WATER-BASED LUBRICANT
外国特許コード | F150008248 |
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掲載日 | 2015年3月27日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP063398 |
国際公開番号 | WO 2014189065 |
国際出願日 | 平成26年5月20日(2014.5.20) |
国際公開日 | 平成26年11月27日(2014.11.27) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
WATER-BASED LUBRICANT
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発明の概要(英語) | Provided is a water-based lubricant that is water-based in order to resolve the problem of flammability, and in which the need for additives such as surfactants can be minimized to reduce the cost associated with processing the waste liquid after use. A water-based lubricant in which graphene oxide, obtained by performing a separation process on graphite and separating the graphene oxide from the graphite, is dispersed in water. The separation process causes the separation by the graphite being mixed into an aqueous solution containing an oxidation agent, and caused to oxidize. The graphite is a fine powder having an average grain size of 100 μm or less and contains graphene oxide at a concentration of 0.1wt% or above. If the average grain size of the graphite is 50 μm or less, the graphene oxide is contained at a concentration of 0.01 wt% or above. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
水系潤滑剤
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発明の概要 | 可燃性の問題を解消するために水系とするとともに、界面活性剤等の各種の添加剤の使用をできるだけ不要とすることにより、使用後の廃液処理に関して発生するコストを低減可能な水系潤滑剤を提供する。 グラファイトに剥離処理を施してグラファイトから剥離させて成る酸化グラフェンを水に分散させた水系潤滑剤。剥離処理は、グラファイトを酸化剤入りの水溶液に混合してグラファイトを酸化させることによって剥離を生じさせているものである。グラファイトは平均粒径100μm以下の微粉末とし、酸化グラフェンを0.1wt%以上の濃度で含有するものとする。グラファイトの平均粒径が50μm以下の場合には、酸化グラフェンを0.01wt%以上の濃度で含有するものとする。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] グラファイトに剥離処理を施してグラファイトから剥離させて成る酸化グラフェンを水に分散させた水系潤滑剤であって、 前記剥離処理は、グラファイトを酸化剤入りの水溶液に混合してグラファイトを酸化させることによって剥離を生じさせる処理である水系潤滑剤。 [請求項2] 前記グラファイトは平均粒径100μm以下の微粉末としている請求項1に記載の水系潤滑剤。 [請求項3] 前記酸化グラフェンを0.1wt%以上の濃度で含有する請求項2に記載の水系潤滑剤。 [請求項4] 前記グラファイトは平均粒径50μm以下の微粉末として、前記酸化グラフェンを0.01wt%以上の濃度で含有する請求項2に記載の水系潤滑剤。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 水系潤滑剤 技術分野 [0001] 本発明は、酸化グラフェンを含有している水系潤滑剤に関する。 背景技術 [0002] 従来、潤滑剤としては、機械油や機械加工油などのように油系の材料が用いられている。さらに、潤滑性を向上させるために、接触面には親油性の高い素材による被膜を設けることが行われている。例えば、親油性の高い素材として黒鉛、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブなどの炭素原子含有の無機物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特に、これらの被膜は、接触面に形成された無数の凹部による表面テクスチャリングの内面に形成している。 [0003] 油系の潤滑剤は、極めて安価であって、広範に利用されている。しかし、油系の潤滑剤を例えば切削油として用いた場合には、ワークの脱脂処理が必要であって、この脱脂処理のための各種薬剤が必要であり、後処理において高コスト化しやすくなっていた。 [0004] また、油系の潤滑剤は可燃性の問題があることから、昨今では水と混合して使用する水溶性の潤滑剤も用いられている。しかし、水溶性の潤滑剤を用いた場合であっても、適宜の薬剤を利用した洗浄処理が必要であり、後処理が容易な水系の潤滑油が求められていた。 [0005] そこで、水系溶媒中にフラーレン等のナノカーボン材料を含有させた水系潤滑剤(例えば、特許文献2参照。)や、界面活性剤を含む水にフラーレンやカーボンナノチューブ等の超微粒子を分散させた加工用流体(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1 : 特開2012-197900号公報 特許文献2 : 特開2009-173814号公報 特許文献3 : 特開2004-331737号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] しかしながら、フラーレン等のカーボン材料を分散させた水系潤滑剤は、もともとフラーレン等のカーボン材料の水への分散性が低いことから、界面活性剤等の各種の添加剤が必要であって、可燃性の問題は解消されているものの廃液処理が容易ではなく、使用後の廃液処理に関してコストが嵩むという問題を有していた。 [0008] 一方、本発明者の一人は、水に高分散した酸化グラフェンを従来よりも安価に製造可能とする製造方法を発明した。そして、本発明者らは、この製造方法で作製した酸化グラフェンの用途の検討を行っていたところ、潤滑剤として利用可能であることを知見し、本発明を成すに至ったものである。 課題を解決するための手段 [0009] 本発明の水系潤滑剤は、グラファイトに剥離処理を施してグラファイトから剥離させて成る酸化グラフェンを水に分散させた水系潤滑剤であって、剥離処理は、グラファイトを酸化剤入りの水溶液に混合することでグラファイトを酸化させることによって剥離を生じさせているものである。 [0010] また、本発明の水系潤滑剤は、以下の点にも特徴を有するものである。 (1)グラファイトは平均粒径100μm以下の微粉末としていること。 (2)酸化グラフェンを0.1wt%以上の濃度で含有すること。 (3)グラファイトは平均粒径50μm以下の微粉末として、酸化グラフェンを0.01wt%以上の濃度で含有すること。 発明の効果 [0011] 本発明によれば、水に高分散する酸化グラフェンを用いた水系潤滑剤とすることで、余計な添加剤を使用しなくても潤滑剤としての機能させることができる。さらに、本発明の水系潤滑剤では、潤滑剤としての使用後の後処理において、酸化グラフェン自体が無害であることから、容易かつ低コストで廃棄処分することができる。 図面の簡単な説明 [0012] [図1] SP1と呼ばれるグラフェンから作成した酸化グラフェン(SP1GO)及びX100と呼ばれるグラフェンから作成した酸化グラフェン(X100GO)をシリコン酸化膜基板に滴下した状態の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。 [図2] (a)は、精製水のみと、SP1GO分散水と、X100GO分散水と、市販の水溶性潤滑剤との摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフであり、(b)は、SP1GO分散水においてSP1GOの濃度の違いによる摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフであり、(c)は、X100GO分散水においてX100GOの濃度の違いによる摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフである。 [図3] 摩擦試験機による6万回の摺動試験後における基板(SUS304)の摺動面を共焦点レーザー顕微鏡を用いて測定した断面曲線でのグラフあって、(a)は精製水のみの場合、(b)は1wt%のSP1GO分散水の場合である。 [図4] 精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像である。 [図5] 1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像である。 [図6] (a)は、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像であり(b)は、(a)の摺動面におけるエネルギー分散型X線分光分析(EDX)による炭素元素成分分布の測定結果である。 [図7] (a)は、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後における基板(SUS304)の摺動面のSEM像であり、(b)は、(a)の摺動面におけるエネルギー分散型X線分光分析(EDX)による炭素元素成分分布の測定結果である。 [図8] SUS304製のボールとSUS304製の基板を用いた摩擦試験機での精製水のみと、SP1GO分散水との6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフである。 [図9] 精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボール(SUS304)の摺動面のSEM像である。 [図10] 1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボール(SUS304)の摺動面のSEM像である。 [図11] SUJ2製のボールとSUS304製の基板を用いた摩擦試験機での精製水のみと、SP1GO分散水との6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフである。 [図12] 精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボール(SUJ2)の摺動面のSEM像である。 [図13] 1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボール(SUJ2)の摺動面のSEM像である。 [図14] SUS304製のボールとDLC基板製の基板及び単結晶ダイヤモンド製の基板を用いた摩擦試験機での精製水のみと、SP1GO分散水との往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示すグラフである。 [図15] 摩擦試験機による2.1万回の摺動試験後におけるボール(SUS304)の摺動面のSEM像であって、(a)は精製水のみの場合、(b)は1wt%のSP1GO分散水の場合である。 [図16] 摩擦試験機による2.1万回の摺動試験後における基板(単結晶ダイヤモンド基板)の摺動面のSEM像であって、(a)は精製水のみの場合、(b)は1wt%のSP1GO分散水の場合である。 発明を実施するための形態 [0013] 本発明の水系潤滑剤は、グラファイトに剥離処理を施してグラファイトから剥離させて成る酸化グラフェンを水に分散させた水系潤滑剤である。特に、剥離処理は、グラファイトを酸化剤入りの水溶液に混合してグラファイトを酸化させることによって剥離を生じさせているものである。 [0014] このように、グラファイトから剥離させて形成した酸化グラフェンを水に分散させて水系潤滑剤とすることにより、他の添加剤がなくても酸化グラフェンが分散状態を好適に維持して、潤滑剤として機能させることができる。 [0015] しかも、酸化グラフェン自体が無害であり、かつ、他の添加剤がなくても潤滑剤として機能することから、潤滑剤としての使用後の後処理において容易かつ低コストで廃棄処分することができる。なお、必要であれば、潤滑剤としての使用後の廃液に適当な酸を添加することで酸化グラフェンを分解でき、酸化グラフェン自体を消失させることもできる。 [0016] 剥離処理されるグラファイトは、平均粒径100μm以下の微粉末としていることが望ましく、好適には、平均粒径50μm以下の微粉末であることが望ましい。 [0017] グラファイトの平均粒径を100μm以下としておくことにより、酸化グラフェンの平均粒径も100μm以下となり、水系潤滑剤における酸化グラフェンの濃度を0.1wt%以上として潤滑剤として利用できる。 [0018] さらには、グラファイトの平均粒径を50μm以下としておくことにより、酸化グラフェンの平均粒径も50μm以下となり、水系潤滑剤における酸化グラフェンの濃度を0.01wt%以上として潤滑剤として利用できる。すなわち、より小径のサイズの酸化グラフェンを用いることで酸化グラフェンの濃度を低減できることとなり、酸化グラフェンの使用量を低減可能として、より安価な水系潤滑剤を提供可能とすることができる。 [0019] 以下において具体的な実施例を示しながら、本発明の水系潤滑剤を詳説する。 [0020] まず、本発明の水系潤滑剤の評価方法として摩擦試験機を用いた。本実施例で用いた摩擦試験機は、平板状の基板と、この基板上面に接触させて配置したボールと、このボールを基板上で往復摺動させる摺動機構とから構成されたものである。なお、摩擦試験機では、ボールは全く回転せずに基板上を往復摺動させることとしている。 [0021] 基板の材質はSUS304とし、研削仕上げを行って表面を滑らかとしている。ボールの材質は非常に硬い軸受用の超鋼(タンステンカーバイト)球であって、半径が1mmの球状となっている。ボールの摺動条件は、1サイクルの摺動距離を約2mm,1サイクルの摺動時間を約0.2秒とした。すなわち、摺動速度はおおよそ0.02m/sである。 [0022] 酸化グラフェンには、「SP1」と呼ばれるグラファイトを酸化させて作成した酸化グラフェンと、「X100」と呼ばれるグラファイトを酸化させて作成した酸化グラフェンを用いた。以下において、説明の便宜上、それぞれの酸化グラフェンを、単に「SP1GO」及び「X100GO」と呼ぶこととする。 [0023] グラファイトからの酸化グラフェンの作成は、特許第5098064号公報に記載されている製造方法を用いた。 [0024] すなわち、最初に原料となるグラファイトに対して電子レンジによるマイクロ波の照射を行い、次いでマイクロ波が照射されたグラファイトを、硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムで構成される酸化剤入りの水溶液に混合させることにより酸化させて、酸化グラフェンとしての剥離を生じさせて作成した。 [0025] この方法で酸化グラフェンを作成することにより、水への分散性が高い酸化グラフェンの水溶液を作成することができ、しかも安価な酸化グラフェン水溶液を提供可能とすることができる。 [0026] 従来の酸化グラフェンは、その製造に要する時間が長いことに起因した製造コストの上昇だけでなく、使用する薬品などの使用量が多いことに起因した製造コストの上昇によって高価な材料となっていた。したがって、酸化グラフェンは、潤滑剤の材料として用いることはコストが合わないと考えられていた。しかし、本発明の発明者の一人が、安価な製造方法として特許第5098064号公報に記載されている製造方法を発明することにより、潤滑剤の材料として実用可能なコストの酸化グラフェンが提供可能となった。 [0027] 図1に、SP1GO及びX100GOをシリコン酸化膜基板に滴下した状態の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。SP1GOは1枚のサイズが大きいものでは50μmを超えているが、X100GOは5μmぐらいサイズである。このサイズの違いは原材料のグラファイトの粉末の大きさに起因しており、所望のサイズが得られるように、グラファイトの粉末の大きさを調整しておくことが望ましい。特に、グラファイトは、平均粒径100μm以下の微粉末であることが望ましく、好適には、平均粒径50μm以下である。 [0028] SP1GO及びX100GOは、それぞれ所望の濃度に調整した分散水として以下の比較試験を行った。 [0029] 図2(a)に、精製水のみと、SP1GO分散水と、X100GO分散水と、市販の水溶性潤滑剤との比較試験として、上述した摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示す。ここで、SP1GO分散水及びX100GO分散水は、それぞれの濃度を1wt%とし、市販の水溶性潤滑剤は1%の水溶液とした。 [0030] 図2(a)のグラフから明らかなように、精製水の摩擦係数は0.4以上であり、水溶性潤滑剤の摩擦係数は0.1付近となっている。これに対して、SP1GO分散水及びX100GO分散水の摩擦係数はそれぞれ0.05付近であり、水溶性潤滑剤よりも低摩擦であって、極めて良好な潤滑特性となっていることがわかる。 [0031] 図2(b)に、SP1GO分散水においてSP1GOの濃度の違いによる比較試験として、摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示す。比較例として、精製水のみの場合も示している。 [0032] 図2(b)のグラフから明らかなように、1wt%のSP1GO分散水の摩擦係数が0.05で最も低く、0.1wt%のSP1GO分散水の摩擦係数は0.1付近となり、0.01wt%のSP1GO分散水の摩擦係数は最終的に0.3を超えていることがわかる。このように精製水だけのものと比べると、0.01wt%でも潤滑効果があることが確認できた。ただし、市販の水溶性潤滑剤と同程度の性能を要求するとなると、SP1GO分散水の濃度は0.1wt%以上であることが望ましい。 [0033] 図2(c)に、X100GO分散水においてX100GOの濃度の違いによる比較試験として、摩擦試験機による6万回の往復摺動を行った時の摩擦係数変化を示す。比較例として、精製水のみの場合も示している。 [0034] 図2(c)のグラフから明らかなように、1wt%のX100GO分散水の摩擦係数と0.1wt%のX100GO分散水の摩擦係数はほぼ同等で、当初0.05程度であって最終的に0.1程度となり、0.01wt%のX100GO分散水の摩擦係数は、当初0.15程度であって最終的に0.1程度となり、0.001wt%のX100GO分散水の摩擦係数は、精製水のみの場合とほとんど同等であることが分かる。このように、X100GO分散水では、0.01wt%以上の濃度で摩擦低減効果があるとわかる。 [0035] なお、X100GO分散水の方がSP1GO分散水よりも低濃度で効果を有しているのは、図1から明らかなようX100GOの方がSP1GOよりも平均粒径が小さいことに起因していると考えられる。すなわち、できるだけ粒径の小さい酸化グラフェンを用いることにより、より低濃度の酸化グラフェン分散水とすることができ、さらなる低コスト化を図ることができる。 [0036] 図3に、摩擦試験機による6万回の摺動試験後における基板(SUS304)の摺動面を共焦点レーザー顕微鏡を用いて測定した断面曲線を示す。図3(a)は精製水のみの場合であり、図3(b)は1wt%のSP1GO分散水の場合である。 [0037] 図3(a)のグラフから明らかなように、精製水のみの場合では段差が約5μm認められる。すなわち摩耗が生じていることがわかる。一方、図3(b)のグラフから明らかなように、SP1GO分散水では全く段差が認められず、ほとんど摩耗が生じていないことがわかる。 [0038] 図4に、精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。図4(a)中の矢印線は摺動方向を示している。図4(b)は図4(a)の一部分の拡大SEM像である。ボールは、摺動試験後に超音波洗浄器を用いてアセトン中で洗浄している。 [0039] 図4(a)中の破線○印部分はボールの摺動面であって、大きさおよそ300μmで平坦になっており、摩耗されているのがわかる。幾何学的に計算すると摩耗深さは約5μmとなる。ボールはタングステンカーバイトの微粒子を焼結して合成したものであるが、図4(b)の拡大図から、その微粒子が欠落して欠陥となっていることがわかる。 [0040] 図5に、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。図5(a)中の矢印線は摺動方向を示している。図5(b)は図5(a)の一部分の拡大SEM像である。ボールは、摺動試験後に超音波洗浄器を用いてアセトン中で洗浄している。 [0041] 図5(a)及び図5(b)から明らかなように、1wt%のSP1GO分散水の場合ではボールに摺動による摩耗は見られなかった。特に、図5(b)から明らかなように、摺動前と変わらないタングステンカーバイトの微粒子が緻密に焼結されたままの状態となっていることがわかる。 [0042] なお、図5(a)で確認できるように、摺動方向に沿って暗い筋のような模様が結像されているのがわかる。さらに、図5(b)で確認できるように、タングステンカーバイトの微粒子間の隙間が、この暗く結像されている所にも明瞭に観察され、あたかも透過性薄膜が表面に吸着しているように見える。 [0043] 一般に、数層の酸化グラフェンが他の物質表面に吸着したものをSEMで観察すると、電子線は酸化グラフェンを通り抜けてその下側が結像される。しかし、その場合において強度は弱まり、結果的に酸化グラフェンが存在する部分は暗く結像されてしまうことから、この暗い筋のように結像されている部分は,酸化グラファイトがボールの表面に吸着しているものと思われる。これを明らかにするために、以下のように表面の元素成分を調べた。 [0044] 図6(a)は、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像であり、図6(b)は図6(a)の摺動面におけるエネルギー分散型X線分光分析(EDX)による炭素元素成分分布の測定結果を示している。図6(a)及び図6(b)では上下方向を摺動方向としている。 [0045] 図6(b)から、図6(a)において暗く示されている所に、炭素成分が多く含まれていることがわかる。 [0046] 図7(a)は、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後における基板(SUS304)の摺動面のSEM像であり、図7(b)は図7(a)の摺動面におけるエネルギー分散型X線分光分析(EDX)による炭素元素成分分布の測定結果を示している。図7(a)及び図7(b)では上下方向を摺動方向としている。 [0047] 図7(b)からも、図7(a)において暗く示されている所に、炭素成分が多く含まれていることがわかる。 [0048] したがって、摺動面には酸化グラファイトが1層ないし数層吸着していると思われ、さらにアセトンを用いた超音波洗浄を行っても剥がれていないことから、ある程度強固に吸着しているものと思われる。 [0049] これらの結果から、酸化グラフェン分散水は、SUS304-タンステンカーバイトという実用上の材料表面で摩擦係数を下げるだけでなく摩耗も見られないことから、既知の潤滑油に匹敵あるいは上回るような潤滑性能を示すことが確認できた。 [0050] これは摺動面に酸化グラファイトが1層ないし数層で吸着し、摺動面での基板‐ボール材料の直接接触を防ぎ、摩擦・摩耗を下げたために実現されたと思われる。 [0051] 上述してきた実施例では、本発明の水系潤滑剤は、水と酸化グラフェンのみで構成しているが、製品化に当たっては、適宜の防腐剤やpH調整液等を添加してもよい。 [0052] 他の実施例として、ボールの材質をSUS304とした場合の摩擦試験機による試験結果を図8に示す。ここで、基板の材質はSUS304とし、研削仕上げを行って表面を滑らかとしている。ボールは、半径が1mmであって、ボールの摺動条件は、1サイクルの摺動距離を約2mm、摺動周期を500rmpとした。基板に作用する荷重は、1.8Nであった。 [0053] 図8では、精製水のみ(白丸のグラフ)と、SP1GO分散水(黒丸のグラフ)との比較を行っており、精製水の摩擦係数は0.5以上であり、SP1GO分散水の摩擦係数は0.2であった。なお、P1GO分散水の濃度は1wt%とした。 [0054] 図9に、精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。また、図10に、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。 [0055] また、他の実施例として、ボールの材質をSUJ2とした場合の摩擦試験機による試験結果を図11に示す。ここで、基板の材質はSUS304とし、研削仕上げを行って表面を滑らかとしている。ボールは、半径が1mmであって、ボールの摺動条件は、1サイクルの摺動距離を約2mm、摺動周期を500rmpとした。基板に作用する荷重は、1.8Nであった。 [0056] 図11では、精製水のみ(白丸のグラフ)と、SP1GO分散水(黒丸のグラフ)との比較を行っており、精製水の摩擦係数は0.4以上であり、SP1GO分散水の摩擦係数は0.1であった。なお、P1GO分散水の濃度は1wt%とした。 [0057] 図12に、精製水のみの場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。また、図13に、1wt%のSP1GO分散水の場合で、摩擦試験機による6万回の摺動試験後におけるボールの摺動面のSEM像を示している。 [0058] また、他の実施例として、基板の材質を、ダイヤモンドライクカーボン(以下において、「DLC」と呼ぶ)としたDLC基板、及び単結晶ダイヤモンドとした単結晶ダイヤモンド基板での摩擦試験機による試験結果を図14に示す。ここで、ボールの材質はSUS304とし、ボールの半径は1mmであって、ボールの摺動条件は、1サイクルの摺動距離を約2mm、摺動周期を500rmpとした。基板に作用する荷重は、11.1Nであった。 [0059] 図14において、四角の点(■)は、DLC基板-SUS304ボール-精製水のみの場合を示しており、菱形の点(◆)は、DLC基板-SUS304ボール-1wt%のSP1GO分散水の場合を示しており、SP1GO分散水によって摩擦係数が低減できることが確認できた。 [0060] また、図14において、×の点は、単結晶ダイヤモンド基板-SUS304ボール-精製水のみの場合を示しており、三角の点(▲)は、単結晶ダイヤモンド基板-SUS304ボール-1wt%のSP1GO分散水の場合を示しており、単結晶ダイヤモンド基板では、摩擦係数に差は見られなかった。 [0061] しかしながら、ボール側及び基板側の摺動面の摩耗状態は、図15及び図16に示すように大きく異なり、1wt%のSP1GO分散水の場合において摩耗を大きく低減できることが分かる。 [0062] すなわち、摩擦試験機による2.1万回の摺動試験後におけるボールの摺動面は、図15(a)に示すように、精製水のみの場合では大きな摩擦痕が生じているのに対して、図15(b)に示すように、1wt%のSP1GO分散水とした場合には摩擦痕がほとんど生じていない。 [0063] 一方、基板の摺動面は、図16(a)に示す精製水のみの場合の摩擦痕と比較して、図16(b)に示す1wt%のSP1GO分散水とした場合の摩擦痕の大きさを、半分以下とすることができる。 [0064] このように、酸化グラフェンを分散させた水系潤滑剤が、潤滑剤として優れた特性を有していることが分かる。 産業上の利用可能性 [0065] 水の沸点を超えない低温下において使用できる高性能な潤滑剤であり、特に後処理及び廃棄処理に要するコスト低減が可能であり、切削加工等の金属加工における潤滑剤として利用できる。 |
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