METALLIC SILVER SEPARATION METHOD, COATED SILVER FINE PARTICLES, AND THIN, LINEAR, COATED METALLIC SILVER
外国特許コード | F150008301 |
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整理番号 | S2014-1315-N0 |
掲載日 | 2015年4月10日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP052516 |
国際公開番号 | WO 2014119793 |
国際出願日 | 平成26年2月4日(2014.2.4) |
国際公開日 | 平成26年8月7日(2014.8.7) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | METALLIC SILVER SEPARATION METHOD, COATED SILVER FINE PARTICLES, AND THIN, LINEAR, COATED METALLIC SILVER |
発明の概要(英語) | The present invention addresses the issues of providing: a novel separation method whereby metallic silver is separated from an aqueous phase, etc.; and a method whereby the form of the metallic silver to be extracted is controllable, when extracting metallic silver using said method. A compound including silver in a mixed phase that includes a polar molecule, a polar solvent, and a compound including silver is decomposed, and metallic silver is separated therefrom. The compound including the silver includes silver having a solubility at room temperature of no more than 0.1 g relative to 100 g of polar solvent. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
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発明の名称 | 金属銀の析出方法、および被覆銀微粒子、細線状の被覆金属銀 |
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発明の概要 | 水相などから金属銀を析出させる新規な析出方法を提供する。また、当該方法により金属銀を析出する際に、析出する金属銀の形態を制御可能な方法を提供することを課題とする。銀を含む化合物と極性分子と極性溶媒とを含む混合相において当該銀を含む化合物を分解して金属銀を析出させる。当該銀を含む化合物は、前記極性溶媒100gに対する室温での溶解度が0.1g以下の銀を含む化合物である。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 銀を含む化合物と極性分子と極性溶媒とを含む混合相において当該銀を含む化合物を分解して金属銀を析出させる析出行程を含む金属銀の析出方法であって、当該銀を含む化合物は、前記極性溶媒100gに対する室温での溶解度が0.1g以下の銀を含む化合物であることを特徴とする金属銀の析出方法。 [請求項2] 前記混合相は、少なくとも前記銀を含む化合物と極性分子とを混合したものを、極性溶媒を含む液相に混合して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属銀の析出方法。 [請求項3] 前記混合相は、前記銀を含む化合物を、極性溶媒と極性分子を含む混合物に混合して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属銀の析出方法。 [請求項4] 前記銀を含む化合物は、カルボン酸銀であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属銀の析出方法。 [請求項5] 前記銀を含む化合物は、シュウ酸銀であることを特徴とする請求項4に記載の金属銀の析出方法。 [請求項6] 前記極性分子が、炭素数が6以下のアルキルアミン類、アルキルジアミン類、アミノアルコール類、アミノ酸類、アミノエトキシ化合物類からなる群より選択されるいずれかを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の金属銀の析出方法。 [請求項7] 前記極性溶媒は、水酸基を有する溶媒を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の金属銀の析出方法。 [請求項8] 平均粒子径が50nm以下の金属銀粒子がアルキルジアミンとゼラチンを含む被膜で被覆されていることを特徴とする被覆銀微粒子。 [請求項9] 直径が100nm以下であり、長さが直径の10倍以上である細線状の金属銀がアルキルジアミンを含む被膜で被覆されていることを特徴とする細線状の被覆金属銀。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 金属銀の析出方法、および被覆銀微粒子、細線状の被覆金属銀 技術分野 [0001] 本発明は、水相などから各種形態の金属銀を析出させる手段、及び、当該手段により析出させた各種形態を有する金属銀に関する。 背景技術 [0002] 金属銀は、従来より細菌やウイルスに対する高い殺菌効果を有することが知られており、この効果を利用するために各種形態の金属銀が利用されている。また、近年では、金属銀が大気環境下でも酸化されにくく安定して金属状態で存在できることや、高い電気伝導性、高い自己拡散係数等を利用して、銀ペースト中の導電材料や、特に低温における導電性の配線形成を目的とした銀微粒子が注目を集めている。更に、細線状(ワイヤー状)の金属銀を樹脂中に分散させることにより、良好な透明導電膜を形成する試み等がなされている。 [0003] このような用途で使用される金属銀は、コストの低減の他、目的とする特性の発現のために一般に高い比表面積を有することが求められる。つまり、殺菌のために使用される金属銀においては、その効果が金属銀の表面積に依存すること、及び、比較的高価な金属銀の使用量を低減するために、高い比表面積を有する金属銀の使用が望まれる。また、銀ペースト中の導電材料として用いられる金属銀についても、低コストと高機能化のために嵩高い形状の銀粒子を簡便に製造することが望まれる。また、低温での配線形成に使用される銀微粒子においては、一般に粒径が小さく高い表面エネルギーを有することによって低温での粒子間の焼結が助長されるため、同様に高い比表面積を有する銀微粒子が望まれる。細線状の金属銀においても、特に良好な透明導電膜を形成するためには、小断面積且つ長尺である高比表面積の金属銀が必要となる。 [0004] 従来、各種形態を有する高比表面積の金属銀を得ようとする場合、一般には硝酸銀や塩化銀などの銀塩を溶解させた水溶液などを用いて、存在する銀イオンを何らか還元剤により還元して所望の形態の金属銀として析出させることが通常であった(特許文献1~3)。また、特に微細な銀微粒子の製造においては、真空中において原子状銀を凝集させて銀微粒子とする方法等も知られている(特許文献4)。 [0005] これに対して、本発明者は、所定の有機溶媒等に対して可溶にしたシュウ酸銀等を用いて、このシュウ酸銀等を熱分解して生じる銀原子を凝集させて微細な銀微粒子を製造する技術を開発してきた(特許文献5,6)。この手法によれば、原料となる化合物から解離して生じる銀原子が、銀微粒子を構成する過程で銀イオンの状態を経ることがないため、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で均一な銀微粒子を製造することが可能である。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1 : 特表2012-509396号公報 特許文献2 : 特開2012-180589号公報 特許文献3 : 特開2012-140701号公報 特許文献4 : 特開2002-121437号公報 特許文献5 : 特開2010-265543号公報 特許文献6 : 特開2012-162767号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] 上記のように、水溶液中に存在する銀イオンを還元して金属銀を析出させようとする場合、銀イオンに対する還元剤を水溶液に混合し、銀イオンを還元する反応を生じさせる行程が不可欠となる。このような還元剤を用いた金属銀の析出反応においては、還元剤の濃度の揺らぎ等に起因して析出する金属銀の形態などに変化が生じるため、形態が制御された均質な金属銀の析出を生じさせることが困難となる場合があった。特に、工業的生産過程において大規模に金属銀の析出を生じさせる場合には、この傾向が顕著となる問題があった。 [0008] また、真空中において原子状銀を凝集させる場合には、還元反応を伴わないために、上記のような問題は生じないが、コスト面での問題を生じることになる。 また、シュウ酸銀等などの銀を含む化合物を熱分解することで生じる銀原子を用いて金属銀を生成する手法についても、反応媒として使用可能な物質が限定されていた。 そこで、本発明が解決しようとする課題は、水相などから金属銀を析出させる新規な析出方法を提供することである。また、当該方法により金属銀を析出する際に、析出する金属銀の形態を制御可能な方法を提供することである。また、当該析出方法により析出した各種形態の金属銀を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0009] 上記課題を解決するために、本発明は、銀を含む化合物と極性分子と極性溶媒とを含む混合相において当該銀を含む化合物を分解して金属銀を析出させる析出行程を含む金属銀の析出方法であって、当該銀を含む化合物は、前記極性溶媒100gに対する室温での溶解度が0.1g以下の銀を含む化合物であることを特徴とする金属銀の析出方法を提供する。当該方法によれば、銀イオンを還元するための還元剤を必要とせずに、高比表面積の金属銀を極性溶媒中で析出することが可能となる。 [0010] 本発明における前記混合相を生成させる方法は特に限定されず、少なくとも前記銀を含む化合物と極性分子とを混合したものを、極性溶媒を含む液相に混合して得ることが可能であり、また、前記銀を含む化合物を、極性溶媒と極性分子を含む混合物に混合して得ることも可能であり、銀を含む化合物と極性分子と極性溶媒とが外見上均一な混合相を構成可能な方法であればよい。 [0011] 上記のとおり、本発明で用いる銀を含む化合物は、使用する極性溶媒に対して実質的に溶解しないものであれば好ましく使用できるが、特に銀イオンの乖離を生じにくいカルボン酸銀であることが好ましい。特に、本発明に係る方法により分解して銀原子を放出した際に系内に残留物を残しにくい点で、シュウ酸銀が好ましく用いられる。 [0012] 本発明で用いる極性分子としては、難溶解性の銀を含む化合物を極性溶媒に可溶にできるものであれば使用できるが、特に好ましくは炭素数が6以下のアルキルアミン類、アルキルジアミン類、アミノアルコール類、アミノ酸類、アミノエトキシ化合物類からなる群より選択されるいずれかを含むものが好適に使用可能である。本発明で用いる極性溶媒としては、上記極性分子の介在した銀を含む化合物が溶解できるものあれば良く、特に、水酸基を有する水やアルコール等の極性溶媒が好ましく使用される。 発明の効果 [0013] 本発明によれば、銀を含む化合物の熱分解を利用して水相等の極性溶媒において金属銀を析出することができる。また、析出の際の条件を調整することで、析出する金属銀の形態を制御することができる。 図面の簡単な説明 [0014] [図1] アルキルジアミンを作用させたシュウ酸銀を用いて水溶液中で析出した析出物の粉末X線回折パターンである。 [図2] アルキルジアミンを作用させたシュウ酸銀を用いて水溶液中で析出した析出物の走査型電子顕微鏡像である。 [図3] アルキルジアミンを作用させたシュウ酸銀をゼラチン水溶液中で析出させた際の析出物の透過型電子顕微鏡像である。 [図4-1] (a)~(c)の各濃度のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中で析出した析出物の走査型電子顕微鏡像である。 [図4-2] (d)~(f)の各濃度のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中で析出した析出物の走査型電子顕微鏡像である。 [図5] PVP存在下のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中で析出した析出物の走査型電子顕微鏡像である。 発明を実施するための形態 [0015] 本発明に係る金属銀の析出方法は、所定の極性分子の存在下において、水相などの極性溶媒中で銀を含む化合物(以下、「銀化合物」という。)を熱的に分解させることにより各種形態を有する金属銀を析出させることを特徴とする。本発明に係る金属銀の析出方法によれば、極性溶媒中で高比表面積の金属銀の析出が可能になると共に、金属銀を析出する際の条件を各種設定することにより析出する金属銀の形態を調整可能とすることができる。 [0016] 本発明において、析出させる金属銀の原料となる銀を含む化合物は、主に共有結合的な結合によって銀原子が分子中内に結合されている化合物であって、極性溶媒中で銀イオンを生じにくい一方で、当該結合が比較的容易に熱的に切断可能な化合物が好ましく用いられる。このような銀化合物を用いることにより、イオン性の硝酸銀等を用いた銀イオンの還元に伴う金属銀の析出とは異なる経路を用いて金属銀の析出を生じさせることが可能となる。 [0017] 共有結合的な結合によって銀原子が分子中内に結合されている銀化合物の極性溶媒中への溶解度はイオン性の化合物と比較して一般に低いため、通常は極性溶媒内に混合相として存在させることが困難であるため、金属銀の析出の原料とすることが困難である。一方、本発明によれば、このような銀化合物に対して所定の極性分子を介在させることにより、水相などへの溶解度を発現することを可能とし、同時に銀化合物の分解が容易になることを見出したことによって、新規な金属銀の析出方法が提供される。 つまり、本発明に係る金属銀の析出方法においては、極性溶媒内で電解して銀イオンを生じ難い銀化合物に対して極性分子を混合して介在させることにより極性溶媒との混合相を形成させ、その状態で銀化合物に対して熱を供給することで銀化合物を熱的に分解させて銀原子を放出させ、この放出された銀原子が凝集することにより金属銀が析出される。 [0018] また、本発明においては、上記の極性分子を予め銀化合物と混合して用いる他、極性分子と水相などの混合液に銀化合物を投入する等の方法によっても、使用する銀化合物の水相などへの溶解度の発現と、銀化合物の分解を容易にすることが可能となる。本来は水相などへの溶解度を実質的に有しない銀化合物が、極性分子の介在により溶解度を示すようになる機構は明らかでないが、種々の検討の結果から、極性分子が配位結合等によって銀化合物を修飾することによって、極性の大きな水相などへの溶解度を高めていることが考えられる。また、銀化合物に極性分子などが結合して錯体等を形成することで分解が容易になることは、本発明者がこれまでに明らかにしてきたことである(特許文献5,6)。 [0019] 本発明において銀化合物を熱分解して金属銀を析出させる反応を行うための反応媒として、コストや環境負荷の観点から典型的には水相(水溶液)を用いることが好ましいが、この他にもアルコールやアセトン、アセトニトリルなどの極性を有する有機溶媒を用いることができる。これらの極性溶媒中においては、極性分子が介在することで銀化合物が溶解度を示すようになると共に、使用する極性溶媒に応じて当該銀化合物を本来の分解温度よりも低い温度で分解することが可能となる。 また、特に、極性溶媒として水相、メタノール、エタノール等を用いた場合に、当該極性溶媒中への銀化合物の溶解度が高まる傾向がみられ、各種の形態の金属銀を析出させる際の反応媒として好ましく用いることができる。一方、その他の極性溶媒中においても、溶解した銀化合物を比較的低い温度で熱分解することが可能であり、例えば、未溶解の銀化合物と平衡した状態で各種の形態の金属銀を析出させることができる。 [0020] 本発明に係る方法によって析出する金属銀の形態としては、一般に不定形のスポンジ状のもの、針状のもの等が挙げられ、大きな比表面積を有する点で殺菌のために用いられる金属銀として有用である。一方、本発明において金属銀が析出する際に、各種の制御を行うことにより析出する金属銀の形態を制御可能であり、例えば、微粒子や細線(ワイヤー)状など各種個別の用途に好適な形態を有する微細な金属銀を容易に製造することが可能となる。 以下、本発明に係る金属銀の析出方法について詳しく説明する。 [0021] (1)銀原子を供給するために使用される銀化合物について 本発明においては、極性溶媒中において銀化合物が電離して生じる銀イオンでなく、銀化合物が加熱等により熱分解して生じると考えられる銀原子を用いて各種形態の金属銀を析出させることを特徴とする。このため、本発明において金属銀の原料としては、使用する極性溶媒中での溶解度が低いものが好ましく使用され、具体的には溶媒100gに対する溶解量が室温で0.1g以下であり、更に好ましくは0.01g以下の銀化合物が好ましく使用される。使用する極性溶媒中での溶解度が高い銀化合物を用いた場合には、投入した銀化合物が電離して生じる銀イオンが本発明による金属銀の析出に寄与せず、銀の収率が大きく低下する点で好ましくない。本明細書において、室温とは、一般的には1~30℃の任意の温度であり、好ましくは20~25℃の周囲温度であり、典型的には約25℃である。 [0022] 極性溶媒中での溶解度が低い銀化合物としては、例えば、水相を用いる場合には、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀や、酸化銀、硫化銀、炭酸銀、チオシアン酸銀、リン酸銀等を挙げることができる。塩化銀、臭化銀のようなハロゲン化銀についても一般に水相への溶解度が低いが、配位子となるイオンや分子が存在する場合には錯イオンを作って溶解するため、溶解度付与のために使用する極性分子などとの関係で注意が必要となる。 [0023] 上記の内で、特にカルボン酸銀は電離によって銀イオンを放出し難いため、本発明における銀の原料として好ましく使用できる。特に、カルボン酸銀であるシュウ酸銀は、比較的容易に熱分解して銀原子を放出可能であると共に、熱分解の副生成物が二酸化炭素として反応系外に放出されるために特に好ましく使用される。一方、銀の析出反応の制御や、析出する金属銀の形態制御等の目的で、その他の銀化合物を単独、又は複数の銀化合物を混合して使用する等の調整を行うことも可能である。また、カルボン酸類は、生成した微細な金属銀を安定に保持するための保護分子としても機能することが期待される。 [0024] (2)銀化合物に極性溶媒への溶解度を与えるための極性分子について 以下に説明するように、本発明で使用する極性分子は、銀化合物に極性溶媒への溶解度を与えると同時に、銀化合物の分解温度の制御や、金属銀の析出形態の制御の点で重要な役割を果たすと考えられる。本発明で使用される極性分子は、使用される銀化合物や極性溶媒との関係において、錯化合物を生成する等により銀化合物を修飾して極性溶媒への溶解度を実質的に発現し、銀化合物と極性分子と極性溶媒とが含まれる混合相を形成できるものであれば、特に制限無く析出する金属銀の用途等に応じて各種極性分子の中から選択して使用することが可能である。 [0025] なお、上記「混合相」は、上記3成分が単一相を構成するものであれば良く、例えば、微視的には極性溶媒中に銀化合物と極性分子を含む錯化合物が分散する場合や、マクロ的な組成の揺らぎを含む場合などを含むものとする。また、例えば多量の銀化合物を系内に投入して、その混合物中に溶解しない銀化合物が残留する場合でも、系内に上記3成分の混合相が存在することで、当該混合相内で本発明が良好に実施可能である。 [0026] このような極性分子としては、例えば、分子内にアミノ基(NH2)を有する有機化合物を好ましく挙げることができる。例えば上記引用文献5,6等にも記載されるように、アミノ基を有する分子は、銀化合物内の銀原子にアミノ基を介した配位結合を生じることによって錯化合物を形成し易いと共に、銀化合物の構造を化学的に不安定にして本来の分解温度よりも低い温度で熱分解を生じさせることが知られている。本発明においても、少なくとも一つのアミノ基を含む極性分子を銀化合物に介在させることにより、極性溶媒に対する溶解度が発現すると共に、銀化合物の本来の分解温度よりも低い温度で熱分解を生じさせることができるため、アミノ基と銀原子間の配位結合を介した錯化合物等が形成されているものと考えられる。 [0027] 上記アミノ基は、一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)であることが好ましいが、二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であっても銀化合物中の銀原子への配位が可能である。一方、三級アミノ基となった場合には、空間的に銀原子への配位が困難になる場合がある。 [0028] 本発明で好ましく使用される極性分子としては、上記アミノ基に接続する炭化水素鎖等が比較的短く、例えば、含まれる炭素数が6以下のもの、更に好ましくは炭素数が5以下のものや、複数のアミノ基を有するもの、水酸基(-OH)やカルボキシル基(-COOH)の極性基を併せ持つものなどが挙げられる。つまり、具体的には、短鎖のアルキルアミン類、一分子内に2個のアミノ基を有するアルキルジアミン類や、アミノ基と水酸基を有するアミノアルコール類、アミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸等が挙げられる。また、アミノ基と水酸基を有すると共に、アルキル鎖中にエーテル結合を有するアミノエトキシ類を挙げることができる。 [0029] 上記の構造を有する極性分子が本発明で好ましく用いられる理由は明らかでないが、このような構造を有する極性分子を用いることで、銀化合物内の銀原子にアミノ基が配位結合等した際に比較的親水性の部分が表面に現れることになるため、反応媒である水相中などへの溶解度の向上に寄与するものと考えられる。本発明においては、析出させる金属銀の形態などに応じて特定の極性分子を選択し、又は、複数の極性分子を混合して用いることで、反応媒への溶解度や、銀化合物の分解性を制御することが可能となる。 好ましく使用できる短鎖のアルキルアミン類の具体例としては、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、4-メトキシブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン等が工業的に入手可能であり、望ましく使用される。 [0030] また、好ましく使用できるアルキルジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 [0031] また、好ましく使用できるアミノアルコール類としては、メタノールアミン、2-アミノエタノール、1-アミノ-2-ブタノール等の他、複数の水酸基を持つジエタノールアミン等が挙げられる。また、アミノエトキシ化合物類としては、2-(2-アミノエトキシ)エタノールが入手容易であって、典型的に使用される。また、好ましく使用できるアミノ酸としては、グリシン、βアラニン、γアミノ酪酸等の各種のアミノ酸が適宜使用可能であるが、αアミノ酸に比較して、βアミノ酸、γアミノ酸を用いた場合に銀化合物の分解が容易になる傾向が見られる。 [0032] 銀化合物に対して上記極性分子を介在させる方法としては、予め銀化合物に対して所定量の極性分子を混合して錯化合物等を形成させ、その後に熱分解の際の反応媒となる水相などの極性溶媒に投入して溶解させ、加熱により銀化合物の熱分解を行ってもよい。この方法によれば、大容量の金属銀の析出を行う場合にも、均質な金属銀を容易に得ることが可能な点で好ましい。これは、この方法では、反応媒中に均質な銀化合物と極性分子の錯化合物等が供給され、これらが加熱の際にそれぞれの錯化合物等の成分に応じた固有の温度で熱分解を生じるため、均質な銀原子の生成が安定して行えるためであると考えられる。 [0033] この方法により、銀化合物に対して極性分子を介在させて得た錯化合物等を反応媒に溶解させる際には、銀化合物に対して混合する極性分子の割合を、銀化合物との錯化合物を形成するための等量よりも多くすることで、円滑な溶解を行うことができる。これは、反応媒中において、極性分子の一部が錯化合物から解離を生じる等するためと考えられる。使用する反応媒の量にも依るが、一般的には4倍等量以上の極性分子を銀化合物に混合しておくことで、反応媒への円滑な溶解を行うことができる。 [0034] 銀化合物に対して有効な極性分子を混合して適宜の温度で撹拌することにより、一般的には固体状態の銀化合物がペースト状に変化し、極性溶媒に可溶の状態となる。この方法で金属銀の析出を行う場合には、銀化合物と極性分子を混合して生じる錯化合物等の熱分解温度以下の温度に保持した反応媒(極性溶媒)にペースト状等にした銀化合物を投入して撹拌し、均一な混合相を形成した後に、加熱により銀化合物を熱分解させることが好ましい。このようにすることで、大規模に金属銀の析出を行う場合にも、各銀化合物が温度のみを契機にして分解を生じる結果、均質な金属銀の析出を行うことができる。一方、錯化合物等の熱分解温度より高温で熱分解を生じさせる場合には、所定の温度に保持した反応媒にペースト状等にした銀化合物を投入して、銀化合物を熱分解させることも可能である。 [0035] 一方、析出する金属銀の形態制御などの目的に応じて、予め反応媒中に所定量の極性分子を溶解した混合液を作成し、これを所望の温度に加熱したものに対して銀化合物を投入することでも、金属銀の析出を生じさせることができる。この方法によれば、投入した銀化合物が反応媒中の極性分子と錯化合物等を生じることで溶解し、次いでこの錯化合物等が熱分解を生じることで、銀原子が放出されて金属銀が析出するものと考えられる。この方法によれば、生成する錯化合物等に固有の熱分解温度以上の温度において金属銀を析出させることが可能となり、析出する金属銀の形態の制御方法として有効である。 その他、所定の極性溶媒と予め錯化合物等を形成させた銀化合物を、それと同一又は異なる極性溶媒を含む反応媒中に投入して金属銀の析出を行う等、適宜の方法によって金属銀を析出させることが可能である。 [0036] (3)金属銀の析出のための極性溶媒(反応媒)について 本発明において、極性分子の存在下で銀化合物を熱分解して金属銀を析出させる反応媒としては、特に銀化合物と極性分子との錯化合物等の複合体について所定の溶解度を示すものを用いることが好ましい。また、反応媒の種類によっても、当該錯化合物等の複合体についての溶解度の他に、当該複合体の分解開始温度等が変化するため、析出させる金属銀の形態などに応じて適宜反応媒とする物質や、その組合せを選択することができる。 [0037] 本発明においては、水相などの主に極性を有する反応媒中での金属銀の析出を行う観点から、銀化合物に介在させる極性分子として典型的には上記のように複数の極性官能基を含む有機化合物が好ましく用いられる。このため、反応媒としては、これら使用する極性分子との溶解度が高いものが好ましく用いられる。その他、錯化合物等の複合体の熱分解温度への影響や、反応媒が有する蒸気圧や沸点などが考慮されて、適宜、反応媒を決定することができる。 [0038] 典型的には、本発明における反応媒としては、水相を用いる他に、アルコールやアセトン、アセトニトリルなどの極性を有する有機溶媒を用いることが望ましい。これらの極性溶媒中においては、本発明で使用される銀化合物と極性分子との錯化合物等の複合体が一定の溶解度を示し、また、30~100℃程度の温度で熱分解を生じることができるため、金属銀の析出の反応媒として好ましく用いることができる。 特に、水相、メタノール、エタノール等の水酸基を有すると共に、比較的分子量が小さい物質を反応媒に用いた場合には、銀化合物と極性分子との錯化合物等の複合体が高い溶解度を有する傾向が見られるため、これらを単独で又は他の物質と混合したものが好ましく使用される。 [0039] (4)析出する金属銀の形態制御について 本発明に係る金属銀の析出法においては、金属銀が析出する行程を制御することにより、析出する金属銀の形態を容易に制御することが可能である。つまり、金属銀が析出する際の反応媒中に、析出する金属銀が所定のサイズ以上にならないように過剰な成長を抑制したり、特に所定方位への成長を抑制したりする役目を果たすいわゆる“キャッピング分子”に相当する分子を存在させることで、析出する金属銀の形態を制御することが可能である。また、銀イオンなどからの析出の場合に用いられるのと同様に、いわゆる“テンプレート分子”を反応媒中に存在させておくことで、所望の形態の金属銀を析出させることも可能である。 [0040] 上記キャッピング分子としては、所定の形態制御の目的に適した分子種を反応媒に溶解させる他、特に、上記で銀化合物に介在させて反応媒への溶解度の発現に用いた極性分子の種類や濃度を調整することでキャッピング分子として利用し、析出する金属銀の形態制御を行うことも有効である。使用する極性分子がキャッピング分子として機能する理由は明らかでないが、本発明で望ましく使用する極性分子はアミノ基を含んでおり、このアミノ基は配位結合によって銀化合物中の銀原子に結合し、銀化合物が熱分解した後においても銀原子との結合を保つと考えられる。このため、本発明において銀化合物が熱分解して生じる銀原子には使用した極性分子が結合しており、このために銀原子の移動度が制限されたり、また析出した金属銀表面の特定の結晶方位面に高密度で極性分子が存在する等の機構により極性分子がキャッピング分子として機能するものと推察される。 [0041] 特に、以下の実施例などにより示されるように、本発明による金属銀の析出においては、極性分子がキャッピング分子として作用することで、異方性が強い形状の金属銀が析出可能である。つまり、特に異方性が強い細線状の金属銀を銀イオンから析出させる場合には、特許文献1~3等に記載のようにPVP等の極性の強い鎖状分子を介在させ、これをテンプレートとして析出を行う必要がある。これに対して、本発明による金属銀の析出の際には、テンプレート分子を介在させることなく細線状の金属銀を析出可能であり、これは使用する極性分子によるキャッピングの効果であると考えられる。 [0042] 一方、キャッピング分子として、比較的分子量が大きな分子を反応媒中に存在させることで、特に微粒子等の等方的な形態の金属銀を得ることが可能である。このような分子が反応媒中に存在すると、銀化合物が熱分解して生成した銀原子にこれらの分子が付着するなどして、銀原子の移動度が制限されると共に、銀原子の凝集によって生成される銀微粒子の表面に被膜が生成され、一定以上の粒子の成長が困難になるためであると考えられる。 [0043] また、特に細線状の金属銀の析出を行う場合には、水溶性の鎖状ポリマーを反応媒中に溶解し、このポリマー上に選択的に金属銀を析出させるテンプレート分子とすることも有効である。このようなテンプレート分子となる鎖状ポリマーとしては、ポリマー中に極性基を有する極性ポリマーが好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ゼラチン等の高分子が好ましく用いられる。 [0044] (5)析出した金属銀の回収について 本発明により析出した金属銀は、一般的に使用した極性分子や、その他のキャッピング分子により表面が保護されていることにより、特に使用した極性溶媒中に高濃度で単分散可能である。このため、析出した金属銀表面の保護膜を損なわないように取り出したり、更に適宜の保護分子と置換することなどにより、析出した金属銀の凝集が防止され、各種の用途に形態を維持した状態で使用することが可能である。 以下、実施例を参照して、本発明を更に具体的に説明する。 実施例 [0045] [実施例1] 銀化合物として、硝酸銀(関東化学、一級)とシュウ酸アンモニウム一水和物またはシュウ酸二水和物(関東化学、特級)から合成したシュウ酸銀0.48g(1.6mmol)に対して、これに介在させるための極性分子として、表1に記載するものをそれぞれ12.5mmol加えて、室温において10分間撹拌した。その後、蒸留水4mlを加えて撹拌をしながら、直ちに100℃に加熱して2時間撹拌を行って、シュウ酸銀の溶解性や金属銀の析出の可否について検討を行った。また、比較のため、シュウ酸銀のみを蒸留水に加えて、100℃に加熱して2時間撹拌を行った。 [0046] 上記検討の結果を表1に示す。表1中で、投入したシュウ酸銀の水への溶解度において、投入したシュウ酸銀の全量が速やかに溶解したものを「◎」、一部が溶解したと認められるものを「△」、溶解が認められないものを「×」で示した。また、金属銀の析出について、良好な析出が見られたものを「◎」、析出が見られたものを「○」、僅かに析出が見られたものを「△」、析出が認められないものを「×」で示した。 [0047] 表1から明らかなように、使用したシュウ酸銀は100℃の水中で溶解しないと共に、分解による金属銀の析出を生じないのに対して、予め極性分子を混合したものについては、有意の水への溶解度が生じると共に、100℃程度の低温で分解して灰色の懸濁液を生じた。以下に示すように、灰色の懸濁液は微細な金属銀の析出に伴うものであり、極性分子の存在によりシュウ酸銀が化学的に活性化され、水中への溶解度を生じると共に、低温で分解して銀原子を放出することが示された。特に、分子内に、2つのアミノ基を含むアルキルジアミンや、アミノ基と水酸基を有するアミノエタノールやアミノエトキシエタノールにおいて、その効果が顕著に見られた。 [0048] [表1] [0049] 上記でN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成、特級)を用いて金属銀が析出した水溶液に対し、メタノール(関東化学、一級)4mlを加えて遠心分離を行って沈殿物を得た。得られた沈殿物を乾燥後、粉末X線回折計(リガクMiniFlex II)、走査型電子顕微鏡(JEOL JEM7600)により分析した。図1は、沈殿物の粉末X線回折の結果を示す。図2は、走査型電子顕微鏡観察の結果を示す。分析の結果から、沈殿物に含まれる結晶相は金属銀であると考えられた。また、走査型電子顕微鏡観察の結果から、沈殿物の大半は数100nm程度の大きさの不定形の金属銀であり、一部に長さが数μm程度の細線状の金属銀が混在するものと考えられた。 [0050] [実施例2] 次に、シュウ酸銀と極性分子を混合したものを用いて金属銀を析出させる際に使用できる反応媒を明らかにするため、実施例1で使用したシュウ酸銀0.48g(1.6mmol)に対して、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン1.28g(12.5mmol)を加えて10分間撹拌した後、表2に示すように蒸留水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ベンゼンをそれぞれ4ml加えたものを調整した。各混合物を表2に示す温度に加熱して2時間攪拌した際の、シュウ酸銀の溶解性や金属銀の析出の可否について検討を行った。 [0051] 上記検討の結果を表2に示す。表2中で、投入したシュウ酸銀の溶解度について、投入したシュウ酸銀の全量が速やかに溶解したものを「◎」、全量が溶解したものを「○」一部が溶解したと認められるものを「△」、溶解が認められないものを「×」で示した。また、金属銀の析出について、良好な析出が見られたものを「◎」、析出が見られたものを「○」で示した。 [0052] 表2に示すように、極性分子としてN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンを混合したシュウ酸銀については、水以外にも、特にアルコールにおいて顕著な溶解度が観察され、水酸基を含む溶媒に対して溶解度を示すことが推察された。また、シュウ酸銀が溶解した反応媒においては、60~100℃程度の低温でシュウ酸銀が分解して金属銀を生じることが示された。一方、非極性溶媒であるベンゼンを用いた場合には、シュウ酸銀の溶解が認められない一方で、投入したシュウ酸銀が水相と相分離を生じた状態で分解して金属銀を生じることが観察された。 [0053] [表2] [0054] [実施例3] 上記で明らかになった水相等の極性溶媒中での銀化合物の熱分解に伴う金属銀の析出において、析出する金属銀の形態制御を試みた。 実施例1で用いたシュウ酸銀0.48g(1.6mmol)に対して、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン1.28g(12.5mmol)を加えて10分間撹拌した。これに対して、ゼラチン(関東化学)を40mg/mlの濃度で蒸留水に溶解した水溶液4mlを加えて混合水溶液を調整した。この水溶液を100℃に加熱して2時間撹拌を行ったところ、溶液の色が黄色に変化した後に徐々に赤色に変化して、安定な分散液が得られた。攪拌終了後、反応溶液を自然放冷し、3.1mmol/lのN,N-ジメチル1,3-ジアミノプロパン水溶液 4mlを加えて遠心分離をおこなった。さらに、得られた沈殿物に蒸留水4ml加え再分散させた後、遠心分離して、得られた沈殿物を自然乾燥し生成物を得た。 [0055] 図3には、上記で得られたサンプルを透過型電子顕微鏡(JEOL JEM2100F)により観察した結果を示す。図3に示すように、上記で析出物として得られた金属銀は、粒径が10~30nm程度の微細な粒子形状を有していた。また、図3から明らかなように、各粒子は所定の間隔をおいて観察されることから、各粒子は銀微粒子が保護被膜で被覆された被覆銀微粒子であると考えられる。 [0056] 上記銀微粒子を分散させた水溶液を樹脂基板上に塗布して100℃で60分間焼成した結果、導電性を有する銀薄膜が得られた。また、熱重量・質量同時分析装置(TG-Mass/熱重量分析(TG):TAインスツルメントSDT Q600、質量分析(Mass):JEOL JSM-Q1050GC、EIと光イオン化法、ヘリウム気流下)内で上記銀微粒子を加熱・測定した結果、銀微粒子表面の被膜には上記使用したN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンとゼラチンが含まれることが推察され、またシュウ酸に起因する二酸化炭素が検出された。 [0057] [実施例4] 上記で明らかになった水相等の極性溶媒中での銀化合物の熱分解に伴う金属銀の析出において、析出する金属銀の他の形態制御を試みた。具体的には、銀化合物に介在させる極性分子であるN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンの濃度により、析出する金属銀の形態の制御を試みた。また、析出の際の温度を制御するため、銀化合物であるシュウ酸銀の分解が生じる温度以上の所定の温度(80℃)に保持したN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中にシュウ酸銀を投入する方法で検討を行った。 [0058] N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン0.64g(6.25mmol)、1.28g(12.5mmol)、1.92g(18.3mmol)、2.56g(25.0mmol)、3.20g(31.3mmol)、3.84g(47.5mmol)をそれぞれ秤量し、蒸留水2.8mlに加えて混合し、2.23mol/l、4.46mol/l、6.54mol/l、8.93mol/l、11.2mol/l、17.0mol/lの各濃度のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液を調整した。各水溶液を80℃まで加熱した後、実施例1で得られたシュウ酸銀0.48g(1.6mmol)を各水溶液に加えた。添加後に撹拌するとシュウ酸銀は直ちに水溶液に溶解して均一な水溶液となり、その後、溶液の色は黄色から赤色に変化し、最後には黒色の懸濁液へと変化した。30分後、反応溶液を自然放冷し反応を終了させた。水溶液中の懸濁物を取り出すために、3.1mmol/lのN,N-ジメチル1,3-ジアミノプロパン水溶液4mLを加えて遠心分離をおこなった。さらに、得られた沈殿物に蒸留水4ml加え再分散させた後に遠心分離し、得られた沈殿物を自然乾燥し、走査型電子顕微鏡(JEOL JEM7600)により観察した。 [0059] 図4には、上記の各濃度のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中で析出した金属銀の走査型電子顕微鏡像を示す。図4に示されるように、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液に対してシュウ酸銀を投入した場合にも、予めN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンとシュウ酸銀を混合して水に溶かした場合と同様の析出物が生じた。また、水溶液中のN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンの濃度に応じて析出物の形態が変化し、濃度が4.46mol/l程度の場合に、微細な細線状(ワイヤー状)の金属銀が析出物の大半を占める一方で、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンの濃度が高まると、プレート状の金属銀が増加する傾向が見られた。 [0060] このように、本実施例で析出した金属銀が異方性の高い形状を示す理由は、水溶液中に存在するN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンが析出中の金属銀の表面に付着する等により、特定の方位への結晶成長を妨げる結果であると考えられる。特に、本実施例においては、細線状の金属銀の析出を促すテンプレート分子が含まれていないにも関わらず非常に高い異方性を持った金属銀の析出が可能であることは、従来の銀イオンを用いた金属銀の析出と異なる経路による析出が生じていることを示唆すると考えられる。 [0061] また、上記で得られた細線状の銀等は、水相やアルコール等に良好に分散するなど親水性を有しており、表面に親水性の保護被覆が形成されていると考えられた。熱重量・質量同時分析装置(TG-Mass/熱重量分析(TG):TAインスツルメントSDT Q600、質量分析(Mass):JEOL JSM-Q1050GC、EIと光イオン化法、ヘリウム気流下)内で析出した金属銀を加熱・測定した結果、析出した金属銀の表面には上記使用したN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンが存在することが推察された。 [0062] [実施例5] 上記で明らかになった水相等の極性溶媒中での銀化合物の熱分解に伴う金属銀の析出において、析出する金属銀の他の形態制御を試みた。具体的には、硝酸銀水溶液中からの細線状銀の析出の際に、テンプレート材として一般的に使用されるポリビニルピロリドンを混合した状態での金属銀の析出を検討した。 [0063] N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン1.28g(12.5mmol)、ポリビニルピロリドンK30(分子量40000、東京化成)1.2g、蒸留水2.8ml、0.1規定の硝酸(東京化成)水溶液0.1mlを加えた混合水溶液を調整した。この水溶液を80℃まで加熱した後、実施例1で得られたシュウ酸銀0.48g(1.6mmol)を加えた。添加後に撹拌するとシュウ酸銀は直ちに水溶液に溶解して均一な水溶液となり、その後、溶液の色は黄色から赤色に変化し、最後には黒色の懸濁液へと変化した。30分後、反応溶液を自然放冷し反応を終了させた。水溶液中の懸濁物を取り出すために、3.1mmol/lのN,N-ジメチル1,3-ジアミノプロパン水溶液4mLを加えて遠心分離をおこなった。さらに、得られた沈殿物に蒸留水4ml加え再分散させた後に遠心分離し、得られた沈殿物を自然乾燥し、走査型電子顕微鏡(JEOL JEM7600)により観察した。 [0064] 図5には、ポリビニルピロリドンを混合したN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン水溶液中で析出した金属銀の走査型電子顕微鏡像を示す。ポリビニルピロリドンを混合した場合であっても、微細な細線状の金属銀が析出することが観察された。 産業上の利用可能性 [0065] 以上説明したように、本発明に係る金属銀の析出方法は、比表面積の大きな金属銀を水相等の極性溶媒において容易に金属銀を析出することができる。また、析出する金属銀の形態を制御することが可能であり、従来は提供が困難であった各種の形態や特性を有する金属銀の提供を可能とするものである。 |
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