SUGAR CHAIN-MODIFIED TRIMER STRUCTURE OLIGONUCLEOTIDE AND USE THEREOF
外国特許コード | F150008128 |
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掲載日 | 2015年2月12日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2013JP081399 |
国際公開番号 | WO 2014080983 |
国際出願日 | 平成25年11月21日(2013.11.21) |
国際公開日 | 平成26年5月30日(2014.5.30) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
SUGAR CHAIN-MODIFIED TRIMER STRUCTURE OLIGONUCLEOTIDE AND USE THEREOF
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発明の概要(英語) | The purpose of the present invention is to provide a sugar chain-modified oligonucleotide capable of binding with a variety of influenza viruses at a high binding constant regardless of sialidase (NA) or hemagglutinin (HA) mutation of the influenza virus. Provided is a sugar chain-modified trimer structure oligonucleotide. Specifically, a sugar chain-modified trimer structure oligonucleotide that binds with the sialic acid binding moiety present in hemagglutinin (HA) of type A influenza virus. More specifically, a sugar chain-modified trimer structure oligonucleotide having the following characteristics 1) and 2). 1) The basic unit oligonucleotide of the oligonucleotide that forms the trimer structure is an oligonucleotide comprising a sugar-modified nucleic acid with which sialic acid binds via a linker. 2) The basic unit oligonucleotide of one molecule links and forms a trimer by partially forming a double-stranded oligonucleotide with the basic unit oligonucleotide of two other molecules. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド及びその使用
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発明の概要 | インフルエンザウイルスのシアリダーゼ(NA)やヘマグルチニン(HA)の変異に関わらず、高い結合定数で、種々のインフルエンザウイルスに対して結合しうる糖鎖修飾オリゴヌクレオチドを提供する。糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドによる。より詳しくは、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に存在するシアル酸結合部位に結合する糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドによる。より詳しくは、以下の1)及び2)の特徴を有する糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドによる。1)三量体構造を形成するオリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸を含むオリゴヌクレオチドである。2)一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の二分子の基本単位オリゴヌクレオチドと部分的に二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することで連結し、三量体を形成している。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] A型インフルエンザのヘマグルチニン糖鎖結合部位と結合しうる糖修飾核酸を含み、以下の特徴を有する糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: 1)三量体構造を形成するオリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸を含むオリゴヌクレオチドであり、 2)一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の二分子の基本単位オリゴヌクレオチドと部分的に二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することで連結し、三量体を形成している。 [請求項2] 前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドに含まれる一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の一分子の基本単位オリゴヌクレオチドと二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することにより連結する部分が、3~12塩基長の核酸配列からなる、請求項1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 [請求項3] 前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、以下の配列番号1~6及び10~15に示す塩基配列より選択される、いずれかの塩基配列を含む配列からなる、請求項1又は2に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: (配列番号1)5'-ATCACGCTG-3' (配列番号2)5'-GACTTGCGA-3' (配列番号3)5'-TCGCAAGTC-3' (配列番号4)5'-TCGCAGGTA-3' (配列番号5)5'-TACCTGCGA-3' (配列番号6)5'-CAGCGTGAT-3' (配列番号10)5'-CAGCG-3' (配列番号11)5'-UGCGA-3' (配列番号12)5'-CGCUG-3' (配列番号13)5'-GACUU-3' (配列番号14)5'-AAGUC-3' (配列番号15)5'-UCGCA-3' [請求項4] さらに、前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、以下の配列番号19~23に示す塩基配列より選択される、以下より選択される、いずれかの塩基配列を含む、請求項3に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: (配列番号19)5'-AnCnGnAAA-3' (配列番号20)5'-AnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号21)5'-AnCnGnCnGnCnGnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号22)5'-AnnnnnnnnnnnnAA-3' (配列番号23)5'-nnnnn-3' [nは各々独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シチジン(C)、又は、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸である。] [請求項5] シアル酸が、シアリルラクトースである、請求項1~4のいずれか1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 [請求項6] 前記シアリルラクトースが、2-6型シアリルラクトース又は2-3型シアリルラクトースである、請求項7に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 [請求項7] 請求項1~6のいずれか1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを有効成分として含む抗インフルエンザ剤。 [請求項8] 抗インフルエンザ剤が、インフルエンザ治療剤又はインフルエンザウイルス捕捉剤である、請求項7に記載の抗インフルエンザ剤。 [請求項9] 請求項7又は8に記載の抗インフルエンザ剤を使用することを特徴とするインフルエンザの治療及び/又は予防方法。 [請求項10] 請求項1~6のいずれかに記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをインフルエンザウイルス捕捉剤として固定された固相担体。 [請求項11] インフルエンザウイルス捕捉剤が固定された固相担体が、布、不織布、プラスチック材料である請求項10に記載の固相担体。 [請求項12] 請求項10又は11に記載の固相担体を用いることを特徴とする、インフルエンザウイルスの検査方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド及びその使用 技術分野 [0001] 本発明は、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド及び当該糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの使用に関する。 [0002] 本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2012-256216号優先権を請求する。 背景技術 [0003] インフルエンザウイルスは、パンデミックが最も危惧されているウイルスであり、シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ:NA)という酵素とヘマグルチニン(HA)というタンパク質によって覆われている。NAの酵素活性を阻害するのが、現在の治療薬の主流である、タミフル(商品名)である。また、HAはワクチンとして、またHAに結合する抗体は、フィルターなどに固定化することによりウイルスの除去シートなどとして市販されている。しかし、このウイルスの変異速度は非常に早いため、NAやHAの構造が時間と共に変わっていくことが、インフルエンザの予防、診断、治療を困難にしている。 [0004] 一方、NAやHAが変異によってその全体の構造が変化していく中で、HAのシアル酸と結合する部位はほとんどアミノ酸残基が変異しないことが知られている。そこで,この変異の少ないHAのシアル酸結合部位に注目することにより、あらゆる型のインフルエンザウイルスに対して予防、診断、治療が可能な材料が作製可能であると考えられる。 [0005] シアル酸含有複合糖鎖であるシアリルラクトースは、A型インフルエンザのレセプターとして知られており、A型インフルエンザの感染予防剤として期待されている(非特許文献1)。しかし、シアリルラクトースのインフルエンザウイルスに対する付着阻止効果は、単位容積当たりシアリルラクトース0.1 %以上と極めて高い投与でなければ発揮されない。 [0006] シアリル酸などの糖鎖によるインフルエンザ感染阻止作用に対する試みは多く報告されている。例えば、シアリルラクトースをポリスチレンに結合させたもの(特許文献1、非特許文献2)、γ‐ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマー(特許文献2)、ポリアクリルアミドなどのポリマーにα‐シアロシドグループを結合させたもの(非特許文献3)、シアリルラクトースをポリペプチドに結合させたもの(非特許文献4)、シアリルラクトースをカルボシランをコアとするデンドリマー構造としたもの(非特許文献5)、シアル酸を含むポリバレント抗ウイルス阻害剤(非特許文献6)などが挙げられる。しかしながら、上記については、分子量の制御、糖鎖の数、糖鎖の配向を制御することが合成上困難である。また、ポリスチレンやポリアクリルアミドなどの合成高分子に共有結合させた糖鎖修飾合成高分子の場合は、高濃度で使用すると生体毒性を示す危険性がある。 [0007] 糖修飾核酸の調製方法として、任意の位置が選択的に糖で置換された、新規なオリゴヌクレオチド糖コンジュゲートの調製方法について開示がある(特許文献3)。ここで開示される糖修飾核酸は、糖とウリジンがスペーサーを介して結合している糖結合ウリジンである。また、糖としては、ガラクトースが開示されている。しかしながら、シアル酸で修飾した核酸についての報告はない。 [0008] 「糖修飾DNAとレクチンの相互作用におけるリンカー構造の影響」について、報告がある。細胞表面上に存在する糖鎖と糖鎖認識タンパク質であるレクチンとの相互作用は、ウイルスの感染、細胞接着、癌の転移、炎症等の臨床上重要な生理現象において、重要な役割を果たしていることが明らかになっている。そこで、コンカナバリンAをターゲットレクチンとしてFITCでラベルした3-マルトース修飾DNA(オリゴヌクレオチド)を合成し、コンカナバリンAとの相互作用を調べた例が報告されている(非特許文献7)。ここでは、マルトース若しくはマンノースを修飾した糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドが開示されている。しかしながら、シアル酸で修飾した修飾オリゴヌクレオチドについての報告はない。 [0009] 一方、インフルエンザウイルスに対してウイルス変異の影響を受けることなく結合定数の高い抗インフルエンザ剤を提供することを目的とし、糖としてシアル酸を含むことを特徴とする糖修飾核酸について開示がある(特許文献4)。しかしながら、特許文献4に示す糖修飾核酸よりもさらに結合定数の高い抗インフルエンザ剤の開発が求められている。 先行技術文献 特許文献 [0010] 特許文献1 : 特開平10-310610号公報 特許文献2 : 特開2008-31156号公報 特許文献3 : 特開2001-247596号公報 特許文献4 : 特開2012-56904号公報 非特許文献 [0011] 非特許文献1 : Nature, 333, pp. 426-431 (1988) 非特許文献2 : Glycoconjugate Journal 15, 1047-1054 (1998) 非特許文献3 : J. Med. Chem., 37, 3419-3433 (1994) 非特許文献4 : Angew. Chem. Int. Ed., 42, 5186-5189 (2003) 非特許文献5 : Bioorganic & Medicinal Chemistry letters, 18, 4405-4408 (2008) 非特許文献6 : Med. Chem. Res., 18, 477-494 (2009) 非特許文献7 : 日本化学会第89春季年会(2009)予稿集 1J5-06 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0012] 本発明は、インフルエンザウイルスのシアリダーゼ(NA)やヘマグルチニン(HA)の変異に関わらず、高い結合定数で、種々のインフルエンザウイルスに対して結合しうる糖鎖修飾オリゴヌクレオチドを提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0013] 本発明者らは、インフルエンザウイルスのHAには複合糖質の構成成分であるシアル酸を結合する部位が3箇所あることに着目した。上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、インフルエンザウイルスのHAに効果的に結合しうることを見出し、本発明を完成した。 [0014] すなわち本発明は、以下よりなる。 1.A型インフルエンザのヘマグルチニン糖鎖結合部位と結合しうる糖修飾核酸を含み、以下の特徴を有する糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: 1)三量体構造を形成するオリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸を含むオリゴヌクレオチドであり、 2)一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の二分子の基本単位オリゴヌクレオチドと部分的に二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することで連結し、三量体を形成している。 2.前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドに含まれる一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の一分子の基本単位オリゴヌクレオチドと二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することにより連結する部分が、3~12塩基長の核酸配列からなる、前項1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 3.前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、以下の配列番号1~6及び10~15に示す塩基配列より選択される、いずれかの塩基配列を含む配列からなる、前項1又は2に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: (配列番号1)5'-ATCACGCTG-3' (配列番号2)5'-GACTTGCGA-3' (配列番号3)5'-TCGCAAGTC-3' (配列番号4)5'-TCGCAGGTA-3' (配列番号5)5'-TACCTGCGA-3' (配列番号6)5'-CAGCGTGAT-3' (配列番号10)5'-CAGCG-3' (配列番号11)5'-UGCGA-3' (配列番号12)5'-CGCUG-3' (配列番号13)5'-GACUU-3' (配列番号14)5'-AAGUC-3' (配列番号15)5'-UCGCA-3' 4.さらに、前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドが、以下の配列番号19~23に示す塩基配列より選択される、以下より選択される、いずれかの塩基配列を含む、前項3に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド: (配列番号19)5'-AnCnGnAAA-3' (配列番号20)5'-AnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号21)5'-AnCnGnCnGnCnGnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号22)5'-AnnnnnnnnnnnnAA-3' (配列番号23)5'-nnnnn-3' [nは各々独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シチジン(C)、又は、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸である。] 5.シアル酸が、シアリルラクトースである、前項1~4のいずれか1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 6.前記シアリルラクトースが、2-6型シアリルラクトース又は2-3型シアリルラクトースである、前項7に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド。 7.前項1~6のいずれか1に記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを有効成分として含む抗インフルエンザ剤。 8.抗インフルエンザ剤が、インフルエンザ治療剤又はインフルエンザウイルス捕捉剤である、前項7に記載の抗インフルエンザ剤。 9.前項7又は8に記載の抗インフルエンザ剤を使用することを特徴とするインフルエンザの治療及び/又は予防方法。 10.前項1~6のいずれかに記載の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをインフルエンザウイルス捕捉剤として固定された固相担体。 11.インフルエンザウイルス捕捉剤が固定された固相担体が、布、不織布、プラスチック材料である前項10に記載の固相担体。 12.前項10又は11に記載の固相担体を用いることを特徴とする、インフルエンザウイルスの検査方法。 発明の効果 [0015] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、抗インフルエンザ剤として使用することができる。具体的にはインフルエンザ治療剤又はインフルエンザウイルス捕捉剤として使用することができる。現在、インフルエンザ治療薬の主流であるタミフル(商品名)は、1 nMの濃度でインフルエンザの感染を阻害することができる。一方、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、108 M-1の結合定数でインフルエンザウイルスと結合し、10 nMで感染を阻害できることとなり、タミフル(商品名)に匹敵する治療薬となりうる。さらに、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、インフルエンザウイルスに対して変異の少ないHAのシアル酸結合部位をターゲットにするため、どのように変異したウイルスに対しても、吸着、結合能を維持することができる。 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをインフルエンザ捕捉剤として生体外で使用する場合は、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを適宜固定した固相担体を使用することができる。固定方法は、オリゴヌクレオチドの固相担体への固定方法に準ずることができる。固相担体としては、例えば布、不織布、プラスチック材料などが挙げられる。糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを固相担体に固定したインフルエンザ捕捉剤は、インフルエンザ捕捉用のフィルター、マスク、マスク材料やインフルエンザ検出用担体に利用することができる。 図面の簡単な説明 [0016] [図1] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本的構造を示す図である。(i)は、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドについてアームが形成されており、一本鎖のオリゴヌクレオチドが突出した構造を示し、(ii)は、アームがループ状の構造を示す。 [図2] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの具体的な構造の一例を示す図である。(実施例1) [図3] 本発明のシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドについて、アームの長さ及び糖修飾部位の異なる具体的な構造を示す図である。(実施例1) [図4] 本発明のシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの合成スキームを示す図である。(実施例1) [図5] ループ型シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの具体的な構造の一例を示す図である。(実施例2) [図6] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドについて、インフルエンザウイルスとトリ赤血球との赤血球凝集反応に対する阻害効果を確認した結果を示す写真図である。(実施例3) [図7] 水晶発振マイクロバランス(QCM)測定スキームを示す図である。(実施例4) [図8] QCM測定による糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドとインフルエンザウイルスとの結合能を確認した結果を示す図である。(実施例4) [図9] インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染における糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの感染阻害効果を確認した結果を示す写真図である。(実施例5) 発明を実施するための形態 [0017] 本発明は、A型インフルエンザのヘマグルチニン糖鎖結合部位と結合しうる糖修飾核酸を含み、以下の1)及び2)の特徴を有する「糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド」に関し、及び当該「糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの使用」に関する。 1)糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを形成する「基本単位オリゴヌクレオチド」が、シアル酸がリンカーを介して結合してなる「糖修飾核酸」を含むオリゴヌクレオチドであり、 2)一分子の基本単位オリゴヌクレオチドが、他の二分子の基本単位オリゴヌクレオチドと部分的に二本鎖オリゴヌクレオチドを形成することで連結し、三量体を形成している。当該「糖修飾核酸」については、背景技術の欄に示す特許文献4に開示されているものを利用することができる。具体的には、以下のとおりである。また、糖修飾核酸の調製方法は、特許文献4に詳述のとおりである。 [0018] 本明細書において、「糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド」は、図1の(i)のようにアームが形成されており、一本鎖のオリゴヌクレオチドが突出した構造であってもよいし、(ii)のように、ループ状であってもよい。特に(ii)の構造のみをさす場合、本明細書において「ループ型三量体構造オリゴヌクレオチド」ともいう。 [0019] 上記において、「基本単位オリゴヌクレオチド」とは、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを形成するのに基本となる一本鎖のオリゴヌクレオチドをいう。本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、3本の基本単位オリゴヌクレオチドについて、互いに相補的な塩基配列を有する基本単位オリゴヌクレオチドを部分的に相補会合させることで、調製することができる。この場合に、基本単位オリゴヌクレオチドの構造は、ミスアニーリングの可能性が少なく、室温において安定な複合体を形成できる構造であることが好ましい。基本単位オリゴヌクレオチドは、上述の限りにおいて、核酸配列や糖鎖修飾部位、糖鎖修飾数などは各々同一であってもよいし、独立した構造であってもよい。基本単位オリゴヌクレオチドを構成する塩基配列は、適宜設計することができる。 [0020] 本明細書において、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドのうち、基本単位オリゴヌクレオチドが他の基本単位オリゴヌクレオチドと相補会合した二重鎖オリゴヌクレオチドの部位を、本明細書において「二重鎖アーム」ということとする。 [0021] 糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドにおけるシアル酸の修飾部位は、A型インフルエンザウイルスのHAの3つのシアル酸結合サイトに応じて設計されるのが好適である。A型インフルエンザウイルスのHAのシアル酸結合サイト間の距離は、X線結晶構造解析からおよそ50~70オームストロング(Å)であることが明らかとなっている。そこで、本発明では糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドによる糖鎖結合サイト間の距離は、20~100Å、好ましくは50~70Åとなるように設計することができる。この間隔は、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドにおける基本単位オリゴヌクレオチドの結合(Junction)の中心から5~10塩基対(以下、単に「bp」という場合もある。)の二重鎖アームが平面的かつ対称的に伸びた場合の末端間の距離に相当する。すなわち、二重鎖アームのオリゴヌクレオチドの長さは3~12塩基長とすることができ、好ましくは5~9塩基長とすることができ、最も好ましくは5塩基長である。 [0022] 本発明における基本単位オリゴヌクレオチドの長さは、約15~150塩基長とすることができ、好ましくは約15~100塩基長とすることができ、より好ましくは約15~80塩基長とすることができる。また、基本単位オリゴヌクレオチドには、約1~70個、好ましくは約1~50個、より好ましくは1~15個の糖修飾核酸を含ませることができる。さらに、本発明のシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの安定性やアームの可動性を考慮すると、基本単位オリゴヌクレオチドの連結領域に、図2に示すように、例えば1~7個、好ましくは2~4個、より好ましくは2個の不対合塩基を導入するのが好適である。不対合塩基を有する核酸であれば、どのような核酸であってもよいが、例えばアデニンなどが挙げられる。 [0023] 基本単位オリゴヌクレオチドは、具体的には、以下の配列番号1~18に示すいずれかの塩基配列を含む配列からなり、三量体構造オリゴヌクレオチドを形成するための二重鎖アームを形成する部位は、互いに相補的な構造を有していればよい。具体的には、図1の(i)の構造の場合には、例えば図2に示すように、以下の配列番号1~6に示すいずれかの塩基配列を組み合わせて含む配列とすることができる。より具体的には、それぞれ独立して配列番号7、8、又は9に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとすることができる。(ii)の構造の場合には、例えば図5に示すように、以下の配列番号10~15に示すいずれかの塩基配列を組み合わせて含む配列からなる。より具体的にはそれぞれ独立して配列番号16、17、又は18に示す塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとすることができる。例えば、配列番号1~6、10~15に示すいずれかの配列の部分若しくは全部は、それぞれ相補的な配列と共に二重鎖アームを形成することができる。本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを形成するための基本単位オリゴヌクレオチドの構造は、以下に具体的に特定されるいずれかの配列を含むものに限定されるものではないことは明らかである。 [0024] (配列番号1)5'-ATCACGCTG-3' (配列番号2)5'-GACTTGCGA-3' (配列番号3)5'-TCGCAAGTC-3' (配列番号4)5'-TCGCAGGTA-3' (配列番号5)5'-TACCTGCGA-3' (配列番号6)5'-CAGCGTGAT-3' (配列番号7)5'-ATCACGCTGAAGACTTGCGA-3' (配列番号8)5'-TCGCAAGTCAATCGCAGGTA-3' (配列番号9)5'-TACCTGCGAAACAGCGTGAT-3' (配列番号10)5'-CAGCG-3' (配列番号11)5'-UGCGA-3' (配列番号12)5'-CGCUG-3' (配列番号13)5'-GACUU-3' (配列番号14)5'-AAGUC-3' (配列番号15)5'-UCGCA-3' (配列番号16)5'-UGCGAAACAGCG-3' (配列番号17)5'-CGCUGAAGACUU-3' (配列番号18)5'-AAGUCAAUCGCA-3' [0025] さらに、前記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの基本単位オリゴヌクレオチドには、「糖修飾核酸」を塩基配列中に含むオリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、以下の配列番号19~23に示す塩基配列より選択される、いずれかの塩基配列を含んでいてもよい。この場合において、nは各々独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シチジン(C)、又は、シアル酸がリンカーを介して結合してなる糖修飾核酸とすることができる。図1における(i)又は(ii)の何れの構造の場合にも、「糖修飾核酸」を塩基配列中に含むオリゴヌクレオチドは、原則として一本鎖のオリゴヌクレオチド鎖である。 (配列番号19)5'-AnCnGnAAA-3' (配列番号20)5'-AnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号21)5'-AnCnGnCnGnCnGnCnGnCnGnCnAAA-3' (配列番号22)5'-AnnnnnnnnnnnnAA-3' (配列番号23)5'-nnnnn-3' [0026] 「糖修飾核酸」における糖は、シアル酸又はシアリルラクトースとすることができる。また、糖がシアリルラクトースの場合は、2-6型シアリルラクトース又は2-3型シアリルラクトースとすることができる。ヒト由来のインフルエンザウイルスのHAは、シアル酸とラクトース(Galβ1→4Glc)とがα2→6結合したもの、即ち「2-6型シアリルラクトース」を認識し、トリ由来のインフルエンザウイルスのHAは、同様にα2→3結合したもの、即ち「2-3型シアリルラクトース」を認識することが知られている。従って、本発明の糖修飾核酸における糖がシアリルラクトースの場合、その型は、必要に応じて適宜選択することができる。 [0027] 前記核酸は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、人工核酸のいずれであってもよく、特に限定されず、用途により適宜選択することができる。例えば、当該糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをインフルエンザ治療薬のように、生体に用いる場合には、適当な時期にヌクレアーゼなどによって分解される天然型の核酸が好ましい。また、当該糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを、フィルターやマスクなどの固相担体に固定する場合などは、安定性の優れた人工核酸を用いてもよい。当該核酸に含まれる塩基の型は、ピリミジン塩基であってもよいし、プリン塩基であってもよいが、好ましくはピリミジン塩基である。従って、核酸を構成するヌクレオシドとしては、例えばウリジン、チミジン、シチジンが挙げられ、特に好適にはウリジンが挙げられる。 [0028] 前記リンカーは、糖と核酸を結合させるものであり、柔らかい構造を賦与してフレキシビリティーを持たせる作用を有するもので、疎水性であることが好ましい。例えば、炭素数1から10のアルカン、エーテル、エステル又はアミドなどが挙げられ、芳香族系炭化水素などを含んでいてもよい。好ましいリンカーの例としては、エタン、プロパン、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン等の直鎖状アルカン、及びエチレングリコールなどが挙げられる。 [0029] 本発明の「糖修飾核酸」の例として、具体的には以下の式(I)~式(III)に示す化合物が挙げられる。各式で表される化合物は、各々トランス体、シス体又は単結合体のいずれであってもよい。 [0030] [化1] [0031] [化2] [0032] [化3] [0033] 本発明の基本単位オリゴヌクレオチドは、上述の糖修飾核酸を用いて特許文献4に記載の方法、例えばDNAポリメラーゼを用いて調製することができる。例えば、基質としての本発明の糖修飾核酸及びdNTPを基にして、DNAポリメラーゼを用いて調製することができる。DNAポリメラーゼとしては、自体公知のものを使用することができ、例えば市販のDNAポリメラーゼとして、KOD Dash(R)(東洋紡)やVent(R)(exo-) DNA ポリメラーゼ(New England BioLabs)のようなFamily B型に属する多くの種類の酵素を使用することができる。 [0034] 具体的には、鋳型DNAを基にして、核酸増幅方法により調製することができる。核酸増幅方法については、特に限定されないが、例えばPCR(Polymerase Chain Reaction)法、LAMP法、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法や、LCR(Ligase Chain Reaction)法などが挙げられ、特にPCR法やLAMP法などが好適に用いられる。このような核酸増幅方法により、所望の配列のオリゴヌクレオチドを調製することができる。例えば、鋳型オリゴヌクレオチドにおいて、糖鎖修飾核酸に対する相補的なヌクレオチドを所望の位置に配置させることで、増幅されたオリゴヌクレオチドには、所望の位置に糖修飾核酸を配置させることができる。 [0035] 本発明の基本単位オリゴヌクレオチドを調製するために使用可能な鋳型DNAとして、以下に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用することができるが、これらに限定されるものではない。 (配列番号24)5'-TTTACAGATTCGCAAGTCTTCAGCGTGAT (配列番号25)5'-TTTACAGATTACCTGCGATTGACTTGCGA (配列番号26)5'-TTTACAGATATCACGCTGTTTCGCAGGTA (配列番号27)5'-TTTAGACAGACAGATTCGCAAGTCTTCAGCGTGAT (配列番号28)5'-TTTAGACAGACAGATTACCTGCGATTGACTTGCGA (配列番号29)5'-TTTAGACAGACAGATATCACGCTGTTTCGCAGGTA (配列番号30)5'-TTTAGACAGACAGATTCGCAAGTCTTCAGCGTGAT (配列番号31)5'-TTTAGACAGACAGATTACCTGCGATTGACTTGCGA (配列番号32)5'-TTTAGACAGACAGATATCACGCTGTTTCGCAGGTA (配列番号33)5'-TTCGCAAAAAATGCGATTGACTTAAAAAAAGTCTTCAGCGAAAAACGCTGUATATATATA [0036] またプライマーとして、例えば以下に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを利用することができるが、これらに限定されるものではない。 (配列番号7)5'-ATCACGCTGAAGACTTGCGA (配列番号8)5'-TCGCAAGTCAATCGCAGGTA (配列番号9)5'-TACCTGCGAAACAGCGTGAT (配列番号34)5'-TTTAGACAGACAGATATCACGCTGAAGACTTGCGA (配列番号35)5'-TTTAGACAGACAGATTCGCAAGTCAATCGCAGGTA (配列番号36)5'-TTTAGACAGACAGATTACCTGCGAAACAGCGTGAT (配列番号37)5'-TATATATAUACAGCG [0037] 本発明は、上記糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを有効成分として含む抗インフルエンザ剤にも及ぶ。抗インフルエンザ剤としては、例えばインフルエンザ治療剤やインフルエンザウイルス捕捉剤が挙げられる。インフルエンザ治療剤の場合は、生体内でインフルエンザウイルスのHAと結合し、インフルエンザウイルスが細胞内に侵入するのを阻止することができる。また、インフルエンザウイルス捕捉剤としては、生体内に限らず当該ウイルスを捕捉することができる。例えば、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをフィルター等に固定することで、インフルエンザウイルスを除去する材料とすることができる。また、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをマスク等の材料に固定することで、外部からのインフルエンザウイルスの侵入を阻止したり、例えばインフルエンザウイルスの感染患者から外部へウイルスが飛散するのを阻止することができる。また、インフルエンザウイルス捕捉作用により、検体中のインフルエンザを検出しうる、インフルエンザ検査用試薬として使用することもできる。 [0038] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを有効成分として含む抗インフルエンザ剤には、インフルエンザ治療薬又はインフルエンザ捕捉剤等の用途に応じて、適宜必要な添加剤等を含めることができる。 [0039] インフルエンザ治療薬とする場合は、必要な添加剤、即ち薬学的に許容しうる添加剤を混和し製剤化して使用することができる。上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。 [0040] 以下に上記添加剤の例を挙げる。賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウムが挙げられる。 [0041] 結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、コロイドシリカが挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられる。着色剤としては三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カルミン、カラメル、β-カロチン、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等、医薬品に添加することが許可されているものが挙げられる。 [0042] 矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ニコチン酸アミドが挙げられる。懸濁化剤としては、前記界面活性剤のほか、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子が挙げられる。 [0043] 等張化剤としては、ブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトールが挙げられる。緩衝剤としてはリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液が挙げられる。防腐剤としてはメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸が挙げられる。抗酸化剤としては硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロールが挙げられる。安定化剤としては一般に医薬に使用されるものが挙げられる。吸収促進剤としては一般に医薬に使用されるものが挙げられる。また、必要に応じて、ビタミン類、アミノ酸等の成分を配合してもよい。 [0044] また、上記製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤等の経口剤;坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の外用剤又は注射剤を挙げることができる。上記経口剤は、上記添加剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。なお、必要に応じてこれらの表面をコーティングしてもよい。上記外用剤は、上記添加剤のうち、特に賦形剤、結合剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。上記注射剤は、上記添加剤のうち、特に乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化することができる。 [0045] また、本発明の抗インフルエンザ剤をインフルエンザ治療薬として使用する場合は、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドに含まれる糖修飾核酸の投与量は適宜決定することができる。例えばヒトに投与する場合、投与量や投与方法は適宜決定することができる。好ましい投与量は、糖修飾核酸として、成人(体重60 kg)あたり、通常、10~1000 mg/日であり、好ましくは15~700 mg/日であり、さらに好ましくは30~300 mg/日(例えば200 mg/日)である。投与量及び投与期間は、炎症の治療効果と患者の状態を勘案しながら、適宜設定することができる。 [0046] 本発明の抗インフルエンザ剤をインフルエンザ捕捉剤として、生体外で使用する場合は、上述の他、フィルター、マスク材料、固相などの固相担体に、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを適宜固定することもできる。これらの固定の方法は、オリゴヌクレオチドの固定方法に準じて固定することができる。本発明は、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを有効成分として含み、インフルエンザウイルス捕捉剤が固定された固相担体に及ぶ。固相担体としては、具体的には、布、不織布、プラスチック材料などが挙げられ、具体的には、フィルター、マスク、マスク材料やインフルエンザ検出用担体が挙げられる。 [0047] 本発明は、抗インフルエンザ剤や上述インフルエンザウイルス捕捉剤が固定された固相担体を用いることによる、インフルエンザの治療及び/又は予防方法にも及ぶ。例えば、抗インフルエンザ剤を医薬品として使用するほか、フィルター、マスク、マスク材料を用いることにより、インフルエンザ感染に伴う疾患に対して治療及び/又は予防することができる。また、固相担体がインフルエンザ検出用担体の場合には、インフルエンザの検査のために使用することができる。本発明は、インフルエンザの検査方法にも及ぶ。 実施例 [0048] 本発明の理解を深めるために、以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことは明らかである。 [0049] (実施例1)糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの調製 (1)シアリルラクトース修飾核酸 本実施例では、糖鎖修飾核酸として、特許文献4に記載された手法により、以下に示すシアリルラクトース修飾ヌクレオチド3リン酸(dUTP-Sialyllac)を合成した。 [化4] [0050] (2)糖鎖修飾オリゴヌクレオチドの設計 本実施例では、図2に示す糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチド構造に適した塩基配列の配列番号7~9に示す塩基配列ならなる各オリゴヌクレオチドを設計した。 具体的には、 (配列番号7)5'-ATCACGCTGAAGACTTGCGA-3' (配列番号8)5'-TCGCAAGTCAATCGCAGGTA-3' (配列番号9)5'-TACCTGCGAAACAGCGTGAT-3' [0051] (3)シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの設計と調製 各シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド鎖I, II, IIIを結合(Junction)構造の基礎とし、結合領域に2個ずつの不対合塩基(A)及び9塩基対(9 bp)の二重鎖アームを有する(図2)。さらに、基本単位オリゴヌクレオチドの長さ、糖修飾度、アームの構造の異なるさまざまなシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを示した(図3)。構造体S3, S6, dsa-S6, S12はそれぞれアームに3, 6, 6, 12個のシアリルラクトース鎖を配置することができる構造からなる。構造体S3, S6, S12の構造は、配列番号19~22に示す塩基配列からなる。シアリルラクトース鎖は、構造体S3, S6, S12及びdsa-S6では一塩基ごとに配置される。dsa-S6は、図3に示す各鎖の5'末端に糖鎖修飾領域と相補的な追加の配列(5'-TTTAGACAGACAGAT-3':配列番号38)を有することで、二重鎖アーム(stem)の部位を完全に二重鎖にした。Stem7は三量体構造オリゴヌクレオチドのアームの長さを9 bpから7 bpへと短くした。 以上の構造体を構築するために必要なシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの合成スキームを図4に、その調製に用いられた鋳型DNA(鋳型オリゴヌクレオチド)とプライマーの配列を表1、表2に示した。 [0052] [表1] [0053] 一本鎖のシアリルラクトース修飾アームを有するシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを構築するためのオリゴヌクレオチド鎖の合成は、非対称PCRにより行われた。それぞれのオリゴヌクレオチド鎖を増幅するのに適当なセットの鋳型(テンプレート)(T13-15-(A3, A6, A12); 0.1 pmol/ l), プライマー (P13-15; 3 pmol/μl), KOD Dash(R)(東洋紡)緩衝液 (1/10体積), dNTP (天然型: dATP+dCTP+dGTP+dTTP; シアリルラクトース修飾型: dATP+dCTP+dGTP+dUTP-SL; 0.2 mM), MilliQ水, KOD Dash(R)(東洋紡)(0.005 U/μl)を混合(反応液量400-800μl)し、非対称PCR(94℃/30秒、55℃/30秒、74℃/1 分; 15-17 サイクル)を行った。 [0054] [表2] [0055] アームdsa-S6を構築するためのオリゴヌクレオチド鎖を調製するために、3 リン酸化鋳型DNAを用いたプライマー伸長反応によって糖鎖修飾dsDNAを調製し、その後変性ゲル電気泳動によって糖鎖修飾鎖を単離した。P3 T(13, 14, 15)-A6 (0.8 pmol/μl), EL-P(13, 14, 15) (0.8 pmol/μl), KOD Dash(R)(東洋紡)緩衝液, dATP+dCTP+dGTP+dUTP-SL (0.2 mM), MilliQ水, KOD Dash(R)(東洋紡) (0.005 U/μl)を混合(反応液量400μl)し、50℃で1時間インキュベートした。反応後の溶液に20 mg/mlグリコーゲン溶液1μlを添加し、エタノール沈殿を行った。8 M尿素BPB溶液(8 M尿素, 0.05%BPB, 10%グリセロール, 0.5×TBE) 200μlを添加し、沈殿を溶解させた。95℃ 5分の加熱変性を行った後、8 M尿素15%PAGEにかけ、目的産物である糖鎖修飾鎖を分離し、ゲルから切り出した。QIAEX II(R)(QIAGEN)を用いて、UV吸光度測定によってオリゴヌクレオチド鎖を定量した。 [0056] シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの構築の確認は、電気泳動により行った。修飾鎖と天然鎖を適切な組み合わせで混合した後、遠心濃縮により溶液を乾固させた。残渣に、ブロモフェノールブルー(PBP)を含む緩衝液を添加して溶解させ、15%PAGE(89 mM Tris-borate, 150 mM NaCl, 20-25℃)により分析した。 [0057] (実施例2)ループ型シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの調製 分子内で二重鎖アーム及びループ構造を形成するループ型三量体構造オリゴヌクレオチド(3Loop-A5)を設計した(図5参照)。その下記配列番号39で示す塩基配列のうち、下線部で示されるループ部位にシアリルラクトース残基を導入することにより、シアリルラクトース残基の空間的な配置を制御した。 オリゴヌクレオチドの合成は、実施例1と同手法により行った。 (配列番号39)5'-ACAGCGUUUUU CGCU GAAGACUUUUUUU AAGU CAAU CGCAUUUUU GCGAA-3' [0058] (実験例1)インフルエンザヘマグルチニン(HA)に対する阻害結合定数(KiHAI) シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチド(S3, S6, dsa-S6, Stem7)及びループ型シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチド(3Loop-A5)のインフルエンザHAに対する阻害結合定数(KiHAI)を赤血球凝集阻害実験により確認した。 [0059] インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)とシアリルラクトース修飾オチゴヌクレオチドを37℃で1時間インキュベートし、トリ赤血球を添加後さらに4℃で1時間インキュベートした。結果を表3にまとめた。 3本すべてのアームに6個ずつシアリルラクトースが導入されているS6(SL,SL,SL)の阻害結合定数は15 nMとなり、S6(SL,SL,0)(45 nM)と比べて約3倍高い親和性を示した。糖鎖の含まれていないS6(0,0,0)では、1000 nM以上であり親和性は著しく減少した。このようなアームにおける糖鎖に依存した親和性の変化は、三量体構造に従って3方向に分配されたシアリルラクトース鎖が同じトポロジーを有するHAの結合サイトに効率的に接近し、3点で結合できたことによると考えられた。 [0060] 次に、S3, S6の(SL,SL,SL)型の親和性を比較することで、アームを伸ばし糖鎖を増やすことによって、また糖鎖の密度を変えることによって親和性がどのように変化するかを調べた。HAに対する親和性は、S3, S6で共に15 nMで同等であった。つまり、単にアームを伸ばし糖鎖を増やすことは親和性に大きな影響を与えなかった。これは、(SL,SL,SL)型の各構造体の糖鎖は、すでにHAの3点の結合サイトに結合しているために、それ以上に増やされた糖鎖は結合には関与できず、親和性の向上に寄与しなかったことを示すものと考えられる。 [0061] シアリルラクトース修飾S6(SL,SL,SL), dsa-S6(SL,SL,SL)はいずれもシアリルラクトースの数は18個で共通であるが、その空間的な配置が異なっている。S6(SL,SL,SL)は剛直な結合(Junction)構造とフレキシブルな糖鎖修飾アームを有している一方、dsa-S6(SL,SL,SL)はアームが二重鎖を巻くように設計されているためにシアリルラクトース鎖はアーム上でらせん状に配向することを余儀なくさせられる。標準的なB型DNAであれば、らせんのピッチはおよそ3.4 nm/10 bpであるので、以上のような構造的な特徴を有する2種類の糖鎖修飾オリゴヌクレオチドであるが、それらのHAに対する結合定数は、S6(SL,SL,SL)(15 nM) > dsa-S6(200 nM)となった。これは、糖鎖修飾部位はよりフレキシブルな一本鎖DNAの方がHAとの結合には有利であり、二重らせんに沿って配向する糖鎖は、HAの結合サイトへの効率的な糖鎖の結合を妨げているように見える。 [0062] シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドのアームの長さを9 bpから7 bpへと短くしたStem7は赤血球凝集阻害濃度が10 nMまで低下し、親和性は増大した。 [0063] これらの三量体構造オリゴヌクレオチドは9 bpおよび7 bpのアームを有しているが、これよりアームを短くすることは三量体構造オリゴヌクレオチドの安定性の点から困難である。ループ型三量体構造オリゴヌクレオチド(3Loop-A5)では 5 nMと、三量体構造オリゴヌクレオチド型DNA(Stem7)に比べさらに2倍の親和性の向上が達成された。 [0064] [表3] [0065] 赤血球凝集阻害実験からインフルエンザHAに対する親和性を評価し、空間的な糖鎖分布や配向と結合親和性の関係を明らかにした。インフルエンザヘマグルチニン(HA)と多点で効果的に相互作用(クラスター効果)させるためには、シアリルラクトースの空間的な配置とヘマグルチニンの結合サイトのトポロジーの幾何的な適合が重要なファクターであることが確かめられた。シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは剛直性と柔軟性を兼ね備え、一本鎖DNAに修飾されたシアリルラクトースが、HAの3つのシアリルラクトース結合部位で結合すると考えられる。また、アームをより短くし、シアリルラクトースをループ部位に配置したループ型三量体構造オリゴヌクレオチド配列は最も高い親和性を示した。アームをより短くすることにより、HAの3つのシアリルラクトース結合部位とより適合することが可能になったためと考えられる。 [0066] (参考例1)三量体構造オリゴヌクレオチドの電気泳動分析 各塩基長(mer)の異なるオリゴヌクレオチド-7-9 (19 mer), 10-12 (18 mer), 13-15 (20 mer)のそれぞれで、各オリゴヌクレオチド鎖(6 pmol)を組合わせて混合し、80℃/5分、20℃/5分(スロープ 60分)のアニーリング処理を行った後、20%PAGEにより分析した。分析の結果、不対合塩基数にかかわらず、一本のオリゴヌクレオチド鎖を単独で泳動した場合、二本を混合した場合、三本を混合した場合で、それぞれ単量体、二量体、三量体に対応するバンドが観察されたことから、意図した複合体が形成できていると考えられた。 [0067] (参考例2)三量体構造オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)分析 三量体構造オリゴヌクレオチドの安定性を評価するためにUV融解実験を行った。測定用緩衝液は、NaH2PO4/Na2HPO4 (pH 7.0), 150 mM NaClを基本組成とした。各オリゴヌクレオチド鎖 1.3 nmolを緩衝液1.3 mlに溶解し(3μM)、事前に80℃/5分、4℃/5分(スロープ 60分)のアニーリング処理を行った。測定には光路長1cmの石英セルを用いた。セルは、低温恒温循環槽により20-70℃の範囲で0.5~1℃/分の速度で昇温し、0.5℃間隔で260 nmの吸光度を記録した。 結果を表4に示した。不対合塩基0個から1個ずつ増やすに従ってTmは1~3℃上昇した。これは、不対合塩基の導入によって結合(Junction)領域での構造的なひずみが解消されたことによると考えられる。不対合塩基2個においてTmは40℃を超えており、30℃以下の条件であれば、100%三量体を形成していると考えられた。 [0068] [表4] [0069] (実施例3)インフルエンザウイルスの赤血球凝集作用における凝集阻害活性 本実施例ではシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドについて、インフルエンザウイルスとトリ赤血球との赤血球凝集反応に対する阻害効果を確認した。シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、表3に示すStem7を用い、インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスA型のH1N1型(A/PuertoRico/8/34株)、H3N2型(A/panama/2007/99株)、H5N2型(A/Duck/Hong Kong/342/78株)又はタミフル(商品名)耐性株であるH1N1型(A/Yokohama/77/2008株)を用いた。 [0070] 0.2×105~6.25×105 pfu/ml の濃度範囲のインフルエンザウイルス、0μM~5μM の濃度範囲のStem7、及びD-PBS(-)緩衝液(Dulbecco's PBS(-))(pH 7.4)を、各々50μlずつ96-ウェルプレート上で混合し、37℃で30 分間インキュベートした。その後、D-PBS(-)緩衝液で1/100~1/400に希釈したトリ赤血球溶液を50μl添加し、37℃でさらに60 分間インキュベートした。 [0071] Stem7濃度を変化させ、赤血球凝集反応が生じる濃度と阻害される濃度の境界を赤血球凝集阻害濃度であると評価した。その結果、Stem7濃度が数十nM以下であっても、インフルエンザウイルスについて血球凝集阻害効果が認められた。図6にH5N2型、H3N2型及びタミフル(商品名)耐性株H1N1型を用いた場合の凝集阻害挙動を示した。 [0072] (実施例4)QCM測定によるインフルエンザウイルスとの結合能評価 本実施例では水晶発振マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance:QCM)測定によるシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドとインフルエンザウイルスとの結合能を確認した。シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは表3に示すStem7を用い、インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスA型のH1N1型(A/PuertoRico/8/34株)、H3N2型(A/panama/2007/99株)又はインフルエンザB型(B/Yamanashi/166/98株)を用いた。水晶発振子とは、水晶の結晶を極薄い板状に切り出した切片の両側に金属薄膜を取り付けた構造をしたもので、それぞれの金属薄膜に交流電場を印加するとある一定の振動数で振動する性質を示す。金属薄膜上にナノグラム程度の物質が吸着すると物質の質量に比例して振動数が減少する。このような原理を利用して結合能等を測定することをQCM法という。本実施例では、基本振動数27 MHzで測定した。QCMによる具体的な測定手法は、Y.Okahata, Y. Ebara et. al. Anal. Chem, 70, 1288-1296 (1998)を参照した。 [0073] Stem7固定化電極の調製スキームは以下の通りである。ピラニア(piranha)溶液(H2O2 : H2SO4 = 1 : 3)を、基本振動数27 MHz の水晶発振子の金電極上に1 滴添加して10 分間、25℃でインキュベートした。電極を蒸留水で洗い、10 mM 3,3'-ジチオジプロピオン酸エタノール溶液20 μl を添加し、20 分間インキュベートした。電極を蒸留水で洗い、100 mg/ml NHS/100 mg/ml EDCの 1 : 1 混合溶液を50 μl添加し、30 分間インキュベートした。電極を蒸留水で洗い、1μg/μl ストレプトアビジン溶液20 μlを添加し40 分間インキュベートした後、1 Mエタノールアミン・HCl(pH8.0)10 μlを添加して30 分間インキュベートした。電極をD-PBS(-)緩衝液で洗い、D-PBS(-)緩衝液1.8 mlを入れた2 ml セル中に浸し、振動数が安定した後、Biotinで修飾されたStem7溶液を添加した。一定の振動数(約100 Hz)減少したところで、電極をセルから引き上げ、すみやかにD-PBS(-)緩衝液で洗浄した。セル内の緩衝液を交換し、再び電極を浸して振動数を安定させた。その後、インフルエンザウイルス溶液(最終濃度106 pfu/ml)をセルに添加し、インフルエンザウイルスの結合挙動を観察した(図7)。その結果、Stem7はインフルエンザA型(H1N1型A/PuertoRico/8/34/、H3N2型A/panama/2007/99)だけでなく、インフルエンザB型(B/Yamanashi/166/98)のいずれのウイルスに対しても同等の親和性で結合することが確認された(図8)。 [0074] (実施例5)インフルエンザウイルスのMDCK 細胞への感染における感染阻害評価実験 インフルエンザウイルスのMDCK(Madin-Darby canine kidney)細胞(イヌ腎臓由来)への感染におけるシアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドの感染阻害を確認した。シアリルラクトース修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは表3に示すStem7を用い、インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスA型のH1N1型(A/PuertoRico/8/34株)を用いた。 [0075] 24ウェルプレートにMDCK 細胞(4.0×105 cell/ml)を400μlずつ播種し、5%C02、37℃で半日インキュベートし、その後各ウェル内の細胞をD-PBS(-)緩衝液にて2回洗浄した。一方、DMEMにて希釈したインフルエンザウイルス5.3×105 pfu/well のウイルス溶液90μlに対して、同じくDMEMにて希釈したStem7溶液を10μlずつ加え、室温で30分放置した。24ウェルプレート中の、MDCK細胞に対して、上記で調製したウイルス及びStem7を含む溶液を100μl感染させ、ロッキングシェーカー上にて室温でインキュベー卜し、一定時間後に顕微鏡観察した。その結果、細胞がウイルスにより死滅した(b)の状態に比べ、Stem7 20 nMを添加した場合は、細胞死が抑制された(c)。すなわち、Stem7は、インフルエンザウイルスの細胞感染を効果的に阻害することが確認された(図9)。 産業上の利用可能性 [0076] 以上詳述したように、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、抗インフルエンザ剤として使用することができ、具体的にはインフルエンザ治療剤又はインフルエンザウイルス捕捉剤として有用である。 [0077] 現在、インフルエンザ治療薬の主流であるタミフル(商品名)は、1 nMの濃度でインフルエンザの感染を阻害することができる。一方、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドにより、108 M-1の結合定数でインフルエンザウイルスと結合し、5 nMで感染を阻害できることとなり、タミフル(商品名)に匹敵する治療薬となりうる。さらに、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドは、インフルエンザウイルスに対して変異の少ないHAのシアル酸結合部位をターゲットにするため、どのように変異したウイルスに対しても、吸着、結合能を維持することができる。 [0078] また、本発明の抗インフルエンザ剤をインフルエンザ治療薬として使用する場合は、糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドに含まれる糖修飾核酸の投与量は適宜決定することができる。 [0079] 本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドをインフルエンザ捕捉剤として生体外で使用する場合は、本発明の糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを適宜固定した固相担体を使用することができる。固定方法は、オリゴヌクレオチドの固相担体への固定方法に準ずることができる。固相担体としては、例えば布、不織布、プラスチック材料などが挙げられる。糖鎖修飾三量体構造オリゴヌクレオチドを固相担体に固定したインフルエンザ捕捉剤は、インフルエンザ捕捉用のフィルター、マスク、マスク材料やインフルエンザ検出用担体に利用することができる。 |
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