NUCLEIC ACID COMPLEX AND NUCLEIC ACID-POLYSACCHARIDE COMPLEX
外国特許コード | F150008142 |
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整理番号 | AF11-09WO |
掲載日 | 2015年3月13日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2013JP066887 |
国際公開番号 | WO 2013191223 |
国際出願日 | 平成25年6月19日(2013.6.19) |
国際公開日 | 平成25年12月27日(2013.12.27) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | NUCLEIC ACID COMPLEX AND NUCLEIC ACID-POLYSACCHARIDE COMPLEX |
発明の概要(英語) | As a means for solving the problem of providing a nucleic acid complex that rarely undergoes the decomposition at a DNA-RNA joining site therein even in vivo , a nucleic acid complex is provided, which is produced by linking 3'-position of a 3'-terminal deoxyribonucleotide residue in single-stranded DNA to 5'-position of a 5'-terminal ribonucleotide residue in one ribonucleotide strand in double-stranded RNA, wherein a hydroxyl group located at 2'-position of the 5'-terminal nucleotide in the ribonucleotide strand that is bound to the single-stranded DNA is substituted by an alkoxy group or a halogen group and/or a phosphoric diester group between 3'-position of the first ribonucleotide that is bound to the single-stranded DNA and 5'-position of a ribonucleotide adjacent to the first ribonucleotide is substituted by any one selected from a phosphorothioate group, a dithiophosphoric diester group and a trithiophosphoric diester group. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
参考情報 (研究プロジェクト等) | CREST Development of the Foundation for Nano-Interface Technology AREA |
日本語項目の表示
発明の名称 | 核酸複合体および核酸多糖複合体 |
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発明の概要 | 生体内においても、DNAとRNAの連結部で分解されない核酸複合体を提供するという課題を解決する手段として、一本鎖DNAの3'側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3'位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5'側末端のリボヌクレオチド残基の5'位が結合した核酸複合体であって、一本鎖DNAと結合したリボヌクレオチド鎖の5'側末端ヌクレオチドにおける2'位のヒドロキシル基がアルコキシ基またはハロゲン基で置換されており、かつ/または一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3'位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5'位との間のリン酸ジエステル基がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されている核酸複合体を提供する。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、前記一本鎖DNAと結合した前記リボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基がアルコキシ基またはハロゲン原子で置換されている核酸複合体。 [請求項2] 一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、前記一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されている核酸複合体。 [請求項3] 前記一本鎖DNAのヌクレオチド数が10以上である請求項1または2に記載の核酸複合体。 [請求項4] 前記一本鎖DNAがポリデオキシアデニンである請求項1から3のいずれか1項に記載の核酸複合体。 [請求項5] 前記一本鎖DNAのリン酸ジエステル基のうち少なくとも一部がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸複合体。 [請求項6] 前記一本鎖DNAのリン酸ジエステル基のうち少なくとも50%以上がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されている請求項5に記載の核酸複合体。 [請求項7] 前記二本鎖RNAがsiRNAである請求項1から6のいずれか1項に記載の核酸複合体。 [請求項8] 前記siRNAが21mer型または27mer型である、請求項7に記載の核酸複合体。 [請求項9] 前記siRNAの標的遺伝子が、Dectin-1発現細胞において発現している遺伝子である請求項7または8に記載の核酸複合体。 [請求項10] 請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸複合体1分子の一本鎖DNA部位と、β-1,3-グルカン骨格を有する多糖2分子とが、3重らせん構造を形成している核酸多糖複合体。 [請求項11] 前記β-1,3-グルカン骨格を有する多糖が、シゾフィランである請求項10に記載の核酸多糖複合体。 [請求項12] 請求項10または11に記載の核酸多糖複合体を含む医薬組成物。 [請求項13] 一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体のRNA分解酵素に対する安定性を増大させる方法であって、前記一本鎖DNAと結合した前記リボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基をアルコキシ基またはハロゲン原子で置換する核酸複合体の安定化方法。 [請求項14] 一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体のRNA分解酵素に対する安定性を増大させる方法であって、前記一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基をホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換する核酸複合体の安定化方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 核酸複合体および核酸多糖複合体 技術分野 [0001] 本発明は、DNAとRNAから成る核酸複合体の血清中での安定性を向上させる技術に関する。 背景技術 [0002] ヒトゲノムの解読が、1953年のDNA二重らせん構造の発見から50年となる2003年に完了した。現在は各種のタンパク質の活性メカニズムとその相互作用の解明が進められている。さらに、最近はタンパク質をコードしていないRNAが遺伝子の転写や翻訳を制御していることが分かってきた。こうした成果を応用するひとつの方法に、生理活性のある短い人工的核酸(核酸医薬)を用いて生体機能を操作する技術が提唱されている。 [0003] small interfering RNA(siRNA)は21~23塩基対からなる低分子二本鎖RNAである。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており(非特許文献1参照)、メッセンジャーRNA(mRNA)を配列特異的に阻害し、タンパクの発現を抑制する。この現象はウイルス感染などに対する生体防御機構の一環として進化してきたと考えられている。遺伝子配列の情報のみから設計が可能であるため、従来の低分子医薬のような大規模スクリーニングが不要であり、また特定の遺伝子を特異的に阻害できることから副作用は低いと考えられ、次世代の治療薬として期待されている。 [0004] しかし、天然型の核酸であるリン酸エステル型RNAは、生体内において核酸分解酵素やタンパク質との非特異的吸着によって極めて短時間で失活する。このため、天然型の核酸医薬品は、ヒトの臨床研究では有意な効果をもたらしていない。生体環境内や培養液中において短時間で失活するという天然型の核酸の問題点を解決するために、天然型の核酸を化学的に修飾した化学修飾核酸が多く提案されている。例えば、リボースの2’-位のヒドロキシル基をメトキシ基(2’-O-メチル)(非特許文献2参照)やフッ素(F)(非特許文献3参照)、locked nucleic acid(LNA)(非特許文献4参照)で化学修飾したものが特に知られている。また、こうした化学修飾により、siRNAと標的mRNAとの結合親和性が向上することも報告されている。 [0005] こうした化学修飾した核酸を核酸アナログと呼ぶ。核酸アナログは、天然型の核酸に比べ失活時間を大幅に伸ばす事に成功した。これは、核酸分解酵素が核酸アナログを認識できないためである。しかし、生体内でタンパク質と非特異的に吸着し、予期せぬ生理活性、重篤な肝障害を引き起こすなど、非天然であるが故の毒性が問題になっている。 [0006] 生体適合性を有する化合物に天然型の核酸を内包して、核酸を分解から保護しつつ膜透過性を向上させ、核酸を細胞内に導入する技術も提案されてきた。レトロウイルス(非特許文献5参照)またはアデノウイルス(非特許文献6参照)等は、遺伝子キャリアとしてin vitroでは極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が指摘されており、これらのin vivoにおける使用は制限されている。 [0007] そこで、天然由来の遺伝子キャリアの代替物として、ウイルス系よりも取り扱いが簡単であるのみならず、細胞へDNAを確実に効率良く集中させることが可能な人工材料の非ウイルスキャリヤーの使用が提示された(非特許文献7参照)。これまでに、非ウイルス性の人工核酸キャリアとして、ポリエチレングリコール修飾したポリカチオン(非特許文献8参照)、ポリエチレンイミン(非特許文献9参照)、カチオン性ポリマーのブロック共重合体(非特許文献10参照)、デンドリマー(非特許文献11参照)などが開発されてきた。しかし、こうしたカチオン性高分子の安全性は確認されていない。カチオン性を有するには、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基は生理活性が高く、体内毒性等の危険がある。 [0008] 本発明者らはこれまでに遺伝子キャリアとしてβ-1,3-グルカンに着目し、β-1,3-グルカンが核酸医薬(アンチセンスDNA、CpG DNA)と新しいタイプの複合体を形成することを見出してきた(特許文献1、2、非特許文献12、13、14参照)。 [0009] 天然では3重らせんで存在するβ-1,3-グルカンを、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性有機溶媒、あるいは0.1N以上のアルカリ溶液に溶解して1本鎖に解離させた後に、1本鎖の核酸を加え、溶媒を水あるいは中性に戻すことによって、核酸1分子と多糖2分子とからなる3重らせん複合体が形成されることを見出した。この場合、3重らせん複合体における多糖分子と核酸分子とは、主として水素結合と疎水性相互作用により分子間結合を形成しているものと考えられている(非特許文献15参照)。 [0010] 上記のように、β-1,3-グルカンと複合化する核酸は1本鎖核酸であり、とりわけポリデオキシアデニン(poly dA)やポリシトシン(poly C)が、シゾフィラン(SPG)をはじめとするβ-1,3-グルカンと強い親和性を示すことが報告されている。 [0011] β-1,3-グルカンをsiRNAのキャリアとして、RNAiに応用することについても検討されている。ただし、siRNAは二本鎖核酸であるため、そのままではβ-1,3-グルカンと複合体を形成できない。そこで、SPG等のβ-1,3-グルカンと複合化させるためにsiRNAのセンス鎖にpoly(dA)を付加させたDNA-RNAヘテロ核酸を用意し、それとsiRNAのアンチセンス鎖をアニーリングさせ、poly(dA)-siRNAを作製する。その後poly(dA)部分を利用してSPGとの複合化を行う。 先行技術文献 特許文献 [0012] 特許文献1 : 国際公開第01/34207号パンフレット 特許文献2 : 国際公開第02/072152号パンフレット 非特許文献 [0013] 非特許文献1 : siRNAs: applications in functional genomics and potential as therapeutics. Y. Dorsett, T. Tuschl, Nat. Rev. Drug Discovery 3 (2004) 318-329. 非特許文献2 : Evaluation of 29-modified oligonucleotides containing 29-deoxy gaps as antisense inhibitors of gene expression. B. Monia, E. Lesnick, C. Gonzalez, W. Lima, D. McGee, C. Guinosso, A. Kawasaki, P. Cook, S. Freier, J. Biol. Chem. 268 (1993) 14514-14522. 非特許文献3 : Potent gene-specific inhibitory properties of mixed-backbone antisense oligonucleotides comprised of 2'-deoxy-2'-fluoro-D-arabinose and 2'-deoxyribose nucleotides. C.N. Lok, E. Viazovkine, K. L. Min, C. J. Wilds, M. J. Damha, M. A. Parniak, Biochemistry 41 (2002) 3457-3467. 非特許文献4 : 2'-O,4'-C-ethylene-bridged nucleic acids (ENA): highly nuclease-resistant and thermodynamically stable oligonucleotides for antisense drug. K. Morita, C. Hasegawa, M. Kaneko, S. Tsutsumi, J. Sone, T. Ishikawa, T. Imanishi and M. Koizumi, Med. Chem. Lett., 12, 73-76 (2002) 非特許文献5 : Human gene therapy comes of age. A.D. Miller, Nature, 357, 455-460 (1992) 非特許文献6 : The basic science of gene therapy. R.C. Mulligan, Science, 14, 926-932 (1993) 非特許文献7 : Controllable gene therapy pharmaceutics of non-viral gene delivery systems. E. Tomlinson and A. P. Rolland, J. Control Release, 39, 357-372 (1996) 非特許文献8 : Breathing Life into Polycations: Functionalization with pH-Responsive Endosomolytic Peptides and Polyethylene Glycol Enables siRNA Delivery. M.Meyer, A. Philipp, R. Oskuee, C. Schmidt and E. Wagner, J. Am. Chem. Soc., 130, 3272-3273 (2008) 非特許文献9 : RNA interference-mediated gene silencing of pleiotrophin through polyethylenimine-complexed small interfering RNAs in vivo exerts antitumoral effects in glioblastoma xenografts. M. Grzelinski, B. Urban-Klein, T. Martens, K. Lamszus, U. Bakowsky, S. Hobel, F. Czubayko and A. Aigner, Hum. Gene. Ther., 17, 751-766 (2006) 非特許文献10 : Monomolecular Assembly of siRNA and Poly(ethylene glycol)-Peptide Copolymers. J. DeRouchey, C.Schmidt, G. F. Walker, C. Koch, C. Plank, E. Wagner and J. O. Raedler, Biomacromolecules, 9, 724-732 (2008) 非特許文献11 : Tat-conjugated PAMAM dendrimers as delivery agents for antisense and siRNA oligonucleotides. H. Kang, R. DeLong, M.H. Fisher and R.L. Juliano, Pharm. Res., 22, 2099-2106 (2005) 非特許文献12 : Molecular Recognition of Adenine, Cytosine, and Uracil in a Single-Stranded RNA by a Natural Polysaccharide: Schizophyllan. K. Sakurai and S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc., 122, 4520-4521 (2000) 非特許文献13 : Polysaccharide-Polynucleotide Complexes. 2. Complementary Polynucleotide Mimic Behavior of the Natural Polysaccharide Schizophyllan in the Macromolecular Complex with Single-Stranded RNA and DNA. K. Sakurai, M. Mizu and S. Shinkai, Biomacromolecules, 2, 641-650 (2001) 非特許文献14 : Dectin-1 targeting delivery of TNF-α antisense ODNs complexed with β-1,3-glucan protects mice from LPS-induced hepatitis. S. Mochizuki, K. Sakurai, J. Control. Release, 151, (2011) 155-161. 非特許文献15 : Structural Analysis of the Curdlan/Poly (cytidylic acid) Complex with Semiempirical Molecular Orbital Calculations. K. Miyoshi, K. Uezu, K. Sakurai and S. Shinkai, Biomacromolecules, 6, 1540-1546 (2005) 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0014] しかしながら、DNA-siRNA核酸複合体は、生体内に広く存在するリボヌクレアーゼに対し不安定であるため、RNAと同様に、生体内で速やかに分解を受けやすいという問題がある。事実、DNA-siRNA核酸複合体の血清中での安定性を評価するため、核酸複合体を10%血清中でインキュベート後、アクリルアミドゲル電気泳動を用いて分子量の変化を確認したところ、DNAとsiRNAの結合部分で切断されたバンドが確認された。これはβ-1,3-グルカンと複合化させた核酸複合体においても観察され、複合体を生体内に投与しても速やかにDNAとRNAに切断されてしまい、DNA-siRNA核酸複合体の細胞導入効率の低下や、標的遺伝子のサイレンシング活性の低下等を招くと考えられる。 [0015] 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生体内においても、DNAとRNAの結合部で分解されない核酸複合体を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0016] 本発明の第1の態様は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、前記一本鎖DNAと結合した前記リボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基がアルコキシ基またはハロゲン原子で置換されている核酸複合体を提供することにより上記課題を解決するものである。 [0017] 本発明の第2の態様は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、前記一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基がホスホロチオエート基(チオリン酸エステル基:-O-PO(S)-O-:リン酸基のP=O をP=Sに置換した構造を有する。)、ジチオリン酸ジエステル基(-O-PS(S)-O-)およびトリチオリン酸ジエステル基(-O-PS(S)-S-)のいずれかで置換されている核酸複合体を提供することにより上記課題を解決するものである。 [0018] 本発明の第1および第2の態様において、前記一本鎖DNAのヌクレオチド数が10以上であってもよい。また、本発明の第1および第2の態様において、前記一本鎖DNAがポリデオキシアデニンであってもよい。 [0019] 本発明の第1および第2の態様において、前記一本鎖DNAのリン酸ジエステル基のうち少なくとも一部がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されていてもよい。また、この場合において、前記一本鎖DNAのリン酸ジエステル基のうち少なくとも50%以上がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されていてもよい。 [0020] 本発明の第1および第2の態様において、前記二本鎖RNAがsiRNAであってもよい。また、この場合において、前記siRNAが21mer型または27mer型であってもよい。さらに、前記siRNAの標的遺伝子が、Dectin-1発現細胞において発現している遺伝子であってもよい。 [0021] 本発明の第3の態様は、本発明の第1および第2の態様に係る核酸複合体1分子の一本鎖DNA部位と、β-1,3-グルカン骨格を有する多糖2分子とが、3重らせん構造を形成している核酸多糖複合体を提供することにより上記課題を解決するものである。 [0022] 本発明の第3の態様において、前記β-1,3-グルカン骨格を有する多糖がシゾフィランであることが好ましい。 [0023] 本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に係る核酸多糖複合体を含む医薬組成物を提供することにより上記課題を解決するものである。 [0024] 本発明の第5の態様は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体のRNA分解酵素に対する安定性を増大させる方法であって、前記一本鎖DNAと結合した前記リボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基をアルコキシ基またはハロゲン原子で置換する核酸複合体の安定化方法を提供することにより上記課題を解決するものである。 [0025] 本発明の第6の態様は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体のRNA分解酵素に対する安定性を増大させる方法であって、前記一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基をホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換する核酸複合体の安定化方法を提供することにより上記課題を解決するものである。 発明の効果 [0026] 一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合したDNA-RNA核酸複合体において、一本鎖DNAと結合したリボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基をアルコキシ基またはハロゲン原子で置換し、あるいは一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基をホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換することにより、ポリデオキシリボヌクレオチドとポリリボヌクレオチドとの結合部の安定性を向上させ、生体内においても加水分解を受けにくくなる。したがって、本発明の核酸複合体は、生体内において速やかに分解を受けて機能を喪失することなく、本来の機能を維持することができる。例えば、siRNAの5’側末端側にpoly(dA)等の、β-1,3-グルカン(シゾフィラン等)と安定な複合体を形成するポリデオキシヌクレオチドを結合させた核酸複合体とβ-1,3-グルカンとから形成される核酸多糖複合体に本発明の核酸複合体を適用すると、細胞質内で分解を受けることなく、確実にsiRNAを細胞核に送達することが可能になり、RNA干渉を利用して疾患の原因となる遺伝子の発現を抑制する核酸医薬の有用性および治療効果を増大させることが期待される。 図面の簡単な説明 [0027] [図1] dA40-siRNAの血清中での分解実験(実施例1)の結果を示すゲル蛍光画像である。 [図2A] 5’側末端にFITCを付加させたアンチセンス鎖を用いて調製した蛍光修飾dA10-siRNAの血清中での分解物の同定実験(実施例2)の結果を示すゲル蛍光画像である。 [図2B] 3’側末端にFITCを付加させたアンチセンス鎖を用いて調製した蛍光修飾dA10-siRNAの血清中での分解物の同定実験(実施例2)の結果を示すゲル蛍光画像である。 [図2C] dA-siRNAの分解反応を示すイメージ図である。 [図3] RNAの分解に及ぼす2’-O-メチル修飾の効果(実施例3)を示すゲル蛍光画像である。 [図4] 一本鎖RNAの分解に及ぼす2’-O-メチル修飾の効果(実施例4)を示すゲル蛍光画像である。 [図5] 血清中での核酸複合体の分解に及ぼす2’-O-メチル修飾位置の効果(実施例5)を示すゲル蛍光画像である。 [図6] DNAの分解に及ぼす塩基の種類の影響(実施例6、7)を示すゲル蛍光画像である。 [図7] RNAの分解に及ぼすホスホロチオエート修飾の効果(実施例8)を示すゲル蛍光画像である。 [図8] RNAの3’側末端にDNAが接合している時の影響(実施例9)を示すゲル蛍光画像である。 発明を実施するための形態 [0028] 以下、本発明を具体化するための実施の形態について説明する。 本発明の第一の実施の形態に係る核酸複合体は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、一本鎖DNAと結合したリボヌクレオチド鎖の5’側末端ヌクレオチドにおける2’位のヒドロキシル基がアルコキシ基またはハロゲン原子で置換されている。すなわち、本実施の形態に係る核酸複合体は、下記の一般式(I)において、R2がアルコキシ基またはハロゲン原子である場合に相当する。なお、式(I)において、R1はアデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)およびシトシン(C)のいずれかであり、R3およびR5はリン酸エステル基(-PO2-O-)である。なお、アルコキシ基の具体例としては、炭素数1~5の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数5~15のアリールアルキル基、O-アリル(allyl)基等のアルケニルアルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基である。また、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)およびヨウ素原子(I)が挙げられ、特に好ましくはフッ素原子である。 [0029] [化1] [0030] 例えば、核酸複合体において、ポリデオキシヌクレオチド部分と結合したポリリボヌクレオチド部分は、相補的な塩基配列を有するRNAと二本鎖を形成し、siRNAを構成していてもよい。siRNAとは、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与し、相補的な塩基配列を含むmRNAを破壊し、遺伝子の発現を配列特異的に抑制する機能を有する短鎖の二本鎖RNAである。 [0031] siRNAの塩基数は、20~27塩基(対)である。ヒトの場合、塩基数が17以上であれば、得られるポリヌクレオチドの総数(417=1.7×1010)がヒトの遺伝子総数(6×109)を上回るため、特定遺伝子のみの発現の阻害が統計的には可能になる。siRNAは、広く用いられている21mer型であってもよいが、dicerに対する特異性がより向上している27mer型であってもよい。 [0032] siRNAの塩基配列のデザインは、任意の公知の方法により行うことができる。複数遺伝子間で保存性の高い配列に相補的な配列を選択すると、遺伝子特異的な発現抑制が困難になる場合があるので、例えば、標的遺伝子に特異的な配列に相補的な配列が選択される。標的塩基配列または遺伝子産物の対応するアミノ酸配列が既知の場合には、GenBank、EMBL、PDB、DDBJ等のデータベースから得られる当該既知の配列データを元に、任意の公知の方法を用いてsiRNAを設計することができる。 [0033] 核酸複合体における一本鎖DNA(ポリデオキシヌクレオチド)部分は、それ自体が独自の機能を有するものであってもよく、二本鎖RNA(ポリリボヌクレオチド)部分の安定性を向上させるためのものであってもよく、後述するように、核酸複合体とβ-1,3-グルカンとの複合体(核酸多糖複合体)を形成させる場合における、複合体形成能を向上させるための特定の塩基配列(繰り返し配列を含む。)を有するものであってもよい。一本鎖DNAのヌクレオチド数は特に制限されないが、10以上であることが好ましい。核酸分解酵素に対する安定性を向上させるために、一本鎖DNA中のリン酸ジエステル基(リン酸ジエステル結合、ホスホジエステル結合等ともいう。)および上記一般式(I)中のR5の一部、より好ましくは50%以上がホスホロチオエート基(チオリン酸エステル基:-O-PO(S)-O-:リン酸基のP=O をP=Sに置換した構造を有する。)、ジチオリン酸ジエステル基(-O-PS(S)-O-)およびトリチオリン酸ジエステル基(-O-PS(S)-S-)のいずれかで置換されていてもよい。 [0034] 上記のような塩基配列を有するポリヌクレオチドは、化学合成法、遺伝子工学的手法等の任意の公知の方法を用いて合成することができる。 [0035] 本発明の第二の実施の形態に係る核酸複合体は、一本鎖DNAの3’側末端のデオキシリボヌクレオチド残基の3’位と、二本鎖RNAの一方のリボヌクレオチド鎖の5’側末端のリボヌクレオチド残基の5’位が結合した核酸複合体であって、一本鎖DNAと結合した最初のリボヌクレオチドの3’位と、それに隣接するリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換されている。すなわち、本実施の形態に係る核酸複合体は、下記の一般式(I)において、R3がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかである場合に相当する。なお、式(I)において、R1はアデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)およびシトシン(C)のいずれかであり、R2はヒドロキシル基であり、R5はリン酸エステル基(-PO2-O-)である。 [0036] [化2] [0037] なお、上記の一般式(I)において、R2がアルコキシ基またはハロゲン原子であり、かつ、R5がホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかであってもよい。 [0038] 上記のようにして得られる核酸複合体をβ-1,3-グルカンと相互作用させ、核酸複合体1分子の一本鎖DNA部位と、β-1,3-グルカン骨格を有する多糖2分子とが、3重らせん構造を形成している核酸多糖複合体を形成させる。β-1,3-グルカンと複合体を形成させることにより、ポリヌクレオチドを加水分解から保護し、血液および体液中における半減期を大幅に(例えば10倍程度)に増大させることができる。そのため、例えば、siRNAを含む核酸複合体を標的細胞により確実にデリバリーすることが可能になる。 [0039] 主鎖がβ-1,3-グルカンおよびβ-1,3-キシランからなる多糖は、poly(C)等の核酸と近似するヘリックスパラメータを有しており(例えば、高橋、小畠、鈴木、Prog.Polym.Phys.Jpn.27巻、767ページ、および「Conformation of Carbohydrates」、Sharwood academic publisher、1998年を参照)、核酸塩基と水素結合可能な水酸基を有しているため、核酸と相互作用し、三重らせん構造を有する安定な複合体を形成することが知られている。β-1,3-グルカンの具体例としては、シゾフィラン、カードラン、レンチナン、パーキマン、グリホラン、スクレログルカン等が挙げられる。これらは、主鎖がβ-結合(β-D-結合)により結合したグルカンで、側鎖の頻度が異なる天然の多糖である。これらのβ-1,3-グルカンは、化学修飾等の処理を行うことなくそのまま用いてもよいが、通常の過ヨウ素酸化法を用いてその側鎖を適当に間引くことにより、その溶解性を制御することもできる。 [0040] β-1,3-グルカンの分子量は、炎症性腸疾患の治療剤の調製に用いられるポリヌクレオチドの塩基長、繰り返し配列の塩基長等に応じて適宜調節される。しかし、分子量が小さいと、いわゆるクラスター効果(高分子系の協同現象)が発現し難くなり好ましくない。通常は、核酸と複合体を形成しうるβ-1,3-グルカンの重量平均分子量としては、核酸塩基の種類や高次構造によって異なるが、好ましくは2000以上、さらに好ましくは4000以上、より好ましくは6000以上である。また、ポリヌクレオチド上の核酸塩基と水素結合を形成する水酸基の数は、通常は、5個以上、好ましくは、8個以上、さらに好ましくは、10個以上必要である。 なお、β-1,3-グルカンの重量平均分子量は、光散乱法、沈降速度法(超遠心法)等の任意の公知の方法を用いて決定することができる。 [0041] β-1,3-グルカンは、一般に菌類や真性細菌によって産生されるため、これらの微生物を培養後、菌体をホモゲナイズし、細胞溶出分や不溶性残渣等の不純物から超遠心法等の方法により単離することにより得ることができる。一般に、このようにして得られるβ-1,3-グルカンは高分子量(重量平均分子量が数十万程度)で三重らせん構造を取るが、そのまま用いてもよく、必要に応じて低分子化して用いてもよい。低分子化は、β-1,3-グルカンの種類や所望の分子量に応じて、酵素分解、酸加水分解等の任意の方法および条件から適宜適当な方法および条件を選択して行う。例えば、シゾフィランの場合には、80%DMSO-硫酸による加水分解等により、種々の分子量を有する一本鎖シゾフィランを得ることができる。 [0042] シゾフィラン等のβ-1,3-グルカンは、通常、水中で三重らせん構造を呈している。したがって、ポリヌクレオチドと複合体を形成するためには、DMSO(ジメチルスルホオキシド)のような溶媒に溶解して分子間水素結合および疎水性相互作用による会合状態を解いて一本鎖にする。これにポリヌクレオチドを含有する水溶液(またはアルコール等の極性溶媒の溶液)を添加してゆくと、溶媒の極性の増大に伴い、疎水性相互作用によりポリヌクレオチドとβ-1,3-グルカンとが会合し、ポリヌクレオチドの分子鎖を取り込みながら分子内および分子間でポリヌクレオチドと多糖との会合体が形成される。その結果、1分子のポリヌクレオチドと2分子のβ-1,3-グルカン分子とからなる三重らせん構造を有する複合体が形成される。複合体の形成は、例えば、CD(円偏光二色性)スペクトルを測定することにより、コンホメーション変化を調べることによって確認することができる。得られる複合体は、一般に水溶性であり、温度変化やpHの変化によって解離および再結合する。更に、複合体は核酸分解酵素に対する耐性を有し、ポリヌクレオチドが破壊されることもない。 [0043] 上述のような核酸多糖複合体を形成させる場合には、複合体形成能を向上させるために、核酸複合体の一本鎖DNA部分は、poly(dA)配列、およびpoly(dT)配列のいずれかの繰り返し配列を有していることが好ましい。好ましい繰り返し配列を構成する塩基およびヌクレオチドの種類並びに塩基数は、リボヌクレオチド部分の長さ、用いられるβ-1,3-グルカンの種類および分子量等に応じて適宜決定される。例えば、β-1,3-グルカンとしてシゾフィランが用いられる場合には、ポリデオキシヌクレオチド部分が、繰り返し配列としてpoly(dA)配列を有していることが好ましく、繰り返し配列の長さは、例えば、10塩基長以上であることが好ましく、10~80塩基長であることがより好ましい。 [0044] 核酸複合体の血清中での安定性を評価するためには、任意の公知の方法を特に制限なく用いることができるが、一例として、使用する血清としてウシ胎児血清(FBS)を選択し、10%FBSを含むようにRPMI1640培地を調製し、そこへDNA-siRNA核酸複合体を添加し1時間37℃でインキュベーションし、12%アクリルアミドゲル電気泳動後にSYBR Goldで核酸を染色しゲル撮影装置で観察する方法が挙げられる。 [0045] 核酸多糖複合体は、RNAiを始めとする遺伝子治療用の医薬組成物の製造に有効成分として用いることができる。医薬組成物の製造には、任意の公知の成分(医薬用途に許容される任意の担体、賦形剤及び添加物)および製剤方法を用いることができる。例えば、炎症性腸疾患の治療剤は、錠剤、座剤、カプセル剤、シロップ剤、ナノゲル等のマイクロカプセル剤、滅菌液剤、懸濁液剤等の形態を取ることができる。 [0046] 医薬組成物は、ヒトまたは温血動物(マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、サル等)に対し、経口及び非経口経路のいずれによっても投与可能である。非経口投与経路としては、皮下及び筋中注射、腹腔内投与、直腸投与、内視鏡等による腸内投与等が挙げられる。 [0047] 活性成分である核酸複合体とβ-1,3-グルカン分子との複合体の用量は、活性、治療対象となる疾患、投与対象となる動物の種類、体重、性別、年齢、疾患の重篤度、投与方法等に応じて異なる。体重60kgの成人を例に取ると、経口投与の場合、1日当たりの用量は通常約0.1~約100mg、好ましくは約1.0~約50mg、より好ましくは約1.0~約20mgであり、非経口投与の場合、1日当たりの用量は通常約0.01~約30mg、好ましくは約0.1~約20mg、より好ましくは約0.1~約10mgである。他の動物に投与する場合には、上記用量を単位体重当たりの用量に換算後、投与対象となる動物の体重を乗じて得られた用量を用いる。 [0048] 医薬組成物の有効成分として核酸多糖複合体を用いる場合において、核酸複合体の塩基配列は、治療対象となる疾患や標的遺伝子の種類に応じて適宜選択されるが、Dectin-1発現細胞において発現する遺伝子を標的とするsiRNAを含んでいることが好ましい。Dectin-1は樹状細胞やマクロファージに発現するC型レクチンに属する膜タンパク質であり、β-グルカンに結合する性質を有するため、核酸多糖複合体を特異的に導入する上で好適である。 [0049] 核酸多糖複合体の製造に用いることができる核酸複合体(上述の第1および第2の実施の形態に係るものを含む)は、下記の式(A)で表される部分塩基配列を有している。なお、核酸複合体は、式(A)で表される塩基配列のみからなるものであってもよく、当該塩基配列を部分塩基配列として有するものであってもよい。 [0050] [化3] [0051] なお、式(A)において、dRNはデオキシリボヌクレオチドを表し、ANはリボヌクレオチドの2’-位のヒドロキシ基および5’-位のリン酸エステル基の一方または双方を化学修飾したリボヌクレオチド誘導体、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、トレオース核酸(TNA)ならびにモルホリノ核酸のいずれかを表し、RNはリボヌクレオチドを表し、xおよびzはそれぞれ独立して1以上の整数であり、yは1以上10以下の整数である。 [0052] 式(A)で示される塩基配列中の5’側末端側に位置するポリデオキシヌクレオチド部分(dRN)x は、下記の式(III)で表され、式中、塩基B1 は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)またはシトシン(C)である。また、式(I)で示される塩基配列中の3’側末端側のポリリボヌクレオチド部分(RN)zは、下記の式(IV)で表され、式中、塩基B2 は、アデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)またはシトシン(C)である。 [0053] [化4] [0054] ポリデオキシヌクレオチド部分(dRN)x およびポリリボヌクレオチド部分(RN)z の両者において、構成塩基数xおよびzについて特に制限はない。また、ポリデオキシヌクレオチド部分(dRN)x およびポリリボヌクレオチド部分(RN)z のそれぞれの塩基配列は、何らかの生体機能を有する遺伝子またはその一部をコードするものやプライマー配列であってもよく、単一の塩基が一定数配列したもの、複数の塩基が規則的に配列したもの等の生体機能を有しないものであってもよい。 [0055] 式(I)で示される塩基配列中のポリデオキシヌクレオチド部分とポリリボヌクレオチド部分の間に位置する(AN)y を構成する繰り返し単位の具体例としては、下記の一般式(II)で表される置換リボヌクレオチド、下記の式(V)で表されるペプチド核酸(PNA)、下記の式(VI)で表されるグリコール核酸(GNA)、下記の式(VII)で表されるロックド核酸(LNA)、下記の式(VIII)で表されるトレオース核酸(TNA)、下記の式(IX)で表されるモルホリノ核酸等が挙げられる。 [0056] [化5] [0057] [化6] [0058] [化7] [0059] なお、式(II)におけるR1、式(V)~(IX)におけるB3 ~ B7 は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)および非天然塩基(チミン、8-オキソグアニン、2-アミノ-6-ジメチルアミノプリン、2-アミノ-6-チエニルプリン、ピリジン-2-オン、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、β-D-ガラクトシルキュェオシン、2’-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、β-D-マンノシルキュェオシン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)トレオニン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸-メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キュェオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)カルバモイル)トレオニン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、ワイブトシン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン等が挙げられる)のいずれかである。 [0060] また、式(II)において、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、炭素数1~5の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数5~15のアリールアルキル基、O-アリル基等のアルケニルアルキル基のいずれかであり、R5はリン酸ジエステル基、ホスホロチオエート基(チオリン酸ジエステル基)、ジチオリン酸ジエステル基、およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかである(ただし、R2がヒドロキシル基であり、且つR5がリン酸エステル基である場合を除く)。 [0061] (AN)y 部分の繰り返し単位のうち、特に好ましいのは、式(II)において、R2 がO-メチル基でR5 がリン酸基の場合、およびR2 がヒドロキシル基でR5 がホスホロチオエート基である場合である。 [0062] (AN)y 部分の塩基配列は、ポリデオキシリボヌクレオチド部分および/またはポリリボヌクレオチド部分の塩基配列と連続して、生体機能を有する遺伝子をコードする塩基配列の一部を構成していてもよく、独立して何らかの機能を有する塩基配列を有していてもよく、特に機能を有しない規則的またはランダムな塩基配列であってもよい。yは1以上10以下の整数であるが、好ましくは1以上4以下、特に好ましくは1である。 実施例 [0063] 次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。 実施例1:(dA)40 -siRNAの血清中での分解の確認 siRNAのセンス鎖(5’-CAAAGACAACCAACUAGUGGU-3’:配列番号1。以下、「siRNA」、「siRNAのセンス鎖」または「センス鎖」という。)の5’側末端にデオキシアデニン(以下「dA」と略称する場合がある。)40量体(dA40)を付加させたDNA-RNA核酸複合体とsiRNAのアンチセンス鎖(5’-ACCACUAGUUGGUUGUCUUUG-3’:配列番号2)をアニーリングさせ、DNA-siRNA核酸複合体(dA40-siRNA。以下、デオキシアデニンのx(xは自然数)量体をセンス鎖の5’末端側に付加させたDNA-RNA核酸複合体とアンチセンス鎖をアニーリングさせて得られるDNA-siRNA核酸複合体を「dAx-siRNA」と略称する。)を得た。 使用した核酸は全て北海道システムサイエンス株式会社より購入した。 [0064] 10%FBSを含むRPMI1640培地にDNA-siRNA核酸複合体を添加し、37℃で1時間インキュベーションし、12%アクリルアミドゲル電気泳動(100V、1時間)を行った。ゲルをSYBR Gold(ライフテクノロジーズ社:米国カリフォルニア州)染色し、蛍光イメージャーでゲルの蛍光画像の撮影を行った。 [0065] 得られたゲル蛍光画像を図1に示す。インキュベーション前のdA40-siRNA核酸複合体のバンドは、コントロールのdA40とsiRNA(21bp)のバンドよりも高分子側に検出される。しかし、FBS含有培地中でのインキュベーション後では、低分子側に2本のバンドが観察される。バンドの位置から、DNA-siRNA核酸複合体が、FBS中に含まれる酵素の作用により、DNAとsiRNAに切断されたのではないかと考えられる。なお、FBSの代わりにマウス血清(MS)を含むRPMI1640培地を用いて同様の実験を行った場合にも、同様の結果が得られた。 [0066] 実施例2:DNA-siRNA核酸複合体の切断部位に関する検討 DNA-siRNA核酸複合体が血清中の酵素によりどのように切断されているか蛍光修飾核酸を用いて検討した。アンチセンス鎖の5’側末端側あるいは3’側末端側にFITC修飾したものをそれぞれ用意し、配列番号1で表される塩基配列を有するセンス鎖の5’末端側にデオキシアデニン10量体(dA10)を付加させたDNA-RNA核酸複合体およびdA10を付加させていないセンス鎖と、それぞれアニーリングさせた。両者について、血清中でインキュベーションさせた後、ゲル電気泳動後にFITCで蛍光観察を行い、次いでSYBR Gold染色し、同様に蛍光観察を行った。 [0067] 得られた蛍光画像を図2Aおよび図2Bに示す。dA10を付加させていないセンス鎖と5’側末端側をFITC修飾したアンチセンス鎖とをアニーリングさせて得られるsiRNAの場合、FITCとSYBR Gold染色後の蛍光画像において、両者の蛍光バンドが完全に一致していることがわかる。また、インキュベーションの前後で蛍光バンドの位置に変化がないことから、RNA二本鎖では血清中での分解はほとんど起きていないことがわかる(図2A、レーン1、2)。一方、dA10-siRNAの場合、インキュベーション前後のSYBR Gold染色後の蛍光バンドの位置の比較から、FBSとのインキュベーション後に分子量が減少していること、インキュベーション後の試料について、SYBR Gold由来の蛍光バンドがFITC由来の蛍光バンドとオーバーラップすることが確認された(図2A、レーン3、4)。さらに、これらの蛍光バンドは、コントロールsiRNAの蛍光バンドの位置とほぼ重なることから、血清とのインキュベート後に見られる蛍光バンドは、21塩基対からなるsiRNAに近い塩基対数を有する分解性生物に由来するものであることがわかる。 [0068] アンチセンス鎖の3’側末端側をFITC修飾したsiRNAの場合、上述のアンチセンス鎖の5’末端側をFITC修飾した場合と同様に、FITCおよびSYBR Gold染色に由来する蛍光バンドの位置が、FITCとFBSとのインキュベーションの前後で変わらない(図2B、レーン1、2)。このことから、FITCの導入部位(5’末端側および3’末端側)に関係なく、siRNAは血清中でのインキュベーションにより分解されないことがわかる一方、dA10-siRNAでは、FBSとのインキュベーション後に、非常に低分子側に蛍光バンドが見られる(図2B、レーン3、4)。また、SYBR Gold染色後の蛍光画像では、上述の場合と同様に、siRNA21 bpに近い位置にバンドが見られた。このことから、得られたRNA二本鎖は21 bpよりも短くなっており、FBS中の酵素タンパクにより、センス鎖だけでなくアンチセンス鎖も切断を受けていることがわかった。 [0069] 上記の結果よりdA10-siRNAは血清中でDNAとの接合点のRNA付近が認識され、分解を受けていると考えられる。分解後は21 bpよりも短い二本鎖RNAとdAに数量体のRNAが付加した一本鎖とそのRNAの相補鎖に分かれてしまっていると考えられる(図2Cに、模式図を示す。)。 [0070] 実施例3:siRNA中のRNA残基の2’-O-メチル化によるDNA-siRNA核酸複合体の分解の回避 実施例2の結果より、DNAとsiRNAの連結部付近で分解されていると考えられるため、DNA(dA40)の3’末端側と接合するsiRNA(センス鎖)の、5’末端側から数えて最初の1つ、2つ、3つ、4つのRNA残基を、それぞれ、2’-O-メチル化させたdA40-siRNA核酸複合体を用意し、実施例2と同様に、血清(FBS)中での安定性を、インキュベーション前後の試料のゲル電気泳動法を用いて評価した。 [0071] 得られたゲル蛍光画像を図3に示す。先のメチル化していないDNA-siRNAは血清と1時間インキュベーションすると切断されてしまったが、メチル化するとバンドの位置は20時間経っても変化がないことが確認された。また、DNAと接合する最初の(5’末端側の)RNA1箇所のみを2’-O-メチル化するだけで、十分に分解を防げることがわかった。 [0072] 実施例4:DNA-siRNA核酸複合体とDNA-RNA核酸複合体との比較 先の実験より、血清中でのインキュベーションによるDNA-siRNA核酸複合体の分解が、DNAとRNA二本鎖部分との結合点で起きていると考えられるが、この分解がRNA二本鎖に特異的な現象であるかを検討するために、DNA(dA40)の3’末端側と接合するsiRNA(センス鎖)の、5’末端側から数えて最初の1つ、2つ、3つ、4つのRNA残基を、それぞれ、2’-O-メチル化させたdA40-RNA(1本鎖)核酸複合体を用いて、実施例3と同様の実験を行った。 [0073] 得られたゲル蛍光画像を図4に示す。メチル化されたRNA残基の数にかかわらず、すべての試料において、FBSとのインキュベーション後に分子量が減少しているのがわかる。一方、dA40部分は1時間ではほとんど分解を受けないため、一本鎖RNA部分(メチル化されていない部分)が分解されたことにより、分子量が減少したと考えられる。 [0074] 二本鎖RNAの場合には、DNAの3’末端側と接合するRNAセンス鎖の、5’末端側から数えて最初のRNA残基を2’-O-メチル化していれば分解を十分に回避できたが、一本鎖RNAの場合は、DNAの3’末端側と接合するRNA中のRNA残基を2’-O-メチル化しても、その他のRNA部分は分解されてしまうことがわかった。つまり、DNAの3’末端に隣接するRNA残基の2’-O-メチル化による分解の回避は、DNA-siRNA核酸複合体については有効であるが、DNA-RNA核酸複合体については効果を有しないことが確認された。 [0075] 実施例5:DNA-siRNA核酸複合体の分解の回避に有効なRNA残基の2’-O-メチル化部位の検討 実施例3の結果より、DNA-siRNA核酸複合体の分解を阻止するためには、2’-O-メチル化するRNA残基数は1つで十分であることがわかったが、2’-O-メチル化する箇所が、DNAの3’末端側と接合するセンス鎖の、5’末端側から数えて最初のRNAである必要があるかを確認するために、2’-O-メチル化するRNA残基の場所を変えて同様の実験を行った。2’-O-メチル化は、5’末端のRNA残基または5’末端から2番目のRNAについて行った。また、上述の実施例では、SPGと複合化させることを考慮し、dAの長さを40量体にしていたが、dAの長さを短くしても同様の現象が観察されるかについても同様に確認した。 [0076] 得られたゲル蛍光画像を図5に示す。dAの長さを10量体に短くしても、FBSとのインキュベーション後に短いバンド(siRNAと同程度)が観察された(図5、レーン3)。また、2’-O-メチル化するRNA残基の場所を変えた場合、5’末端側から2番目のRNAをメチル化しても血清中での分解を回避できないことがわかった(図5、レーン7)。 [0077] 上述の結果より、DNA-siRNA核酸複合体の分解を阻止するためには、DNAと接合する最初のRNA残基を2’-O-メチル化する必要があることがわかる。 [0078] 実施例6:DNA-dsDNA核酸複合体の血清中での安定性の検討 上述の実施例において、血清(FBS)中での分解が確認されたのは、DNA-二本鎖RNAの核酸複合体であるが、DNA-二本鎖DNA(dsDNA)核酸複合体の場合でも同様の分解が観測されるか検討するために、siRNAの配列(センス鎖およびアンチセンス鎖の両者)を全てDNAに置き換えたものを用意し、同様の実験を行った。 [0079] 得られたゲル蛍光画像を図6に示す。DNA-dsDNA核酸複合体においては、血清とのインキュベーションの前後で分子量の変化がないことがわかる(図6、レーン1、2)。この結果より、分解を受けるのは核酸複合体中の二本鎖RNAのみであることがわかった。 [0080] 実施例7:DNA-siRNA核酸複合体中のDNAの塩基配列とDNA-siRNA核酸複合体の安定性との関連 これまでの実験では、SPGとの複合化を考慮し、DNA部分はdA10またはdA40に統一していたが、DNA部分の塩基配列がDNA-siRNA核酸複合体の安定性に及ぼす影響を検討するために、dA10の代わりに、デオキシシトシン(dC)、デオキシグアニン(dG)、デオキシチミジン(dT)の10量体を用いてsiRNAとの核酸複合体を調製し、同様の実験を行った。 [0081] 得られたゲル蛍光画像を図6に示す。dT10-siRNA、dC10-siRNAについては、dA10-siRNAと同様に、FBSとのインキュベーション後に分子量の低下(siRNAのみと同程度の分子量に相当する蛍光バンド)が見られたことから、やはりsiRNA部分で切断されていると考えられる。dG10-siRNAに関しては、dG10部分で凝集してしまう性質があるため、インキュベーション前の試料について、他のDNA-siRNA核酸複合体よりも高分子量側に蛍光バンドが見られるが、FBSとのインキュベーション後に、siRNAと同程度の位置に蛍光バンドが観察されることから、dG10-siRNAでも、同様の分解を受けていることがわかった。 [0082] 実施例8:2’-O-メチル化以外の化学修飾によるDNA-siRNA核酸複合体の分解の回避 DNAと接合する最初のリボヌクレオチド(DNAの3’末端側に隣接するリボヌクレオチド)を2’-O-メチル修飾(リボースの2’位のヒドロキシル基をメトキシ基に置換)することで血清中での分解を回避できることがわかったが、その他にもDNAの3’末端と接合する最初のリボヌクレオチドの3’位と2番目のリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基をホスホロチオエート基に置換したものを用意して同様の実験を行った。 [0083] 得られたゲル蛍光画像を図7に示す。ホスホロチオエート置換した配列の場合、約半分が分解を受けずに残っているが残りの約半分は分解されていた。ホスホロチオエート体とはリン酸ジエステル骨格中のリン酸基に結合する酸素原子の一つを硫黄原子に置換したものでラセミ混合物として得られる。よって、半分が分解され、半分が分解を受けずに残るという事実から、そのS体あるいはR体の一方のみが血清中の分解酵素の基質になっているのではないかと考えられる。 [0084] 実施例9:DNAがRNAの3’側末端に接合している場合 これまでDNAはsiRNAのセンス鎖の5’側末端に接合させていたが、センス鎖の3’側末端にDNAが接合した場合も同様にDNAと接合する最初のRNAのところで分解を受けるかを検討するために、これまでの配列を逆にしたもの(配列番号1で表されるオリゴリボヌクレオチドの3’側末端側にポリ(dA)が結合した核酸複合体)を用意して実験を行った。 [0085] 得られたゲル蛍光画像を図8に示す。siRNAセンス鎖の3’側末端にDNAを接合しても血清中での分子量変化は観察されなかった(図8レーン3,4)。これより分解酵素がDNAの5’側末端から3’側末端へ、あるいは二本鎖RNAの5’側末端から3’側末端へ伸びるDNAを的確に認識していることが考えられる。 [0086] 以上の結果より、DNA-RNA核酸複合体が血清中で位置特異的に分解を受けるにはDNAの配列は任意で、RNAは二本鎖である必要があることがわかった。 [0087] この分解を回避するには、DNAと接合する最初のRNA(DNAと接合する2つ目以降のRNA残基では効果は見られない)の2’位のヒドロキシル基を、をメトキシ基等のアルコキシ基、またはフッ素原子等のハロゲン原子で置換し、あるいはDNAの3’末端と接合する最初のリボヌクレオチドの3’位と2番目のリボヌクレオチドの5’位との間のリン酸ジエステル基をホスホロチオエート基、ジチオリン酸ジエステル基およびトリチオリン酸ジエステル基のいずれかで置換する必要がある。 [0088] 実施例10:ポリヌクレオチドとシゾフィランとの複合体の調製 (1)三重らせんシゾフィランの調製 文献(A.C.S.38(1),253(1997)、Carbohydrate Research,89,121-135(1981))記載の定法にしたがい、三重らせんシゾフィランを調製した。すなわち、最少培地を用いて、ATCC(American Type Culture Collection)から入手したSchizophyllum commune.Fries(ATCC 44200)を7日間振盪培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して、これを限外ろ過にて溶液を水に置換し、凍結乾燥させ、分子量45万の三重らせんシゾフィランを得た。 [0089] (2)複合体の調製 上記のようにして得られたシゾフィランを、濃度が15g/dLとなるように0.25NのNaOH水溶液に溶解した。この溶液10μLに、リン酸緩衝液(pH=4.5)10μLと、3g/dLのポリヌクレオチド溶液30μLを混合し、複合体の水溶液を調製した。得られた溶液は透明で均一であった。 [0090] 特定の実施形態および実施例に基づき、本発明について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明の範囲は、これらの実施形態や実施例に限定されることはない。本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。 本出願は、2012年6月20日に出願された日本国特許出願2012-139250号に基づくものであり、その明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含むものである。上記日本国特許出願における開示は、その全体が本明細書中に参照として含まれる。 |
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