PHARMACEUTICAL COMPOSITION FOR TREATMENT OF INFLAMMATORY BOWEL DISEASE
外国特許コード | F150008468 |
---|---|
掲載日 | 2015年10月22日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2014JP054778 |
国際公開番号 | WO 2014148216 |
国際出願日 | 平成26年2月14日(2014.2.14) |
国際公開日 | 平成26年9月25日(2014.9.25) |
優先権データ |
|
発明の名称 (英語) | PHARMACEUTICAL COMPOSITION FOR TREATMENT OF INFLAMMATORY BOWEL DISEASE |
発明の概要(英語) | The purpose of the present invention is to provide a pharmaceutical composition for the treatment of inflammatory bowel disease and a treatment method therefor. A pharmaceutical composition containing siRNA inhibiting the expression of a CD98 heavy chain was found to be useful in the treatment of inflammatory bowel disease. As a result, a novel treatment method can be provided that uses the siRNA for inflammatory bowel disease for which there has conventionally been no appropriate treatment method. |
|
|
|
|
国際特許分類(IPC) |
|
指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LT LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 | 炎症性腸疾患の治療用医薬組成物 |
---|---|
発明の概要 | 本発明は、炎症性腸疾患の治療用医薬組成物と治療法を提供することを目的とする。 CD98重鎖を発現抑制するsiRNAを含有する医薬組成物が、炎症性腸疾患の治療に有用であることを見出した。その結果、これまで適切な治療方法がなかった炎症性腸疾患に上記siRNAを使用する新たな治療方法が提供できるようになった。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効成分とする、炎症性腸疾患の治療用医薬組成物。 [請求項2] 上記機能性核酸がsiRNAである、請求項1記載の医薬組成物。 [請求項3] 上記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。 [請求項4] 上記siRNAが二本鎖RNAである、請求項2に記載の医薬組成物。 [請求項5] 上記二本鎖RNAが、配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、あるいは配列番号5と配列番号6の一つ以上を含有するsiRNAである、請求項4に記載の医薬組成物。 [請求項6] 上記二本鎖RNAが、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、あるいは配列番号11と配列番号12の一つ以上を含有するsiRNAである、請求項4に記載の医薬組成物。 [請求項7] 配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、あるいは配列番号5と配列番号6のいずれかの配列を有する二本鎖siRNA。 [請求項8] 二本鎖RNA部分が、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、あるいは配列番号11と配列番号12のいずれかの配列を有する二本鎖siRNA。 [請求項9] 哺乳類に、CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効量投与することを特徴とする炎症性腸疾患の治療方法。 [請求項10] 上記機能性核酸が、siRNAである、請求項9記載の治療方法。 [請求項11] 上記siRNAが、請求項7または8に記載の2本鎖siRNAである、請求項10に記載の治療方法。 [請求項12] 上記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項9~11のいずれかに記載の治療方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 炎症性腸疾患の治療用医薬組成物 技術分野 [0001] 本発明は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病)に対する新規治療剤に関するものである。より詳細には、本発明は、CD98のsiRNAを中心とする、CD98の機能性核酸を有効成分とする潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病の治療用医薬組成物に関するものである。 背景技術 [0002] 潰瘍性大腸炎は、1970年代に特定疾患(難病)として指定されたかなり希少な疾患であり、原因が不明なため、対症療法的な治療が多く、治療方法としては確立できていない状況である。しかしながら、最近、患者数は急増しており、1985年には1万人超であったが、2002年には、7万7000人となり、2008年には10万人を超えている(厚生労働省調べ)。そして、患者の発症率に性別の差はなく、発症年齢もあらゆる年代に分布しているが、30歳代をピークに20~50歳代に多く分布している。 クローン病も、潰瘍性大腸炎と同様に、消化管に原因不明の潰瘍を発症する疾患であり、20才台の若年者に多く見られる慢性の炎症疾患である。クローン病も潰瘍性大腸炎と同様に、最近患者数が増加している。クローン病も潰瘍性大腸炎と同様に厚生労働省により特定疾患治療研究対象疾患に指定されており、潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼ばれている。 これら炎症性腸疾患の原因は、遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとする説もあるが、疾患の原因はまだ解明されていない。患者数の増加は、食生活の欧米化によるものと言われており、その原因の一つとして、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすと考えられている。 上記炎症性腸疾患の治療のために、現在、幾つかの治療方法が報告されている。例えば、siRNAを使用する治療方法としては、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)のsiRNAを使用して、TNFR2の発現を抑制し、炎症性腸疾患の治療を行うことが報告されている(特許文献1)。あるいは、siRNAを使用して、アポトーシス因子5A1(elF5A)の発現を抑制することにより、炎症促進性サイトカインの発現を抑制し、炎症性腸疾患の治療を行うことが報告されている(特許文献2)。更には、インターロイキン12の40kDaサブユニット及び/又は35kDaの発現を阻害し、インターロイキン12の発現抑制により、炎症性腸疾患、特にクローン病の治療を行うことが報告されている(特許文献3)。 しかしながら、炎症性腸疾患の原因が様々に予想される中、まだ、的確な治療方法と考えられるものは、見出されていない現状である。 先行技術文献 特許文献 [0003] 特許文献1 : 特表2012-531204号公報 特許文献2 : 特開2011-26343号公報 特許文献3 : 特表2008-532540号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0004] 本発明は、CD98の機能性核酸による炎症性腸疾患の治療用医薬組成物の提供を目的とする。特に、CD98重鎖の発現を抑制するsiRNAを有効成分とする炎症性腸疾患の治療用医薬組成物の提供を目的とする。 課題を解決するための手段 [0005] 本発明者は、アミノ酸輸送に係るCD98に着目し、CD98重鎖の発現を抑制するsiRNAを用いて、その作用効果を検討して来た。まず、CD98の重鎖に対するsiRNAを用いて、糖尿病NODマウスの治療を行なったところ、上記siRNAが1型糖尿病の進行を抑制すると共に、1型糖尿病を治療できることを見出している(PCT/JP2012/075587)。即ち、作用機序は明瞭ではないが、膵臓β細胞のアポトーシスに基づく1型糖尿病に対して、本抗体が非常に有効であることが示された。更に関節リウマチにも、本発明のsiRNAは有効であることが示されている。このことから、本発明のCD98のsiRNAは、1型糖尿病や関節リュウマチの原因と考えられる自己免疫疾患に有効と考えられた。そこで、本発明者らは、本発明のsiRNAを使用して、自己免疫疾患の可能性が高い炎症性腸疾患の治療を検討した。その結果、ラットの炎症性腸疾患モデルにおいても、図3と図4に示すように、炎症性腸疾患を治療できることを見出した。 本発明者は、以上の知見に基づいて本発明を完成した。 すなわち本発明は以下のとおりである。 (1)CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効成分とする、炎症性腸疾患の治療用医薬組成物。 (2)上記機能性核酸がsiRNAである、上記(1)に記載の医薬組成物。 (3)上記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、上記(1)又は(2)に記載の医薬組成物。 (4)上記siRNAが二本鎖RNAである、上記(2)に記載の医薬組成物。 (5)上記二本鎖RNAが、配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、あるいは配列番号5と配列番号6の一つ以上を含有するsiRNAである、上記(4)に記載の医薬組成物。 (6)上記二本鎖RNAが、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、あるいは配列番号11と配列番号12の一つ以上を含有するsiRNAである、上記(4)に記載の医薬組成物。 (7)配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、あるいは配列番号5と配列番号6のいずれかの配列を有する二本鎖siRNA。 (8)二本鎖RNA部分が、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、あるいは配列番号11と配列番号12のいずれかの配列を有する二本鎖siRNA。 (9)哺乳類に、CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効量投与することを特徴とする炎症性腸疾患の治療方法。 (10)上記機能性核酸が、siRNAである、上記(9)に記載の治療方法。 (11)上記siRNAが、上記(7)または(8)の2本鎖siRNAである、上記(10)に記載の治療方法。 (12)上記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である上記(9)~(11)のいずれかに記載の治療方法。 発明の効果 [0006] 本発明によれば、CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を投与することにより、炎症性腸疾患に対する高い治療効果を得ることができる。そのため、本発明のsiRNAを使用すれば、これまで効果的な治療方法のなかった、炎症性腸疾患の有効な治療方法となることができる。 図面の簡単な説明 [0007] 図1は1型糖尿病を発症したNODマウスのT細胞を重症複合型免疫不全症のNODモデルマウス(NOD-SCIDマウス)に投与する。投与後のマウスに、CD98重鎖に対するマウスsiRNA(4nmol/mouse)、あるいはコントロールのsiRNAを、2日目、5日目、8日目に投与する。なお、T細胞を投与した日を起算日とする。 図1は、3日後の末梢血単核球細胞のCD98重鎖の発現をフローサイトメトリーで評価した図である。灰色(GRAY)の部分は、CD98抗体を投与した場合の測定結果である。点線部分は、コントロールのsiRNAを投与した場合の測定結果であり、実線部分は、CD98重鎖に対するsiRNAを投与した場合の測定結果を示している。即ち、本発明のsiRNAは、WO2011/118804に記載の抗CD98抗体と同じ効果を示すことが示されている。 図2はマウスを用いた炎症性腸疾患モデルの作成方法と、本発明のsiRNAの投与スケジュールを表わした図である。 図3は炎症性腸疾患モデルマウスを使用し、siRNAを1日目、3日目、5日目、7日目に4回腹腔内投与した場合の、ラットの体重変化を表わした図である。マウスsiRNAの投与により、炎症性腸疾患の発症が抑制され、体重減少が抑制されている。 図4は炎症性腸疾患モデルマウスの、臨床スコアと組織学的スコアを評価した図である。マウスsiRNAの投与により、臨床スコアおよび組織学的スコアの両者が抑制されている。 図5はヒトTリンパ腫由来のJurkat細胞に対してヒトsiRNAを投与し、細胞表面におけるCD98タンパクの発現の変化を、フローサイトメーターで測定、評価した図である。無処置群、コントロールsiRNA投与群と比較し、ヒトsiRNAを投与することにより、CD98タンパクの発現の抑制が大きく抑制されたことを示している。 図6は炎症性腸疾患モデルマウスを使用し、マウス抗CD98抗体を0日目から3日おきに5回腹腔内投与した。なお、コントロールとして、ラットIgGを使用した。その場合の、マウスの体重変化を表わした図である。マウス抗CD98抗体の投与により、炎症性腸疾患の発症が抑制され、体重減少が抑制されている。以上のように、本発明のsiRNAの効果は、抗CD98抗体によっても同様に検証されている。 図7は炎症性腸疾患モデルマウスの、臨床スコアと組織学的スコアを評価した図である。マウス抗CD98抗体の投与により、臨床スコアおよび組織学的スコアの両者が抑制されている。以上のように、本発明のsiRNAの効果は、抗CD98抗体によっても同様に検証されている。 発明を実施するための形態 [0008] 本発明の一つの態様は、「CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効成分とする炎症性腸疾患の治療用医薬組成物」に関するものである。ここで「CD98」は公知のタンパク質であり、DNA配列とアミノ酸配列は、特開2009-189376号公報に記載されている。本発明における「CD98」は、これらの配列に限定されるものではなく、CD98の機能が保持される限り、アミノ酸やDNAの変異数や変異部位には制限はないものとする。 なお、CD98とは、細胞膜上に幅広く発現している約120kDaのヘテロ2量体の糖タンパク質であり、アミノ酸輸送、増加した細胞膜発現とインテグリンが仲介する接着に付随する細胞融合に関連すると考えられている。CD98の構造は、約80kDaII型膜貫通型タンパク質CD98hc(重鎖:4F2hc、SLC3A2)と6種類ある約40kDaの軽鎖(LAT1,LAT2,y+LAT1,y+LAT2,xCT,asc)の1つとジスルフィド結合によるヘテロ2量体を構成し、アミノ酸トランスポーターとして機能している。CD98の重鎖(CD98hc)は細胞膜に2量体を移動させる役割を持ち、軽鎖(lc)がトランスポーターの機能を持つと考えられている。 また、CD98重鎖は、上皮細胞の血管側の細胞膜に存在し、上記のトランスポーターを上皮細胞の血管側の細胞膜へ移送する働きをしている。 そのため、一般的には、CD98重鎖の発現を抑制すると、CD98(重鎖と軽鎖の複合体)のアミノ酸輸送が抑制されると考えられたが、本発明のCD98の重鎖に対するsiRNAの場合には、アミノ酸輸送をあまり抑制するようには見えなかった。 本発明において「機能性核酸」とは、タンパク質の発現を抑制できる機能を持ったsiRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、アンチセンス核酸のことを言う。好ましいものとしては、siRNAを挙げることができる。即ち、本発明のsiRNAとは、CD98重鎖の遺伝子発現を抑制するsiRNAをさす。具体的には、対照群(コントロールsiRNAを使用した場合)と比較してCD98の遺伝子発現を50%以上抑制できるsiRNAを、好ましくは80%以上抑制できるsiRNAをいう。siRNAは、RNA干渉と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現の抑制を誘導することが知られている。siRNAは、一般的に二本鎖のRNA部分と、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハング部分から構成される。siRNAは、当業者にとって公知の方法によって設計することができる。例えば、選択したDNA配列(19~21塩基が望ましい)をそのままRNA配列に変換したもの(センス鎖)とそのアンチセンス鎖を二本鎖RNA部分とし、オーバーハング部を付加する。オーバーハング部は、1又は2塩基の任意の核酸(リボ核酸またはデオキシ核酸)であるが、ウリジン(U)もしくはチミジン(dT)が好ましい。本発明のsiRNAは、CD98、好ましくはヒトのCD98重鎖のDNA配列に基づいて設計され、CD98重鎖の発現を抑制できるsiRNAであれば、特に限定されるものではない。発現の抑制は、CD98重鎖に特異的であることが望ましい。特異的であるかどうかは、一般公開されているBLAST検索を実施することにより確認できる。またオーバーハング部分は必須ではない。 また本発明のsiRNAには、投与対象内で本発明のsiRNAと同じ効果を有する任意の分子も含まれる。このような分子としては、例えば、shRNAが挙げられる。shRNAとはショートヘアピン構造型のRNAであり、一本鎖の一部の領域が他の領域と相補鎖を形成するためにステムループ構造を有するRNA分子である。二本鎖RNA部分が、本発明のsiRNAと同一構造を有するshRNAも本発明のsiRNAに含まれる。他には、投与対象に投与することによって本発明のsiRNAを発現することができるようなDNAも本発明のsiRNAに含まれる。このようなDNAは、siRNAをコードするDNAを発現ベクター(例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなどのベクター)に組み込んで構築して使用される。 本発明において、機能性核酸を医薬組成物として使用する場合には、治療薬としての特性を改善するための修飾、あるいはリポソームなどの輸送担体に含包することが望ましい。ポリヌクレオチドの治療薬としての特性を改善するには、ヌクレオチドの修飾または類似体を導入することができる。例えば、ヌクレアーゼ耐性の向上および/または細胞透過性の向上などである。ヌクレアーゼ耐性は、アンチセンス、siRNA、shRNAおよび/またはリボザイムの生理活性を妨げないような技術上周知の任意の方法によりもたらされる。ヌクレアーゼ耐性の向上を目的にオリゴヌクレオチドに加えることができる修飾の例としては、リン酸骨格中のヘテロ原子のリンまたは酸素の修飾である。例えば、メチルリン酸、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、およびモルホリノオリゴマーなどである。また、技術上周知の他の修飾により、生理活性は維持したまま、ヌクレアーゼに対する安定性を大幅に高めるようにしてもよい。 更に、本発明において機能性核酸を医薬組成物や治療方法として使用する場合には、機能性核酸そのものを治療に用いる方法と、ベクターを用いて機能性核酸を発現させて治療に用いる方法が存在する。 機能性核酸そのものを治療に用いる場合には、アテロコラーゲン等の安定化剤、pH調節剤などを添加した水溶液を作製し、そのまま非経口で投与することが望ましい。 ベクターを用いてin vivo発現を行なう場合には、特に本発明の治療を必要とする患者体内での発現に際しては、発現ベクター、特に哺乳動物発現ベクターを使用するのが望ましい。発現ベクターは技術上周知であり、好ましくはプラスミド、コスミド、ウイルス発現系を含む。好ましいウイルス発現系の例としてはアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスなどである。また細胞や組織にベクターを導入する方法は技術上周知である。好ましい例としては、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および組み換えウイルスベクターによる感染などである。 本発明の「哺乳動物」とは、例えばラット、マウス、モルモット等のげっ歯類、例えばイヌやネコ、更には例えばヒトやサルの霊長類を挙げることができる。 本発明の「炎症性腸疾患」とは、例えば潰瘍性大腸炎又はクローン病を挙げることができる。 本発明の2つ目の態様は、「CD98重鎖の発現を抑制する機能性核酸を有効量投与することを特徴とする自己免疫疾患の治療方法」に関するものである。 本発明の医薬組成物を用いて、炎症性腸疾患を治療する際には、上記の機能性核酸と共に、通常の製剤学的に許容しうる1又は2種以上の製剤用添加物を用いて医薬組成物を製造して投与することが好ましい。本発明の医薬組成物の投与方法は非経口投与が望ましく、静脈投与、筋肉内投与、腹腔内投与、または皮下投与などを行うことができる。 本発明の機能性核酸の投与量は、投与対象、投与方法等により異なるが、例えば非経口投与する場合は、自己免疫疾患の患者(60kg)に対して、例えば、一日約0.01~30mg、好ましくは約0.1~20mg、より好ましくは約0.1~10mgを静脈注射することができる。 なお、本発明の態様で、前項と共通に使用される用語は、前項と同じ意味を表わすものとする。 実施例 [0009] 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、実施例は本発明をより良く理解するために例示するものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることを意図するものではない。 (実施例1)本発明のCD98重鎖の発現抑制用のsiRNAと、CD98の重鎖に対する抗CD98抗体(WO2011/118804)との対比試験 1)実験材料: a)動物: 1型糖尿病モデルマウス(NODマウス):NOD-SCIDマウスは、日本SLC社(浜松、日本)から購入した。すべてのマウスは徳島大学の動物センター内で無菌条件下で飼育され、すべての実験は動物の管理と利用のガイドラインに則って実施された。 NODマウスの糖尿病発症状況は、このマウスの尿中の糖濃度と空腹時の血糖値を一週間毎に測定してモニターした。250mg/dl以上の血中濃度を持つマウスが糖尿病であるとした。NODの雌性マウスが20~25週令になると80%以上の割合で、1型糖尿病になる。 b)フローサイトメトリー: 脾臓、膵臓リンパ節、膵臓から得られるリンパ球は、CD4、CD8、TCRVα2とTCRVβ5に対する蛍光色素の結合抗体(eBioscience社、UAS)で染色された。幾つかの実験では、細胞をメモンシンの存在下、250ng/mlのPMA(シグマ社)と1μg/mlのイオノマイシン(シグマ社)で5時間刺激し、CD4又はCD8用の表面染色をした。更に、グランザイムB、IFN-γ又はIL-17用の細胞内染色をした。7-アミノアクチノマイシンD(シグマ社)は、死細胞を除くために使用された。 実験操作は、マニュアルに則って実施した。データは、FACSのコントロール下で集計され、FlowJoソフト(スリースター、米国)を使用して行った。 c)マウスsiRNA: CD98重鎖の発現抑制用の下記表1の3種のマウスsiRNAの混合物、又は標的遺伝子を持たないコントロールのsiRNA(B-Bridge社)を作製し、使用した。 [表1] 2)方法: 上記CD98重鎖の発現抑制用の3種のsiRNAの混合物、又は標的遺伝子を持たないコントロールのsiRNAとアテロコラーゲン(高研、日本)とを実験手順書に従い混合し、siRNA溶液を調製した。 糖尿病NODマウスのT細胞が投与された重症複合型免疫不全症モデルマウス(SCIDマウス)に、上記siRNA溶液を4nmol/マウスになるように腹腔内投与した。siRNAの投与スケジュールは、2日目、5日目と8日目である。なお、T細胞が投与された日を起算日とする。上記siRNA溶液の投与後3日目に、血液を採取し、白血球を単離して、抗マウスCD98抗体で染色して、フローサイトメトリーで評価した。 3)結果: フローサイトメトリーでの評価結果を図1に示す。灰色(GRAY)の部分は、抗CD98抗体を投与した場合の測定結果である。点線部分は、コントロールのsiRNAを投与した場合の測定結果であり、実線部分は、CD98重鎖に対するsiRNAを投与した場合の測定結果を示している。 この結果は、本発明のCD98重鎖をターゲットとするsiRNAが、CD98重鎖をターゲットとする抗CD98抗体と同じように使用できることを示している。 (実施例2)CD98重鎖の発現抑制用のsiRNAによる炎症性腸疾患の進行抑制試験 1)実験材料: 炎症性腸疾患モデルマウスの作製: DBA/1Jマウス(7週齢の雌、10匹)のそれぞれ2群に分け、図2に示すようにマウスCD98に対するsiRNAを投与した。 2)方法: SCIDマウス(雌性)にBALB/cマウス(雌性)の脾臓から採取した、CD4陽性CD25陰性T細胞(1 x 106/マウス)を移入した。T細胞を移入した日を起算日として、実施例1に記載の3種のsiRNA混合溶液を4nmol/マウスになるように腹腔内投与した。siRNAの投与スケジュールは、1日目、3日目、5日目、7日目と4回のsiRNAの投与を行った。 なお、siRNA混合溶液は、実施例1に記載のようにsiRNAをアテロコラーゲンと用事調整で混合し、作製後直ちにマウスに投与した。 3)結果: 上記の炎症性腸疾患モデルマウス(SCIDマウス)にCD98重鎖のsiRNAを投与したところ、図3に示すように、炎症性腸疾患の進行を抑制でき、体重減少を抑制できることが分かった。 以上のように、CD98重鎖をターゲットとするsiRNAを用いて、炎症性腸疾患を治療できることを明らかにした。 また、図4に示されるように、マウスsiRNAの投与により、臨床スコアおよび組織学的スコアの両者が抑制されると言うことが明らかになった。 (実施例3)CD98重鎖の発現抑制用のsiRNAによるヒト白血病T細胞(Jurkat細胞)のCD98発現進行抑制試験 1)実験材料: ・Jurkat細胞: ヒトCD98タンパクを高発現するJurkat細胞をATCCから購入した。 ・トランスフェクション試薬(FuGENE8):非リポソーム系トランスフェクション試薬であるFuGENE8をロシュ・アプライド・サイエンス社から購入した。 ・ヒトsiRNA: CD98重鎖の発現抑制用の下記表2の3種のヒトsiRNAの混合物のsiRNAを作製(B-Bridge社に依頼)し、使用した。 [表2] 2)方法: Jurkat細胞にCD98に対して上記ヒトsiRNAを使用し、Fugene8をつかって遺伝子導入し、2日後に細胞表面上のCD98発現をFITC標識したヒトCD98抗体を用いて、フローサイトメーターで測定し、非処理を100としたときの発現量を測定した。 3)結果: Jurkat細胞表面におけるCD98発現の比率をフローサイトメーターにより測定、評価し、その結果を図5に示す。図5に示されるように、コントロールsiRNA投与群では、CD98のタンパク発現は非処理群と同じであった。しかし、ヒトsiRNAの投与群では、CD98のタンパク発現が約75%抑制された。 以上のことは、これらの3種のヒトsiRNAを使用して、炎症性腸疾患の治療ができることを示している。 (試験例1)CD98重鎖に対する抗CD98抗体による炎症性腸疾患の進行抑制試験 1)実験材料と方法: 実施例2の結果を検証するため、同様に炎症性腸疾患モデルマウス(SCIDマウス、8週令、雌性)を作製した。T細胞を移入した日を起算日として、マウス抗CD98抗体(WO2011/118804に記載、200μg/回)を移入日から3日おきに5回投与した。なお、コントロールとして、ラットIgGを使用した。 2)結果: A:体重増加率: 図6に示すように、実施例2のCD98siRNAと同様に、マウス抗CD98抗体を用いても、炎症性腸疾患の進行を抑制でき、体重減少が抑制できた(*p<0.05,**p<0.01)。 B:臨床スコアおよび組織学的スコアの平均: 図7に示すように、マウス抗CD98抗体を用いても炎症性腸疾患の進行を抑制でき、臨床スコアおよび組織学的スコアの両者が抑制され、実施例2のCD98siRNAを用いた場合と同じ結果を得た。 以上のように、実施例2のsiRNAの効果は、抗CD98抗体によっても同様に検証されている。 産業上の利用可能性 [0010] 本発明の炎症性腸疾患の治療用医薬組成物は、siRNAによるCD98の重鎖の発現抑制という新たな作用機序により、これまで適切な治療方法がなかった炎症性腸疾患の治療を可能にするものである。 |
※
ご興味のある方は、下記「問合せ先」へ電子メールまたはFAXでご連絡ください。
『 PHARMACEUTICAL COMPOSITION FOR TREATMENT OF INFLAMMATORY BOWEL DISEASE 』に関するお問合せ
- 国立大学法人徳島大学 産学官連携推進部
- URL: https://www.tokushima-u.ac.jp/ccr/
-
E-mail:
- Address: 〒770-8506 徳島市南常三島町2丁目1番地
- TEL: 088-656-7592
- FAX: 088-656-7593