PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC DRUG FOR INFARCTION DISEASE
外国特許コード | F150008420 |
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掲載日 | 2015年10月9日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP051202 |
国際公開番号 | WO 2014119438 |
国際出願日 | 平成26年1月22日(2014.1.22) |
国際公開日 | 平成26年8月7日(2014.8.7) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC DRUG FOR INFARCTION DISEASE |
発明の概要(英語) | Provided is a therapeutic drug for an infarction disease, in particular, a drug that is capable of exhibiting a therapeutic effect on the infarction disease even in the case where said drug is administered 3 hours or longer after the onset of regional ischemia. A prophylactic or therapeutic drug for an infarction disease, said drug containing an RANKL protein. |
従来技術、競合技術の概要(英語) |
BACKGROUND ART The disease is cerebral infarction such as myocardial infarction or infarcted, ischemic vascular occlusion or the like due to the occurrence of the site. Typically, ischemia having a portion in such a way that a portion of the perimeter and thus can encourage the oxygen and nutrient, further at the same time or in accordance with this inflammatory response occurs by free radical production, increased with necrosis site a short period of time. Therefore, for the treatment of diseases is infarct, ischemia after the occurrence of the site, administering a therapeutic effective at a relatively early stage is extremely important. As such therapeutic agents, internationally recognized effectiveness include, for example thrombolytic drugs (tissue plasminogen activator) has been known. However, the thrombolytic agent is, after the occurrence of the ischemic site within 3 since the time required to be administered, the time of occurrence of ischemic site which has already been completely unknown patient 3 time passes after the occurrence of the ischemic site and cannot be used by the patient. Therefore, after the occurrence of the ischemic site after time passes 3 administered infarcted disease development of therapeutics to exert effects is demanded. RANKL(Receptor Activator of NF κB Ligand) activating osteoclasts promote bone resorption by well known as a factor. In part, in order to inhibit the inflammatory cytokine RANKL is reported (non-patent document 1) but, in the first place RANKL is, as its name indicates NFκB (inflammatory cytokine IL-6 and having a function of promoting the expression of TNF α) was discovered as a factor for activating since, and inhibit inflammatory responses actually RANKL infarction diseases whether or not the therapeutic effect is unknown. In addition, inhibit inflammatory responses to steroid therapy is effective against diseases not infarcted in view of these circumstances, it is possible to suppress the inflammatory response simply infarct effective for the treatment of diseases is unknown whether any of the said. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | 梗塞性疾患の予防又は治療用医薬 |
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発明の概要 |
梗塞性疾患に対する治療用医薬を提供すること。特に、虚血部位の発生後3時間以上経過後に投与しても、梗塞性疾患に対して治療効果を発揮する医薬を提供すること。 【解決手段】RANKLタンパク質を含有する梗塞性疾患の予防又は治療用医薬。 |
特許請求の範囲 |
請求の範囲 [請求項1] RANKLタンパク質を含有する梗塞性疾患の予防又は治療用医薬。 [請求項2] 梗塞性疾患が梗塞である請求項1に記載の予防又は治療用医薬。 [請求項3] 梗塞性疾患が脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞、腎梗塞、下肢急性動脈閉塞症、及びクモ膜下出血後の血管攣縮による脳梗塞からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の予防又は治療用医薬。 [請求項4] RANKLタンパク質が下記(e)に記載するタンパク質及び下記(f)に記載するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の予防又は治療用医薬: (e)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、 (f)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質。 [請求項5] RANKLタンパク質が配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項4に記載の予防又は治療用医薬。 [請求項6] 皮下投与剤、経動脈投与剤、又は経静脈投与剤である請求項1~5のいずれかに記載の予防又は治療用医薬。 [請求項7] 梗塞性疾患の予防又は治療において使用されるための、RANKLタンパク質。 [請求項8] 請求項1~6のいずれかに記載の予防又は治療用医薬を、梗塞性疾患患者若しくは梗塞性疾患を発症する可能性がある被検体に投与することを包含する、梗塞性疾患の予防又は治療方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 梗塞性疾患の予防又は治療用医薬 技術分野 [0001] 本発明は、梗塞性疾患の予防又は治療用医薬に関する。 背景技術 [0002] 脳梗塞や心筋梗塞などの梗塞性疾患は、血管閉塞等により虚血部位が生じることに起因する。通常、虚血部位が生じることによりその周辺部位に酸素や栄養が行き届かなくなり、さらにこれと同時に或いはこれに伴って炎症反応やフリーラジカル生成が起こることにより、壊死部位が短期間に拡大していく。したがって、梗塞性疾患の治療には、虚血部位の発生後、比較的早期に有効な治療薬を投与することが極めて重要となる。 [0003] このような治療薬として、国際的に有効性が認められているものとしては、例えば血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーター)が知られている。しかしながら、血栓溶解薬は、虚血部位の発生後3時間以内に投与される必要があるので、虚血部位の発生時刻が全く不明である患者や既に虚血部位の発生後3時間以上経過している患者に対しては用いることができない。そこで、虚血部位の発生後3時間以上経過した後に投与しても梗塞性疾患に対して効果を発揮する治療薬の開発が求められている。 [0004] RANKL(Receptor Activator of NFκB Ligand)は破骨細胞を活性化することにより骨吸収を促進する因子としてよく知られている。一部において、RANKLが炎症性サイトカインを抑制するという報告があるものの(非特許文献1)、そもそもRANKLは、その名称が示すようにNFκB(炎症性サイトカインであるIL-6やTNFαの発現を促進する機能を有する)を活性化する因子として発見されたものであるため、RANKLが実際に炎症反応を抑制して梗塞性疾患に対する治療効果を発揮するか否かは不明である。また、炎症反応を抑制するステロイド療法が梗塞性疾患に対して有効ではない実情に鑑みれば、単に炎症反応を抑制することが梗塞性疾患の治療に有効であるか否かも不明であるといえる。 先行技術文献 非特許文献 [0005] 非特許文献1 : The Journal of Immunology, 2006, 177: 3799-3805 非特許文献2 : The FASEB Journal, 2006, 20: 1162-1175 非特許文献3 : The Journal of Immunology, 2010, 184: 6910-6919 非特許文献4 : The Journal of Clinical Investigation, 2001, 108(7): 971-979 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0006] 本発明は、梗塞性疾患に対する予防又は治療用医薬を提供することを課題とする。特に、虚血部位の発生後3時間以上経過後に投与しても、梗塞性疾患に対して治療効果を発揮する医薬を提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0007] 本発明者等は鋭意研究を進めた結果、RANKLタンパク質が、抗炎症性サイトカインの発現を亢進させるのみならず、壊死部位の拡大を抑制する作用を有するPPARγ(非特許文献2)の発現をも亢進させることを見出した。そして、実際にRANKLタンパク質により壊死部位の拡大が抑制されることを見出した。さらに驚くべきことに、RANKLタンパク質は、虚血部位の発生後3時間以上経過後に投与しても、壊死部位の拡大を抑制できることをも見出した。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。 [0008] 即ち、本発明は、下記の態様を包含する。 項1.RANKLタンパク質を含有する梗塞性疾患の予防又は治療用医薬。 項2.梗塞性疾患が梗塞である項1に記載の予防又は治療用医薬。 項3.梗塞性疾患が脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞、腎梗塞、下肢急性動脈閉塞症、及びクモ膜下出血後の血管攣縮による脳梗塞からなる群より選択される少なくとも1種である項1又は2に記載の予防又は治療用医薬。 項4.RANKLタンパク質が下記(e)に記載するタンパク質及び下記(f)に記載するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種である項1~3のいずれかに記載の予防又は治療用医薬: (e)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、 (f)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質。 項5.RANKLタンパク質が配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である項4に記載の予防又は治療用医薬。 項6.皮下投与剤、経動脈投与剤、又は経静脈投与剤である項1~5のいずれかに記載の予防又は治療用医薬。 項7.梗塞性疾患の予防又は治療における使用のための、RANKLタンパク質。 項8.項1~6のいずれかに記載の予防又は治療用医薬を、梗塞性疾患患者若しくは梗塞性疾患を発症する可能性がある被検体に投与することを包含する、梗塞性疾患の予防又は治療方法。 項9.梗塞性疾患の予防又は治療用医薬の製造におけるRANKLタンパク質の使用。 発明の効果 [0009] 本発明によれば、梗塞性疾患に対する優れた予防又は治療用医薬を提供することができる。この予防又は治療用医薬は、虚血部位の発生後3時間以上経過後に投与しても、梗塞性疾患に対して治療効果を発揮できるので、より多くの患者に対して適用することができる。さらに、本発明の予防又は治療用医薬は、梗塞性疾患患部への直接投与でなくとも、皮下投与等により治療効果を発揮することができる。したがって、本発明の予防又は治療用医薬を用いることにより、梗塞性疾患の予防又は治療を簡便に行うことができる。 図面の簡単な説明 [0010] [図1] RANKLタンパク質により炎症性サイトカインの発現が抑制されていることを示す。 [図2] RANKLタンパク質により抗炎症性サイトカインの発現が亢進していることを示す。 [図3] RANKLタンパク質によりPPARγの発現が亢進していることを示す。 [図4] LPSによる神経細胞死が、RANKLタンパク質によって抑制されていることを示す。 [図5] LPSによるサイトカインの産生が、RANKLタンパク質によって抑制されていることを示す。 [図6] LPSによる神経細胞死が、RANKLタンパク質によって抑制されていることを示す。 [図7] RANKLタンパク質の機能を亢進するOPGノックアウトにより梗塞が抑制されることを示す。 [図8] RANKLタンパク質の脳室内投与により梗塞が抑制されることを示す。 [図9] RANKLタンパク質を、虚血部位発生後3時間以上(4時間)経過後に投与しても、梗塞が抑制されることを示す。 [図10] RANKLタンパク質を、虚血部位発生後3時間以上(6時間)経過後に投与しても、梗塞が抑制されることを示す。 [図11] RANKLタンパク質を皮下投与しても梗塞が抑制されることを示す。 発明を実施するための形態 [0011] 本発明は、RANKLタンパク質を含有する梗塞性疾患の予防又は治療用医薬に関する。 [0012] RANKLタンパク質は、RANK結合活性を有するタンパク質である限り特に限定されない。RANKLタンパク質としては、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、及びウサギ等の種々の哺乳類由来のRANKLタンパク質を採用することができる。また、RANKLタンパク質としては、全長型(膜貫通型)RANKLタンパク質であってもよいし、全長型RANKLタンパク質のN末端側領域が欠失している可溶型RANKLタンパク質であってもよい。さらに、RANKLタンパク質は、その他のアイソフォームであってもよい。 [0013] 具体的には、例えば、ヒト全長型RANKLタンパク質としては配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられ、ヒト可溶型RANKLタンパク質としては配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられ、マウス全長型RANKLタンパク質としては配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられ、マウス可溶型RANKLタンパク質としては配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられ、ヒトRANKLタンパク質のアイソフォームとしては配列番号1のアミノ酸番号74~317のアミノ酸配列(配列番号5)からなるタンパク質(アイソフォーム2)や、配列番号1のアミノ酸番号48~317のアミノ酸配列(配列番号6)からなるタンパク質(アイソフォーム3)が挙げられる。 [0014] RANKLタンパク質として、 好ましくは、下記(a)に記載するタンパク質及び下記(b)に記載するタンパク質: (a)配列番号1~6のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、 (b)配列番号1~6のいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質 からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、 より好ましくは、下記(c)に記載するタンパク質及び下記(d)に記載するタンパク質: (c)配列番号1~4のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、 (d)配列番号1~4のいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質 からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、 よりさらに好ましくは、下記(e)に記載するタンパク質及び下記(f)に記載するタンパク質: (e)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、 (f)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質 からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。 [0015] 上記(b)、(d)、及び(f)において、同一性は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、よりさらに好ましくは98%以上である。 [0016] 上記(b)に記載するタンパク質の一例としては、例えば (b’)配列番号1~6のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質が挙げられ、 上記(d)に記載するタンパク質の一例としては、例えば (d’)配列番号1~4のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質が挙げられ、 上記(f)に記載するタンパク質の一例としては、例えば (f’)配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つRANKタンパク質結合活性を有するタンパク質が挙げられる。 [0017] 上記(b’)、(d’)、及び(f’)において、複数個とは、例えば2~25個であり、好ましくは2~15個であり、より好ましくは2~10個であり、よりさらに好ましくは2~5個であり、特に好ましくは2~3個である。 [0018] 上記(b)、(d)、又は(f)に記載されるタンパク質において、配列番号1~6に示されるアミノ酸配列に対して置換、欠失、付加、又は挿入させる部位は、RANKタンパク質結合活性に影響を与えない部位を選択することが好ましい。RANKタンパク質結合活性に影響を与える部位は、例えば非特許文献3や非特許文献4に記載の情報に基づいて決定することができる。 [0019] RANKタンパク質結合活性は、例えば次のように判定することができる。活性測定対象のタンパク質をマクロファージ細胞(例えばRAW264.7細胞)に導入した場合に、コントロールタンパク質(例えばBSA)を導入した場合に比べて、抗炎症性サイトカイン(例えばIL-10)やPPARγの発現量が増加していた場合は、該タンパク質がRANKタンパク質結合活性を有すると判定することができる。 [0020] 本発明において、梗塞性疾患とは、虚血部位が生じることに起因して、該虚血部位周辺の組織の壊死部位が拡大している状態又は拡大した状態を意味する。虚血部位が生じる原因としては、例えば、血栓や塞栓等が血管に詰まることにより生じる血管閉塞が挙げられる。血管閉塞の原因としては、例えば血栓や塞栓が血管に詰まることや、血管が狭窄することが挙げられる。 [0021] 具体的な梗塞性疾患としては、例えば、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞、腎梗塞、下肢急性動脈閉塞症、クモ膜下出血後の血管攣縮による脳梗塞、脾臓における梗塞、肝臓における梗塞、腸管における梗塞、睾丸における梗塞、及び卵巣における梗塞等が挙げられ、好ましくは脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞、腎梗塞、下肢急性動脈閉塞症、クモ膜下出血後の血管攣縮による脳梗塞、脾臓における梗塞が挙げられ、より好ましくは脳梗塞及び心筋梗塞が挙げられ、よりさらに好ましくは脳梗塞が挙げられる。 [0022] 本発明において、梗塞性疾患の予防または治療とは、虚血部位発生の前後に本発明の医薬を投与することにより、虚血部位周辺に生じる壊死部位の拡大が抑制されることを意味する。 [0023] 本発明の予防又は治療用医薬は、RANKLタンパク質そのものであることもできるし、RANKLタンパク質以外の成分(以下、単に「添加剤」と表記することもある)を含む組成物であることができる。添加剤としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、及びキレート剤等が挙げられる。本発明の予防又は治療用医薬が添加剤を含む場合は、剤形に応じた慣用の方法に従って添加剤を用いることにより、本発明の予防又は治療用医薬を製造することができる。 [0024] 本発明の予防又は治療用医薬は、任意の剤形、例えば錠剤、丸剤、散剤、液剤、注射剤、懸濁剤、乳剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等であることができるが、好ましくは注射剤である。 [0025] 本発明の予防又は治療用医薬の投与対象は、梗塞性疾患患者若しくは梗塞性疾患を発症する可能性がある被検体である。梗塞性疾患患者とは、前述の梗塞性疾患を発症した患者である。梗塞性疾患を発症する可能性がある被検体とは、前述の梗塞性疾患の前兆症状が認められ、梗塞性疾患を発症する可能性があると診断された被検体である。 [0026] 本発明の予防又は治療用医薬の投与経路としては、例えば非経口投与が挙げられる。より具体的な投与経路としては、梗塞性疾患を発症している臓器への投与、皮下投与、経静脈投与、経動脈投与、皮内投与、筋肉内投与、骨内投与、心臓内投与、脳室内投与、クモ膜下投与、及び腹腔内投与が挙げられる。本発明の予防又は治療用医薬は、梗塞性疾患を発症している臓器に直接投与することによらず、例えば皮下投与、経静脈投与、経動脈投与、又は皮内投与することによって効果を発揮できる点で優れている。 [0027] 本発明の予防又は治療用医薬中の、RANKLタンパク質の含有量としては、梗塞性疾患に対する治療効果を発揮できる限りにおいて特に限定されない。例えば0.00001重量%以上、好ましくは0.0001~1重量%であることができる。 [0028] 本発明の予防又は治療用医薬の投与形態及び有効な投与量は、投与対象、投与経路、剤形、患者の状態、及び医師の判断などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば、体重60 kgの成人に対して、1回当たり、1 ng~10μgを投与することができる。なお、投与形態としては、虚血部位の発生後、複数回、例えば1~数十時間毎に投与することが好ましい。本発明の治療用医薬は、虚血部位の発生後3時間以上経過した後に第1回目の投与を行っても効果を発揮できる点で優れている。したがって、本発明の治療用医薬は、虚血部位の発生直後、1時間以上経過後、3時間以上経過後、4時間以上経過後、又は6時間以上経過後に第1回目の投与を行うように用いられることができる。 [0029] 本発明の予防又は治療用医薬は、梗塞性疾患の他の予防又は治療薬と併用してもよい。他の予防又は治療薬としては、例えば、アルテプラーゼ、エダラボン、ヘパリン、低分子ヘパリン、オザグレルナトリウム、アルガトロバン、アスピリン、ブラザキサ、ワルファリン、グリセロール、マンニトール、クロピドグレル、及びシロスタゾール等が挙げられる。他の予防又は治療用医薬は1種又は2種以上を組み併せて用いてもよい。 実施例 [0030] 以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 [0031] 実施例1:RANKLタンパク質による炎症性サイトカインの発現抑制 マクロファージに対してRANKLタンパク質を作用させた後、マクロファージから分泌される炎症性サイトカインの発現量を測定した。具体的には次のように行った。 [0032] PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)を終濃度5 ng/mlになるように添加したRPMI培地(+10%FBS)中で、THP1細胞(ヒト由来単球用細胞)を48時間培養することにより、THP1細胞をマクロファージに分化させた。THP1細胞が培養ディッシュに付着したことを確認した後、培地を、IFNγタンパク質(Peprotech, #315-05)(終濃度20 ng/ml)、RANKLタンパク質(Recombinant Murin sRANKL Ligand(Cat No.315-11):PEPROTECH社)(終濃度10 ng/ml)を含有するRPMI培地(+4%FBS)に交換し、24時間培養した。その後、遊離脂肪酸の一種であるパルミチン酸を終濃度100μMになるように培地に添加し、12時間培養した。培養後、THP1細胞からtotal RNAを抽出し、炎症性サイトカインであるTNFα及びIL-6の発現量をrealtime RT-PCRで測定した。測定結果を図1に示す。 [0033] 図1中、「CT」は、IFNγタンパク質、RANKLタンパク質、及び遊離脂肪酸のいずれも作用させていない群を示し、「FFA」は遊離脂肪酸を作用させたことを示し、「IFN」はIFNγを作用させたことを示し、「RL」はRANKLタンパク質を作用させたことを示す(図2及び3の表記においても同様である)。 [0034] 図1より、マクロファージを活性化する機能を有する遊離脂肪酸、及び炎症性サイトカインの発現を誘導させる機能を有するIFNγを作用させることによる炎症性サイトカイン(TNFα及びIL-6)の発現量の増加(CT及びFFAと、IFN+FFAとの比較)が、RANKLタンパク質をさらに作用させることにより抑制されることが示された(IFN+FFAとIFN+RL+FFAとの比較)。 [0035] 実施例2:RANKLタンパク質による抗炎症性サイトカインの発現亢進 マクロファージに対してRANKLタンパク質を作用させた後、マクロファージから分泌される抗炎症性サイトカインの発現量を測定した。具体的には次のように行った。 [0036] DMEM培地(+10%FBS)中でRAW細胞(マウス由来マクロファージ様細胞)を48時間培養した。培地を、RANKLタンパク質(終濃度10 ng/ml)、IFNγタンパク質(終濃度20 ng/ml)、IL-4タンパク質(Peprotech, #214-14)(終濃度20 ng/ml)を含有するDMEM培地(+4%FBS)に交換し、24時間培養した。培養後、RAW細胞からtotal RNAを抽出し、抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現量をrealtime RT-PCRで測定した。測定結果を図2に示す。 [0037] 図2より、RANKLタンパク質を作用させることにより、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現が亢進することが示された(CTとRLとの比較、IFNとIFN+RLとの比較、及びIL-4とIL-4+RLとの比較)。 [0038] 実施例3:RANKLタンパク質によるPPARγの発現亢進 マクロファージに対してRANKLタンパク質を作用させた後、マクロファージから分泌されるPPARγの発現量を測定した。具体的には次のように行った。 [0039] 実施例1と同様にTHP1細胞をマクロファージに分化させた後、培地を、IFNγタンパク質(終濃度20 ng/ml)、RANKLタンパク質(終濃度10 ng/ml)を含有するRPMI培地(+4%FBS)に交換し、24時間培養した。培養後、THP1細胞からtotal RNAを抽出し、PPARγの発現量をrealtime RT-PCRで測定した。測定結果を図3に示す。 [0040] 図3より、RANKLタンパク質を作用させたことにより、PPARγの発現量が亢進することが示された(CTとRLとの比較)。PPARγは、虚血部位の発生に伴う壊死部位の拡大を抑制することが知られている(非特許文献2)。このことから、RANKLが梗塞性疾患の治療に有用である可能性が見出された。 [0041] 実施例4:RANKLタンパク質の神経細胞保護効果(神経細胞-グリア細胞混合培養系) 炎症反応を惹起するリポ多糖(LPS)による神経細胞死が、LPSの添加前またはLPSと同時にRANKLを作用させることにより抑制されるか否かを調べた。具体的には次のように行った。 [0042] 受精後21日目(胎生21日目)のマウス胎児から神経組織(神経細胞及びグリア細胞の混合状態)を取り出し、Neurobasal培地(+B-27、+5%HS)で10日間培養した(RANKL非前処理群)。なお、RANKL前処理群として、培養9日目においてRANKLタンパク質を終濃度100 ng/mlになるように添加してさらに24時間培養した群も作成した。一方で、RANKL日前処理群として、BSAを終濃度100μg/mlになるように添加した群も作成した。その後、LPS(終濃度100μg/ml)、又はRANKLタンパク質(終濃度100 ng/ml)を含有するNeurobasal培地(+N2、+1%HS)に交換し、5日間培養した。培養後、神経細胞マーカーであるMAP2に対する抗体(Sigma-Aldrich, M4403)を用いて免疫染色し、培養ディッシュ上の染色面積の割合(残存神経細胞量を示す)を測定した。この測定結果を図4に示す。また、培養後の培地を回収し、該培地中のサイトカイン(TNFα及びIL-6)の濃度をELISAによって測定した。この測定結果を図5に示す。 [0043] 図4中、「Normal」は、RANKL非前処理群であってLPS、BSA、及びRANKLタンパク質のいずれも作用させていない群を示し、「BSA」はBSA前処理群(RANKL非前処理群)であってLPSを作用させた群を示し、「RANKL」はRANKL前処理群であってLPSを作用させた群を示し、「RANKL simu」はRANKL非前処理群であってLPSと同時にRANKLを作用させた群を示す。 [0044] 図4より、LPSの添加前にRANKLを作用させた場合、及びLPSと同時にRANKLを作用させた場合の両方において、LPSによる神経細胞死が抑制されることが示された(BSAとRANKL又はRANKL simuとの比較)。 [0045] 図5中、「LPS -」はLPS未処理群であり、「LPS +」はLPS処理群である。また、「RANKL -」は、LPS処理前にRANKL前処理していない群であり、「RANKL 10」は10 ng/mlの濃度でRANKL前処理した群であって、「RANKL 100」は100 ng/mlの濃度でRANKL前処理した群である。 [0046] 図5より、LPSの添加前にRANKLを作用させた場合、LPSによるサイトカインの産生が抑制されることが示された。 [0047] 実施例5:RANKLタンパク質の神経細胞保護効果(神経細胞単独培養系) LPSによって炎症反応が惹起されたマクロファージ培養培地中で神経細胞を培養することによる神経細胞死が、RANKLタンパク質を作用させることにより抑制されるか否かを調べた。具体的には次のように行った。 [0048] 実施例1と同様にTHP1細胞をマクロファージに分化させた後、培地を、RANKLタンパク質(終濃度10 ng/ml)を含有するNeurobasal培地(+N2、+1%HS)に交換し、24時間培養した。その後、LPSを終濃度10 ng/mlになるように添加して24時間培養し、培養後の培地(マクロファージ培養培地)を回収した。一方で、受精後(胎生)16~18日目のマウス胎児から海馬神経細胞を取り出し、Neurobasal培地(+B27、+5%HS)中で14日間培養した。その後、この培地を、マクロファージ培養培地に交換して24時間培養した。培養後、神経細胞マーカーであるMAP2に対する抗体を用いて免疫染色し、観察視野辺りの染色量の割合(残存神経細胞量を示す)を測定した。結果を図6に示す。 [0049] 図6中、「Normal」はマクロファージ培養培地を調製する際に、LPS及びRANKLタンパク質のいずれも作用させなかった群を示し、「LPS」は該調製の際にLPSのみを作用させた群を示し、「RANKL+LPS」は該調製の際にRANKL及びLPSの両方を作用させた群を示す。 [0050] 図6より、LPSによって炎症反応が惹起されたマクロファージ培養培地中で神経細胞を培養することによる神経細胞死が、RANKLタンパク質を作用させることにより抑制されることが示された(LPSとRANKL+LPSとの比較)。 [0051] 実施例6:OPGノックアウトによる壊死抑制 OPGタンパク質は、RANKLタンパク質(リガンド)のいわゆるおとり受容体として、RANKLタンパク質の真の受容体であるRANKタンパク質と拮抗する。RANKLタンパク質のOPGタンパク質に対する結合性は、RANKLタンパク質のRANKタンパク質に対する結合性よりも高いため、OPGタンパク質によりRANKLタンパク質の機能が抑制される。したがって、OPGノックアウトされた状態においては、RANKLタンパク質の機能は亢進する。そこで、RANKLタンパク質が脳虚血後の壊死部位のサイズに与える影響を、OPGノックアウトマウスを用いて調べた。具体的には次のように行った。 [0052] 野生型マウス(C57BL6/J)及びOPGノックアウトマウス(日本クレア)に対して、塞栓糸を用いて人為的に脳虚血部位を発生させた。具体的には、右外頸動脈からナイロン糸を頭蓋内内頚動脈に挿入し右中大脳動脈を一過性に閉塞した。虚血部位発生から45分後に塞栓糸を取り除き、血液を再灌流させた。虚血部位発生から3日後に脳を取り出し、bregmaから前後に1.4、0.7、及び0 mmの位置における、左脳部分及び右脳部分を含む脳切片を作成し、該切片をcresyl violetで染色した。cresyl violet染色部位の面積を脳梗塞面積(壊死部位)とし、下記式により脳梗塞面積の割合を求めた。結果を図7に示す。 [0053] [数1] 脳梗塞面積の割合=([正常側脳面積]-([脳梗塞側全面積]-[脳梗塞面積])/正常側脳面積)×100 図7より、RANKLタンパク質の機能が亢進しているOPGノックアウトマウス(OPG -/-)では、野生型マウス(WT)に比べて、脳虚血後に生じる脳梗塞面積が小さいことが示された。このことは、RANKLタンパク質が壊死を抑制することを示唆する。 [0054] 実施例7:RANKLタンパク質の脳室内投与による壊死抑制(虚血部位発生後3時間以内の投与) RANKLタンパク質の脳室内投与が、脳虚血後の壊死部位のサイズに与える影響を調べた。具体的には次のように行った。 [0055] 野生型マウス(C57BL6/J)に対して、実施例6と同様に脳虚血部位を発生させた。虚血部位発生から70分後に、塞栓糸を取り除き、血液を再灌流させた。虚血部位発生から75分後、24時間後、及び48時間後に、2μlのRANKLタンパク質溶液(2.5 ng/μlの濃度でRANKLタンパク質を含有する人工脳脊髄液(aCSF))を、注射により脳室内に投与した。虚血部位発生から72時間後に脳を取り出し、bregmaから0 mmの位置における、左脳部分及び右脳部分を含む脳切片を作成し、該切片をcresyl violetで染色した。該染色結果に基づいて、実施例6と同様に脳梗塞面積の割合を求めた。結果を図8に示す。 [0056] 図8より、RANKLタンパク質非投与群(aCSF)に比べて、RANKLタンパク質投与群(RANKL(75 min))においては、脳虚血後に生じる脳梗塞面積が小さいことが示された。すなわち、RANKLタンパク質投与により壊死を抑制できることが示された。 [0057] 実施例8:RANKLタンパク質の脳質内投与による壊死抑制(虚血部位発生後3時間以上経過後の投与) 虚血部位発生後3時間以上経過後にRANKLタンパク質を投与しても、壊死を抑制できるか否かを調べた。具体的には、RANKLタンパク質溶液の投与を、虚血部位発生から4時間後、24時間後、及び48時間後に行う以外は実施例7と同様に行った。結果を図9に示す。 [0058] 図9より、虚血部位発生後4時間経過後にRANKLタンパク質を投与しても、壊死を抑制できることが示された(aCSFとRANKL(4 hr)との比較)。 [0059] 実施例9:RANKLタンパク質の脳質内投与による壊死抑制(虚血部位発生後3時間以上経過後の投与) 虚血部位発生後3時間以上経過後にRANKLタンパク質を投与しても、壊死を抑制できるか否かを調べた。具体的には、RANKLタンパク質溶液の投与を、虚血部位発生から6時間後、24時間後、及び48時間後に行う以外は実施例7と同様に行った。結果を図10に示す。 [0060] 図10より、虚血部位発生後6時間経過後にRANKLタンパク質を投与しても、壊死を抑制できることが示された(aCSFとRANKL(6 hr)との比較)。 [0061] 実施例10:RANKL皮下投与による壊死抑制(虚血部位発生後3時間以上経過後の投与) RANKLタンパク質の投与部位が皮下であっても、壊死を抑制できるか否かを調べた。具体的には、虚血部位発生から4時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、及び56時間後に、5μg/mlの濃度でRANKLタンパク質を含有するPBS 200μlを背部の一箇所の皮下に注射する以外は、実施例7と同様に行った。結果を図11に示す。 [0062] 図11より、RANKLを皮下投与しても、壊死を抑制できることが示された。 |
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