TOP > 外国特許検索 > ANTI-ALLERGIC AGENT COMPRISING RXR AGONIST AS ACTIVE INGREDIENT
本発明は、核内受容体であるレチノイドX受容体(retinoid X receptor;RXR)作動性物質の新規用途に関する。より詳しくは、RXR作動性物質を有効成分とする抗アレルギー剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2008-262580号優先権を請求する。
アレルギー性疾患とは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることにより生じる疾患をいう。アレルギー性疾患は、その発生機序によりI型アレルギーからV型アレルギーに分類される。また、アレルギー反応が最大に達する時間により、即時型アレルギー又は遅延型アレルギーに分類される。アレルギー反応が最大に達する時間は、抗体が関係する反応では30分から数時間であり、この場合は即時型アレルギーに分類され、Tリンパ球による反応では、24~48時間を要し、この場合は遅延型アレルギーに分類される。代表的なアレルギー性疾患はI型に多く見られ、例えば花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、植物アレルギー、蕁麻疹、PIE症候群、アナフィラキシーショック等が挙げられる。
アレルギー性疾患治療薬として、現時点ではステロイド剤以外の抗アレルギー剤は、その薬効が十分でないことから、慢性及び重症化したアレルギー症状の治療には使用することができない。一方、最も強力な抗アレルギー剤であるステロイド剤には、その使用において、感染症の誘発・憎悪、消化性潰瘍、中心性肥満(ムーンフェイス)、糖尿病の誘発・憎悪、うつ状態、骨粗鬆症と骨折、副腎不全、異常脂肪沈着、多毛、皮下出血、皮膚萎縮、白内障、緑内障、浮腫、高血圧、うっ血性心不全及び不整脈など、避けることのできない多くの副作用があることから、その使用には限界がある。現在、アレルギー性疾患の治療において求められることは、ステロイドと同等の薬効を有し、副作用が軽減された薬物の開発である。
核内に存在する化学物質の結合に応じ、遺伝子の転写を制御する核内受容体は、ヒトにおいて48種類知られている。そのうち、脂肪酸により転写制御されるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)を標的とした化合物が、抗アレルギー作用を有することが知られている(非特許文献1-3)。PPARは単独では機能せず、核内受容体の一つであるレチノイドX受容体(以降、「RXR」と略す。)とPPAR-RXR二量体を形成し、その作用を発揮する。
RXRは、9-cisレチノイン酸やドコサヘキサンエン酸(DHA)を内因性リガンドにすると考えられている、リガンド依存的な転写因子である核内受容体の一つである。その機能は、ホモ二量体として、又は種々の核内受容体とヘテロ二量体を形成し発揮される(非特許文献4)。RXRのヘテロ二量体のパートナーとしては、細胞分化や増殖に関与するレチノイン酸受容体(RAR)、同じく細胞分化や増殖又は骨代謝に関与するビタミンD受容体(VDR)、脂質代謝に関与するPPAR、甲状腺ホルモン受容体のチロイドホルモン受容体(TR)のほか、薬物代謝酵素で知られるCYP3A4発現に関わるPXRなどがある。従って、RXRの機能とこれら核内受容体の活性発現は密接な関係にあり、RXR機能を制御する作動性若しくは拮抗性物質は、これらのヘテロ二量体の機能を制御することが可能になる(非特許文献5)。
例えば、RAR作動性物質であるAm80(一般名:タミバロテン:再発又は難治性の急性前骨髄球性白血病の治療薬:4-[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthyl)carbamoyl] benzoic acid:非特許文献6)は、3.3×10-10 M濃度で単独に存在する場合はほとんど細胞分化誘導作用を示さないのに対し、Am80とRXR作動性物質を併用すると、RXR作動性物質はAm80のシナジストとして機能し、有意な分化誘導作用が見られるようになる(非特許文献7)。
RXR作動性物質は、RXRを含有する核内受容体へテロ二量体を介した作用に限ることはない。例えば、乳がん治療に用いられるタモキシフェンは、RXRとヘテロ二量体を形成しないエストロゲン受容体(ER)が分子標的であるものの、RXR作動性物質がエストロゲン抵抗性乳がんに対して、その抵抗性を改善すると報告されている(非特許文献8)。さらに、RXR作動性物質単独若しくはタモキシフェンとの併用による発がん予防効果も報告されている(非特許文献9)。またタキソール抵抗性がんにおける、RXR作動性物質の有効性も報告されている(非特許文献10)。加えて、RXR作動性物質の血管新生抑制作用も報告されている(非特許文献11)。また、RXR作動性物質は単独投与においても興味深い生理活性が得られている。たとえばII型糖尿病モデルマウスにRXR作動性物質を投与すると、インスリン抵抗性が改善されて血糖値低下が見られることが報告されている(非特許文献12)。
RXR作動性物質及び拮抗性物質は、総じてレキシノイド化合物といい、新規レキシノイド化合物について、近年開示されている(特許文献1)が、抗アレルギー作用の報告はない。
【特許文献1】国際公開WO2008/105386号パンフレット
【非特許文献1】J Int Med Res., 36(4), 830-6, 2008 【非特許文献2】Chest., 134(1), 152-7, 2008 【非特許文献3】Otolaryngol Head Neck Surg., 139(1), 124-30, 2008 【非特許文献4】Science, 290, pp.2140-2144, 2000 【非特許文献5】Cell, 83, pp.841-850, 1995 【非特許文献6】アムノレイク錠2mg<タミバロテン製剤>日本新薬販売添付文書(2005年6月作成) 【非特許文献7】Journal of Medicinal Chemistry, 37, pp.1508-1517, 1994 【非特許文献8】Cancer Research, 58, pp.479-484, 1998 【非特許文献9】Cancer Letters, 201, pp.17-24, 2003 【非特許文献10】Clinical Cancer Research, 10, pp8656-8664, 2004 【非特許文献11】British Journal of Cancer, 94, pp.654-660, 2006 【非特許文献12】Nature, 386, pp.407-410, 1997
本発明は、アレルギー性疾患に対して、効果的に作用し、かつ副作用が軽減化された新規抗アレルギー剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、RXR作動性物質が抗アレルギー効果を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下よりなる。1.RXR作動性物質を有効成分とする新規抗アレルギー剤。2.RXR作動性物質が、下記の一般式Iで表される化合物である前項1に記載の新規抗アレルギー剤:【化学式1】 (式中、R1は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R2は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。Wは、NR3又はCR3であり、R3は水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X1は、CH若しくはNから選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。X2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。Y2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。R4は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びアミノ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)3.RXR作動性物質が、下記の一般式IIで表される化合物である前項1に記載の新規抗アレルギー剤: 【化学式2】 (式中、R5は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R6は、分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基からなる群から選択される。R3は、水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X1は、CH若しくはNから選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。 Y2は、CH、CR7、若しくはNから選択される。R7は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)4.RXR作動性物質が、下記の一般式IIIで表される化合物である前項1に記載の新規抗アレルギー剤: 【化学式3】(式中、R5は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R6は、分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基からなる群から選択される。R3は、水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。R4は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びアミノ基から選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。 Y2は、CH、CR7、若しくはNから選択される。R7は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)5.RXR作動性物質が、一般式II又はIIIで表される化合物において、R5及びR6が、ともにイソプロピル基であり、X1がCH若しくはNであり、X2がCH、CR4、若しくはNであり、Y1及びY2が、ともにNであり、Zがカルボン酸エステル、カルボン酸若しくはその塩であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル、イソプロピルから選択されることを特徴とする前項3又は4記載の新規抗アレルギー剤。6.RXR作動性物質が、一般式II又はIIIで表される化合物において、R5がイソプロピル基若しくはイソブチル基であり、X1がCH若しくはNであり、X2がCH、CR4、若しくはNであり、R6がイソプロピル基であり、X1がCH若しくはNであり、Y1がCH若しくはNであり、Y2がCH若しくはNであり、Zがカルボン酸エステル、カルボン酸若しくはその塩でありかつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル基であることを特徴とする前項3又は4記載の新規抗アレルギー剤。7.RXR作動性物質が、一般式II又はIIIで表される化合物において、R5がイソプロピル基若しくはイソブチル基であり、R6がイソプロピル基であり、X1がCHであり、X2がCH、CR4、若しくはNであり、Y1がNであり、Y2がCHであり、Zがカルボン酸であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3がエチル基であることを特徴とする前項3又は4記載の新規抗アレルギー剤。8.RXR作動性物質が、一般式II又はIIIで表される化合物において、R5がイソプロピル基であり、R6がイソプロピル基であり、X1はCHであり、X2がCH、CR4、若しくはNであり、Y1がNであり、Y2がCHであり、Zがヒドロキサム酸若しくはアクリルヒドロキサム酸であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル基であることを特徴とする前項3又は4記載の新規抗アレルギー剤。9.RXR作動性物質が、以下の式IVで表される化合物である前項1に記載の新規抗アレルギー剤。【化学式4】
本発明のRXR作動性物質を有効成分とする抗アレルギー剤は、アレルギー性疾患の治療において効果が認められるステロイド製剤と同程度の薬効が期待され、ステロイドに比べて有意に副作用が軽減化された優れた薬剤である。本発明の抗アレルギー剤に使用する有効成分としてのRXR作動性物質は、ステロイドが有するグルココルチコイド受容体活性化作用とは異なる作用機作で、アレルギー性疾患の症状を抑制する。ステロイド剤は、核内受容体の一つであるグルココルチコイド受容体(GR)を介して様々な副作用を示すのに対し、RXR作動性物質はGRに作用しないことから、これらの副作用の軽減が期待される。
特にステロイド剤は、アレルギー性疾患の発症に関与するTh2型リンパ球のみならず細菌及びウイルスによる感染の防御に重要なTh1型リンパ球も抑制することから、ステロイド剤の使用における重要な問題点として感染症の誘発・憎悪がある。一方、RXR受容体関連化合物(レキシノイド化合物)は、Th2型リンパ球には作用するが、Th1型リンパ球には作用しないという報告がある(J Immunol., 176(9), pp.5161-5166, 2006)ことから、感染症の誘発・憎悪といった副作用は発現しないと考えられる。
また、α2受容体作動薬とアドレナリン若しくはその塩の併用により、アドレナリン若しくはその塩、又はα2受容体作動薬を単剤として局所麻酔剤に添加する場合よりも、より効果的に局所麻酔効果が得られるので、アドレナリン若しくはその塩の使用量を低減化させることができ、その結果アドレナリン若しくはその塩による副作用を軽減化させることもできる。
【図1】マウスアレルギー性鼻炎モデルにおける抗原誘発くしゃみ反応に対するRXR作動性物質(NEt-3IP)の効果を示す図である。(実施例1) 【図2】マウスアレルギー性鼻炎モデルにおける抗原誘発鼻掻き行動に対するRXR作動性物質(NEt-3IP)の効果を示す図である。(実施例2) 【図3】マウスアレルギー性鼻炎モデルにおける抗原誘発くしゃみ反応及び鼻掻き行動に対するRXR作動性物質(NEt-3IP)の連続投与による効果を示す図である。(実施例3) 【図4】マウスにおけるヒスタミン誘発背部皮膚引っ掻き行動に対するRXR作動性物質(NEt-3IP)の効果を示す図である。(実施例4) 【図5】マウスにおけるサブスタンスP誘発背部皮膚引っ掻き行動に対するRXR作動性物質(NEt-3IP)の効果を示す図である。(実施例5) 【図6】マウスアレルギー性鼻炎モデルへのRXR作動性物質(NEt-3IP)反復投与プロトコールを示す図である。(実施例6) 【図7】マウスアレルギー性鼻炎モデルへのRXR作動性物質(NEt-3IP)反復投与による抗原誘発くしゃみ反応(A)及び抗原誘発鼻掻き行動(B)に対する効果を示す図である。(実施例6) 【図8】マウスアレルギー性鼻炎モデルにおける抗原誘発くしゃみ反応に対するRXR作動性物質(NEt-3IB)の効果を示す図である。(実施例7) 【図9】マウスアレルギー性鼻炎モデルにおける抗原誘発鼻掻き行動に対するRXR作動性物質(NEt-3IB)の効果を示す図である。(実施例8) 【図10】マウスアレルギー性鼻炎モデルへのRXR作動性物質(NEt-3IP)の反復投与プロトコールを示す図である。(実施例9) 【図11】マウスアレルギー性鼻炎モデルへのRXR作動性物質(NEt-3IP)の反復投与により5日目及び10日目の効果を示す図である。(実施例9) 【図12】NEt-3IPの鼻症状抑制効果に対する非選択的PPAR拮抗剤(BADGE)の影響を示す図である。(実施例10) 【図13】NEt-3IPの鼻症状抑制効果に対するPPARα選択的拮抗剤(GW6471)又はPPARγ選択的拮抗剤(GW9662)の影響を示す図である。(実施例10) 【図14】NEt-3IPの鼻症状抑制効果に対するLXR拮抗剤(AA-23)の影響を示す図である。(実施例11)
本発明のRXR作動性物質を有効成分とする新規抗アレルギー剤に関し、RXR作動性物質とは、そのような性質を有する化合物であればよく、特に限定されない。RXR作動性物質とは、自体公知の化合物であってもよく、例えば以下の一般式Iで表される化合物が挙げられ、好適には以下の一般式II又はIIIで表される化合物が挙げられる。
一般式I: 【化学式1】 (式中、R1は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R2は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。Wは、NR3又はCR3であり、R3は水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X1は、CH若しくはNから選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。X2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。Y2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。R4は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びアミノ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)
一般式II: 【化学式2】(式中、R5は直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R6は分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基からなる群から選択される。R3は水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X1は、CH若しくはNから選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。Y2は、CH、CR7、若しくはNから選択される。R7は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)
一般式III: 【化学式3】(式中、R5は直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R6は分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基からなる群から選択される。R3は水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。X2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。R4は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びアミノ基から選択される。Y1は、CH若しくはNから選択される。 Y2は、CH、CR7、若しくはNから選択される。R7は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)
一般式I~IIIにおいて、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、各々シクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基であっても良い。ここで用いられるシクロアルキルは、飽和環式炭素鎖を意味し、シクロアルケニル及びシクロアルキニルは、それぞれ、少なくとも1つの二重又は三重結合を含む環式炭素鎖を意味する。シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基及びアリール基は単環、多環又は縮合環式であっても良い。
本発明の好ましい化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。 一般式IIにおいて、R5及びR6がともにイソプロピル基であり、X1はCH若しくはNであり、YがともにNであり、Zがカルボン酸エステル、カルボン酸若しくはその塩であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル、イソプロピルから選択される化合物が挙げられる。カルボン酸エステルの例としては、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルが挙げられる。
本発明の好ましい他の化合物としては、さらに以下の化合物が挙げられる。 一般式IIにおいて、R5がイソプロピル基若しくはイソブチル基であり、R6がイソプロピル基であり、X1はCH若しくはNであり、Y1はCH若しくはNであり、Y2がNであり、Zがカルボン酸エステル、カルボン酸若しくはその塩であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル基である化合物が挙げられる。カルボン酸エステルの例としては、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルが挙げられる。
本発明の好ましい他の化合物としては、以下の化合物が挙げられる。 一般式IIIにおいて、R5及びR6がともにイソプロピル基であり、X2はCHであり、Y1はNであり、Y2はCHであり、Zがカルボン酸エステル、カルボン酸若しくはその塩であり、かつY1及びY2に対しメタ位に位置し、R3はエチル、イソプロピルから選択される化合物が挙げられる。カルボン酸エステルの例としては、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルが挙げられる。
さらに具体的には表1に示す化合物が挙げられる。
【表1】
本発明において一般式I~IIIのいずれかで表される化合物は、さらに、薬学的に許容される塩であってもよい。また、一般式I~IIIのいずれかで表される化合物又はその塩において、異性体(例えば光学異性体、幾何異性体及び互換異性体)などが存在する場合は、本発明はそれらの異性体を包含し、また溶媒和物、水和物及び種々の形状の結晶を包含するものである。
本発明において、薬学的に許容される塩とは、薬理学的及び製剤学的に許容される一般的な塩が挙げられる。そのような塩として、具体的には以下が例示される。 塩基性付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩;ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;たとえばN,N-ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩;リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。
本発明におけるRXR作動性物質の製造方法は、例えば特許文献1(国際公開WO2008/105386号パンフレット)に記載の方法を参照することができる。これらの製造方法において用いられた出発原料及び試薬、並びに反応条件などを適宜修飾ないし改変することにより、本発明の範囲に包含される化合物はいずれも製造可能である。また、上記に具体的に説明された方法に限定されるものではない。
本発明において、抗アレルギー剤とは、いわゆるアレルギー性疾患に対して効果を有する医薬品等の薬剤をいい、アレルギー性疾患に対して予防的又は治療的に使用することができ、好適には治療的に使用することができる。本明細書において、アレルギー性疾患とは、いわゆるアレルギー性疾患であればよく、特に限定されないが、例えばI型アレルギー、II型アレルギー又はIV型アレルギーなどが挙げられる。具体的には、例えば花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、植物アレルギー、蕁麻疹、PIE症候群、アナフィラキシーショック等が挙げられる。
本発明のRXR作動性物質を有効成分とする抗アレルギー剤を予防的若しくは治療的に使用する場合は、経口又は非経口により有効量投与することができる。その投与量は、投与経路や投与方法により適宜決定することができる。例えば、経口投与の場合には有効成分を成人一日あたり0.01~1000mgの範囲で用いることができる。
経口投与に適する剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する剤形としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、及び貼付剤等を挙げることができる。
経口投与のためには、固型製剤又は液体製剤とすることができる。製剤としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁液あるいはカプセル剤などが挙げられる。錠剤を調製する際には常法に従ってラクトース、スターチ、炭酸カルシウム、結晶性セルロース、あるいはケイ酸などの賦形剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロール、リン酸カルシウム、あるいはポリビニルピロリドン等の結合剤;アルギン酸ナトリウム、重ソウ、ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸モノグリセライド等の崩壊剤;グリセリン等の潤滑剤;カオリン、コロイド状シリカ等の吸収剤;タルク、粒状ホウ酸などの潤滑剤などの添加剤を用いることができる。
丸剤、散剤又は顆粒剤についても上記と同様に添加剤を用いて常法に従って製剤化される。液剤及び懸濁剤などの液体製剤も常法に従って製剤化される。担体としては例えばトリカプリリン、トリアセチン、ヨード化ケシ油脂肪酸エステル等のグリセロールエステル類;水;エタノール等のアルコール類;流動パラフィン、ココナッツ油、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油等の油性基剤が用いられる。上記した散剤、顆粒剤、液体製剤等はゼラチン等のカプセルで包むこともできる。
本明細書における薬学的に許容しうる担体には、その他通常必要により用いられる補助剤、芳香剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、粘着剤や防腐剤等を適宜選択して含むことができる。
経皮投与用薬剤の剤形としては、軟膏、クリーム、ローション、液剤等が挙げられる。軟膏の基剤としては、例えばヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油などの脂肪油;ラノリン;白色、黄色若しくは親水ワセリン;ロウ;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノールなどの高級アルコール類;グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,3-ブタンジオールなどのグリコール類などが挙げられる。また可溶化剤としてエタノール、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコールなどを用いてもよい。また必要に応じて、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ソルビン酸、ホウ酸などの保存剤;ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤などを用いてもよい。
また、経皮吸収促進を図るため、ジイソプロピルアジペート、ジエチルセバケート、エチルカプロエート、エチルラウレートなどの吸収促進剤を加えてもよい。また、安定化を図るため、本発明化合物はα,β又はγーシクロデキストリンあるいはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成せしめて使用することもできる。
軟膏は通常の方法によって製造することができる。クリーム剤としては水中油型クリーム剤の形態が本発明化合物の安定化を図るうえで好ましい。またその基剤としては、前述した如き、脂肪油、高級アルコール類、グリコール類などが用いられ、またジエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウムなどの乳化剤が用いられる。更に必要に応じて前述した如き保存剤、酸化防止剤などを添加してもよい。また軟膏剤の場合と同様に、シクロデキストリン、メチル化シクトデキストリンの包接化合物として用いることもできる。クリーム剤は通常の方法によって製造することができる。
ローション剤としては、懸濁型、乳剤型、溶液型ローション剤が挙げられる。懸濁型ローション剤は、アルギン酸ナトリウム、トラガント、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの懸濁化剤を用い、必要に応じて酸化防止剤、保存剤などを加えて得られる。乳化型ローション剤は、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウムなどの乳化剤を用い、通常の方法で得られる。溶液型ローション剤は、アルコール型ローション剤が好ましくエタノールなどのアルコールを用いて通常の方法で得られる。液剤としては、エタノールなどのアルコール溶液に溶解し、必要に応じて酸化防止剤、保存剤などを添加したものが挙げられる。
これらの剤形以外でも、パスタ剤、パップ剤、エアゾル剤等の剤形が挙げられる。かかる製剤は通常の方法によって製造することができる。
経鼻による投与の製剤は、液状又は粉末状の組成物として与えられる。液状剤の基剤としては水、食塩水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が用いられ、さらに界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、保存剤、粘性付与剤を含んでいてもよい。粉末状剤の基剤としては、水吸収性のものが好ましく、例えば、水易溶性のポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸アンモニウムなどのポリアクリル酸塩類、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース低級アルキルエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アミロース、プルランなどが、また水難溶性の結晶セルロース、α-セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース類、ヒドロキシプロピン澱粉、カルボキシメチル澱粉、架橋澱粉、アミロース、アミロペクチン、ペクチンなどの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、カゼインナトリウムなどのタンパク類、アラビアガム、トラガントガム、グルコマンナンなどのガム類、ポリビニルポリピロリドン、架橋ポリアクリル酸及びその塩、架橋ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートなどの架橋ビニル重合体類などが挙げられ、これらを混合して用いてもよい。さらに粉末状剤には、酸化防止剤、着色剤、保存剤、防腐剤、矯腐剤等を添加してもよい。かかる液状剤、粉末状剤は例えばスプレー器具等を用いて投与することができる。
注射による投与の製剤は、無菌の水性あるいは非水溶性液剤、懸濁剤、又は乳化剤として与えられる。非水性の溶液又は懸濁剤は、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、オレイン酸エチル、ヨード化ケシ油脂肪酸エステルのような注射しうる有機エステル類を薬学的に許容しうる担体とする。このような製剤はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤のような補助剤を含むことができ、徐放性にしてもよい。これらの溶液剤、懸濁剤及び乳化剤は、例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、あるいは照射等の処理を適宜行うことによって無菌化できる。また無菌の固形製剤を製造し、使用直前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することができる。
また本発明化合物は、α,β、又はγ-シクロデキストリンあるいはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成せしめて使用することもできる。またリポ化の形態にした注射剤でもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されることはない。
(実施例1)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IPの効果(1) アレルギー性鼻炎マウスモデルは、BALB/c系雄性マウスを用い、はじめに全身感作として抗原である卵白アルブミン1 μgとアジュバントである水酸化アルミニウムゲル100μgを生理食塩液0.2 mlに懸濁し、感作0,5,14及び21日目に腹腔内投与した。さらに、初回感作28日目以降、局所感作として1週間に3回、卵白アルブミン生理食塩溶液 (100 mg/ml) を両側鼻腔内にマイクロピペットで 2 μlずつ点鼻投与した。初回感作56日目以降、薬効評価に使用した。実験開始前に、マウスを観察用ケージ (幅31 cm、奥行18 cm、高さ25 cm) に入れて10分間環境に馴化させた。卵白アルブミン生理食塩溶液 (100 mg/ml)を両側鼻腔内にマイクロピペットで 2 μlずつ点鼻投与した後、観察用ケージに戻しアレルギー性鼻炎症状を測定した。アレルギー性鼻炎症状は、抗原の点鼻直後から誘発されるくしゃみ反応及び鼻掻き行動の回数を30分間測定することにより評価した。
上記マウスモデルに、RXR作動性物質を抗原誘発の3時間前に経口投与した。RXR作動性物質として、以下の式IVで示す化合物(NEt-3IP) 20 mgを10 mlの生理食塩液に溶解したNEt-3IP溶液を調製し、10 mg/kgの投与の場合には体重 20 gあたり0.1 mlを投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。
【化学式4】
その結果、図1に示すように、NEt-3IPの用量依存的に、くしゃみ回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つであるくしゃみに対して効果があることが示された。
(実施例2)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IPの効果(2) 実施例1と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発による鼻掻き行動反応を観察した。
上記マウスモデルに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液を抗原誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図2に示すように、NEt-3IPの用量依存的に、鼻掻き行動回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つである鼻掻痒感に対して効果があることが示された。
(実施例3)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IPの効果(3) 実施例1と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発によるくしゃみ反応及び鼻掻き行動を観察した。
上記マウスモデルに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液を調製し、低用量(3 mg/kg)を1日1回5日間連続して、抗原誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図3に示すように、NEt-3IPの低用量(3 mg/kg)に、くしゃみ反応及び鼻掻き行動回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質を連続投与することにより、アレルギー症状であるくしゃみ及び鼻掻痒感に対して、対照群と比較してより強い効果があることが示された。
(実施例4)マウスにおけるヒスタミン誘発背部皮膚引っ掻き行動に対するNEt-3IPの効果 実験動物として、ICR 系雄性マウスを用いた。最初に、マウスの後肢に小型強力磁石(横1mm、縦3mm)を埋め込む手術を行い、この手術から最低1日以上経過した後に実験を開始した。掻痒行動は、毛刈りしたマウスの吻側背部にヒスタミン (100 nmol) 生理食塩溶液を 0.05ml/site の容量で30G の注射針を用いて皮内投与することにより惹起した。反応惹起後、マウスを観察用ケージ (幅31 cm、奥行18 cm、高さ25 cm) に入れ、60分間の後肢による掻痒行動回数を自動掻痒行動測定装置(MicroAct:ニューロサイエンス)を用いて自動的に測定した。
上記マウスに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液をヒスタミン誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図4に示すように、NEt-3IPの用量依存的に、ヒスタミン誘発背部皮膚引っ掻き行動の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状における痒みの原因の一つであるヒスタミンによる皮膚掻痒感に対して効果があることが示された。
(実施例5)マウスにおけるサブスタンスP誘発背部皮膚引っ掻き行動に対するNEt-3IPの効果 実験動物として、ICR 系雄性マウスを用いた。最初に、マウスの後肢に小型強力磁石(横1mm、縦3mm)を埋め込む手術を行い、この手術から最低1日以上経過した後に実験を開始した。掻痒行動は、毛刈りしたマウスの吻側背部にサブスタンスP (100 nmol) 生理食塩溶液を 0.05ml/site の容量で30G の注射針を用いて皮内投与することにより惹起した。反応惹起後、マウスを観察用ケージ (幅31 cm、奥行18 cm、高さ25 cm) に入れ、60分間の後肢による掻痒行動回数を自動掻痒行動測定装置(MicroAct:ニューロサイエンス)を用いて自動的に測定した。
上記マウスに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液をサブスタンスP誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図5に示すように、NEt-3IPの用量依存的に、サブスタンスP誘発背部皮膚引っ掻き行動の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状における痒みの原因の一つであるサブスタンスPによる皮膚掻痒感に対して効果があることが示された。
(実施例6)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IPの効果(4) アレルギー性鼻炎マウスモデルは、BALB/c系雄性マウスを用い、はじめに全身感作として抗原である卵白アルブミン1 μgとアジュバントである水酸化アルミニウムゲル100μgを生理食塩液0.2 mlに懸濁し、感作0,5,14及び21日目に腹腔内投与した。さらに、初回感作28日目以降、局所感作として1週間に3回、卵白アルブミン生理食塩溶液 (100 mg/ml) を両側鼻腔内にマイクロピペットで 2 μlずつ点鼻投与した。実験開始前に、マウスを観察用ケージ (幅31 cm、奥行18 cm、高さ25 cm) に入れて10分間環境に馴化させた。卵白アルブミン生理食塩溶液を両側鼻腔内に点鼻投与した後、観察用ケージに戻しアレルギー性鼻炎症状を測定した。アレルギー性鼻炎症状は、抗原の点鼻直後から誘発されるくしゃみ反応及び鼻掻き行動の回数を30分間測定することにより評価した。
上記マウスモデルに、初回感作後28日以降63日目まで、1週間に3回、RXR作動性物質を抗原誘発の3時間前に経口投与した。RXR作動性物質として、式IVで示す化合物(NEt-3IP) 20 mgを10 mlの生理食塩液に溶解したNEt-3IP溶液を調製し、0.1 mg/kg、1 mg/kg及び10 mg/kgとなるように投与した。10 mg/kg投与の場合には体重 20 gあたり0.1 mlを投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。反復投与のプロトコールを図6に示した。
その結果、図7Aに示すように、NEt-3IPの用量依存的に、くしゃみ回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つであるくしゃみに対して効果があることが示された。また、図7Bに示すように、NEt-3IPの用量依存的に、鼻掻き行動回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つである鼻掻痒感に対して効果があることが示された。
(実施例7)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IBの効果(1) アレルギー性鼻炎マウスモデルは、BALB/c系雄性マウスを用い、はじめに全身感作として抗原である卵白アルブミン1 μgとアジュバントである水酸化アルミニウムゲル100μgを生理食塩液0.2 mlに懸濁し、感作0,5,14及び21日目に腹腔内投与した。さらに、初回感作28日目以降、局所感作として1週間に3回、卵白アルブミン生理食塩溶液 (100 mg/ml) を両側鼻腔内にマイクロピペットで 2 μlずつ点鼻投与した。初回感作56日目以降、薬効評価に使用した。実験開始前に、マウスを観察用ケージ (幅31 cm、奥行18 cm、高さ25 cm) に入れて10分間環境に馴化させた。卵白アルブミン生理食塩溶液 (100 mg/ml)を両側鼻腔内にマイクロピペットで 2 μlずつ点鼻投与した後、観察用ケージに戻しアレルギー性鼻炎症状を測定した。アレルギー性鼻炎症状は、抗原の点鼻直後から誘発されるくしゃみ反応及び鼻掻き行動の回数を30分間測定することにより評価した。
上記マウスモデルに、RXR作動性物質を抗原誘発の3時間前に経口投与した。RXR作動性物質として、表1に示す化合物(NEt-3IB) 20 mgを10 mlの生理食塩液に溶解し、30 mg/kgを投与した。対照として、NEt-3IB溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図8に示すように、NEt-3IBの投与によりくしゃみ回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つであるくしゃみに対して効果があることが示された。
(実施例8)アレルギー性鼻炎マウスモデルにおけるNEt-3IBの効果(2) 実施例7と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発による鼻掻き行動反応を観察した。
上記マウスモデルに、実施例7と同手法によりNEt-3IB溶液を抗原誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IB溶液の代わりに溶媒を投与した。
その結果、図9に示すように、NEt-3IBの投与により鼻掻き行動回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質は、アレルギー症状の一つである鼻掻痒感に対して効果があることが示された。
(実施例9)NEt-3IPの反復投与の効果と作用の持続について 実施例1と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発によるくしゃみ反応及び鼻掻き行動を観察した。
上記マウスモデルに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液を調製し、低用量(3 mg/kg)を1日1回5日間連続して、抗原誘発の3時間前に経口投与した。対照として、NEt-3IP溶液の代わりに溶媒を投与した。投与プロトコールを、図10に示した。
その結果、図11A,Bに示すように、NEt-3IPの低用量(3 mg/kg)の場合に、5日目ではくしゃみ反応及び鼻掻き行動回数の軽減化が観察され、RXR作動性物質を連続投与することにより、アレルギー症状であるくしゃみ及び鼻掻痒感に対して、対照群と比較してより強い効果があることが示された。
(実施例10)NEt-3IPの鼻症状抑制効果に対するPPAR拮抗剤の影響 実施例1と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発による鼻掻き行動反応を観察した。
上記マウスモデルに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液を抗原誘発の3時間前に経口投与し、及び各濃度の非選択的PPAR拮抗薬(アンタゴニスト)(BADGE)をNEt-3IP投与30分前に腹腔内投与(ip)し、あるいはPPARα選択的拮抗薬(GW6471)又はPPARγ選択的拮抗薬(GW9662)を抗原誘発10分前に鼻腔内投与(in)した。
その結果、図12及び13に示すように、BADGE及びGW9662について、用量依存的に、NEt-3IPによる鼻症状改善効果に対して拮抗作用が観察されたが、GW6471による拮抗作用は観察されなかった。
(実施例11)NEt-3IPの鼻症状抑制効果に対するLXR拮抗剤の影響 実施例1と同手法により作製したアレルギー性鼻炎マウスモデルに、実施例1と同様に卵白アルブミン生理食塩液を点鼻投与する抗原誘発による鼻掻き行動反応を観察した。
上記マウスモデルに、実施例1と同手法によりNEt-3IP溶液を抗原誘発の3時間前に経口投与し、及び各濃度のサブタイプ選択的LXR拮抗薬(AA-23)を抗原誘発10分前に鼻腔内投与(in)した。
その結果、図13に示すように、AA-23の用量依存的に、NEt-3IPによる鼻症状改善効果に対して拮抗作用が観察された。
以上詳述したように、RXR作動性物質を有効成分とする本発明の抗アレルギー剤は、マウスアレルギー性鼻炎モデルにおいて、用量依存的に有意な効果を認めた。RXR作動性物質はシクロオキシゲナーゼ阻害活性を示さないことからプロスタグランジン産生には影響せず、ステロイド剤でよく認められる副作用である消化性潰瘍は誘発しない。さらに、RXR作動性物質はステロイド剤とは異なりフィードバックによる内因性副腎皮質ステロイドホルモンの産生には影響しないことから、副腎不全、離脱症候群は誘発しない。中心性肥満(ムーンフェイス)、糖尿病(血糖値上昇作用による)の誘発、憎悪、低身長、大腿骨頭壊死症、低カリウム血漿、動脈硬化病変、異常脂肪沈着、野生肩、多毛、皮下出血、皮膚萎縮、発汗異常、白内障、緑内障、眼球突出、浮腫、高血圧、うっ血性心不全、不整脈、ステロイド筋症、白血球増多、味覚異常、嗅覚異常などステロイド剤に認められる多くの副作用が軽減されるものと考えられる。
以上により、本発明の新規抗アレルギー剤は、副作用が少ない優れた抗アレルギー剤ということができ、アレルギー性疾患の予防又は治療に、利用することができる。また、多くの抗アレルギー剤は、慢性及び重症化したアレルギー症状の治療には使用することができないのに対し、本発明の抗アレルギー剤は、慢性及び重症化したアレルギー性疾患に対しても使用することが期待される。