DENTAL IMPLANT MATERIAL AND METHOD FOR MANUFACTURING SAME
外国特許コード | F150008125 |
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掲載日 | 2015年2月10日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2013JP078080 |
国際公開番号 | WO 2014073343 |
国際出願日 | 平成25年10月16日(2013.10.16) |
国際公開日 | 平成26年5月15日(2014.5.15) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
DENTAL IMPLANT MATERIAL AND METHOD FOR MANUFACTURING SAME
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発明の概要(英語) | Provided is a dental implant material primarily composed of zirconia, the material having excellent bioactivity without loss of the inherent characteristics of zirconia. A surface layer composed of a solid solution of CaO and ZrO2 is formed on at least a portion of the surface of the substrate composed of zirconia to thereby constitute the dental implant material. |
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国際特許分類(IPC) | |
指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
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発明の名称 |
歯科用インプラント材料及びその製造方法
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発明の概要 | ジルコニアを主体とする歯科用インプラント材料であって、ジルコニアが本来的に有する特性を損なうことなく、優れた生体活性を有するものを提供すること。 ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を形成せしめることにより、歯科用インプラント材料を構成した。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を有することを特徴とする歯科用インプラント材料。 [請求項2] 前記表層が、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層が表面に形成された前記基材を、焼成せしめることによって形成されたものである請求項1に記載の歯科用インプラント材料。 [請求項3] 請求項1又は請求項2に記載の歯科用インプラント材料の製造方法にして、 ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、カルシウムイオン含有溶液を付着させ、該カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層を形成する工程と、 前記溶液層が形成された基材を焼成せしめることにより、該基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を形成する工程と、 を有する歯科用インプラント材料の製造方法。 [請求項4] 前記カルシウムイオン含有溶液が酢酸カルシウム水溶液である請求項3に記載の歯科用インプラント材料の製造方法。 [請求項5] 前記溶液層が形成された基材を焼成する際の焼成温度が1050~1300℃である請求項3又は請求項4に記載の歯科用インプラント材料の製造方法。 [請求項6] 前記表層が形成された基材を、ヒトの体液にほぼ等しいイオン濃度を有する擬似体液中に浸漬せしめる工程を更に有する請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の歯科用インプラント材料の製造方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 歯科用インプラント材料及びその製造方法 技術分野 [0001] 本願は、歯科用インプラント材料及びその製造方法に関するものである。 背景技術 [0002] 老齢、疾病等によって失われた歯牙を再建するために用いられる人工歯根等の歯科用インプラント材料としては、従来より、チタン(Ti)を始めとする様々な金属材料が使用されている。 [0003] しかしながら、そのような種々の金属材料からなる歯科用インプラント材料は、日本国内で健康保険が適用されないものが多いことから、患者に対する経済負担が大きいとの問題が指摘されている。また、近年、金属材料からなる歯科用インプラント材料に対してアレルギー症状を訴える患者が増加傾向にあることから、従来のインプラント材料を使用し難いケースが増えてきている。このような状況下、従来の金属材料からなるインプラント材料に代わる、新規な歯科用インプラント材料の開発が望まれている。 [0004] 一方、ジルコニアは、化学的安定性、寸法安定性、機械的強さや靭性等に優れたセラミックス材料として、従来より広く知られている。このように、ジルコニアは、優れた特性を有するものであるものの、生体活性(生体との親和性)に乏しいものであるため、例えばジルコニアを歯科用インプラント材料として用いる場合には、表面の粗造化等の処理が必要である。 [0005] また、ジルコニアの表面に化学的に親水性を付与することにより、生体活性を発現する材料についても、種々、提案されている。例えば、特許文献1(特開2002-186663号公報)においては、定形の基材と、この基材の表面に形成され、Zr-OH基を有するジルコニア結晶相を含む被膜とを備えることを特徴とする硬組織修復材料が提案されており、また、特許文献2(特表2003-512895号公報)においては、ジルコニアを含む基材からなる硬組織修復材であって、前記硬組織修復材は、前記基材の表面に、前記基材に含まれている前記ジルコニアを構成するジルコニウム原子と直接結合している親水基を有していることを特徴とする硬組織修復材が、提案されている。 [0006] しかしながら、これまでに提案等されている、ジルコニアを基材とする歯科用インプラント材料にあっては、何れも、生体活性等の点において十分なものではなく、実用化までには至っていないのが現状であり、ジルコニアを基材とする新規な歯科用インプラント材料の開発が、切望されているのである。 先行技術文献 特許文献 [0007] 特許文献1 : 特開2002-186663号公報 特許文献2 : 特表2003-512895号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0008] ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、ジルコニアを主体とする歯科用インプラント材料であって優れた生体活性を有するものを、提供することにある。また、そのような歯科用インプラント材料を有利に製造することが出来る方法を提供することについても、本発明の解決課題とするものである。 課題を解決するための手段 [0009] そして、本発明は、かかる課題を解決するために、ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を有することを特徴とする歯科用インプラント材料を、その要旨とするものである。 [0010] なお、本発明に係る歯科用インプラント材料においては、好ましくは、前記表層が、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層が表面に形成された前記基材を、焼成せしめることによって形成されたものである。 [0011] また、本発明は、上述の如き各態様に係る歯科用インプラント材料の製造方法にして、ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、カルシウムイオン含有溶液を付着させ、該カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層を形成する工程と、前記溶液層が形成された基材を焼成せしめることにより、該基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を形成する工程と、を有する歯科用インプラント材料の製造方法をも、その要旨とするものである。 [0012] なお、本発明に係る歯科用インプラント材料の製造方法においては、好ましくは、前記カルシウムイオン含有溶液が酢酸カルシウム水溶液である。 [0013] また、本発明に係る歯科用インプラント材料の製造方法においては、有利には、前記溶液層が形成された基材を焼成する際の焼成温度が1050~1300℃である。 [0014] 加えて、本発明に係る歯科用インプラント材料の製造方法においては、望ましくは、前記表層が形成された基材を、ヒトの体液にほぼ等しいイオン濃度を有する擬似体液中に浸漬せしめる工程を、更に有する。 発明の効果 [0015] このように、本発明に係る歯科用インプラント材料にあっては、ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を有するものであるところから、材料全体として、ジルコニアが本来的に有する優れた特性(機械的強度等)を有しつつ、優れた生体活性を発現することとなるのである。 [0016] また、本発明に係る歯科用インプラント材料の製造方法によれば、上述の如き構成を有する歯科用インプラント材料を、簡易な手法にて製造することが可能である。 図面の簡単な説明 [0017] [図1] 実施例における接触角の測定結果を示すグラフである。 [図2] 実施例における骨芽細胞様細胞(マウス由来)の増殖試験の結果を示すグラフである。 [図3] 実施例における骨芽細胞様細胞(ヒト骨肉腫由来)の増殖試験の結果を示すグラフである。 発明を実施するための形態 [0018] ところで、本発明に係る歯科用インプラント材料は、ジルコニアを基材とするものである。この基材たるジルコニアとしては、従来より、歯科用途に使用されている各種のジルコニアの何れをも使用することが出来る。具体的には、純粋ジルコニア、安定化ジルコニア(キュービックジルコニア)、イットリア系ジルコニア(Y-TZP)、セリア系ジルコニア(Ce-TZP)、ジルコニア・アルミナ複合体等の何れであっても使用可能であり、これら公知のジルコニアの中から、目的とする歯科用インプラント材料に応じたものが適宜に選択されて、使用される。 [0019] そして、本発明に係る歯科用インプラント材料にあっては、ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層が設けられているところに、大きな技術的特徴が存在するのである。即ち、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層中にはカルシウムイオンが存在していることから、このカルシウムイオンの存在によって、材料全体が効果的な生体活性(生体親和性)を発現することとなるのである。 [0020] なお、そのようなCaOとZrO2 との固溶体からなる表層の厚さは、最終的な歯科用インプラント材料の用途等に応じて適宜に決定されることとなるが、その厚さが薄すぎると、材料が十分な生体活性を発現しない恐れがあり、一方、表層の厚さが厚すぎると、ジルコニアが本来的に有する特性(優れた機械強度、靭性等)を損なう恐れや、必要以上にコストがかかる恐れがある。従って、本発明に係る歯科用インプラント材料において、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層の厚さは、一般に、1~3μm程度とされる。 [0021] ところで、本発明の歯科用インプラント材料を製造するに際しては、先ず、基材となるジルコニアが準備される。本発明の歯科用インプラント材料においては、前述したように、従来より歯科用途に使用されている各種のジルコニアを基材として使用することが可能である。なお、一般に市販されているジルコニアを基材として使用する場合、かかる市販品が予備焼結されたもの等である場合には、必要に応じて、焼成作業が施される。 [0022] なお、本発明の歯科用インプラント材料を製造するに際しては、後述するカルシウムイオン含有溶液を基材に付着せしめる前に、基材の表面、特にカルシウムイオン含有溶液を付着せしめる部位に対して、サンドブラスト加工等の粗造化処理を施すことが好ましい。 [0023] 基材となるジルコニアを準備する一方で、カルシウムイオン含有溶液が調製される。このカルシウムイオン含有溶液としては、ジルコニアからなる基材の表面の少なくとも一部に(目的とする部位に)、均一に付着せしめることが可能なものであれば、如何なる溶液であっても使用することが出来る。具体的には、溶媒としては、水や種々の有機溶媒等を、また、溶質としては各種カルシウム塩等を例示することが出来る。特に、酢酸カルシウムは、水に対する溶解性が高く、一般的な塗布方法を用いて均一に、且つ容易に、基材の表面に付着せしめることが可能であることから、本発明においては、酢酸カルシウム水溶液が有利に用いられる。なお、酢酸カルシウム水溶液を使用する場合、その濃度は、0.01~0.10mol/L程度であることが好ましい。 [0024] 次いで、基材たるジルコニアの表面の少なくとも一部に、カルシウムイオン含有溶液を付着させることにより、かかるカルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層を形成せしめる。基材の表面にカルシウムイオン含有溶液を付着する際の手法としては、基材表面の目的とする部位に均一な溶液層を形成可能なものであれば、従来より公知の各種手法の何れをも採用することが可能であり、具体的には、塗布や、溶液中への基材の浸漬(ディッピング)等を例示することが出来る。また、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層の厚さが、最終的に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層の厚さに影響を及ぼすことから、目的とする表層の厚さに応じて、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層の厚さは適宜に決定される。 [0025] そして、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層が形成された基材を焼成せしめることにより、かかる基材の表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を形成せしめるのである。 [0026] カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層が形成された基材を焼成する際の温度は、本発明において極めて重要である。即ち、カルシウムイオン含有溶液として酢酸カルシウム水溶液を用いた場合、約150~160℃で、酢酸カルシウムは炭酸カルシウム及びアセトンに分解する。また、約850℃で、炭酸カルシウムは酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する。更に、約1100℃で、酸化カルシウムとジルコニアが反応してジルコン酸カルシウム(CaZrO3 )となる。そして、約1350℃で、ジルコン酸カルシウムは分解し、立方晶ジルコニアの形成のためにカルシウムが安定化元素として消費され、材料全体の機械的強度(曲げ強度)の低下を引き起こす。本発明に係る歯科用インプラント材料は、基材たるジルコニアの表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層、換言すれば、Caが固溶した正方晶ZrO2 からなる表層が設けられていることにより、ジルコニアが本来的に有する優れた特性(機械的強度、靭性等)を有しつつ、優れた生体活性をも発揮するものである。従って、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層(Caが固溶した正方晶ZrO2 からなる表層)が効果的に形成されるべく、カルシウムイオン含有溶液よりなる溶液層が形成された基材を焼成する際の焼成温度は、1050~1300℃、好ましくは1100~1200℃に設定されることとなる。 [0027] また、本明細書及び請求の範囲で言うところの「CaOとZrO2 との固溶体からなる表層」とは、「CaOとZrO2 との固溶体を主たる成分とする表層」を意味するものであり、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、表層中に他の成分が含まれることを許容するものである。ジルコニアからなる基材の表面に酢酸カルシウム水溶液等のカルシウムイオン含有溶液を塗布し、焼成すると、約1100℃付近において、CaOとZrO2 との固溶体と、CaZrO3 とが共存する表層が形成せしめられることを、本発明者は確認している。即ち、本発明に係る歯科用インプラント材料は、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層(CaOとZrO2 との固溶体を主たる成分とする表層)を有していることにより、ジルコニアが本来的に有する特性(優れた機械的強度等)を損なうことなく、優れた生体活性を発揮するものであり、かかる効果を阻害しない限りにおいて、表層中に他の成分(例えばAl2O3、Y2O3、CeO2 、SiO2 等)が含まれることを妨げる、乃至は排除するものではない。 [0028] なお、上述した、溶液層が形成された基材の焼成は、大気雰囲気中で実施されるのであり、また、その焼成時間は、上述した焼成温度や基材の大きさ等に応じて適宜に決定される。加えて、焼成装置としては、従来より公知の各種の焼成炉(電気炉等)を使用することが可能である。 [0029] 本発明に係る歯科用インプラント材料は、その表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層を有していることから、優れた生体活性を発現するものであるが、より優れた生体活性を発現させるためには、上記した固溶体からなる表層が形成された基材を、ヒトの体液にほぼ等しいイオン濃度を有する擬似体液中に浸漬せしめることが好ましい。このように、擬似体液中に浸漬せしめることによって、表層中の余剰なカルシウムイオンを除去し、基材(歯科用インプラント材料)表面にリン酸イオンを含む水酸化物ゲルを効果的に形成せしめることが可能である。なお、擬似体液中への浸漬時間は、一般に、1日~1ヶ月程度である。 [0030] 以上の如くして得られた歯科用インプラント材料にあっては、基材たるジルコニアの表面の少なくとも一部に、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層が設けられているところから、ジルコニアが本来的に有する優れた特性(機械的強度、靭性等)を有しつつ、優れた生体活性をも発揮することとなるのである。 実施例 [0031] 以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。 [0032] 先ず、以下の手順に従って、基材A、Bを調製した後、歯科用インプラント材料を作成した。 [0033] -基材Aの調製- 予備焼結されたY-TZP(商品名:Cercon、DeguDent社製、独国)のブロック体より、ダイヤモンドカッターにて所定の大きさの円板状体及び板状体を切り出し、それら切り出した円板状体及び板状体を、大気雰囲気下、1350℃で2時間、高温電気炉(光洋リンドバーグ株式会社製)にて焼成した。なお、焼成による収縮率は20%であり、焼成後の円板状体の大きさは、直径:18~20mm、厚さ:1.5~2.0mmであり、焼成後の板状体の大きさは、長さ:20mm、幅:4.0~5.0mm、厚さ:0.5~0.8mmであった。円板状体の基材Aは、後述する細胞適合性(骨芽細胞様細胞の増殖試験)及び接触角評価の際に、また、板状体の基材Aは、後述する表面分析、硬さ試験及び曲げ強さ試験に、各々、用いた。 [0034] -基材Bの調製- 予備焼結されたCe-TZP/Al2O3ナノコンポジット(商品名:P-NANOZR、パナソニックヘルスケア株式会社製)のブロック体より、ダイヤモンドカッターにて所定の大きさの円板状体及び板状体を切り出し、それら切り出した円板状体及び板状体を、大気雰囲気下、1450℃で2時間、高温電気炉(光洋リンドバーグ株式会社製)にて焼成した。なお、焼成による収縮率は20%であり、焼成後の円板状体の大きさは、直径:18~20mm、厚さ:1.5~2.0mmであり、焼成後の板状体の大きさは、長さ:20mm、幅:4.0~5.0mm、厚さ:0.5~0.8mmであった。円板状体の基材Bは、後述する接触角評価の際に、また、板状体の基材Bは、後述する表面分析、硬さ試験及び曲げ強さ試験に、各々、用いた。 [0035] -歯科用インプラント材料の作製- 得られた円板状体又は板状体の基材A、Bの表面に対して、アルミナ粉末(粒径:約70μm)を用いて、サンドブラスト処理を施した。かかる処理後の基材を蒸留水中にて超音波洗浄し、空気中で乾燥させた後、基材表面に、濃度が0.05mol/Lである酢酸カルシウム水溶液を筆で塗布した。そして、空気中で乾燥させた後、大気雰囲気下、1000℃、1100℃、1200℃又は1350℃の各焼成温度にて30分間、高温電気炉にて焼成することにより、基材毎に8種類(合計16種類)の試料(歯科用インプラント材料)を作製した。 [0036] 以上のようにして得られた試料(歯科用インプラント材料)について、先ず、以下の分析及び測定を行なった。 [0037] -表面分析- 試料表面の状態を、X線回折法(XRD)にて分析した。得られたXRDパターンより、基材A(Y-TZP)を用いてなる試料については、焼成温度が1000℃の試料にCaOが形成されていること、焼成温度が1100℃及び1200℃の各試料にCaZrO3 が形成されていること、及び、焼成温度が1350℃の試料においては、CaZrO3 が消失し、立方晶ジルコニアが形成されていることが、それぞれ認められた。また、基材B(Ce-TZP/Al2O3ナノコンポジット)を用いてなる試料についても、基材Aからなる試料とほぼ同様の結果が認められた。 [0038] -ビッカース硬さ試験- ビッカース硬度計を用いて、荷重:1kg、0.5kg又は0.2kg、保持時間:15秒間の条件にて、ビッカース硬さ試験を実施した。なお、圧痕を観察し易くするために、試料表面に白金コーティングを施した後に試験を行なった。また、表層を設けていない基材A、Bについても、対比のために試験を行なった。 [0039] 基材Aを用いてなる何れの試料も、表層が形成されていない基材Aとほぼ同様のビッカース硬さを有しており、また、基材Bを用いてなる何れの試料も、表層が形成されていない基材Bとほぼ同様のビッカース硬さを有していることが、認められた。即ち、本発明に従う歯科用インプラント材料は、臨床上、十分な硬さを有するものであることが、確認されたのである。 [0040] -3点曲げ強さ試験- 板状体の基材を用いて得られた試料を、表層が設けられている面を下にして、スパン長さ:16mm、試験速度:0.5mm/minの条件にて、3点曲げ強さ試験を行なった。 [0041] 基材Aを用いて、1350℃の焼成温度にて表層が形成されてなる試料について、他の試料と比べて、若干、3点曲げ強さが低下することが認められたものの、臨床上、影響を与える程の低下ではないことが確認された。一方、基材Bを用いてなる試料については、基材Aを用いてなる試料ほどの3点曲げ強さの低下は認められなかった。 [0042] 以上の実験に加えて、1100℃の焼成温度にて表層を形成した試料(歯科用インプラント材料)を用いて、接触角の測定、及び、骨芽細胞様細胞の増殖試験を行なった。 [0043] -接触角の測定- 円板状体の基材A、Bからなり、1100℃の焼成温度にて表層を形成した試料(歯科用インプラント材料)を用いて、接触角の測定を行なった。かかる測定に当たり、円板状体の基材A(基材B)からなり、1100℃の焼成温度にて表層を形成した試料A2(B2)を準備すると共に、i)かかる試料A2(B2)を、大気雰囲気下の擬似体液中に1週間、浸漬せしめたものを試料A3(B3)として、また、ii)サンドブラスト処理のみが施された基材A(基材B)を試料A1(B1)として、それぞれ準備した。なお、擬似体液の組成を、下記表1に示す。 [0044] [表1] [0045] -接触角の測定- マイクロピペットで計量した5μLの状粒子を、試料表面に水滴として静置し、その状態を試料の真横からデジタルカメラで撮影した。得られたデジタル画像を用いて、パソコン上で接触角を測定した。その測定結果を、図1にグラフとして表す。 [0046] かかる図1のグラフからも明らかなように、本発明の如く、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層が設けられた試料(A2、B2)にあっては、サンドブラスト処理のみが施された基材A(B)と比較して、接触角が小さくなることが認められ、親水性が向上していることが認められる。また、表層が設けられ、且つ擬似体液中に浸漬せしめられた試料(A3、B3)にあっては、接触角が劇的に小さくなっており、極めて優れた親水性を有することが確認された。 [0047] -骨芽細胞様細胞(マウス由来)の増殖試験- 円板状体の基材Aに、1100℃の焼成温度にて表層を形成し、更に大気雰囲気下の擬似体液中に1週間、浸漬せしめて得られた試料(試料A3)について、骨芽細胞様細胞(マウス由来)の増殖試験を行なった。具体的には、12ウェルの培養プレートに、表層が形成せしめられた面を上にした状態で試料を静置し、かかる試料の表層側の表面にMC3T3-E1(マウス由来骨芽細胞様細胞)を播種し、1、9日間経過後のMC3T3-E1の増殖を、細胞増殖MTTアッセイ(株式会社同仁化学研究所製、商品名:cell counting kit 8 )にて確認した。なお、サンドブラスト処理のみが施された基材Aからなる試料A1についても、同様の試験を行なった。その測定結果を、図2においてグラフとして示す。 [0048] かかる図2のグラフからも明らかなように、本発明の如く、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層が設けられ、更に擬似体液に浸漬せしめられた試料A3にあっては、サンドブラスト処理が施されただけの基材Aからなる試料A1と比較して、細胞増殖が良好であることが確認された。 [0049] -骨芽細胞様細胞(ヒト骨肉腫由来)の増殖試験- 円板状体の基材Aに、1100℃の焼成温度にて表層を形成し、更に大気雰囲気下の擬似体液中に1週間、浸漬せしめて得られた試料(試料A3)について、骨芽細胞様細胞(ヒト骨肉腫由来)の増殖試験を行なった。具体的には、24ウェルの培養プレートに、表層が形成せしめられた面を上にした状態で試料を静置し、かかる試料の表層側の表面にMG-63 (ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞)を播種し、3、6、24時間経過後のMG-63 の増殖を、細胞増殖MTTアッセイ(株式会社同仁化学研究所製、商品名:cell counting kit 8 )にて確認した。なお、サンドブラスト処理のみが施された基材Aからなる試料A1についても、同様の試験を行なった。その測定結果を、図3においてグラフとして示す。 [0050] かかる図3のグラフからも明らかなように、本発明の如く、CaOとZrO2 との固溶体からなる表層が設けられ、更に擬似体液に浸漬せしめられた試料A3にあっては、サンドブラスト処理が施されただけの基材Aからなる試料A1と比較して、細胞増殖が良好であることが確認されたのである。 |
※
実施等をご希望の方は、当方までご連絡ください。(場合によっては、本学と実施許諾契約等を締結していただきます。)
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- 愛知学院大学 事務局研究支援課
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