METHOD FOR DETECTING CHOLANGIOCELLULAR CARCINOMA AND METHOD OF SCREENING FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC AGENT
外国特許コード | F110006072 |
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整理番号 | S2010-0153 |
掲載日 | 2011年12月28日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2010JP071616 |
国際公開番号 | WO 2011068176 |
国際出願日 | 平成22年12月2日(2010.12.2) |
国際公開日 | 平成23年6月9日(2011.6.9) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | METHOD FOR DETECTING CHOLANGIOCELLULAR CARCINOMA AND METHOD OF SCREENING FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC AGENT |
発明の概要(英語) | Provided is a method for detecting cholangiocellular carcinoma, the method involving measuring the level of periostin gene expression, the expression of periostin proteins, or the amount of periostin proteins, in a biological sample taken from a test subject. Also provided is a method of screening for cholangiocellular carcinoma, the method involving measuring the level of periostin gene expression or the amount of periostin proteins in a culture where cells that can produce periostin have been cultured in the presence of a candidate substance. Thus, it is possible to provide a method for detecting cholangiocellular carcinoma using a marker and a method of screening for a prophylactic or therapeutic agent for cholangiocellular carcinoma. |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART Bile duct cell carcinoma is a malignant tumor occurring in the liver, bile duct epithelial cells in the tumor of origin. Is generally the common bile duct cell carcinoma, liver that occurs within a malignant tumor other compared to hepatocellular carcinoma, the prognosis and high grade, cell carcinoma of the bile ducts of liver treatment methods include radical mastectomy is the only device, the common bile duct cell carcinoma at an early stage is important to find. Furthermore, the bile duct cell carcinoma, as no apparent risk factors, the discovery of bile duct cell cancer of the patient during many bad general state, quickly and non-invasively diagnosing cancer of the bile duct cells may be required to have a diagnostic method. The current, non-invasive cell carcinoma of the bile duct as a diagnostic, the method of use as a marker CA19-9 serum has been used. This is because, in the common bile duct cell cancer patient serum CA19-9 value is increased by making use of the present invention. However, for increased values of serum CA19-9, similar to that of a bile duct cell cancer of the change is observed even cirrhosis, serum CA19-9 is, cell carcinoma of the bile duct is not a clinically useful serum markers. In addition, the pathological tissue diagnosis by biopsy of the tumor tissue, the accuracy of diagnosis is high, and the subject as well as a serious invasive, complications such as bleeding and a risk of developing. In addition, tumor tissue biopsy of tumor cells in liver, peritoneum, and to the subcutaneous tissue of the seeding may occur, which is also the condition may worsen. Furthermore, both bile duct cell carcinoma hepatocellular carcinoma is paper currency is not always easy. Considering the above, the results of the diagnostic methods of the tissue which more accurately reflects, for a subject minimally-invasive inspection method is demanded. Incidentally, a fibroblast (periostin) (osteoblast specific factor 2) heart valves, tendon, surrounding the cartilage, such as a sclera and a periodontal ligament, to a mechanical stress is always exposed to the collagen-rich fibrous connective tissue is advantageous for the expression, the molecular weight of about 90 kilodalton secreted protein, was first discovered from the osteoblasts. Of the expression level of a fibroblast can be detected as an index of the allergic disease has been known (Patent Documents 1:WO2002/052006, Non-Patent Document 1: G. Takayama et al., J Allergy Clin Immunol, vol.118, 98-104, 2006). However, the expression level of a fibroblast cell cancer of the bile duct mass and not clear that the relationship. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IS JP KE KG KM KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PE PG PH PL PT RO RS RU SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ MD RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | 胆管細胞癌の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法 |
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発明の概要 | 本発明により、被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベル、ペリオスチンタンパク質の発現またはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の検出方法、およびペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌のスクリーニング方法が提供される。これにより、マーカーを利用した胆管細胞癌の検出方法、および胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法が提供される。 |
特許請求の範囲 |
請求の範囲 [請求項1] 被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の検出方法。 [請求項2] 測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、胆管細胞癌の有無と関連付ける、請求項1に記載の方法。 [請求項3] 生体試料が肝臓組織または血液である、請求項1または2に記載の方法。 [請求項4] 測定した被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が所定レベルまたは所定量以上であることが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。 [請求項5] 所定レベルまたは所定量が、胆管細胞癌患者由来の生体試料群と正常試料群のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチン量の測定結果からReceiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いた解析により求めた至適閾値(cut-off値)である、請求項4に記載の方法。 [請求項6] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で154ng/mlである、請求項5に記載の方法。 [請求項7] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で187ng/ml以上である、請求項5に記載の方法。 [請求項8] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で302ng/ml以上である、請求項5に記載の方法。 [請求項9] (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、請求項2に記載の方法。 [請求項10] (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも高いことが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す、請求項9に記載の方法。 [請求項11] 生体試料が肝臓組織または血液である、請求項9または10に記載の方法。 [請求項12] ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養し、培養物中のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法。 [請求項13] 測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、候補物質による胆管細胞癌の予防・治療効果と関連付ける、請求項12に記載の方法。 [請求項14] (i)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、請求項13に記載の方法。 [請求項15] (i)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、請求項14に記載の方法。 [請求項16] 測定が免疫測定法によるものである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。 [請求項17] (i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、胆管細胞癌の検出薬。 [請求項18] (i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、胆管細胞癌の検出用キット。 [請求項19] ペリオスチンを産生することができる細胞を含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング用キット。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 胆管細胞癌の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法 技術分野 [0001] 本発明は、胆管細胞癌の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法などに関する。 背景技術 [0002] 胆管細胞癌は肝臓内に発生する悪性腫瘍で、胆管上皮細胞を起源とする腫瘍である。 一般的に胆管細胞癌は、肝臓内に発生する他の悪性腫瘍である肝細胞癌と比較し、悪性度が高く予後が不良であり、胆管細胞癌の根治的治療法としては肝切除術のみであることから、早期に胆管細胞癌を発見することが肝要である。さらに、胆管細胞癌は、リスク因子が明らかでないことから、胆管細胞癌の発見時に全身状態が不良である患者も多く、迅速かつ非侵襲的に胆管細胞癌を診断しうる診断方法が求められている。 [0003] 現在、胆管細胞癌の非侵襲的診断法として、血清CA19-9をマーカーとして利用する方法が用いられている。これは、胆管細胞癌の患者では血清CA19-9値が上昇することを利用したものである。しかしながら、血清CA19-9値の上昇については、胆管細胞癌と類似の変化が肝硬変でも認められることから、血清CA19-9は、胆管細胞癌の臨床上有用な血清マーカーではない。 [0004] また、腫瘍組織生検による病理組織診断は、診断の正確性については高いものの、被検者にとって大きな侵襲となるだけでなく、出血などの合併症を発症する恐れもある。さらに、腫瘍組織生検は腫瘍細胞の肝内、腹膜、皮下組織への播種を起こす恐れや、病態を悪化させる恐れもある。さらに、胆管細胞癌と肝細胞癌の両者の鑑別は必ずしも容易ではない。 [0005] 以上の事から、組織的診断方法の結果をより正確に反映し、被検者にとって侵襲の少ない検査方法が求められている。 [0006] ところで、ペリオスチン(periostin)(骨芽細胞特異因子2)は心臓弁、腱、軟骨周囲、強膜および歯根の靭帯等、常に機械的ストレスにさらされるコラーゲン豊富な線維結合組織に優位に発現する、分子量約90キロダルトンの分泌性タンパク質で、骨芽細胞から最初に発見された。ペリオスチン遺伝子の発現レベルを指標としてアレルギー性疾患を検出できることが知られている(特許文献1:WO2002/052006、非特許文献1:G. Takayama et al., J Allergy Clin Immunol, vol.118, 98-104, 2006)。しかしながら、ペリオスチン遺伝子の発現レベルおよびペリオスチンタンパク質量と胆管細胞癌との関係は明らかでない。 先行技術文献 特許文献 [0007] 特許文献1 : WO2002/052006 非特許文献 [0008] 非特許文献1 : G. Takayama et al., J Allergy Clin Immunol, vol.118, 98-104, 2006 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0009] このような状況の下、マーカーを利用した胆管細胞癌の検出方法、および胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法などが求められていた。 課題を解決するための手段 [0010] 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、胆管細胞癌患者由来の生体試料においてペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が高いこと、ペリオスチンをマーカーとして利用することで胆管細胞癌を検出できること、また、ペリオスチンを指標として胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニングができること等の知見に基づき本発明を完成させた。 [0011] すなわち、本発明は、以下の胆管細胞癌の検出方法または診断方法、および胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法などを提供する。 [1] 被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の検出方法。 [2] 測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、胆管細胞癌の有無と関連付ける、上記[1]に記載の方法。 [3] 生体試料が肝臓組織または血液である、上記[1]または[2]に記載の方法。 [4] 測定した被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が所定レベルまたは所定量以上であることが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の方法。 [5] 所定レベルまたは所定量が、胆管細胞癌患者由来の生体試料群と正常試料群のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチン量の測定結果からReceiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いた解析により求めた至適閾値(cut-off値)である、上記[4]に記載の方法。 [6] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で154ng/mlである、上記[5]に記載の方法。 [6-1] 測定したタンパク質量が、血清中濃度で154ng/ml以上であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断することを含む、上記[3]に記載の方法。 [7] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で187ng/ml以上である、上記[5]に記載の方法。 [7-1] 測定したタンパク質量が、血清中濃度で187ng/ml以上であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断することを含む、上記[3]に記載の方法。 [8] 至適閾値が、ペリオスチンの血清中濃度で302ng/ml以上である、上記[5]に記載の方法。 [8-1] 測定したタンパク質量が、血清中濃度で302ng/ml以上であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断することを含む、上記[5]に記載の方法。 [9] (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、上記[2]に記載の方法。 [10] (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも高いことが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す、上記[9]に記載の方法。 [10-1] (i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも高いときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断することを含む、上記[9]に記載の方法。 [11] 生体試料が肝臓組織または血液である、上記[9]または[10]に記載の方法。 [12] ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養し、培養物中のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法。 [13] 測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、候補物質による胆管細胞癌の予防・治療効果と関連付ける、上記[12]に記載の方法。 [14] (i)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行うことを含む、上記[13]に記載の方法。 [15] (i)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が(ii)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の非存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量よりも低いときに、候補物質を選択することを含む、上記[14]に記載の方法。 [16] 測定が免疫測定法によるものである、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の方法。 [17] (i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、胆管細胞癌の検出薬。 [18] (i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基のポリヌクレオチドからなるプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、胆管細胞癌の検出用キット。 [19] ペリオスチンを産生することができる細胞を含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング用キット。 発明の効果 [0012] 本発明は、新規マーカーを利用した胆管細胞癌の検出方法を提供する。本発明の好ましい態様によれば、検出結果を、胆管細胞癌の確定診断の補助にできる等の利点がある。また。本発明は、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。 図面の簡単な説明 [0013] [図1] ヒト肝臓組織におけるペリオスチンの組織免疫染色の結果を示す写真である。(a)健常人、(b)肝硬変患者、(c)肝細胞癌患者、(d)硬化型肝細胞癌患者、(e)肉腫型肝細胞癌患者、(f)胆管細胞癌患者。 [図2] 健常人および各種疾患患者の各群における血清中ペリオスチンタンパク質濃度を比較したグラフである。Kruskal-Wallis test: P < 0.001。Bonferroni correction after Mann-Whitney test: * P=0.01; ** P<0.05。 [図3] 健常人および各種疾患患者由来の血液における血清中ペリオスチンタンパク質濃度を用いた胆管細胞癌検出のためのROC曲線を示すグラフである。 [図4] 図2に示したデータについて、胆管細胞癌患者群とその他の群とを比較した結果を示すグラフである。Mann-Whitney test: P<0.0001。 [図5] 抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、胆管細胞癌の罹患者及び対照者の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を示した図である。 [図6] 抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、胆管細胞癌の罹患者及び対照者の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に作成したROC曲線を示した図である。 発明を実施するための形態 [0014] 以下、本発明を詳細に説明する。 なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。また、本明細書は、本願の優先権主張の基礎となる日本国特許出願である特願2009-274873号(2009年12月2日出願)の特許請求の範囲、明細書、および図面の開示内容を包含する。 [0015] 1.本発明の概要 本発明は、被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の検出方法または診断方法であり、当該測定結果を指標として用い、胆管細胞癌と関連付けることを特徴とするものである。 [0016] 本発明者らは、胆管細胞癌に関連する分子を探索すべく鋭意検討を重ねた。その結果、胆管細胞癌の患者由来の生体試料において、ペリオスチンレベルが高いことなどを見出した。 具体的には、先ず、胆管細胞癌患者由来の摘出腫瘍組織を用いて免疫化学組織染色法によりペリオスチンタンパク質の発現性を検討した。その結果、胆管細胞癌患者由来の腫瘍組織においてペリオスチンタンパク質が高濃度に染色されたことから、胆管細胞癌患者由来の腫瘍組織においてペリオスチン遺伝子の発現レベルおよびペリオスチンタンパク質量が高いことが分かった(図1(f))。一方、対照群として用いた健常人、肝硬変患者の肝組織に加えて、肝細胞癌患者、硬化型肝細胞癌患者、および肉腫型肝細胞癌患者由来の腫瘍組織では、ペリオスチン遺伝子の発現レベルおよびペリオスチンタンパク質量が、胆管細胞癌患者由来の腫瘍組織と比較して低かった(図1(a)~(e))。 [0017] また、胆管細胞癌患者群よりそれぞれ採取した血液を用いて血清中のペリオスチンタンパク質の濃度を測定した。その結果、これら胆管細胞癌患者由来の血液において、ペリオスチンタンパク質濃度が高かった(図2)。一方、対照群として用いた健常人の群、肝硬変患者群、肝細胞癌患者群および混合型肝細胞癌患者群由来のそれぞれの血液では、血清中のペリオスチンタンパク質濃度が低く、胆管細胞癌患者由来の血液中のペリオスチンタンパク質濃度と比較して明らかに低く、有意な差が認められた。(図2)。 [0018] さらに、血清中ペリオスチンタンパク質濃度を用いて胆管細胞癌患者群をその他の群(健常人、肝硬変患者、肝細胞癌患者および混合型肝細胞癌患者からなる群)から判別可能か検討した。胆管細胞癌患者群および対照群について、二項ロジスティック回帰分析を行ったところ、血清中のペリオスチンタンパク質濃度は胆管細胞癌患者群のみと有意に関係していることが確認された(表3)。また、胆管細胞癌患者群および対照群について、Receiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いて検討を行ったところ(図3)、指摘閾値(cut-off値)を例えば、ペリオスチンタンパク質濃度を302ng/mlに設定でき(図4)、また、このようにcut-off値を設定することで胆管細胞癌を高精度で検出できることが確認された(表4)。 また、血清中ペリオスチンタンパク質量を測定する際にモノクローナル抗体を用いることにより、ポリクローナル抗体を用いた場合と比較して測定の感度が向上することも確認された(図5および6)。 [0019] 以上のように、胆管細胞癌患者より採取した肝臓組織および血液においては、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が高いことから、本発明者らは、ペリオスチン遺伝子またはペリオスチンタンパク質が、胆管細胞癌を検出するためのマーカーとして有用であることを見出した。 [0020] また、本発明は、ペリオスチン(遺伝子(RNA)、タンパク質)を産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法も提供する。 [0021] 上記のようにペリオスチン遺伝子は、胆管細胞癌患者由来の組織で発現レベルが増加し、患者由来の組織中のペリオスチンタンパク質レベルを増大させるので、患者に投与することにより組織でのペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、例えば、発現を阻害する化合物またはその塩(ペプチド、タンパク質、合成化合物、もしくは抗ペリオスチン抗体、またはそれらの塩など、更にはペリオスチン遺伝子(RNA)の活性を阻害させる、オリゴ核酸である、siRNA、その基となる、shRNAやshRNAを産生するベクター等)は、胆管細胞癌の予防・治療剤として使用し得る。 [0022] さらに、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩も、胆管細胞癌の予防・治療剤として使用し得る。よって、本発明は、ペリオスチンタンパク質と候補物質を接触させて、ペリオスチンの活性の変化を検出することを含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。 [0023] 2.ペリオスチン ペリオスチン(periostin)は、骨芽細胞特異因子2とも呼ばれる、約90kDaのタンパク質である(OSF2;Horiuchi K,Amizuka N, Takeshita S,Takamatsu H, Katsuura M, Ozawa H, Toyama Y,Bonewald LF, Kudo A.;Identification and characterization of a novel protein, periostin, with restricted expression to periosteum and periodontal ligament and increased expression by transforming growth factor beta.J Bone Miner Res.1999 Jul;14(7):1239-49.)。ペリオスチンには、alternative splicingによるC末側の長さの違いで区別できるいくつかの転写物が存在することが知られている。ここで、配列番号1に、ヒトのペリオスチン遺伝子の全てのエクソンによる転写産物のDNA配列を示す(Accession No. D13666)。また、ヒトのペリオスチンのその他のsplicing variantのDNA配列の例を、配列番号3、5に示す(それぞれ、Accession Nos. AY918092、AY140646)。また、配列番号2、4、6に、それぞれ、配列番号1、3、5のポリヌクレオチドによってコードされるペリオスチンのアミノ酸配列を示す。 [0024] 本発明の好ましい態様では、配列番号2で表されるアミノ酸配列又はその配列から派生するvariant(例えば、配列番号2、4または6で表されるアミノ酸配列からなるペリオスチン)を含むペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定する。 [0025] 3.本発明の胆管細胞癌の検出方法または診断方法 ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量は、胆管細胞癌の患者由来の組織で増加しているので、被験者由来の生体試料におけるペリオスチンは、胆管細胞癌を検出または診断するためのマーカーとして利用し得る。すなわち、本発明は、被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の検出方法を提供する。この場合、測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、胆管細胞癌と関連付けるのが好ましい。 [0026] 本発明のいくつかの態様によれば、測定した被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、所定発現レベルまたは所定タンパク質量以上であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断できる。あるいは、測定した被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、所定発現レベルまたは所定タンパク質量以上であることが、被験者が、胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す。 [0027] 発現レベルまたはタンパク質量の測定に用いる生体試料としては、例えば、被験者由来の、肝臓組織、血液等を用いることができる。好ましくは、簡便性や非侵襲であるという観点から、被験者由来の血液等を用いることが推奨される。肝臓組織、または血液等を採取する方法は、公知である。正常試料は、例えば、胆管細胞癌を患っていない者由来の生体試料である。ここで、胆管細胞癌を患っていない者は、例えば、健常者である。本発明のいくつかの態様では、胆管細胞癌を患っていない者とは、健常者の他に、胆管細胞癌以外の病態に罹患した患者が含まれる。従って、肝硬変患者、肝細胞癌患者、混合型肝細胞癌患者などの胆管細胞癌以外の肝臓障害患者が含まれる。 [0028] 生体試料が肝臓組織等である場合には、遺伝子の発現レベルの測定に利用するために、例えば、そのライセートを調製すること、ライセートからmRNAを抽出することが好ましい。ライセートの調製およびmRNAの抽出は、公知の方法で行うことができ、例えば市販のキットを使用して行う。また、生体試料が、血液等の液状のものである場合には、例えば、緩衝液等で希釈してペリオスチンをコードするmRNA量の測定などに利用するのが好ましい。 [0029] ペリオスチンタンパク質量の測定は、例えば、免疫測定法などにより行うことができる。免疫測定法としては、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光測定法(FIA)、免疫発光測定法、酵素免疫測定法(例えば、Enzyme Immunoassay(EIA)、Enzyme-linked Immunosorbent assay (ELISA))、またはWestern blot法などが挙げられる。 [0030] RIAで標識に用いる放射性物質としては、例えば、 125I、 131I、 14C、 3H、 35S、または 32Pを利用することができる。 [0031] FIAで標識に用いる蛍光物質としては、例えば、Eu(ユーロピウム)、FITC、TMRITC、Cy3、PE、またはTexas-Redなどの蛍光物質を利用することができる。 [0032] 免疫発光測定法で標識に用いる発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等を用いることができる。 [0033] 酵素免疫測定法で標識に用いる酵素としては、例えば西洋わさびペルオキシターゼ(HRP)、アルカリホファターゼ(ALP)、グルコースオキシターゼ(GO)等を用いることができる。 [0034] さらに、抗体または抗原と、これらの標識物質との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。 [0035] mRNA量の測定は、公知の方法、例えば、プローブとしてペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブを用いるノーザンハイブリダイゼーション、あるいはプライマーとしてペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマーを用いるPCR法を用いて行うことができる。「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブ」および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー」は、後述の「胆管細胞癌の検出薬または診断薬」の項で説明するものと同様である。 [0036] また、免疫組織化学により、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するようにしても良い。この場合、免疫組織化学によりペリオスチンまたはペリオスチンをコードするmRNAを可視化し、ペリオスチンタンパク質量またはmRNA量を比較する。生体試料としては、肝臓組織などが挙げられる。免疫組織化学としては、具体的には、酵素標識抗体法、または蛍光抗体法などが挙げられる。酵素標識抗体法としては、例えば、直接法、間接法、アビジン・ビオチン化ペリオキシダーゼ複合体法(ABC法)、もしくはストレプトアビジン・ビオチン化抗体法(SAB)法などの標識抗体法、またはペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーゼ法(PAP法)などの非標識抗体法が挙げられる。 [0037] 蛍光抗体法としては、直接法、または間接法が挙げられる。 [0038] 標識に用いる酵素または蛍光物質としては、前記と同様のものが挙げられる。 [0039] そして、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断するための「所定発現レベルまたは所定タンパク質量」は、例えば、次のように求めることができる。先ず、2例以上の胆管細胞癌患者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定する。このとき、対象となる患者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。一方、2例以上の正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量も測定する。このとき、対象となる正常試料の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。そして、胆管細胞癌患者由来の生体試料群と正常試料群の両方を含む全体から、胆管細胞癌患者由来の生体試料群を抽出しうる、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の至適閾値(cut-off値)を、統計処理により求める。統計処理としては、例えば、Receiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いた解析等が挙げられる。ROC曲線を用いた解析の具体的手法は、後述の実施例に記載されている。 ここで、ROC曲線から、至適閾値(cut-off値)を求める方法としては、Youden index(感度 + 特異度 -1)を用いる方法が一般的である(Akobeng, AK. et al. Acta Paediatrica 96:644-647, 2007)。この方法では、Youden index(感度 + 特異度 -1)が最大となりうる点が感度及び特異度ともにバランスのとれた値を示す点であることから、この診断成績を示す値をcut-off値として採用する。このようにentry caseのdata setの各値における診断パフォーマンスから得られたROC曲線において、Youden indexが最大となり得る値がcut-off値となるため、data setが変わればcut-off値も変化しうる。このため、複数のdata setに対応して、複数のcut-off値の候補が示される場合がある。 [0040] 本発明のいくつかの態様によれば、血中のペリオスチンタンパク質量のcut-off値は、血清中濃度で、例えば187ng/ml、188ng/ml、189ng/ml、190ng/ml、191ng/ml、192ng/ml、193ng/ml、194ng/ml、195ng/ml、196ng/ml、197ng/ml、198ng/ml、199ng/ml、200ng/ml、210ng/ml、220ng/ml、230ng/ml、240ng/ml、250ng/ml、260ng/ml、270ng/ml、280ng/ml、290ng/ml、291ng/ml、292ng/ml、293ng/ml、294ng/ml、295ng/ml、296ng/ml、297ng/ml、298ng/ml、299ng/ml、300ng/ml、301ng/ml、302ng/ml、303ng/ml、304ng/ml、305ng/ml、306ng/ml、307ng/ml、308ng/ml、309ng/ml、310ng/ml、311ng/ml、312ng/ml、313ng/ml、314ng/ml、315ng/ml、316ng/ml、317ng/ml、318ng/ml、319ng/ml、320ng/ml、330ng/ml、340ng/ml、350ng/ml、360ng/ml、370ng/ml、380ng/ml、390ng/ml、400ng/ml、410ng/ml、420ng/ml、430ng/ml、440ng/mlまたは450ng/mlであり、好ましくは、302ng/mlである。この場合、測定した被験者由来の血液におけるペリオスチンタンパク質量が、上記cut-off値以上であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が疑われると判断できる。本発明のある態様によれば、前記判断のための血清中濃度の値に上限値を設けても良く、その場合、上記各cut-off値以上で、かつ、所定上限値以下(例、1506ng/ml以下、1505ng/ml以下、1504ng/ml以下、1503ng/ml以下、1502ng/ml以下、1501ng/ml以下、1500ng/ml以下、1450ng/ml以下、1400ng/ml以下、1350ng/ml以下、1300ng/ml以下、1250ng/ml以下、1200ng/ml以下、1150ng/ml以下、1100ng/ml以下または1000ng/ml以下)であるときに、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断することができる。 [0041] 本発明の別のいくつかの態様によれば、血中のペリオスチンタンパク質量のcut-off値は、血清中濃度で、例えば130 ng/ml、131 ng/ml、132 ng/ml、133 ng/ml、134 ng/ml、135 ng/ml、136 ng/ml、137 ng/ml、138 ng/ml、139 ng/ml、140 ng/ml、141 ng/ml、142 ng/ml、143 ng/ml、144 ng/ml、145 ng/ml、146 ng/ml、147 ng/ml、148 ng/ml、149 ng/ml、150 ng/ml、151 ng/ml、152 ng/ml、153 ng/ml、154 ng/ml、155 ng/ml、156 ng/ml、157 ng/ml、158 ng/ml、159 ng/ml、160 ng/ml、161 ng/ml、162 ng/ml、163 ng/ml、164 ng/ml、165 ng/ml、166 ng/ml、167 ng/ml、168 ng/ml、169 ng/ml、170 ng/ml、171 ng/ml、172 ng/ml、173 ng/ml、174 ng/ml、175 ng/ml、176 ng/ml、177 ng/ml、178 ng/ml、179 ng/ml、180 ng/ml、181 ng/ml、182 ng/ml、183 ng/ml、184 ng/ml、185 ng/ml、186 ng/ml、187ng/ml、188ng/ml、189ng/ml、190ng/ml、191ng/ml、192ng/ml、193ng/ml、194ng/ml、195ng/ml、196ng/ml、197ng/ml、198ng/ml、199ng/ml、200ng/ml、210ng/ml、220ng/ml、230ng/ml、240ng/ml、250ng/ml、260ng/ml、270ng/ml、280ng/ml、290ng/ml、291ng/ml、292ng/ml、293ng/ml、294ng/ml、295ng/ml、296ng/ml、297ng/ml、298ng/ml、299ng/ml、300ng/ml、301ng/ml、302ng/ml、303ng/ml、304ng/ml、305ng/ml、306ng/ml、307ng/ml、308ng/ml、309ng/ml、310ng/ml、311ng/ml、312ng/ml、313ng/ml、314ng/ml、315ng/ml、316ng/ml、317ng/ml、318ng/ml、319ng/ml、320ng/ml、330ng/ml、340ng/ml、350ng/ml、360ng/ml、370ng/ml、380ng/ml、390ng/ml、400ng/ml、410ng/ml、420ng/ml、430ng/ml、440ng/mlまたは450ng/mlであり、好ましくは、154 ng/ml、187 ng/ml、200ng/ml、または302ng/mlである。この場合、測定した被験者由来の血液におけるペリオスチンタンパク質量が、上記cut-off値以上であることが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であることが疑われることを示す。本発明のある態様によれば、前記判断のための血清中濃度の値に上限値を設けても良く、その場合、上記各cut-off値以上で、かつ、所定上限値以下(例、1600 ng/ml以下、1590ng/ml以下、1580ng/ml以下、1570ng/ml以下、1560ng/ml以下、又は1550ng/ml以下)であることが、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す。 [0042] 血中のペリオスチンタンパク質量は、好ましくは、免疫蛍光測定法により測定される。免疫蛍光測定法は、後述の実施例に、より詳細に記載した。 [0043] 本発明の別のいくつかの態様によれば、例えば、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行う。さらに具体的には、ペリオスチンタンパク質量またはペリオスチンをコードするmRNA量を測定して比較する。 [0044] そして、例えば、前記(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、前記(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して高い場合、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上高い場合に胆管細胞癌が有る、あるいは胆管細胞癌が有ると疑われると判断できる。 あるいは、例えば、前記(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、前記(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して高いことが、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上高いことが、被験者が胆管細胞癌である、あるいは胆管細胞癌であると疑われることを示す。 [0045] ここで、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の差は、胆管細胞癌の検出または診断の臨界値となるものであり、例えば次のように設定しても良い。 [0046] 先ず、2例以上の胆管細胞癌患者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定し、その平均値(A)を求める。このとき、対象となる患者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。一方、2例以上の正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定し、その平均値(B)を求める。このとき、対象となる正常試料の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、または100例以上である。そして、求めた平均値AおよびBから[(A-B)/B]×100(%)を計算して、胆管細胞癌由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値が健常者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値と比較して何%高いかを求める。このようにして求めた値を、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の差(臨界値)として設定する。すなわち、(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して求めた差以上に高い場合(例えば、統計的に有意に高い場合)に、胆管細胞癌が有る、または胆管細胞癌が有ると疑われると判断できる。あるいは、(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して求めた差以上に高いことが(例えば、統計的に有意に高いことが)、被験者が胆管細胞癌である、または胆管細胞癌であると疑われることを示す。 [0047] 尚、本発明の胆管細胞癌の検出方法または診断方法では、生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するので、測定値を平均値(A)および(B)に組み入れて、対象となる患者の例数および対象となる健常者の例数を増やすのが好ましい。例数を増やすことにより、胆管細胞癌の検出または診断の精度を高めることができる。また、求めた健常者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の平均値(B)を、「(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量」としても良い。 [0048] 本発明の好ましい態様では、高感度で胆管細胞癌を検出できるので、胆管細胞癌と肝細胞癌の両者の鑑別が容易になる。 [0049] 上記胆管細胞癌の検出結果または診断結果は、例えば胆管細胞癌の確定診断を行う場合の補助とすることができる。胆管細胞癌の確定診断を行う場合には、上記検出結果に加えて、理学所見の結果、血清学的検査の結果、および組織学的検査などからなる群から選択される少なくとも1つと組み合わせて、総合的に判断するようにしても良い。 [0050] 4.胆管細胞癌の検出薬または診断薬 本発明は胆管細胞癌の検出薬または診断薬(以下、検出薬等とする。)を提供する。本発明の検出薬等は、(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。 本発明のある態様の胆管細胞癌の検出薬等は、ペリオスチンを認識する抗体を含有する。抗体は、好ましくは、ペリオスチンを特異的に認識する抗体である。ペリオスチンを認識する抗体は、当業者に周知の技法を用いて得ることができる。ペリオスチンを認識する抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体(Milstein C, et al., 1983, Nature 305(5934): 537-40)である。例えば、ペリオスチンに対するポリクローナル抗体は、抗原(ペリオスチンまたはその部分ペプチド)を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。あるいは必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。本発明の胆管細胞癌の検出薬等として、モノクローナル抗体を用いるが好ましい。 [0051] 本発明の別の態様の胆管細胞癌の検出薬等は、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマーを含有する。プライマーとして、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号1,3,または5で表わされる塩基配列)に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基(例えば、15塩基以上、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、もしくは20塩基以上)、および/または連続する100塩基以下(例えば、100塩基以下、70塩基以下、60塩基以下、50塩基以下、40塩基以下、もしくは30塩基以下)、例えば、20塩基以上50塩基以下、好ましくは、20塩基以上30塩基以下のポリヌクレオチドからなるプライマーを用いることができる。プライマーセットとして、フォワードプライマーとリバースプライマーの間の距離が、例えば、2500塩基以下、1500塩基以下、または500塩基以下となるように設計することができる。プライマーは、例えば、RT-PCR法などでペリオスチン遺伝子の発現レベルが検出できるように設計する。プライマーの設計は、公知の手法を用いて行なうことができる。このように設計したプライマーは、例えば、配列番号1,3,もしくは5またはその一部(例えば、配列番号1,3,または5のうちの連続する少なくとも15塩基)を含有するポリヌクレオチドである。必要に応じて、プライマーには、追加の配列を含めることも可能であり、例えば、タグ配列を付加することもできる。 [0052] 本発明のさらに別の態様の胆管細胞癌の検出薬等は、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブを含有する。プローブとして、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号1,3,または5で表わされる塩基配列)に基づいて設計された、連続する少なくとも15塩基(例えば、15塩基以上、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、20塩基以上、21塩基以上、22塩基以上、23塩基以上、24塩基以上、25塩基以上、26塩基以上、27塩基以上、28塩基以上、29塩基以上、30塩基以上、35塩基以上、40塩基以上、45塩基以上、もしくは50塩基以上)、および/または、連続する2500塩基以下(例えば、2500塩基以下、1000塩基以下、500塩基以下、150塩基以下、100塩基以下、50塩基以下、40塩基以下、もしくは30塩基以下)、例えば、塩基長15~150bp、20~150bpまたは50~150bp、好ましくは、21~30bpのポリヌクレオチドからなるプローブを用いることができる。プローブは、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法などでペリオスチン遺伝子の発現レベルが検出できるように設計する。プローブの設計は、公知の手法を用いて行うことができる。このように設計したプローブは、例えば、配列番号1,3,もしくは5またはその一部(例えば、配列番号1,3,または5のうちの連続する少なくとも15塩基)を含有するポリヌクレオチドである。また、プローブは、例えば、放射性標識として 32Pなどで標識することができる。また、必要に応じ、プローブを蛍光標識、発光標識または酵素標識などで標識することもできる。当業者であれば、用いた標識物質に適切な検出方法で、ペリオスチン遺伝子の発現レベルを検出することができる。更に、プローブをビオチン化したものを用いることもでき、これをアビジン蛍光色素で処理し蛍光検出することも可能である。 [0053] 本発明の検出薬等は、上記本発明の胆管細胞癌の検出方法または診断方法において使用することができる。 [0054] 5.本発明の胆管細胞癌の検出用キットまたは診断用キット 本発明は、前記胆管細胞癌の検出方法または診断方法に使用することができるキットを提供する。 本発明のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、およびペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。本発明のいくつかの態様のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、またはペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブを含有する。「ペリオスチンを認識する抗体」、「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー」、および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブ」は、前記説明したのと同様である。 [0055] 本発明のキットは、上記の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、キットが胆管細胞癌の検出または診断に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。 [0056] 6.本発明のスクリーニング方法 ペリオスチン遺伝子は、胆管細胞癌の患者由来の組織で発現が増加しているので、当該患者の組織でペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、例えば、発現を阻害する化合物またはその塩は、胆管細胞癌の予防・治療剤として使用し得る。また、ペリオスチンタンパク質をコードする遺伝子(mRNA)を阻害する物質も、胆管細胞癌の予防・治療剤となり得る。このような物質としては、いわゆる、RNAi作用を応用した物質であり、上記のペリオスチンmRNAに作用して、mRNAを不活性化(ペリオスチンタンパク質の生成を阻害)するsiRNAや、siRNAを産生するshRNAや、更にはshRNAを産生させる遺伝子を組み込んだベクター等も、胆管細胞癌の予防・治療剤となり得る。 [0057] すなわち、本発明は、ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した培養物中におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。この場合、測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、候補物質による胆管細胞癌の予防・治療効果と関連付けるのが好ましい。 [0058] 本発明のいくつかの態様によれば、例えば、(i)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合と、(ii)ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の非存在下で培養した場合との間でペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の比較を行う。比較は、例えば、(i)と(ii)の場合における、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定して、比較する。 [0059] 具体的には、(i)と(ii)の場合における、ペリオスチンタンパク質量またはペリオスチンをコードするmRNA量を測定して比較する。ペリオスチンを産生することができる細胞としては、例えば、胆管細胞癌患者由来の細胞HuCCT1(登録番号:JCRB0425)、HuH28(登録番号:JCRB0426)、OZ(登録番号:JCRB1032)など、あるいはペリオスチンをコードするDNAを含有するベクターで形質転換された細胞などが挙げられる。 [0060] 形質転換する細胞としては、例えば、CHO細胞、およびHEK293細胞などが挙げられる。形質転換された細胞の培養は、公知の方法で行うことができる。 [0061] 候補物質としては、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、合成化合物、またはそれらの塩などや、mRNAを不活性化させるsiRNAおよびshRNAや、shRNAを産生させるDNAを組み込んだベクター等が挙げられる。 [0062] ペリオスチンタンパク質量の測定は、例えば、前記した免疫測定法またはプロテインチップ法により行うことができる。 [0063] mRNA量の測定は、公知の方法、例えば、プローブとして配列番号1,3,もしくは5またはその一部を含有するポリヌクレオチドを用いるノーザンハイブリダイゼーション、あるいはプライマーとして配列番号1,3,もしくは5またはそれらの一部を含有するポリヌクレオチドを用いるPCR法を用いて行うことができる。 [0064] そして、例えば、(i)の場合のペリオスチンの発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を、(ii)の場合のペリオスチンの発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、すなわち、胆管細胞癌の予防・治療剤として選択することができる。 [0065] また、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩も、胆管細胞癌の予防・治療剤として使用し得る。よって、本発明は、ペリオスチンと候補物質を接触させて、ペリオスチンの活性の変化を検出することを含む、胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。 候補物質としては、例えば、抗体(例えば、抗ペリオスチン抗体)、ペプチド、タンパク質、合成化合物、またはそれらの塩などが挙げられる。 [0066] 「接触」とは、例えば、ペリオスチン遺伝子を発現する細胞またはその細胞抽出液と候補物質とを同一の反応系または培養系に存在させること、精製したペリオスチンと候補物質とを同一の反応系に存在させることなどが挙げられる。さらに具体的には、細胞培養器に候補物質を添加すること、細胞と候補物質とを混合すること、細胞を候補物質の存在下で培養すること、細胞抽出液と候補物質とを混合すること、精製したペリオスチンと候補物質とを混合することなどが挙げられる。 [0067] 「ペリオスチンの活性」とは、例えば、ペリオスチンタンパク質と他のマトリックスタンパク質との結合などが挙げられる。ペリオスチンの活性は、公知の方法を用いて検出することができる。具体的には、例えば、ペリオスチンタンパク質と他のマトリックスタンパク質との結合を測定する場合には、ペリオスチンタンパク質と、テネイシン-C、フィブロネクチン、コラーゲンVなどの他のマトリックスタンパク質との結合を測定することがあげられる。これらの結合は、Journal of Allergy Clinical Immunology, vol.118, 98-104, 2006記載の方法又はそれに準ずる方法によって測定することができる。 [0068] そして、ペリオスチンの活性を変化させる候補物質、例えば、ペリオスチンの活性を対照と比較して減少させる、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上減少させる候補物質を、ペリオスチンタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。ここで、対照は、例えば、候補物質の非存在下でのペリオスチンの活性である。 [0069] 本発明の別のいくつかの態様によれば、ペリオスチンを産生することができる細胞を候補物質の存在下で培養した場合におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、所定発現レベルまたは所定タンパク質量以下であるときに、当該候補物質を、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩として選択することもできる。 [0070] 所定発現レベルまたは所定タンパク質量は、例えば、次のように求めることができる。先ず、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を低下させ、かつ、胆管細胞癌の予防・治療効果があると判明した物質について、ペリオスチンを産生することができる細胞を当該物質の存在下で培養した培養物中におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定する。一方、ペリオスチンを産生することができる細胞を当該物質の非存在下で培養した培養物中におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定する。そして、前記物質の存在下での測定結果群と前記物質の非存在下での測定結果群との両方を含む全体から、前記物質の存在下での測定結果群を抽出しうる、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量の至適閾値(cut-off値)を、統計処理により求める。統計処理としては、例えば、Receiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いた解析等が挙げられる。このcut-off値を上限値として、測定したペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を、cut-off値以下にすることができる候補物質を、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を減少させる化合物またはその塩、すなわち、胆管細胞癌の予防・治療剤として選択することもできる。 ここで、「ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を低下させ、かつ、胆管細胞癌の予防・治療効果があると判明した物質」としては、例えば、前記本発明の胆管細胞の予防・治療剤のスクリーニング方法により得られた物質等を挙げることができる。 [0071] 7.本発明のスクリーニング用キット 本発明は、上記胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニング方法に使用することができるキットを提供する。具体的には、前記キットは、ペリオスチンを産生することができる細胞を含む。「ペリオスチンを産生することができる細胞」は、前記本発明のスクリーニング方法で説明した通りである。前記キットは、さらに、細胞培養用培地、培地に添加する抗生物質、血清(ウシ胎児血清等)などを含んでいても良い。 [0072] また、前記キットは、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定するための成分を含んでいても良い。そのような成分として、例えば、ペリオスチン遺伝子の塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド、ペリオスチンタンパク質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体などが挙げられる。これらのポリヌクレオチドおよび抗体は、前記と同様である。 [0073] 前記キットは、上記の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、キットが胆管細胞癌の予防・治療剤のスクリーニングに使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。 [0074] 8.本発明の医薬組成物 本発明は、上記本発明のスクリーニング方法により得られた化合物またはその塩を含む、胆管細胞癌の予防・治療用医薬組成物を提供する。 本発明の医薬組成物は、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物またはその塩、siRNAおよびshRNA、それらを細胞組織内にて産生可能なベクター類等を有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で提供することが好ましい。 [0075] 本発明の医薬組成物の適用の対象となる疾患は、胆管細胞癌である。 [0076] 「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。 [0077] 本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される活性成分である化合物またはその塩の種類などにより異なるが、例えば、活性成分である化合物またはその塩を、通常成人一人(体重60kg)当たり、一回につき100μgから1000mgの範囲で投与することができるが、この範囲に限定されるものではない。 [0078] 9. 本発明の胆管細胞癌の発癌リスク予測方法、または予後予測方法もしくは予後診断方法 ペリオスチン遺伝子またはペリオスチンタンパク質量は、胆管細胞癌の患者由来の組織で発現が増加しているので、被験者由来の生体試料におけるペリオスチンは、胆管細胞癌の発癌リスクを予測、または予後を予測もしくは診断するためのマーカーとして利用し得る。すなわち、本発明は、被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を測定することを含む、胆管細胞癌の発癌リスク予測方法または予後予測方法を提供する。この場合、測定した遺伝子の発現レベルまたはタンパク質量を、胆管細胞癌の発癌リスクの高低または予後の良否と関連付けるのが好ましい。 [0079] 本発明のいくつかの態様によれば、測定した被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、所定発現レベルまたは所定タンパク質量以上であるときに、胆管細胞癌の発癌リスクが高い、または予後が不良であると予測できる。「所定発現レベルまたは所定タンパク質量」は、上記「本発明の胆管細胞癌の検出方法または診断方法」に記載した方法と同様にして、求めることができる。 [0080] 本発明の別のいくつかの態様によれば、例えば、(i)被験者由来の生体試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と、(ii)正常試料におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量との比較を行う。そして、例えば、前記(i)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量が、前記(ii)の場合のペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量と比較して高い場合、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上高い場合に胆管細胞癌の発癌リスクが高い、または予後が不良であると予測できる。 [0081] 尚、「生体試料」、「ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量」等は、前記で説明したものと同様である。 [0082] 上記胆管細胞癌の発癌リスクの予測結果、または予後の予測もしくは診断結果は、例えば胆管細胞癌の発癌リスクの予測、または予後予測もしくは予後診断を行う場合の補助とすることができる。この場合、上記検出結果に加えて、理学所見の結果、血清学的検査の結果、および組織学的検査などからなる群から選択される少なくとも1つと組み合わせて、総合的に判断するようにしても良い。 [0083] 10.胆管細胞癌の発癌リスク予測試薬、または予後予測試薬もしくは予後診断薬 本発明は胆管細胞癌の発癌リスク予測試薬、または予後予測試薬もしくは予後診断薬(以下、本発明の予測試薬等とする。)を提供する。本発明の予測試薬等は、(i)ペリオスチンを認識する抗体、(ii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、および(iii)ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。「ペリオスチンを認識する抗体」、「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー」、および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブ」は、前記説明したのと同様である。 [0084] 本発明の検出薬等は、上記本発明の胆管細胞癌の発癌リスク予測方法、または予後予測方法もしくは予後診断方法において使用することができる。 [0085] 11.本発明の胆管細胞癌の発癌リスク予測用キット、または予後予測用もしくは予後診断用キット 本発明は、前記胆管細胞癌の発癌リスク予測方法、または予後予測方法もしくは予後診断方法に使用することができるキットを提供する。 本発明のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、およびペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブからなる群から選択される少なくとも1つを含有する。本発明のいくつかの態様のキットは、ペリオスチンを認識する抗体、ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー、またはペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブを含有する。「ペリオスチンを認識する抗体」、「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプライマー」、および「ペリオスチンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたプローブ」は、前記説明したのと同様である。 [0086] 本発明のキットは、上記の他に、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、キットが胆管細胞癌の発癌リスクの予測、または予後予測もしくは予後診断に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書等がさらに含まれていてもよい。 [0087] 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 実施例 1 [0088] 1.組織染色 胆管細胞癌におけるペリオスチンの発現レベルを確認するため、健常人、肝硬変患者および各種肝腫瘍患者におけるペリオスチン遺伝子の発現レベルを、組織染色により確認した。組織染色は、具体的には次のようにして行った。 [0089] 肝腫瘍を持つ患者から手術にて摘出された肝臓および肝腫瘍部分のホルマリン固定ブロック標本から得られた正常肝組織、硬変肝組織、肝細胞癌、硬化型肝細胞癌、肉腫型肝細胞癌、胆管細胞癌の各組織の4μm section組織切片から未染標本を作製し、抗ペリオスチン抗体を用いたChemMate ENVISION kit (DAKO Japan)による標準的な免疫化学組織染色法を行った。組織染色性の判定は、肝疾患における病理学的経験が25年以上の病理学専門医によって行った。 組織染色で用いた抗ペリオスチン抗体は、Journal of Allergy Clinical Immunology, vol.118, 98-104, 2006に記載の方法に従って作製したものを用いた。すなわち、ペリオスチン遺伝子の全てのエクソンを持ち、かつV5エピトープとHisタグを持ったペリオスチンタンパク質をウサギに免疫して、その血清からの精製抗体を、抗ペリオスチン抗体として用いた。 [0090] 上記組織免疫染色により、ペリオスチンの発現部位が茶色に染まる。染色の結果、胆管細胞癌患者由来の腫瘍組織においてペリオスチンタンパク質量が高いことが分かった。例えば図1(f)の写真を見ると、胆管細胞癌患者の腫瘍組織ではペリオスチンが強く発現していることが分かる。 [0091] 一方、対照群として用いた健常人および肝硬変患者由来の肝臓組織では、ペリオスチンタンパク質量がきわめて低かった(図1(a),(b))。また、肝細胞癌患者、硬化型肝細胞癌患者および肉腫型肝細胞癌患者由来の腫瘍組織でも、ペリオスチンタンパク質の発現が認められるが、その発現レベルは、胆管細胞癌患者由来の腫瘍組織と比べると明らかに低かった(図1(c)(d)(e))。 [0092] 2.血清中ペリオスチン濃度 2.1.血清中ペリオスチン濃度の測定 事前にインフォームド・コンセントを得た患者より採取した血液を用いて血清中ペリオスチン濃度を測定した。 患者の内訳は以下の表の通りである。 [0093] [表1] [0094] 血清中ペリオスチン濃度は抗ペリオスチン抗体を用いたELISA法で測定した。まず、ELISA用96穴プレートのウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(137 mM 塩化ナトリウム、2.68 mM 塩化カリウム、1.47 mM リン酸二水素カリウム及び8.04 mM リン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH 7.4))で2 μg/mlに希釈したSS16A(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100 μl注入し、25℃で12時間以上静置して、SS16Aをウェル底に吸着させた。ウェルを洗浄液(0.05% Tween-20を含有するPBS)で3回洗浄した後、ブロッキング溶液(0.5% カゼイン、100 mM 塩化ナトリウム及び0.1% アジ化ナトリウムを含有する50 mM Tris緩衝液(pH 8.0))を250 μl注入し、4℃で12時間以上静置した。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング溶液と同一組成の検体希釈溶液で6000倍に希釈した血清を100 μl注入し、25℃で12時間以上静置して、血清中のペリオスチンをウェルに吸着しているSS16Aに捕捉させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、ブロッキング溶液と同一組成の緩衝液で5 μg/mlに希釈した、ビオチンで標識されたSS17B(ラットモノクローナル抗ペリオスチン抗体)を100μl注入し、25℃で90分静置して、SS16Aに捕捉されたペリオスチンにビオチン標識SS17Bを結合させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、10000倍に希釈した、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたストレプトアビジンを100 μl注入し、25℃で60分静置して、ビオチン標識SS17Bと結合させた。ウェルを洗浄液で5回洗浄した後、HRPの基質溶液(0.8 mM TMBZ、2.5 mM 過酸化水素、30 mM リン酸水素二ナトリウム及び 20 mM クエン酸緩衝液)を100 μl注入し、25℃で20分間反応させた後、0.7 N 硫酸により反応を停止させた。その後、吸光度計(マルチラベルプレートカウンター(パーキンエルマー社製))を用いて450 nmの吸光度を測定した。 上記SS16AおよびSS17Bは、次のように作製したものである。すなわち、ウイスターラット(日本チャールスリバー株式会社)の足底部にリコンビナントペリオスチンタンパク質を注入し、3日後膝窩、鼠径、腸骨リンパ節を取り出し、Sp2/Oミエローマ細胞と融合した。生育した融合細胞株の中から2つのクローンを確立し、SS16A、SS17Bと命名した。尚、リコンビナントペリオスチンタンパク質として、Journal of Allergy Clinical Immunology, vol.118, 98-104, 2006に記載の方法によって調製したものを用いた。 [0095] また、大腸菌で発現させた精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を同様に測定して、このELISA法におけるペリオスチン濃度-吸光度標準曲線を作成した。 [0096] 血清において測定した吸光度を、作成した標準曲線に当てはめ、血清中のペリオスチン濃度を算出した。 [0097] その結果、測定した血清ペリオスチン濃度(ng/ml)は以下の通りであった。 [0098] [表2] [0099] 2.2.血清中ペリオスチン濃度についての群間比較 上記で測定した血清中ペリオスチン濃度についての群間比較を行うため、総数が5未満の患者群を除いた健常人群、肝硬変患者群、肝細胞癌患者群、混合型肝癌患者群および胆管細胞癌患者群の5グループでKruskal-Wallis検定を行った。その結果、P<0.001で有意差が認められた。 [0100] そこで、健常人群-胆管細胞癌患者群間、肝硬変患者群-胆管細胞癌患者群間、肝細胞癌患者群-胆管細胞癌患者群間、および混合型肝細胞癌患者群-胆管細胞癌患者群間の各2群間での比較をまずMann-Whitney U testで行い、得られたP値をBonferroni補正法により補正し( 5C 2=10で乗ずる)、有意差を検定した。その結果、健常人群-胆管細胞癌患者群間(P=0.02)、肝硬変患者群-胆管細胞癌患者群間(P=0.01)、肝細胞癌患者群-胆管細胞癌患者群間(P=0.01)、および混合型肝細胞癌患者群-胆管細胞癌患者群間(P=0.04)の各2群間で有意差を認めた。それ以外の2群間組み合わせでは有意差を認めなかった(すべてP>0.05)。 [0101] 図2は、上記血清中ペリオスチン濃度についての群間比較の結果をまとめたものである。図2に示したように、血清中ペリオスチン濃度について、胆管細胞癌患者群のみが、他群と比較して有意に高い値を示した。 [0102] 2.3.血清中ペリオスチン濃度を指標とした胆管細胞癌の検出 (1)二項ロジスティック回帰分析 次に、血清中ペリオスチン濃度を測定した全例(79例)において、血清中ペリオスチン濃度を指標として用いて胆管細胞癌患者群をそれ以外の群から分離可能かを検討した。 まず、二項ロジスティック回帰分析を行った。具体的には、ペリオスチン濃度を共変量として、従属変数に「各疾患群とそれ以外(ダミー変数)」を代入し、検定を行った。その結果を下記表に示す。 [0103] [表3] [0104] 上記表に示したように、ペリオスチン濃度は胆管細胞癌群とのみ有意に関係していることが確認された(P=0.001)。 [0105] (2)Receiver-Operating-Characteristics(ROC)解析 上記結果を受けて、血清中ペリオスチン濃度に関して、母集団(血清中ペリオスチン濃度を測定した全例(79例))から胆管細胞癌を抽出しうる至適閾値(cut-off値)を探すためにReceiver-Operating-Characteristics(ROC)曲線を用いて検討を行った。すなわち、以下のようにcut-off値の設定と、設定したcut-off値を用いた場合の診断精度の測定を行った。 [0106] 先ず、血清中ペリオスチン濃度の測定結果に基づき、ROC解析を行った(図3)。その結果、ROC曲線下面積(are under curve [AUC])は0.943(95%CI, 0.872-1.0)で統計学的に有意であり(P < 0.001)、cut-off値の候補として、302 ng/mlが設定できた。 [0107] ここで、胆管細胞癌患者群(n=8)とその他の疾患患者群(n=71)とを比較した結果を示すグラフを図4に示す。図4において、胆管細胞癌患者群(n=8)の血清中ペリオスチン濃度(ng/ml)の中央値(25%-75%タイル四分位範囲)は513(315-897)で、他疾患患者群(n=71)の152(112-213)と比較して、有意に高値であった(Mann-Whitney test, P < 0.0001)。この図4のグラフ(箱ひげ図)に、前記のようにして設定したcut-off値(302 ng/ml)を併せて表示すると、設定したcut-off値が両群間を区別するための閾値として有用なことが見てとれる。 尚、胆管細胞癌患者群(n=8)について平均値の95%信頼区間の上限値を求めたところ、上限値は1506 ng/mlであった。 [0108] 次に、設定したcut-off値による胆管細胞癌検出の精度について検討した。 [0109] [表4] [0110] 上記表に示したように、cut-off値を302 ng/mlに設定したところ、胆管細胞癌検出のtrue positive (TP)は7例、false negative (FN)は1例、false positive (FP)は6例、true negativeは65例であった。 血清中ペリオスチンタンパク質濃度のcut-off値を302 ng/mlに設定すると、今回の母集団から胆管細胞癌を検出しうる診断精度は、感度 0.88、特異度 0.92、正診率 0.91、 陰性的中率 0.98、陽性尤度比は10.4である。このことから、上記設定したcut-off値により、胆管細胞癌を高精度で検出できることが示唆された。 尚、血清中ペリオスチンタンパク質濃度のcut-off値を187 ng/mlに設定した場合、感度1.00、特異度0.61である。このことから、cut-off値を187 ng/mlに設定した場合でも、胆管細胞癌を比較的高い精度で検出できることが分かった。 [0111] 今後、測定データを積み重ねることで、より確実に胆管細胞癌を検出しうるcut-off値を設定することも可能である。 実施例 2 [0112] 1. ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体の調製 以下の手順により、ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体の調製を行った。 [0113] ペリオスチン(ヌクレオチド配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.D13666のヌクレオチド配列;アミノ酸配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.BAA02837のアミノ酸配列)にV5エピトープ/Hisタグを付加させたリコンビナントペリオスチンタンパク質を昆虫細胞であるS2細胞において発現させた上で精製した。 [0114] 具体的には、S2細胞の形質転換体は次のように調製した。 pMT/Bip/V5-HisAプラスミド(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)にペリオスチンの上記部分をコードするcDNAを挿入して、これをpMT/Bip/V5-HisA-periostinとした。 S2細胞にpMT/Bip/V5-HisA-periostin及びハイグロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドであるpCoHygro(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)を公知の方法で共導入し、形質転換した。 ハイグロマイシンにより形質転換体を選択し、安定形質転換体を得た。 [0115] そして、S2細胞の形質転換体では、V5エピトープ/Hisタグの結合したペリオスチンを発現させた。 [0116] S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の精製は次のように行った。 ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導した。 これにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は培養上清中に発現分泌された。 [0117] この培養上清をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に透析した後、ニッケルレジン(Ni-NTA Agarose、Qiagen社、ドイツ国Hilden)と混合して、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質をレジンに結合させた。 レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパク質を溶出した。 溶出されたS2リコンビナントペリオスチンタンパク質をPBSに透析し、これを動物の免疫原とした。 [0118] 次に、これらのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質をCFA(完全フロイントアジュバント)〔Sigma-Aldrich社(米国ミズーリ州St.Louis)のFreund’s Adjuvant,Complete〕と混合してラビットに免疫し、その後血清を採取した。 [0119] この具体的な手順は次の通りである。 ラビットとして、New Zealand Whiteラビット(雌、体重1.5~2Kg)〔ケービーティーオリエンタル社、日本国佐賀県鳥栖市〕を用いた。 [0120] これらのラビットは、免疫原であるS2リコンビナントペリオスチンタンパク質とCFAの混合物をラビット背部皮下数カ所に注射することにより免疫した。 [0121] 免疫の5~7週後、免疫ラビットの耳静脈より注射針と注射器を用いて採血し、血清を得た。 [0122] 最後に、血清からIgGを次のように精製した。 すなわち、採取した血清に二倍量の50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH4.0)を加えた後、塩酸でpHを4.0に調整した。 この血清を撹拌しながら、血清の1/15量のカプリル酸を加え、30分間撹拌した後、9,200gで10分間遠心した。 上清をPBSに透析し、精製IgGとして、ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体を取得した。 [0123] 2. ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体の調製 以下の手順により、ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体の調製を行った。 [0124] S2リコンビナントペリオスチンタンパク質(20~50μg/ラット)を、CFA(完全フロイントアジュバント)又はTiter Max Gold(化学合成アジュバント)〔フナコシ社、日本国東京都〕と混合して、一対の相互に結合したものを免疫原とした。 [0125] 具体的な手順は次の通りである。 S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は、次のように調製した。 まず、ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導した。 これにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は培養上清中に発現分泌された。 [0126] この培養上清をPBSに透析した後、ニッケルレジン(Ni-NTA Agarose、Qiagen社、ドイツ国Hilden)と混合して、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質をレジンに結合させた。 レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパク質を溶出した。 [0127] CFA(完全フロイントアジュバント)としてFreund’s Adjuvant、Complete(Sigma-Aldrich社、米国ミズーリ州St.Louis)を用いた。 また、化学合成アジュバントとしてTiter Max Gold(フナコシ社、日本国東京都)を用いた。 そして、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液1容に対して、CFA又はTiter Max Goldを1容の割合で混合した。 [0128] 次に、雌ラットの足蹠に免疫原として、20~50μgのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液と、CFA又はTiter Max Goldとの混合物を皮下注射し、10日~2週間後、再度ラットの足蹠に免疫原として、20~50μgのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液と、CFA又はTiter Max Goldとの混合物を皮下注射した。 なお、ここで、ラットは、Wistarラット(雌、6~8週齢)〔日本チャールズリバー社、日本国神奈川県横浜市〕を用いた。 [0129] 最終免疫より3~4日後、免疫したラットの膝窩、鼠径、腸骨リンパ節内の細胞と、ミエローマ細胞(Sp2/O細胞)を1対1から10対1の割合で混合し、一般的な方法でポリエチレングリコール(PEG1500、Roche社、スイス国)を加えて細胞融合させ、生育したハイブリドーマコロニーを選別した。 [0130] 具体的には、細胞融合は次のように行った。 混合した前記リンパ節細胞とミエローマ細胞(Sp2/O細胞)を遠心して上清を除き、室温でポリエチレングリコール(PEG1500、Roche社、スイス国)1mLに1分間かけて懸濁した後、37℃で1分間撹拌した。 血清不含培地1mLを1分間かけて加え、その後、血清不含培地10mLを1分間かけて加えた。 細胞を数回洗浄した後、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン含有培地に懸濁して96穴マイクロタイタープレートに分注して、37℃において5%CO 2存在下で培養した。 [0131] 生育したモノクローナル抗体産生細胞株(融合細胞株)の選別の方法としては、細胞融合から7~14日後、免疫原に使用したタンパク質を固相化し、融合細胞培養上清を一次抗体としたELISA法の系にて行った。 このELISA法は具体的には、次のように行った。 1μg/mLの免疫原に使用したタンパク質を96穴マイクロタイタープレートに分注し、数時間固相化させた。 この固相化溶液を洗浄した後、融合細胞培養上清を各ウェルに加え、1時間室温にて静置した。 融合細胞培養上清を洗浄して、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体(GE Healthcare社、Little Chalfont、英国)を加え1時間室温に静置した。 この二次抗体を洗浄後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL社、米国メリーランド州Gaithersburg)を加えて発色させ、405nmの吸光度を測定した。 [0132] 生育した融合細胞株の中から二つのクローンを確立し、SS17B株、SS18A株とそれぞれ命名した。 そして、これらの選別したモノクローナル抗体産生細胞株からIgGを次のように精製した。 [0133] このモノクローナル抗体産生細胞株を、GIT培地(日本製薬社、日本国東京都)を用いてCO 2インキュベータ内37℃で培養した。 培養後、上清中のIgGをプロテインGカラム(GE Healthcare社、Little Chalfont、英国)に結合させた。 結合させたIgGを、50mMクエン酸水溶液(pH2.6)で溶出した。 溶出液4容量に対して、1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液1容量を添加し、精製IgGとして、ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体をそれぞれのモノクローナル抗体産生細胞株より取得した。 すなわち、SS17B株、SS18A株各々のモノクローナル抗体産生細胞株から、それぞれラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体を得ることができた。 [0134] 3. 血清中ペリオスチン濃度の測定 事前にインフォームド・コンセントを得た患者より採取した血液を用いて血清中ペリオスチン濃度を測定した。 [0135] 3.1.試料 試料として、次の通り、胆管細胞癌の罹患者の血清、又は対照者の血清を用いた。 (1)胆管細胞癌の罹患者(計8例)の血清 (2)対照者(計71例)の血清 対照者の内訳: ・ 肝細胞癌の罹患者(計24例) ・ 混合型肝細胞癌の罹患者(計7例) ・ 肝硬変の罹患者(計26例) ・ 硬化型肝細胞癌の罹患者(計3例) ・ 肉腫様肝細胞癌の罹患者(計2例) ・ 血管筋脂肪腫の罹患者(計1例) ・ 血管肉腫の罹患者(計1例) ・ 健常人(計7例) [0136] 3.2.試料中のペリオスチン濃度の測定 (1)抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定 前記3.1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンポリクローナル抗体を使用した蛍光免疫測定法により測定した。 [0137] (a) まず、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)〔137mMの塩化ナトリウム、2.68mMの塩化カリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、及び8.04mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH7.4)〕により10μg/mLに希釈した前記1のラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体を50μL注入し、4℃で一晩静置し、このラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体をこのマイクロタイタープレートの各ウェルに固相化した。 [0138] (b) 次に、このマイクロタイタープレートのウェル中の液を除いた後、ブロッキング液-A〔3%のBSAを含有するPBS〕を各ウェルに180μL注入し、室温で1時間静置した。 [0139] (c) 次に、各ウェルを洗浄液-A〔0.05%のTween-20を含有するTBS〕で3回洗浄した。 [0140] (d) 次に、前記3.1の(1)及び(2)の各試料それぞれについて、試料希釈液-A〔0.05%のTween-20を含有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝生理食塩水[TBS]〕で10倍に希釈した後、その50μLを前記のウェルに注入し、室温にて1時間静置し、反応を行わせた。 これにより、試料に含まれるペリオスチンを、前記のウェルに固相化したラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体に結合させた。 [0141] (e) 次に、各ウェルを前記の洗浄液-Aで3回洗浄した。 [0142] (f) 前記1のラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体にビオチンを結合させ標識したビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体を、前記の試料希釈液-Aで1μg/mLとなるように希釈し、その50μLを前記のウェルに注入し、室温にて1時間静置し、反応を行わせた。 これにより、前記の固相化ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体に結合したペリオスチンに、ビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体を結合させた。 [0143] (g) 次に、各ウェルを前記の洗浄液-Aで3回洗浄した。 [0144] (h) 次に、1,000倍に希釈したユーロピウム(Eu)で標識されたストレプトアビジン(DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)の50μLを前記のウェルに注入し、25℃にて60分間静置し、反応を行わせた。 これにより、前記の「96穴マイクロタイタープレートのウェル」-「ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体」-「ペリオスチン」-「ビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体」のビオチンに、「ユーロピウム標識ストレプトアビジン」のストレプトアビジンを結合させた。 [0145] (i) 次に、各ウェルを前記のユーロピウム標識ストレプトアビジン専用の洗浄液(DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)で5回洗浄した。 [0146] (j) 次に、増強溶液(Enhancement Solution、DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)の50μLを前記のウェルに注入し、室温にて10~15分間静置し、反応を行わせた後、時間分解蛍光光度計を用いて各ウェルについて蛍光強度の測定を行った。 [0147] (k) なお、精製したペリオスチンタンパク質を前記の試料希釈液で希釈して、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を作成し、これらの試料のそれぞれについて、前記(a)~(j)の記載に従って測定を行い、この蛍光免疫測定法における「ペリオスチン濃度-蛍光強度」の標準曲線を作成した。 [0148] (l) 前記(j)において測定した各ウェルの蛍光強度を、前記(k)で作成した「ペリオスチン濃度-蛍光強度」の標準曲線に当てはめ、前記3.1の(1)及び(2)の各試料それぞれのペリオスチン濃度を求めた。 [0149] (2)抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定 前記3.1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用した酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。 [0150] (a) まず、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)〔137mMの塩化ナトリウム、2.68mMの塩化カリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、及び8.04mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH7.4)〕により2μg/mLに希釈した前記2のラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(モノクローナル抗体産生細胞株:SS18A株)を100μL注入し、25℃で18時間静置し、このラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)をこのマイクロタイタープレートの各ウェルに固相化した。 [0151] (b) 次に、このマイクロタイタープレートのウェル中の液を除いた後、ブロッキング液-B〔0.5%のカゼイン、100mMの塩化ナトリウム、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含有する50mMのトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン緩衝液[トリス緩衝液](pH8.0)〕を各ウェルに250μL注入し、4℃で18時間静置した。 [0152] (c) 次に、各ウェルを洗浄液-B〔0.05%のTween-20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)〕で3回洗浄した。 [0153] (d) 次に、前記3.1の(1)及び(2)の各試料それぞれについて、試料希釈液-B〔0.5%のカゼイン、100mMの塩化ナトリウム、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含有する50mMのトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン緩衝液[トリス緩衝液](pH8.0)〕で200倍に希釈した後、その100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて18時間静置し、反応を行わせた。 これにより、試料に含まれるペリオスチンを、前記のウェルに固相化したラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)に結合させた。 [0154] (e) 次に、各ウェルを前記の洗浄液-Bで5回洗浄した。 [0155] (f) 前記2のラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(モノクローナル抗体産生細胞株:SS17B株)にパーオキシダーゼ(POD)を結合させ標識したPOD標識抗ペリオスチンモノクローナル抗体を、前記の試料希釈液-Bで50ng/mLとなるように希釈し、その100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて90分間静置し、反応を行わせた。 これにより、前記の固相化ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)に結合したペリオスチンに、POD標識抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS17B株)を結合させた。 [0156] (g) 次に、各ウェルを前記の洗浄液-Bで5回洗浄した。 [0157] (h) 次に、PODの基質液〔0.8mMの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMBZ)、2.5mMの過酸化水素、及び30mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する20mMのクエン酸緩衝液〕の100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて10分間静置し、反応を行わせ、発色させた。 その後、各ウェルに0.7Nの硫酸を注入し、この反応を停止させた。 [0158] (i) 次に、分光光度計を用いて各ウェルについて450nmにおける吸光度の測定を行った。 [0159] (j) なお、精製したペリオスチンタンパク質を前記の試料希釈液で希釈して、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を作成し、これらの試料のそれぞれについて、前記(a)~(i)の記載に従って測定を行い、この酵素免疫測定法における「ペリオスチン濃度-吸光度」の標準曲線を作成した。 [0160] (k) 前記(i)において測定した各ウェルの吸光度を、前記(j)で作成した「ペリオスチン濃度-吸光度」の標準曲線に当てはめ、前記3.1の(1)及び(2)の各試料それぞれのペリオスチン濃度を求めた。 [0161] 3.3.測定結果 (1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果 前記3.2の(1)及び(2)のそれぞれにおける胆管細胞癌の罹患者(計8例)及び対照者(計71例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を、図5に示した。 [0162] この図5の左側に、前記3.2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。 また、この図5の右側に、前記3.2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。 [0163] そして、この図5の左側及び右側のいずれにおいても、横軸は試料が胆管細胞癌の罹患者の血清であるか、又は対照者の血清であるかの別を表し、縦軸は測定した各試料に含まれるペリオスチンの濃度(ng/mL)を表す。 [0164] (2)測定結果を基にしたROC曲線 前記3.2の(1)及び(2)のそれぞれにおける胆管細胞癌の罹患者(計8例)及び対照者(計71例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に、ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic Curve)を作成した。 このROC曲線を図6に示した。 この図6において、横軸は「1-特異度」を、縦軸は「感度」を表す。 [0165] そして、この図6において、前記3.2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を破線で表し、前記3.2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を実線で表した。 [0166] なお、前記のポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)は、0.791であった。 また、前記のモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(AUC)は、0.852であった。 [0167] 3.4.考察 (1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果について (a) 図5の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、胆管細胞癌の罹患者のみならず、対照者においても、その血清中のペリオスチン濃度は低値から高値まで広く分布していることが分かる。 [0168] ところで、先に記載した通り、ペリオスチンは、胆管細胞癌の罹患者においては高値となるものの、他の疾患、例えば、肝細胞癌、肝硬変、硬化型肝細胞癌、肉腫様肝細胞癌、血管筋脂肪腫、若しくは血管肉腫の罹患者、又は健常人においては、低値である。 よって、この図5の左側のポリクローナル抗体を使用した場合の測定結果で、対照者において、その血清中のペリオスチン濃度が中程度値~高値となっているのは、偽陽性によるものである。 従って、このペリオスチン濃度の測定では、胆管細胞癌の罹患者においては陽性であると明確に判別され、そして、対象者、すなわち非罹患者においては陰性であると明確に判別されることが望ましい。 [0169] この図5の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度200ng/mLに設定した。 このとき、このポリクローナル抗体を使用した場合の測定の感度〔この測定における罹患者群での陽性率(真の陽性率)〕は62.5%であり、特異度〔この測定における非罹患者群での陰性率(真の陰性率;すなわち、1-偽陽性率)〕は74.6%であった。 [0170] (b) 図5の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、対照者の血清中のペリオスチン濃度の分布は、より低値域に纏まっていることが分かる。 この図5の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度154ng/mLに設定した。 このとき、このモノクローナル抗体を使用した場合の測定の感度は75.0%であり、特異度は94.4%であった。 [0171] (c) すなわち、このことより、ペリオスチンの測定に使用する抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値を、ペリオスチン濃度200ng/mLから154ng/mLへと23%も低下させることができたことが分かる。 [0172] そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、測定の感度を62.5%から75.0%へと高めることができたことが分かる。 [0173] 更に、同じく、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の特異度を74.6%から94.4%へと高めることができたことが分かる。 [0174] これらのことより、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。 [0175] (2)測定結果を基にしたROC曲線について 図6より、抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(破線)に比較し、モノクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(実線)は、感度、及び特異度のそれぞれが向上していることが分かる。 そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合(破線)に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合(実線)は、曲線下面積(AUC)が、0.791から0.852へと増加(向上)しており、測定の正確性が改善されていることが分かる。 [0176] このROC曲線の結果からも、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。 [0177] 以上、実施例に示した通り、ペリオスチン遺伝子は、胆管細胞癌の患者由来の組織で発現が増加しているので、被験者由来の生体試料におけるペリオスチンは、胆管細胞癌を検出または診断するためのマーカーとして利用し得る。特に、胆管細胞癌患者では、血清中ペリオスチン濃度が他疾患群に比して有意に高値であり、血清中ペリオスチンタンパク質量が胆管細胞癌の検出に有用であることが示された。また、血清中ペリオスチンタンパク質量を測定する際にモノクローナル抗体を用いることにより、ポリクローナル抗体を用いた場合と比較して測定の感度が向上することが示された。 [0178] また、ペリオスチン遺伝子は、胆管細胞癌の患者由来の組織で発現が増加しているので、ペリオスチン遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩は、胆管細胞癌の予防・治療剤として使用し得る。 [0179] さらに、これらのことから、ペリオスチン遺伝子の発現レベルまたはペリオスチンタンパク質量を指標として、胆管細胞癌の予防・治療薬をスクリーニングできることも分かる。 |
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