PLATINUM CORE SHELL CATALYST, MANUFACTURING METHOD FOR SAME, AND FUEL CELL USING SAME
外国特許コード | F150008171 |
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掲載日 | 2015年3月19日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2013JP077617 |
国際公開番号 | WO 2014069208 |
国際出願日 | 平成25年10月10日(2013.10.10) |
国際公開日 | 平成26年5月8日(2014.5.8) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | PLATINUM CORE SHELL CATALYST, MANUFACTURING METHOD FOR SAME, AND FUEL CELL USING SAME |
発明の概要(英語) | The problem of the present invention is to provide a platinum core shell catalyst that has superior durability and catalytic efficiency, and has gold core particles with an extremely small diameter (5 nm or less). The present invention is a platinum core shell catalyst for fuel cells, characterized in that the particle size thereof is 1.6 -6.8 nm, and by having core particles that include gold, and a shell formed on the surface of the core and comprising platinum and iridium and/or ruthenium. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | 白金コアシェル触媒、その製造方法及びそれを用いた燃料電池 |
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発明の概要 | 耐久性と触媒効率に優れた、極めて小粒径(5 nm以下)の金コア粒子を有する白金コアシェル触媒を提供することを課題とする。 金を含有するコア粒子と、当該コアの表面に形成された、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとを含有するシェルとを有し、粒径が1.6 nm~6.8 nmであることを特徴とする、燃料電池用の白金コアシェル触媒である。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 金を含有するコア粒子と、当該コアの表面に形成された、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとを含有するシェルとを有し、粒径が1.6 nm~6.8 nmであることを特徴とする、燃料電池用の白金コアシェル触媒。 [請求項2] 前記触媒において、コア粒子の粒径が1.0 nm~5.0 nmであり、シェルの厚みが0.3 nm~0.9 nmであることを特徴とする、請求項1に記載の白金コアシェル触媒。 [請求項3] 前記シェルにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合が、0.1~50 at.%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の白金コアシェル触媒。 [請求項4] 前記シェルにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合が、5~30 at.%であることを特徴とする、請求項3に記載の白金コアシェル触媒。 [請求項5] 前記シェルにおいて、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムが同一層内で混在していることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の白金コアシェル触媒。 [請求項6] 前記シェルにおいて、イリジウム及び/又はルテニウムが、白金と金コア粒子との間に介在していることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の白金コアシェル触媒。 [請求項7] 前記触媒が、炭素質材料からなる坦体に担持されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の触媒。 [請求項8] 請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒を用いた、白金コアシェル触媒を酸素還元反応の触媒として利用する燃料電池。 [請求項9] (1)炭素質担体に担持された金コア粒子の表面に銅からなる単分子層を形成させるステップと、 (2)前記ステップ(1)で得られた銅単分子層を、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとに置換するステップと、 を含むことを特徴とする、燃料電池用の白金コアシェル触媒の製造方法。 [請求項10] 前記ステップ(1)が、炭素質担体に担持された金コア粒子を、銅からなる固体が浸漬されたCuイオンを含む酸性水溶液に投入して撹拌することを含むステップであり、前記ステップ(2)が、前記水溶液から前記銅からなる固体を除いた後、白金イオンとイリジウム及び/又はルテニウムイオンを与える物質を投入し、前記ステップ(1)で得られた生成物表面の銅を、白金とルテニウム及び/又はイリジウムと置換することを含むステップであることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。 [請求項11] 前記ステップ(2)で置換された白金とルテニウム及び/又はイリジウムにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合が、0.1~50 at.%であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の製造方法。 [請求項12] 前記ステップ(2)で置換された白金とルテニウム及び/又はイリジウムにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合が、5~30 at.%であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の製造方法。 [請求項13] 前記ステップ(2)において、白金イオンを与える化合物とイリジウム及び又はルテニウムイオンを与える化合物を同時に投入し、白金とイリジウム及び/又はルテニウムとが同一層内で混在するシェルを形成することを特徴とする、請求項9~12のいずれかに記載の白金コアシェル触媒の製造方法。 [請求項14] 請求項9~13のいずれかに記載の方法によって製造された白金コアシェル触媒を酸素還元反応の触媒として利用する燃料電池。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 白金コアシェル触媒、その製造方法及びそれを用いた燃料電池 技術分野 [0001] 本発明は、燃料電池において酸素還元反応の触媒として用いるのに適した、白金コアシェル触媒とその製造方法、及び当該触媒を用いた燃料電池に関する。 背景技術 [0002] 固体高分子形燃料電池(PEFC)は、アノード側で水素の酸化反応を、カソード側で酸素の還元反応を起こすことにより、水のみを生成するクリーンエネルギーデバイスである。カソード側の触媒として白金(Pt)を使用するものが知られている。貴金属である白金を用いる触媒は、触媒活性や電気伝導性が高く、また、周辺環境の状態や周辺環境に存在する物質による腐食や被毒を受けにくいという利点を有する。 [0003] 一方で、白金は資源量が少なく価格が高いという問題があるため、その利用効率や耐久性を向上させて使用量を低減するために種々の検討が進められている。検討の一つとして、異種金属上に白金を被覆してなる白金コアシェル触媒が注目されている。白金コアシェル触媒は、触媒活性を発揮する白金原子は触媒粒子の最外層に露出した白金原子のみであることに着目して考案されたもので、白金原子層(シェル)で被覆された異種金属微粒子(コア)が、カーボン等の担体に高分散担持された構成を有する。 [0004] 特許文献1(特開2012-41581号公報)には、白金の使用量を低減し、触媒活性を向上させるコアシェル微粒子として、面心立方結晶構造を有するルテニウムからなるコア粒子と、当該コア粒子の表面に形成された、面心立方結晶構造を有する白金からなるシェルとを有するコアシェル微粒子が開示されている。この発明は、触媒微粒子表面の白金原子の面密度を向上させることによって白金の触媒効率を上げ、もって使用量を削減することが主旨であり、シェルの白金原子の面密度が最大となる面心立方結晶構造を用いることを見出したものである。 [0005] また、白金シェルに対するコア金属として、金(Au)が知られている。金は貴金属であり、白金よりもイオン化傾向が小さく酸化に対して安定であり、また白金よりもはるかに資源量が多いことから、コア金属の一つとして期待されている。 [0006] 特許文献2(特開2011-212666号公報)には、還元剤を用いることなく、金コア粒子の表面上に白金の表面触媒層を作製する方法が開示されている。この発明は従来のUPD法(Under-Potential Deposition法)に代替して、二価又は四価白金イオンを含む溶液に金コア粒子を浸漬することによって、金コア上に直接に白金層を析出させる方法に関する。この発明の方法によれば、簡潔な方法で金コア/白金シェルを有する触媒を得ることができることが開示されている。 しかしながらこの文献では、触媒の耐久性や触媒効率は検討されていない。 [0007] 特許文献3(特開2010-92725号公報)には、Auまたはその合金で構成したコア粒子の表面に、Ptまたはその合金のシェルを形成した触媒が開示されている。この発明では、AuやPtの格子定数に着目し、格子定数の大きいAuをコア、格子定数の小さいPtをシェルとする。このように構成することで、下地のAuによってPtが引っ張り応力を受け、また、この引っ張り応力によってPtの電子状態が変化し、イオン化ポテンシャルが増大したことによって、Ptの優れた触媒活性と耐久性が得られたものと考えられている。 当該文献ではまた、コアやシェルはAuやPtの合金であってもよいことが開示されている。例えば、シェルのPtには、Fe,Co等の卑金属や、Ag,Ru,Pd,Ir等の貴金属が、40原子%以下追加されうることが開示されている。しかしながら、コアやシェルにこれらの金属を追加することの効果や機能については何ら考察されていない。 またこの文献には、Auコア粒子の大きさは1~10 nm、Ptシェルの厚さは2 nm以下との記載がある。しかしながら、実施例に開示されているのは粒径6 nmのAuコア粒子を有する粒径10 nmのコアシェル触媒粒子1種類のみである。すなわち、より小粒径の場合については実質的に検討されていない。また、この文献で言及されている格子定数は単結晶における格子定数であって、実際のナノ粒子における原子間距離については考慮されていない。 [0008] 一方で、金属ナノ粒子においては、直径数nmを境界として物理化学的性質が大きく変化することが知られている。発明者らによって、直径8 nmのAuナノ粒子とバルクであるAuホイルとを比較すると、Auナノ粒子はAuホイルよりもAu-Au原子間距離が短く、また、その原子間距離はAuナノ粒子のサイズ減少に伴って短くなることが見いだされている([図1])。また、非特許文献1では、Au単結晶上に構成されたPtモノレイヤー触媒と、粒径3 nmのAuナノ粒子上に構成されたPtモノレイヤー触媒とを比較すると、後者の酸素還元活性が2.5倍程度優れることが報告されている。 これは、極めて小粒径のAuナノ粒子ではAu-Au原子間距離が減少し、Au単結晶上のPtモノレイヤーと比較して、Auナノ粒子表面に設けたPtモノレイヤーの受ける応力が変化し、これによってPtモノレイヤーに酸素還元反応に適した電子状態(酸素種との結合力)が獲得され、高い酸素還元活性を示したものと考えられている。 [0009] 上記のとおり、極めて小粒径のナノ粒子における原子の状態は、単結晶の状態とは異なっているために、極めて小粒径のナノ粒子に対して単結晶の考え方をそのまま適用することはできないと考えられる。すなわちAuコア/Ptシェル触媒において未だ最適な形態は見出されておらず、耐久性と触媒効率の向上についてさらなる検討が要請されている。 先行技術文献 特許文献 [0010] 特許文献1 : 特開2012-41581号公報 特許文献2 : 特開2011-212666号公報 特許文献3 : 特開2010-92725号公報 非特許文献 [0011] 非特許文献1 : M. Shao et al., J. Phys. Chem. Lett., 2, 67-72 (2011) 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0012] したがって本発明は、耐久性と触媒効率に優れた金コア粒子を有する白金コアシェル触媒を提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0013] 発明者らは、Auコア/Ptシェル触媒の耐久性を損なう要因の一つとして、白金が金に固溶する性質を有するために、電位サイクルを繰り返すに従って触媒粒子表面の白金原子が金コアに固溶埋没し、触媒粒子表面の白金原子が減少することで触媒活性が低下すると考え、検討を進めてきた。 [0014] 発明者らは前記課題を解決するための検討において、シェル成分とコア成分との熱力学的性質に着目し、熱力学的観点から、白金原子の金コアへの固溶埋没が生じ難い状態を作り出すことに着想した。そして、白金シェル中に、白金と比較して金と混合しにくく、かつ、金と比較して白金と混合しやすい性質を有する元素である、イリジウム(Ir)やルテニウム(Ru)を添加すると、耐久性と触媒効率に優れた白金コアシェル触媒が得られることを見出し、本発明を完成した。 [0015] すなわち本発明は、金を含有するコア粒子と、当該コアの表面に形成された、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとを含有するシェルとを有し、直径が1.6 nm~6.8 nmであることを特徴とする、燃料電池用の白金コアシェル触媒に関する。前記触媒においては、コア粒子の粒径が1.0 nm~5.0 nmであり、シェルの厚みが0.3 nm~0.9 nmであればより好ましい。 [0016] 本発明の白金コアシェル触媒は、金コア粒子の表面に白金シェルが形成されているので、白金原子の全部ないし大半が触媒粒子の表面に存在し、触媒活性を発揮することができる。すなわち白金原子の触媒としての利用効率が極めて高い。またシェルには、白金に加えて、イリジウム(Ir)及び/又はルテニウム(Ru)が含まれる。この構成によって白金シェル原子の金コアへの固溶埋没が抑制され、耐久性に優れた白金コアシェル触媒が得られる。さらに、触媒の粒径が1.6 nm~6.8 nmと極めて小粒径であることによって、触媒重量当たりの表面積が大きくなり、同時に金の使用量も削減される。さらにまた、金コアに固溶しうる白金の最大量は金コアの体積によって決まるため、小粒径の金コアを用いることで、固溶による白金の損失を少量に留めることができる。 [0017] また、コア粒子の粒径を1.0 nm~5.0 nm、シェルの厚みを0.3 nm~0.9 nmの範囲とすると、シェルは実質的にモノレイヤー(単原子層)から三原子層となり、かつ、金コア粒子は十分に小さい。このことによって、より好適な白金コアシェル触媒が得られる。このように、本発明の白金コアシェル触媒は、高い白金利用効率に基づく高い質量活性と、白金シェルが金コア内に固溶することを抑止した構造に基づく高い耐久性を同時に提供することができる。 [0018] 燃料電池触媒の白金削減技術において、熱力学的観点から触媒の組成を設定すること、具体的には、シェル成分に特定種の金属を添加することによって、シェルに存在する白金のコアへの固溶埋没を抑止することは、従来に無い新しい考えである。そして、この考えに基づいて設定された本発明の触媒は、特定範囲の粒径である金コアと、イリジウム及び/又はルテニウムを含有する白金シェルとを有する新規な触媒であり、従来の触媒と比べてシェルの被覆率が低くても触媒活性の保持率に極めて優れるという格別の効果を有する。 [0019] 前記シェルにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合は、0.1~50 at.%であることが好ましく、5~30 at.%であることがより好ましい。この割合とすれば、イリジウム及び/又はルテニウムが白金の金コアへの固溶を効果的に抑制し、かつ、シェルにおける白金原子の被覆率や触媒活性を阻害することがないため、より質量活性が高く耐久性に優れた触媒を得ることができる。 [0020] 前記シェルにおいて、白金とイリジウム及び/又はルテニウムは、同一層内で混在していてもよく、イリジウム及び/又はルテニウムが、白金シェルと金コア粒子との間に介在していてもよい。 [0021] 白金とイリジウム及び/又はルテニウムが同一層内で混在している触媒には、上述の効果に加えて、シェルをワンステップで形成することが可能であるために簡潔な製造工程によって製造が可能であるという利点がある。 また、イリジウム及び/又はルテニウムが、白金シェルと金コア粒子表面との間に介在している触媒には、上述の効果に加えて、イリジウム及び/又はルテニウムが白金シェルと金コア粒子の間のバリアとしても機能するため、白金の固溶埋没の抑制効果がより高くなると同時に、コアの表面を白金のみで被覆することが可能になるため、より高い触媒効率を得ることができる。 [0022] また、本発明の白金コアシェル触媒は、炭素質材料からなる担体に担持されていることが好ましい。一方、炭素質材料担体の酸化劣化の観点から、耐酸化性の高い酸化錫(SnOx)や酸化チタン(TiOx)などの金属酸化物担体、あるいはこれらの金属酸化物と炭素質材料を混合した担体を使用してもよい。また、本発明の白金コアシェル触媒は、燃料電池における酸化還元反応の触媒として好適に利用することができる。 [0023] また本発明は、(1)炭素質担体に担持された金コア粒子の表面に銅からなる単原子層を形成させるステップと、(2)前記ステップ(1)で得られた銅からなる単原子層を、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとに置換するステップと、を含むことを特徴とする、前記触媒の製造方法に関する。 前記の方法は、ステップ(1)が、炭素質担体に担持された金コア粒子を、銅からなる固体が浸漬されたCuイオンを含有する酸性水溶液に投入し、アルゴンや窒素ガス等の不活性雰囲気中で撹拌することを含むステップであり、ステップ(2)が、前記水溶液から前記銅からなる固体を除いた後、白金イオンとイリジウム及び/又はルテニウムイオンを与える物質を投入し、前記ステップ(1)で得られた生成物表面の銅を、白金とルテニウム及び/又はイリジウムと置換することを含むステップであることが好ましい。 [0024] 本発明の方法によれば、所望の粒径の金コア粒子の表面に、白金、イリジウム、ルテニウムを所望の割合で含有するシェルを形成して、所望の粒径とシェル組成を有する白金コアシェル触媒を得ることができる。特に、ステップ(1)として、銅からなる固体が浸漬されたCuイオンを含有する酸性水溶液を用いる方法は、従来のUPD法と比較して、外部電源を用いた精密な電位制御と対極や参照極等を必要とせず、工程や設備が簡潔であるために大量生産も可能であり、実用上の使用価値が極めて高い。 [0025] 前記ステップ(2)で置換された白金とルテニウム及び/又はイリジウムにおいて、白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合は、0.1~50 at.%であることが好ましく、5~30 at.%であることがより好ましい。 [0026] また本発明は、前記方法のステップ(2)において、白金イオンを与える化合物とイリジウム及び/又はルテニウムイオンを与える化合物を同時に投入し、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムが同一層内で混在するシェルを形成することが好ましい。 この方法によれば、金コア粒子の表面に、白金とイリジウム及び/又はルテニウムを含むシェルをワンステップで簡単に形成することができる。 [0027] 上記の各方法で製造された白金コアシェル触媒は、燃料電池における酸化還元反応の触媒として好適に利用することができる。 発明の効果 [0028] 本発明の白金コアシェル触媒は、シェルにおいて白金に加えてイリジウム及び/又はルテニウムが含有され、白金原子の近傍にイリジウムやルテニウムが存在する。このことによって、白金原子の金コアへの固溶埋没が抑制される。すなわち触媒の耐久性に優れ、触媒活性を長期間に渡って維持することが可能である。本発明の白金コアシェル触媒は、白金による被覆率が低く金コア粒子への固溶が大きくなりやすい場合であっても、シェルにイリジウムやルテニウムが存在し、また金コアが小粒径であることによって、白金の金コアへの固溶が少なく、良好な耐久性と高い触媒効率を維持することが可能である。 [0029] 本発明は、公知の構成である白金シェル・金コア触媒のシェル成分としてイリジウムやルテニウムを添加するという簡便な方策によって、効果的に白金のコアへの固溶を抑制し、触媒の耐久性向上を実現した。従来の白金削減技術では、白金の触媒活性を向上させることや、より効率的な方法で白金層を作製することによって、白金触媒の利用効率を向上させることを主旨としていた。これに対して本発明は、触媒の利用効率に加えて、簡便な方策で耐久性を向上させた。すなわち本発明は、触媒の作製時における白金の使用量削減だけでなく、その耐久性を高めることにより白金使用量を削減できるという効果がある。 なお本発明の白金コアシェル触媒は燃料電池の触媒として用いることができるため、燃料電池のコストの飛躍的低減も可能となる。 図面の簡単な説明 [0030] [図1] 金ナノ粒子の粒径による、金-金原子間結合距離の変化を示す図である。 [図2] 回転リングディスク電極の模式図である。 [図3] 実施例1及び比較例1の電位サイクル試験結果を示す図である。 [図4] 実施例2、比較例1及び参考例の電位サイクル試験結果を示す図である。 [図5] 白金被覆率の異なる金コア/白金シェル触媒の耐久性を示す参考図である。 発明を実施するための形態 [0031] 本発明の白金コアシェル触媒のコアは、金を含有するナノ粒子であって、公知の金ナノ粒子を用いることができ、公知の金ナノ粒子の製造方法で製造することもできる。金コア粒子には金以外の他種元素、例えば白金を含んでいてもよい。また、本発明の効果に影響を与えない範囲で、他の物質を含んでいてもよく、例えば製造の過程で使用される添加剤(還元剤、微粒子化剤等)の残渣或いは一部を含んでいてもよい。 [0032] 金コア粒子の大きさは1.0 nm~5.0 nmである。粒径1.0 nm未満のAuコア粒子の合成は実質的に困難である。粒径が5.0 nmを超えるとPtシェルを形成するためのPt原子数が増加し、また、単位面積を得るための金使用量も増加するため、触媒コストが上昇する問題がある。粒径を5.0 nm以下とすると特に、触媒単位重量当たりで大きな表面積を得ることができ、触媒単位面積当たりに必要な金および白金の使用量を低減することができる。またコストの点でも、2012年現在、金は白金よりもさらに高価であるところ、コア材料(金)とシェル材料(白金)を合わせた材料費は金コアの粒径が約2.5 mm付近で現行の白金触媒(粒径約2.8 nm)に拮抗し、それよりも大きな金コアを使用した場合では、現行の白金触媒よりも材料費が高くなってしまう。このため、より小粒径の金コア粒子を用いることに利点がある。 [0033] なお、本明細書中で金コア粒子の粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)画像から求めた平均粒径、或いは、Auの(220)面のX線回折ピークにシェラー式を適用して算出した値を意味している。 [0034] 本発明の白金コアシェル触媒のシェルは、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムを含む。具体的には、金コア粒子の表面に白金及びイリジウムを含むシェルが形成されていてもよく、金コア粒子の表面に白金及びルテニウムを含むシェルが形成されていてもよい。白金、イリジウム及び/又はルテニウムの他、所望の触媒活性を満たす範囲で他の原子及び/又は分子を含有していてもよい。例えば、金、銀等の貴金属、製造過程で添加される白金化合物や有機化合物の残渣等が含まれていてもよい。 [0035] 白金に対するイリジウム及び/又はルテニウムの割合は、0.1~50 at.%であることが好ましく、5~30 at.%がより好ましい。本発明においてイリジウムやルテニウムは、白金の金コアへの固溶を抑制しうる最低限度で含有されていればよく、シェルにおける白金原子の被覆率や白金の触媒活性を阻害することがないよう適切に選択される。 白金シェルの平均的厚みは、単原子層~三原子層(0.3 nm~0.9 nm程度)であることが好ましく、単原子層~二原子層(0.3 nm~0.6 nm程度)がより好ましい。酸素還元触媒として活性を発揮する白金原子は、シェルの最外層(最表面)に位置する白金原子のみであるので、シェルの厚みを増すことには特段の利点がない。イリジウム及び/又はルテニウムは、白金と混在して触媒の表面層を構成していてもよいし、金コアと白金シェルとの間に介在していてもよい。 [0036] 本発明の白金コアシェル触媒は、白金シェルにイリジウム及び/又はルテニウムを含有することによって、白金が金コア粒子中に固溶埋没することが抑制されるが、その理由は次のように考えられる。 白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)の其々を50:50の割合で混合する場合の混合熱ΔH(kJ/mol)を表1に示す。表中、数値が小さいほど、A成分とB成分とを混合した方が安定であることを意味している。 [0037] [表1] [0038] 表1のとおり、イリジウム及びルテニウムの白金に対する混合熱は其々+1 kJ/mol、-1 kJ/molであり、金と白金の混合熱(+7 kJ/mol)よりも小さい。また、イリジウム及びルテニウムの金に対する混合熱は其々+19 kJ/mol、+22 kJ/molであり、金と白金の混合熱(+7 kJ/mol)よりも大きい。すなわち、イリジウム及びルテニウムは、金と比べて白金と混合しやすく、またイリジウム及びルテニウムは、白金と比べて金と混合しにくい。 [0039] このことから、シェルである白金原子の近傍に、白金と親和性が高くかつ金との親和性が低い元素であるイリジウムやルテニウムを存在させると、これらの元素は金に固溶せずに白金と相互作用するために、白金シェルが金コアに固溶埋没することが抑制されると考えられる。 [0040] 本発明の白金コアシェル触媒は、炭素質材料からなる担体の表面に分散されて担持されていることが好ましい。炭素質材料としてはカーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。また、炭素質材料担体の酸化劣化の観点から、耐酸化性の高い酸化錫(SnOx)や酸化チタン(TiOx)などの金属酸化物担体を使用してもよく、炭素質材料担体と金属酸化物担体とを混合して使用してもよい。担体は、比表面積が10~1000 m2/g程度であることが好ましい。白金コアシェル触媒は、主に静電的相互作用によって担体の表面に担持されていると考えられる。より強固に担持させて担体表面からの触媒の脱落を低減するために、白金コアシェル触媒と担体との間に、化学結合を形成することもできる。 [0041] 白金とルテニウム及び/又はイリジウムとによる金コア粒子表面の被覆率は、50~100 %とすることができ、60~100 %が好ましく、70~100 %とすることがより好ましい。金コアへの白金固溶量は金コア粒子の体積によって決まるため、同粒径の金コア粒子であれば、白金被覆率が高いほど金への固溶によって失われる白金の割合が低く(つまり、触媒としての耐久性が高く)、白金被覆率が低いと、金への固溶によって失われる白金の割合が高く(つまり、触媒としての耐久性が低く)なる。 [0042] しかしながらまた、本発明の白金コアシェル触媒では、同粒径の金コア粒子において、従来型白金コアシェル触媒(白金のみからなるシェルを有する触媒)の1/2~1/4程度の白金シェル量であっても、従来型白金コアシェル触媒と同等の耐久性を有することが見いだされている(実施例を参照)。つまり、本発明の触媒は、白金の表面被覆率(表面の白金原子数)が低いにも関わらず、金への固溶が生じにくい。これは、イリジウム及び/又はルテニウムの存在が、白金の固溶を抑制しているためであると考えられる。これは、従来の白金コアシェル触媒と異なる本発明に特有の効果である。 [0043] 本発明の白金コアシェル触媒の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、(1)炭素質担体に担持された金コア粒子の表面に銅からなる単原子層を形成させるステップと、(2)ステップ(1)で得られた銅単原子層を、白金と、イリジウム及び/又はルテニウムとに置換するステップとを含む方法によって好適に製造することができる。 [0044] 炭素質担体に担持された金コア粒子は公知の合成法によって合成することが可能である。一例としては、四塩化金酸(HAuCl4)等を水溶液、有機溶液、又はそれらの混合溶液中、保護剤としてアルカンチオールを添加し、その後還元して金ナノ粒子を形成させ、金ナノ粒子表面に化学吸着したアルカンチオールを介して炭素質担体に吸着させ、続いて熱処理によってチオール基と炭化水素鎖の一部を除去することによって、炭素質担体に担持された金コア粒子を得る方法がある。 [0045] 金コア粒子の表面に銅からなる単原子層を形成させるには、公知の方法を用いることができる。例えば、非特許文献1に開示されているUPD法に従うこと、或いは、当該方法を適宜変更して行うことができる。 [0046] また本発明の製造方法では、外部電源を使用した精密な電位制御と対極や参照極を必要としない、改良型Cu-UPD法を用いることがより好ましい。改良型Cu-UPD法とは、炭素質担体に担持された金コア粒子を、銅からなる固体が浸漬されたCuイオンを含有する酸性水溶液中に投入し、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中で撹拌することで、金コア表面に銅からなる単原子膜を形成させる方法である。銅単原子膜は必ずしも膜の全面が単原子膜からなる均一膜でなく、部分的に二原子或いはそれ以上の重複が生じているものも含む。 [0047] 改良型Cu-UPD法に用いられる、銅からなる固体としては、少なくとも表面が銅で構成されており、金ナノ粒子と接触した際にイオン化して銅イオン(Cu2+)を生じる物体であれば制限されない。例えば、銅メッシュ、銅ワイヤ、銅粒、銅板、銅塊等が挙げられる。 [0048] Cuイオンを含有する酸性水溶液に用いられるCuイオンを与える物質としては、CuSO4、CuCl2、Cu(CH3COO)2、Cu(NO3)2等が挙げられ、これらのCu塩を水溶液とすることによってCuイオンが解離する。Cuイオン濃度は特に制限されるものではないが、例えば0.1 mM~100 mMとすることができ、反応速度と反応溶液の安定性等の観点からは1 mM~50 mM程度とすることが好ましい。 [0049] 酸性溶液を与える酸としては、銅を溶解可能であれば特に制限されないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸等が挙げられ、濃度は10 mM~1 Mとすることができ、反応速度と銅固体の電位制御の観点からは20 mM~0.5 M程度とすることができる。 [0050] 上記銅固体を浸漬した上記のCuイオンを含む酸性溶液に、炭素質担体に担持された金コア粒子を投入し、例えば、0~45 ℃において1~50時間、不活性ガス通気下で撹拌を行うことによって、金コア表面に銅の単原子膜が形成される。 [0051] 続いて、得られた生成物表面の銅を、白金とルテニウム及び/又はイリジウムと置換する。このステップは、公知のUPD法等で用いられている置換めっき法で行うことができる。白金イオンを与える物質としては、白金酸塩(K2PtCl4、K2PtBr4)等が挙げられ、ルテニウムイオン及び/又はイリジウムイオンを与える物質としては例えば、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、塩化イリジウム酸、硝酸イリジウム等が挙げられる。 [0052] 銅からなる単原子膜を、白金とルテニウム及び/又はイリジウムで置換するステップは、前述の銅固体を浸漬した上記のCuイオンを含む酸性溶液から、銅固体を除いた上で、前記の白金、ルテニウム及び/又はイリジウムを含む化合物を、同時に又は順次水溶液に添加し、撹拌することによって行うことができる。すなわち例えば、白金化合物とイリジウム及び又はルテニウムイオン化合物を同時に投入し、白金とイリジウム及び/又はルテニウムとが同一層内で混在するシェルを形成してもよい。白金化合物とイリジウム及び又はルテニウムイオン化合物の添加は、銅固体を取り除いた後、可能な限り時間をあけずに行うことが好ましい。操作の過程で大気中の酸素が溶液中に侵入すると、金コア上に生成した銅単原子膜が溶解するため、銅固体を取り除いた後、直ちに白金化合物とイリジウム及び又はルテニウムイオン化合物を添加することが好ましい。 反応時間、温度は適宜選択することができるが、例えば、0~45 ℃において1分~50時間(好ましくは1分~1時間)であり、不活性ガス通気下、撹拌しながら行うことが可能である。 [0053] 前記の方法によって得た、白金とイリジウム及び/又はルテニウムとを含有するシェルを有する金コア粒子は、公知の方法によって洗浄、乾燥等を必要に応じて行い、本発明の燃料電池用白金コアシェル触媒が得られる。なお、本発明の製造方法には、前述のステップのほかにも必要に応じて、分離、精製、洗浄工程等を含むことができる。 [0054] 以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。 実施例 [0055] [実施例1]イリジウム含有白金シェル/金コア触媒の作製 (i)Au/Cコアの作製 7.619×10-4モルのHAuCl4を純水80 mlに溶解させた。分液ロートを用いて、相間移動剤であるテトラオクチルアンモニウムブロミド625 mgのトルエン溶液とHAuCl4水溶液とを混合後、静置し、トルエン相に[AuCl4]-を移動させた。水相を除去し、トルエン相を三角フラスコに移し、30 ℃の恒温槽に設置した。Arガスを500 ml/min.の流量で流し、撹拌しながら保護剤であるドデカンチオールを1.904×10-3モル添加した。ドデカンチオール添加後、Arバブリングを1時間行なった。その後、三角フラスコを60 ℃の恒温槽に移動させた。還元剤であるNaBH4 288 mgを純水25 mlに溶解し、チューブポンプを用いて15分で三角フラスコに滴下し、金イオンを還元してAuコロイド粒子を得た。60 ℃で合計1時間撹拌後、30 ℃の恒温槽に移動し、3時間撹拌してAuコロイドを熟成した。熟成後、溶液を分液ロートに移して水相を除去し、Auコロイド溶液を丸底フラスコに移動し、エバポレーターを用いてトルエンを留去した。 トルエン留去後の丸底フラスコに30 mlのn-ヘキサンを添加し、超音波を30分間照射してAuコロイドを再分散させた。その後、80 mlのエタノールを添加し、溶媒の極性を高めてAuコロイドを沈殿させた。遠心分離機を用い、12000回転で15分間処理してAuコロイドを沈降分離した。上澄み液を除去し、Auコロイドをn-ヘキサン中に再分散させた。その後、エバポレーターを用いてn-ヘキサンを留去し、n-ヘキサンを10 ml添加して超音波を30分間照射した。その後、エタノールを80 ml添加してAuコロイドを沈殿させた。この操作を4回繰り返すことによってAuコロイドを洗浄した。 洗浄処理したAuコロイドを30 mlのn-ヘキサンに分散させた。350 mgのカーボン担体(Ketjen black EC 300 J, 比表面積800 m2/g)を350 mlのn-ヘキサン中で1時間超音波分散し、Auコロイドのn-ヘキサン分散液を加え、さらに30分間超音波照射を行なった。その後、室温でマグネチックスタラーを用いて溶液を一昼夜撹拌し、Auコロイドをカーボン担体上に担持させた。 一昼夜攪拌したn-ヘキサン溶液を吸引濾過してカーボン担持Auコア(Au/Cコア)を濾別し、大気中60 ℃のオーブンで6時間乾燥してAu/Cコアを得た。 (ii)Au/Cコアの熱処理 大気中330 ℃で1時間Au/Cを熱処理し、Auコア粒子表面に化学吸着したドデカンチオールを除去した。 (iii)Au/Cコアの分析 熱処理後のAu/Cコアを電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM2100F)で観察したところ、カーボン担体に担持されたAu微粒子が確認された。TEM像中の200個のAuコア粒子の直径を測定した結果、平均粒径は2.8 nmであった。また、金属Auの担持率を熱重量分析(リガク製、Thermo Plus TG-8120)で調べた結果、28.4 wt.%であった。 (iv)Au/Cコア上へのIr含有Ptシェルの形成 担持率28.4 wt.%、粒径2.8 nmのAu/Cコア200 mgを、濃度50 mMのH2SO4と濃度10 mMのCuSO4を含む300 mlの水溶液中に分散させた。Arを100 ml/min.の流量で流し、Cuメッシュを水溶液中に共存させた後、30 ℃で10時間撹拌してAuコア粒子表面にCuシェルを形成した。その後、Cuメッシュを水溶液から除去し、予めArバブリングして溶存酸素を除去したK2PtCl4水溶液とH2IrCl6水溶液をそれぞれ1 mMの濃度となるよう直ちに加え、Cuシェル層をPtIrシェル層に置換させてAuコア/PtIrシェル触媒(PtIr/Au/C)を得た。生成したPtIr/Au/C触媒を純水300 ml中に分散撹拌した後、吸引濾過した。この操作を3回繰り返して触媒を洗浄した。その後、大気中60 ℃のオーブンで6時間乾燥した。 (v)PtIr/Au/C触媒の分析 得られたPtIr/Au/C触媒の組成を、蛍光X線装置(SII社製、SEA1200VX)で分析した結果、Pt:Ir:Au=18.6:5.7:75.7 (at.%)であった。また、(220)のXRDピークにシェラー式を適用して算出したPtIr/Auの平均粒径は3.4 nmであった。 Au/Cコアの分析結果及びPtIr/Au/C触媒の分析結果から、平均粒径2.8 nmのAuコアの表面に、Pt及びIr(PtとIrの原子数割合は18.6:5.7)が混在する平均層厚0.3 nmのシェルを有する、白金コアシェル触媒が得られたと考察された。 [0056] [試験電極の作製] PtIr/Au/C触媒のn-ヘキサノール懸濁液を調製し、回転リングディスク電極のグラッシーカーボンディスク(直径6 mm)上に、Auコアが14.1 μg/cm2となるよう塗布担持し、試験電極を作製した。図2に回転リングディスク電極の構造を示す。ディスク部分に触媒を塗布担持させ、作用電極を回転させることにより電解液中に一定の対流を発生させ、物質移動を制御した。 [0057] [実施例2]ルテニウム含有白金シェル/金コア触媒の作製 (i)PtRu/Au/C触媒の作製 実施例1で使用したものと同じ熱処理後のAu/Cコア(担持率28.4 wt.%、粒径2.8 nm)200 mgを、濃度50 mMのH2SO4と濃度10 mMのCuSO4を含む300 mlの水溶液中に分散させた。Arを100 ml/min.の流量で流し、Cuメッシュを水溶液中に共存させた後、30 ℃で10時間撹拌してAuコア粒子表面にCuシェルを形成した。その後、Cuメッシュを水溶液から除去し、予めArバブリングして溶存酸素を除去したK2PtCl4水溶液とRuCl3水溶液をそれぞれ1 mMの濃度となるよう直ちに加え、Cuシェル層をPtRuシェル層に置換させてAuコア/PtRuシェル触媒(PtRu/Au/C)を得た。生成したPtRu/Au/C触媒を純水300 ml中に分散撹拌した後、吸引濾過した。この操作を3回繰り返して触媒を洗浄した。その後、大気中60 ℃のオーブンで6時間乾燥した。 (ii)PtRu/Au/C触媒の分析 得られたPtRu/Au/C触媒の組成を、蛍光X線装置(SII社製、SEA1200VX)で分析した結果、Pt:Ru:Au=32.7:4.1:63.2 (at.%)であった。また、(220)のXRDピークにシェラー式を適用して算出したPtRu/Auの平均粒径は3.4 nmであった。 Au/Cコアの分析結果及びPtRu/Au/C触媒の分析結果から、平均粒径2.8 nmのAuコアの表面に、Pt及びRu(PtとRuの原子数割合は32.7:4.1)が混在する平均層厚0.3 nmのシェルを有する、白金コアシェル触媒が得られたと考察された。 [0058] [試験電極の作製] PtRu/Au/C触媒のn-ヘキサノール懸濁液を調製し、回転リングディスク電極のグラッシーカーボンディスク(直径6 mm)上に、Auコアが14.1 μg/cm2となるよう塗布担持し、試験電極を作製した。 [0059] [比較例1]白金シェル/金コア触媒の作製 (i)Pt/Au/C触媒の作製 実施例1で使用したものと同じ熱処理後のAu/Cコア(担持率28.4 wt.%、粒径2.8 nm)200 mgを、濃度50 mMのH2SO4と濃度10 mMのCuSO4を含む300 mlの水溶液中に分散させた。Arを100 ml/min.の流量で流し、Cuメッシュを水溶液中に共存させた後、30 ℃で10時間撹拌してAuコア粒子表面にCuシェルを形成した。その後、Cuメッシュを水溶液から除去し、予めArバブリングして溶存酸素を除去したK2PtCl4水溶液を2 mMの濃度となるよう直ちに加え、Cuシェル層をPtシェル層に置換させてAuコア/Ptシェル触媒(Pt/Au/C)を得た。生成したPt/Au/C触媒を純水300 ml中に分散撹拌した後、吸引濾過した。この操作を3回繰り返して触媒を洗浄した。その後、大気中60 ℃のオーブンで6時間乾燥した。 (ii)Pt/Au/C触媒の分析 得られたPt/Au/C触媒の組成を、蛍光X線装置(SII社製、SEA1200VX)で分析した結果、Pt:Au=50.5:49.5 (at.%)であった。また、(220)のXRDピークにシェラー式を適用して算出したPt/Auの平均粒径は3.4 nmであった。 Au/Cコアの分析結果及びPt/Au/C触媒の分析結果から、平均粒径2.8 nmのAuコアの表面に、平均層厚0.3 nmのPtシェルを有する、白金コアシェル触媒が得られたと考察された。 [0060] [触媒の評価:触媒組成の分析] 実施例1、2及び比較例1の触媒について、蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1200VX)を用いて組成分析を行った結果を表2にまとめた。 [0061] [表2] [0062] 表2に示されるとおり、白金(Pt)及び金(Au)に加えて、実施例1の触媒にはイリジウム(Ir)、実施例2の触媒にはルテニウム(Ru)がそれぞれ含有されていることが確認された。 [0063] [触媒の評価:耐久性試験] 実施例1、2及び比較例1の其々の触媒を用いた試験電極について、アルゴンガス飽和した、60 ℃の0.1 Mの過塩素酸水溶液中で、RHE(可逆水素電極)に対して0.6 V (3 s) - 1.0 V (3 s)の電位幅で矩形波電位サイクル試験を行い、白金コアシェル触媒の耐久性を評価した。 [0064] 図3に実施例1及び比較例1の、耐久性試験に伴う電気化学的表面積の変化を示す。グラフ中、横軸は電位サイクル回数を示し、縦軸はサイクル試験前の電気化学的表面積を100 %とした表面積の保持率(%)を示している。 図3のとおり、実施例1は、比較例1とほぼ同等の電気化学的表面積の保持率を示した。 ここで上記表2より、実施例1及び比較例1の触媒における金に対する白金原子の割合はそれぞれ、実施例1では18.6/75.7=0.25、比較例1では50.5/49.5=1.02である。すなわち、実施例1の触媒は、比較例1の触媒と比較して金に対する白金原子の割合が約1/4である。これは、実施例1の触媒では、白金シェル原子数が比較例1に比べて少ないこと(約1/4)を意味する。従来、白金コアシェル触媒では、白金シェルの被覆率(原子数)が低いと、金コアに固溶埋没して表面から失われる白金の比率が相対的に高くなり、耐久性が低下することがわかっている([図5]を参照)。しかし、本発明の実施例1の触媒は、白金シェル原子数が比較例1のPt/Au/C触媒の1/4程度であっても、比較例1と同等の耐久性を有する。つまり、図3の結果は、10000サイクルの耐久性試験において、実施例1の触媒表面に存在する白金原子の耐久性が、飛躍的に高められていることを示すものである。これは、イリジウムの存在によって白金の固溶埋没が抑制されたことによって、触媒の耐久性が向上したものと考えられる。 [0065] 図4に実施例2、比較例1、及び参考例である白金微粒子触媒(炭素質担体に担持されたコアシェルでない白金微粒子触媒、粒径2.8 nm、担持率48 wt.%)の、耐久性試験に伴う電気化学的表面積の変化を示す。グラフ中、横軸は電位サイクル回数を示し、縦軸はサイクル試験前の電気化学的表面積を100 %とした表面積の保持率(%)を示している。 図4のとおり、実施例2は、比較例1及び参考例よりも高い電気化学的表面積の保持率を示した。 また上記表2より、実施例2及び比較例1の触媒における金に対する白金原子の割合はそれぞれ、実施例2では32.7/63.2=0.52、比較例1では50.5/49.5=1.02である。すなわち、実施例2の触媒は、比較例1の触媒と比較して、金に対する白金原子の割合が約1/2である。これは、実施例2では白金シェル原子数が比較例1に比べて少ないこと(約1/2)を意味する。上述したように、従来の白金コアシェル触媒では、白金シェルの被覆率(原子数)が少ないほど金コアに固溶埋没する割合が高くなるため、耐久性が低下することが示されている。しかし、本発明の実施例2の触媒は、白金シェル原子数が比較例1のPt/Au/C触媒の1/2程度であるにも関わらず、従来の白金触媒を超える高い耐久性を有する。つまり、図4の結果は、10000サイクルの耐久性試験において、実施例2の触媒表面に存在する白金原子の耐久性が、飛躍的に高められていることを示すものである。これは、ルテニウムの存在によって白金の固溶埋没が抑制され、触媒の耐久性が向上したものと考えられる。 |
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