INITIATOR-MODIFIED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL ALIGNMENT FILM, POLARIZING OPTICAL ELEMENT, AND CAPPING AGENT-MODIFIED NANOROD
外国特許コード | F150008310 |
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整理番号 | S2013-0529-C0 |
掲載日 | 2015年4月13日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP051192 |
国際公開番号 | WO 2014122989 |
国際出願日 | 平成26年1月22日(2014.1.22) |
国際公開日 | 平成26年8月14日(2014.8.14) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | INITIATOR-MODIFIED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL ALIGNMENT FILM, POLARIZING OPTICAL ELEMENT, AND CAPPING AGENT-MODIFIED NANOROD |
発明の概要(英語) | A method for producing initiator-modified nanorods, including: a step for obtaining capping agent-modified nanorods having a capping agent bonded to part of the surface of nanorods by bonding a capping agent to part of the surface of nanorods having an average aspect ratio of 1.2 or higher; and a step for obtaining initiator-modified nanorods having a capping agent and initiator bonded to the surface of nanorods by bonding an initiator having polymerization-initiating groups to the surface of the nanorods to which the capping agent is not bonded, subsequent to the step for obtaining capping agent-modified nanorods. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | 開始剤修飾ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッド |
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発明の概要 | 平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程と、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の後に、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る工程と、 を含む開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程と、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の後に、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る工程と、 を含む開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 [請求項2] 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の前に、前記ナノロッドの表面にカップリング剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記カップリング剤が結合したカップリング剤修飾ナノロッドを得る工程をさらに含んでおり、 前記カップリング剤を介して前記キャップ剤及び前記開始剤をそれぞれ前記ナノロッドの表面に結合させる、 請求項1に記載の開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 [請求項3] 前記カップリング剤が、前記ナノロッドの表面と結合することが可能な官能基Aと、前記ナノロッドの表面及び前記官能基Aのいずれとも結合しない官能基Bとを有するものであり、 前記キャップ剤が、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C1を有するものであり、 前記開始剤が、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C2をさらに有するものであり、 前記カップリング剤修飾ナノロッドを得る工程において前記ナノロッドの表面に前記官能基Aを介して前記カップリング剤を結合させ、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程において前記カップリング剤修飾ナノロッドの表面の前記カップリング剤の一部の官能基Bに前記官能基C1を介して前記キャップ剤を結合させ、 前記開始剤修飾ナノロッドを得る工程において前記キャップ剤修飾ナノロッドの表面の前記カップリング剤に残存する未反応の官能基Bに前記官能基C2を介して前記開始剤を結合させる、 請求項2に記載の開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 [請求項4] 前記ナノロッドの短軸方向の平均直径が1~100nmである請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 [請求項5] 前記重合開始基がリビングラジカル重合開始基である請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の開始剤修飾ナノロッドの製造方法。 [請求項6] 請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の開始剤修飾ナノロッドの製造方法により得られたものである開始剤修飾ナノロッド。 [請求項7] 前記開始剤の被覆量が、1nm2あたりの分子数で0.3~1.0nm-2である請求項6に記載の開始剤修飾ナノロッド。 [請求項8] 請求項6又は7に記載の開始剤修飾ナノロッドの前記重合開始基を起点として重合性モノマーを重合せしめることにより、ポリマー鎖がグラフト化されたグラフト化ナノロッドを得るグラフト化ナノロッドの製造方法。 [請求項9] 請求項8に記載のグラフト化ナノロッドの製造方法により得られたものであるグラフト化ナノロッド。 [請求項10] 低分子液晶化合物を含有するマトリックス中に、請求項9に記載のグラフト化ナノロッドが分散されているグラフト化ナノロッド分散液晶。 [請求項11] 液晶状態において前記低分子液晶化合物及び前記グラフト化ナノロッドにグラフト化されたポリマー鎖がいずれもネマチックであるか、又はいずれもスメチックである請求項10に記載のグラフト化ナノロッド分散液晶。 [請求項12] 請求項10又は11に記載のグラフト化ナノロッド分散液晶を配向させて得られたものであるグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜。 [請求項13] 請求項12に記載のグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜を用いる偏光光学素子。 [請求項14] 平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤が結合しており、前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤が結合していない領域を有しているキャップ剤修飾ナノロッド。 [請求項15] 前記ナノロッドの表面にカップリング剤が結合しており、前記キャップ剤は前記カップリング剤を介して前記ナノロッドに結合しており、かつ、前記キャップ剤が結合していない領域に前記カップリング剤が露出している請求項14に記載のキャップ剤修飾ナノロッド。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 開始剤修飾ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッド 技術分野 [0001] 本発明は、開始剤修飾ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッドに関する。 背景技術 [0002] 従来から、ナノロッド等のナノ粒子を配向させる技術としては、表面特性を改質させた粒子を液晶マトリックス中に溶解又は分散させ、前記液晶マトリックスの配向特性を利用して配向させる技術が知られている。例えば、特開2010-144032号公報(特許文献1)には、液晶ディスプレイ用ナノロッド配合物として、ホストとしてのネマチック液晶中に流動性の有機界面活性剤でコーティングされた酸化亜鉛等のナノロッドをドーパントとして含有させた配合物が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の配合物においては、ナノロッドの配向は液晶マトリックスの配向性に一義的に支配されるため、ナノロッドの配向を十分に制御することは困難であった。また、このような方法では液晶がドメインを形成してしまう場合があるために広領域にわたって配向を制御することが困難であるという問題を有していた。 [0003] また、例えば、特開2006-291016号公報(特許文献2)においては、金属イオン還元又は配位子の交換によって液晶相溶性分子を表面に結合させた金属ナノロッドを液晶媒体中に溶解又は分散させる方法が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法では用いることができるナノロッドや液晶相溶性分子の種類が限られており、また、ナノロッドの表面における各液晶相溶性分子の被覆量を制御することが困難であるためにナノロッドの配向を十分に制御することが未だ困難であるという問題を有していた。 [0004] 他方、基材表面の親水性や接着性といった表面特性を改質する方法として、基材表面を起点としてモノマーを重合せしめ、基材に直接結合したポリマー鎖を形成する方法(グラフト化)が知られている。この方法は、基材とポリマー鎖との結合が強いことや、ポリマー鎖の種類を基材の種類に依らずに選択できる基材の修飾方法として注目されている。また、このような方法においては、得られる基材の表面特性をより高度に制御することを目的として、グラフト化されるポリマー鎖の密度を調節する方法が検討されている。 [0005] 例えば、Zhiyi Bao、他2名、Macromolecules、2006、39、p.5251-5258(非特許文献1)には、金(Au)やシリカ(SiO2)からなる基材表面をPMMA(poly methyl methacrylate)やPHEMA(poly(2-hydroxyethyl) methacrylate)で修飾する際において、前記基材表面をATRP開始剤(α-bromopropionyl bromide等)と重合開始能のない化合物(α-methylpropyonyl bromide等)とで同時に被覆することにより、重合の起点となるATRP開始剤の表面密度を制御する方法が記載されている。また、Kenichi Nagase、他5名、Langmuir、2008、24、p.511-517(非特許文献2)には、シリカビーズの表面をPIAAm(poly(N-isopropylacrylamide))で修飾する際において、前記シリカビーズの表面にATRP開始剤及び重合開始能のない化合物(Phenethyltrichlorosilane)を含有するシランカップリング剤を作用させることにより、前記ATRP開始剤の表面密度を制御する方法が記載されている。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1 : 特開2010-144032号公報 特許文献2 : 特開2006-291016号公報 非特許文献 [0007] 非特許文献1 : Zhiyi Bao、他2名、Macromolecules、2006、39、p.5251-5258 非特許文献2 : Kenichi Nagase、他5名、Langmuir、2008、24、p.511-517 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0008] しかしながら、非特許文献1~2に記載の方法をナノロッド等のナノ粒子の表面修飾に適用するとナノロッドが凝集する場合があることを本発明者らは見出した。さらに、非特許文献1~2に記載の方法では、開始剤被覆量を直接定量して制御することができず、グラフト化させるポリマーの量を高度に制御することは困難であり、ナノロッド等の表面修飾に適用してその配向を高度に制御する方法としては未だ不十分であることを本発明者らは見出した。 [0009] 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、開始剤被覆量を高度に制御することでき、かつ、開始剤被覆量を非破壊で直接定量することができる開始剤修飾ナノロッドの製造方法、及びその方法により得ることができ、グラフト化させるポリマー鎖の密度を高度に制御することできる開始剤修飾ナノロッド、前記開始剤修飾ナノロッドを用いて得られるグラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッドを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0010] 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、平均アスペクト比が特定の範囲内にあるナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る工程、を順次実施することにより、得られる開始剤修飾ナノロッドにおいて、開始剤被覆量を制御することができることを見出した。また、このような方法によれば、重合の起点となる開始剤の被覆量を非破壊で直接定量して制御することができるため、得られる開始剤修飾ナノロッドに重合させるポリマー鎖の密度を高度に制御することが可能となることを本発明者らは見出し、本発明を完成するに至った。 [0011] すなわち、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法は、 平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程と、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の後に、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る工程と、 を含むことを特徴とするものである。 [0012] 本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法としては、前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の前に、前記ナノロッドの表面にカップリング剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記カップリング剤が結合したカップリング剤修飾ナノロッドを得る工程をさらに含んでおり、前記カップリング剤を介して前記キャップ剤及び前記開始剤をそれぞれ前記ナノロッドの表面に結合させることが好ましい。 [0013] また、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法としては、 前記カップリング剤が、前記ナノロッドの表面と結合することが可能な官能基Aと、前記ナノロッドの表面及び前記官能基Aのいずれとも結合しない官能基Bとを有するものであり、 前記キャップ剤が、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C1を有するものであり、 前記開始剤が、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C2をさらに有するものであり、 前記カップリング剤修飾ナノロッドを得る工程において前記ナノロッドの表面に前記官能基Aを介して前記カップリング剤を結合させ、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程において前記カップリング剤修飾ナノロッドの表面の前記カップリング剤の一部の官能基Bに前記官能基C1を介して前記キャップ剤を結合させ、 前記開始剤修飾ナノロッドを得る工程において前記キャップ剤修飾ナノロッドの表面の前記カップリング剤に残存する未反応の官能基Bに前記官能基C2を介して前記開始剤を結合させることがより好ましい。 [0014] さらに、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法においては、前記ナノロッドの短軸方向の平均直径が1~100nmであることが好ましく、また、前記重合開始基がリビングラジカル重合開始基であることが好ましい。 [0015] 本発明の開始剤修飾ナノロッドは、前記本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法により得られたものであることを特徴とする。本発明の開始剤修飾ナノロッドにおいては、前記開始剤の被覆量が、1nm2あたりの分子数で0.3~1.0nm-2であることが好ましい。 [0016] また、本発明のグラフト化ナノロッドの製造方法は、前記本発明の開始剤修飾ナノロッドの前記重合開始基を起点として重合性モノマーを重合せしめることにより、ポリマー鎖がグラフト化されたグラフト化ナノロッドを得ることを特徴とするものである。さらに、本発明のグラフト化ナノロッドは、前記本発明のグラフト化ナノロッドの製造方法により得られたものであることを特徴とするものである。 [0017] また、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶は、低分子液晶化合物を含有するマトリックス中に、前記本発明のグラフト化ナノロッドが分散されていることを特徴とするものである。本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶としては、液晶状態において前記低分子液晶化合物及び前記グラフト化ナノロッドにグラフト化されたポリマー鎖がいずれもネマチックであるか、又はいずれもスメチックであることが好ましい。 [0018] さらに、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜は、前記本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶を配向させて得られたものであることを特徴とするものである。また、本発明の偏光光学素子は、前記本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜を用いることを特徴とするものである。 [0019] さらに、本発明のキャップ剤修飾ナノロッドは、平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤が結合しており、前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤が結合していない領域を有していることを特徴とするものである。本発明のキャップ剤修飾ナノロッドとしては、前記ナノロッドの表面にカップリング剤が結合しており、前記キャップ剤は前記カップリング剤を介して前記ナノロッドに結合しており、かつ、前記キャップ剤が結合していない領域に前記カップリング剤が露出していることが好ましい。 [0020] なお、本発明により上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法においては、先ず、キャップ剤による被覆を行った後に開始剤による被覆を行うため、重合の起点となる開始剤の被覆量を直接定量しつつ、その量をより高度に制御することができる。そのため、得られる開始剤修飾ナノロッドに重合させるポリマー鎖の密度を高度に制御することが可能となる。また、前記被覆量の定量は非破壊でも可能であるため、制御精度をさらに向上させることが可能となる。これに対して、非特許文献1~2に記載されている方法のように基材表面を開始剤と重合開始能のない化合物とで同時に被覆する方法では、開始剤の被覆量は仕込み比から間接的に算出するか又は被覆させた化合物を剥離して定量することしかできず、非破壊で正確に定量することはできないため、ナノロッドに重合させるポリマー鎖の密度を高度に制御する方法としては不十分であった。 [0021] また、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法は前記キャップ剤と前記開始剤とを段階的に被覆させるものであるため、前記キャップ剤と前記開始剤とを自由に選択することができ、各反応を最適化させることも容易であり、さらに、表面が開始剤で均一に被覆された開始剤修飾ナノロッドを得ることが可能となる。これに対して、非特許文献1~2に記載されているような従来の方法では基材表面が開始剤によって均一に被覆されない場合があるため、モノマーを重合させる際に重合阻害が生じる場合があり、また、このような方法をナノロッド等のナノ粒子の表面修飾に適用すると未修飾の表面が残存することによりナノロッドが凝集する場合があると本発明者らは推察する。 発明の効果 [0022] 本発明によれば、開始剤被覆量を高度に制御することでき、かつ、開始剤被覆量を非破壊で直接定量することができる開始剤修飾ナノロッドの製造方法、及びその方法により得ることができ、グラフト化させるポリマー鎖の密度を高度に制御することできる開始剤修飾ナノロッド、前記開始剤修飾ナノロッドを用いて得られるグラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッドを提供することが可能となる。 [0023] さらに、本発明によれば、重合の起点となる開始剤の被覆量を正確に定量して制御することができ、表面にグラフト化されるポリマー鎖の量を高度に制御することができるため、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶におけるグラフト化ナノロッドと液晶マトリックス中の低分子液晶との相互作用を調整してナノロッドの配向を高度に制御することが可能となる。 図面の簡単な説明 [0024] [図1A] 本発明の開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量が0.4nm-2であるときに得られるグラフト化ナノロッドの好適な一実施形態を示す模式図である。 [図1B] 本発明の開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量が0.6nm-2であるときに得られるグラフト化ナノロッドの好適な一実施形態を示す模式図である。 [図1C] 本発明の開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量が2.0nm-2であるときに得られるグラフト化ナノロッドの好適な一実施形態を示す模式図である。 [図2] 本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法の好適な一実施形態を示す概念図である。 [図3] 比較例1の開始剤修飾ナノロッドの製造方法を示す概念図である。 [図4] 実施例2、4で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜の配向性評価における角度分布を示すグラフである。 [図5] 実施例1で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜のFE-SEM写真である。 [図6] 参考例1で得られた液晶配向膜のFE-SEM写真である。 発明を実施するための形態 [0025] 以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。 [0026] 〔開始剤修飾ナノロッド及びその製造方法〕 先ず、本発明の開始剤修飾ナノロッド及びその製造方法について説明する。本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法は、 平均アスペクト比が1.2以上であるナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程と、 前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の後に、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る工程と、 を含むものであり、本発明の開始剤修飾ナノロッドは、前記本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法により得られたものである。 [0027] <ナノロッド> 本発明に係るナノロッドは、平均アスペクト比が1.2以上のロッド状のナノ粒子であり、前記ロッド状とは、長軸と短軸とを有する異方性の形状のことをいい、具体的には、棒状、線状、板状、円筒状、楕円状、紡錘状等の形状が挙げられる。前記ナノロッドの形状がこのようなロッド状であることにより、得られる開始剤修飾ナノロッドを用いて得られるグラフト化ナノロッドを用いて液晶の波長特性等を制御することができる。 [0028] 本発明において、前記平均アスペクト比としては、1.2以上であることが必要であり、1.2~15であることが特に好ましい。前記平均アスペクト比が前記下限値未満であると、得られるグラフト化ナノロッドを偏光光学素子に用いた際に配向膜の偏光光学素子としての機能を十分に発揮できなくなる。他方、前記アスペクト比が前記上限値を超えると、得られるグラフト化ナノロッドの配向性が低下する傾向にある。 [0029] 本発明において、平均アスペクト比とは、長軸方向の長さと短軸方向の直径との比(長軸方向の長さ/短軸方向の直径)の平均値のことをいう。また、前記長軸方向の長さは最大長さを、前記短軸方向の直径は最大直径を意味し、前記平均アスペクト比、長軸方向の平均長さ及び短軸方向の平均直径は、任意の20個以上のナノロッドを透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、その値を平均化することにより求めることができる。 [0030] また、本発明に係るナノロッドとしては、短軸方向の平均直径が1~100nmであることが好ましく、1~50nmであることがより好ましく、5~20nmであることがさらに好ましく、7~15nmであることが特に好ましい。前記平均直径が前記下限値未満であると、得られる開始剤修飾ナノロッド及びグラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、液晶配向膜等に含有させた際にその透明性を低下させる傾向にある。 [0031] 本発明に係るナノロッドの基材としては、例えば、金、銀、銅、アルミ、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、白金、チタン、タングステン、ジルコニウム等の金属;シリカ、酸化亜鉛、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズ等の金属酸化物;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の高分子化合物が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、得られるグラフト化ナノロッドの配向の効果を利用できる範囲が顕著に広範になるという観点から、金属及び金属酸化物が好ましい。本発明に係るナノロッドとしては、これらのうちの1種からなるナノロッドを単独で用いても別の基材からなるナノロッドを2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、このようなナノロッドとしては、市販のものを用いてもよく、また、適宜公知の方法で作製したものを用いてもよい。 [0032] <カップリング剤> 本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法としては、前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程の前に、前記ナノロッドの表面にカップリング剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記カップリング剤が結合したカップリング剤修飾ナノロッドを得る工程をさらに含んでおり、前記カップリング剤を介して前記キャップ剤及び前記開始剤をそれぞれ前記ナノロッドに結合させることが好ましい。 [0033] このようなカップリング剤としては、前記ナノロッドの表面と結合することが可能な官能基Aと、前記ナノロッドの表面及び前記官能基Aのいずれとも結合しない官能基Bとを有するものであることが好ましい。これらの官能基A及び官能基Bとしては、前記カップリング剤においてそれぞれ1種であっても2種以上であってもよく、それぞれ1つであっても2つ以上であってもよい。本発明においては、このようなカップリング剤を用いることによって前記ナノロッドの表面を前記官能基Bで覆うことができる。 [0034] 前記官能基Aは、前記ナノロッドの表面と結合することが可能な官能基であり、前記ナノロッドの表面と強い相互作用を有するか、又は化学結合を作ることが可能な基のことをいい、前記ナノロッド表面と共有結合することが可能な基であることが好ましい。このような官能基Aとしては、前記ナノロッド表面が金属である場合には、チオール基、スルフィド基、アミノ基、チオイソシアニド基、イソシアニド基、水酸基等が挙げられる。前記ナノロッド表面が金属酸化物である場合には、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基、モノイソシアナートシリル基、ジイソシアナートシリル基、トリイソシアナートシリル基、モノクロロシリル基、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基、ジメチルシリルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、ホスホニル酸基が挙げられ、これらの中でも、メトキシシリル基、エトキシシリル基、イソプロピルオキシシリル基等のアルコキシシリル基が好ましい。また、前記ナノロッド表面が高分子化合物である場合には、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられる。 [0035] 前記官能基Bは、前記ナノロッドの表面と結合しない基、すなわち、前記ナノロッドの表面に対する強い相互作用を有さず、化学結合もしない基であり、かつ、前記官能基Aとも結合しない基である。また、続く工程において用いるキャップ剤の官能基C1及び開始剤の官能基C2と結合することが可能な基である。このような官能基Bとしては特に制限されず、前記ナノロッド、前記官能基A、前記官能基C1及び前記官能基C2に依存するが、続く工程において温和な条件下で結合を生成できるという観点から、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基、ハロゲン化スルホニル基、チオール基、イソシアナート基が挙げられる。 [0036] このような官能基A及び官能基Bを有するカップリング剤としては、例えば、3-メルカプト-1-プロパノール、4-メルカプト-1-ブタノール、5-メルカプト-1-ペンタノール等のチオール系カップリング剤;3-アミノプロピルメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明における好ましいカップリング剤としては、前記ナノロッド、前記官能基A、前記官能基C1及び前記官能基C2に依存するものであるため、一概にはいえないが、例えば、前記ナノロッドが酸化亜鉛であり、前記開始剤がリビングラジカル重合開始剤である場合には、トリアルコキシシリル基及びアミノ基を有する化合物が好ましく、このような化合物の具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シランが挙げられる。 [0037] <キャップ剤> 本発明に係るキャップ剤は、前記ナノロッドの表面と結合することが可能な化合物であり、前記結合は、ナノロッド表面に対する直接結合であってもよく、表面修飾されたナノロッドに対する間接的な結合であってもよい。前記表面修飾方法としては、界面活性剤による修飾や前記カップリング剤による修飾が挙げられ、本発明においては、より強固かつ容易に前記キャップ剤を前記ナノロッドの表面に結合させることが可能となる傾向にあるという観点から、前記ナノロッドの表面を前記カップリング剤で修飾することによって前記カップリング剤を介して結合することが好ましい。 [0038] 前記ナノロッドに直接結合する場合、前記キャップ剤としては、前記ナノロッドの表面と強い相互作用を有するか、又は化学結合を作ることが可能な基を有するものであることが好ましい。このような基としては、例えば、前記カップリング剤における官能基Aとして挙げた官能基が挙げられる。 [0039] 前記カップリング剤を介して結合する場合、前記キャップ剤としては、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C1を有するものであることが好ましい。また、続く工程において用いる開始剤の官能基C2と結合することが可能な基及び重合開始能を有する重合開始基のいずれも有さないものであることが好ましい。前記官能基C1としては、前記キャップ剤において1種であっても2種以上であってもよく、1つであっても2つ以上であってもよいが、反応を制御しやすいという観点から、キャップ剤1分子あたり1つであることが好ましい。本発明においては、このようなキャップ剤を用いることによって前記ナノロッドの表面の一部を前記開始剤と反応しないキャップ剤で覆う(より好ましくは前記官能基C2と反応しない基で覆う)ことが可能となり、開始剤被覆量を制御することができる。 [0040] 前記官能基C1としては特に制限されず、例えば、前記官能基Bがアミノ基である場合には、ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基、ハロゲン化スルホニル基等が挙げられる。前記官能基Bが水酸基である場合には、ハロゲン化アシル基、ハロゲン化スルホニル基等が挙げられ、前記官能基Bがカルボキシル基である場合には、水酸基、アミノ基等が挙げられる。また、前記官能基Bがクロロカルボニル基、クロロスルホニル基である場合には、水酸基、アミノ基、フェニル基等が挙げられ、前記官能基Bがチオール基である場合には、ビニル基、(メタ)アクリレート基等が挙げられ、前記官能基Bがイソシアナート基である場合には、水酸基、アミノ基等が挙げられる。 [0041] このような官能基C1を有するキャップ剤としては、例えば、1-ブロモプロパン、1-ブロモブタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、ベンジルブロミド、酢酸、プロピオン酸、塩化アセチル、1,3-ジブロモプロパン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモヘキサン、4-ブロモベンジルブロミド等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、蛍光X線分析(XRF)による非破壊での定量を行うことができるという観点から、本発明に係るキャップ剤としては、臭素を含む化合物であることが好ましく、例えば、1,3-ジブロモプロパン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモヘキサン、4-ブロモベンジルブロミドが好ましい。 [0042] <開始剤> 本発明に係る開始剤は、重合開始能を有する重合開始基を有しており、前記ナノロッドの表面と結合することが可能であり、かつ、前記キャップ剤と結合しない化合物である。前記ナノロッド表面との結合は、ナノロッド表面に対する直接結合であってもよく、表面修飾されたナノロッドに対する間接的な結合であってもよい。前記表面修飾方法としては、界面活性剤による修飾や前記カップリング剤による修飾が挙げられ、本発明においては、より強固かつ容易に前記開始剤を前記ナノロッドの表面に結合させることが可能となる傾向にあるという観点から、前記ナノロッドの表面を前記カップリング剤で修飾することによって前記カップリング剤を介して結合することが好ましい。 [0043] 前記ナノロッドに直接結合する場合、前記開始剤としては、前記ナノロッドの表面と強い相互作用を有するか、又は化学結合を作ることが可能な基を有するものであることが好ましい。このような基としては、例えば、前記カップリング剤における官能基Aとして挙げた官能基が挙げられる。 [0044] 前記カップリング剤を介して結合する場合、前記開始剤としては、前記官能基Bと結合することが可能な官能基C2と、前記重合開始基とを有するものであることが好ましい。これらの官能基C2及び重合開始基としては、前記開始剤においてそれぞれ1種であっても2種以上であってもよく、それぞれ1つであっても2つ以上であってもよいが、反応を制御しやすいという観点から、開始剤1分子あたりそれぞれ1つであることが好ましい。 [0045] 前記官能基C2としては特に制限されず、例えば、前記キャップ剤における官能基C1として挙げた官能基が挙げられる。また、前記重合開始基としては、ラジカル重合開始基、アニオン重合開始基、カチオン重合開始基等が挙げられ、これらの中でも、分子量分布の狭い高分子重合が可能であるという観点から、リビングラジカル重合開始基であることが好ましい。また、前記リビングラジカル重合開始基としては、酸や塩基の発生を伴わないためにナノロッドの形状に影響を与えない傾向にあるという観点から、RAFT重合開始基、NMP重合開始基,ATRP重合開始基であることがより好ましく、重合せしめるモノマーの種類の制限が少ないという観点から、ATRP重合開始基であることがさらに好ましい。このようなATRP重合開始基としては、例えば、ハロゲン化アルキルを触媒としたATRPの場合には、α-ハロゲノカルボキシル基等が挙げられ、これらの中でも、反応性の観点から、ブロモイソブチレート基が好ましい。 [0046] このような官能基C2及び重合開始基を有する開始剤としては、例えば、3-ブロモプロピル2-ブロモイソブチレート、4-ブロモブチル2-ブロモイソブチレート等の末端にブロモ基を有する炭素数1~8の直鎖状アルキル基をエステル部位に有する2-ブロモイソ酪酸エステル類;o-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレート、m-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレート、p-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレート、(4-(ブロモメチル)ナフタレン-1-イル)メチル2-ブロモイソブチレート等のブロモメチル基を有するベンゼン環及び/又はナフタレン環を置換基として有する炭素数1~8の直鎖状アルキル基をエステル部位に有する2-ブロモイソ酪酸エステル類が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係る開始剤としては、蛍光X線分析(XRF)による非破壊での定量を行うことができるという観点から、本発明に係るキャップ剤と同じ元素(より好ましくは臭素)を含む化合物であることが好ましく、例えば、p-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレートが好ましい。 [0047] 以下、本発明の開始剤修飾ナノロッド製造方法の各工程の好適な実施形態を図面(図2)を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。 [0048] <カップリング剤修飾ナノロッド> 本発明の開始剤修飾ナノロッド製造方法においては、先ず、前記ナノロッドの表面にカップリング剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記カップリング剤が結合したカップリング剤修飾ナノロッドを得ることが好ましく、前記ナノロッド(ナノロッド1)の表面に前記官能基A及び官能基Bを有するカップリング剤(カップリング剤2)を反応させることにより、前記ナノロッドの表面に前記官能基Aを介して前記カップリング剤が結合したカップリング剤修飾ナノロッド(カップリング剤修飾ナノロッド5)を得ることがより好ましい。このような反応方法としては、前記カップリング剤に依存するものであるため一概にはいえないが、例えば、前記カップリング剤がシランカップリング剤である場合には、前記ナノロッドを溶媒中に分散させた溶液に前記カップリング剤を加え、超音波処理を施しながら1~48時間(好ましくは2~12時間)反応させる方法が挙げられる。前記溶媒としては、例えば、エタノール、アセトニトリル、メタノール、トルエン等の有機溶媒及び前記有機溶媒と水との混合溶媒が挙げられる。 [0049] このカップリング剤修飾ナノロッドを得る工程において、前記ナノロッドと前記カップリング剤との混合比は、前記カップリング剤が前記ナノロッド表面を全て被覆することが可能な量となることが好ましく、前記ナノロッドの表面積1nm2あたりに対して前記カップリング剤が5分子以上となるような混合比であることがより好ましく、20~40分子となるような混合比であることがさらに好ましい。前記カップリング剤の量が前記下限値未満であると、得られる開始剤修飾ナノロッドやグラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えてカップリング剤を用いてもそれ以上ナノロッド表面は被覆されないので経済的に不利である。 [0050] また、得られるカップリング剤修飾ナノロッド表面においては、カップリング剤修飾ナノロッド全重量に対するカップリング剤被覆量(有機物換算質量)の割合が0.01~0.1であることが好ましく、0.02~0.06であることがより好ましい。前記カップリング剤被覆量の割合が前記下限値未満であると、続く工程において開始剤を十分に被覆させることができず、得られる開始剤修飾ナノロッドにグラフト化させるポリマー鎖の密度を十分に制御することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、得られる開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量が減少してグラフト化させるポリマー鎖の密度が減少し、グラフト化ナノロッドの分散性や配向性が低下する傾向にある。 [0051] なお、本発明において、前記カップリング剤修飾ナノロッド全重量に対するカップリング剤被覆量(有機物換算質量)の割合(W2)は、熱重量分析(TG)により求めることができ、具体的には、先ず、得られたカップリング剤修飾ナノロッド20mgを白金製の測定用パンに入れ、空気及び窒素の流量がいずれも200mL/minである混合雰囲気下において、昇温速度10℃/minで900℃まで加熱する。次いで、900℃に達した時の質量(灰分の質量)を測定して加熱前の全質量に対する前記灰分の質量の割合(w2)を求め、次式: W2=1-w2-{w2×(1-w1)÷w1} (式中、w1はナノロッドにおける灰分の割合を示す。) により算出することができる。 [0052] <キャップ剤修飾ナノロッド> 本発明の開始剤修飾ナノロッド製造方法においては、前記ナノロッドの表面の一部にキャップ剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面の一部に前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッドを得る。前記キャップ剤修飾ナノロッドを得る工程においては、前記カップリング剤修飾ナノロッド(カップリング剤修飾ナノロッド5)の表面に前記官能基C1を有するキャップ剤(キャップ剤3)を反応させることにより、前記カップリング剤の一部の官能基Bに前記官能基C1を介して前記キャップ剤が結合したキャップ剤修飾ナノロッド(キャップ剤修飾ナノロッド6)を得ることが好ましい。なお、図2中、Dは前記官能基B、前記官能基C2及び前記重合開始基のいずれとも結合しない基を示す。このような反応方法としては、前記官能基B及び前記官能基C1に依存するものであるため一概にはいえないが、例えば、前記カップリング剤修飾ナノロッドを溶媒中に分散させた溶液に前記キャップ剤を加え、超音波処理を施しながら1~48時間(好ましくは2~12時間)反応させる方法が挙げられる。なお、前記溶媒としては前述のカップリング剤修飾ナノロッドの調製において挙げたものと同様のものが挙げられる。 [0053] 本発明においては、このキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程における前記ナノロッド又は前記カップリング剤修飾ナノロッドと前記キャップ剤との混合比を調整することにより、目的の開始剤被覆量の開始剤修飾ナノロッドを得ることができる。このような混合比としては、目的とする開始剤被覆量に依存するが、前記カップリング剤修飾ナノロッドを用いた場合、得られる開始剤修飾ナノロッドにポリマー鎖をグラフト化させたグラフト化ナノロッドを液晶マトリックス中に分散させた際に、該グラフト化ナノロッドをより均一に配向させることが可能になるという観点から、前記カップリング剤修飾ナノロッドにおける官能基Bと前記キャップ剤における官能基C1とのモル比(官能基Bのモル数/官能基C1のモル数)が0.5~2.0であることが好ましく、0.7~1.5であることがより好ましい。前記モル比が前記下限値未満であると、開始剤被覆量が多くなり過ぎ、前記ポリマー鎖の密度が増大して立体障害が生じるため、前記グラフト化ナノロッドの配向を制御することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には、前記ポリマー鎖の密度が減少して前記グラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にある。なお、この場合において、前記モル比は理論上の比に比べて小さくなるため、前記モル比が1以下となっても前記官能基C2と反応することが可能な未反応の官能基Bは残存する。 [0054] また、得られるキャップ剤修飾ナノロッドにおいては、カップリング剤修飾ナノロッド全重量に対するキャップ剤及び前記カップリング剤の被覆量(有機物換算質量)の割合が0.05~0.13であることが好ましく、0.07~0.1であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲内にあるとき、キャップ剤修飾ナノロッドにおけるキャップ剤被覆量を、表面修飾密度(表面積1nm2あたりのキャップ剤の分子数)で1.0~3.0nm-2、より好ましくは1.5~2.nm-2とすることができる。前記キャップ剤被覆量が前記下限値未満であると、続く工程で被覆させる開始剤被覆量が多くなり過ぎ、グラフト化させるポリマー鎖の密度が増大して立体障害が生じるため、グラフト化ナノロッドの配向を制御することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、前記ポリマー鎖の密度が減少して前記グラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にある。 [0055] なお、本発明において、前記キャップ剤修飾ナノロッド全重量に対するキャップ剤及びカップリング剤被覆量(有機物換算質量)の割合(W3)は、熱重量分析(TG)により求めることができ、具体的には、先ず、得られたキャップ剤修飾ナノロッド20mgを白金製の測定用パンに入れ、空気及び窒素の流量がいずれも200mL/minである混合雰囲気下において、昇温速度10℃/minで900℃まで加熱する。次いで、900℃に達した時の試料の質量(灰分の質量)を測定して加熱前の全質量に対する前記灰分の質量の割合(w3)を求め、次式: W3=1-w3-{w3×(1-w1)÷w1} (式中、w1はナノロッドにおける灰分の割合を示す。) により算出することができる。 [0056] また、本発明において、前記キャップ剤被覆量は、キャップ剤修飾ナノロッド表面1nm2あたりにおけるキャップ剤の分子数(キャップ剤の表面修飾密度)のことをいい、前記熱重量分析(TG)により有機物質量に基づいて求めることができる。具体的には、各試料における無機物に対する有機物の割合を以下の式: カップリング剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R2): R2=W2×w1÷w2 キャップ剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R3): R3=W3×w1÷w3 により算出し、これらから、キャップ剤修飾ナノロッドの表面1nm2あたりにおけるキャップ剤被覆量(表面修飾密度)を以下の式: キャップ剤被覆量[nm-2]=(R3-R2)×Xc÷(1-Y×R2) {前記式中、Xcは次式: Xc={NA×D×r×l×10-21}÷(Mc×2×(1+r)) (NAはアボガドロ定数を示し、Dはナノロッドの密度[g/cm3]を示し、rはナノロッドの平均半径を示し、lはナノロッドの平均長さを示し、Mcはキャップ剤の分子量を示す。) で表され、Yは次式: Y=カップリング剤中の無機物の式量÷カップリング剤の分子量 で表される。} により算出して求めることができる。 [0057] このようなキャップ剤修飾ナノロッドを得る工程により、前記ナノロッドの表面の一部にキャップ剤が結合しており、前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤が結合していない領域を有しているキャップ剤修飾ナノロッド、好ましくは、前記ナノロッドの表面にカップリング剤が結合しており、前記キャップ剤は前記カップリング剤を介して前記ナノロッドに結合しており、かつ、前記キャップ剤が結合していない領域に前記カップリング剤が露出しているキャップ剤修飾ナノロッドを得ることができる。 [0058] <開始剤修飾ナノロッド> 本発明の開始剤修飾ナノロッド製造方法においては、次いで、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面に重合開始基を有する開始剤を結合させることによって前記ナノロッドの表面に前記キャップ剤及び前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッドを得る。前記開始剤修飾ナノロッドを得る工程においては、前記キャップ剤修飾ナノロッド(キャップ剤修飾ナノロッド6)の表面に前記官能基C2及び前記重合開始基(重合開始基E)を有する開始剤(開始剤4)を反応させることにより、前記カップリング剤に残存する未反応の官能基Bに前記官能基C2を介して前記開始剤が結合した開始剤修飾ナノロッド(開始剤修飾ナノロッド7)を得ることが好ましい。このような反応方法としては、前記官能基B及び前記官能基C2に依存するものであるため一概にはいえないが、例えば、前記キャップ剤修飾ナノロッドを溶媒中に分散させた溶液に前記開始剤を加え、超音波処理を施しながら1~48時間(好ましくは2~12時間)反応させる方法が挙げられる。また、前記溶媒としては前述のカップリング剤修飾ナノロッドの調製において挙げたものと同様のものが挙げられる。 [0059] この開始剤修飾ナノロッドを得る工程において、前記キャップ剤修飾ナノロッドと前記開始剤との混合比は、前工程において前記ナノロッドの表面の一部が前記キャップ剤で被覆されているため、前記ナノロッドの前記キャップ剤が結合していない表面を前記開始剤が被覆できる混合比(好ましくは、前工程において前記官能基C2と反応することができる前記官能基Bの数が前記キャップ剤により調節されているため、前記カップリング剤に残存する未反応の官能基Bが反応(より好ましくは全て反応)することが可能な混合比)であればよい。 [0060] また、得られる開始剤修飾ナノロッドにおいては、ポリマー鎖をグラフト化させて得られるグラフト化ナノロッドを液晶マトリックス中に分散させた際に、該グラフト化ナノロッドをより均一に配向させることが可能になるという観点から、開始剤被覆量が、表面修飾密度(表面積1nm2あたりの開始剤の分子数)で0.3~1.0nm-2であることが好ましく、0.3~0.8nm-2であることがより好ましい。前記開始剤被覆量が前記下限値未満であると、前記ポリマー鎖の密度が減少して得られるグラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、前記ポリマー鎖の密度が増大して立体障害が生じるため、前記グラフト化ナノロッドの配向を制御することが困難となる傾向にある。 [0061] なお、本発明において、開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量は、開始剤修飾ナノロッド表面1nm2あたりにおける開始剤の分子数(開始剤の表面修飾密度)のことをいい、熱重量分析(TG)により有機物質量に基づいて求めることができる。具体的には、先ず、得られた開始剤修飾ナノロッド20mgを白金製の測定用パンに入れ、空気及び窒素の流量がいずれも200mL/minである混合雰囲気下において、昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃に達した時の質量(灰分の質量)を測定して加熱前の全質量に対する前記灰分の質量の割合(w4)を求める。次いで、次式: W4=1-w4-{w4×(1-w1)÷w1} (式中、w1はナノロッドにおける灰分の割合を示す。) により開始剤修飾ナノロッド全重量に対するキャップ剤、カップリング剤及び開始剤被覆量(有機物換算質量)の割合(W4)を求める。次いで、開始剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R4)を次式: R4=W4×w1÷w4 により算出し、これと前述のR2及びR3から、開始剤修飾ナノロッドの表面1nm2あたりにおける開始剤被覆量(表面修飾密度)を以下の式: 開始剤被覆量(TG)[nm-2]=(R4-R3)×Xs÷(1-Y×R2) {前記式中、Xsは次式: Xs={NA×D×r×l×10-21}÷(Ms×2×(1+r)) (NA、D、r及びlはそれぞれ前述のとおりであり、Msは開始剤の分子量を示す。) で表され、Yは前述のとおりである。) で表される。} により算出して求めることができる。 [0062] また、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法は、前記キャップ剤と前記開始剤とを段階的に被覆させるものであり、前記キャップ剤と前記開始剤とを自由に選択することができるため、分析手法に合わせた設計が可能であり、得られる開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量を非破壊で高精度で定量することが可能である。このような非破壊での定量方法としては、例えば、前記キャップ剤及び前記開始剤として臭素等の共通する元素(Z)を含有する化合物を用いて蛍光X線分析(XRF)を行う方法が挙げられる。具体的には、得られたキャップ剤修飾ナノロッド及び開始剤修飾ナノロッドについて蛍光X線分析(XRF)(商品名:ZSX Primus II、リガク社製)を行い、開始剤修飾ナノロッドにおける有機物換算での開始剤被覆量(XRF)を以下の式: 開始剤被覆量(XRF)[nm-2]={m(s)-m(c)}×{NA×D×r×l×10-21÷(Ms×2×(1+r))} (前記式中、m(s)は開始剤修飾ナノロッドにおいて、m(c)はキャップ剤修飾ナノロッドにおいて、それぞれ次式: m=Zの分析値÷ナノロッドの分析値×ナノロッドの分子量÷Zの分子量 で求められる値であり、NA、D、r、l及びMsはそれぞれ前述のとおりである。) により算出する。 [0063] このように、本発明の開始剤修飾ナノロッドの製造方法においては、重合の起点となる開始剤の被覆量を非破壊で直接定量することができるため、その量を高度に制御することができ、表面にグラフト化させるポリマー鎖の量を制御することが可能となる。例えば、図1A~図1Cには、それぞれ、本発明の開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量が0.4、0.6、2.0nm-2であるときに得られるグラフト化ナノロッドの好適な一実施形態を示す模式図を示すが、このように、開始剤被覆量を調節することにより、グラフト化させるポリマー鎖の密度を制御することが可能となる。 [0064] 〔グラフト化ナノロッド及びその製造方法〕 次いで、本発明のグラフト化ナノロッド及びその製造方法について説明する。本発明のグラフト化ナノロッドの製造方法は、 前記本発明の開始剤修飾ナノロッドの前記重合開始基を起点として重合性モノマーを重合せしめることにより、ポリマー鎖がグラフト化されたグラフト化ナノロッドを得るものであり、本発明のグラフト化ナノロッドは、前記本発明のグラフト化ナノロッドの製造方法により得られたものである。本発明のグラフト化ナノロッドの製造方法においては、開始剤被覆量を高度に制御することできる前記本発明の開始剤修飾ナノロッドを用いるため、グラフト化されるポリマー鎖の密度を高度に制御することができる。 [0065] <重合性モノマー、ポリマー鎖> 本発明に係る重合性モノマーとしては、特に制限されず、前記重合開始基を起点として重合せしめることが可能な基を有するものであればよい。このような基としては、例えば、メタクリレート基、アクリレート基、スチリル基、α-メチルスチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルアミド基が挙げられる。また、本発明に係る重合性モノマーとしては、得られるグラフト化ナノロッドを液晶中で配向させた際に低分子液晶化合物との相互作用がより良好なポリマー鎖を得ることができ、グラフト化ナノロッドを広領域においてより均一に配向させることができる傾向にあるという観点から、液晶性メソゲン構造を有する化合物であることが好ましい。 [0066] 前記液晶性メソゲン構造としては、例えば、次式: -[S1]a-[M1-[S2]b]b’-[M2-[S3]c]c’-[M3-[S4]d]d’-S5- で表されるメソゲン構造が挙げられる。上記式中、M1、M2及びM3は、それぞれ独立に、非置換又は置換の芳香族基、非置換又は置換の脂環基、非置換又は置換の複素環基、並びにそれらの混合物から選択される二価の基を示す。前記置換基としては、チオール、アミド、ヒドロキシ(C1~C18)アルキル、イソシアナト(C1~C18)アルキル、アクリロイルオキシ、アクリロイルオキシ(C1~C18)アルキル、ハロゲン、C1~C18アルコキシ、ポリ(C1~C18アルコキシ)、アミノ、アミノ(C1~C18)アルキレン、C1~C18アルキルアミノ、ジ-(C1~C18)アルキルアミノ、C1~C18アルキル、C2~C18アルケン、C2~C18アルキン、C1~C18アルキル(C1~C18)アルコキシ、C1~C18アルコキシカルボニル、C1~C18アルキルカルボニル、C1~C18アルキルカルボネート、アリールカルボネート、ペルフルオロ(C1~C18)アルキルアミノ、ジ-(ペルフルオロ(C1~C18)アルキル)アミノ、C1~C18アセチル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロアルコキシ、イソシアナト、アミド、シアノ、ニトロ;シアノ、ハロ、もしくはC1~C18アルコキシで1置換されている又はハロで多置換されている、直鎖又は分枝状のC1~C18アルキル基が挙げられる。 [0067] さらに、上記式中、a、b、c及びdは、それぞれ独立に、0~20の整数を示し、b’、c’及びd’は、それぞれ独立に、0~4の整数を示す。ただし、b’、c’及びd’の合計(b’+c’+d’)は1以上である。 [0068] また、上記式中、S1、S2、S3、S4及びS5は、それぞれ独立に、 [A]-(CH2)e-、-(CF2)f-、-Si(CH2)e-、及び-(Si(CH3)2O)h-から選択されるいずれかの式で表される基(前記eはそれぞれ独立に1~20の整数を示し、前記fはそれぞれ独立に1~16の整数を示す。)、 [B]-N(Z)-、-C(Z)=C(Z)-、-C(Z)=N-、-C(Z’)2-C(Z’)2-から選択されるいずれかの式で表される基(前記Zは、それぞれ独立に、水素、C1~C6アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される1種であり、前記Z’は、それぞれ独立に、C1~C6アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される1種である。)、及び、 [C]-O-、-C(O)-、-O-C(O)-、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-で表される基及び直鎖もしくは分枝状のC1~C24アルキレン残基から選択される1種(前記C1~C24アルキレン残基は、非置換であるか、シアノもしくはハロによって1置換されているか、ハロによって多置換されている。) から選択されるスペーサー基を示す。ただし、ヘテロ原子を含む2個以上のスペーサー基が連結されている場合には、前記スペーサー基は、ヘテロ原子が互いに直接連結しないように連結される。また、S1及びS5が別の基と連結している場合には、これらは、ヘテロ原子が互いに直接連結しないように連結される。 [0069] また、本発明に係るポリマー鎖は、前記重合性モノマーが重合されて形成された鎖であり、前記重合開始基を介して前記開始剤に結合している。このようなポリマー鎖としては、得られるグラフト化ナノロッドを液晶中で配向させた際に低分子液晶化合物との相互作用がより良好となり、グラフト化ナノロッドを広領域においてより均一に配向させることができる傾向にあるという観点から、ネマチック液晶を示すものであることが好ましい。このようなポリマー鎖を形成することが可能なモノマーとしては、2-(4-メトキシビフェニル-4’-イルオキシ)エチルメタクリレート、4-(4-メトキシビフェニル-4’-イルオキシ)ブチルメタクリレート、4-メトキシフェニル・4-(4-メタクリロイル)ブトキシベンゾエート、4-メトキシフェニル・4-(6-メタクリロイル)ヘキシルオキシベンゾエート、4-(6-メタクリロイル)ヘキシルオキシ桂皮酸、4’-(4-メトキシシンナモイル)-4-フェニルフェノキシエチルメタクリレート、4’-(4-メトキシシンナモイル)-4-フェニルフェノキシヘキシルメタクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。 [0070] このようなグラフト化ナノロッドの製造方法における前記モノマー量及び重合条件としては、適宜公知の方法を採用することができ、前記重合開始基に応じて適宜公知の触媒及び/又は溶媒を用いることができる。また、このような製造方法により得られるグラフト化ナノロッドにおけるポリマー鎖の量としては特に制限されず、目的に応じて適宜調整することができるが、グラフト化ナノロッド全体に対する炭素の質量割合(グラフト化度)が炭素質量換算で15~90質量%となる量であることが好ましく、20~60質量%となる量であることがより好ましく、40~60質量%となる量であることがさらに好まい。前記グラフト化度が前記下限値未満であると、グラフト化ナノロッドが凝集しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、グラフト化ナノロッドを液晶マトリックス中に分散させた際に低分子液晶化合物との相互作用による配向が阻害される傾向にある。 [0071] なお、前記グラフト化度(CTG)は、熱重量分析(TG)により求めることができる。具体的には、先ず、得られたグラフト化ナノロッド20mgを白金製の測定用パンに入れ、空気及び窒素の流量がいずれも200mL/minである混合雰囲気下において、昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃に達した時の質量(灰分の質量)を測定して加熱前の全質量に対する前記灰分の質量の割合(w5)を求める。次いで、次式: W5=1-w5-{w5×(1-w1)÷w1} (式中、w1はナノロッドにおける灰分の割合を示す。) によりグラフト化ナノロッド全重量に対する有機物の割合(W5)を求め、グラフト化ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R5)を次式: R5=W5×w1÷w5 により算出する。次いで、カップリング剤、キャップ剤、開始剤及び重合性モノマーにおける炭素の質量割合をそれぞれC2、C3、C4及びC5とし、R5と前述のR2、R3及びR4とから、次式: CTG[質量%]={{C2×R2+C3×(R3-R2)+C4×(R4-R3)+C5×(R5-R4)}×W5}÷R5 により算出することができる。 [0072] 〔グラフト化ナノロッド分散液晶〕 次いで、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶について説明する。本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶は、低分子液晶化合物を含有するマトリックス中に、前記本発明のグラフト化ナノロッドが分散されているものである。 [0073] 本発明に係る低分子液晶化合物としては、分子量が250以下の液晶性を示す化合物が挙げられ、室温において液体又は液晶状態であることが好ましく、また、前記メソゲン構造を有する化合物であることが好ましい。さらに、前記低分子液晶化合物としては、マトリックスとグラフト化ナノロッドとの相溶性が高くなる傾向にあるという観点から、液晶状態において前記グラフト化ナノロッドにグラフト化されたポリマー鎖と同じ液晶相であることが好ましく、前記低分子液晶化合物及び前記グラフト化ナノロッドにグラフト化されたポリマー鎖がいずれもネマチックであることがより好ましい。 [0074] このような低分子液晶化合物としては、具体的には、4-シアノ-4’-ペンチルオキシビフェニル(5OCB)、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)、4-シアノ-4’-ヘプチルオキシビフェニル(7OCB)、4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル(5CB)、4-シアノ-4’-ヘキシルビフェニル(6CB)、4-シアノ-4’-ヘプチルビフェニル(7CB)、4-(trans-4-ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(5CHBN)、4-(trans-4-ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(7CHBN)、5-ヘキシル-2-(4-ヘキシルフェニル)ピリミジン、4-ペンチルフェニル 4-(ベンジルオキシ)ベンゾエート、4-ブトキシフェニル 4-プロピルシクロヘキサンカルボキシレート、4-ペンチロキシフェニル 4-プロピルシクロヘキサンカルボキシレート、4-エトキシフェニル 4-ブチルシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、200mPa・s以下の粘度において配向させることが容易な傾向にあることや、材料の入手が容易であるという観点等から、5OCB、6OCB、7OCB、5CB、6CB、7CB等が好ましい。 [0075] また、本発明に係るマトリックスとしては、前記低分子液晶化合物と溶媒とを含有するものであることが好ましい。前記溶媒としては、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコール 1-モノメチルエーテル 2-アセタート等が挙げられる。また、本発明に係るマトリックスとしては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、基板へ塗布する際の塗布性を向上させることを目的とした界面活性剤等をさらに含有するものであってもよい。 [0076] 本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶において、前記低分子液晶化合物の含有量としては、グラフト化ナノロッド分散液晶全体に対して2質量%以上であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。前記低分子液晶化合物の含有量が前記下限値未満であると、グラフト化ナノロッドの配向度の均一性が悪化する傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、ナノロッドの含有量が減少するために得られるグラフト化ナノロッド分散液晶を偏光光学素子に用いる際に配向体としての該偏光光学素子の機能が低下する傾向にある。 [0077] また、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶において、前記グラフト化ナノロッドの含有量としては、グラフト化ナノロッド分散液晶全体に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましい。前記グラフト化ナノロッドの含有量が前記下限値未満であると、ナノロッドの含有量が減少するために得られるグラフト化ナノロッド分散液晶を偏光光学素子に用いる際に配向体としての該偏光光学素子の機能が低下する傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、流動性が低下して配向性が悪化する傾向にある。 [0078] また、前記低分子液晶化合物を含有する前記マトリックス中に前記グラフト化ナノロッドを分散させる方法としては、特に制限されないが、例えば、前記グラフト化ナノロッドを前記溶媒中に加えて1~48時間(好ましくは2~12時間)超音波処理を施すことにより分散させた後、前記溶媒中に前記低分子液晶化合物を溶解させる方法が挙げられる。 [0079] 〔グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜〕 次いで、本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜について説明する。本発明のグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜は、前記グラフト化ナノロッド分散液晶を配向させて得られたものである。本発明においては、前記グラフト化ナノロッドのポリマー鎖と前記低分子液晶化合物との相互作用によって前記グラフト化ナノロッドを極めて均一に配向させることができる。 [0080] 前記グラフト化ナノロッド分散液晶を配向させる方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ラビング処理を施した基板上に前記グラフト化ナノロッド分散液晶を塗布する方法が挙げられる。本発明においては、低分子液晶化合物が一軸配向するという観点から、基板上に塗布して形成したポリイミド樹脂フィルムにラビング処理を施して得られた配向膜上に、前記グラフト化ナノロッド分散液晶を塗布する方法が好ましい。 [0081] このような方法により得られるグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜において、グラフト化ナノロッドは、極めて均一な配向度で配向され、配向角度の標準偏差を25以下、より好ましくは17以下とすることができる。また、前記ナノロッドとして金属又は金属酸化物を用いた場合には、このような配向膜から有機物を除去することによってナノロッドのみを前記配向度を保ったまま残すことも可能である。 [0082] さらに、このようなグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜は偏光光学素子に好適に用いることができ、このような偏光光学素子においては、グラフト化ナノロッドが極めて均一な配向度で配向されているために広い視野角、優れたコントラスト比、高速の電気光学応答等を達成することが可能となる。 実施例 [0083] 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び各比較例における各修飾剤の被覆量測定、グラフト化度測定、グラフト化ナノロッド分散液晶の分散評価は、それぞれ以下に示す方法に従って実施した。 [0084] <修飾剤の被覆量測定> (i)熱重量分析(TG)による測定 各実施例及び比較例で得られたナノロッド、カップリング剤修飾ナノロッド、キャップ剤修飾ナノロッド、開始剤修飾ナノロッドにおける灰分の割合を、それぞれ熱重量分析(TG)(商品名:TG/DTA7200、日立ハイテクサイエンス社製)により求め、開始剤修飾ナノロッドにおける開始剤被覆量を1nm2あたりの分子数で算出した。すなわち、各実施例及び比較例で得られたナノロッド、カップリング剤修飾ナノロッド、キャップ剤修飾ナノロッド、開始剤修飾ナノロッドを試料とし、先ず、乾燥させた粉末状の各試料20mgを白金製の測定用パンに入れ、空気及び窒素の流量がいずれも200mL/minである混合雰囲気下において、昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃に達した時の各試料の質量(灰分の質量、無機物に相当)を測定した。次いで、試料を加熱する前の全質量に対する前記灰分の質量の割合をそれぞれ求め、w1(ナノロッドにおける灰分の割合)、w2(カップリング剤修飾ナノロッドにおける灰分の割合)、w3(キャップ剤修飾ナノロッドにおける灰分の割合)、w4(開始剤修飾ナノロッドにおける灰分の割合)とした。 [0085] 次いで、各試料の全質量に対する修飾剤被覆量(有機物の質量)の割合を以下の式: カップリング剤修飾ナノロッドにおけるカップリング剤の被覆量の割合(W2): W2=1-w2-{w2×(1-w1)÷w1} キャップ剤修飾ナノロッド全重量におけるキャップ剤及びカップリング剤の被覆量の割合(W3): W3=1-w3-{w3×(1-w1)÷w1} 開始剤修飾ナノロッド全重量におけるキャップ剤、カップリング剤及び開始剤の被覆量の割合(W4): W4=1-w4-{w4×(1-w1)÷w1} により算出した。 [0086] また、各試料における無機物に対する有機物の割合を以下の式: カップリング剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R2): R2=W2×w1÷w2 キャップ剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R3): R3=W3×w1÷w3 開始剤修飾ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R4): R4=W4×w1÷w4 により算出した。次いで、上記式から、開始剤修飾ナノロッドの表面1nm2あたりにおける開始剤被覆量(表面修飾密度)を以下の式: 開始剤被覆量(TG)[nm-2]=(R4-R3)×(R4-R3)×Xs÷(1-Y×R2) {前記式中、Xsは次式: Xs={NA×D×r×l×10-21}÷(Ms×2×(1+r)) (NAはアボガドロ定数を示し、Dはナノロッドの密度[g/cm3]を示し、rはナノロッドの平均半径を示し、lはナノロッドの平均長さを示し、Msは開始剤の分子量を示す。) で表され(実施例1~4の場合:Xs=28.4)、Yは次式: Y=カップリング剤中の無機物の式量÷カップリング剤の分子量 で表される(実施例1~4の場合:Y=0.448)。} により算出した。 [0087] (ii)蛍光X線分析(XRF)による測定 各実施例及び比較例で得られたキャップ剤修飾ナノロッド及び開始剤修飾ナノロッドについて、それぞれ蛍光X線分析(XRF)(商品名:ZSX Primus II、リガク社製)を行い、開始剤修飾ナノロッドにおける有機物換算での開始剤被覆量(XRF)を以下の式: 開始剤被覆量(XRF)[nm-2]={m(s)-m(c)}×{NA×D×r×l×10-21÷(Ms×2×(1+r))} (前記式中、m(s)は開始剤修飾ナノロッドにおいて、m(c)はキャップ剤修飾ナノロッドにおいて、それぞれ次式: m=臭素の分析値÷ナノロッドの分析値×ナノロッドの分子量÷79.9 で求められる値であり、NAはアボガドロ定数を示し、Dはナノロッドの密度[g/cm3]を示し、rはナノロッドの平均半径を示し、lはナノロッドの平均長さを示し、Msは開始剤の分子量を示す(実施例1の場合:NA×D×r×l×10-21÷(Ms×2×(1+r))=94)。) により算出した。 [0088] <グラフト化度測定> 各実施例及び比較例で得られたナノロッド、カップリング剤修飾ナノロッド、キャップ剤修飾ナノロッド、開始剤修飾ナノロッド、グラフト化ナノロッドにおける灰分の割合を、それぞれ熱重量分析(TG)(商品名:TG/DTA7200、日立ハイテクサイエンス社製)により求め、グラフト化ナノロッド全体に対する炭素の質量割合(グラフト化度(CTG))を算出した。すなわち、先ず、上記(i)熱重量分析(TG)による測定と同様にしてグラフト化ナノロッド加熱前の全質量に対する灰分の質量の割合(w5)を求めた。次いで、次式: W5=1-w5-{w5×(1-w1)÷w1} (式中、w1はナノロッドにおける灰分の割合を示す。) によりグラフト化ナノロッド全重量に対する有機物の割合(W5)を求め、グラフト化ナノロッドにおける無機物に対する有機物の割合(R5)を次式: R5=W5×w1÷w5 により算出した。次いで、カップリング剤、キャップ剤、開始剤及び重合性モノマーにおける炭素の質量割合をそれぞれC2、C3、C4及びC5とし、R5と前述のR2、R3及びR4とから、次式: CTG[質量%]={{C2×R2+C3×(R3-R2)+C4×(R4-R3)+C5×(R5-R4)}×W5}÷R5 により算出した。 [0089] <グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜の配向性評価> 各実施例及び比較例で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM:商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)により観察し、得られたFE-SEM写真について、画像解析ソフト(Winroof、三谷商事株式会社製)を用いてナノロッドの配向角度を算出した。配向角度はFE-SEM写真の長軸(横軸)に対する角度とし、角度分布のプロットに対してガウシアンフィッティングを行うことにより標準偏差を算出した。標準偏差が算出され、かつ、標準偏差の値が25以下のものについて、配向性を「良好」と評価し、それ以外のものを「不良」と評価した。 [0090] (実施例1) 〔ナノロッドIの合成〕 先ず、エタノール500mLに酢酸亜鉛二水和物4.4g(20mmol)を溶解させた(溶液a)。次いで、エタノール375mLにナトリウムメトキシド67.5g(1.25mol)を撹拌しながら徐々に加えて溶解させ、完全に溶解してから10分後に超純水25mLを加え、さらに溶液aに混合した。得られた混合溶液を43℃で緩やかに振とうしながら24時間反応させた。反応後に得られた分散液を9,200×g/20minの条件で遠心処理(回転半径168mm)し、回収した沈殿をエタノールに再分散させた。この遠心処理及び再分散の操作を超純水で計2回行った後、上澄みが中性であることを確認した。得られた沈殿をエタノールに再分散させ、9,200×g/20minの条件で遠心処理(回転半径168mm)し、エタノール分散液104mLを得た。得られたエタノール分散液のうち2mLを14,100×g/10minの条件で遠心処理(回転半径60mm)し、回収した沈殿を80℃で2時間真空乾燥し、白色粉末のナノロッドI(ZnOナノロッド)を得た。得られたナノロッドIの質量は0.29gであり、全体の収量は1.5gと概算された。また、得られたナノロッドIの長軸方向の平均長は50nm、短軸方向の平均直径は10nmであり(アスペクト比:5.0)、密度は5.606g/cm3であった。 [0091] 〔カップリング剤修飾ナノロッドIIの合成〕 先ず、1.0gのナノロッドIにエタノール100mLを加え、6時間超音波処理した。次いで、得られた分散液に超純水1mLを加えた後、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン1.0g及びヘキシルアミン0.30gを加え、超音波下で6時間反応させた。反応後の分散液を43,200×g/30minの条件で遠心処理(回転半径107mm)し、回収した沈殿をエタノールに再分散させた。この遠心処理及び再分散の操作を計3回行った後、溶媒をエタノールからアセトニトリルに代えて同様の操作を計3回行い、アセトニトリル分散液29mLを得た。得られたアセトニトリル分散液のうち6mLを14,100×g/10minの条件で遠心処理(回転半径60mm)し、回収した沈殿を80℃で2時間真空乾燥し、白色粉末のカップリング剤修飾ナノロッドIIを得た。得られたカップリング剤修飾ナノロッドIIの質量は0.25gであり、全体の収量は1.2gと概算された。また、得られたカップリング剤修飾ナノロッドIIの全質量におけるカップリング剤被覆量(有機物の質量)の割合(W2)は0.036であった。 [0092] 〔キャップ剤修飾ナノロッドIIIの合成〕 先ず、0.22gのカップリング剤修飾ナノロッドIIをアセトニトリル40mLに分散させ、1時間超音波処理した。次いで、得られた分散液に4-ブロモベンジルブロミド19mg、プロトンスポンジ4.9mg及びアセトニトリル10mLを加え、超音波下で6時間反応させた(カップリング剤修飾ナノロッドIIにおけるフェニルアミン基に相当するモル数/4-ブロモベンジルブロミドのモル数:1.2)。反応後の分散液を43,200×g/30minの条件で遠心処理(回転半径107mm)し、回収した沈殿をアセトニトリルに再分散させた。この遠心処理及び再分散の操作を計3回行い、アセトニトリル分散液32.60gを得た。得られたアセトニトリル分散液のうち4.70gを14,100×g/10minの条件で遠心処理(回転半径60mm)し、回収した沈殿を80℃で2時間真空乾燥し、薄茶色粉末のキャップ剤修飾ナノロッドIIIを得た。得られたキャップ剤修飾ナノロッドIIIの質量は25mgであり、全体の収量は0.17gと概算された。また、得られたキャップ剤修飾ナノロッドIIIの全質量におけるキャップ剤及びカップリング剤被覆量(有機物の質量)の割合(W3)は0.082であった。 [0093] 〔開始剤修飾ナノロッドIVの合成〕 先ず、0.15gのキャップ剤修飾ナノロッドIIIをアセトニトリル40mLに分散させ、1時間超音波処理した。次いで、得られた分散液にp-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレート27mg、プロトンスポンジ4.9mg及びアセトニトリル10mLを加え、超音波下で6時間反応させた。反応後の分散液を43,200×g/30minの条件で遠心処理(回転半径107mm)し、回収した沈殿をアセトニトリルに再分散させた。この遠心処理及び再分散の操作を計3回行った後、回収した沈殿を80℃で2時間真空乾燥し、薄茶色粉末の開始剤修飾ナノロッドIVを151mg得た。 [0094] 得られた開始剤修飾ナノロッドIVの全質量におけるキャップ剤、カップリング剤及び開始剤被覆量(有機物の質量)の割合(W4)は、0.087であり、開始剤被覆量(TG)は1nm2あたりの有機物質量に換算した割合(開始剤の炭素換算質量/開始剤修飾ナノロッド表面上の全化合物質量)で0.42nm-2であった。また、蛍光X線分析(XRF)による測定を行ったところ、得られた開始剤修飾ナノロッドIVにおける開始剤被覆量(XRF)も0.42nm-2であった。 [0095] 〔グラフト化ナノロッドVの合成〕 先ず、73mgの開始剤修飾ナノロッドIV(開始剤換算5.4μmol)にアニソール1mLを加え、超音波処理により分散させた。次いで、得られた分散液に2,2’-ビピリジン9.4mg(60μmol)、メタクリル酸4-(4-(4-メトキシフェノキシカルボニル)フェニルオキシ)ブチル192mg(0.5mmol)及びアニソール0.75mLを加えた。この溶液に減圧脱気及びArパージのサイクルを計3回繰り返した後、真空下でCu(I)Cl 3.0mg(30μmol)を混合した。得られた混合溶液を室温(25℃)で5分間撹拌し、次いで、80℃で24時間撹拌した後、反応溶液を大気に曝露させて反応を停止させた。次いで、この反応液に超音波を照射しながらメタノールを緩やかに滴下することによりグラフト体を再沈殿させ、880×g/20minの条件で遠心処理(回転半径87mm)して沈殿を回収した。この再沈殿及び遠心処理の操作を計3回行った後、回収した沈殿を95℃で2時間真空保持し、茶色粉末のグラフト化ナノロッドVを110mg得た。得られたグラフト化ナノロッドVのグラフト化度(CTG)は49質量%であった。 [0096] 〔グラフト化ナノロッド分散液晶VIの調製〕 先ず、10mgのグラフト化ナノロッドVにアニソール1mLを加え、6時間超音波処理した。次いで、得られた分散液60μLに4-シアノ-4’-ペンチルオキシビフェニル(5OCB)2.5mgを溶解させ、グラフト化ナノロッド分散液晶VIを得た。 [0097] 〔グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜VIIの調製〕 先ず、2インチシリコン基板にUV/O3を15分間照射した。次いで、このシリコン基板上に、AL-1254(JSR社製ポリイミド希釈液)500μLを孔径0.2μm親水性ディスクフィルターを通して滴下し、300rpm/5secの条件の後2,000rpm/30secの条件でスピン塗布した。次いで、60℃/1minの条件の後220℃/1hrの条件でベークし、約60nmの厚さの薄膜を得た。得られた薄膜をラビングマシーンにより、ステージ-基板距離2.75mm、ステージ移動速度500rpm、ラビング布回転速度500rpmの条件で5往復ラビング処理を施し、ラビング基板を作製した。 [0098] 次いで、作製したラビング基板を1~1.5cm角に分割し、圧縮窒素により基板上の粉じんを除去した後、このラビング基板上にグラフト化ナノロッド分散液晶VIを孔径0.2μm親水性ディスクフィルターを通して滴下し、3,000rpm/30secの条件でスピン塗布した。次いで、大気下にて63℃/12時間の条件でアニール処理し、約20nmの厚さのグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜VIIを得た。 [0099] (実施例2) カップリング剤修飾ナノロッドIIにおける官能基と4-ブロモベンジルブロミドとのモル比(カップリング剤修飾ナノロッドIIにおけるフェニルアミン基に相当するモル数/4-ブロモベンジルブロミドのモル数)が1.5となるようにしたこと以外は実施例1と同様にしてキャップ剤修飾ナノロッドIIIを得た。また、これを用いたこと以外は実施例1と同様にして開始剤修飾ナノロッドIV、グラフト化ナノロッドV、グラフト化ナノロッド分散液晶VI及びグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜VIIを得た。得られた開始剤修飾ナノロッドIVにおける開始剤被覆量(TG)は0.30nm-2であり、得られたグラフト化ナノロッドVのグラフト化度(CTG)は42質量%であった。 [0100] (実施例3) カップリング剤修飾ナノロッドIIにおける官能基と4-ブロモベンジルブロミドとのモル比(カップリング剤修飾ナノロッドIIにおけるフェニルアミン基に相当するモル数/4-ブロモベンジルブロミドのモル数)が1.0となるようにしたこと以外は実施例1と同様にしてキャップ剤修飾ナノロッドIIIを得た。また、これを用いたこと以外は実施例1と同様にして開始剤修飾ナノロッドIV、グラフト化ナノロッドV、グラフト化ナノロッド分散液晶VI及びグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜VIIを得た。得られた開始剤修飾ナノロッドIVにおける開始剤被覆量(TG)は0.60nm-2であり、得られたグラフト化ナノロッドVのグラフト化度(CTG)は42質量%であった。 [0101] (実施例4) 先ず、10mgの実施例2と同様にして得られたグラフト化ナノロッドVにアニソール1mLを加え、6時間超音波処理した後、14,500rpm/10minの条件で遠心処理した。得られた上澄み60μLに対して4-シアノ-4’-ペンチルオキシビフェニル(5OCB)が2.5mgとなるように溶解させ、これをグラフト化ナノロッド分散液晶VIとして用いたこと以外は実施例2と同様にしてグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜VIIを得た。 [0102] (比較例1) 先ず、0.27gの実施例1で得られたカップリング剤修飾ナノロッドIIをアセトニトリル40mLに分散させ、1時間超音波処理した。次いで、得られた分散液にp-(ブロモメチル)ベンジル2-ブロモイソブチレート0.9g、プロトンスポンジ168mg及びアセトニトリル10mLを加え、超音波下で6時間反応させた。反応後の分散液を43,200×g/30minの条件で遠心処理(回転半径107mm)し、回収した沈殿をアセトニトリルに再分散させた。この遠心処理及び再分散の操作を計3回行った後、回収した沈殿を80℃で2時間真空乾燥し、茶色粉末の開始剤修飾ナノロッドVIIIを117mg得た。得られた開始剤修飾ナノロッドVIIIの全質量における有機物の質量の割合(W4)は、0.10であった。 [0103] 次いで、21.9mgの開始剤修飾ナノロッドVIII(開始剤換算5.4μmol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして茶色粉末のグラフト化ナノロッドIXを21mg得た。また、このグラフト化ナノロッドIXを用いたこと以外は実施例1と同様にしてグラフト化ナノロッド分散液晶X及びグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜XIを得た。なお、参考までに、図3に比較例1の開始剤修飾ナノロッドVIIIの製造方法を示す概念図を示す。 [0104] (参考例1) グラフト化ナノロッドVに代えて開始剤修飾ナノロッドIVを用いたこと以外は実施例1と同様にして液晶配向膜を得た。 [0105] 表1には、実施例1~3及び比較例1において得られた開始剤修飾ナノロッドにおける1nm2あたりの開始剤被覆量(TG)、グラフト化ナノロッドのグラフト化度(CTG)、及びグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜の配向性評価の結果を示す。また、図4には、実施例2、4で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜の配向性評価における角度分布を示し、図5には実施例1で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜のFE-SEM写真を、図6には参考例1で得られた液晶配向膜のFE-SEM写真をそれぞれ示す。なお、図4には、実施例2で得られたグラフト化ナノロッドについてグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜の配向性評価と同様にして得られた角度分布(実施例2*)も併せて示す。 [0106] [表1] [0107] 上記結果から明らかなように、本発明の製造方法においては、被覆される開始剤量の定量を非破壊(XRF)で行ってもTGによる測定と同様の結果となり(実施例1)被覆される開始剤量を非破壊で正確に定量することができることが確認された。さらに、表1及び図4~5に示した結果から明らかなように、本発明により得られたグラフト化ナノロッドを用いて得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜においては、ナノロッドを均一に良好に配向させることができることができ、本発明によりグラフト化させるポリマー鎖の密度を高度に制御することできることができることが確認された。これに対して、比較例1で得られたグラフト化ナノロッド分散液晶配向膜における配向性は不良であり、ナノロッドの配向を制御することが困難であることが確認された。これは、図3に示すようにナノロッドの表面が全て開始剤で覆われたため、開始剤被覆量が多くなりすぎてグラフト化度が増大し、低分子液晶化合物との立体障害が生じたためと本発明者らは推察する。 産業上の利用可能性 [0108] 以上説明したように、本発明によれば、開始剤被覆量を高度に制御することでき、かつ、開始剤被覆量を非破壊で直接定量することができる開始剤修飾ナノロッドの製造方法、及びその方法により得ることができ、グラフト化させるポリマー鎖の密度を高度に制御することできる開始剤修飾ナノロッド、前記開始剤修飾ナノロッドを用いて得られるグラフト化ナノロッド及びその製造方法、グラフト化ナノロッド分散液晶配向膜、偏光光学素子、並びに、キャップ剤修飾ナノロッドを提供することが可能となる。 符号の説明 [0109] 1…ナノロッド、2…カップリング剤、3…キャップ剤、4…開始剤、5…カップリング剤修飾ナノロッド、6…キャップ剤修飾ナノロッド、7…開始剤修飾ナノロッド、8…開始剤修飾ナノロッド(比較例)。 |
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『 INITIATOR-MODIFIED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD AND METHOD FOR PRODUCING SAME, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL, GRAPHITIZED NANOROD-DISPERSED LIQUID CRYSTAL ALIGNMENT FILM, POLARIZING OPTICAL ELEMENT, AND CAPPING AGENT-MODIFIED NANOROD 』に関するお問合せ
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