MEDICINAL COMPOSITION FOR TREATING NECROPTOSIS-RELATED DISEASE AND METHOD FOR SCREENING ACTIVE INGREDIENT THEREOF
外国特許コード | F150008212 |
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掲載日 | 2015年3月25日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP053263 |
国際公開番号 | WO 2014126127 |
国際出願日 | 平成26年2月13日(2014.2.13) |
国際公開日 | 平成26年8月21日(2014.8.21) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | MEDICINAL COMPOSITION FOR TREATING NECROPTOSIS-RELATED DISEASE AND METHOD FOR SCREENING ACTIVE INGREDIENT THEREOF |
発明の概要(英語) | One purpose of the present invention is to analyze the onset mechanism of severe enanthema, skin erythema, body surface erosion, blister and excoriation and provide a medicinal composition for fundamentally treating these symptoms. Another purpose thereof is to provide a method for screening an active ingredient of the aforesaid medicinal composition. In order to achieve these purposes, the present invention provides: a medicinal composition for preventing or treating a formyl peptide receptor 1-induced necroptosis-related disease, said composition comprising, as an active ingredient, a substance capable of inhibiting necroptosis that is induced by the binding of formyl peptide receptor 1 to annexin A1; and a method for screening a substance capable of inhibiting necroptosis that is induced by the binding of formyl peptide receptor 1 to annexin A1. |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART Is the drug eruption, rash and reaction refers to the drug, the drug eruption is all drugs that can cause. A risk to life such as eruption by severe eruption to severe eruption is referred to, in its most severe Stevens, Johnson syndrome (Stevens-Johnson Syndrome; hereinafter, sometimes referred to as SJS) and toxic epidermal necrosis disease (Toxic epidermal necrolysis; hereinafter, sometimes referred to as TEN) is, necrosis of epidermal cells of the extra-high and a wide range of, poor disease prognosis. In SJS, lips, ophthalmic mucous membrane, such as severe mucocutaneous vulvar rash in the transition of the mucosa and skin erythema seen, body sores, blisters, body surface area is 10% or less abrasion. SJS is, due to the drug and may be of such virus other than said to, many of which are caused by the drug. The transition from the SJS TEN is included in the sub-type, their symptoms are similar to the SJS SJS and more severe as a whole, body surface area of greater than or equal to 10% sores, blisters, abrasion is seen. In addition, also on the skin and mucous membranes as well as the appearance of symptoms, which may be a blindness, and the case-fatality rate 20-25% TEN (non-patent document 1) are. Cause agents include SJS and TEN, cefdinir cephems of the antibiotic, anti-epileptic drug (for example, zonisamide, carbamazepine, and phenobarbital), or non-steroidal anti-inflammatory drugs and, in addition to these 1100 causes drug is said to be more than two. SJS and TEN for treatment of, such as heat generation or rash when early symptoms was observed, the administration of pharmaceutical agents cause estimated it is most important to immediately stop the best treatment method is called. However, initial symptoms of SJS and TEN, rash eruption symptoms appear only similar to the normal, the case is not diagnosed with SJS and TEN, discontinuation of the drug is delayed, the symptoms can become severe. Then, after the stop of the cause of the administration of pharmaceutical agents is a method for the treatment, the systemic administration of the corticosteroid agent, plasma exchange therapy, administration of the immunoglobulin, and is a topical antibiotic preparation to the skin surface, topical corticosteroid formulation is used. However, and these symptomatic treatment methods, and treatment of the underlying TEN SJS is not. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物及びその有効成分のスクリーニング方法 |
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発明の概要 | 本発明の目的は、重症の粘膜疹及び皮膚の紅斑、体表のびらん、水疱、及び表皮剥離が発生するメカニズムを解析し、それらの症状に対する根本的な治療用医薬組成物を提供することである。また、前記医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法を提供することである。 前記課題は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を有効成分として含む、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬組成物、及びホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法によって解決することができる。 |
特許請求の範囲 |
請求の範囲 [請求項1] ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を有効成分として含む、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬組成物。 [請求項2] 前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、請求項1に記載の医薬組成物。 [請求項3] 前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。 [請求項4] 前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、請求項2又は3に記載の医薬組成物。 [請求項5] ホルミルペプチド受容体1と結合し、ネクロプトーシスを誘導する物質を有効成分として含む、ネクロプトーシス誘導剤。 [請求項6] 前記誘導物質が、fMLPである、請求項5に記載のネクロプトーシス誘導剤。 [請求項7] ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニストとを試験物質の存在下で接触させる工程と、前記受容体又はその改変体と前記リガンド又はアゴニストとの結合に対する前記試験物質の阻害活性を検出する工程若しくはホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスに対する前記試験物質の誘導阻害活性を検出する工程、とを含む、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法。 [請求項8] 前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が、細胞に発現したものである、請求項7に記載のスクリーニング方法。 [請求項9] (1)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と、試験物質とを接触させる工程、及び (2)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体によって誘導されるネクロプトーシスを検出する工程、 を含むホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法。 [請求項10] 前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が、細胞に発現したものである、請求項9に記載のスクリーニング方法。 [請求項11] 前記ホルミルペプチド受容体1改変体が、 (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチド、 である、請求項7~10のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。 [請求項12] 前記細胞が、 (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又はその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチド、 のいずれかをコードするポリヌクレオチド、を含む請求項8又は10に記載のスクリーニング方法。 [請求項13] 前記ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストが、fMLP若しくはその誘導体、又はアネキシンA1若しくはその変異体であって、前記アネキシンA1変異体が (1)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチドである、請求項7又は8に記載のスクリーニング方法。 [請求項14] ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質の、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬の製造への使用。 [請求項15] 前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、請求項14に記載の使用。 [請求項16] 前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、請求項14又は15に記載の使用。 [請求項17] 前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、請求項14又は15に記載の使用。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物及びその有効成分のスクリーニング方法 技術分野 [0001] 本発明は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬組成物に関する。本発明によれば、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患、特にはスティーブンス・ジョンソン・シンドローム、又は中毒性表皮壊死症を治療することができる。 背景技術 [0002] 薬疹とは、薬物に反応してできる皮疹をいい、すべての薬物は薬疹を引き起こす可能性がある。薬疹によって生命に危険を及ぼすような重症な薬疹を重症薬疹といい、その最重症型であるスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome;以下、SJSと称することがある)及び中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis;以下、TENと称することがある)は、高熱と広範な表皮細胞の壊死を特徴とする、非常に予後の悪い疾患である。SJSでは、口唇、眼粘膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部で重症の粘膜疹及び皮膚の紅斑が見られ、体表のびらん、水疱、表皮剥離は体表面積の10%以下である。SJSは、薬物以外のウイルスが原因のものもあると言われているが、その多くは薬物を原因とするものである。TENにはSJSから移行したサブタイプも含まれ、その症状はSJSと類似であるが全体としてSJSより重篤であり、体表面積の10%以上でびらん、水疱、表皮剥離が見られる。また、皮膚や粘膜だけではなく目にも症状が現れ、失明することもあり、TENの致死率は20~25%とされている(非特許文献1)。 [0003] SJS及びTENの原因となる薬剤としては、セフェム系の抗生物質であるセフジニル、抗てんかん薬(例えば、ゾニサミド、カルバマゼピン、及びフェノバルビタール)、又は非ステロイド性抗炎症薬が挙げられるが、これら以外にも原因となる薬物は1100種類以上あるといわれている。 [0004] SJS及びTENの治療としては、発熱や発疹等の初期症状を認めた場合に、原因と推定される医薬品の投与を直ちに中止することが最も重要で最良の治療法であるといわれている。しかしながら、SJS及びTENの初期症状は、皮疹のみ出現する通常薬疹の症状と似ており、SJS及びTENと診断されない場合、薬物の投与中止が遅れ、症状が重篤になることもある。そして、原因の医薬品の投与を中止した後の治療方法としては、副腎皮質ホルモン剤の全身投与、血漿交換療法、又は免疫グロブリンの投与、及び皮膚面に対しては外用抗生物質製剤、外用副腎皮質ホルモン製剤が用いられている。しかしながら、これらの治療方法は対症療法であり、SJS及びTENの根本的な治療ではなかった。 先行技術文献 非特許文献 [0005] 非特許文献1 : 「ジャーナル・オブ・アメリカン・アカデミー・オブ・デマトロジー(Journal of the American Academy of Dermatology)」2012年(米国)、第66巻、p、995-1003 非特許文献2 : 「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY)」2010年(米国)、第285巻、p.14338-14345 非特許文献3 : 「カレント・オピニオン・イン・セル・バイオロジー(Current Opinion in Cell Biology)」2010年(英国)、第22巻、p.263-268 非特許文献4 : 「ネイチャー・レビューズ・モリキュラー・セル・バイオロジー(NATURE REVIEWS MOLECULAR CELL BIOLOGY)」2010年(英国)、第11巻、p.700-714 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0006] 前記のように、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症は、その多くが薬剤の副作用によって起こるものと考えられているが、その症状が発生するメカニズムは、全く解明されていなかった。 従って、本発明の目的は、重症の粘膜疹及び皮膚の紅斑、体表のびらん、水疱、及び表皮剥離が発生するメカニズムを解析し、それらの症状に対する根本的な治療用医薬組成物を提供することである。また、前記医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法を提供することである。 課題を解決するための手段 [0007] 本発明者は、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症の発症のメカニズムについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、これらの疾患の症状が、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合を介したネクロプトーシスによって起こることを見出した。そして、ホルミルペプチド受容体1の阻害剤、又はアネキシンA1の阻害剤によって、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを抑制できることを見出した。更に、驚くべきことに、従来のネクロプトーシスのトリガーであるTNF及びTNF受容体の結合によって起きるネクロプトーシスの阻害剤によっても、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを抑制できることを見出した。 また、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合を指標として、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを抑制する物質をスクリーニングできることを見出した。 本発明は、こうした知見に基づくものである。 従って、本発明は、 [1]ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を有効成分として含む、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬組成物、 [2]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、[1]に記載の医薬組成物、 [3]前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物、 [4]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、[2]又は[3]に記載の医薬組成物、 [5]ホルミルペプチド受容体1と結合し、ネクロプトーシスを誘導する物質を有効成分として含む、ネクロプトーシス誘導剤、 [6]前記誘導物質が、fMLPである、[5]に記載のネクロプトーシス誘導剤、 [7]ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニストとを試験物質の存在下で接触させる工程と、前記受容体又はその改変体と前記リガンド又はアゴニストとの結合に対する前記試験物質の阻害活性を検出する工程若しくはホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスに対する前記試験物質の誘導阻害活性を検出する工程、とを含む、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法、 [8]前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が、細胞に発現したものである、[7]に記載のスクリーニング方法、 [9](1)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と、試験物質とを接触させる工程、及び(2)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体によって誘導されるネクロプトーシスを検出する工程、を含むホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法、 [10]前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が、細胞に発現したものである、[9]に記載のスクリーニング方法、 [11]前記ホルミルペプチド受容体1改変体が、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチド、である、[7]~[10]のいずれかに記載のスクリーニング方法、 [12]前記細胞が、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又はその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチド、のいずれかをコードするポリヌクレオチド、を含む[8]又は[10]に記載のスクリーニング方法、及び [13]前記ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストが、fMLP若しくはその誘導体、又はアネキシンA1若しくはその変異体であって、前記アネキシンA1変異体が(1)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチドである、[7]又は[8]に記載のスクリーニング方法、 に関する。 なお、ホルミルペプチド受容体1と、アネキシンA1のペプチドであるGle-Ala-Trp-Pheが相互作用することは報告されている(非特許文献2)。また、ネクロプトーシスがTNFとTNF受容体との結合によって誘導されることが報告されている(非特許文献3及び4)。しかしながら、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1によって、ネクロプトーシスのシグナル伝達が作動し、ネクロプトーシスが誘導されることは、全く知られていなかった。 本明細書において、「ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス」とは、ホルミルペプチド受容体1とアネキシンA1との結合によって誘導されるネクロプトーシスを意味する。 [0008] また、本明細書は、 [14]ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療対象に、有効量投与することを特徴とする、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法、 [15]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、[14]に記載の、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法、 [16]前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、[14]又は[15]に記載のホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法、 [17]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、[14]又は[15]に記載のホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法、 [18]ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療(方法)における使用のための、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスの抑制物質、 [19]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、[18]に記載のネクロプトーシスの抑制物質、 [20]前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、[18]又は[19]に記載のネクロプトーシスの抑制物質、 [21]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、[18]又は[19]に記載のネクロプトーシスの抑制物質、 [22]ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防用又は治療用医薬の製造のための、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [23]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、[22]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [24]前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、[22]又は[23]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [25]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、[22]又は[23]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [26]ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療のための、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [27]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される物質である、[26]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、 [28]前記ネクロプトーシス関連疾患が、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)又は中毒性表皮壊死症である、[26]又は[27]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、及び [29]前記抑制物質が、アネキシンA1阻害物質である場合には抗アネキシンA1抗体であり、ホルミルペプチド受容体1阻害物質である場合にはホルミルペプチド受容体1抗体であり、抗RIP1阻害物質である場合にはネクロスタチン1であり、そしてRIP3阻害物質である場合にはsiRNAである、[26]又は[27]に記載のネクロプトーシスの抑制物質の使用、 を開示する。 発明の効果 [0009] 本発明の医薬組成物によれば、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患(例えば、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症)を予防又は治療することができる。また、本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法によれば、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物の有効成分をスクリーニングすることができる。本発明のネクロプトーシス誘導剤及びその有効成分のスクリーニング方法によれば、ホルミルペプチド受容体1を発現した癌細胞にネクロプトーシスを誘導し、癌の治療に用いることができる。更に、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを原因とする疾患の研究に用いることができ、それらの疾患の治療薬の開発に役立てることができる。 図面の簡単な説明 [0010] [図1] SJS/TEN患者及びODSR患者の表皮のヘマトキシリン・エオジン染色を行った顕微鏡写真、及び電子顕微鏡写真である(a)。SJS患者の培養上清(SJSsup)のSJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)に対する細胞障害性を示したグラフである(b)。SJS患者の培養上清(SJSsup)のSJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)に対する細胞障害性の容量依存性を示したグラフである(c)。SJS患者の培養上清(SJSsup)のSJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)に対する細胞障害性が、SJS患者間において交叉することを示したグラフである(d)。 [図2] SJS患者と健常人の表皮細胞(a)、及びSJS患者の病変部、SJS患者の非病変部、通常薬疹病変部におけるアネキシンA1(b)及びホルミルペプチド受容体1(c)の発現を示した蛍光顕微鏡写真である。 [図3] SJS患者のPBMCの培養上清(SJSsup)の細胞障害性が、上清からアネキシンを除去することで細胞障害能が抑制されることを示したグラフである。 [図4] SJS患者のPBMCの培養上清(SJSsup)の細胞障害性が、ネクロプトーシスの特異的阻害剤であるNec-1により抑制されることを示したグラフである。 [図5] SJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)のRIP3遺伝子を、RIP3のsiRNAにより、ノックダウンすることにより、SJS患者のPBMCの培養上清(SJSsup)の細胞障害性が、抑制されることを示したグラフである。 [図6] fMLPが、FPR1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシス(FPR1誘導性ネクロプトーシス)のアゴニストとして作用することを示したグラフである。 [図7] fMLPによるネクロプトーシスの誘導が、ネクロプトーシスの阻害剤であるNec-1によって阻害されることを示したグラフである。 [図8] fMLPによるネクロプトーシスの誘導が、抗FPR1抗体によって抑制されることを示したグラフである。 [図9] FPR1遺伝子導入Hela細胞のFPR1の発現を確認した蛍光顕微鏡写真である。 [図10] FPR1導入Hela細胞に対するfMLPによるネクロプトーシスの誘導、及びfMLPによるネクロプトーシスの誘導のNec-1による抑制を示したグラフである。 発明を実施するための形態 [0011] [1-1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物 本発明のネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を有効成分として含み、そしてホルミルペプチド受容体1誘導性のネクロプトーシス関連疾患を治療するものである。 [0012] 《ホルミルペプチド受容体1》 ホルミルペプチド受容体1(以下、FPR1と称することがある)は、本発明の医薬組成物によって抑制されるネクロプトーシスを誘導する分子の1つである。すなわち、ホルミルペプチド受容体1と、アネキシンA1との結合によって、ネクロプトーシスが誘導される。 ヒトのFPR1は、350個のアミノ酸が、細胞膜を7回貫通する構造を取るGタンパク質共役型受容体(以下、GPCRと称することがある)である。好中球においては、FPR1に細菌由来のリガンドであるfMLP(Nホルミルメチオニルロイシルフェニルアラニン;For-Met-Leu-Phe)が結合することにより、好中球の生体防御機能、例えばROSの産生、及び白血球の走化、を誘導することが知られている。また、FPR1のホモログとしてFPR2(FPR-like1;FPRL1)及びFPR3(FPR-like2;FPRL2)が知られており、FRP2はFPR1に対して69%の相同性を有している。 [0013] 本発明の医薬組成物の有効成分であるホルミルペプチド受容体1阻害物質が抑制するホルミルペプチド受容体1は、アネキシンA1との結合能を有し、且つネクロプトーシスを誘導することのできる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば配列番号2で表されるアミノ酸からなるタンパク質を挙げることができる。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、ヒトのホルミルペプチド受容体1のアミノ酸配列であり、配列番号1で表される塩基配列はヒトのホルミルペプチド受容体1の塩基配列である。ホルミルペプチド受容体1は、前記のようにヒトのホルミルペプチド受容体1に限定されるものではなく、哺乳動物のホルミルペプチド受容体1を含む。哺乳動物としては、例えばヒト、サル、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、マウス、又はラットを挙げることができる。これらの哺乳動物のホルミルペプチド受容体1を別の観点から記載すると、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~70個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチドである。 [0014] 《アネキシンA1》 アネキシンA1は、本発明の医薬組成物によって抑制されるネクロプトーシスを誘導する分子の1つである。具体的には、ホルミルペプチド受容体1と、アネキシンA1との結合によって、ネクロプトーシスが誘導される。 アネキシンA1は、アネキシンファミリーに属するタンパク質であり、自己免疫疾患との関連が示唆されている。アネキシンファミリーは約70アミノ酸残基から成る特徴的な配列(アネキシンリピート)が4回又は8回繰り返された構造を持つタンパク質ファミリーで、脊椎動物から原生生物まで広く存在する。現在、脊椎動物のアネキシンはA1~A13まで分類されている。 [0015] 本発明の医薬組成物の有効成分であるアネキシンA1阻害物質が抑制するアネキシンA1は、ホルミルペプチド受容体1との結合能を有し、且つネクロプトーシスを誘導することのできる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば配列番号4で表される346アミノ酸からなるタンパク質を挙げることができる。配列番号4で表されるアミノ酸配列は、ヒトのアネキシンA1のアミノ酸配列であり、配列番号3で表される塩基配列はヒトのアネキシンA1をコードする領域の塩基配列である。アネキシンA1は、前記のようにヒトのアネキシンA1に限定されるものではなく、哺乳動物のアネキシンA1を含む。哺乳動物としては、例えばヒト、サル、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、マウス、又はラットを挙げることができる。これらの哺乳動物のアネキシンA1を別の観点から記載すると、(1)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1~70個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチドである。 [0016] 《ネクロプトーシス》 従来のネクロプトーシスにおいては、腫瘍壊死因子(Tumour Necrosis Factor;TNF)が、腫瘍壊死因子受容体(Tumour Necrosis Factor Receptor;TNF-R)に結合することにより、細胞内に複合体Iが形成される。この複合体はある条件下でRIP1及びRIP3を含む複合体IIbを形成し、カスパーゼ非依存性のネクロプトーシス(以下、TNF-R誘導性ネクロプトーシスと称することがある)が起きる。 本発明の医薬組成物が抑制することのできるホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス(以下、FPR1誘導性ネクロプトーシスと称することがある)は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスである限りにおいて、限定されるものではない。すなわち、前記ネクロプトーシスは、TNF及びTNF-Rの結合に代えて、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスである。しかしながら、実質的にホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1によるネクローシスである限りにおいて、TNF及びTNF-Rの結合が起きていることを排除するものではない。 前記FPR1誘導性ネクロプトーシスは、実施例に示すようにRIP1キナーゼの阻害剤であるNec-1、及びRIP3のsiRNAによって抑制される。従って、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合以降のネクロプトーシスを起こすメカニズムは、TNF誘導性ネクロプトーシスと同じシグナル伝達を用いているものと考えられる。従って、FPR1誘導性ネクロプトーシスにおいて、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1との結合以降の細胞内シグナルに関しては、TNF誘導性ネクローシスのシグナル伝達を用いたネクローシスでもよい。 [0017] 前記FPR1誘導性ネクローシスが誘導される細胞は、FPR1が発現している細胞である限りにおいて、限定されるものではないが、例えば副腎皮質細胞、星状細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、未成熟樹状細胞、クッパー細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、単球、神経芽腫細胞、好中球、血小板、癌細胞、眼球の結膜細胞、及び皮膚細胞を挙げることができるが、皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト)、肝細胞、又は眼球の結膜細胞が好ましい。前記FPR1誘導性ネクローシスが誘導される組織も、FPR1が発現している組織である限りにおいて、限定されるものではないが、例えば副腎、骨髄、結腸、中枢神経系、目、心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、胎盤、脾臓、又は皮膚を挙げることができるが、皮膚が好ましい。 [0018] 《ネクロプトーシス抑制物質》 本発明の医薬組成物の有効成分であるネクロプトーシス抑制物質は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを抑制する限りにおいて限定されるものではないが、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質、RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質、又はそれらに属する物質の2つ以上の組み合わせを挙げることができるが、アネキシンA1阻害物質、ホルミルペプチド受容体1阻害物質、又はそれらの組み合わせが好ましい。ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを特異的に抑制できるからである。 [0019] 《アネキシンA1阻害物質》 前記アネキシンA1阻害物質は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する限りにおいて限定されるものではないが、例えばアネキシンA1の活性を阻害する物質、アネキシンA1に結合してFPR1との結合を阻害する物質、アネキシンA1の発現を阻害する物質を挙げることができる。具体的には、例えばアネキシンA1を阻害する、化合物、タンパク質(例えば、抗アネキシンA1抗体)、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー、又はsiRNAを挙げることができる。 [0020] 《ホルミルペプチド受容体1阻害物質》 前記ホルミルペプチド受容体1阻害物質は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する限りにおいて限定されるものではないが、例えばホルミルペプチド受容体の活性を阻害する物質、ホルミルペプチド受容体に結合してアネキシンA1との結合を阻害する物質、ホルミルペプチド受容体の発現を阻害する物質を挙げることができる。具体的には、ホルミルペプチド受容体を阻害する、化合物(例えばホルミルペプチド受容体アンタゴニスト)、タンパク質(例えば、抗ホルミルペプチド受容体抗体)、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー、又はsiRNAを挙げることができる。 [0021] (ホルミルペプチド受容体1のアンタゴニスト) 前記ホルミルペプチド受容体1アンタゴニストは限定されるものではないが、例えば、CDCA、CHIPS、Coronavirus、229E peptides、Coronavirus peptides、Cyclosporine A、Cyclosporine H、DCA、Ebola peptides、FLIPr、HIV-2 peptides、sopropylureido-FLFLF、Spinorphin、及びtBOC、並びにこれらの誘導体であってホルミルペプチド受容体1アンタゴニスト活性を有するものを挙げることができる。 [0022] 《RIP(Receptor-interacting protein)1阻害物質》 前記RIP1阻害物質は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する限りにおいて限定されるものではないが、例えばRIP1の活性を阻害する物質、RIP1に結合してRIP3との結合、複合体IIbの形成を阻害する物質、RIP1の発現を阻害する物質を挙げることができる。具体的には、例えばアネキシンA1を阻害する、ホルミルペプチド受容体を阻害する、化合物、タンパク質(例えば、抗RIP1抗体)、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー、又はsiRNAを挙げることができる。 [0023] (ネクロスタチン1) 前記RIP1キナーゼ阻害物質の例として、ネクロスタチン1(Necrostain-1;以下、Nec-1と称することがある)が知られている。Nec-1は、下記式: [化1] で表される化合物であり、RIP1キナーゼを阻害することにより、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制することができる。 [0024] 《RIP(Receptor-interacting protein)3阻害物質》 前記RIP3阻害物質は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1によるネクロプトーシスを抑制する限りにおいて限定されるものではないが、例えばRIP3の活性を阻害する物質、RIP3に結合してRIP1との結合、複合体IIbの形成を阻害する物質、RIP3の発現を阻害する物質を挙げることができる。具体的には、例えばアネキシンA1を阻害する、化合物、タンパク質(例えば、抗RIP3抗体)、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー、又はsiRNAを挙げることができる。なお、RIP3はRIP3キナーゼと称されることもある。 [0025] (抗体) 本発明の医薬組成物に用いることのできる抗アネキシンA1抗体、抗ホルミルペプチド受容体抗体、抗RIP1抗体、又は抗RIP3抗体は、それぞれのタンパク質に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメントであって、且つそれぞれタンパク質の発現又は機能を抑制することができる限り、限定されるものではないが、マウスのモノクローナル抗体、又はそのキメラ抗体、CDRグラフト化抗体、若しくはヒト型抗体が好ましい。 [0026] モノクローナル抗体は、免疫抗原としてそれぞれのタンパク質を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能であり、例えばKoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495-497,1975)に従って、作成することができる。免疫抗原であるタンパク質は、配列番号2、4、6、又は8記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の全部又は一部のペプチドを用いることができる。具体的には、生体試料から精製した抗原、遺伝子工学的に作成した組換え抗原、又は化学的に合成した部分ペプチドなどを用いることが可能である。大腸菌や酵母などで発現させる組換え抗原を用いる場合は、発現を容易にするため、他のタンパク質、例えば、SODやTrpEとの融合抗原とすることも可能である。また、精製を容易にするため、His-Tagなどを結合させて発現させることもできる。 [0027] キメラ抗体は、例えばマウスの重鎖可変領域ドメイン及び軽鎖可変領域ドメインをコードするDNAを、ヒト抗体の定常領域のポリペプチドをコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。キメラ化抗体に用いる重鎖可変領域ドメイン及び軽鎖可変領域ドメイン、並びに定常領域のポリペプチドの由来は、ヒトの抗体であれば特に限定されるものではなく、例えばマウスのIgGの重鎖可変領域ドメイン及び軽鎖可変領域ドメインとヒトのIgM、又はIgGの定常領域のポリペプチドとにより、キメラ抗体を得ることができる。 [0028] CDRグラフト化抗体は、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)を、例えばヒト抗体の相補性決定領域と入れ替え、移植したものである。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(FR;framework region)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAを、ヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得ることができる。CDRグラフト化抗体に用いる相補性決定領域、並びにフレームワーク領域及び定常領域のポリペプチドの由来は、ヒトの抗体であれば特に限定されるものではなく、例えばマウスのIgGの相補性決定領域とヒトのIgM、又はIgGのフレームワーク領域及び定常領域のポリペプチドとにより、CDRグラフト化抗体を得ることができる。また、マウスの相補性決定領域とヒトのIgM、又はIgGフレームワーク領域とにより、CDRグラフト化抗体の抗原結合性断片を得ることができる。 [0029] また、本明細書において、「ヒト型抗体」は、ヒト抗体遺伝子を導入したトランスジェニック動物から得られる抗体、及びヒトの抗体産生細胞をミエローマ細胞と細胞融合させて得ることのできるモノクローナル抗体を意味する。 [0030] (siRNA) 本発明の医薬組成物に用いることのできるアネキシンA1のsiRNA、ホルミルペプチド受容体のsiRNA、RIP1のsiRNA、又はRIP3のsiRNAのsiRNAは、二重鎖のRNA部分を有し、それぞれの遺伝子のmRNAを、RNA干渉を介して開裂することができる限り限定されるものではない。 例えば、RIP3のmRNAである配列番号9(Si-41)又は11(si-42)で表される塩基配列からなる標的mRNA領域において、RNA干渉を介して開裂することができるsiRNAを挙げることができる。 [0031] 二重鎖RNA部分の長さは、塩基として、15~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは15~25塩基、更に好ましくは19~25塩基、最も好ましくは19~21塩基である。 [0032] 二重鎖RNAのアンチセンスRNA配列は、それぞれの遺伝子のmRNAに細胞内でハイブリダイズできるものであれば、限定されない。例えばRIP3のアンチセンスRNAとしては、具体的には標的mRNA領域におけるUUACGUUAACAAACAGUUC(配列番号10)又はUGGUUUUCUAUGGUUCUCC(配列番号12)を挙げることができる。また、二重鎖RNA部分のセンスRNA配列は、アンチセンスRNA配列と細胞内でハイブリダイズすることのできるRNAであれば、限定されない。例えば、RIP3のアンチセンスRNAとしては、具体的には標的mRNA領域1におけるGAACUGUUUGUUAACGUAA(配列番号9)又はGGAGAACCAUAGAAAACCA(配列番号11)を挙げることができる。 [0033] 本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチドも含まれ、このようなsiRNAは十分なRNAi活性を示す。また、本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分と、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、突出末端を形成する二本鎖オリゴヌクレオチドも含まれる。前記オーバーハング部分は、ug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’などの塩基配列を挙げることができる。 [0034] 本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているショートヘアピンRNA(short hairpin RNA;以下、shRNAと称する)が含まれる。ヘアピンループの配列としては、例えば、UUCAAGAGA、CUUCCUGUCA(配列番号17)、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCC、CTTCCTGTCAGA(配列番号18)、又はUUCGのRNAを挙げることができる。 [0035] 本発明の医薬組成物に用いるsiRNAは、ベクターに遺伝子を組込んで得ることもできる。ベクターは、哺乳動物細胞内でMUC5ACのmRNAの発現を抑制することのできるsiRNAを発現させるためのベクターであり、前記細胞内で効率良くsiRNAを発現できるものであれば、骨格となるベクターは、特に限定されるものではない。前記骨格となるベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、直鎖状2本鎖DNAベクター並びに、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを挙げることができる。 [0036] 《ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患》 本発明の医薬組成物の予防又は治療対象である、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1により誘導されるネクロプトーシスが関与している限りにおいて、限定されるものではないが、例えばスティーブンス・ジョンソン・シンドローム(SJS)、及び中毒性表皮壊死症(TEN)を挙げることができる。 [0037] (スティーブンス・ジョンソン・シンドローム(Stevens-Johnson Syndrome)) 本発明の医薬組成物の予防及び治療対象であるSJSは、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスが関連しているものである。SJSの原因は、セフェム系の抗生物質であるセフジニル、抗てんかん薬(例えば、ゾニサミド、カルバマゼピン、及びフェノバルビタール)、又は非ステロイド性抗炎症薬などの薬剤によるものが多いが、その他にウイルス感染、化学物質、又は悪性腫瘍が原因といわれるものがあるが、このような原因によって発症するSJSも、本発明の医薬組成物の予防及び治療対象に含まれる。 [0038] (中毒性表皮壊死症) 本発明の医薬組成物の予防及び治療対象であるTENは、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1誘導性ネクロプトーシスが関連しているものである。TENの原因は、その多くが薬剤によるものであるが、SJSと同様にホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスが関連している限りにおいて、薬剤が原因のものに限定されない。TENの致死率は20~30%といわれ、非常に致死率の高い疾患である。 [0039] 本発明の医薬組成物は、前記有効成分のいずれか1つを含有することもできるし、2つ以上を任意の組み合わせで含有することもできる。本発明においては、前記有効成分をそれ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療又は予防の必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]に有効量で投与することができる。また、前記有効成分は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療又は予防用医薬組成物を製造するために使用することができる。 [0040] 本発明の医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。 [0041] 本発明の医薬組成物は、例えば、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。 [0042] 非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなかで、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。 また、本発明の抗腫瘍剤は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明における前記有効成分をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移植することができる。 [0043] 本発明の医薬組成物は、これに限定されるものではないが、本発明における前記有効成分を0.01~99重量%、好ましくは0.1~80重量%の量で含有することができる。本発明の医薬組成物を用いる場合の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。 [0044] [1-2]ネクロプトーシス関連疾患の治療方法 前記ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物(特には、ネクロプトーシス抑制物質)は、ネクトプトーシス関連疾患の予防又は治療方法に用いることができる。従って、本発明のホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質を、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療対象に、有効量投与することを特徴とするものである。 前記ネクロプトーシス抑制物質の投与経路、投与量、及び投与間隔などは、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。 [0045] [1-3]ネクロプトーシス関連疾患の治療における使用のためのネクロプトーシス抑制物質 前記ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物(特には、ネクロプトーシス抑制物質)は、ネクトプトーシス関連疾患の予防又は治療方法において用いることができる。従って、本発明のホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療方法における使用のためのものである。 前記ネクロプトーシス抑制物質の予防又は治療における使用量などは、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。 [0046] [1-4]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬の製造のためのネクロプトーシス抑制物質の使用 前記ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物(特には、ネクロプトーシス抑制物質)は、ネクトプトーシス関連疾患の予防又は治療用医薬の製造のために用いることができる。従って、本発明の使用は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質の、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療用医薬の製造のための使用である。 前記ネクロプトーシス抑制物質の予防又は治療用医薬における含有量などは、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。 [0047] [1-5]ネクロプトーシス関連疾患の治療のためのネクロプトーシス抑制物質の使用 前記ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物(特には、ネクロプトーシス抑制物質)は、ネクトプトーシス関連疾患の治療のために用いることができる。従って、本発明の使用は、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスを抑制する物質の、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の予防又は治療のための使用である。 前記ネクロプトーシス抑制物質の予防又は治療における使用料などは、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。 [0048] [2]ネクロプトーシス誘導剤 本発明のネクロプトーシス誘導剤は、ホルミルペプチド受容体1と結合し、ネクロプトーシスを誘導する物質を有効成分として含むものである。本発明のネクロプトーシス誘導剤は、ネクロプトーシスを誘導する物質が1種類で含まれてもよく、2種類以上組み合わせて含まれてもよい。また、担体と一緒に含まれてもよく、有効成分のみで担体が含まれなくてもよい。 [0049] (ホルミルペプチド受容体1のアゴニスト) 前記ネクロプトーシスを誘導する物質としては、限定されるものではないが、ネクロプトーシス誘導活性を有する化合物(ホルミルペプチド受容体1のアゴニスト)、タンパク質(例えば、抗RIP1抗体)、ペプチド、DNAアプタマー、又はRNAアプタマーを挙げることができる。 ホルミルペプチド受容体のアゴニストとしては、例えばアネキシンA1、fMLPAc2-12、Ac9-25、Ac2-26、Annexin 1、Cathepsin G、、HIV-1 T20 (DP178)、HIV-1 T21 (DP107)、HIV gp41、HSV gG-2p20、LL-37、SRSRY、WKYMVM、又はWKYMVm peptide、並びにこれらの誘導体であってホルミルペプチド受容体1アゴニスト活性を有するものを挙げることができるが、好ましくはアネキシンA1又はfMLPである。 [0050] (fMLP) 前記fMLPは、formyl-Met-Leu-Phe(Nホルミルメチオニルロイシルフェニルアラニン)であり、FPR1に結合するリガンド(アゴニスト)として最初に同定された化合物である。fMLPは、好中球において、走化性の誘導、顆粒の可動化(granule mobilization)、活性酸素代謝物の産生を引き起こす。 [0051] 本発明のネクロプトーシス誘導剤が結合するホルミルペプチド受容体1は、前記「[1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物」において、詳しく説明されている。また、有効成分であるアネキシンA1も前記「[1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物」において、詳しく説明されている。ネクロプトーシス誘導剤は、ネクロプトーシス誘導用組成物又はネクロプトーシス誘導用医薬組成物として用いることができるが、この場合の担体、投与剤形、又は投与方法などは、前記「[1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物」に記載されたものを用いることができる。 [0052] 本発明のネクロプトーシス誘導剤は、悪性腫瘍に特異的にホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを誘導することによって、悪性腫瘍の治療に用いることができる。より具体的には、ホルミルペプチド受容体1を発現している悪性腫瘍に、前記アゴニストなどを作用させることによって、悪性腫瘍に特異的にネプロプトーシスを誘導し、腫瘍を治療することが可能である。 ホルミルペプチド受容体1を発現している悪性腫瘍としては、例えば悪性黒色腫を挙げることができる。 [0053] [3]ネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニストとを試験物質の存在下で接触させる工程と、前記受容体又はその改変体と前記リガンド又はアゴニストとの結合に対する前記試験物質の阻害活性を検出する工程若しくはホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスに対する前記試験物質の誘導阻害活性を検出する工程、とを含む。 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、或いは、ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストをスクリーニングのツールとして用い、ネクロプトーシスを抑制する物質を選択するものである。従って、試験物質を、これらのいずれかのスクリーニングツールと接触させる工程を行う。 また、本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法は、FPR1誘導性ネクロプトーシスを阻害する物質を選択するものであり、従って試験物質によって、ホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合が阻害されること、FPR1誘導性ネクロプトーシス(例えば、細胞の障害)が阻害されること、又はFPR1誘導性ネクロプトーシスの過程(例えば、シグナル伝達)が阻害されることを検出する工程を行う。 [0054] 《接触工程(1)》 前記接触工程(1)は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニストとを試験物質の存在下で接触させる工程である。ここで、「ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニストとを試験物質の存在下で接触させる」とは、「ホルミルペプチド受容体1又はその改変体」、「ホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニスト」、及び「試験物質」の3つが同時に接触する態様のみでなく、3つのうちの2つを先に接触させ、更に残りの1つが接触する態様を含むものである。すなわち、試験物質が、スクリーニングツールであるホルミルペプチド受容体1又はその改変体、又はホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと接触できる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば接触工程(a)、(b)、及び(c)を挙げることができる。 [0055] 接触工程(a)は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と、ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと、試験物質とを同時に接触させる工程である。接触工程(b)は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と試験物質とを接触させ、そしてその混合物をホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと接触させる工程である。接触工程(c)は、ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと試験物質とを接触させ、そしてその混合物をホルミルペプチド受容体1又はその改変体と接触させる工程である。 試験物質は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、或いはホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと結合することによって機能を阻害してもよく、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、或いはホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストと接触することによって機能を阻害するものでもよい。更に、試験物質はアロステリック効果により阻害を誘導するものでもよい。すなわち、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、又はホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストの活性中心に結合して機能を阻害するものではなく、活性中心以外の部位に試験物質が作用(例えば、結合)することによって、例えばホルミルペプチド受容体1等又はリガンド等の構造が変化し、そしてそれらの機能が阻害されるものでもよい。 [0056] 《ホルミルペプチド受容体1又はその改変体発現細胞》 前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体は、細胞に発現しているものを用いることができる。ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が発現している細胞は、アネキシンA1との結合により、ネクロプトーシスが誘導される限りにおいて、限定されるものではないが、例えばSJS患者、TEN患者から分離された初代細胞を用いてもよく、樹立された継代細胞を用いてもよい。また、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体の遺伝子を組込んだ組換え細胞を用いてもよい。遺伝子組み換え細胞の作製は、常法に従って行うことができる。 細胞の種類も特に限定されるものではないが、例えば副腎皮質細胞、星状細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、未成熟樹状細胞、クッパー細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、単球、神経芽腫細胞、好中球、血小板、癌細胞、眼球の結膜細胞、及び皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト)を挙げることができるが、皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト)、肝細胞、又は眼球の結膜細胞が好ましい。 [0057] 遺伝子組み換え細胞の作製に用いるホルミルペプチド受容体1又はその改変体の遺伝子は、ネクロプトーシスを誘導することができる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又はその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~70個のアミノ酸(好ましくは、1~50個、より好ましくは1~30個、更に好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個のアミノ酸)が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチド、のいずれかをコードするポリヌクレオチド、を挙げることができる。 [0058] 《検出工程(2)》 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法における検出工程は、前記受容体又はその改変体と前記リガンド又はアゴニストとの結合に対する前記試験物質の阻害活性を検出する工程(以下、結合阻害検出工程と称することがある)、若しくはホルミルペプチド受容体1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスに対する前記試験物質の誘導阻害活性を検出する工程(以下、誘導阻害検出工程と称することがある)である。 前記結合阻害検出工程は、受容体又はその改変体と、リガンド又はアゴニストとの結合の阻害を検出し、その試験物質がネクロプトーシスを抑制する物質である限りにおいて、限定されるものではない。 また、誘導阻害検出工程は、FPR1誘導性ネクロプトーシスの誘導の阻害を検出する限りにおいて、限定されるものではないが、FPR1誘導性ネクロプトーシス(例えば、細胞の障害)の阻害の検出、又はFPR1誘導性ネクロプトーシスの過程(例えば、シグナル伝達)の阻害の検出を含む。 なお、前記結合阻害検出工程において、結合の阻害の検出ともに、ネクロプトーシスの阻害を検出してもよい。すなわち、FPR1誘導性ネクロプトーシス(例えば、細胞の障害)の阻害、又はFPR1誘導性ネクロプトーシスの過程(例えば、シグナル伝達)の阻害を検出してもよい。 [0059] ネクロプトーシスの誘導の阻害の検出は、ネクロプトーシスの誘導が阻害されたことを検出できる限りにおいて限定されるものではない。例えば、細胞においてネクロプトーシスの誘導が阻害されたことを、形態的に検出してもよい。また、試験管内又は細胞において、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体とホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストとの結合が低下したこと、複合体Iの形成が低下したこと、RIP1キナーゼの活性が低下したこと、RIP1、RIP1のリン酸化が認められないこと又はRIP1及びRIP3を含む複合体IIbの形成が低下したことなどを検出することによっても、ネクロプトーシスの阻害を検出することが可能である。 [0060] 前記検出工程におけるネクロプトーシス誘導の阻害の検出は、コントロールと比較することが好ましい。コントロールとしては、スクリーニング系に試験物質を添加しない陰性コントロールを用いることができる。陰性コントロールにおいては、ネクロプトーシスが誘導されるため、それと比較して試験物質がネクロプトーシスの誘導を阻害したか否かを検出することが容易になる。すなわち、陰性コントロールと比較してネクロプトーシスの誘導を阻害された場合、試験物質がネクロプトーシス誘導阻害活性を有していると判断することが容易になる。 更に、コントロールとして、ネクロプトーシス誘導を阻害する物質を添加した陽性コントロールを用いてもよい。ネクロプトーシス誘導を阻害する物質としては、例えばFPR1のアンタゴニストであるCDCA、CHIPS、Coronavirus、229E peptides、Coronavirus peptides、Cyclosporine A、Cyclosporine H、DCA、Ebola peptides、FLIPr、HIV-2 peptides、sopropylureido-FLFLF、Spinorphin、及びtBOCを用いることができる。また、抗FPR1抗体、又は抗アネキシンA1抗体を用いることもできる。 [0061] 《ホルミルペプチド受容体1又はその改変体》 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法で用いるホルミルペプチド受容体1は、前記「[1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物」の欄に記載のホルミルペプチド受容体1を用いることができる。 また、ホルミルペプチド受容体1以外に、ホルミルペプチド受容体1改変体を用いることができる。改変体は、アネキシンA1と結合して、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを誘導できる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1~70個のアミノ酸(好ましくは、1~50個、より好ましくは1~30個、更に好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個のアミノ酸)が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれか1つのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、アネキシンA1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチドを挙げることができる。 前記融合ポリペプチドは、例えば前記(1)~(3)のいずれかのポリペプチドのN末、C末、又はN末及びC末に、他のペプチド(タンパク質)が融合したものである。他のペプチドとしては、通常融合ペプチド(タンパク質)として用いることのできるペプチドを限定せずに用いることができるが、例えばGST、TrpE、又はHis Tagなどを挙げることができる。 [0062] 《ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニスト》 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法で用いるホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストは、ホルミルペプチド受容体1と結合して、ネクロプトーシスを誘導できる限りにおいて、限定されるものではないが、例えばアネキシンA1若しくはその改変体、fMLP若しくはその誘導体、Ac2-12、Ac9-25、Ac2-26、Annexin 1、Cathepsin G、、HIV-1 T20 (DP178)、HIV-1 T21 (DP107)、HIV gp41、HSV gG-2p20、LL-37、SRSRY、WKYMVM、又はWKYMVm peptide、並びにこれらの誘導体を挙げることができるが、特にはアネキシンA1若しくはその改変体、又はfMLP若しくはその誘導体が好ましい。 これらの物質は、ホルミルペプチド受容体1と結合して、ホルミルペプチド受容体1誘導性のネクロプトーシスを起こすことができる。 [0063] 《アネキシンA1又はその改変体》 本発明のネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法で用いることのできるアネキシンA1は、前記「[1]ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物」の欄に記載のアネキシンA1を用いることができる。 また、アネキシンA1以外に、アネキシンA1改変体を用いることができる。改変体は、ホルミルペプチド受容体1と結合して、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを誘導できる限りにおいて、限定されるものではないが、例えば、(1)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1~70個のアミノ酸(好ましくは、1~50個、より好ましくは1~30個、更に好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個のアミノ酸)が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、(3)配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなるペプチド若しくはその部分ペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導するポリペプチド、又は(4)前記(1)~(3)のいずれかのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、ホルミルペプチド受容体1と結合することによりネクロプトーシスを誘導する融合ポリペプチドを挙げることができる。 前記融合ポリペプチドは、例えば前記(1)~(3)のいずれかのポリペプチドのN末、C末、又はN末及びC末に、他のペプチド(タンパク質)が融合したものである。他のペプチドとしては、通常融合ペプチド(タンパク質)として用いることのできるペプチドを限定せずに用いることができるが、例えばGST、TrpE、又はHis Tagなどを挙げることができる。 [0064] 本発明に用いることのできる変異ペプチドの改変体のアミノ酸置換は保存的置換が好ましい。本明細書において「保存的置換」とは、1若しくは数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことでできる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。非極性(疎水性)アミノ酸としては、例えば、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、例えば、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。 [0065] 本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術[Terrett, N. K. ら, Tetrahedron, 51, 8135-8137 (1995)]又は通常の合成技術によって得られた化合物群、ファージ・ディスプレイ法[Felici, F. ら, J. Mol. Biol., 222, 301-310 (1991)]などを応用して作成されたランダム・ペプチド群、siRNA、ホルミルペプチド受容体1に結合する抗体、アネキシンA1に結合する抗体、又はホルミルペプチド受容体1のリガンドに結合する抗体を用いることができる。また、例えば微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された試験物質を、化学的又は生物学的に修飾した誘導体を用いることができる。 [0066] [4]ネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法 本発明のネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法は、(1)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と、試験物質とを接触させる工程、及び(2)ホルミルペプチド受容体1又はその改変体によって誘導されるネクロプトーシスを検出する工程、 を含む。 本発明のネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体をスクリーニングのツールとして用い、ネクロプトーシスを誘導する物質を選択するものである。従って、試験物質を、これらのいずれかのスクリーニングツールと接触させる工程を行う。 また、本発明のネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法は、FPR1誘導性ネクロプトーシスを誘導する物質を選択するものであり、従って試験物質によってFPR1誘導性ネクロプトーシス、又はFPR1誘導性ネクロプトーシスの過程が誘導されることを検出する工程を行う。具体的には、ネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法によって、FPR1のリガンド又はアゴニストを選択することが可能である。 [0067] 《接触工程(1)》 前記接触工程(1)は、試験物質が、スクリーニングツールであるホルミルペプチド受容体1又はその改変体と接触できる限りにおいて、限定されるものではない。 試験物質は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と結合することによってFPR1誘導性ネクロプトーシスを誘導してもよく、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と接触することによってFPR1誘導性ネクロプトーシスを誘導してもよく、更にホルミルペプチド受容体1のリガンド又はアゴニスト、若しくはそれらの前駆体に作用してFPR1誘導性ネクロプトーシスを誘導してもよい。 [0068] 《ホルミルペプチド受容体1又はその改変体発現細胞》 前記ホルミルペプチド受容体1又はその改変体は、細胞に発現しているものを用いることができる。ホルミルペプチド受容体1又はその改変体が発現している細胞は、前記「[3]ネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法」の欄に記載のものを用いることができる。 [0069] 《検出工程(2)》 本発明のネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法における検出工程は、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体によって誘導されるネクロプトーシスを検出する工程である。 ネクロプトーシスの検出は、ネクロプトーシスが誘導されたことを検出できる限りにおいて限定されるものではない。例えば、細胞においてネクロプトーシスが誘導されたことを、形態的に検出してもよい。また、試験管内又は細胞において、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体と試験物資が結合したこと、複合体Iが形成されたこと、RIP1キナーゼの活性が上昇したこと、RIP1、RIP1のリン酸化が認められたこと、又はRIP1及びRIP3を含む複合体IIbが形成されたことなどを検出することによっても、ネクロプトーシスの誘導を検出することが可能である。 [0070] 前記検出工程におけるネクロプトーシス誘導の検出は、コントロールと比較することが好ましい。 コントロールとしては、スクリーニング系にネクロプトーシスを誘導する物質を添加した、陽性コントロールを用いてもよい。ネクロプトーシスを誘導する物質としては、アネキシンA1、fMLP及びその誘導体、Ac2-12、Ac9-25、Ac2-26、Annexin 1、Cathepsin G、HIV-1 T20 (DP178)、HIV-1 T21 (DP107)、HIV gp41、HSV gG-2p20、LL-37、SRSRY(配列番号19)、WKYMVM(配列番号20)、又はWKYMVm peptide(配列番号20)、を挙げることができる。 また、コントロールとしては、スクリーニング系に試験物質を添加しない陰性コントロールを用いることができる。陰性コントロールにおいては、ネクロプトーシスが誘導されないため、それと比較して試験物質がネクロプトーシスを誘導したか否かを検出することが容易になる。 [0071] 本発明のネクロプトーシスの誘導物質のスクリーニング方法における、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、及び試験物質等は、前記「[3]ネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法」の欄に記載のものを用いることができる。 [0072] 本発明のネクロプトーシスを誘導又は抑制する物質のスクリーニング方法は、スクリーニングキットを用いて行うことも可能である。この場合、スクリーニングキットは、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体を含むものである。ネクロプトーシスを誘導又は抑制する物質のスクリーニングキットは、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体を、細胞に発現した状態で含んでもよい。また、ネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニングキットは、ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニストを更に含んでもよい。 [0073] ネクロプトーシスを誘導又は抑制する物質のスクリーニングキットに含むことのできる、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体、ホルミルペプチド受容体1又はその改変体発現細胞、ホルミルペプチド受容体1のリガンド若しくはアゴニスト、或いはアネキシンA1又はその改変体は、前記「[3]ネクロプトーシスを抑制する物質のスクリーニング方法」及び「[4]ネクロプトーシスを誘導する物質のスクリーニング方法」の欄に記載のものを用いることができる。 実施例 [0074] 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 [0075] 《実験例1》 本実験例1では、SJS患者の末梢血細胞(PBMC)から分泌される液性分子の解析を、通常薬疹(ODSR)患者の末梢血細胞(PBMC)から分泌される培養上清と比較することによって行った。 図1aは、SJS/TEN患者及びODSR患者の表皮のヘマトキシリン・エオジン染色を行った顕微鏡写真、及び電子顕微鏡写真を示したものである。SJS/TEN患者では、皮膚の病変部に表皮細胞の細胞死が認められる。 SJS患者及びODSR患者の末梢血から単核球細胞(PBMC)を、ファイコールにより分離した。2x10 5cellのPBMCに、SJSの原因である薬剤をDLSTで陽性となった濃度で加えて、cRPMI培地で5日培養し、更に同じ濃度の薬剤を加えて刺激した後の培養上清(SJSsup及びODSRsup)を回収した。 SJS患者及びODSR患者から、表皮細胞(SJS-keratinocyte;SJS-K、及びODSR-keratinocyte;ODSR-K)をディスパーゼを用いて分離し培養した。得られたSJS-K及びODSR-K1x10 5cellに対して、前記のSJSsup又はODSRsupを5%添加して、8時間後に、細胞障害性をトリパンブルーの染色によって調べた。 SJS患者の培養上清(SJSsup)は、SJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)に対して壊死を誘導したが、通常薬疹患者由来の表皮細胞(ODSR-K)に対しては毒性を示さなかった(図1b)。また、通常薬疹患者の培養上清(ODSRsup)は、SJS-K、及びODSR-Kのいずれにも、細胞障害性は示さなかった。また、SJS患者の培養上清(SJSsup)の添加を、0.1%~15%まで変化させると、壊死が容量依存的に誘導された(図1c)。 [0076] 更に、3人のSJS患者(SJS#1、SJS#2、及びSJS#3)について、同様に培養上清(SJS#1sup、SJS#2sup、及びSJS#3sup)及び表皮細胞(SJS#1-K、SJS#2-K、及びSJS#3-K)を調製し、それぞれの培養上清を、それぞれの表皮細胞に添加して、細胞障害性を調べた。その結果、培養上清の細胞障害性は、SJS患者間において、交叉して観察された(図1d)。 これらのことから、SJS患者のPBMCからSJS-Kの細胞壊死を誘導する細胞外液性因子が分泌されること、SJS-Kには前記液性因子に対する受容体が特異的に発現していることが考えられた。 [0077] 《実験例2》 本実験例では、SJS患者のPBMCから分泌される液性因子を解析した。具体的には、実験例1で得られたSJSsup及びODSRsupを、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析機(LC/MS/MS)を用いて、比較分析した。その結果、SJSsup及びODSRsupで、多くのタンパク質の相違が見られた。それらの異なるタンパク質の1つとして、アネキシンA1が見出された。 [0078] 《実験例3》 本実験例では、SJS患者から分離された表皮細胞(SJS-K)及びSJS患者の組織における、アネキシンA1及びその受容体であるホルミルペプチド受容体1の発現を調べた。 検体として、SJS患者の表皮細胞(SJS)、及び健常人の表皮細胞(control)について、抗FPR1抗体(Lifespan, Seattle, WA)を用いて蛍光抗体法により、FPR1の発現を調べた。その結果、SJS患者の表皮細胞(SJS)において、FPR1の発現が確認された(図2a)。更に、SJS患者の病変部(SJS lesion)及び非病変部(non-lesion skin)、並びに通常薬疹の患者の皮膚(ODSR lesion)の組織切片を準備した。それぞれの検体を、抗アネキシンA1抗体(Lifespan, Seattle, WA)、及び抗FPR1抗体(Lifespan, Seattle, WA)を用いて蛍光染色し、蛍光顕微鏡で観察した。 その結果、SJS患者の病変部(SJS lesion)において、アネキシンA1及びホルミルペプチド受容体1の発現が亢進していた(図2b及びc)。 [0079] 《実施例1》 本実施例では、抗アネキシンA1抗体による、SJS患者のPBMCの培養上清(SJSsup)の細胞傷害活性の抑制について検討した。 2人のSJS患者(SJS#1、及びSJS#2)から、実験例1と同様の操作により、培養上清(SJS#1sup、及びSJS#2supp)及び表皮細胞(SJS#1-K、及びSJS#2-K)を得た。それぞれの培養上清に、抗アネキシン抗体(BD Transduction Laboratories, NJ USA)5μg/mLを添加し、4℃、一昼夜ゆっくりと攪拌した。プロテインGビーズ(Dynal社)を添加し、4℃で2時間攪拌し、プロテインGビーズを除去したものを、培養上清として用い、細胞障害性を調べた。 その結果、抗アネキシン抗体で処理された培養上清(SJS#1 sup Anx deplet、及びSJS#2 sup Anx deplet)は、2人のSJS患者の表皮細胞(SJS#1-K、及びSJS#2-K)に対して、細胞障害性を示さなかった(図3)。 SJS患者における細胞障害性は、アネキシンA1及びその受容体であるFPR1によって誘導されているものと考えられ、この細胞障害性は、抗アネキシン抗体によって抑制された。 [0080] 《実施例2》 本実施例では、ネクロプトーシスの特異的阻害剤であるNec-1による、培養上清による細胞障害性の抑制を検討した。 実施例1で得られた培養上清(SJS#1sup、及びSJS#2supp)にネクロスタチン1(Nec-1;Enzo Life Sciences社)50μMを添加し、37℃で1時間インキュベートした。この培養上清を用いて、表皮細胞(SJS#1-K、及びSJS#2-K)への細胞障害性を調べた。また、アポトーシスを特異的に阻害するカスパーゼ阻害剤(zIED-fmk(RDsystems社)20μM及びzVAD-fmk(RDsystems社)50μM)についても、ネクロスタチン1と同様に培養上清に添加し、細胞障害性への影響を調べた。 ネクロプトーシスの特異的阻害剤であるNec-1により細胞障害性は完全に抑制された。しかしながら、カスパーゼの阻害剤(zIED-fmk、zVAD-fmk)は、SJS-Kの細胞障害性は抑制されなかった(図4)。 従って、SJS患者における皮膚の細胞障害は、FPR1及びアネキシンA1の結合により誘導されるネクロプトーシスによるものと考えられた。 [0081] 《実施例3》 本実施例では、ネクロプトーシスに関与するRIP3の発現を、siRNAを用いてノックダウンすることにより、アネキシンA1によるネクロプトーシスの阻害について検討した。siRNAの配列は、以下の通りである。 Si-41: センス:GAACUGUUUGUUAACGUAAtt(配列番号13) アンチセンス:UUACGUUAACAAACAGUUCtg(配列番号14) Si-42: センス:GGAGAACCAUAGAAAACCAtt(配列番号15) アンチセンス:UGGUUUUCUAUGGUUCUCCta(配列番号16) 小文字で記載した部分がオ-バーハングの配列である。 前記のSi-41、及びSi-42のSJS患者の表皮細胞(SJS-K)へのトランスフェクションは、Lipofectamine RNAi MAX regent(Invitrogen)、及びOpti-MEM mediumを用い、添付のプロトコールに従って行った。siRNAの濃度は、40pmoleとした。 siRNAが導入された表皮細胞は、培養上清によるネクロプトーシスが抑制され、RIP3のsiRNAにより、アネキシンA1によるネクロプトーシスが抑制されることが確認された(図5a)。なお、SJS/TNT患者(SJS/TNT)及び通常薬疹患者(ODSR)の表皮におけるRIP3の発現を蛍光抗体法によって確認した。その結果、SJS/TNT患者の病変部においてはRIP3の発現が亢進していた(図5b)。 [0082] 《実施例4》 本実施例では、FPR1のアゴニストであるfMLPによる、FPR1及びアネキシンA1によるネクロプトーシス(FPR1誘導性ネクロプトーシス)の誘導について検討した。 実験例1と同様に調製した表皮細胞(SJS-K)に、fMLPを0nM、0.05nM、0.5nM、5nM、50nM、又は500nM添加して、8時間後に細胞障害性を、トリパンブルーの染色によって調べた。その結果、fMLPは容量依存的に、ネクロプトーシスを誘導した(図6)。 [0083] 《実施例5》 本実施例では、ネクロプトーシスの特異的阻害剤であるネクロスタチン1(Nec-1)による、fMLPによるネクロプトーシスの誘導の抑制を検討した。 前記実施例4において、fMLPを5nM添加した実験系に、Nec-1を50μM添加して、同様に細胞障害性をトリパンブルーの染色によって調べた。また、コントロールとして、カスパーゼ阻害剤であるzIED-fmk(RDsystems社)20μM及びzVAD-fmk(RDsystems社)50μMを添加して、細胞障害性を調べた。その結果、fMLPによるネクロプトーシスの誘導は、Nec-1によって阻害されたが、zIED-fmk及びzVAD-fmkによっては、阻害されなかった(図7)。 [0084] 《実施例6》 本実施例では、SJS患者の培養上清(SJSsup)によるネクロプトーシスの誘導が、抗FPR1抗体によって抑制されるかを調べた。 実験例1と同様に調製したSJS患者由来の表皮細胞(SJS-K)に、SJS患者の培養上清(SJSsup)を5%添加した。それに、抗FPR1抗体を0μg/mL、0.3μg/mL、3.0μg/mL、又は30μg/mL添加して、細胞障害性をトリパンブルーの染色によって調べた。その結果、SJSsupによるネクロプトーシスの誘導は、抗FPR1抗体によって、容量依存的に阻害された(図8)。 [0085] 《実施例7》 本実施例では、本発明のスクリーニング用の細胞の例として、Hela細胞にFPR1遺伝子を導入した細胞の樹立を行った。 ヒトFPR1の全長のcDNAを合成し、pcDNA3.1/Zeoベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)のXhoIサイト及びKpnIサイトにクローニングし、pcDNA3.1/Zeo-FPR1プラスミドを得た。トランスフェクション試薬Fugene6(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、Hela細胞に、pcDNA3.1/Zeo-FPR1プラスミドをトランスフェクションし、Zeocin(Invitrogen)を用いて、ヒトFPR1が組込まれた細胞を選択した。 得られたFPR1導入Hela細胞(S-4)におけるFPR1の発現を蛍光抗体法で確認した写真を図9に示す。 [0086] 《実施例8》 本実施例では、FPR1導入Hela細胞に対するfMLPによるネクロプトーシスの誘導、及びfMLPによるネクロプトーシスの誘導のNec-1による抑制を検討した。 表皮細胞(SJS-K)をFPR1導入Hela細胞に変更したことを除いては、実施例4又は5の操作を繰り返した。 FPR1導入Hela細胞に対しても、fMLPによりネクロプトーシスが誘導され、そのネクロプトーシスは、Nec-1によって抑制された(図10)。 産業上の利用可能性 [0087] 本発明の医薬組成物は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患(例えば、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症)を予防又は治療することができる。また、本発明のスクリーニング方法は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシス関連疾患の治療用医薬組成物の有効成分をスクリーニングすることができる。本発明のネクロプトーシス誘導剤及びその有効成分のスクリーニング方法は、ホルミルペプチド受容体1誘導性ネクロプトーシスを原因とする疾患の研究に用いることができ、それらの疾患の治療薬の開発に役立てることができる。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。 |
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