ELECTRICALLY CONDUCTIVE STRUCTURE AND METHOD FOR PRODUCING SAME
外国特許コード | F150008355 |
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整理番号 | E097P08WO |
掲載日 | 2015年6月24日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP071726 |
国際公開番号 | WO 2015029848 |
国際出願日 | 平成26年8月20日(2014.8.20) |
国際公開日 | 平成27年3月5日(2015.3.5) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | ELECTRICALLY CONDUCTIVE STRUCTURE AND METHOD FOR PRODUCING SAME |
発明の概要(英語) | The objective of the present invention is to provide: an electrically conductive structure that is able to increase conveyance efficiency and is able to increase the photovoltaic power of, for example, an organic thin film solar cell in a method for forming a plurality of conductive organic structures at a predetermined spacing; and a method for producing the electrically conductive structure. Prepared is an electrically conductive structure characterized by having a substrate and a plurality of conductive organic structures formed at a predetermined spacing on the substrate, the top of the conductive organic structures having a curved-surface shape. |
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国際特許分類(IPC) |
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参考情報 (研究プロジェクト等) | ERATO TAKAHARA Soft Interface AREA |
日本語項目の表示
発明の名称 | 導電構造物およびその製造方法 |
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発明の概要 | 本発明は、所定の間隔をあけて複数の導電性有機構造体を形成する手法の中にあって、輸送効率を向上させ、例えば有機薄膜太陽電池の光起電力を向上させることのできる導電構造物、およびその製造方法を提供することを目的とする。基材と、該基材上に所定の間隔をあけて形成されている複数の導電性有機構造体とを有し、該導電性有機構造体は、上部が曲面状であることを特徴とする導電構造物を作製する。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 基材と、 該基材上に所定の間隔をあけて形成されている複数の導電性有機構造体と を有し、該導電性有機構造体は、上部が曲面状であることを特徴とする導電構造物。 [請求項2] 前記導電性有機構造体の9/10高さにおける幅W1と、 前記導電性有機構造体の1/10高さにおける幅W2とは、下記(1)式を満たす請求項1に記載の導電構造物。 W1/W2<1 ・・・ (1) [請求項3] 前記導電性有機構造体の1/2高さにおける幅W3と、 前記導電性有機構造体の高さHとは、下記(2)式を満たす請求項1または2に記載の導電構造物。 H/W3>2 ・・・ (2) [請求項4] 前記基材が導電性を有する第1電極であり、 前記導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 前記基材および前記導電性有機構造体を覆うように形成されている第2導電型の半導体層と、 該第2導電型の半導体層上に形成されている第2電極と をさらに有する請求項1~3のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項5] 前記基材が第1導電型の半導体層であり、 前記導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 前記基材の下に形成されている導電性を有する第1電極と、 前記基材および前記導電性有機構造体を覆うように形成されている第2導電型の半導体層と、 該第2導電型の半導体層上に形成されている第2電極と をさらに有する請求項1~3のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項6] 前記第2導電型の半導体層が、導電性有機材料である請求項4または5に記載の導電構造物。 [請求項7] 有機薄膜太陽電池に用いられる請求項4~6のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項8] 前記第1導電型の導電性有機構造体と、前記第2導電型の半導体層との間に、これらよりも電気伝導度の低い半導体層が形成されている請求項4~7のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項9] 前記導電性有機構造体が前記基材に平行な方向に延在している壁状物を一部に含むものである請求項1~8のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項10] 前記導電性有機構造体は、p型導電性高分子で構成されているものである請求項1~9のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項11] 前記p型導電性高分子を形成するモノマーが、チオフェン、ピロール、アニリン、フェニレンスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項10に記載の導電構造物。 [請求項12] 前記チオフェンおよびその誘導体は、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン、および3,3-エチレンジオキシチオフェンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項11記載の導電構造物。 [請求項13] 前記p型導電性高分子は、10量体以上の重合体を含む請求項10~12のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項14] 前記p型導電性高分子は、レジオレギュラー構造を含むものである請求項10~13のいずれかに記載の導電構造物。 [請求項15] 基材上に、モノマーを含む有機物層を形成する工程と、 該有機物層が大気圧下にある状態で、該有機物層中の複数の位置に集束放射線を照射する工程と を含むことを特徴とする導電構造物の製造方法。 [請求項16] 集束放射線を照射する工程において、 前記基材の上側を大気圧とし、前記基材の下側を真空状態とし、集束放射線は、前記基材を介して下側から前記有機物層に照射させる請求項15に記載の導電構造物の製造方法。 [請求項17] 集束放射線を照射する工程において、前記集束放射線のスポット位置を、前記基材と前記有機物層とが接する面に合わせる請求項15または16に記載の導電構造物の製造方法。 [請求項18] 集束放射線を照射する工程において、前記集束放射線のスポット位置を、前記基材と前記有機物層とが接する面よりも前記有機物層側に合わせる請求項15または16に記載の導電構造物の製造方法。 [請求項19] 前記基材が導電性を有する第1電極であり、 前記有機物層に集束放射線を照射することにより形成される導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 集束放射線を照射する工程の後に、 集束放射線が照射されなかった部分の前記有機物層を除去する工程と、 前記基材上および前記導電性有機構造体上に、第2導電型の半導体層を形成する工程と、 前記第2導電型の半導体層上に第2電極を形成する工程と をさらに含む請求項15~18のいずれかに記載の導電構造物の製造方法。 [請求項20] 前記基材の下に導電性を有する第1電極を形成する工程をさらに含み、 前記基材が第1導電型の半導体層であり、 前記有機物層に集束放射線を照射することにより形成される導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 集束放射線を照射する工程の後に、 集束放射線が照射されなかった部分の前記有機物層を除去する工程と、 前記基材上および前記導電性有機構造体上に、第2導電型の半導体層を形成する工程と、 前記第2導電型の半導体層上に第2電極を形成する工程と、 をさらに含む請求項15~18のいずれかに記載の導電構造物の製造方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 導電構造物およびその製造方法 技術分野 [0001] 本発明は、導電構造物およびその製造方法に関するものであり、特に、有機薄膜太陽電池に使用される光電変換素子、およびその製造方法に関するものである。 背景技術 [0002] 近年、有機薄膜太陽電池は、従来のシリコンや化合物半導体太陽電池と比較して、製法が簡便であり設備コストが低いため、将来の低コスト太陽電池として期待されている。 有機薄膜太陽電池の基本的な構造は、一対の電極の間に、アクセプタとなる有機導電層(n層)とドナーとなる有機導電層(p層)の2層が接合してなる光電変換層が配置されたものである。光電変換層に光が入射すると、光電変換層において電子と正孔の対である励起子(エキシトン)が生成される。この励起子がpn接合の界面に拡散して、界面に存在する強い電界によって電子と正孔に電荷分離する。分離された電子と正孔は、それぞれ、光電変換層を挟むように設けられている陰極(或いは電子輸送層)及び陽極(或いは正孔輸送層)へ移動して、起電力を発生するものである。 [0003] 有機薄膜太陽電池においては、p型有機導電層と、n型有機導電層とのpn接合の面積が大きくなるほど電荷分離が起こる確率が上がるため、光電変換効率が増大する。pn接合の面積を広くする方法としては、片方の有機導電層(例えばp層有機導電層)の表面形状を粗化させる方法がある。 [0004] 例えば、特許文献1には、所定の粘度を有する下層形成用塗工液を用いることにより塗布ムラを生じさせ、表面に凹凸を有する塗膜を形成する方法が記載されている。 また、特許文献2には、n型有機導電層は、例えば、粒子サイズの大小によってドメインサイズの勾配が形成された層からなる有機薄膜太陽電池が記載されている。具体的には、特許文献2の有機光電変換デバイスは、光電変換層に対してp型有機半導体-n型有機半導体の粒子(以下、「pn粒子」という。)の粒子径の大小によってドメインサイズに勾配が形成された電荷分離促進領域を有しており、光電変換層の中心付近では平均粒子径の比較的小さいpn粒子を多く存在させることにより、電荷分離機能を発現するpn接合面積を増大させている。また、非特許文献1には、陽極酸化アルミナの細孔を鋳型として利用して有機導電層の凹凸を作成する方法が記載されている。その他、非特許文献2には、3-ヘキシルチオフェン(3HT)にX線または電子線を照射することにより、一部にポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)が形成されることについて記載されている。 [0005] しかし、上記の表面粗化方法は、基本的には化学的処理により実現するものであるため、形成される粗面の形状は、有機導電層表面の微視的な不均一さに依存してランダムであり、凹凸が形成される場所、凹凸の大きさや形状を自由に設計することはできない。また、凹凸の深さ(高さ)も、粗化の化学的メカニズムに依存するものであるために一定の上限があり、pn接合の面積増大化にも限界がある。 [0006] 一方、有機導電層の表面凹凸の深さ(高さ)や形成される場所を予め決めて、所定の間隔をあけて、設計通りに複数の凸状部を形成する手法もある。例えば、特許文献3には、有機半導体層Aと、ポリマー半導体を含む光電変換素子において、該有機半導体層Aに有機半導体層Aと同じ極性である有機半導体Bが接触し、有機半導体Bが平均アスペクト比1~12の単位構造であることを特徴とする光電変換素子が記載されている。また、特許文献4には、電極構造体材料として使用する硬化型樹脂組成物を用いて、矩形の凹凸を有する有機導電層(p層)と有機導電層(n層)を形成する手法が記載されている。 先行技術文献 特許文献 [0007] 特許文献1 : 特開2007-073717号公報 特許文献2 : 特開2012-004299号公報 特許文献3 : 特開2011-100869号公報 特許文献4 : 特開2010-199101号公報 非特許文献 [0008] 非特許文献1 : ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS 2010, 20, 540-545 非特許文献2 : Journal of Macromolecular Science,Part A 2003, A40, 1357-1368 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0009] しかしながら、特許文献3,4に記載された凹凸形成の手法においても、キャリア輸送効率(特に電子の輸送効率)および光起電力の向上には限界が存在し、さらなる改善の余地がある。 本発明は、所定の間隔をあけて複数の導電性有機構造体を形成する手法の中にあって、輸送効率を向上させ、例えば有機薄膜太陽電池の光起電力を向上させることのできる導電構造物、およびその製造方法を提供することを目的とするものである。 課題を解決するための手段 [0010] 特許文献3,4に記載された有機導電層の凸部は、矩形であるために角が存在し、角の部分において電界が集中しやすくなる。有機導電層において電界が集中している部分が存在すると、有機導電層内での電子の輸送効率が低下し、結果的に光起電力が低下している可能性がある。また、導電構造物の耐久性(長寿命)の面からも、好ましいとは言い難いと推察される。 [0011] このような仮説のもと、本発明者らが構成した導電構造物は、基材と、該基材上に所定の間隔をあけて形成されている複数の導電性有機構造体とを有し、該導電性有機構造体は、上部を曲面状としたものである。本発明は、所定の間隔をあけて複数の導電性有機構造体を形成する手法の中にあって、導電性有機構造体の上部を曲面状としているため、電界集中が起こりにくく、そのため電子の輸送効率や導電構造物の耐久性(長寿命)を改善することができると考えられる。 [0012] 上記導電構造物において、 前記導電性有機構造体の9/10高さにおける幅W1と、 前記導電性有機構造体の1/10高さにおける幅W2とが、下記(1)式を満たすことが好ましい。 W1/W2<1 ・・・ (1) [0013] 上記導電構造物において、 前記導電性有機構造体の1/2高さにおける幅W3と、 前記導電性有機構造体の高さHが、下記(2)式を満たすことが好ましい。 H/W3>2 ・・・ (2) [0014] 上記導電構造物において、 前記基材が導電性を有する第1電極であり、 前記導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 前記基材および前記導電性有機構造体を覆うように形成されている第2導電型の半導体層と、 該第2導電型の半導体層上に形成された第2電極と をさらに有することが好ましい。 [0015] 上記導電構造物において、 前記基材が第1導電型の半導体層であり、 前記導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 前記基材の下に形成されている導電性を有する第1電極と、 前記基材および前記導電性有機構造体を覆うように形成されている第2導電型の半導体層と、 該第2導電型の半導体層上に形成された第2電極と をさらに有することが好ましい。 [0016] 上記導電構造物において、 前記第2導電型の半導体層が、導電性有機材料とすることが好ましい。 [0017] 上記導電構造物は、フォトダイオード(有機薄膜太陽電池を含む)やトランジスタを構成することができる。 [0018] 上記導電構造物において、 前記第1電極および/または第2電極を、光透過材料で構成することができる。 [0019] 上記導電構造物において、 前記第1導電型の導電性有機構造体をp型半導体とし、前記第2導電型の半導体層をn型半導体とする態様を好ましく実施できる。 [0020] 上記導電構造物において、 前記第1導電型の導電性有機構造体と、前記第2導電型の半導体層との間に、これらよりも電気伝導度の低い半導体層を形成する態様を好ましく実施することができる。 [0021] 上記導電構造物において、 前記導電性有機構造体を柱状とする態様を好ましく実施することができる。 [0022] 上記導電構造物において、 前記導電性有機構造体を前記基材に平行な方向に延在している壁状物を一部に含むものとする態様を好ましく実施することができる。 [0023] 上記導電構造物において、 前記導電性有機構造体は、p型導電性高分子で構成されていることが好ましい。 [0024] 上記導電構造物において、 前記p型導電性高分子を形成するモノマーが、チオフェン、ピロール、アニリン、フェニレンスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。 [0025] 上記導電構造物において、 前記チオフェンおよびその誘導体は、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン、および3,3-エチレンジオキシチオフェンからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。 [0026] 上記導電構造物において、 前記p型導電性高分子は、10量体以上の重合体を含むことが好ましい。 [0027] 上記導電構造物において、 前記p型導電性高分子は、レジオレギュラー構造を含むものであることが好ましい。 [0028] 上記導電構造物において、 前記ピロールおよびその誘導体は、ピロール(PPy)であることが好ましい。 [0029] 上記の課題を解決し得た本発明の導電構造物の製造方法は、 基材上に、モノマーを含む有機物層を形成する工程と、該有機物層が大気圧下にある状態で、該有機物層中の複数の位置に集束放射線を照射する工程とを含むものである。 上記の方法では、モノマーを含む有機物層に、例えば集束電子線の照射によりモノマーの一部が重合して形成される導電性有機構造体は、上部が曲面状となる。これは、集束電子線の焦点(スポット中心)から離れるにしたがって集束電子線の強度は低くなり、また、スポット中心から散乱される二次電子線の強度も低くなるため、スポットの中心から離れるにしたがってモノマーの重合度も非線形的に(急激に)低くなるためであると推測される。 なお、本発明における放射線には、(1)アルファ線、重陽子線、陽子線その他の重荷電粒子線及びベータ線、(2)中性子線、(3)ガンマ線、特性エックス線、(4)電子線、エックス線を含むものとする。 [0030] 上記導電構造物の製造方法では、集束放射線を照射する工程において、 前記基材の上側を大気圧とし、前記基材の下側を真空状態とし、集束放射線は、前記基材を介して下側から前記有機物層に照射させることが好ましい。 [0031] 上記導電構造物の製造方法では、集束放射線を照射する工程において、前記集束放射線のスポット位置を、前記基材と前記有機物層とが接する面に合わせることができる。 [0032] 上記導電構造物の製造方法では、集束放射線を照射する工程において、前記集束放射線のスポット位置を、前記基材と前記有機物層とが接する面よりも前記有機物層側に合わせる態様が好ましく実施される。 [0033] 上記導電構造物の製造方法では、 前記基材が導電性を有する第1電極であり、 前記有機物層に集束放射線を照射することにより形成される導電性有機構造体が第1導電型の半導体層であり、 集束放射線を照射する工程の後に、 集束放射線が照射されなかった部分の前記有機物層を除去する工程と、 前記基材上および前記導電性有機構造体上に、第2導電型の半導体層を形成する工程と、 前記第2導電型の半導体層上に第2電極を形成する工程と をさらに含むことが好ましい。 [0034] 上記導電構造物の製造方法では、 前記基材の下に導電性を有する第1電極を形成する工程をさらに含み、 前記基材が第1導電型の半導体層であり、 前記有機物層に集束放射線を照射することにより形成される導電性有機構造体が第1導電型の半導体であり、 集束放射線を照射する工程の後に、 集束放射線が照射されなかった部分の前記有機物層を除去する工程と、 前記基材上および前記導電性有機構造体上に、第2導電型の半導体層を形成する工程と、 前記第2導電型の半導体層上に第2電極を形成する工程と、 をさらに含むことが好ましい。 [0035] 上記導電構造物の製造方法では、前記基材として、光透過材料を好ましく用いることができる。 [0036] 上記導電構造物の製造方法では、前記基材として、金属材料を好ましく用いることができる。 [0037] そのほか、本発明は、 基材上に、モノマーを含む有機物層を形成する工程と、 該有機物層が大気圧下にある状態で、該有機物層中の複数の位置に集束放射線を照射することにより導電性有機構造体を形成する工程と 集束放射線を照射されなかった部分の前記有機物層を除去する工程と、 前記基材を除去する工程とを含む導電性有機構造体の製造方法に関するものである。 発明の効果 [0038] 本発明の導電構造物は、まず、基材上に所定の間隔をあけて複数の導電性有機構造体を構成するものであり、有機導電層の表面がランダムに粗化されるものとは異なり、凹凸が形成される場所、凹凸の大きさや形状を任意に設計して構築することができるものである。 また、本発明の導電構造物は、導電性有機構造体の上部が曲面状であるため、導電性有機構造体の上部で電界集中が起こりにくく、そのため電子の輸送効率を向上させることができ、例えば有機薄膜太陽電池の光起電力を向上することができるものである。また、導電性有機構造体の上部で電界集中が起こりにくいため、導電構造物の耐久性(寿命)の向上にも貢献するものである。 図面の簡単な説明 [0039] [図1] 図1は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の断面図である。 [図2] 図2は、本発明の実施の形態2における有機薄膜太陽電池の断面図である。 [図3] 図3は、本発明の実施の形態3における有機薄膜太陽電池の断面図である。 [図4] 図4は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図5] 図5は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図6] 図6は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図7] 図7は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図8] 図8は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図9] 図9は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 [図10] 図10は、実施例1~9で用いた電子線照射系の断面図である。 [図11] 図11は、導電性有機構造体No.13の可視顕微分光スペクトルである。 [図12] 図12は、実施例2で得られた導電性有機構造体の走査型電子顕微鏡画像(以下、「SEM画像」という。)である。 [図13] 図13は、実施例3で得られた導電性有機構造体を、40°傾けて観察したSEM画像である。 [図14] 図14は、実施例3で得られた導電性有機構造体を、高さ方向から観察したSEM画像である。 [図15] 図15は、実施例3で得られた導電性有機構造体を、幅方向から観察したSEM画像である。 [図16] 図16は、実施例5で得られた導電性有機構造体を、高さ方向から観察したSEM画像である。 [図17] 図17は、実施例6で得られた導電性有機構造体を、35°傾けて観察したSEM画像である。 [図18] 図18は、実施例6で得られた導電性有機構造体を、高さ方向から観察したSEM画像である。 [図19] 図19は、実施例7で得られた導電性有機構造体を、高さ方向から観察したSEM画像である。 [図20] 図20は、実施例7で得られた導電性有機構造体を、幅方向から観察したSEM画像である。 発明を実施するための形態 [0040] 以下、本発明の実施の形態について、導電構造物の基本的構成、導電構造物の構成材料、導電構造物の製造方法に分けて説明する。 [0041] 1.導電構造物の基本的構成 (実施の形態1) 以下、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。 図1は、本発明の実施の形態1における導電構造物を用いた例(有機薄膜太陽電池)の断面図である。図1において、第1電極である陽極1上に、第1導電型の半導体層2が形成されており、半導体層2上には、第1導電型の導電性有機構造体3が所定の間隔をあけて複数形成されている。導電性有機構造体3の配列形態は特に限定されないが、例えば格子状に配置される。 [0042] 導電性有機構造体3は、上部が曲面状に形成されている。さらに、半導体層2上および導電性有機構造体3上には、第1導電型とは逆導電型の第2導電型の半導体層4が形成されている。第1導電型がp型の場合は、第2導電型はn型である。半導体層4上には第2電極である陰極5が形成されている。 [0043] 図1に示すように、有機薄膜太陽電池に光が照射されると、少なくとも導電性有機構造体3および半導体層4において電子と正孔の対である励起子が生成され、この励起子が導電性有機構造体3と半導体層4との界面に移動して、界面に存在する強い電界によって、電子と正孔に電荷分離される。生成された電子は陰極5へ、生成された正孔は陽極1へ、それぞれ移動する。これが起電力の発生メカニズムであり、図1の電圧計6において光の強度に応じた電圧が検知される。 [0044] 本発明においては、半導体層2上に、導電性有機構造体3が所定の間隔をあけて複数形成されているものであるため、有機導電層の表面がランダムに粗化されるものとは異なり、凹凸が形成される場所、凹凸の大きさや形状を設計することができるものである。また、本発明の導電構造物は、導電性有機構造体3の上部が曲面状であるものであるため、有機導電層内で電界集中が起こりにくく、そのため有機導電層内での電子の輸送効率を向上させることができ、例えば有機薄膜太陽電池の光起電力を向上することができる。 [0045] 本発明において「曲面状」とは、曲面成分を有する面であり、球面、弧状面に限らず、円柱の側面や円錐の側面のような、方向によっては直線も含むような面も含むものである。 また、本願発明が特定する頂部は、柱状物を、該柱状物の軸方向に垂直な面により切断して形成される構造物とは異なり、角落ち形状を有しているものを含む。 [0046] 半導体層2は、第1導電型の半導体層(半導体層2或いは導電性有機構造体3)と第2導電型の半導体層4との接合面(以下、「pn接合面」と記載する場合がある)の面積を増やす観点で設けられることが好ましいが、本発明の必須の構成要素ではない。したがって、基材としての陽極1上に導電性有機構造体3が形成される場合もあれば、基材としての半導体層2上に導電性有機構造体3が形成される場合もある。 [0047] 導電性有機構造体3は、下部よりも上部の方が細い形状となることが好ましい。下部よりも上部の方が太い形状となると、電子や正孔の流れが、導電性有機構造体3と半導体層4との間のpn接合面によって阻害される可能性があるためである。したがって、図1に記載されているように、導電性有機構造体3の9/10高さ(上部)における幅W1と、導電性有機構造体3の1/10高さ(下部)における幅W2とが、下記(1)式を満たすことが好ましい。 W1/W2<1 ・・・ (1) [0048] また、pn接合面を増加させる観点で、導電性有機構造体3の高さは高い方が好ましい。 したがって、導電性有機構造体3の1/2高さ(中央部)における幅W3と、前記導電性有機構造体の高さH(全高)が、下記(2)式を満たすことが好ましい。 H/W3>2 ・・・ (2) なお、導電性有機構造体3の高さや幅は、(a)導電性有機構造体3の断面TEM画像に基づいて実測することもできるし、(b)導電性有機構造体3を樹脂で包埋して研磨することにより縦方向の断面試料を作製し、この試料をSEMにより観察して導電性有機構造体3の幅を実測することもできるし、また(c)導電性有機構造体3を斜め方向から観察した傾斜SEM画像を傾斜角に応じて補正して算出することも可能である。 [0049] 本発明の実施の形態1においては、導電構造物を用いて有機薄膜太陽電池を構成した場合について説明したが、導電性有機構造体3を含む形態であれば、種々の半導体デバイスに適用することができる。例えば、ダイオードやトランジスタ等の整流素子、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電変換素子や、これらの素子における微細配線パターン等にも適用可能である。 [0050] 整流素子の具体例としては、ダイオード(pn接合ダイオード、ショットキー・ダイオード、MOSダイオード等)、トランジスタ(バイポーラートランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)等)、サイリスタ、更にはそれらの複合素子(例えばTTL等)等が挙げられる。 [0051] 光電変換素子の具体例としては、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管、フォトカプラ等が挙げられる。実施の形態1における導電性有機構造体3を半導体デバイスのどの部位に用いるかは特に制限されず、ヘテロ接合が必要な部位に用いることが可能である。 [0052] (実施の形態2) 以下、本発明の実施の形態2について図2を用いて説明する。 図2は、本発明の実施の形態2における導電構造物を用いた例(有機薄膜太陽電池)の断面図である。図2において第1導電型の導電性有機構造体3と、第2導電型の半導体層4との間に、これらよりも電気伝導度の低い(電気抵抗の高い)真正半導体層7が形成されている。このような接合構成は、通常pin型接合と呼ばれるものであり、デバイスの高速、高効率動作を可能とするものである。なお、単一組成の導電性有機物により真正半導体層7を作製することは通常困難であるので、p型有機半導体材料(ドナー)とn型有機半導体材料(アクセプター)とを混合した層(バルクへテロジャンクション層とも呼ばれる)を形成することにより構成することもできる。 [0053] (実施の形態3) 以下、本発明の実施の形態3について図3を用いて説明する。 本発明の実施の形態1,2においては、導電性有機構造体3を互いに独立した柱状物の配列とする態様について説明したが、図3に示すように、導電性有機構造体3を基材(陽極1)に平行な方向に延在している壁状物を一部に含むものとする態様も好ましく実施することができる。導電性有機構造体3を壁状物を一部に含むものとすることにより、pn接合面積を増やすことができる場合もある。また、集束電子線を基材の面内方向に走査することにより、導電性有機構造体3を高速に作製することができる。 [0054] 2.導電構造物の構成材料 以下、本発明において使用される各部材を構成する材料について説明する。 (1)陽極1、陰極5 陽極1、陰極5に用いる材料として、例えば、アルミニウムや銅等の金属材料を用いることができる。これらの金属材料は導電性に優れているため、有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を高めることができる。なお、陽極1の材料をアルミニウムとした場合でも陽極1の下側からの集束電子線照射により、集束電子線が陽極1を透過し、導電構造物内に導電性有機構造体3を形成できることを確認している。 [0055] 一方、本発明における陽極1または陰極5の少なくともいずれか一方を、光透過材料で構成することが好ましい。電極が光透過材料で構成されていれば、導電構造物内に光が出入りしやすくなるからである。また、陽極1および陰極5の両方が光透過材料で構成されていれば、有機薄膜太陽電池を貫通して光が透過できるので、例えば、吸収波長の異なる二種類以上の有機薄膜太陽電池を複数積層(スタック)することにより、太陽光の複数の波長を利用した有機薄膜太陽電池(タンデム型太陽電池)を作製することもできる。透明な導電性材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)に代表される透明酸化物導電膜を好ましく用いることができる。なお、光透過材料で構成された陽極1または陰極5の光透過率は、80%以上(可視光線(波長380nm~780nm)のいずれかの波長に対するもの)であることが好ましい。 [0056] (2)半導体層2 半導体層2は、p型半導体で構成されていることが好ましい。p型半導体は、p型有機半導体、p型無機半導体のいずれを用いることもできる。 [0057] p型有機半導体としては、電子吸引性基で置換されたπ電子共役系を有する化合物が挙げられ、電子吸引性基で置換されたπ電子共役系を有するp型導電性高分子を好ましく用いることができる。p型導電性高分子を形成するモノマーとしては、具体的には、チオフェン、ピロール、フラン、セレノフェン等の複素単環式化合物;フェニレンスルフィド、イソチアナフテン等の複素複環式化合物;アニリン、フェノール等のベンゼン誘導体;アセチレン等の三重結合含有化合物;アズレン等の芳香族炭化水素化合物、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。p型導電性高分子を形成するモノマーは、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合せて用いることもできる。 p型無機半導体としては、シリコン半導体等の従来公知のp型無機半導体を用いることができる。 [0058] 中でも、半導体層2のp型半導体としては、光透過性の観点からp型有機半導体が好ましく、より好ましくはp型導電性高分子であり、p型導電性高分子を形成するモノマーとしては、複素単環式化合物、複素複環式化合物、ベンゼン誘導体が好ましい。p型導電性高分子を形成するモノマーは、電解重合しうるモノマーであることが好ましい。また、半導体層2の光透過性をより向上する観点から、p型導電性高分子を形成するモノマーとしては、複素単環式化合物が好ましく、チオフェン、ピロールがより好ましい。半導体層2は、後述する導電性有機構造体3と同一の材料で構成することもできる。 [0059] (3)導電性有機構造体3 導電性有機構造体3は、p型導電性高分子で構成されていることが好ましい。p型導電性高分子を形成するモノマーとしては、電解重合可能なモノマーであることが好ましく、具体的には、チオフェン、ピロール、フラン等の複素単環式化合物;フェニレンスルフィド等の複素複環式化合物;アニリン等の芳香族アミン化合物;アセチレン等の三重結合含有化合物;アズレン等の芳香族炭化水素化合物、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。p型導電性高分子を形成するモノマーは、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合せて用いることもできるが、1種を単独で用いることが好ましい。 [0060] 中でも、p型導電性高分子を形成するモノマーとしては、チオフェン、ピロール、アニリン、フェニレンスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記チオフェンの誘導体としては、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3,3-エチレンジオキシチオフェンが好ましい。また、前記ピロールの誘導体としては、ピロールそのものが好ましい。なお、ピロールとしては、非置換型及び置換型のいずれであってもよい。 [0061] またp型導電性高分子としては、チオフェン、ピロール、アニリン、フェニレンスルフィド、それらの誘導体等のモノマーを単独で用いて形成したp型導電性高分子であるポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンスルフィド、およびそれらの誘導体であることが好ましい。ポリチオフェンの誘導体としては、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、およびポリ(3,3-エチレンジオキシチオフェン)が好ましく、ポリピロールの誘導体としては、ポリピロールが好ましい。 [0062] 上記p型導電性高分子を形成するモノマー(好ましくは電解重合しうるモノマー)は、後述する集束電子線を照射する工程により重合して、p型導電性高分子を形成する。モノマーがn型導電性高分子を形成するモノマーであると、集束電子線を照射しても導電性有機構造体を形成しないことがある。なお、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いた場合の導電性有機構造体3の電気伝導度は、例えば、室温(25℃)で、10-10~10-7[S/cm]程度である。 [0063] p型導電性高分子は、5量体以上の重合体を含むことが好ましい。より好ましくは、8量体以上の重合体を含み、さらに好ましくは10量体以上の重合体を含む。ここで、n量体とは、n個のモノマーが重合することにより形成される重合体のことをいう。 p型導電性高分子におけるモノマーの結合数は、例えば、p型導電性高分子をクロロホルム等の有機溶剤に一定時間浸漬し、溶出した成分をマトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF法)により特定することができる。MALDI-TOF法では、前記有機溶剤に溶出しうる成分の質量が検出され、モノマーのモル質量で除することによって、モノマーの結合数を算出することができる。有機溶剤の浸漬によっても溶出せずに残存したn型導電性高分子が存在した場合、MALDI-TOF法により特定されたモノマーの結合数よりも高い結合数のp型導電性高分子が存在している可能性がある。 [0064] p型導電性高分子は、レジオレギュラー構造を含むものであることが好ましい。レジオレギュラー構造が含まれると、p型導電性高分子の電荷輸送性を高めることができる。レジオレギュラーとは、p型導電性高分子の置換基が一定方向に揃って存在している状態を表す。 [0065] p型導電性高分子におけるレジオレギュラー構造の存在は、例えば、可視吸収スペクトルの最大吸収波長から確認することができる。例えば、レジオレギュラー構造の割合が90%以上であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)の場合、可視吸収スペクトルにおいて520~560nm付近に複数の吸収ピークを示し、一方、レジオレギュラー構造をほとんど有しないレジオランダムなポリ(3-ヘキシルチオフェン)の場合、可視吸収スペクトルにおいて470nm付近にブロードな吸収ピークを示すことが知られている(Patel, R.J., et al., J. Polym.Sci.Pol.Phys. 2011, 49, 1269-1275)。したがって、得られたポリ(3-ヘキシルチオフェン)の可視吸収スペクトルを測定したときに、吸収ピークが470nmを超えていれば、当該ポリ(3-ヘキシルチオフェン)には、レジオレギュラー構造が存在しているといえる。 [0066] (4)半導体層4 半導体層4は、n型半導体で形成されていることが好ましい。n型半導体は、n型有機半導体、n型無機半導体のいずれを用いることもできる。 [0067] n型有機半導体としては、フラーレン誘導体を有する化合物が挙げられ、フラーレン誘導体を有するn型導電性高分子を好ましく用いることができる。n型導電性高分子を形成するモノマーとしては、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、[6,6]-フェニル-C61-酪酸n-ブチルエステル(PCBB)、[6,6]-フェニル-C71-酪酸メチルエステル(PCBM)([70]PCBM)、ジフェニル-C62-ビス(酪酸メチルエステル)(Bis[60]PCBM)を用いることができる。n型導電性高分子を形成するモノマーは、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合せて用いることもできる。n型導電性高分子としては、PCBMを用いることが好ましい。 [0068] 3.導電構造物の製造方法 次に、図1に示した本発明の実施の形態1にかかる導電構造物を製造する方法について図4~図9を用いて説明する。 [0069] 図4~図9は、本発明の実施の形態1における有機薄膜太陽電池の工程断面図である。 まず、図4に示すように陽極1上に、第1導電型のモノマーを含む有機物層8を形成し、陽極1の下側から集束電子線を照射する。モノマーを含む有機物層8が液状であるので、枠体9により、有機物層8を堰き止めている。 [0070] 集束電子線の照射にあたっては、陽極1と有機物層8との境界付近に集束電子線の焦点(スポット)が合うようにセットし、陽極1と有機物層8との境界面内で集束電子線の焦点位置を走査する。電子線の焦点が当たった部分の有機物層8は重合反応を起こしてポリマーとなり、図5に示すように第1導電型の半導体層2が形成される。なお、半導体層2の形成方法は、このような集束電子線の走査による重合に限られず、例えば、陽極1上にスピンコート法等により予め形成する方法もある。 [0071] 次に、図5に示すように、半導体層2と有機物層8との境界付近に集束電子線の焦点が合うようにセットし、有機物層8が大気圧下にある状態で、半導体層2と有機物層8との境界面内の1箇所に一定時間、集束電子線を照射する。これにより集束電子線の焦点部分にある有機物層8が重合反応を起こして、図6に示すように導電性有機構造体3が形成される。さらに、形成された導電性有機構造体3に対して所定の間隔をあけて、半導体層2上の他の箇所に他の導電性有機構造体3を順次形成する。 [0072] なお、半導体層2は上述のように本発明の必須の要件ではないため、半導体層2を作製せず、陽極1を基材として陽極1上に直接導電性有機構造体3を形成してもよい。 [0073] 上記の製造方法で形成された導電性有機構造体3は、上部が曲面状となる。これは、集束電子線の焦点(スポット中心)から離れるにしたがって集束電子線の強度が低くなり、また、スポット中心から散乱される二次電子線の強度も低くなるため、スポットの中心から離れるにしたがってモノマーの重合度も非線形的に(急激に)低くなるためであると推測される。 [0074] 本発明は、有機物層8が大気圧下にある状態で陽極1の下側から集束電子線を有機物層8に照射するものであるため、常温で重合反応を促進させることができる。これに対して、有機物層8を電子顕微鏡内部等の真空下に置くような場合は、有機物層8の蒸散を防止するために極低温に冷却する必要があり、有機物層8の重合度は上がりにくい。 [0075] 有機物層8を大気圧中に置きながらも有機物層8に電子線を照射する方法について、市販の装置を使用するのであれば、大気圧SEM(走査電子顕微鏡)や、環境TEM(透過型電子顕微鏡)を用いることができる。 [0076] 図5に示した有機物層8に集束放射線を照射する工程において、集束放射線の焦点(スポット)位置を、基材である半導体層2と有機物層8とが接する面に合わせることもできるが、焦点位置をこの面よりも有機物層8側(すなわち有機物層8の中)に合わせることも好ましい。焦点位置を有機物層8の中に合わせると、集束電子線は、有機物層8への入射面から奥(図5の上方)に向かってさらに集束に向かう形状であるため、導電性有機構造体3は、集束電子線の形状に倣って先細る形状になりやすいと推測される。 [0077] 次に、図7に示すように、集束電子線が照射されなかった部分の有機物層8を除去した後に、図8に示すように、導電性有機構造体3の基材である第1導電型の半導体層2上、および導電性有機構造体3上に、第2導電型の半導体層4を形成する。最後に、第2導電型の半導体層4上に、陰極5を形成して有機薄膜太陽電池のセルを完成させる(図9)。 [0078] そのほか、図4に示すように第1導電型の半導体層2上に、モノマーを含む有機物層8を形成し、図5に示すように有機物層8が大気圧下にある状態で、有機物層8中の複数の位置に集束電子線を照射することにより、図6に示すように導電性有機構造体を形成し、しかる後に、図7に示すように集束電子線が照射されなかった部分の有機物層8を除去する工程と、図示はしないが、基材である第1導電型の半導体層2を除去する工程とを実行することにより、導電性有機構造体3そのものを取得することができる。 [0079] 本願は、平成25年8月26日に出願された日本国特許出願第2013-175028号に基づく優先権の利益を主張するものである。平成25年8月26日に出願された日本国特許出願第2013-175028号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。 実施例 [0080] 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。 [0081] (IR顕微分光測定) 導電性有機構造体について、光源としてSPring-8のBL43IRの赤外放射光を用い、赤外顕微分光測定装置(FT-IR検出器としてBruker社製「VERTEX 70」、顕微鏡部としてBruker社製「HYPERION 2000」)を用いて吸光度を測定した。なお、分光測定(IR顕微分光測定、可視顕微分光測定)においては、導電性有機構造体をSi3N4膜上に作製後、導電性有機構造体とSi3N4膜を透過した光を測定し、別にSi3N4膜のみを透過した光を測定してリファレンスとして差し引き、スペクトルを得ている。 [0082] (可視顕微分光測定) 導電性有機構造体について、紫外可視分光測定装置(検出器として大塚電子社製「MCPD-7000」、顕微鏡部としてニコン社製「ECLIPSE 80i」)を用いて吸光度を測定した。 [0083] (MALDI-TOF測定) 導電性有機構造体をクロロホルムに30分浸漬し、溶出した成分について、MALDI-TOF型質量分析装置(Bruker社製「Autoflex-III」)を用いて質量分布を測定した。 [0084] (実施例1) 図10に示すように、厚さ100nmのSi3N4薄膜11を底面に有する試料保持用薄膜ディッシュに、3-ヘキシルチオフェン(純度98%超、東京化成工業株式会社)を加え、深さ1cm程度の有機物層10を形成した。その後、大気圧走査電子顕微鏡(日本電子社製「JASM-6200」)を用い、加速電圧10~30kV、照射電流1~500pAで1~300秒間、集束電子線13を一点照射した。その際、チャンバ15、16内は真空に保たれていた。集束電子線13は、電子銃12から発生した電子線を電子レンズ14により調整して、焦点位置を、試料保持用薄膜ディッシュの底面のSi3N4薄膜11の上面(3-ヘキシルチオフェン側)に合わせた。照射後、余剰のモノマーを除去してアセトニトリルで洗浄して、本発明の導電性有機構造体を得た。得られた導電性有機構造体をIR顕微分光測定した結果、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)に由来するピークが観察され、モノマーである3-ヘキシルチオフェンが集束電子線照射により重合したことが明らかになった。 また、300秒間、集束電子線を照射した導電性有機構造体No.10、13では、可視吸収顕微分光測定の結果、最大吸収波長が488nmであり、レジオレギュラー構造が含まれていることが確認された。導電性有機構造体No.13の可視顕微分光測定の結果を図11に示す。さらに、MALDI-TOF測定の結果、クロロホルムに溶出した成分の分子量の最大値は1,750m/zであり、3-ヘキシルチオフェンの分子量(168.3g/mol)から、少なくとも10.4量体の重合体が生成したことが明らかになった。また、クロロホルム浸漬後も溶出せず残存する導電性有機構造体が存在しており、さらに結合数の多い重合体が生成している可能性が示唆された。 [0085] 加速電圧、照射電流、照射時間をそれぞれ変化させたときの導電性有機構造体を上から観察したときの幅を表1に示す。加速電圧、照射電流、照射時間により、導電性有機構造体の幅を制御できることがわかる。 [0086] [表1] [0087] (実施例2) 加速電圧10~30kV、照射電流1~500pAで1~300秒間、一点照射する代わりに、加速電圧30kV、照射電流63.5pAで1~10秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って得られた導電性有機構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図12に示す。照射時間を短くすることにより、導電性有機構造体の幅をさらに減少できることが明らかになった。各導電性有機構造体を作製したときの加速電圧、照射電流、照射時間、幅を表2に示す。 [0088] [表2] [0089] (実施例3) 加速電圧10~30kV、照射電流1~500pAで1~300秒間、一点照射する代わりに、加速電圧30kV、照射電63.5pAで2秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って、導電性有機構造体No.20を得た。得られた導電性有機構造体No.20を、40°傾けて観察したSEM画像を図13に、高さ方向から観察したSEM画像を図14に、幅方向から観察したSEM画像を図15に示す。モノマーに集束電子線を照射することで、上部が曲面状である導電性有機構造体が得られることが明らかになった。また、No.20の導電性有機構造体の9/10高さにおける幅(W1)は92nm、1/10高さにおける幅(W2)は144nm、1/2高さにおける幅(W3)は130nm、高さ(H)は305nmであり、さらにW1/W2の値、H/W3の値を算出すると、W1/W2=0.64(<1)、H/W3=2.35(>2)であり、上記(1)式および(2)式を満たすものが得られた。 [0090] (実施例4) 3-ヘキシルチオフェンの代わりに2質量%のピロール(純度99%、関東化学株式会社製)水溶液を用い、加速電圧30kV、照射電流124pAで120秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って導電性有機構造体No.21を得た。得られた導電性有機構造体No.21のサイズ(幅)は、5μmであった。 [0091] (実施例5) 加速電圧30kV、照射電流63.5pAで、走査速度8.2μm/秒で走査したこと以外は、実施例1と同様の走査を行って導電性有機構造体No.22を得た。導電性有機構造体No.22は、壁を一部に含んでおり、走査方向に対して垂直となる方向のサイズ(幅)は、1.3μmであった。 [0092] (実施例6) 厚さ100nmのSi3N4薄膜11の上面(有機物層側)に、80nm厚さにITOをスパッタした試料保持用薄膜ディッシュを用い、加速電圧30kV、照射電流60pAで2秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って導電性有機構造体No.23を得た。得られた導電性有機構造体No.23を高さ方向から観察したSEM画像を図17、18に示す。得られた導電性有機構造体No.23のサイズ(幅)は、230nmであった。 [0093] (実施例7) 3-ヘキシルチオフェンの代わりにピロールを用い、加速電圧30kV、照射電流515pAで0.5秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って導電性有機構造体No.24を得た。得られた導電性有機構造体No.24を幅方向から観察したSEM画像を図19に示す。得られた導電性有機構造体No.24の9/10高さにおける幅(W1)は197nm、1/10高さにおける幅(W2)は234nm、1/2高さにおける幅(W3)は250nm、高さ(H)は680nmであった。さらにW1/W2の値、H/W3の値を算出すると、W1/W2=0.84、H/W3=2.7であり、上記(1)式および(2)式を満たすものが得られた。 [0094] (実施例8) 3-ヘキシルチオフェンの代わりにアニリン(純度99%、関東化学株式会社製)を用い、加速電圧30kV、照射電流515pAで1.2秒間、一点照射した以外は、実施例1と同様の操作を行って導電性有機構造体No.25を得た。得られた導電性有機構造体No.25の9/10高さにおける幅(W1)は255nm、1/10高さにおける幅(W2)は354nm、1/2高さにおける幅(W3)は340nm、高さ(H)は470nmであった。さらにW1/W2の値、H/W3の値を算出すると、W1/W2=0.72であり、上記(1)式を満たすものが得られた。 [0095] (実施例9) 照射時間を1.0秒間とした以外は、実施例8と同様の操作を行って導電性有機構造体No.26を得た。得られた導電性有機構造体No.26の9/10高さにおける幅(W1)は145nm、1/10高さにおける幅(W2)は262nm、1/2高さにおける幅(W3)は、210nm、高さ(H)は320nmであった。さらにW1/W2の値を算出すると、W1/W2=0.55であり、上記(1)式を満たすものが得られた。 符号の説明 [0096] 1 陽極 2 第1導電型の半導体層 3 導電性有機構造体 4 第2導電型の半導体層 5 陰極 6 電圧計 7 真正半導体層 8 有機物層 9 枠体 10 有機物層 11 Si3N4薄膜 12 電子銃 13 集束電子線 14 電子レンズ 15 チャンバ 16 チャンバ |
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