COMPUTER SIMULATION SYSTEM
外国特許コード | F150008280 |
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掲載日 | 2015年4月3日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP064452 |
国際公開番号 | WO 2014192927 |
国際出願日 | 平成26年5月30日(2014.5.30) |
国際公開日 | 平成26年12月4日(2014.12.4) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | COMPUTER SIMULATION SYSTEM |
発明の概要(英語) | A computer simulation system provided with a biological model in which a function of an organism is expressed by a mathematical model, the computer simulation system for performing a computation using the biological model, wherein the biological model used as the biological model is provided with: an activation strength computation unit (3-3) for computing information indicating the activation strength of an activated GPR120 on the basis of information indicating the activity of the activated GPR120, which is activated in response to the type of a lipid ingested by the organism by bonding of the lipid thereto; and a consumed energy computation unit (1-7) for computing, on the basis of the activation strength information, an amount of consumed energy which leaves an adipose tissue of the organism and is consumed from among energy stored in the adipose tissue. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
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発明の名称 | コンピュータシミュレーションシステム |
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発明の概要 | 生体の機能が数理モデルによって表現された生体モデルを備え、当該生体モデルを用いた演算を行なうコンピュータシミュレーションシステムにおいて、生体モデルとして、生体に摂取された脂質が結合することによって当該脂質の種類に応じて活性化される活性化GPR120の活性を示す情報に基づき、当該活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算部3-3と、活性化強度の情報に基づき、前記生体の脂肪組織に蓄えられたエネルギーのうち当該脂肪組織から出て行き消費される消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算部1-7と、を備えた生体モデルを用いる。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] コンピュータシミュレーションシステムであって、 生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルに基づいて、生体の機能をシミュレーションする処理部を備え、 前記処理部は、 前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算と、 前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算と、 を実行するように構成されているコンピュータシミュレーションシステム。 [請求項2] 前記脂質の種類を示す情報は、前記脂質に対するGPR120の親和性を示す情報を含む、 請求項1記載のコンピュータシミュレーションシステム。 [請求項3] 前記処理部は、 前記生体の年令情報に基づき、除脂肪質量情報を演算する除脂肪質量演算を更に実行するように構成され 前記消費エネルギーは、前記活性化強度を示す前記情報及び前記除脂肪質量情報に基づき、演算される、 請求項1又は2記載のコンピュータシミュレーションシステム。 [請求項4] 前記処理部は、 前記除脂肪質量情報、脂肪組織に蓄積された脂肪質量情報及び異所性脂肪質量情報に基づき、前記生体の体重情報を演算する体重演算を更に実行するように構成され、 前記消費エネルギーは、前記活性化強度を示す前記情報、前記除脂肪質量情報及び前記体重情報に基づき、演算される、 請求項3記載のコンピュータシミュレーションシステム。 [請求項5] コンピュータを、生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルに基づいて、生体の機能をシミュレーションする処理部として機能させるコンピュータプログラムであって、 前記処理部は、 前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算と、 前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算と、を実行するように構成されている、 コンピュータプログラム。 [請求項6] 生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルのコンピュータシミュレーション方法であって、 前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算し、 前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する、 ことを含むコンピュータシミュレーション方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : コンピュータシミュレーションシステム 技術分野 [0001] 本発明は、コンピュータシミュレーションシステムに関する。さらに詳しくは、本発明は、生体内での脂肪酸が関連する代謝のシミュレーションに好適なコンピュータシミュレーションシステム、プログラム及びコンピュータシミュレーション方法に関する。 本発明のコンピュータシミュレーションシステム及びプログラムは、GPR120の作用を考慮して、生体内での脂肪酸が関連する代謝をシミュレートすることができることから、個体レベルでの体重制御の予測、肥満症、糖尿病その他のGPR120が関連する疾患に対する食品に含まれる成分の効果の評価、前記疾患に対する薬物の作用の評価、前記疾患の治療剤の候補物質のスクリーニング、GPR120に対する物質の作用の評価等に好適に使用されることが期待されるものである。 背景技術 [0002] ヒトなどの生物は、生命活動を維持するのに必要な量よりも多いエネルギーを摂取した場合には余剰エネルギーを脂肪として細胞内に蓄積し、生物がエネルギー不足の状態となった場合には蓄積された脂肪を分解し、エネルギー源として利用することにより、エネルギーの恒常性を維持している。しかし、過度な食事により、過度に脂肪が蓄積された場合、例えば、肥満症、高脂血症、糖尿病等の内分泌代謝疾患が引き起こされることがある。 [0003] 一方、生体において、重要なエネルギー源として利用される脂肪酸の受容体として、GPR120が同定されている。また、このGPR120が欠損した動物は、高脂肪食を摂取した場合、肥満症、脂肪細胞分化の減少を伴なう脂肪肝等を発症する傾向があることが見出されている(例えば、非特許文献1等参照)。 先行技術文献 非特許文献 [0004] 非特許文献1 : 市村敦彦ら、「脂質センサーGPR120の機能障害は、マウス及びヒト双方において、肥満症を引き起こす(Dysfunction of lipid sensor GPR120 leads to obesity in both mouse and human)」、2012年2月19日オンライン公開、ネイチャー(Nature)、第483巻、pp.350-354 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0005] しかし、動物を用いた場合には操作が複雑であり、GPR120の作用の解析に時間を要することから、動物を用いずに、GPR120の作用を考慮して、生体内での脂肪酸が関与する代謝をシミュレートすることが求められている。 [0006] 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、GPR120の作用を考慮して、生体内での脂肪酸が関与する代謝をシミュレートすることができるコンピュータシミュレーションシステム及びプログラムを提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0007] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムは、生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルに基づいて、生体の機能をシミュレーションする処理部を備え、前記処理部は、前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算と、前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算と、を実行するように構成されていることを特徴とする。 [0008] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムは、前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算と、前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算と、を実行するように構成されている処理部を備えているので、生体の機能のシミュレーションに際し、生体が摂取した脂質の量と脂質の種類の違いに基づく活性化GPR120の活性化強度と、消費エネルギー量との相関性に基づいて、生体内での脂肪酸が関与する代謝におけるGPR120の作用の影響をより適切に演算することができる。 したがって、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムによれば、動物を用いずに、GPR120の作用を考慮して、生体内での脂肪酸が関与する代謝をシミュレートすることができる。 [0009] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムにおいて、前記脂質の種類を示す情報は、前記脂質に対するGPR120の親和性を示す情報を含むことが好ましい。 かかる構成を備えた本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムによれば、摂取された食事中に含まれる脂質の種類及び量に応じたGPR120の活性の違いを生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションにより適切に反映させることができるので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより適切に再現することができる。 [0010] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムにおいて、前記処理部は、前記生体の年令情報に基づき、除脂肪質量情報を演算する除脂肪質量演算を更に実行するように構成されており、前記消費エネルギーは、前記活性化強度を示す前記情報及び前記除脂肪質量情報に基づき、演算されることが好ましい。 かかる構成を備えた本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムによれば、加齢に伴なう除脂肪質量の変動を生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションにより適切に反映させることができるので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより一層適切に再現することができる。 [0011] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムにおいて、前記処理部は、前記除脂肪質量情報、脂肪組織に蓄積された脂肪質量情報及び異所性脂肪質量情報に基づき、前記生体の体重情報を演算する体重演算を更に実行するように構成されており、前記消費エネルギーは、前記活性化強度を示す前記情報、前記除脂肪質量情報及び前記体重情報に基づき、演算されることが好ましい。 かかる構成を備えた本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムによれば、加齢に伴なう除脂肪質量の変動と前記除脂肪質量の変動に応じたエネルギー消費量の変動とを生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションにより適切に反映させることができるので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をさらに適切に再現することができる。 [0012] 本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルに基づいて、生体の機能をシミュレーションする処理部として機能させるコンピュータプログラムであって、前記処理部は、前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算と、前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算と、を実行するように構成されていることを特徴とする。 したがって、本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、前述のコンピュータシミュレーションシステムと同様の作用効果を奏する。 [0013] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーション方法は、生体の機能を表現する数理モデルである生体モデルのコンピュータシミュレーション方法であって、前記生体に摂取される脂質の量を示す情報及び前記脂質の種類を示す情報に基づいて、活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算し、前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織から出て行く消費エネルギー量を演算する、ことを含むことを特徴とする。 したがって、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーション方法は、前述のコンピュータシミュレーションシステムと同様の作用効果を奏する。 発明の効果 [0014] 本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステム及びプログラムによれば、GPR120の作用を考慮して、生体内における脂肪酸が関与する代謝をシミュレートすることができるという優れた効果が奏される。 図面の簡単な説明 [0015] [図1] 本発明の一実施形態に係るシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。 [図2] 本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例の全体構成を示す概略説明図である。 [図3] 本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における個体ブロックの構成を示すブロック線図である。 [図4] 本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における細胞ブロックの構成を示すブロック線図である。 [図5] 本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における受容体ブロックの構成を示すブロック線図である。 [図6] (A)は実施例1において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフ、(B)は実施例1において、生体を用いて年令と体重との関係を調べた結果を示すグラフである。 [図7] (A)は実施例2において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と脂肪細胞径との関係をシミュレートした結果を示すグラフ、(B)は実施例2において、生体を用いて年令と脂肪細胞径との関係を調べた結果を示すグラフ、(C)は脂肪組織中の脂肪細胞を観察した結果を示す図面代用写真である。 [図8] (A)は実施例3において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と余剰脂肪量との関係をシミュレートした結果を示すグラフ、(B)は実施例3において、生体を用いて年令と肝臓中の余剰脂肪であるトリグリセリドの量との関係を調べた結果を示すグラフ、(C)は肝臓組織における脂肪を染色して観察した結果を示す図面代用写真である。 [図9] 実施例4において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、各リノレン酸含有量の食事を与えたときの年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフである。 [図10] (A)実施例5において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフ、(B)実施例5において、生体を用い、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフである。 [図11] (A)実施例6において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、トランス脂肪酸過剰食を摂取した場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフ、(B)実施例6において、生体を用い、トランス脂肪酸過剰食を摂取した場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を示すグラフである。 [図12] 図12(A)は実施例7において、野生型マウスに与えた通常食を含む食事の種類と体重変化量との関係を調べた結果を示すグラフ、図12(B)は野生型マウス又はGPR120ノックアウトマウスに与えた高脂肪食を含む食事の種類と体重変化量との関係を調べた結果を示すグラフである。 [図13] 実施例7において、給餌後6時間経過時の安静状態の野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスそれぞれのエネルギー消費量を調べた結果を示すグラフである。 [図14] 実施例8において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、食餌パターンとエネルギー消費量の推移との関係をシミュレートした結果を示すグラフである。 発明を実施するための形態 [0016] 以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステム(以下、「システム」ともいう)、プログラム及びコンピュータシミュレーション方法を詳細に説明する。 [0017] [ハードウェア構成] まず、本発明の一実施形態に係るシステムのハードウェア構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示されるシステム10は、本体20と入力装置30と出力装置40とを備えたコンピュータ10aによって構成されている。 本体20は、主に、処理部21と、メモリ22とから構成されている。処理部21は、メモリ22に記憶されているオペレーションシステム等の制御プログラム、後述の生体モデルとしての数理モデルにおける処理手順等を規定したアプリケーションプログラム等のプログラムを実行することができる。この処理部21によってアプリケーションプログラムが実行されると、後述の各ブロックが実現される。 メモリ22には、オペレーションシステム等の制御プログラム、アプリケーションプログラム、後述の生体モデルとしての数理モデルにおける処理手順等を規定したアプリケーションプログラム、前記数理モデルに用いられる各パラメータの情報等が記憶されている。また、メモリ22には、前記パラメータに対応する実測値等の情報が記憶されうる。したがって、前記パラメータに対応する実測値等の情報が入力装置30から入力された場合、処理部21を介してメモリ22に当該情報が記憶される一方、処理部21によってメモリ22に記憶されたアプリケーションプログラムが実行された場合、必要に応じてメモリ22に記憶された前記パラメータに対応する実測値等の情報が読み出される。これにより、コンピュータ10aがシステム10として機能する。 本体20における処理部21とメモリ22との間は、データ通信可能に接続されている。 入力装置30は、キーボード、マウス等から構成されている。なお、入力装置30は、各種データを取得する装置のデータを直接入力するためのものであってもよい。本体20の処理部21と入力装置30との間は、データ通信可能に接続されている。 出力装置40は、ディスプレイ等から構成される。本体20の処理部21と出力装置40との間は、データ通信可能に接続されている。 [0018] [生体モデルの全体構成] つぎに、生体モデルの全体構成を説明する。本発明の一実施形態に係るシステムでは、コンピュータに、かかる生体モデルに基づくシミュレーションを実行させる。図2は、本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例の全体構成を示す概略説明図である。 生体モデルは、図2に示されるように、主に、個体ブロック1と、細胞ブロック2と、受容体ブロック3とから構成されている。 個体ブロック1、細胞ブロック2及び受容体ブロック3それぞれへの入力装置30を用いた入力は、一旦メモリ22に入れられる。個体ブロック1、細胞ブロック2及び受容体ブロック3それぞれからの出力は、メモリ22に記憶される。また、メモリ22に記憶された情報は、読み出され、個体ブロック1、細胞ブロック2及び受容体ブロック3それぞれを実行するのに用いられる。 [0019] 個体ブロック1は、主に、脳ブロックBと脂肪組織ブロックCと筋肉ブロックMとから構成されている。当該個体ブロック1は、メモリ22から読み出した脂肪組織貯蔵可能エネルギー量の情報(図中、5参照)及びEadpoutに対するGPR120の影響の情報(図中、7参照)を入力とし、脂肪質量の情報(図中、6参照)及び1日あたりの摂食量(食事量)の情報(図中、8参照)を出力とし、前記脂肪質量の情報及び前記1日あたりの摂食量(食事量)の情報をメモリ22に入れる。 個体ブロック1において、脳ブロックBは、メモリ22から読み出した脂肪組織ブロックCにおける脂肪細胞の量を反映する血中レプチン濃度の情報(図中、1a参照)を入力とし、脳内レプチン濃度の情報(図中、1b参照)を出力とし、メモリ22に入れる。脳内レプチン濃度は、食事の摂取量に反映される(図中、1c1)とともに、蓄積又は消費されるエネルギーの量に反映される(図中、1c2及び1c3参照)。ここで、1c1、1c2及び1c3は、いずれも脳内レプチン濃度の情報1bと同じであるが、作用するブロック等に応じて便宜上分類して表記されている。 脂肪組織ブロックCは、メモリ22から読み出した脳内レプチン濃度の情報1c2を入力とし、当該脂肪組織ブロックCから出て行くエネルギーの量の情報1dを出力とし、メモリ22に入れる。 筋肉ブロックMは、メモリ22から読み出した脳内レプチン濃度の情報1c2及び脂肪組織ブロックCから出て行くエネルギーの量の情報1dを入力とする。脳内レプチン濃度及び脂肪組織ブロックCから出て行くエネルギーの量は、筋肉ブロックMで消費されるエネルギーの量に反映される。 [0020] 細胞ブロック2は、メモリ22から読み出した脂肪質量の情報(図中、6参照)を入力とし、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量の情報(図中、5参照)を出力とし、メモリ22に入れる。 また、細胞ブロック2では、パラメータとして、例えば、細胞径の分布のヒストグラムを示す情報等が用いられる。かかる細胞としては、前駆脂肪細胞P、当該前駆脂肪細胞Pが分化し、成熟した脂肪細胞C1、及び当該脂肪細胞C1が肥大した肥大化脂肪細胞C2が挙げられる。脂肪細胞C1及び肥大化脂肪細胞C2は、GPR120(図中、R又はR*参照)を有している。 [0021] 受容体ブロック3は、メモリ22から読み出した1日あたりの摂食量(食事量)(図中、8参照)を入力とし、Eadpoutに対するGPR120の影響の情報(図中、7参照)を出力とし、メモリ22に入れる。 また、受容体ブロック3では、入力として、例えば、休止状態の受容体(GPR120)Rと脂肪酸Anとの親和性を示す情報、活性化状態の受容体(活性化GPR120)R*と脂肪酸Anとの親和性を示す情報、脂肪酸Anの濃度の情報等に代表される情報(GPR120に特有の性質に関する情報及び食事に含まれる脂肪酸の種類及び量に応じた情報)が用いられる。このように、本実施形態に係るシステムでは、生体モデルのパラメータとして、GPR120に特有の性質に関する情報及び食事に含まれる脂肪酸の種類及び量に応じた情報が用いられているので、生体内での脂肪酸が関与する代謝におけるGPR120の作用の影響並びに食事に含まれる脂肪酸の種類及び量の影響をより適切に演算することができる。 [0022] [個体ブロックの構成] つぎに、個体ブロック1の構成を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における個体ブロックの構成を示すブロック線図である。個体ブロック1の入出力の関係は、下記式(1-1)~(1-17)を用いて表すことができる。また、当該個体ブロック1の入出力の関係は、図3に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。なお、入力装置30を用いた個体ブロック1における各計算部への入力は、一旦メモリ22に入れられる。個体ブロック1における各計算部の出力は、メモリ22に記憶される。また、メモリ22に記憶された情報は、メモリ22から読み出され、個体ブロック1における各計算部での入力として用いられる。 [0023] 図3において、1-1は、体重計算部(体重演算部)を示す。体重計算部1-1は、メモリ22から読み出した除脂肪質量の情報(図中、「FFM」)、脂肪質量の情報(図中、「AFM」)及び異所性脂肪質量の情報(図中、「EFM」)を入力とし、体重の情報(図中、「BM」)を出力とし、メモリ22に入れる。1-2は、全血液量計算部である。全血液量計算部1-2は、メモリ22から読み出した個体の体重の情報(図中、「BM」)を入力とし、全血液量(図中、「BloodVolume」)の情報を出力とし、メモリ22に入れる。 [0024] 1-3は、血中レプチン濃度計算部である。血中レプチン濃度計算部1-3は、メモリ22から読み出した脂肪組織質量の情報(図中、「AFM」)及び全血液量の情報(図中、「BloodVolume」)を入力とし、血中レプチン濃度の情報(図中、「LEPplasma」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0025] 1-4は、脳内レプチン濃度計算部である。脳内レプチン濃度計算部1-4は、メモリ22から読み出した血中レプチン濃度の情報(図中、「LepPlasma」)及び式(1-5)で求められるレプチン依存の変数の情報(図中、「k2」)を入力とし、脳内レプチン濃度の情報(図中、「LepBrain」)を出力する。 [0026] 1-5は、メモリ22から読み出した血中レプチン濃度の情報(図中、「LepPlasma」)を入力とし、レプチン依存の変数(図中、「k2」)の情報を出力とし、メモリ22に入れる。 [0027] 1-6は、摂食量計算部である。摂食量計算部1-6は、メモリ22から読み出した脳内レプチン濃度の情報(図中、「LepBrain」)を入力とし、1日あたりの食事量(摂食量)の情報(図中、「FoodIntake」)を出力とし、メモリ22に入れる。この摂食量の情報は、個体ブロック1から受容体ブロック3にも出力される(図2中、8参照)。 [0028] 図3に戻り、1-7は、消費エネルギー演算部としての脂肪組織依存性消費エネルギー量計算部である。脂肪組織依存性消費エネルギー量計算部1-7は、メモリ22から読み出した式(1-11)で求められる係数(加齢に伴なうEadpOUTの減少の仮定を反映する係数)の情報(図中、「k6」)、個体の体重(図中、「BM」)、式(1-8)で求められる係数の情報(EadpOutを求める式におけるミカエリス-メンテン定数)(図中、「k8」)、脳内レプチン濃度の情報(図中、「LepBrain」)及び受容体ブロック3から出力される「Eadpoutに対するGPR120の効果」を示す情報(図中、「GPR120out」)の情報をメモリ22から読み出し、当該「Eadpoutに対するGPR120の効果」を示す情報を入力とし、1日あたりに脂肪組織から出て行くエネルギーの量(脂肪組織依存性消費エネルギー量)を示す情報(図中、「EadpOut」)を出力とし、メモリ22に入れる。ここで、個体の体重の情報(図中、「BM」)には、生体の加齢の影響が加味された除脂肪質量が反映されている。また、脳内レプチン濃度の情報(図中、「LepBrain」)にも、体の加齢の影響が加味された除脂肪質量が反映されている。このように、本実施形態に係るシステムでは、生体モデルのパラメータに加齢の影響が加味されているので、生体内での脂肪酸が関与する代謝を、より生体における加齢の影響を反映させてシミュレートすることができる。 [0029] 1-8は、係数k8計算部である。係数k8計算部1-8は、メモリ22から読み出した脳内レプチン濃度の情報(図中、「LepBrain」)を入力とし、係数k8の情報(図中、「k8」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0030] 1-9は、脂肪組織取込エネルギー量計算部である。脂肪組織取込エネルギー量計算部1-9は、メモリ22から読み出した除脂肪質量の情報(図中、「FFM」)及び1日あたりの食事量(摂食量)の情報(図中、「FoodIntake」)を入力とし、1日あたりに脂肪組織に取り込まれるエネルギーの量(脂肪組織取込エネルギー量)の情報(図中、「EadpIn」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0031] 1-10は、除脂肪質量計算部(除脂肪質量演算部)である。除脂肪質量計算部1-10は、メモリ22から読み出した年令の情報(図中、「Age」)を入力とし、除脂肪質量の情報(図中、「FFM」)を出力とし、メモリ22に入れる。前記除脂肪質量の情報(図中、「FFM」)は、生体の加齢が反映された情報である。このように、本実施形態に係るシステムでは、生体モデルのパラメータに加齢による除脂肪質量の変化の影響が加味されているので、生体内の代謝をより生体における加齢の影響を反映させてシミュレートすることができる。 [0032] 1-11は、係数k6計算部である。係数k6計算部1-11は、メモリ22から読み出した年令の情報(図中、「Age」)を入力とし、係数k6の情報(図中、「k6」)を出力とし、メモリ22に入れる。このように、本実施形態に係るシステムでは、生体モデルのパラメータに加齢の影響が加味されているので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより生体における加齢の影響を反映させてシミュレートすることができる。 [0033] 1-12は、脂肪組織蓄積エネルギー量計算部である。脂肪組織蓄積エネルギー量計算部1-12は、メモリ22から読み出した1日あたりに脂肪組織に取り込まれるエネルギー量(脂肪組織取込エネルギー量)の情報(図中、「EadpIn」)、1日あたりに異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギー量(異所性脂肪移動エネルギー量)(図中、「Etransition」)の情報及び1日あたりに脂肪組織から出て行くエネルギーの量(脂肪組織依存性消費エネルギー量)の情報(図中、「EadpOut」)を入力とし、脂肪組織に蓄積されたエネルギーの量(脂肪組織蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eadp」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0034] 1-13は、異所性脂肪移動エネルギー量計算部である。異所性脂肪移動エネルギー量計算部1-13は、メモリ22から読み出した異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(異所性脂肪蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eect」)を入力とし、1日あたりに異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギー量(異所性脂肪移動エネルギー量)の情報(図中、「Etransition」)を出力する。 [0035] 1-14は、異所性脂肪移動エネルギー量計算部である。異所性脂肪移動エネルギー量計算部1-14は、メモリ22から読み出した1日あたりに異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギー量(異所性脂肪移動エネルギー量)の情報(図中、「Etransition」)を入力とし、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(異所性脂肪蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eect」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0036] 1-15は、余剰エネルギー計算部である。余剰エネルギー計算部1-15は、メモリ22から読み出した脂肪組織貯蔵可能エネルギー量の情報(式中、「Ecap」)、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(異所性脂肪蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eect」)及び脂肪組織に蓄積されたエネルギーの量(脂肪組織蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eadp」)を入力とする。そして、1-15は、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(式中、「Ecap」)が脂肪組織蓄積エネルギー量(図中、「Eadp」)よりも大きい場合、入力された脂肪組織蓄積エネルギー量(図中、「Eadp」)に、余剰エネルギー量〔すなわち、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(式中、「Ecap」)から脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(式中、「Ecap」)を差し引いた量〕を加えた値を異所性脂肪蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eect」)として出力するとともに、入力された脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(式中、「Ecap」)の情報を脂肪組織蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eadp」)として出力する。一方、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(式中、「Ecap」)が脂肪組織蓄積エネルギー量(図中、「Eadp」)以下である場合、入力された異所性脂肪蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eect」)を異所性脂肪蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eect」)として出力するとともに、入力された脂肪組織蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eadp」)を脂肪組織蓄積エネルギー量の情報(図中、「Eadp」)として出力する。 [0037] 1-16は、異所性脂肪質量計算部である。異所性脂肪質量計算部1-16は、メモリ22から読み出した異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(異所性脂肪蓄積エネルギー量)の情報(図中、「Eect」)を入力とし、異所性脂肪質量の情報(図中、「EFM」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0038] 1-17は、脂肪質量計算部である。脂肪質量計算部1-17は、メモリ22から読み出した「脂肪組織に蓄積されたエネルギー量(脂肪組織蓄積エネルギー量)」の情報(図中、Eadp)を入力とし、脂肪質量の情報(図中、「AFM」)を出力とし、メモリ22に入れる。この脂肪質量は、個体ブロック1から細胞ブロック2に出力される(図2中、6参照)。 [0039] なお、図3において、Eq.(1-11)~Eq.(1-17)は、それぞれ式(1-1)~(1-17)に対応する。 [0040] 式(1-1): [0041] [数1] [0042] (式中、 「BM」は、個体の体重(g)、 「FFM」は、除脂肪質量(g)、 「AFM」は、脂肪質量(g)、 「EFM」は、異所性脂肪質量(g)を示す。)。 [0043] 式(1-2): [0044] [数2] [0045] (式中、 「BloodVolume」は、全血液量(mL)、 「BM」は、個体の体重(g)を示す。)。 [0046] 式(1-3): [0047] [数3] [0048] (式中、 「LepPlasma」は、血中レプチン濃度(ng/mL)、 「BloodVolume」は、全血液量(mL)、 「t」は、時間(day)、 「AFM」は、脂肪組織質量、 「Rsyn」は、レプチン合成速度(ng/g/day)、 「GFR」は、糸球体フィルタリング率、 「RenClearance」は、腎臓によってレプチンが除去される割合を示す。)。 [0049] 式(1-4): [0050] [数4] [0051] (式中、 「LepBrain」は、脳内レプチン濃度(ng/mL)、 「LepPlasma」は、血中レプチン濃度(ng/mL)、 「k1」は、定数、 「k2」は、式(1-5)で求められるレプチン依存の変数、 「k3」は、定数を示す。)。 [0052] 式(1-5): [0053] [数5] [0054] 式(1-6): [0055] [数6] [0056] (式中、 「FoodIntake」は、1日あたりの摂食量(食事量)(g/day)、 「k4」は、摂食量を制御する定数(g/day)、 「k5」は、定数(ng/g) 「LepBrain」は、脳内レプチン濃度(ng/mL)を示す。)。 [0057] 式(1-7): [0058] [数7] [0059] (式中、 「EadpOut」は、1日あたりに脂肪組織から出て行くエネルギーの量(消費エネルギー量)(cal/day)、 「k6」は、式(1-11)で求められる係数、 「BM」は、体重(g)、 「k7」は、定数(N/A)、 「k8」は、式(1-8)で求められる係数(ng/g)、 「LepBrain」は、脳内レプチン濃度(ng/mL)、 「GPR120out」は、Eadpoutに対するGPR120の効果(N/A) を示す。)。 [0060] 式(1-8): [0061] [数8] [0062] 式(1-9): [0063] [数9] [0064] (式中、 「EadpIn」は、1日あたりに脂肪組織に取り込まれるエネルギーの量(cal/day)、 「ρfood」は、食事1gあたりのエネルギー量(cal/g)、 「FoodIntake」は、1日あたりの食事の量(g/day)、 「ρfat」は、脂肪組織エネルギー密度(cal/g)、 「FFM」は、除脂肪質量(g)、 「t」は、時間(day)を示す。)。 [0065] 式(1-10): [0066] [数10] [0067] (式中、 「FFM」は、除脂肪質量(g)、 「Age」は、年令(生後日数)(day)、 「kFFM1」は、成長に関する定数(g)、 「kFFM2」は、成長に関する定数(day)、 「kFFM3」は、成長に関する定数(day)、 「bFFM」は、GPR120によって変わる定数を示す。)。 [0068] 式(1-11): [0069] [数11] [0070] 式(1-12): [0071] [数12] [0072] (式中、 「Eadp」は、脂肪組織に蓄積されたエネルギーの量、 「t」は、時間(day)、 「EadpIn」は、1日あたりに脂肪組織に取り込まれるエネルギー量(cal/day)、 「Etransition」は、異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギー(cal/day)、 「EadpOut」は、1日あたりに脂肪組織から出ていくエネルギー量(cal/day)を示す。)。 [0073] 式(1-13): [0074] [数13] [0075] (式中、 「Etransition」は、1日あたりに異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギーの量(cal/day)、 「Eect」は、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(cal)、 「transitionRate」は、1日あたりのエネルギー輸送率(/day)を示す。)。 [0076] 式(1-14): [0077] [数14] [0078] (式中、 「Eect」は、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(cal)、 「t」は、時間(day)、 「Etransition」は、1日あたりに異所性脂肪から脂肪組織に移動するエネルギーの量(cal/day)を示す。)。 [0079] 式(1-15): [0080] [数15] [0081] (式中、 「ECap」は、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(cal)、 「Eadp」は、脂肪組織に蓄積されたエネルギーの量(cal)、 「Eect」は、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(cal)を示す。)。 [0082] 式(1-16): [0083] [数16] [0084] (式中、 「EFM」は、異所性脂肪質量(g)、 「Eect」は、異所性脂肪として蓄積されたエネルギーの量(cal)、 「ρect」は、異所性脂肪のエネルギー密度(cal/g)を示す。)。 [0085] 式(1-17): [0086] [数17] [0087] (式中、 「AFM」は、脂肪質量(g)、 「Eadp」は、脂肪組織に蓄積されたエネルギー量(cal)、 「ρfat」は、脂肪組織エネルギー密度(cal/g)を示す。)。 [0088] [細胞ブロックの構成] 図4は、本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における細胞ブロックの構成を示すブロック線図である。細胞ブロック2の入出力の関係は、下記式(2-1)~(1-6)を用いて表すことができる。また、当該細胞ブロック2の入出力の関係は、図4に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。なお、入力装置30を用いた細胞ブロック2における各計算部への入力は、一旦メモリ22に入れられる。細胞ブロック2における各計算部の出力は、メモリ22に記憶される。また、メモリ22に記憶された情報は、メモリ22から読み出され、細胞ブロック2における各計算部での入力として用いられる。 [0089] 図4において、2-1は、総脂肪質量計算部である。総脂肪質量計算部2-1は、メモリ22から読み出した細胞サイズあたりの細胞数頻度を示す情報(図中、「n」)を入力とし、総脂肪質量の情報(図中、「m」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0090] 2-2は、細胞数頻度計算部である。細胞数頻度計算部2-2は、メモリ22から読み出した成長率の情報(図中、「v(s)」)を入力とし、細胞サイズあたりの細胞数頻度を示す情報(図中、「n」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0091] 2-3は、成長率計算部である。成長率計算部2-3は、式(2-3)に従って計算を実行し、成長率の情報(図中、「v(s)」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0092] 2-4は、全細胞数計算部である。全細胞数計算部2-4は、メモリ22から読み出した細胞サイズあたりの細胞数頻度(図中、「n」)の情報を入力とし、全細胞数の情報(図中、「ntot」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0093] 2-5は、細胞半径計算部である。細胞半径計算部2-5は、メモリ22から読み出した全細胞数の情報(図中、「ntot」)及び脂肪組織質量の情報(図3中、「AFM」)を入力とし(図2中、6参照)、細胞半径の情報(図中、「r」μm)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0094] 2-6は、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量計算部である。脂肪組織貯蔵可能エネルギー量計算部2-6は、メモリ22から読み出した総脂肪質量の情報(図中、「m」)を入力とし、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量の情報(図中、「ECap」)を出力とし、メモリ22に入れる。この脂肪組織貯蔵可能エネルギー量は、個体ブロック1に出力される(図2中、5参照)。 [0095] なお、図4において、Eq.(2-1)~Eq.(2-6)は、それぞれ式(2-1)~(2-6)に対応する。 [0096] 式(2-1): [0097] [数18] [0098] (式中、 「m」は、総脂肪質量(g) 「Epi2Body」は、精巣周辺脂肪容量にかけて体全体の総脂肪質量にする係数(N/A)、 「ρ」は、脂肪組織密度〔9.15×10-13(g/μm3)〕、 「s」は、細胞サイズ(μm)、 「n」は、細胞サイズあたりの細胞数頻度(/μm)、 「ds」は、細胞刻み幅(μm)を示す。)。 [0099] 式(2-2): [0100] [数19] [0101] (式中、 「n」は、細胞サイズあたりの細胞数頻度(/μm)、 「t」は、時間(day)、 「b」は、補充率(1日あたりに新しく生まれてくる細胞の数)(/day) 「δ(s-s0)」は、s=s0である場合には1、s=s0以外の場合には0(/μm)、 「s」は、細胞サイズ(μm)、 「s0」は、存在しているとみなせる細胞の最小サイズ(μm)、 「v(s)」は、成長率(μm/day)、 「D」は、変動率(μm2/day)、 「ds」は、細胞刻み幅(μm)を示す。)。 [0102] 式(2-3): [0103] [数20] [0104] (式中、 「v(s)」は、成長率、 「vm」最大成長率、 「s」は、細胞サイズ(μm)、 「sl」は、下側の臨界サイズ(μm)、 「ηl」は、下側の峻度(μm)、 「su」は、上側の臨界サイズ(μm)、 「ηu」は、上側の峻度(μm)、 「Δ」は、大きい脂肪細胞での基本成長率を考えるための無次元パラメータを示す。)。 [0105] 式(2-4): [0106] [数21] [0107] (式中、 「ntot」は、全細胞数、 「n」は、細胞サイズあたりの細胞数頻度(/μm) 「ds」は、細胞刻み幅(μm)を示す。)。 [0108] 式(2-5): [0109] [数22] [0110] (式中、 「r」は、細胞半径(μm)、 「AFM」は、脂肪組織質量(g)、 「ntot」は、全細胞数(N/A)、 「ρ」は、脂肪組織密度〔9.15×10-13(g/μm3)〕 「Epi2Body」は、精巣周辺脂肪容量にかけて体全体の総脂肪質量にする係数(N/A)を示す。)。 [0111] 式(2-6): [0112] [数23] [0113] (式中、 「ECap」は、脂肪組織貯蔵可能エネルギー量(cal)、 「m」は、式(2-1)で求められる体全体の総脂肪質量(g)、 「ρfat」は、脂肪組織エネルギー密度(cal/g)を示す。)。 [0114] [受容体ブロックの構成] 図5は、本発明の一実施形態に係るシステムに用いられる生体モデルの一例における受容体ブロックの構成を示すブロック線図である。受容体ブロック3の入出力の関係は、下記式(3-1)~(3-9)を用いて表すことができる。また、当該受容体ブロック3の入出力の関係は、図5に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。なお、入力装置30を用いた受容体ブロック3における各計算部への入力は、一旦メモリ22に入れられる。受容体ブロック3における各計算部の出力は、メモリ22に記憶される。また、メモリ22に記憶された情報は、メモリ22から読み出され、受容体ブロック3における各計算部での入力として用いられる。 [0115] 図5において、3-1は、GPR120効果計算部である。GPR120効果計算部3-1は、メモリ22から読み出したEadpoutに対するGPR120の効果の係数(GPR120効果係数)の情報(図中、「vGPR120out」)及びGPR120の活性化強度を示す情報(図中、「GPR120sig」)を入力とし、Eadpoutに対するGPR120の効果を示す情報(図中、「GPR120out」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0116] 3-2は、GPR120効果係数計算部である。GPR120効果係数計算部3-2は、メモリ22から読み出した年令の情報を入力とし、Eadpoutに対するGPR120の効果の係数(GPR120効果係数)の情報(図中、「vGPR120out」)を出力とし、メモリ22に入れる。このように、本実施形態に係るシステムでは、生体モデルのパラメータに加齢の影響及びGPR120の作用が加味されているので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより生体における加齢の影響及びGPR120の作用を反映させてシミュレートすることができる。 [0117] 3-3は、活性化強度計算部(活性化強度演算部)である。活性化強度計算部3-3は、メモリ22から読み出したGPR120発現量を示す情報(図中、「GPR120exp」)及び活性化GPR120の活性(活性化GPR120活性)を示す情報(図中、「fR*」)を入力とし、GPR120の活性化強度を示す情報(図中、「GPR120sig」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0118] 3-4は、GPR120発現量計算部である。GRP120発現量計算部3-4は、GPR120発現量を示す情報(図中、「GPR120exp」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0119] [数24] [0120] 3-6は、反応定数休止計算部である。反応定数休止計算部3-6は、メモリ22から読み出したK appearanceの情報(図中、「Kapp」)及び正規化Ca応答を示す情報(図中、「Emax」)を入力とし、休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数休止)の情報(図中、「Ki」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0121] 3-7は、反応定数活性化計算部である。反応定数活性化計算部3-7は、メモリ22から読み出したK appearanceの情報(図中、「Kapp」)及び正規化Ca応答を示す情報(図中、「Emax」)を入力とし、活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数活性化)の情報(図中、「K*」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0122] 3-8は、K appearance計算部である。K appearance計算部3-8は、メモリ22から読み出した休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数休止)の情報(図中、「Ki」)及び活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数活性化)の情報(図中、「K*」)を入力とし、K appearanceの情報(図中、「Kapp」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0123] 3-9は、正規化Ca応答計算部である。正規化Ca応答計算部3-9は、メモリ22から読み出した休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数休止)の情報(図中、「Ki」)及び活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数(反応定数活性化)の情報(図中、「K*」)を入力とし、正規化Ca応答を示す情報(図中、「Emax」)を出力とし、メモリ22に入れる。 [0124] なお、図4において、Eq.(3-1)~Eq.(3-9)は、それぞれ式(3-1)~(3-9)に対応する。 [0125] 式(3-1): [0126] [数25] [0127] (式中、 「GPR120out」は、Eadpoutに対するGPR120の効果(N/A)、 「vGPR120out」は、Eadpoutに対するGPR120の効果の係数(N/A)、 「GPR120sig」は、GPR120の活性化強度、 「kGPR120out」は、GPR120のミカエリス-メンテン定数(N/A) 「Age」は、年令(生後日数)(day)を示す。)。 [0128] 式(3-2): [0129] [数26] [0130] (式中、 「vGPR120out」は、Eadpoutに対するGPR120の活性の係数 「vmaxGPR120out」は、最大速度、 「Age」は、年令(生後日数)(day)、 「kv1」は、適当な係数(day)、 「kv2」は、適当な係数(day)を示す。)。 [0131] 式(3-3): [0132] [数27] [0133] (式中、 「GPR120sig」は、GPR120の活性化強度、 「GPR120exp」は、GPR120発現量(N/A)、 「fR*」は、活性化GPR120の活性(N/A)、 「kGPR」は、GPR120を発現させる量(N/A)を示す。)。 [0134] 式(3-4): [0135] [数28] [0136] (式中、 「GPR120exp」は、GPR120発現量、 「s」は、細胞サイズ(μm)、 「s0」は、GPR120が発現する細胞の最小サイズ(μm)、 「α」は、次元調整係数(μm-2)、 「n」は、細胞サイズあたりの細胞数頻度(/μm)、 「ds」は、細胞刻み幅(μm)を示す。)。 [0137] 式(3-5): [0138] [数29] [0139] 式(3-6): [0140] [数30] [0141] (式中、 「K」は、休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数、 「Kapp」は、K appearance、 「L」は、活性化GPR120の濃度に対する休止状態のGPR120の濃度の割合、 「Emax」は、正規化Ca応答を示す)。 [0142] 式(3-7): [0143] [数31] [0144] (式中、 「K*」は、活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数、 「Kapp」は、K appearance、 「L」は、活性化GPR120の濃度に対する休止状態のGPR120の濃度の割合、 「Emax」は、正規化Ca応答を示す。)。 [0145] 式(3-8): [0146] [数32] [0147] (式中、 「Kapp」は、K appearance、 「L」は、活性化GPR120の濃度に対する休止状態のGPR120の濃度の割合、 「K*」は、活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数、 「K」は、休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数を示す。)。 [0148] 式(3-9): [0149] [数33] [0150] (式中、 「Emax」は、正規化Ca応答、 「K*」は、活性化GPR120における各脂肪酸の反応定数、 「K」は、休止状態のGPR120における各脂肪酸の反応定数、 「L」は、活性化GPR120の濃度に対する休止状態のGPR120の濃度の割合を示す。)。 実施例 [0151] つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。 なお、以下の実施例において、通常食として、オリエンタル酵母(株)製、商品名:MF、高脂肪食として、ピーエムアイ・ニュートリション・インターナショナル(PMI Nutrition international)製、商品名:58Y1 diet、トランス脂肪酸過剰食として、リサート・ダイエット(Research Diets)製、商品名:D09012001を用いた。 [0152] 実施例1 5週令の野生型マウスに通常食(実験番号1)又は高脂肪食(実験番号2)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させるとともに、1週間ごとに体重を測定して体重の変化を調べた。また、5週令のGPR120ノックアウトマウスに通常食(実験番号3)又は高脂肪食(実験番号4)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させるとともに、1週間ごとに体重を測定して体重の変化を調べた。なお、GPR120ノックアウトマウスは、GPR120遺伝子のエキソン1を欠失させることにより、GPR120の機能を欠損させたマウスである。 [0153] 一方、実験番号1~4の実験結果を学習セットとして用い、コンピュータに本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルにおける各処理を実行させ、当該生体モデルの各パラメータの最適化を行なった。つぎに、実験番号1~4のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と体重との関係を演算した。 [0154] 実施例1において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と体重との関係をシミュレートした結果を図6(A)、生体を用いて年令と体重との関係を調べた結果を図6(B)に示す。図中、(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号1)の加齢に伴なう体重の変化、(b)は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号2)の加齢に伴なう体重の変化、(c)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号3)の加齢に伴なう体重の変化、(d)は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号4)の加齢に伴なう体重の変化を示す。 [0155] 図6(A)に示される結果から、前記生体モデルによって体重の変化をシミュレートしたところ、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの体重(図6(A)の(d)参照)は、加齢とともに最も高い値で推移する傾向があることがわかる。また、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの体重(図6(A)の(d)参照)は、高脂肪食を与えた野生型マウスの体重(図6(A)の(b)参照)よりも重い傾向があることがわかる。これに対し、通常食を与えた野生型マウス(図6(A)の(a)参照)及び通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(図6(A)の(c)参照)は、同程度の体重で推移する傾向があることがわかる。 [0156] 一方、図6(B)に示された結果から、生体を用いて年令と体重との関係を調べたところ、図6(A)に示される本発明に用いられる生体モデルによって体重の変化をシミュレートした結果と同様の傾向が見られることがわかる。 [0157] これらの結果から、前記生体モデルを用い、脂肪含有量が異なる食事を摂取したときの野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスの加齢に伴なう体重の変化をシミュレートした結果が、マウスの体重の変化を実際に測定して調べた結果とよく一致しているため、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0158] 実施例2 5週令の野生型マウスに通常食(実験番号5)又は高脂肪食(実験番号6)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させ、脂肪細胞面積を測定した。また、5週令のGPR120ノックアウトマウスに通常食(実験番号7)又は高脂肪食(実験番号8)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させ、脂肪細胞面積を測定した。また、脂肪組織を光学顕微鏡下で観察した。 [0159] 一方、実験番号5~8の実験結果を学習セットとして用い、コンピュータに本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルにおける各処理を実行させ、当該生体モデルの各パラメータの最適化を行なった。つぎに、実験番号5~8のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と脂肪細胞径との関係を演算した。 [0160] 実施例2において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と脂肪細胞径との関係をシミュレートした結果を図7(A)、生体を用いて年令と脂肪細胞径との関係を調べた結果を図7(B)、脂肪組織中の脂肪細胞を観察した結果を図7(C)に示す。図7(A)において、(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号5)の加齢に伴なう脂肪細胞径の変化をシミュレートした結果、(b)は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号6)の加齢に伴なう脂肪細胞径の変化をシミュレートした結果、(c)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号7)の加齢に伴なう脂肪細胞径の変化をシミュレートした結果、(d)は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号8)の加齢に伴なう脂肪細胞径の変化をシミュレートした結果を示す。図7(B)において、レーン1は通常食を与えた野生型マウス(実験番号5)の脂肪細胞面積、レーン2は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号7)の脂肪細胞面積、レーン3は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号6)の脂肪細胞面積、レーン4は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号8)の脂肪細胞面積を示す。また、図7(C)において、スケールバーは100μmを示す。また、図7(C)において、パネル(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号5)の脂肪細胞、パネル(b)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号7)の脂肪細胞、パネル(c)は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号6)の脂肪細胞、パネル(d)は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号8)の脂肪細胞を示す。 [0161] 図7(A)に示される結果から、前記生体モデルによって脂肪細胞径の変化をシミュレートしたところ、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞径(図7(A)の(d)参照)は、加齢とともに最も高い値で推移する傾向があることがわかる。また、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞径(図7(A)の(d)参照)は、高脂肪食を与えた野生型マウスの脂肪細胞径(図7(A)の(b)参照)よりも大きい傾向があることがわかる。また、通常食を与えたマウスの脂肪細胞径は、高脂肪職を与えたマウスの脂肪細胞径よりも小さい傾向があることがわかる。さらに、通常食を与えた野生型マウスの脂肪細胞径(図7(A)の(a)参照)は、通常食を与えたGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞径(実験番号7)(図7(A)の(c)参照)よりも小さい傾向があることがわかる。 [0162] 一方、図7(B)及び図7(C)に示された結果から、マウスの脂肪細胞面積を実際に測定するとともに脂肪細胞を観察したところ、通常食を与えた野生型マウの脂肪細胞面積(図7(B)のレーン1及び図7(C)のパネル(a)参照)が最も小さく、通常食を与えたGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞面積(図7(B)のレーン2及び図7(C)のパネル(b)参照)、高脂肪食を与えた野生型マウスの脂肪細胞面積(図7(B)のレーン3及び図7(C)のパネル(c)参照)及び高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞面積(図7(B)のレーン4及び図7(C)のパネル(d)参照)の順で大きくなることがわかる。 [0163] 脂肪細胞径と脂肪細胞面積とは比例関係にある。これらの結果から、前記生体モデルを用い、脂肪含有量が異なる食事を摂取したときの野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスの脂肪細胞径をシミュレートした結果が、マウスの脂肪細胞面積を実際に測定した結果と同様の傾向を示すことがわかる。したがって、これらの結果から、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0164] 実施例3 5週令の野生型マウスに通常食(実験番号9)又は高脂肪食(実験番号10)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させ、その後、肝臓中のトリグリセリドの量を測定した。また、5週令のGPR120ノックアウトマウスに通常食(実験番号11)又は高脂肪食(実験番号12)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させ、その後、肝臓中のトリグリセリドの量を測定した。また、肝臓組織の脂肪を染色し、光学顕微鏡下で観察した。 [0165] 一方、実験番号9~12の実験結果を学習セットとして用い、コンピュータに本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルにおける各処理を実行させ、当該生体モデルの各パラメータの最適化を行なった。つぎに、実験番号9~12のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と余剰脂肪量との関係を演算した。 [0166] 実施例3において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用いて年令と余剰脂肪量との関係をシミュレートした結果を図8(A)、生体を用いて年令と肝臓中の余剰脂肪であるトリグリセリドの量との関係を調べた結果を図8(B)、肝臓組織における脂肪を染色して観察した結果を図8(C)に示す。図8(A)において、(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号9)の加齢に伴なう余剰脂肪量の変化をシミュレートした結果、(b)は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号10)の加齢に伴なう余剰脂肪量の変化をシミュレートした結果、(c)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号11)の加齢に伴なう余剰脂肪量の変化をシミュレートした結果、(d)は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号12)の加齢に伴なう余剰脂肪量の変化をシミュレートした結果を示す。図8(B)において、レーン1は通常食を与えた野生型マウス(実験番号9)のトリグリセリド量、レーン2は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号11)のトリグリセリド量、レーン3は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号10)のトリグリセリド量、レーン4は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号12)のトリグリセリド量を示す。また、図8(C)において、スケールバーは50μmを示す。また、図8(C)において、パネル(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号9)の肝臓組織中の脂肪、パネル(b)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号11)の肝臓組織中の脂肪、パネル(c)は高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号10)の肝臓組織中の脂肪、パネル(d)は高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号12)の肝臓組織中の脂肪を示す。 [0167] 図8(A)に示される結果から、前記生体モデルによって余剰脂肪量をシミュレートしたところ、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの余剰脂肪量(図8(A)の(d)参照)は、加齢とともに最も高い値で推移する傾向があることがわかる。また、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウスの余剰脂肪量(図8(A)の(d)参照)は、高脂肪食を与えた野生型マウスの余剰脂肪量(図7(A)の(b)参照)よりも大きい傾向があることがわかる。 [0168] 一方、図8(B)に示された結果から、マウスの肝臓中のトリグリセリド量を実際に測定したところ、高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号8)のトリグリセリド(図8(B)のレーン4参照)が、高脂肪食を与えた野生型マウスのトリグリセリド量(図8(B)のレーン3参照)よりも多いことがわかる。また、通常食を与えた野生型マウスのトリグリセリド量(図8(B)のレーン1参照)は、通常食を与えたGPR120ノックアウトマウスのトリグリセリド量(図8(B)のレーン2参照)と同程度であることがわかる。また、図8(C)に示された結果も、図8(B)と同様の傾向を示すことがわかる。 [0169] 余剰脂肪量とトリグリセリド量とは比例関係にある。これらの結果から、前記生体モデルを用い、脂肪含有量が異なる食事を摂取したときの野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスの余剰脂肪量をシミュレートした結果が、マウスの肝臓中のトリグリセリド量を実際に測定した結果と同様の傾向を示すことがわかる。したがって、これらの結果から、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0170] 実施例4 通常食(実験番号13)、0.001mgのリノレン酸を含む食事B(実験番号14)、0.01mgのリノレン酸を含む食事C(実験番号15)、0.1mgのリノレン酸を含む食事D(実験番号16)又は1000mgのリノレン酸を含む食事E(実験番号17)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させることを想定し、実験番号13~17のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と体重との関係を演算した。 [0171] 実施例4において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、各リノレン酸含有量の食事を与えたときの年令と体重との関係をシミュレートした結果を図9に示す。図中、(a)は食事A(実験番号13)を与えたマウスの加齢に伴なう体重の変化、(b)は食事B(実験番号14)を与えたマウスの加齢に伴なう体重の変化、(c)は食事C(実験番号15)を与えたマウスの加齢に伴なう体重の変化、(d)は食事D(実験番号16)を与えたマウスの加齢に伴なう体重の変化又は(e)食事E(実験番号17)を与えたマウスの加齢に伴なう体重の変化を示す。食事Bは後述の「リノレン酸の含有量が少なく飽和脂肪酸の含有量が多い食事」に対応し、食事Eは後述の「リノレン酸の含有量が多く飽和脂肪酸の含有量が少ない食事」に対応する。 [0172] 一般に、リノレン酸の含有量が多く飽和脂肪酸の含有量が少ない食事を与えたマウスの体重は、リノレン酸の含有量が少なく飽和脂肪酸の含有量が多い食事を与えたマウスの体重と比べ、少なくなることがしられている〔例えば、ニコル・ド・ウィット(Nicole de Wit)ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー ガストロインテスティナル・アンド・リバー・フィジオロジー(American journal of physiology. Gastrointestinal and liver physiology)、第303巻、2012年6月14日発行、pp.G589-G599参照〕。 [0173] 図9に示される結果から、前記生体モデルによって各リノレン酸含有量の食事を与えたときの加齢に伴なう体重の変化をシミュレートしたところ、リノレン酸の含有量が多く飽和脂肪酸の含有量が少ない食事Eの体重は、リノレン酸の含有量が少なく飽和脂肪酸の含有量が多い食事Bを与えたマウスの体重と比べ、少なく、与えた食事のリノレン酸の含有量が少なくなるほど、マウスの体重が低くなる傾向があることがわかる。したがって、これらの結果から、前記生体モデルによって各リノレン酸含有量の食事を与えたときの加齢に伴なう体重の変化をシミュレートしたところ、従来の知見を裏付ける結果が得られたことから、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0174] 実施例5 5週令の野生型マウスに通常食を当該マウスが16週令になるまで自由摂取させた(実験番号18)。同様に、5週令のGPR120ノックアウトマウスに、通常食を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させた(実験番号19)。 また、5週令の野生型マウスに、通常食を、当該マウスが10週令になるまで自由摂取させた後、高脂肪食を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させた(実験番号20)。同様に、5週令のGPR120ノックアウトマウスに通常食を、当該マウスが10週令になるまで自由摂取させた後、高脂肪食を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させた(実験番号21)。 [0175] 一方、実験番号18~21と同様のスケジュールで食事を与えることを想定し、実験番号18~21のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と余剰脂肪量との関係を演算した。 [0176] 実施例5において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を図10(A)、生体を用い、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を図10(B)に示す。図中、(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号18)の加齢に伴なう体重の変化、(b)は個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた野生型マウス(実験番号19)の加齢に伴なう体重の変化、(c)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号20)の加齢に伴なう体重の変化、(d)は個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号21)の加齢に伴なう体重の変化を示す。 [0177] 図10(B)に示される結果から、野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスが10週令になったときから当該野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスに高脂肪食を与えた場合、当該野生型マウスの体重及びGPR120ノックアウトマウスの体重の間の差がないことがわかる。図10(A)に示された結果から、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートしたところ、図10(B)に示された結果と同様に、野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスが10週令になったときから当該野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスに高脂肪食を与えた場合、当該野生型マウスの体重及びGPR120ノックアウトマウスの体重の間の差がないことがわかる。前記生体モデルを用い、個体の年令が10週齢のときから高脂肪食を与えた場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果が、マウスの体重を実際に測定して調べた結果とよく一致しているため、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0178] 実施例6 5週令の野生型マウスに通常食(実験番号22)又はトランス脂肪酸過剰食(実験番号23)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させるとともに、1週間ごとに体重を測定して体重の変化を調べた。また、5週令のGPR120ノックアウトマウスに通常食(実験番号24)又はトランス脂肪酸過剰食(実験番号25)を、当該マウスが16週令になるまで自由摂取させるとともに、1週間ごとに体重を測定して体重の変化を調べた。なお、トランス脂肪酸過剰食は、高エネルギー量ではあるが、GPR120を刺激しない脂肪酸が多い食事である。 [0179] 一方、実験番号22~25と同様の食事を与えることを想定し、実験番号22~25のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、年令と体重との関係を演算した。 [0180] 実施例6において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、トランス脂肪酸過剰食を摂取した場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を図11(A)、生体を用い、トランス脂肪酸過剰食を摂取した場合の年令と体重との関係をシミュレートした結果を図11(B)に示す。図中、(a)は通常食を与えた野生型マウス(実験番号22)の加齢に伴なう体重の変化、(b)はトランス脂肪酸過剰食を与えた野生型マウス(実験番号23)の加齢に伴なう体重の変化、(c)は通常食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号24)の加齢に伴なう体重の変化、(d)はトランス脂肪酸過剰食を与えたGPR120ノックアウトマウス(実験番号25)の加齢に伴なう体重の変化を示す。 [0181] 図11(A)に示される結果から、前記生体モデルによって体重の変化をシミュレートしたところ、トランス脂肪酸過剰食を与えた野生型マウス(図11(A)の(b)参照)及びトランス脂肪酸過剰食を与えたGPR120ノックアウトマウスの体重(図11(A)の(d)参照)は、通常食を与えた野生型マウスの体重(図11(A)の(a)参照)及び通常食を与えたGPR120ノックアウトマウスの体重(図11(A)の(c)参照)よりも高い値で推移する傾向があることがわかる。 [0182] 一方、図11(B)に示された結果から、生体を用いて体重の変化を調べたところ、図11(A)に示される本発明に用いられる生体モデルによって体重の変化をシミュレートした結果と同様の傾向が見られることがわかる。 [0183] これらの結果から、前記生体モデルを用い、含まれる脂肪酸の種類が異なる食事を摂取したときの野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスの加齢に伴なう体重の変化をシミュレートした結果が、マウスの体重の変化を実際に測定して調べた結果とよく一致しているため、本発明の一実施形態に係るシステムにより、生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションを良好に行なうことができることが示唆される。 [0184] 調製例 通常食100gあたりエイコサペンタエン酸(EPA)7.5g(実験番号26)もしくは15.4g(実験番号27)、NCG21 10mg(実験番号28)もしくは20mg(実験番号29)、NCG21 20mgとリフォリン酸メチルエステル〔6-メチル-3-[(2E,6E)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル]-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル〕30mgとの混合物(実験番号30)を通常食に混合して実験番号26~30の食事を得た。 [0185] 高脂肪食100gあたりグリフォリン酸メチルエステル10mg(実験番号31)又は30mg(実験番号32)を高脂肪食に混合して実験番号31及び32の食事を得た。 [0186] 実施例7 (1)体温変化量の測定 本発明の一実施形態に係るシステムにより、食餌性体温調節(食餌に伴なう体温上昇)がGPR120を介して行なわれていることが示唆された。そこで、食事性体温調節に対するGPR120リガンドの影響を調べることにより、本発明の一実施形態に係るシステムによる結果の妥当性を評価した。 [0187] 16~28週令のGPR120ノックアウトマウス(C57BL/6/129背景のマウス)に通常食又は調製例で得られた実験番号26~30の食事を与えた。給餌後17時間経過時に、各マウスの直腸温を実験動物用温度計〔室町機械(株)製、商品名:マルチサーパスサーモメータMK5000RQ〕で測定し、給餌前のマウスと給餌後17時間経過時のマウスとの間の体温変化量を算出した。 [0188] また、16~28週令の野生型マウスに高脂肪食又は調製例で得られた実験番号31又は32の食事を与えた。16~28週令のGPR120ノックアウトマウス(C57BL/6/129背景のマウス)に高脂肪食を与えた。給餌後17時間経過時に、各マウスの直腸温を実験動物用温度計〔室町機械(株)製、商品名:マルチサーパスサーモメータ BAT12〕で測定し、給餌前のマウスと給餌後17時間経過時のマウスとの間の体温変化量を算出した。なお、体温変化量は、(給餌後17時間経過時のマウスの体重-給餌前のマウスの体重)によって求めた。 [0189] 実施例7において、野生型マウスに与えた通常食を含む食事の種類と体重変化量との関係を調べた結果を図12(A)、野生型マウス又はGPR120ノックアウトマウスに与えた高脂肪食を含む食事の種類と体重変化量との関係を調べた結果を図12(B)に示す。図12(A)において、レーン1は通常食を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン2は実験番号26の食事(通常食100gあたりEPA7.5gを含む食事を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン3は実験番号27の食事(EPA15.4gを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン4は実験番号28の食事(通常食100gあたりNCG21 10mgを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン5は実験番号29の食事(通常食100gあたりNCG21 20mgを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン6は実験番号30の食事(通常食100gあたりNCG21 20mgとグリフォリン酸メチルエステル30mgとを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量を示す。また、図12(B)において、レーン1は高脂肪食を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン2は高脂肪食を与えたときのGPR120ノックアウトマウスの体重変化量、レーン3は実験番号31の食事(高脂肪食100gあたりグリフォリン酸メチルエステル10mgを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量、レーン4は実験番号32の食事(高脂肪食100gあたりグリフォリン酸メチルエステル30mgを含む食事)を与えたときの野生型マウスの体重変化量を示す。 [0190] 図12(A)に示された結果から、通常食とGPR120のアゴニストであるEPA又はNCG21とを混合した餌を給餌したときの野生型マウスの体重変化量(レーン2~5;実験番号26~29)、通常食を給餌したときの野生型マウスの体温変化量(レーン1)と比べ、大きい傾向にあることがわかる。一方、通常食とGPR120のアゴニストであるNCG21とGPR120のアンタゴニストであるグリフォリン酸メチルエステルとを混合した餌を給餌したときの野生型マウスの体重変化量(レーン6;実験番号30)は、通常食とGPR120のアゴニストであるNCG21とを混合した餌を給餌したときの野生型マウスの体温変化量(レーン4及び5;実験番号28及び9)と比べ、小さくなることがわかる。 [0191] また、図12(B)に示された結果から、高脂肪食とGPR120のアンタゴニストであるグリフォリン酸メチルエステルとを混合した餌を給餌したときの野生型マウスの体重変化量(レーン3及び4;実験番号31及び32)は、高脂肪食を給餌したときの野生型マウス(レーン1)又はGPR120ノックアウトマウス(レーン2)の体重変化量と比べ、小さくなることがわかる。 [0192] これらの結果から、食餌性体温調節がGPR120を介して行なわれていることがわかる。したがって、生体を用いた実験結果は、食餌性体温調節がGPR120を介して行なわれているという本発明の一実施形態に係るシステムによる結果と一致していることから、本発明の一実施形態に係るシステムによる結果は、妥当であることがわかる。 [0193] (2)エネルギー消費量 16~28週令のGPR120ノックアウトマウス(C57BL/6/129背景のマウス)又は16~28週令の野生型マウスに通常食又は高脂肪食を与えた。給餌後6時間経過時に安静状態の各マウスのエネルギー消費量及び呼吸商(RQ)を、開放熱量計システム〔室町機械(株)製、商品名:MK5000RQ〕を用いて測定した。前記呼吸商は、酸素消費量(VO2)に対する二酸化炭素生成量の体積比である。また、エネルギー消費量は、酸素(3.815+1.232RQ)と酸素消費の際の発熱量との積として算出した。自発運動量は、赤外線受動センサシステム〔室町機械(株)製、商品名:Supermex〕を用いて測定した。 [0194] 実施例7において、給餌後6時間経過時の安静状態の野生型マウス及びGPR120ノックアウトマウスそれぞれのエネルギー消費量を調べた結果を図13に示す。図中、レーン1は通常食を給餌したときの野生型マウスのエネルギー消費量、レーン2は通常食を給餌したときのGPR120ノックアウトマウスのエネルギー消費量、レーン3は高脂肪食を給餌したときの野生型マウスのエネルギー消費量、レーン2は高脂肪食を給餌したときのGPR120ノックアウトマウスのエネルギー消費量を示す。 [0195] 図13に示された結果から、高脂肪食を給餌したときの野生型マウスのエネルギー消費量は、通常食を給餌したときの野生型マウスのエネルギー消費量と比べて増加することがわかる。これに対して、高脂肪食を給餌したときのGPR120ノックアウトマウスのエネルギー消費量は、通常食を給餌したときのGPR120ノックアウトマウスのエネルギー消費量と比べて減少することがわかる。 [0196] 実施例8 通常食又は通常食と化合物とを含む食事を、マウスが16週令になるまで自由摂取させることを想定し、実施例7のデータに基づき同じ条件の情報を入力として用い、コンピュータに最適化後の生体モデルを実行させ、食餌パターンとエネルギー消費量の推移との関係を演算した。 [0197] 実施例8において、本発明の一実施形態に係るシステムの生体モデルを用い、食餌パターンとエネルギー消費量の推移との関係をシミュレートした結果を図14に示す。図中、(a)は通常食のみを与えたときのエネルギー消費量の推移、(b)は通常食を与えた後、通常食100gあたりNCG21 1mgを含む食事を与えたときのエネルギー消費量の推移、(c)は通常食を与えた後、通常食100gあたりNCG21 0.0mgを含む食事を与えたときのエネルギー消費量の推移、(c)は通常食を与えた後、通常食100gあたりNCG21 0.01mgを含む食事を与えたときのエネルギー消費量の推移、(d)は通常食100gあたりNCG21 1mgとグリフォリン酸メチルエステル1mgを含む食事を与えたときのエネルギー消費量の推移を示す。 [0198] 図14に示された結果から、GPR120のアゴニストであるNCG21を含む食事〔図14中、(b)及び(c)参照〕を与えたときのエネルギー消費量は、通常食〔図14中、(a)参照〕を与えたときのエネルギー消費量と比べて高くことがわかる。また、GPR120のアゴニストであるNCG21とGPR120のアンタゴニストであるグリフォリン酸メチルエステルとを含む食事を与えたときのエネルギー消費量〔図14中、(d)参照〕は、GPR120のアゴニストであるNCG21を含む食事〔図14中、(b)及び(c)参照〕を与えたときのエネルギー消費量と比べて低くなることがわかる。 [0199] これらの結果から、前記生体モデルを用い、本発明の一実施形態に係るシステムを用いエネルギー消費量の推移をシミュレートした結果が、マウスのエネルギー消費量を実際に測定して調べた結果とよく一致していることがわかる。 [0200] 以上説明したように、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムに用いられる生体モデルによれば、GPR120の作用に考慮して、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより適切にシミュレートすることができる。なお、生体内での脂肪酸が関与する代謝をシミュレートするに際し、本システムにおける受容体ブロックを用いずに数理モデルを構築した場合、本システムにおける年令に関連するパラメータを用いなかった場合及び脂肪酸が複数種類存在することを考慮しない場合には、各実施例において、生体を用いた実験結果と一致しない傾向も見られた。したがって、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステム及びプログラムは、個体レベルでの体重制御の予測、肥満症、糖尿病その他のGPR120が関連する疾患に対する食品に含まれる成分の効果の評価、前記疾患に対する薬物の作用の評価、前記疾患の治療剤の候補物質のスクリーニング、GPR120に対する物質の作用の評価等に好適に用いられることが期待されるものである。 [0201] 以上説明した実施形態および実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであり、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、前記実施形態および実施例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更および均等物をも含む趣旨である。また、当業者であれば、単なる日常的な実験手法によって、本明細書に記載された発明の具体的態様に対する多くの均等物を認識し、あるいは確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範疇に含まれる。 本発明の範疇には、例えば、下記(1)~(4)も含まれるが、本発明は、これらに限定されるものではない。 [0202] (1) 生体の機能が数理モデルによって表現された生体モデルを備え、当該生体モデルを用いた演算を行なうコンピュータシミュレーションシステムであって、 前記生体モデルは、 前記生体に摂取された脂質が結合することによって当該脂質の種類に応じて活性化される活性化GPR120の活性を示す情報に基づき、当該活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算部と、 前記活性化強度を示す前記情報に基づき、前記生体の脂肪組織に蓄えられたエネルギーのうち当該脂肪組織から出て行き消費される消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算部と、 を備えていることを特徴とする、コンピュータシミュレーションシステム。 本実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムは、生体に摂取された脂質が結合することによって当該脂質の種類に応じて活性化される活性化GPR120の活性を示す情報に基づき、当該活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算部と、前記活性化強度の情報に基づき、前記生体の脂肪組織に蓄えられたエネルギーのうち当該脂肪組織から出て行き消費される消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算部とを備えているので、生体内での脂肪酸が関与する代謝におけるGPR120の作用の影響をより適切に演算することができる。 したがって、本発明の一実施形態に係るコンピュータシミュレーションシステムによれば、動物を用いずに、GPR120の作用を考慮して、生体内での脂肪酸が関与する代謝をシミュレートすることができる。 [0203] (2) 前記生体モデルは、摂取された脂質の量を示す情報と当該脂質に対するGPR120の親和性を示す情報とに基づき、活性化GPR120の活性を示す情報を演算する活性演算部をさらに備える、前記(1)に記載のコンピュータシミュレーションシステム。 かかる構成を備えたコンピュータシミュレーションシステムによれば、摂取された食事中に含まれる脂質の種類及び量に応じたGPR120の活性の違いを生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションにより適切に反映させることができるので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより適切に再現することができる。 [0204] (3) 前記生体モデルは、 前記生体の年令情報に基づき、除脂肪質量情報を演算する除脂肪質量演算部と、 前記除脂肪質量情報と脂肪組織に蓄積された脂肪質量情報と異所性脂肪質量情報とに基づき、前記生体の体重情報を演算する体重演算部と、 をさらに備える、前記(1)又は(2)に記載のコンピュータシミュレーションシステム。 かかる構成を備えたコンピュータシミュレーションシステムによれば、加齢に伴なう除脂肪質量の変動と、当該除脂肪質量の変動に応じたエネルギー消費量の変動とを生体内での脂肪酸が関与する代謝のシミュレーションにより適切に反映させることができるので、生体内での脂肪酸が関与する代謝をより一層適切に再現することができる。 [0205] (4) 生体の機能が数理モデルによって表現された生体モデルを備え、コンピュータによって当該生体モデルを用いた演算を行なうために、コンピュータを、 前記生体に摂取された脂質が結合することによって当該脂質の種類に応じて活性化される活性化GPR120の活性を示す情報に基づき、当該活性化GPR120の活性化強度を示す情報を演算する活性化強度演算部と、 前記活性化強度の情報に基づき、前記生体の脂肪組織に蓄えられたエネルギーのうち当該脂肪組織から出て行き消費される消費エネルギー量を演算する消費エネルギー演算部と として作動させることを特徴とするコンピュータシミュレーション用プログラム。 本実施形態に係るコンピュータシミュレーション用プログラムは、前述のコンピュータシミュレーションシステムと同様の作用効果を奏する。 符号の説明 [0206] 1 個体ブロック 1-1 体重計算部(体重演算部) 1-2 全血液量計算部 1-3 血中レプチン濃度計算部 1-4 脳内レプチン濃度計算部 1-6 摂食量計算部 1-7 脂肪組織依存性消費エネルギー量計算部(消費エネルギー演算部) 1-8 係数k8計算部 1-9 脂肪組織取込エネルギー量計算部 1-10 除脂肪質量計算部(除脂肪質量演算部) 1-11 係数k6計算部 1-12 脂肪組織蓄積エネルギー量計算部 1-13 異所性脂肪移動エネルギー量計算部 1-14 異所性脂肪移動エネルギー量計算部 1-15 余剰エネルギー計算部 1-16 異所性脂肪質量計算部 1-17 脂肪質量計算部 2 細胞ブロック 2-1 総脂肪質量計算部 2-2 細胞数頻度計算部 2-3 成長率計算部 2-4 全細胞数計算部 2-5 細胞半径計算部 2-6 脂肪組織貯蔵可能エネルギー量計算部 3 受容体ブロック 3-1 GPR120効果計算部 3-2 GPR120効果係数計算部 3-3 活性化強度計算部(活性化強度演算部) 3-5 活性化GPR120活性計算部(活性演算部) 3-6 反応定数休止計算部 3-7 反応定数活性化計算部 3-8 K appearance計算部 3-9 正規化Ca応答計算部 10 システム 10a コンピュータ 20 本体 21 処理部 22 メモリ 30 入力装置 31 処理部 40 出力装置 |
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