漬し、取り出したハニカム状物質を乾燥する方法等が挙げられる。 [0054] 所定形状からなる乾燥固体(以下、乾燥固体成形体ともいう。)は、ゲル状又はスラリー状の原料混合物を成形した後に乾燥して得られたものであってもよいし、一度得られた乾燥固体を粉砕した後に成形して得られたものであってもよい。すなわち、乾燥固体成形体は、乾燥に先立ち成形したものであってもよいし、乾燥固体を粉砕した後に成形したものであってもよい。こうして得られた乾燥固体成形体は、その後、DGC法に従いガス状の水と接触して結晶化することにより、所定形状からなるゼオライトのシート状粒子が製造される。 [0055] このようにして調製した乾燥固体と液体の水と必要に応じて加えられる構造規定剤とを容器に入れ、所定の圧力下、これをガス状の水と接触させ、容器内の温度を保持することによりゼオライトのシート状粒子が得られる。 [0056] 乾燥固体をガス状の水と接触させる方法に特に制限はないが、例えば、容器内で乾燥固体が液体の水と物理的に隔離した状態となるように台上又は棚上に乾燥固体を保持する方法、及び、昇温時や降温時に乾燥固体上に凝縮した水が速やかに除去されるように乾燥固体を金網状の容器に保持する方法等が挙げられる。 [0057] 容器の材質は特に制限されないが、ステンレス製の容器、又は、ステンレス、チタン、Ni-Cr合金、ハステロイ、若しくはテフロン(登録商標)で内面を被覆した容器等を用いることができる。 [0058] 構造規定剤の添加方法としては、上述のように予めアルミノシリケートのシート状粒子とともに混合しておく方法や、DGC法を行う際に水とともに容器に入れておく方法が挙げられる。構造規定剤の添加方法のうち、DGC法を行う際に水とともに容器に入れておく方法は、取り扱う際に注意を要する構造規定剤を取り扱う操作が少ないので、安全性の観点から有利である。その他の構造規定剤の添加方法としては、水とは別に蒸気として供給する方法が挙げられる。 [0059] 構造規定剤の総量は、所望の組成のゼオライトのシート状粒子の合成の容易さまたは経済性に影響する。アルミノシリケートのシート状粒子に対する構造規定剤のモル比は、通常0.2以上、好ましくは0.5以上であり、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。 [0060] 圧力(全圧)は、容器内の温度によるが、容器内の水と構造規定剤の少なくとも一部がガス状で存在し、ゼオライトのシート状粒子の結晶化を阻害しない程度の圧力である。 [0061] 容器内に入れる水の量は、水の分圧が、容器内の温度における飽和蒸気圧の40%以上となる量が好ましい。飽和蒸気圧の60%以上となる量がより好ましく、飽和蒸気圧の90%以上となる量が特に好ましい。水の分圧が、飽和蒸気圧の40%未満であると、結晶化が充分に進行しない場合がある。容器内に入れる水の量は、粒径の再現性、成形体の強度の再現性又は経済性から、通常、容器内の温度における水の飽和蒸気圧をちょうど与える量の100%~150%となる量が採用される。一方、上限は特に制限はないが、容器内に存在する水の量が、水の飽和蒸気圧をちょうど与える量の150%を超える量である場合には、消費するエネルギーが大きくなり、経済的に不利になることがある。 [0062] 容器内の温度は、所望の組成のゼオライトのシート状粒子の合成の容易さによって設定されるが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは200℃以下である。上記範囲未満では、結晶化の速度が遅い場合があり、上記範囲を超えると不純物が生成する場合がある。容器内の温度は合成中一定でもよいし、段階的に変化させてもよい。 [0063] 容器内の温度を保持する時間は、所望の組成のゼオライトのシート状粒子の合成の容易さによって設定されるが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。 [0064] このようにゼオライトのシート状粒子を製造する際にDGC法を用いることによって、分離操作及び精製操作が不要になるため、簡単にゼオライトのシート状粒子が製造できる。また、得られるゼオライトのシート状粒子は純度が高いので生産効率が良い。 [0065] <第三工程> 本実施形態の製造方法は、必要に応じて第二工程で得られたゼオライトのシート状粒子を焼成する第三工程を含んでもよい。第二工程で得られたゼオライトのシート状粒子は構造規定剤を含む場合があるので、第三工程において、ゼオライトのシート状粒子に含まれている構造規定剤を除去することができる。 第二工程でDGC法により製造されたゼオライトのシート状粒子は、その使用目的に応じ、公知の方法で焼成されてもよい。焼成された後のゼオライトのシート状粒子は、構造規定剤が除去され、例えば、吸着材や触媒として好ましく使用される。 [0066] 焼成は、例えばDGC法により製造された後の、構造規定剤を含有したゼオライト(以下、前駆体ということがある)のシート状粒子を、窒素で希釈した空気等のガスの流通下又は減圧下で、所定の条件で加熱処理するプロセスであり、その結果、前記前駆体中の構造規定剤の一部又は全部が除去されたゼオライトのシート状粒子が得られる。 [0067] 上記焼成を行う焼成温度は特に限定はされないが、通常400℃以上、600℃以下の温度で行うことができる。この範囲であれば、焼成時間が長くなり過ぎず、また、所望の構造のゼオライトになりやすく、また構造規定剤を焼失させやすい。好ましくは、500℃以上、550℃以下の温度で焼成を行うことである。 焼成時間は特に限定されないが、通常1時間以上、24時間以下とすることができる。 上記焼成は、例えば、市販の加熱炉等を使用して行うことができる。 [0068] 上記焼成は、空気雰囲気下及び窒素等の不活性ガス雰囲気下のいずれの雰囲気下で行ってもよく、空気雰囲気下で行うことがコストの面で好ましい。 [0069] なお、焼成工程を行う前に、得られた前記前駆体の乾燥処理を行ってもよい。この乾燥条件は、適宜の条件で行うことができる。 焼成条件の一例は以下に示す。 焼成温度:通常400℃以上、好ましくは500℃以上、通常600℃以下 昇温・冷却速度:5~10℃/分 焼成雰囲気:空気中 焼成気圧:大気圧 焼成時間:5~10時間 [0070] 本実施形態の製造方法を用いて、Si/Al比、構造規定剤の種類、第二工程の処理条件などを調製することによって、種々の結晶構造のゼオライトのシート状粒子を製造することができる。また、本実施形態の製造方法を用いて、厚さが1~100nmであり、最大幅と厚さとの比(アスペクト比)が20以上のナノサイズのシート状粒子(本発明において「ナノシート」をいう)を製造することができる。本実施形態において、ゼオライトのナノシート状粒子(本発明において「ゼオライトナノシート」をいう)は、厚さが1~100nmであり、最大幅と厚さとの比(アスペクト比)が50以上であることが好ましく、厚さが1~50nmであり、最大幅と厚さとの比(アスペクト比)が100以上であることがより好ましく、厚さが1~20nmであり、最大幅と厚さとの比(アスペクト比)が200以上であることが更に好ましい。 [0071] <種々の結晶構造のゼオライトのシート状粒子とその製造方法> 以下に、本実施形態の方法で製造されるゼオライトのシート状粒子の具体例として、種々の結晶構造を有するゼオライトナノシートを説明する。 [0072] <ゼオライトのシート状粒子の結晶構造> ゼオライトの結晶構造を、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association : IZA)ではアルファベット3文字を用いた構造コードで表記して分類している。なお本願明細書において、各結晶構造を有するゼオライトを、前記の構造コードを用いて表すことがある。具体的にはゼオライトの構造コードがCHAであるとき、このゼオライトを「CHA型ゼオライト」というように表す。 また、ゼオライトの細孔径の大きさによる分類方法がある。この場合、以下のように、環構造中に含まれる酸素原子の数(8員環、10員環、12員環など)で分類する。複数の大きさの細孔をもつゼオライトの場合は、一番大きな細孔でそのゼオライトを代表させる。 [0073] (I)小細孔、酸素8員環構造ゼオライト(本発明において「小細孔ゼオライト」をいう) ゼオライト種(構造コード)として、ANA、CHA、ERI、GIS、KFI、LTA、NAT、PAU、PHI、SOD、YUG、DDRなどが挙げられる。 [0074] (II)中細孔、酸素10員環構造ゼオライト(本発明において「中細孔ゼオライト」をいう) ゼオライト種(構造コード)として、AEL、EUO、FER、HEU、MEL、MFI、NES、TON、WEIなどが挙げられる。 [0075] (III)大細孔、酸素12員環構造ゼオライト(本発明において「大細孔ゼオライト」をいう)) ゼオライト種(構造コード)として、AFI、ATO、BEA、CON、FAU、GME、LTL、MOR、MTW、OFFなどが挙げられる。 [0076] 前述の通り、本実施形態のゼオライトナノシートは、厚さ方向の結晶成長が制限された2次元結晶である。本実施形態のゼオライトナノシートは、小細孔ゼオライトナノシート、中細孔ゼオライトナノシート、大細孔ゼオライトナノシートなどを含むことが好ましい。 本実施形態の小細孔ゼオライトナノシートの例は、ANA型ゼオライトナノシート、CHA型ゼオライトナノシート、ERI型ゼオライトナノシート、GIS型ゼオライトナノシート、KFI型ゼオライトナノシート、LTA型ゼオライトナノシート、NAT型ゼオライトナノシート、PAU型ゼオライトナノシート、PHI型ゼオライトナノシート、SOD型ゼオライトナノシート、YUG型ゼオライトナノシート、DDR型ゼオライトナノシートを含む。そのうち、CHA型ゼオライトナノシートと、PHI型ゼオライトナノシートと、SOD型ゼオライトナノシートとについて、実施例で詳細に説明する。 [0077] 本実施形態の中細孔ゼオライトナノシートの例は、AEL型ゼオライトナノシート、EUO型ゼオライトナノシート、FER型ゼオライトナノシート、HEU型ゼオライトナノシート、MEL型ゼオライトナノシート、MFI型ゼオライトナノシート、NES型ゼオライトナノシート、TON型ゼオライトナノシート、WEI型ゼオライトナノシートなど含む。そのうち、MFI型ゼオライトナノシートについて、実施例で詳細に説明する。 [0078] 本実施形態の大細孔ゼオライトナノシートの例は、AFI型ゼオライトナノシート、ATO型ゼオライトナノシート、BEA型ゼオライトナノシート、CON型ゼオライトナノシート、FAU型ゼオライトナノシート、GME型ゼオライトナノシート、LTL型ゼオライトナノシート、MOR型ゼオライトナノシート、MTW型ゼオライトナノシート、OFF型ゼオライトナノシートなど含む。 [0079] 本実施形態に係るゼオライトのシート状粒子は、特に限定されないが、アルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェート、アルミノフォスフェートや、これらのゼオライトの一部が別の金属種で置換されたもの(例えばメタロアルミノシリケート、メタロアルミノフォスフェート等)が挙げられるが、アルミノシリケートであることが好ましい。その際、ゼオライトのシート状粒子全体のSiO 2に対するAl 2O 3質量比は、特段の制限はないが、好ましくは0.1~30であり、さらに好ましくは0.15~20であり、特に好ましくは0.2~15である。 [0080] また、本発明のゼオライトのシート状粒子は、骨格構造を構成する成分とは別に、「他のカチオンとイオン交換可能なカチオン種を持つもの」を含んでいてもよい。そうした場合のカチオンとしては、プロトン、Li、Na、K等のアルカリ元素、Ca等のアルカリ土類元素、La,Ce等の希土類元素等が挙げられる。中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。 [0081] 本実施形態のゼオライトナノシートは、上述のゼオライトのシート状粒子の製造方法を用いて、Si/Alモル比、構造規定剤、処理条件を最適化することにより、製造することができる。各種の結晶構造のゼオライトナノシートの製造方法の具体例について、表1に示す。 [0082] [表1](省略) [0083] TEOS:オルトケイ酸テトラエチル OBS:p-オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム TMAdaOH:N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムヒドロキシド(N,N,N-trimethyladamantammonium hydroxide) TPAOH:水酸化テトラプロピルアンモニウム TMAOH:水酸化テトラメチルアンモニウム TEAOH:水酸化テトラエチルアンモニウム [0084] 〔第二工程および第三工程の具体例〕 本実施形態の製造方法の第一工程の好ましい例を説明する。 <SOD型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にNaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させることにより、ドライゲルを得る。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化する。詳細な反応条件は以下に示す。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させる。 [0085] NaOH/アルミノシリケートの比は、通常0~1であり、好ましく0~0.5であり、より好ましく0~0.3であり、後述べる実施例では、0.3であった。 結晶化温度は、通常100℃~220℃であり、好ましく120℃~200℃であり、より好ましく160℃~180℃であり、後述べる実施例では、180℃であった。 結晶化時間は、通常2h~30日であり、好ましく3時間~10日であり、より好ましく5時間~4日であり、後述べる実施例では、48時間であった。 [0086] <MFI型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にTPAOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させることにより、ドライゲルを得る。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化する。詳細な反応条件は以下に示す。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させる。そして得られたサンプルを焼成する。 [0087] TPAOH/アルミノシリケートは、通常0.5~10であり、好ましく1~5であり、より好ましく2~4であり、後述べる実施例では、3であった。 結晶化温度は、通常100℃~220℃であり、好ましく120℃~200℃であり、より好ましく160℃~180℃であり、後述べる実施例では、180℃であった。 結晶化時間は、通常2時間~30日であり、好ましく3時間~10日であり、より好ましく5時間~4日であり、後述べる実施例では、48時間であった。 焼成温度は、通常400℃~600℃であり、好ましく500℃~600℃であり、より好ましく550℃~600℃であり、後述べる実施例では、550℃であった。 焼成時間は、通常2時間~24時間であり、好ましく3時間~15時間であり、より好ましく5時間~10時間であり、後述べる実施例では、5時間であった。 [0088] <PHI型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にTMAdaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させることにより、ドライゲルを得る。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化する。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させる。そして得られたサンプルを焼成する。 [0089] TMAdaOH/アルミノシリケートは、通常0.5~20であり、好ましく1~15であり、より好ましく5~10であり、後述べる実施例では、7であった。 結晶化温度は、通常100℃~220℃であり、好ましく120℃~200℃であり、より好ましく160℃~180℃であり、後述べる実施例では、160 ℃であった。 結晶化時間は、通常2時間~30日であり、好ましく3時間~10日であり、より好ましく5時間~4日であり、後述べる実施例では、48時間であった。 焼成温度は、通常400℃~600℃であり、好ましく500℃~600℃であり、より好ましく550℃~600℃であり、後述べる実施例では、550℃であった。 焼成時間は、通常2時間~24時間であり、好ましく3時間~15時間であり、より好ましく5時間~10時間であり、後述べる実施例では、5時間であった。 [0090] <CHA型ゼオライトナノシートのナノシート> 白色粉末にTMAdaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させることにより、ドライゲルを得る。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化する。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させる。そして得られたサンプルを焼成する。 [0091] TMAdaOH/アルミノシリケートは、通常0.5~20であり、好ましく1~15であり、より好ましく5~10であり、後述べる実施例では、7であった。 結晶化温度、通常100℃~220℃であり、好ましく120℃~200℃であり、より好ましく160℃~190℃であり、後述べる実施例では、160℃であった。 結晶化時間は、通常2時間~30日であり、好ましく3時間~10日であり、より好ましく5時間~4日であり、後述べる実施例では、96時間であった。 焼成温度は、通常400℃~600℃であり、好ましく500℃~600℃であり、より好ましく550℃~600℃であり、後述べる実施例では、550℃であった。 焼成時間は、通常2時間~24時間であり、好ましく3時間~15時間であり、より好ましく5時間~10時間であり、後述べる実施例では、5時間であった。 [0092] <膜反応器用触媒組成物> 本発明のゼオライトナノシート(ゼオライトナノシート粒子)を膜反応器用触媒組成物として用いることができる。 例えば、本発明ゼオライトナノシートを用いてゼオライト膜を形成することにより、バルク試料のゼオライト(「ゼオライトバルク体」、「バルク状ゼオライト」とも言う。例えば、通常の方法で合成した3次元方向で結晶成長したものである。具体例は、後述の比較合成例で合成したバルク試料のゼオライトを含む。)を用いてゼオライト膜を形成するよりも、薄膜化したゼオライト膜を得ることができる。このため、ゼオライト膜厚が薄くなることから、生成物の透過速度がより向上する。 また、本発明ゼオライトナノシートを用いて作製したゼオライト膜は、ゼオライトの細孔よりも大きな分子を本発明ゼオライトシートの表面で分解し、当該細孔よりも小さな生成物のみを回収することができる。 [0093] <廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤及び廃プラスチックのリサイクル処理法> 本発明のゼオライトナノシート(ゼオライトナノシート粒子)を廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤として用いることができる。 例えば、廃プラスチックに、本発明ゼオライトナノシートを添加(例えば、廃プラスチック100重量に対して本発明ゼオライトナノシート0.1~100重量部の添加)し、これを加熱することにより、効率的に廃プラスチックを分解することができる。尚、当該廃プラスチックから生成した重軽油は、燃料として再利用できる。 本発明のゼオライトナノシートを含む廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤は、通常のバルク試料のゼオライトを含む触媒より、より効率良くクラッキング反応を進めることが可能である。それは、バルク試料のゼオライトよりも表面積が大きいことから、より効率良くクラッキング反応を進めることが可能になるためであると考えられる。また、例えば、加熱温度の低温化での分解、分解生成物のオレフィンリッチ化での分解も期待できる。 本発明のプラスチックのリサイクル処理法は、特に限定されないが、例えば、廃プラスチックと、反応活性化成分として本発明のゼオライトのシート状粒子とを混合する混合工程と;前記混合工程で得られた混合物を加熱分解する加熱分解工程と含む。反応活性化成分として本発明のゼオライトのシート状粒子は、上記廃プラスチックのクラッキング用触媒添加剤であってもよい。前記混合工程において、廃プラスチック100重量に対して本発明ゼオライトナノシートを0.1~100重量部添加することが好ましい。 [0094] 以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。 実施例 [0095] 以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 [0096] (ゼオライトナノシートの評価) [0097] <AFM測定> 原子間力顕微鏡(AFM):Veeco Instruments社製 MMAFM-2 <SEM測定> 走査型電子顕微鏡(SEM):JEOL社製 JED-2300 Analysis Station Plus 加速電圧:15kV [0098] <TEM測定> 透過型電子顕微鏡(TEM):JEOL社製 JSM-6700F [0099] <X線回折スペクトル測定> X線回折装置(XRD):パナリティカル社製 PANalytical X’Pert PRO X線源:CuKα 管球電圧:45kV 管球電流:40mA 測定範囲:5~45° [0100] <EDX測定> エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いた元素量分析により、ナノシート表面のSi/Alモル比を測定した。 [0101] (比較合成例実施例1) <バルク試料のゼオライト(CHA型)の合成> 脱イオン水(28.6g)に水酸化ナトリウム(和光純薬社製、0.4g)とN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムヒドロキシド(N,N,N-trimethyladamantammonium hydroxide、以下、TMAdaOH:セイケム社製、8.62g)とを加えることにより、混合液を得た。次に、得られた混合液に、コロイダルシリカ(8.0g)と水酸化アルミニウム(0.366g)とを加えた後、この混合物を、スターラーを用いて室温300rpmで5時間攪拌した。その後、得られた溶液を円筒型容器(テフロン(登録商標)製:直径8cm,高さ4cm)内に収めた。次いで、これをオートクレーブ内に入れ密閉した後、当該オートクレーブのオーブン内で160℃、4日間保持することにより、水熱合成を行った。その後、前記容器をオートクレーブのオーブン内から取り出し、室温で放冷した。このようにして前記容器内で得られた生成物を脱イオン水で洗浄した後、得られた洗浄物を90℃で16時間乾燥することにより、固体を得た。このようにして得られた固体を、空気中、550℃で5時間焼成することにより、バルク試料のゼオライト(CHA型)を合成した。 [0102] (実施例1) (アルミノシリケートナノシートの製造) オルトケイ酸テトラエチル(以下、「TEOS」:和光純薬社製、74mg)及び脱イオン水(320mg)をスクリュー管中で混合し、これにさらに水酸化ナトリウム(和光純薬社製、3mg)を加えて溶解することにより、混合溶液を得た。次に、得られた混合溶液に1-ペンタノール(和光純薬社製、2.5g)及びp-オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下OBS:和光純薬社製、280mg)を加えた後、超音波攪拌によりOBSを溶解させた。OBSを溶解して得られた混合溶液に、デカン(26.6g)及びアルミニウムトリイソプロポキシド(ナカライテスク社製、3.5mg)を加えた後、得られた混合液を、ホットスターラーを用いて60℃、200rpmで24時間攪拌した。攪拌後の混合溶液にエタノールを加えることにより白色沈殿を析出させた後、これを遠心分離(11000rpm、1時間)により沈殿物を回収した。回収された沈殿物を90℃で16時間乾燥することにより、白色粉末を得た。 [0103] 得られた白色粉末のXRD測定をした結果、OBSと同様のピークを示した。次にこの白色粉末をメタノールで洗浄した後、得られた洗浄物をXRD測定に供した結果、アモルファスのアルミノシリケートであることが示唆された。これより得られた白色固体はアルミノシリケートナノシートとOBSとの混合物であることがわかった。 AFM及びTEMの測定結果を、図1~3に示した。 AFM測定結果から、その厚みは1.5nmであり、アスペクト比は250であった。 [0104] (実施例2) (CHA型ゼオライトナノシートの製造) 実施例1で得られたアルミノシリケートナノシートを含む白色粉末と、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムヒドロキシド(N,N,N-trimethyladamantammonium hydroxide、以下、TMAdaOH:セイケム社製、1.4g)とを混合し、得られた混合物を90℃で16時間乾燥させることにより、ドライゲル650mgを得た。 [0105] 得られたドライゲルを、円筒型容器(テフロン(登録商標)製:直径4cm、高さ2.5cm)に入れた。次に該円筒型容器を、脱イオン水(5g)を入れた別の円筒型容器(テフロン(登録商標)製: 直径8cm,高さ4cm)内に収めた。これらをオートクレーブ内に入れ密閉した後、当該オートクレーブのオーブン内で160℃、4日間保持することにより、ドライゲルコンバージョン法を行った。その後、前記容器をオートクレーブのオーブン内から取り出し、室温で放冷した。このようにして前記容器内で得られた生成物を脱イオン水で洗浄した後、得られた洗浄物を90℃で16時間乾燥することにより、固体を得た。 このようにして得られた固体を、空気中、550℃で10時間焼成した。次いで、得られた焼成物をXRD測定に供した結果、前記固体がCHA型の構造を有することがわかった(図4)。 [0106] AFM及びTEMの測定結果を、図5~7に示した。この固体のAFM測定結果から、その厚みが1.4nmである。アスペクト比が860であった。 EDX及びSEMの測定結果を、図8A~図8Eに示した。この固体のEDXの結果から、第1箇所のSi/Alのモル比が17.65/1.86であり、第1箇所のSi/Alのモル比が23.75/2.90である。その平均値から、Si/Alのモル比が8.8であった。 [0107] (実施例3) (PHI型ゼオライトナノシートの製造) 実施例2において、ドライゲルコンバージョンを行う時間を2日間に変更した以外は実施例2と同様の方法により固体を得た。得られた固体の焼成物をXRD測定供した結果(図9)、前記固体がPHI型の構造を有することがわかった。 TEMの測定結果を、図10に示した。 またこの固体のAFM測定結果から、その厚みは、1.3nmであり、またアスペクト比は150であった。 [0108] (実施例4) (MFI型ゼオライトナノシートの製造) 実施例2における前記TPAdaOHの代わりに水酸化テトラプロピルアンモニウム(以下、「TPAOH」:東京化成社製 1.2g)を用いた以外は実施例2と同様の手順によりドライゲルを得た。 得られたドライゲルを用いて、反応時間を2日間とした以外は実施例2と同様にドライゲルコンバージョンを行った。 得られた固体を550℃、5時間焼成することにより、MFI型ゼオライトのナノシートを得た。 XRDの測定結果を、図11に示した。 TEMの測定結果を、図12に示した。 AFMの測定結果を、図13、14に示した。AFMの結果から、そのナノシートの厚みは、2nmである。アスペクト比は500であった。 [0109] 特許文献2に開示したMFI型ゼオライトナノシートの製造方法では、特殊な有機界面活性剤が用いられた。この有機界面活性剤は、構造規定剤と界面活性剤との2つの機能を同時に有する。本発明の製造方法は、アルミノシリケートのナノシートの形成工程及びゼオライト結晶化工程において、それぞれの工程に対して、最適化した両親媒性物質及び構造規定剤を用いた。したがって、特許文献2の製造方法より、多種類のゼオライトナノシートを製造することができる。 [0110] (実施例5) (SOD型ゼオライトナノシートの製造) 実施例1において、水酸化ナトリウムを使用しない以外は実施例1と同様の方法により、アルミノシリケートのナノシートを含む白色粉末を得た。 上記の白色粉末に、実施例2における前記TPAdaOHの代わりに水酸化ナトリウム 2.8mg)を用いた以外は実施例2と同様の手順によりドライゲルを得た。 得られたドライゲルを用いて、反応時間を2日間とした以外は実施例2と同様にドライゲルコンバージョンを行った。 得られた固体を脱イオン水で洗浄した後、得られた洗浄物を90℃、16時間乾燥した。XRD測定の結果から、前記固体がSOD型の構造を有することがわかった。その厚みは、1.4nmであり、またアスペクト比は130であった。 XRD測定をした結果を、図15に示した。 TEM測定をした結果を、図16に示した。 [0111] (実施例6) <SOD型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にNaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させることにより、ドライゲルを得た。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化した。詳細な反応条件は以下に示す。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させた。 [0112] NaOH/アルミノシリケートの比:0.3 結晶化温度:180℃ 結晶化時間:48時間 [0113] (実施例7) <MFI型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にTPAOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させたことにより、ドライゲルを得た。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化した。詳細な反応条件は以下に示す。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させた。そして得られたサンプルを焼成した。 [0114] TPAOH/アルミノシリケート:2 結晶化温度:180℃ 結晶化時間:48時間 焼成温度:550℃ 焼成時間:5時間 [0115] (実施例8) <PHI型ゼオライトのナノシート> 白色粉末にTMAdaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させたことにより、ドライゲルを得た。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化した。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させた。そして得られたサンプルを焼成した。 [0116] TMAdaOH/アルミノシリケート:7 結晶化温度:160℃ 結晶化時間:48時間 焼成温度:550℃ 焼成時間:5時間 [0117] (実施例9) <CHA型ゼオライトナノシートのナノシート> 白色粉末にTMAdaOHを加え、十分に混合した後90℃で1晩乾燥させたことにより、ドライゲルを得た。得られたドライゲルを、オートクレーブを用いてドライゲルコンバージョン法で結晶化した。生成物を脱イオン水で洗浄した後、これを90℃で1晩乾燥させた。そして得られたサンプルを焼成した。 [0118] TMAdaOH/アルミノシリケート:7 結晶化温度:160℃ 結晶化時間:96時間 焼成温度:550℃ 焼成時間:5時間 [0119] (実施例10) <超膨潤ラメラ相中のアルミノシリケートナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例1において、60℃、200rpmで24時間攪拌したことより得られたアルミノシリケート(超膨潤ラメラ相中)の合成後の溶液をそのまま使用し、下記の動的光散乱法(DLS)法で凝集状態を評価した。結果を図17に示す。 図17から、超膨潤ラメラ相中において、ナノシート同士の凝集は起こっていないことが分かった。 <DLS法> 測定装置:小塚電子製、ゼータ電位測定システムELSZ-2000 サンプル調整: 溶媒:エタノール サンプル濃度:0.05質量% サンプルの処理:約30分超音波処理 [0120] (実施例11) <遠心分離後のアルミノシリケートナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例1において、遠心分離により回収した沈殿物を使用し、上記のDLS法で凝集状態を評価した。結果を図18に示す。 図18から、遠心分離後、凝集するものが観測された。 [0121] (実施例12) <濾過後のアルミノシリケートナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例11において、DLS法評価用のサンプルから、トップシリンジを用いて2.5mlを取り、次いで採取されたサンプルをザルトリウスシリンジフィルター(17593K,孔径1.2μm)で濾過した後、回収した濾液を、実施例10と同様な方法で、凝集状態を評価した。結果を図19に示す。 図19の結果から、濾過によって凝集体が約44質量%除去されたことが分かった。 凝集体の計算方法は以下の式を用いた。 [濾過前のサンプル重量-濾過後のサンプル重量]/[濾過前のサンプル重量」×100 [0122] (実施例13) <CHA型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例2において得られたCHA型ゼオライトナノシートの固体を、上記のDLS法で凝集状態を評価した。その結果を図20に示す、 図20の結果から、アルミノシリケートナノシートからCHA型ゼオライトナノシートに結晶化した際に凝集したものが観測された。 [0123] (実施例14) <濾過1回のCHA型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例13のDLS法評価用のサンプルから、トップシリンジを用いて2.5mlを取り、次いで採取されたサンプルをザルトリウスシリンジフィルター(17593K,孔径1.2μm)で濾過した後、回収した濾液を、実施例13と同様な方法で、凝集状態を評価した。結果を図21に示す。 図21の結果から、1回濾過によって凝集体の量が減少したことが分かった。 [0124] (実施例15) <濾過3回のCHA型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例13のDLS法評価用のサンプルから、トップシリンジを用いて2.5mlを取り、次いで採取されたサンプルをザルトリウスシリンジフィルター(17593K,孔径1.2μm)で濾過した後、回収した濾液をさらに2回濾過し、上記DLS法を用いて、実施例13と同様な方法で、凝集状態を評価した。結果を図22に示す。 図22の結果から、3回濾過によって凝集体が58質量%除去されたことが分かった。 凝集体の計算方法は実施例12と同様である。 [0125] (実施例16) <SOD型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例5において得られたSODゼオライトナノシートの固体を、上記のDLS法で凝集状態を評価した。その結果を図23に示す、 図23の結果から、アルミノシリケートナノシートからSOD型ゼオライトナノシートに結晶化にした際に凝集したものが観測された。 [0126] (実施例17) <濾過後のSOD型ナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例16のDLS法評価用のサンプルから、トップシリンジを用いて2.5mlを取り、次いで採取されたサンプルをザルトリウスシリンジフィルター(17593K,孔径1.2μm)で濾過した後、回収した濾液を、実施例16と同様な方法で、凝集状態を評価した。結果を図24に示す。 図24の結果から、濾過によって凝集体の量が減少したことが分かった。 [0127] (実施例18) <MFI型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例4において得られたMFIゼオライトナノシートの固体を、上記のDLS法で凝集状態を評価した。その結果を図25に示す、 図25の結果から、結晶化の際に凝集するものが存在することがわかった。 [0128] (実施例19) <濾過後のMFI型ゼオライトナノシートの凝集状態の評価> 前記実施例18のDLS法評価用のサンプルから、トップシリンジを用いて2.5mlを取り、次いで採取されたサンプルをザルトリウスシリンジフィルター(17593K,孔径1.2μm)で濾過した後、回収した濾液を、実施例18と同様な方法で、凝集状態を評価した。結果を図26に示す。 図26の結果から、濾過によって凝集体の量が減少したことが分かった。 [0129] <実施例10~19の考察> 実施例10~19のDLS評価結果から、超膨潤ラメラ相中では凝集が観測されなかった。また、遠心分離後、凝集したものが観測されたが、濾過で取り除くことができることが分かった。 アルミノシリケートナノシートからゼオライトナノシートにゼオライト化にした際にも凝集が発生した。しかしながら、濾過によってこれらの凝集体を取り除くことができることが分かった。 [0130] (実施例20) (ATO(Acetone to Olefines)反応) 本実施例のATO反応試験は、図27に示す大気圧固定床型反応器を用いて行った。該大気圧固定床型反応器が触媒層を備えている。ここで、ATO反応とは、アセトンからオレフィン類へ(Acetone to Olefines)の反応を意味する。 [0131] <ATO反応用触媒の作製> 実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシートを含む粉末を触媒として用いた。内径4mmの石英管にガラスビーズと該触媒とを均一に詰め、これをガラスウールで固定することにより、触媒層を作製した。 [0132] <ATO反応> まずは、アセトンをヘリウムでバブリングした。蒸気となったアセトンとヘリウムとの混合気体を、上記触媒層を備える反応器へ通し、以下の反応条件で本発明ゼオライトシート又はバルク試料のゼオライトと反応させた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 [0133] <反応条件> 反応温度:400℃ 触媒量:0.05g ヘリウム流量:1.0ml/min アセトン温度:0℃ [0134] <生成物の分析> 生成物のガスクロマトグラフィー分析には、Shimadzu GC-2025(FID)を使用した。キャリアガスとしては、ヘリウムを使用した。 原料であるアセトンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図28に示す(「NSs」:ゼオライトナノシートを用いる本実施例)。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表2に示す。 [0135] (比較例1) CHA型ゼオライトナノシートの代わりに比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライトを用いた以外は、実施例20と同様に触媒層を作製した。実施例20と同様な反応条件及び分析条件でATO反応をさせた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 原料であるアセトンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図28に示す(「Bulk」:バルク試料のゼオライト(CHA型)用いる本比較例)。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表2に示す。 [0136] (考察) 図28の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とでは、アセトンの転化率にかかる推移には殆ど変化がないことが分かった。 また、表2の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とでは、両者の間での触媒寿命には殆ど変化がないことが分かった。 生成物を確認したところ、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とを比較すると、前者では、メタンと低級オレフィン(C1、C2=、C3=)とが多く生成していた。一方で、後者では、前者よりもパラフィン(特にC3)の存在割合が多くなっていた。 また、アセトンが転換して生成した全生成物におけるC 1~C 4の割合は、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合には3.8%であり、一方、バルク試料のゼオライトを用いた場合には13.8%であった。 つまり、本発明ゼオライトナノシートを用いることにより、C 4よりも大きな化合物が生成し易くなることが明らかになった。 [0137] [表2](省略) [0138] (実施例21) (MTO(Methanol to Olefins )反応) 本実施例のMTO反応試験は、図29に示す大気圧固定床型反応器を用いて行った。該大気圧固定床型反応器がCHA型ゼオライトナノシートを含む触媒層を備えている。ここで、MTO反応とは、メタノールからオレフィン類へ(Methanol to Olefins)の反応を意味する。 [0139] <MTO反応用触媒の作製>、 実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシートを含む粉末を触媒として用いた。内径4mmの石英管にガラスビーズと該触媒とを均一に詰め、これをガラスウールで固定することにより、触媒層を作製した。 [0140] <MTO反応> まずは、メタノールをヘリウムでバブリングした。蒸気となったメタノールとヘリウムとの混合気体を、上記触媒層を備える反応器へ通し、以下の反応条件で本発明ゼオライトシート又はバルク試料のゼオライトと反応させた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 [0141] <反応条件> 反応温度:400 ℃ 触媒量:0.025g ヘリウム流量:7.5ml/min メタノール温度:10℃ [0142] <生成物の分析> 生成物のガスクロマトグラフィー分析には、Shimadzu GC-2025(FID)を使用した。キャリアガスとしては、ヘリウムを使用した。 原料であるメタノールの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図30に示す。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表3に示す。 [0143] (比較例2) CHA型ゼオライトナノシートの代わりに比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライトを用いた以外は、実施例21と同様に触媒層を作製した。実施例21と同様な反応条件及び分析条件でATO反応をさせた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 原料であるメタノールの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図30に示す。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表3に示す。 [0144] (考察) 図30の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合は、バルク試料のゼオライトを用いた場合よりも、60分後およびそれ以降のメタノールの転化率が低下することが分かった。 また、表3の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とでは、前者は後者よりも触媒寿命が少し短くなっていることが分かった。 生成物を確認したところ、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とを比較すると、前者では、C 2=、C 3、C 3=が多く生成していた。一方で、後者では、前者よりもC 4よりも大きな生成物の存在割合が多くなることが分かった。 また、メタノールが転換して生成した全生成物におけるC 1~C 4の割合は、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合には45%であり、一方、バルク試料のゼオライトを用いた場合には41%であった。 つまり、本発明ゼオライトナノシートを用いることにより、C 1~C 4の存在割合が多くなることが明らかになった。 [0145] [表3](省略) [0146] (実施例22) (PPTO(Propane to Olefins )反応) 本実施例のPPTO反応試験は、図31に示す大気圧固定床型反応器を用いて行った。該大気圧固定床型反応器がCHA型ゼオライトナノシートを含む触媒層を備えている。ここで、PPTO反応とは、プロパンからオレフィン類へ(Propane to Olefins)の反応を意味する。 [0147] <PPTO反応用触媒の作製> 実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシートを含む粉末を触媒として用いた。内径4mmの石英管にガラスビーズと該触媒とを均一に詰め、これをガラスウールで固定することにより、触媒層を作製した。 [0148] <PPTO反応> まずは、ヘリウムとプロパンとを流路中で混合した。混合されたヘリウムとプロパンとの混合気体を、上記触媒層を備える反応器へ通し、以下の反応条件で本発明ゼオライトシート又はバルク試料のゼオライトと反応させた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 [0149] <反応条件> 反応温度:400℃ 触媒量:0.05g ヘリウム流量:6.4ml/min プロパン流量:3.0ml/min [0150] <生成物の分析> 生成物のガスクロマトグラフィー分析には、Shimadzu GC-2025(FID)を使用した。キャリアガスとしては、ヘリウムを使用した。 原料であるプロパンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図32に示す。 [0151] (比較例3) CHA型ゼオライトナノシートの代わりに比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライトを用いた以外は、実施例22と同様に触媒層を作製した。実施例22と同様な反応条件及び分析条件でPPTO反応をさせた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーのよって分析した。 原料であるプロパンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図32に示す。 [0152] (考察) 図32の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とも、殆ど反応していないことが分かった。そして、反応温度400℃では、細孔内酸点と外表面酸点ともに、パラフィンは殆ど反応しないことが分かった。 [0153] (実施例23) (PLTO(Propylene to Olefins )反応) 本実施例のPLTO反応試験は、図33に示す大気圧固定床型反応器を用いて行った。該大気圧固定床型反応器がCHA型ゼオライトナノシートを含む触媒層を備えている。ここで、PLTO反応とは、プロピレン-オレフィン類(Propylene to Olefins)の反応を意味する。 [0154] <PLTO反応用触媒の作製> 実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシートを含む粉末を触媒として用いた。内径4mmの石英管にガラスビーズと該触媒とを均一に詰め、これをガラスウールで固定することにより、触媒層を作製した。 [0155] <PLTO反応> まずは、まずは、ヘリウムとプロピレンとを流路中で混合した。混合されたヘリウムとプロピレンとの混合気体を、上記触媒層を備える反応器へ通し、以下の反応条件で本発明ゼオライトシート又はバルク試料のゼオライトと反応させた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 [0156] <反応条件> 反応温度:400℃ 触媒量:0.05g ヘリウム流量:6.4ml/min プロピレン流量:3.0ml/min [0157] <生成物の分析> 生成物のガスクロマトグラフィー分析には、Shimadzu GC-2025(FID)を使用した。キャリアガスとしては、ヘリウムを使用した。 原料であるプロピレンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図34に示す。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表4に示す。 [0158] (比較例4) CHA型ゼオライトナノシートの代わりに比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライトを用いた以外は、実施例23と同様に触媒層を作製した。実施例23と同様な反応条件及び分析条件でPLTO反応をさせた。その後、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。 原料であるプロピレンの転化率にかかる経時変化を調べた。その結果を図34に示す。 経過時間10分後におけるC 1~C 4のモル分率を調べた。表4に示す。 [0159] (考察) 図34の結果から、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合では、両者の間での触媒寿命には殆ど変化がないことが分かった。 また、表4の結果から、生成物を確認したところ、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とを比較すると、前者では、オレフィンが多く生成していた。一方で、後者では、前者よりもパラフィンの存在割合が多くなっていた。 また、プロピレンが転換して生成した全生成物におけるC 1~C 4の割合は、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合には24%であり、一方、バルク試料のゼオライトを用いた場合には17%であった。 つまり、本発明ゼオライトナノシートを用いた場合と、バルク試料のゼオライトを用いた場合とでは、両者の間での反応性に略差がないことが分かった。 [0160] [表4](省略) [0161] (実施例24) 「ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果」 実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシートを低密度ポリエチレン(LDPE)に添加することによる、LDPE分解温度の低下効果を、以下の手順で確認した。 〔1〕LDPE0.008gと実施例9で得られたCHA型ゼオライトナノシート0.02gとを乳鉢で物理混合した。 〔2〕上記で得られた混合物を、110℃程度に加熱したシャーレ上に置いた。 〔3〕加熱によって柔らかくなった上記混合物を押しつぶした。 〔4〕平たく伸びた上記混合物を半分にたたんだ。 〔5〕上記の手順3及び手順4を10回程度繰り返した(パイこね変換)。 〔6〕上記で得られた混合物を冷やすことにより、評価用サンプルを得た。 〔7〕上記で得られた評価用サンプルを2mg程度用いて、熱重量-示差熱分析(TG/DTA)同時測定装置であるDTG-60(株式会社島津製作所製)を用いてTG、DTA、Conversion、DTGを測定した。 測定プログラム:室温から10℃/分の昇温速度で120℃まで加熱し、次いで120℃において6時間維持した後、10℃/分の昇温速度で800℃まで加熱した。 TG、DTA、Conversion、DTGの結果をそれぞれ図35~38に示す(いずれも、細線で示す。「CHA-NSs」:CHA型ゼオライトナノシートを低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する本実施例)。 [0162] (比較例5) 実施例24のCHA型ゼオライトナノシートの代わりに、比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライト(CHA型)を用いた以外は、実施例24と同様な方法により、TG、DTA、Conversion、DTGを測定し、その結果をそれぞれ図35~38に示す(いずれも、点線で示す。「Bulk」:バルク試料のゼオライト(CHA型)を低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する本比較例)。 [0163] (比較例6) 実施例24のCHA型ゼオライトナノシートを添加せず、LPDEのみを用いた以外は、実施例24と同様な方法により、TG、DTA、Conversion、DTGを測定し、その結果をそれぞれ図35~38に示す(いずれも、太線で示す。「LDPE」:ゼオライトを添加せず、低密度ポリエチレン(LDPE)のみの本比較例)。 [0164] (実施例25) 「ゼオライトナノシートの添加によるポリエチレン分解温度の低下効果」 実施例15で得られたCHA型ゼオライトナノシートを低密度ポリエチレン(LDPE)に添加による、LDPE分解温度の低下効果を、以下の手順で確認した。 1.LDPE0.008gと実施例15で得られたCHA型ゼオライトナノシート0.02gとを15質量%の割合で混ぜた。 2.上記で得られた混合物に、トルエンを300μml加えた。 3.上記で得られた混合物を加熱することにより、LDPEをトルエンに溶かした。 4.上記で得られた混合液に対して超音波処理を行った。 5.上記で得られた超音波処理後の混合液から、トルエンを蒸発させることにより、評価用サンプルを得た。 6.上記で得られた評価用サンプルを2mg程度用いて、TG/DTA同時測定装置であるDTG-60(株式会社島津製作所製)を用いてTG、DTA、Conversion、DTGを測定した。 測定プログラム:室温から5℃/分の昇温速度で799℃まで加熱した。 TG、DTA、Conversion、DTGの結果をそれぞれ図35~38に示す(いずれも、細線で示す。「CHA-NSs」:CHA型ゼオライトナノシートを低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する本実施例)。 [0165] (比較例7) 実施例25のCHA型ゼオライトナノシートの代わりに、比較合成例1で得られたバルク試料のゼオライト(CHA型)を用いた以外は、実施例25と同様な方法により、TG、DTA、Conversion、DTGを測定し、その結果をそれぞれ図39~42に示す(いずれも、点線で示す。「Bulk」:バルク試料のゼオライト(CHA型)を低密度ポリエチレン(LDPE)に添加する本比較例)。 [0166] (比較例8) 実施例25のCHA型ゼオライトナノシートを添加せず、LPDEのみを用いた以外は、実施例25と同様な方法により、TG、DTA、Conversion、DTGを測定し、その結果をそれぞれ図39~42に示す(いずれも、太線で示す。「LDPE」:ゼオライトを添加せず、低密度ポリエチレン(LDPE)のみの本比較例)。 [0167] (考察) 図35から、90%到達時点の温度について、実施例24、比較例5、比較例6において、それぞれ426.7 oC、428.9 oC、440.7 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例24において、もっとも低い温度を示した。 図36から、ピーク位置について、実施例24、比較例5、比較例6において、それぞれ455.9 oC、466.1 oC、471.9 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例24において、もっとも低い温度を示した。 図37から、10%到達時点の温度について、実施例24、比較例5、比較例6において、それぞれ426.7 oC、428.9 oC、440.7 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例24において、もっとも低い温度を示した。 図38から、ピーク位置について、実施例24、比較例5、比較例6において、それぞれ455.9 oC、468.1 oC、473.9 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例24において、もっとも低い温度を示した。 [0168] 図39から、90%到達時点の温度について、実施例25、比較例7、比較例8において、それぞれ398.9 oC、402.4 oC、442.7 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例25において、もっとも低い温度を示した。 図40から、ピーク位置について、実施例25、比較例7、比較例8において、それぞれ455.9 oC、466.1 oC、471.9 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例25において、もっとも低い温度を示した。 図41から、10%到達時点の温度について、実施例25、比較例7、比較例8において、それぞれ396.1 oC、399.4 oC、442.7 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例25において、もっとも低い温度を示した。 図42から、ピーク位置について、実施例25、比較例7、比較例8において、それぞれ431.2 oC、446.7 oC、473.3 oCであった。CHA型ゼオライトナノシートを添加したLDPEを用いた実施例25において、もっとも低い温度を示した。 上記の結果から、CHA型ゼオライトナノシートの添加により、LDPEの熱分解温度が低下したことを確認した。 |
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