SEPARATION FILM MATERIAL AND ANALYSIS SENSOR CHIP FOR BLOOD AND TISSUE INTERSTITIAL FLUID COMPONENTS
外国特許コード | F150008357 |
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整理番号 | E114P08WO |
掲載日 | 2015年6月24日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP077754 |
国際公開番号 | WO 2015056802 |
国際出願日 | 平成26年10月17日(2014.10.17) |
国際公開日 | 平成27年4月23日(2015.4.23) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | SEPARATION FILM MATERIAL AND ANALYSIS SENSOR CHIP FOR BLOOD AND TISSUE INTERSTITIAL FLUID COMPONENTS |
発明の概要(英語) | This separation film material (5) is provided with: a film substrate (2) having a plurality of pore ducts that penetrate in the thickness direction and through which liquid can pass; and a separation film (3) that is connected to the outer surface of the film substrate (2), contains an extracellular matrix produced by cells, and has vacuoles (4) resulting from removing the cells. |
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国際特許分類(IPC) |
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参考情報 (研究プロジェクト等) | ERATO SOMEYA Bio-Harmonized Electronics AREA |
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発明の名称 | 分離フィルタ材料並びに血液および組織間質液成分分析センサチップ |
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発明の概要 | 分離フィルタ材料(5)は、厚さ方向に貫通し液体を透過可能な複数の空孔経路を有するフィルタ基材(2)と、細胞が産生する細胞外マトリクスを含み脱細胞化による空胞(4)を有しフィルタ基材(2)の外面に接続された分離膜(3)と、を備える。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 厚さ方向に貫通し液体を透過可能な複数の空孔経路を有するフィルタ基材と、 細胞が産生する細胞外マトリクスを含み脱細胞化による空胞を有し前記フィルタ基材の外面に接続された分離膜と、 を備える分離フィルタ材料。 [請求項2] 請求項1に記載の分離フィルタ材料と、 前記分離膜を透過した液体中の分析対象物に反応する反応部と、 を有する血液および組織間質液成分分析センサチップ。 [請求項3] 請求項2に記載の血液および組織間質液成分分析センサチップであって、 前記分離フィルタ材料の厚さ方向の両面のうちの一方である第一面に接し前記分離フィルタ材料を透過して得られた液体に対して前処理を行う前処理試薬を含む前処理試薬担体をさらに備え、 前記反応部は、前記前処理試薬担体を透過して前処理がされた液体と接触可能である 血液および組織間質液成分分析センサチップ。 [請求項4] 請求項2または3に記載の血液および組織間質液成分分析センサチップであって、 前記反応部は、電気化学的測定を行う電極を有する血液および組織間質液成分分析センサチップ。 [請求項5] 請求項2または3に記載の血液および組織間質液成分分析センサチップであって、 前記反応部は、前記分離膜に固定され前記分析対象物に接触すると蛍光を発する蛍光試薬を有する血液および組織間質液成分分析センサチップ。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : [規則37.2に基づきISAが決定した発明の名称] 分離フィルタ材料並びに血液および組織間質液成分分析センサチップ 技術分野 [0001] 本発明は、血清分離フィルタ材料及び血液成分分析用センサチップに関する。 本願は、2013年10月18日に、日本に出願された特願2013-217367号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 背景技術 [0002] 従来、医療器具を生体内に埋め込むことにより長期的に診断や治療をすることが知られている。たとえば、非特許文献1には、心臓の機能の一部を代行する補助人工心臓に適用されるハイブリッド脱血カニューレが開示されている。 先行技術文献 非特許文献 [0003] 非特許文献1 : 中野 英美子,「補助人工心臓用ハイブリッド脱血カニューレの開発」,北里大学大学院,修士学位論文 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0004] 糖尿病等の生活習慣病においては、治療後の経過を観察するために、長期間に亘って頻繁に採血をして血液成分、特に血液中のグルコース濃度を測定する必要がある。このような採血の手間を軽減する目的で、血液成分を分析するための装置を体内に埋め込むことが考えられる。しかしながら、体内において血液に接触する部材は、血液の凝固を引き起こす可能性がある。また、血液成分を分析するために体内に埋め込まれた装置に血中のタンパク質が沈着することにより血液成分の分析精度が悪化する可能性もある。 [0005] 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、生体への埋め込み初期から長期間に亘って精度よく血液成分の分析をすることができる血液成分分析用センサチップ及び当該センサチップに適用される血清分離フィルタ材料を提供することである。 課題を解決するための手段 [0006] 本発明の一態様は、厚さ方向に貫通し液体を透過可能な複数の空孔経路を有するフィルタ基材と、細胞が産生する細胞外マトリクスを含み脱細胞化による空胞を有し前記フィルタ基材の外面に接続された分離膜と、を備える分離フィルタ材料である。 [0007] 本発明の別の態様は、上記態様の分離フィルタ材料と、前記分離膜を透過した液体中の分析対象物に反応する反応部と、を有する血液および組織間質液成分分析センサチップである。 [0008] 上記態様の血液および組織間質液成分分析センサチップは、前記分離フィルタ材料の厚さ方向の両面のうちの一方である第一面に接し前記分離フィルタ材料を透過して得られた液体に対して前処理を行う前処理試薬を含む前処理試薬担体をさらに備えていてもよく、前記反応部は、前記前処理試薬担体を透過して前処理がされた液体と接触可能であってもよい。 [0009] 前記反応部は、電気化学的測定を行う電極を有していてもよい。 [0010] 前記反応部は、前記分離膜に固定され前記分析対象物に接触すると蛍光を発する蛍光試薬を有していてもよい。 発明の効果 [0011] 本発明によれば、生体への埋め込み初期から長期間に亘って精度よく血液成分や組織間質液成分の分析をすることができる。 図面の簡単な説明 [0012] [図1] (A)は、本発明の第1実施形態の血液成分分析センサチップの模式的な断面図である。(B)は、同血液成分分析センサチップの製造時の一過程を示す模式的な断面図である。(C)は、同血液成分分析センサチップの使用時の一過程を示す模式的な断面図である。 [図2] 本発明の第2実施形態の血液成分分析センサチップの模式的な断面図である。 [図3] 本発明の実施例の血清分離フィルタ材料を生産するために基材が型枠内に配された状態を示す模式的な断面図である。 [図4] 本発明の実施例の血清分離フィルタ材料がドナーに埋め込まれた後脱細胞化される前の状態の顕微鏡写真である。 [図5] 本発明の実施例の血清分離フィルタ材料が脱細胞化された後の状態の顕微鏡写真である。 [図6] 本発明の実施例の血清分離フィルタ材料及び比較例2例に対する血栓の付着状態を示すグラフである。 [図7] 本発明の実施例の血清分離フィルタ材料に蛋白質を含む試料を透過させる実験の模式図である。 [図8] (a)は、ポリスルフォン膜に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数と流量との関係を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施例の血清分離フィルタ材料に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数と流量との関係を示すグラフである。 [図9] (a)は、ポリスルフォン膜に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数とグルコース濃度との関係を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施例の血清分離フィルタ材料に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数とグルコース濃度との関係を示すグラフである。 [図10] (a)は、ポリスルフォン膜に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数と蛋白質除去率との関係を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施例の血清分離フィルタ材料に対して糖や蛋白質等を含む試料を透過させたときの日数と蛋白質除去率との関係を示すグラフである。 発明を実施するための形態 [0013] (第1実施形態) 本発明の第1実施形態の血清分離フィルタ材料及び血液成分分析センサチップについて説明する。図1(A)は、本発明の第1実施形態の血液成分分析センサチップの模式的な断面図である。図1(B)は、同血液成分分析センサチップの製造時の一過程を示す模式的な断面図である。図1(C)は、同血液成分分析センサチップの使用時の一過程を示す模式的な断面図である。 [0014] 図1(A)に示すように、本実施形態の血液成分分析センサチップ1は、フィルタ基材2(以下、単に基材と称する)と、基材2の外面に接続された血清分離膜3と、血清中の分析対象物に反応する反応部7とを備える。基材2と血清分離膜3とによって血清分離フィルタ材料5が構成されている。さらに、本実施形態では、血清分離フィルタ材料5と反応部7との間には、血清に対して前処理を行うための試薬が保持された前処理試薬担体8と、前処理が行われた血清中において分析対象物の分析に必要な成分を透過して反応部7へ導くための選択的透過膜9とが配されている。 以下では、血液成分の分析の一例として、血中のグルコース濃度を測定する例を挙げる。なお、本実施形態の血清分離フィルタ材料5及び血液成分分析センサチップ1に適用可能な分析内容は、血中グルコース濃度の測定には限られない。 [0015] 基材2は、血清分離フィルタ材料5の概略形状を規定し、血清分離フィルタ材料5に強度を付与するための部材である。 基材2の材料は、生体適合性を有することが好ましい。すなわち、基材2は、細胞毒性が無いか非常に低い材料であることが好ましい。また、本実施形態では、基材2は、生体非吸収性材料であることが好ましい。基材2が生体非吸収性材料であると、血液成分分析センサチップ1を体内に長期間埋め込むことができる。ここで、生体非吸収性材料とは加水分解されない、また細胞によって浸食されない材料を意味する。 基材2の材料の具体例としては、チタンやステンレス等生体適合性の高い金属、ポリエステル等生体適合性の高い樹脂が挙げられる。血液成分分析センサチップ1に特に柔軟性が求められる場合には、基材2は樹脂製であることが好ましい。たとえば、柔軟性の高い基材2として、ポリエステルベロアが採用されてよい。基材2は、少なくとも血清分離膜3が形成される側で動物細胞が侵入し生着できる大きさの空胞を有し、基材2の厚さ方向に血清を透過できる空孔経路を内包する構造であることが好ましい。 また、基材2に対して血清分離膜3を効率よく形成する目的で、基材2の外面は、血液成分分析センサチップ1の製造過程において血清分離膜3を形成する細胞6(図1(B)参照)の足場として好適な表面形状を有していることが好ましい。 基材2が細胞6の足場として好適に機能するには、基材2は、基材2の内部に細胞の定着がされるように、多孔質または繊維布からなる内部に空孔を有することが好ましい。また、基材2の空孔の大きさは、細胞がその内部に侵入できるよう、細胞の大きさと同等またはより大きいことが好ましい。空孔の細胞侵入断面積が細胞の最大断面積より小さくても、細胞はその形態を変えて狭い空孔に侵入することができる。特に基材2が繊維布からなる場合、基材2の内部の空孔が繊維織に沿って連結されているため、細胞の侵入が特に容易であり、好適である。 基材2の具体例として、基材2はポリエステル繊維で織られた布で構成され、表面を起毛処理されている。起毛処理された布は、起毛処理されていない場合と比較して表面積が多いので、生体を誘導しやすい(すなわち細胞が生着しやすく細胞外マトリクスの産生をさせやすい)環境となっている。さらに、起毛処理された布は、ドナー及びレシピエントの生体組織との結合度も、起毛処理されていない場合と比較して高い。基材2は、織り目から起毛繊維へと徐々に生体組織の密度が変化することで、ドナー及びレシピエントの体内で生体と人工物のシームレスな結合を行っている。 [0016] 血清分離膜3は、細胞6により産生されたコラーゲンの繊維からなる細胞外マトリクスを含み基材2の内部空孔から基材2の外面へと基材2と一体化して密着した層である。血清分離膜3には、細胞外マトリクスを産生することにより血清分離膜3を形成した細胞6が脱細胞化により除去されて残る空胞4が存在する。血清分離膜3の空胞4の大きさは、血清分離膜3を形成する細胞6の外形によって規定される。血清分離膜3の空胞4は、血液成分分析センサチップ1の使用時に血液成分分析センサチップ1がレシピエントの体内に埋め込まれた後、レシピエントの細胞6A(図1(C)参照)が入り込んで生着する場として機能する。血清分離膜3を形成する細胞6は、産生された細胞外マトリクスがレシピエントに適合可能であるように選択される。具体的には、ヒトに埋め込まれる血液成分分析センサチップ1においては、哺乳動物細胞によって血清分離膜3が形成されることが好ましい。たとえば、血清分離膜3は、基材2をドナーの体内に留置することでドナーの細胞により形成される。なお、血清分離膜3を形成する細胞6は、初代培養細胞や不死化細胞であってもよい。 [0017] 図1に示す反応部7は、電気的若しくは化学的なシグナルを血清から受け、又は、電気的若しくは化学的なシグナルを発することにより、血清中の検出対象物の有無やその濃度を検出する。本実施形態では、反応部7は、血清中の分析対象物に接触可能な電極10を有する。電極10には、血清成分に対して電気化学的測定を行うための公知の電極要素が適宜選択して採用されてよい。 [0018] 前処理試薬担体8は、分析対象物の種類に応じて選択される前処理試薬を支持可能な多孔質構造を有する。本実施形態では、血中グルコース濃度に応じて過酸化水素を生成するための酵素(たとえばグルコースオキシダーゼ)が前処理試薬担体8に付着している。 [0019] 選択的透過膜9は、本実施形態では、前処理試薬担体8に保持された酵素によって生成された過酸化水素を選択的に透過する膜である。 [0020] 次に、本実施形態の血液成分分析センサチップ1の製造方法について説明する。 まず、基材2を所望の形状に形成する。本実施形態では、たとえば、基材2は、シート状のポリエステルベロアを所望の形状に切断して形成される。 [0021] 次に、所望の形状に形成された基材2を、この基材2を保持する型枠に固定して、ドナーとなる生物の体内に埋め込む。基材2の埋め込み位置は、たとえばドナーの皮下や腹腔内としてよい。ドナーの体内では、ドナーにとって異物である基材2の外面が、ドナー由来の細胞6で覆われる。さらに、基材2の外面において、ドナー由来の細胞6は基材2に生着し、基材2の内部空孔および基材2の外表面に細胞外マトリクスを産生する。ドナーに対する基材2の埋め込み期間は、細胞6の生着及び細胞外マトリクスの産生状態に基づいて適宜設定されてよい。たとえば、ヤギの皮下に基材2を埋め込みヤギ由来の細胞に細胞外マトリクスを産生させる場合には、約100日間ヤギの皮下に基材2を埋め込み続ける。この状態で、図1(B)に示すように、後の工程にて血清分離膜3となる細胞外マトリクスからなる層状構造がそれを産生する細胞6を内包して基材2内部から基材2外表面上にわたって形成される。 [0022] 次に、細胞外マトリクス及びその産生細胞6により基材2内部から基材2外表面上に形成された層に対して脱細胞化を行う。すなわち、細胞外マトリクス及びその産生細胞6により基材2内部および外表面上に形成された層から細胞6を除去する。細胞6の除去方法の一例としては、界面活性剤により細胞膜を破壊する方法がある。具体的には、細胞外マトリクス及びその産生細胞6により基材2内部および外表面上に形成された層に対して生理食塩水で溶いた1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)溶液を6時間以上接触させることで、細胞6を除去することができる。細胞外マトリクス及びその産生細胞6により基材2内部および外上面上に形成された層から細胞6が除去されることにより、基材2内部から基材2の外面上に、空胞4を有し基材2と一体化して接続する細胞外マトリクスによる層が残り、これが血清分離膜3となる。 [0023] 以上の工程により、脱細胞化により基材2に接続する血清分離膜3を備えた血清分離フィルタ材料5が形成される。 続いて、血清分離フィルタ材料5、前処理試薬担体8、選択的透過膜9、及び反応部7をこの順に重ねて固定する。なお、必要に応じて、血清分離フィルタ材料5を通過せずに反応部7に血球あるいは血漿が到達するのを防止するための隔壁を設けてもよい。 以上で血液成分分析センサチップ1の製造工程は終了する。 [0024] 次に、本実施形態の血液成分分析センサチップ1の使用方法及び作用について説明する。 本実施形態の血液成分分析センサチップ1は、レシピエント(たとえば患者)の体内に埋め込まれる。レシピエントに血液成分分析センサチップ1を埋め込む前の状態の血液成分分析センサチップ1は、空胞4が血清分離膜3に形成されているので、空胞4を通じて血球や血漿は自由に移行可能である。しかしながら、血液成分分析センサチップ1がレシピエントの体内に留置されると、図1(C)に示すように、レシピエント由来の細胞6Aが血清分離フィルタ材料5の空胞4内に入り込む。たとえば、レシピエントの体内において空胞4内に細胞6Aが入り込むと、レシピエント由来の細胞6Aは、ドナー由来の細胞外マトリクスを足場として血清分離フィルタ材料5に生着する。 空胞4内にレシピエント由来の細胞6Aが生着することにより、血清分離フィルタ材料5は、細胞膜を透過可能な成分と細胞外マトリクスの隙間を通過可能な成分とを選択的に透過し、血球、血小板、その他タンパク質等の成分を透過しない限外濾過膜となる。 [0025] レシピエントの体内において、血液成分分析センサチップ1は、血液から血球やタンパク質を除去して血清を選択的に反応部7内に受け入れる。そして、血清分離フィルタ材料5により血液から分離された血清は、所定の前処理反応及び反応部7における分析対象物の分析に供される。 [0026] レシピエントの体内に長期間血液成分分析センサチップ1が埋め込まれていると、ドナー由来の細胞外マトリクスは代謝等により分解され、レシピエント由来の細胞外マトリクスに置き換わる。 [0027] このように、本実施形態では、血液成分分析センサチップ1のレシピエントへの埋め込み時には、レシピエント由来の細胞6Aが空胞4に入り込むことにより血清分離フィルタ材料5が限外濾過膜となり、限外濾過膜となった血清分離フィルタ材料5はレシピエント由来の細胞6Aが産生する細胞外マトリクスによって濾過性能が維持される。また、血清分離フィルタ材料5の外面はレシピエント由来の細胞6A及び細胞外マトリクスによって覆われているので、タンパク質等の沈着が起こりにくい。 その結果、本実施形態の血液成分分析センサチップ1は、体内に長期間埋め込まれた状態でも安定して血液成分の分析をすることができる。 [0028] また、血清分離膜3には空胞4が存在するので、コラーゲンゲルをコーティングして細胞の足場を形成する場合と比較して細胞が生着しやすい。 [0029] また、血清分離膜3はレシピエント由来の細胞外マトリクスにより修復可能であるので、埋め込みから長期間血清分離膜3が維持され、人工材料である基材2が血液に接触しにくくなり、血栓の発生を長期間低く抑えることができる。 [0030] また、レシピエントへの埋め込み前の血液成分分析センサチップ1は、ドナー由来の細胞6が脱細胞化により除去されているので、同種別個体への移植である他家移植や、異種別個体への移植である他種移植においても高い適合性を有する。 [0031] また、基材2の外面が細胞外マトリクスで覆われた部分はレシピエントの組織に容易に癒合する。 [0032] また、本実施形態の血液成分分析センサチップ1は、反応部7が取り付けられる前の血清分離フィルタ材料5を凍結乾燥により長期間保管可能である。 [0033] また、柔軟な基材2を有する血液成分分析センサチップ1は、レシピエントの臓器の形状に倣って変形可能である。このため、血液成分分析センサチップ1のレシピエントへの埋め込み期間中におけるレシピエント臓器への負荷が低い。 [0034] (第2実施形態) 本発明の第2実施形態の血液成分分析センサチップ1Aについて説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、上記第1実施形態の血液成分分析センサチップ1の構成要素に対応する構成要素には、第1実施形態における符号と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。 図2は、本発明の第2実施形態の血液成分分析センサチップの模式的な断面図である。 [0035] 図2に示すように、本実施形態の血液成分分析センサチップ1Aは、第1実施形態で説明した反応部7に代えて、血清中の分析対象物に接触することにより蛍光を発する蛍光試薬を有する反応部7Aを備える。 [0036] 反応部7Aは、血清分離膜3に上記の蛍光試薬が化学結合により固定されることにより、血清分離膜3の外面に形成される。また、本実施形態の反応部7Aは、血清分離膜3を透過した後の血清に蛍光試薬が付着可能となるように、血液成分分析センサチップ1Aの厚さ方向の両面のうちの一方のみに設けられていてもよい。 反応部7Aにおける蛍光試薬は、たとえば、血清中の分析対象物に対して濃度依存的に、あるは時間依存的に反応して蛍光を発する。反応部7Aにおける蛍光試薬が発する蛍光は、たとえば、本実施形態の血液成分分析センサチップ1Aとともに体内に埋め込まれ、励起光を発するとともに蛍光を検出する図示しない蛍光センサチップによって波長及び蛍光強度が検出される。 [0037] 本実施形態の血液成分分析センサチップ1Aは、体内に埋め込まれた後、血液中の分析対処物の濃度に応じて蛍光を発することにより、分析対象物の濃度を測定することができる。 また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に血清分離膜3はレシピエント由来の細胞6Aが空胞4に入り込んで生着することで限外濾過膜として機能する。 また、本実施形態では、第1実施形態と異なり体内において過酸化水素を発生させないので生体に対する有害性が低い。 なお、本実施形態の反応部7Aは、蛍光を発する試薬に限らず、検出可能な光を化学発光により発する試薬を有していてもよい。 [0038] (第3実施形態) 本発明の第3実施形態の血液成分分析センサチップ1Bについて説明する。 本実施形態では、細胞外マトリクスとその産生細胞6とによる層状構造がドナーの体内でなくex vivoで形成される点で上記第1,2実施形態と製造方法が異なる。本実施形態の製造方法によっても第1,2に実施形態で説明した血液成分分析センサチップ1,1Aを製造することができる(図1,2参照)。 [0039] なお、本実施形態における細胞外マトリクスとその産生細胞6とによる層状構造の形成方法は、たとえば、バイオリアクター内でドナー由来の細胞6を培養したり、セルプリンティングによりドナー由来の組織を基材2上に構築したりする。 本実施形態でも上記第1,2実施形態と同様の効果を奏する。 また、本実施形態ではドナーの体内を利用する必要がない。 実施例 1 [0040] 本発明の実施例について説明する。 まず、本実施例の血清分離フィルタ材料を生産した例を示す。図3は、本実施例の血清分離フィルタ材料を生産するために基材が型枠内に配された状態を示す模式的な断面図である。図4は、本実施例の血清分離フィルタ材料がドナーに埋め込まれた後脱細胞化される前の状態の顕微鏡写真である。図5は、本実施例の血清分離フィルタ材料が脱細胞化された後の状態の顕微鏡写真である。図6は、本実施例の血清分離フィルタ材料及び比較例2例に対する血栓の付着状態を示すグラフである。 [0041] 図3に示すように、本実施例の血清分離フィルタ材料を生産するために、基材2は樹脂製のケース10に収容された状態でドナーとなるヤギの体内に埋め込まれた。ケース10は、蓋10a及び容器10bと、蓋10aと容器10bとを連結するネジ10cと、ケース10の内外を連通させる貫通孔部10dとを有する。本実施例では、貫通孔部10dは、容器10bと蓋10aとの両方に形成されている。 また、本実施例では、ケース10内でのドナー由来細胞の迅速な増殖をもたらす足場として、基材2を間に挟む2枚の生体吸収性不織布11がケース10内に配されている。2枚の生体吸収性不織布11は、たとえば本実施例ではポリグルコール酸からなる。2枚の生体吸収性不織布11で基材2が挟まれた状態とされることにより、基材2の表面上及び基材2の内部に均一均質な細胞を生着させることができる。2枚の生体吸収性不織布11は、いずれもドナーに対して埋め込まれている期間内にドナーの細胞により吸収あるいは分解される。また、2枚の生体吸収性不織布11の厚さは、基材2の表面上の分離膜(たとえば上記実施形態の血清分離膜3)の厚さを規定する。 [0042] 図4に示すように、ドナーに埋め込まれた後の基材2の表面は、ドナー由来の細胞により覆われている。図4において、細胞核が染色されており、基材2の繊維の断面が三角形状に見えている。また、図5に示すように、脱細胞化された後は、基材2の表面から核が消失していることがわかる。すなわち、脱細胞化されることにより、細胞外マトリクスが基材2に残り、血球その他の体細胞が除去された。 [0043] 次に、上記の例において脱細胞化されて構成された血清分離フィルタ材料に血液を塗布して静置したときの血液凝固状態を示す。 図6において、横軸は時間を示し、縦軸は材料面積あたりの血栓凝固率を示している。図6において、「□」印は、比較例として用いたポリサルフォン膜に対する各時間における材料面積あたりの血栓凝固率を示している。また、図6において、「◇」印は、比較例として用いた透析用セルロース膜に対する各時間における材料面積あたりの血栓凝固率を示している。また、図6において、「△」印は、本実施例の血清分離フィルタ材料に対する各時間における材料面積あたりの血栓凝固率を示している。 図6に示すように、ポリサルフォン膜及びセルロース膜は、時間の経過とともに血栓凝固率が上昇している。これに対して、図6に示すように、本実施例の血清分離フィルタ材料は、ポリサルフォン膜及びセルロース膜と比較して血栓凝固率が低かった。 [0044] 次に、上記の方法により生産された血清分離フィルタ材料に対して、試料の例として糖や蛋白質等を含む液体を透過させた例を示す。図7は、本実施例の血清分離フィルタ材料に糖や蛋白質等を含む液体を透過させる実験の模式図である。 図7に示すように、この例では、血清分離フィルタ材料1を間に挟むプレート12a,12bがネジ12cにより固定されている。プレート12a,12bには、糖や蛋白質等を含む液体の入口と出口として用いる流路(たとえば符号12dで示す)が形成されている。また、以下の例では、糖や蛋白質等を含む液体(以下「試料」という)は、ヒトの血液の組成を模した人工血液であり、170mg/dlのグルコースと、ヒトの血液と同等の濃度の蛋白質と、赤血球と、を含有している。 [0045] 本実施例の血清分離フィルタ材料1に対して試料を透過させたときの血清分離フィルタ材料の寿命の一例を示す。本実施例において血清分離フィルタ材料1の寿命は、試料の透過を開始してから試料が透過不能となるまでの日数で示される。図8(a)は、ポリサルフォン膜に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数(横軸)と流量(縦軸)との関係を示すグラフである。図8(b)は、本発明の実施例の血清分離フィルタ材料に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数(横軸)と流量(縦軸)との関係を示すグラフである。 図8(a)及び図8(b)に示すように、ポリサルフォン膜では6日目以降は流量がゼロとなったが、本実施例の血清分離フィルタ材料1では、計測開始から3日目までは流量が低下したものの、4日目以降、計測期間が終了する30日目まで、略一定の流量が維持された。 [0046] 次に、血清分離フィルタ材料に対して試料を透過させたときの血清分離フィルタ材料の性能の一例を示す。本実施例において血清分離フィルタ材料の性能は、試料の透過を開始してから試料が透過不能となるまでの間における、グルコースの透過量と、蛋白質除去率で示される。 図9(a)は、ポリサルフォン膜(比較例)に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数とグルコース濃度との関係を示すグラフである。図9(b)は、本実施例の血清分離フィルタ材料に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数とグルコース濃度との関係を示すグラフである。図10(a)は、ポリサルフォン膜(比較例)に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数と蛋白質除去率との関係を示すグラフである。図10(b)は、本実施例の血清分離フィルタ材料に対して蛋白質を含む試料を透過させたときの日数と蛋白質除去率との関係を示すグラフである。 [0047] 図9及び図10に示すように、本実施例及び比較例のいずれも、実験開始から5日目までは、グルコースの濃度と蛋白質除去率との両方で同様に良好であることが分かった。しかしながら、ポリサルフォン膜(比較例)では、図8(a)に示すように実験開始から5日で流量が低下するので、6日目以降はグルコース濃度及び蛋白質除去率は測定不能である。 これに対して、本実施例では、図8(b)に示すように6日目以降も略一定の流量が維持されており、さらに、図9(b)及び図10(b)に示すようにグルコース濃度及び蛋白質除去率は実験開始時と略同等の良好な状態が維持されている。 [0048] 以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。 [0049] たとえば、上記実施形態では、血液の血清を分離して分析することが可能な血液成分分析センサチップが開示されているが、血液以外の生体由来の液体成分を対象とした分析にも本発明は適用可能である。たとえば、上記実施形態に開示された血清分離膜と同様の構成の分離膜は、組織間質液を透過させる分離膜として利用可能である。 産業上の利用可能性 [0050] 本発明は、体内に埋め込まれて血液や組織間質液の成分に対する生化学分析を行うためのチップに利用可能である。 符号の説明 [0051] 1,1A,1B 血液成分分析センサチップ 2 フィルタ基材 3 血清分離膜 4 空胞 5 血清分離フィルタ材料 6 ドナー由来の細胞 6A レシピエント由来の細胞 7 反応部 8 前処理試薬担体 9 選択的透過膜 10 電極 |
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