ALCOHOL PRODUCTION METHOD
外国特許コード | F150008570 |
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整理番号 | (S2014-0762-N0) |
掲載日 | 2015年11月26日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2015JP059854 |
国際公開番号 | WO 2015147318 |
国際出願日 | 平成27年3月30日(2015.3.30) |
国際公開日 | 平成27年10月1日(2015.10.1) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) |
ALCOHOL PRODUCTION METHOD
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発明の概要(英語) | The present invention addresses the issue of providing a method that is more useful during the production of biofuel than conventional technology. Provided is an alcohol production method that is more useful than conventional technology, as a result of creating a cellulosome-expression plasmid, obtaining a microbe transformed by said plasmid, and culturing same. |
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国際特許分類(IPC) |
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指定国 |
National States: AE AG AL AM AO AT AU AZ BA BB BG BH BN BR BW BY BZ CA CH CL CN CO CR CU CZ DE DK DM DO DZ EC EE EG ES FI GB GD GE GH GM GT HN HR HU ID IL IN IR IS JP KE KG KN KP KR KZ LA LC LK LR LS LU LY MA MD ME MG MK MN MW MX MY MZ NA NG NI NO NZ OM PA PE PG PH PL PT QA RO RS RU RW SA SC SD SE SG SK SL SM ST SV SY TH TJ TM TN TR TT TZ UA UG US UZ VC VN ZA ZM ZW ARIPO: BW GH GM KE LR LS MW MZ NA RW SD SL SZ TZ UG ZM ZW EAPO: AM AZ BY KG KZ RU TJ TM EPO: AL AT BE BG CH CY CZ DE DK EE ES FI FR GB GR HR HU IE IS IT LT LU LV MC MK MT NL NO PL PT RO RS SE SI SK SM TR OAPI: BF BJ CF CG CI CM GA GN GQ GW KM ML MR NE SN TD TG |
日本語項目の表示
発明の名称 |
アルコールの製造方法
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発明の概要 | バイオ燃料の製造において、従来の技術に対してさらに有用な方法を提供することを課題とする。セルロソーム発現プラスミドを構築し、該プラスミドにより形質転換された微生物を得て、これを培養することにより、従来の技術に対してさらに有用なアルコールの製造方法を提供する。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] cbpA遺伝子のプロモーター領域を含むセルロソーム発現プラスミド。 [請求項2] さらに、cbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を含む請求項1に記載のセルロソーム発現プラスミド。 [請求項3] 配列表配列番号2に示される塩基配列を含むcbpA遺伝子のプロモーター領域と、配列表配列番号3に示される塩基配列を含むcbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を含む、請求項2に記載のセルロソーム発現プラスミド。 [請求項4] 請求項1~3のいずれかに記載のプラスミドを微生物に導入して得られる形質転換体。 [請求項5] 微生物がクロストリジウム属に属する微生物または酵母である請求項4に記載の形質転換体。 [請求項6] 微生物がクロストリジウム ベイジェリンキまたはクロストリジウム アセトブチリカムである請求項5に記載の形質転換体。 [請求項7] 請求項4~6のいずれかに記載の形質転換体を培養する工程を含む、基質からアルコールを製造する方法。 [請求項8] 基質がセルロース系バイオマスである請求項7に記載のアルコールを製造する方法。 [請求項9] セルロース系バイオマスがローカストビーンガム、稲わら、バガス、コーンストーバー、スイッチグラス、ポプラまたは植物残渣である請求項8に記載のアルコールを製造する方法。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : アルコールの製造方法 技術分野 [0001] 本発明はセルロソーム発現プラスミド、該プラスミドにより形質転換された微生物、および該微生物によるアルコールの製造方法に関する。さらに詳しくは、セルロース系バイオマスを直接糖化可能なセルロソームを発現するためのプラスミドに関する。また、該プラスミドによって、アルコール発酵が可能な微生物の形質転換体を得て、ブタノール等のアルコールを製造する方法に関する。 背景技術 [0002] 近年、稲わら、バッカス、植物残渣等のセルロース系バイオマスからエタノール、ブタノール等のアルコールをバイオ燃料として製造する様々な技術が開発されている。しかし、これらのバイオ燃料の製造はコストが高いという問題がある。そこで、次世代のバイオ燃料生産をはじめとしたバイオリファイナリーにおいて、「前処理、糖化、発酵」の工程を統合(Consolidated Bio-Processing:CBP(以下、単にCBPと示す場合がある))する技術開発が求められている。CBPによる技術革新により、さらにバイオ燃料製造のコストダウンが可能であり、最大で41%のコストダウンが見込めるとされている(非特許文献1)。 [0003] この前処理、糖化に関して、稲わらなどのソフトバイオマスを直接分解できる微生物として、嫌気性中温菌であるクロストリジウム セルロボランス(Clostridium cellulovorans)が報告された(非特許文献2)。その後、クロストリジウム セルロボランスは「セルロソーム」とよばれる超タンパク質複合体を生産することが確認された(非特許文献3)。 [0004] セルロソームは、セルロソーム骨格タンパク質にセルラーゼやヘミセルラーゼなどの酵素を搭載した超タンパク質複合体であり、基質に応じて酵素を組み合わせることでソフトバイオマスを効率よく分解する(非特許文献4)。本発明者らは、クロストリジウム セルロボランスの全遺伝子情報を全ゲノム解析により解読し(非特許文献5)、この結果から、セルロソームの土台となるセルロソーム骨格タンパク質、セルロソーム骨格タンパク質と相互作用することができるセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどの酵素やタンパク質、さらに分泌型の糖質関連酵素であるノンセルロソームの同定および分類を完了した。また、プロテオーム解析の結果から基質に応じたセルロソームやノンセルロソームに関する情報も得ている(非特許文献6~8)。 [0005] このうちクロストリジウム セルロボランスが生産するセルロソーム骨格タンパク質の一つであるCbpA(Cellulose binding protein(以下、単にCbpAと示す場合がある))は、(1)結晶性セルロースと結合することができる糖質結合モジュール(CBM)が1つ、(2)菌体の細胞表層と結合する表層ホモロジードメイン(SLH)が4つ、(3)セルロソームを構成する酵素が持つドックリンドメインと結合するコヘシンドメインが9つあり、これらの(1)~(3)から構成される分子量が189,000の比較的大きなタンパク質である。cbpA遺伝子の下流にはセルラーゼおよびヘミセルラーゼの遺伝子が多数存在し、cbpA遺伝子クラスターと呼ばれる遺伝子クラスターを形成している(非特許文献9)。 [0006] クロストリジウム属の微生物には、クロストリジウム セルロボランスのようにセルロソームを形成してリグノセルロースを分解したり、ブタノールやエタノール等のアルコールやアセトンなどの有機溶媒を生産したりするものがいくつか知られている。 例えば、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)やクロストリジウム ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)はブタノール生産菌として知られており、これらの微生物によるアセトン・ブタノール・エタノール(ABE)発酵が、酵母を使ったエタノール発酵に続いて実用化されている(非特許文献10)。 ABE発酵によるアセトン・ブタノール生産は、化学合成法により安価な合成アルコールが普及するにつれて衰退したが、化石燃料の高騰や地球温暖化等の問題から、近年、再び世界的に注目されている。 [0007] このようなバイオ燃料の製造のための技術として、例えば、特許文献1は、効率的にブタノールを得るために、クロストリジウム アセトブチリカムやクロストリジウム ベイジェリンキ等のクロストリジウム属に属する微生物を、一定量の乳酸を基質として含む環境(medium)で培養する方法を開示している。 特許文献2は、酪酸の形成に関与するホスホトランスブチリラーゼをコードする遺伝子等の遺伝子が削除されているクロストリジウム属に属する微生物を培養することで、n-ブタノールを高収率で生物学的に製造する方法を開示している。 特許文献3は、アルコールの製造に直接関与するものではないが、セルロソ-ム足場タンパク質等の融合タンパク質をコードするポリ核酸を含む組換え微生物として、クロストリジウム属に属する微生物を得て、異種セルラーゼを分泌させる方法等を開示している。 また、特許文献4は、クロストリジウム属に属する微生物等を培養することによって得られた1-ブタノール、2-ブタノール等の有機成分を特定のステップを経ることにより高濃度で回収する方法等を開示している。 さらに、特許文献5は、クロストリジウム セルロリティカム由来のセルロソーム構成タンパク質をコードする遺伝子(Cel5A遺伝子またはCel9M遺伝子)やピルビン酸脱炭酸酵素(PDC)やアルコール脱水素酵素(ADH1)をコードする遺伝子等を組み込んだクロストリジウム アセトブチリカムを得て、これを培養することにより、グルコースやセルロースを基質としてエタノールを産生させる方法等を開示している。 この方法もセルロソーム発現プラスミドにより形質転換されたクロストリジウム属の微生物を用いて、アルコールを製造する方法に関するものであるが、セルロソームを構成しているタンパク質の種類や該タンパク質の由来、また生産させたセルロソームのサイズ等が本発明と異なり、生産しているアルコールも主にエタノールである。 これらの技術により、バイオ燃料の製造において、微生物によるアルコール生産を効率化したり、回収率を高めたりすることが可能となりつつあるが、さらに有用な方法の提供が望まれている。 先行技術文献 特許文献 [0008] 特許文献1 : 特許第4665066号 特許文献2 : 特表2010-508017号公報 特許文献3 : 特表2011-529336号公報 特許文献4 : 特表2013-513394号公報 特許文献5 : 国際公開第2010/063766号パンフレット 非特許文献 [0009] 非特許文献1 : Lynd, L. R., Laser, M. S., Bransby, D., Dale, B. E., Davison, B., Hamilton, R., Himmel, M., Keller, M., McMillan, J. D., Sheehan, J., and Wyman, C. E. (2008) How biotech can transform biofuels. Nat Biotechnol 26, 169-172 非特許文献2 : Sleat, R., Mah, R. A., and Robinson, R. (1984) Isolation and Characterization of an Anaerobic, Cellulolytic Bacterium, Clostridium cellulovorans sp. nov. Appl Environ Microbiol 48, 88-93 非特許文献3 : Shoseyov, O., Takagi, M., Goldstein, M. A., and Doi, R. H. (1992) Primary sequence analysis of Clostridium cellulovorans cellulose binding protein A. Proc Natl Acad Sci U S A 89, 3483-3487 非特許文献4 : Lamed, R., Setter, E., and Bayer, E. A. (1983) Characterization of a cellulose-binding, cellulase-containing complex in Clostridium thermocellum. J Bacteriol 156, 828-836 非特許文献5 : Tamaru, Y., Miyake, H., Kuroda, K., Nakanishi, A., Kawade, Y., Yamamoto, K., Uemura, M., Fujita, Y., Doi, R. H., and Ueda, M. (2010) Genome sequence of the cellulosome-producing mesophilic organism Clostridium cellulovorans 743B. J Bacteriol 192, 901-902 非特許文献6 : Han, S. O., Yukawa, H., Inui, M., and Doi, R. H. (2005) Effect of carbon source on the cellulosomal subpopulations of Clostridium cellulovorans. Microbiology-Sgm., 151, 1491-1497 非特許文献7 : Morisaka, H., Matsui, K., Tatsukami, Y., Kuroda, K., Miyake, H., Tamaru, Y., Ueda, M. (2012) Profile of native cellulosomal proteins of Clostridium cellulovorans adapted to various carbon sources. AMB Express., 2, 37 非特許文献8 : Matsui, K., Bae, J., Esaka, K., Morisaka, H., Kuroda, K., Ueda, M. (2013) Exoproteome profiles of Clostridium cellulovorans grown on various carbon sources. Appl Environ Microbiol., 21, 6576-6584 非特許文献9 : Tamaru, Y., Karita, S., Ibrahim, A., Chan, H., and Doi, R. H. (2000) A large gene cluster for the Clostridium cellulovorans cellulosome. J Bacteriol 182, 5906-5910 非特許文献10 : Jones, D. T., and Woods, D. R. (1986) Acetone-butanol fermentation revisited. Microbiol Rev50, 484-524 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0010] 本発明は、バイオ燃料の製造において、従来の技術に対してさらに有用な方法を提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0011] 本発明者は、上記課題の解決を目的として鋭意検討した結果、セルロソーム発現プラスミドを構築し、該プラスミドにより形質転換された微生物を得て、これを培養することにより、従来の技術に対してさらに有用なアルコールの製造方法が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明によって構築されるプラスミドは、セルロース系バイオマスを直接糖化可能なセルロソームを発現するためのプラスミドであり、該プラスミドによって、アルコール発酵が可能な微生物の形質転換体を得ることにより、該微生物の培養におけるエタノール、ブタノール等のアルコールの生産効率を高めることが可能となる。 [0012] すなわち、本発明は、次の(1)~(9)に示されるアルコールの製造方法に関する。 (1)cbpA遺伝子のプロモーター領域を含むセルロソーム発現プラスミド。 (2)さらに、cbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を含む上記(1)に記載のセルロソーム発現プラスミド。 (3)配列表配列番号2に示される塩基配列を含むcbpA遺伝子のプロモーター領域と、配列表配列番号3に示される塩基配列を含むcbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を含む、上記(2)に記載のセルロソーム発現プラスミド。 (4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のプラスミドを微生物に導入して得られる形質転換体。 (5)微生物がクロストリジウム属に属する微生物または酵母である上記(4)に記載の形質転換体。 (6)微生物がクロストリジウム ベイジェリンキまたはクロストリジウム アセトブチリカムである上記(5)に記載の形質転換体。 (7)上記(4)~(6)のいずれかに記載の形質転換体を培養する工程を含む、基質からアルコールを製造する方法。 (8)基質がセルロース系バイオマスである上記(7)に記載のアルコールを製造する方法。 (9)セルロース系バイオマスがローカストビーンガム、稲わら、バガス、コーンストーバー、スイッチグラス、ポプラまたは植物残渣である上記(8)に記載のアルコールを製造する方法。 発明の効果 [0013] 本発明によって構築されたセルローム発現プラスミドによりクロストリジウム ベイジェリンキ等のアルコールを産生する微生物の形質転換体を得て、該形質転換体を培養することにより、セルロース系バイオマスから直接ブタノール等のアルコールを製造することが可能となる。これによりバイオ燃料の効率的な製造が可能となり、時間やコストを大幅に削減することができる。 図面の簡単な説明 [0014] [図1] セルロソーム関連遺伝子およびノンセルロソーム関連遺伝子の遺伝子発現量を示した図である(実施例1)。 [図2] cbpA遺伝子の塩基配列におけるプロモーター領域およびシグナルペプチド領域を示した図である(実施例1)。 [図3] pMTL500E-cbpA-ManAのマップを示した図である(実施例1)。 [図4] 形質転換体において、導入した遺伝子の挿入の有無を確認した図である(実施例2)。 [図5] 形質転換体の酵素活性を確認した図である(実施例2)。 [図6] ローカストビーンガム(Locust bean gum(以下、単にLBGと示す場合がある))を含む培地における形質転換体の培養後の写真を示した図である(実施例3)。 [図7] ガスクロマトグラフィーによりブタノールの生産量を確認した図である(実施例3)。 [図8] CbpA-ManA形質転換体クロストリジウム ベイジェリンキによるLBGの分解結果を示した図である(実施例3)。 発明を実施するための形態 [0015] 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、微生物に導入することにより、該微生物にセルロソームを賦与し、セルロソーム発現能を与え得るプラスミドのことをいう。 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、セルロソームを構築し得る遺伝子を含んでいればよい。このような遺伝子として、セルロソーム骨格タンパク質をコードする遺伝子やセルロソーム骨格タンパク質と相互作用するセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素をコードする遺伝子等のセルロソーム関連遺伝子が挙げられる。これらのセルロソーム関連遺伝子は従来知られるいずれの遺伝子であってもよい。 [0016] 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含まれる遺伝子として、例えば、セルロソーム骨格タンパク質をコードするcbpA遺伝子やhbpA遺伝子が挙げられる。 このcbpA遺伝子として、配列表配列番号1に示される塩基配列が挙げられるが、cbpA遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号1に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0017] また、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、cbpA遺伝子として示される塩基配列を全て含む必要はなく、少なくとも配列表配列番号2に示されるcbpA遺伝子のプロモーター領域を含むものであれば良い。また、cbpA遺伝子のプロモーター領域と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号2に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0018] さらに、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、cbpA遺伝子のプロモーター領域に加えて配列表配列番号3に示されるcbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を含むものであることが好ましい。また、cbpA遺伝子のシグナルペプチドと同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号3に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 また、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、cbpA遺伝子のプロモーター領域やcbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域に加えて、配列表配列番号4に示されるcbpA遺伝子のコーディング領域を含むものであることがさらに好ましい。cbpA遺伝子のコーディング領域と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号4に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0019] セルロソーム骨格タンパク質をコードするhbpA遺伝子としては、配列表配列番号8に示される塩基配列が挙げられる。また、hbpA遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号8に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0020] さらに、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含まれる遺伝子として、例えば、セルロソーム骨格タンパク質と相互作用するセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素をコードするexgS遺伝子、engH遺伝子、engK遺伝子、engL遺伝子またはengM遺伝子等が挙げられる。また、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、マンナナーゼ等のその他の酵素をコードするmanA遺伝子やmanB遺伝子等を含んでいても良い。 このexgS遺伝子として、配列表配列番号5に示される塩基配列が挙げられる。また、exgS遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号5に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 engH遺伝子としては、配列表配列番号6に示される塩基配列が挙げられる。また、engH遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号6に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0021] さらに、engK遺伝子として、配列表配列番号7に示される塩基配列が挙げられる。また、engK遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号7に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 engL遺伝子として、配列表配列番号9に示される塩基配列が挙げられる。また、engL遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号9に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0022] その他の酵素として、例えばマンナナーゼをコードする遺伝子としてmanA遺伝子が挙げられる。manA遺伝子としては、配列表配列番号10に示される塩基配列が挙げられる。また、manA遺伝子と同様に作用し得るのであれば、配列表配列番号10に示される塩基配列に85%以上の同一性を有する塩基配列、90%以上の同一性を有する塩基配列や95%以上の同一性を有する塩基配列で示されるものも、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」に含むことができる。 [0023] 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、セルロソームの構築が可能であれば、これらのセルロソーム骨格タンパク質をコードする遺伝子、セルロソーム骨格タンパク質と相互作用するセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素をコードする遺伝子や、その他の酵素をコードする遺伝子を2つ以上複数組み合わせて含むことができる。 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」は、セルロソームを微生物に発現させるためのベクターに、cbpA遺伝子のプロモーター領域、またはcbpA遺伝子のプロモーター領域とcbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域を組み込むことにより構築することができる。これらにcbpA遺伝子のコーディング領域を組み合わせても良く、さらにセルロソーム骨格タンパク質をコードする遺伝子、セルロソーム骨格タンパク質と相互作用するセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素をコードする遺伝子や、その他の酵素をコードする遺伝子を組み合わせて組み込んでも良い。 [0024] 本発明の「セルロソーム発現プラスミド」において使用するベクターは、従来知られるいずれのものであっても良いが、例えば、ブタノール生産菌のホスト-ベクター系として知られるE.coli-C.acetobutylicumのシャトルベクター(参考文献1、2)、pMTL500Eベクター(参考文献3)や、pMTL80000ベクター(参考文献4)等を使用することができる。 参考文献1:Tummala, S. B., Welker, N. E., and Papoutsakis, E. T. (1999) Development and characterization of a gene expression reporter system for Clostridium acetobutylicum ATCC 824. Appl Environ Microbiol 65, 3793-3799 参考文献2:Collas, F., Kuit, W., Clement, B., Marchal, R., Lopez-Contreras, A. M., and Monot, F. (2012) Simultaneous production of isopropanol, butanol, ethanol and 2,3-butanediol by Clostridium acetobutylicum ATCC 824 engineered strains. AMB Express 2, 45 参考文献3:Oultram, J. D., Loughlin, M., Swinfield, T-J., Brehm, J. K., Thompson, D. E., Minton, N. P. (1988) Introduction of plasmids into whole cells of Clostridium acetobutylicum by electroporation. FEMS Microbiol. Letters 56: 83-88 [0025] このようにして構築した「セルロソーム発現プラスミド」として、例えば、pMTL500EベクターにcbpA遺伝子のプロモーター領域、cbpA遺伝子のシグナルペプチドをコードする領域およびcbpA遺伝子のコーディング領域を組み合わせ、さらにhbpA遺伝子、exgS遺伝子、engH遺伝子、engK遺伝子、engL遺伝子およびmanA遺伝子を組み合わせて組み込んだpMTL500E-cbpA-ManA等が挙げられる。なお、これらの遺伝子等のベクターへの組み込み方法は、従来知られているいずれの方法であっても良い。 [0026] 本発明の「形質転換体」は、本発明の「セルロソーム発現プラスミド」を微生物に導入することで、セルロソームを賦与された微生物のことをいう。 本発明においてセルロソームを賦与する微生物は、従来知られているいずれの微生物であっても良いが、エタノール、ブタノール等のアルコールを生産し得る、バイオマス燃料の製造に有用な微生物であることが好ましい。 このような微生物として、バイオマス燃料の製造に有用なクロストリジウム属に属する微生物等が挙げられ、クロストリジウム属に属する微生物としてクロストリジウム ベイジェリンキ、クロストリジウム アセトブチリカム等が挙げられる。また、酵母を「形質転換体」としても良い。 [0027] 本発明の「アルコールを製造する方法」は、本発明の「形質転換体」を基質を含む培地で培養する工程を含むことにより、基質からエタノールおよび/またはブタノールを製造する方法のことをいう。このような基質として、セルロース系バイオマスを挙げることができる。 本発明のセルロース系バイオマスとして、ローカストビーンガム、稲わら、バッカス、コーンストーバー、スイッチグラス、ポプラまたは植物残渣等が挙げられる。 [0028] 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。 [0029] [実施例1] プラスミドの構築 1.RNA-Seq解析によるプロモーターの検討 1)グルコース、セロビオース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キシラン、ローカストビーンガム(LBG)、ペクチンの6種類の糖を炭素源とした培地(非特許文献2、参照)でクロストリジウム セルロボランスをそれぞれ培養し、対数増殖期中期にtotal RNAを抽出した。 その後、mRNA-Seqライブラリーの調製とrRNAの量を減少させるためにDSN処理によるNomalizationを行った後、次世代シークエンサーであるHiSeq 2000(Illumina)に供した。 シークエンスから得られたリード配列をゲノム配列にマッピングし、各遺伝子の発現量を、遺伝子の長さとリード量で正規化した単位(RPKM)で算出することにより求めた(参考文献5)。 参考文献5:Mortazavi, A,. Williams, B. A., McCue, K., Schaeffer, L., Wold, B.(2008) Mapping and quantifying mammalian transcriptomes by RNA-Seq. Nat Methods., 5, 621-628 [0030] 2)クロストリジウム セルロボランスにおいて発現した遺伝子のうち、セルロソーム関連遺伝子およびノンセルロソーム関連遺伝子に着目し、上記1)において求めた各遺伝子におけるRPKMに対して底を2とした対数変換を行い、得られた値[log2(RPKM)]を遺伝子発現量とした。 得られたセルロソーム関連遺伝子およびノンセルロソーム関連遺伝子の遺伝子発現量をヒートマップにより図1に表した。 図1の(A)は全てのセルロソーム関連遺伝子およびノンセルロソーム関連遺伝子の発現量を示したものである。このうち遺伝子発現量[log2(RPKM)]が3.5以上のセルロソーム関連遺伝子を(B)にまとめて示し、同様のノンセルロソーム関連遺伝子を(C)にまとめて示した。これらの(A)~(C)において、発現量が高い遺伝子は赤色、低い遺伝子は緑色、中間の遺伝子は黒色で示している。 [0031] 3)上記1)および2)の結果、セルロソーム関連遺伝子では、cbpA遺伝子クラスターに含まれる遺伝子(cbpA、exgS、engH、engK、hbpA、engL、manA、engM)とmanGH26A(manA)、manGH26B(manB)がいずれの炭素源においても遺伝子発現量[log2(RPKM)]が3.5以上の高い発現量を示すことが確認できた。 従って、この結果より、クロストリジウム ベイジェリンキにセルロソームを賦与する本発明のプラスミドの構築にあたり、cbpA遺伝子クラスターの上流に位置するcbpA遺伝子のプロモーターを選択した。また、菌体の表層に発現させるか、もしくは分泌させるために、そのシグナルペプチドも使用した。 [0032] 配列表配列番号1に、このcbpA遺伝子の塩基配列を示すとともに、図2において、このcbpA遺伝子の塩基配列におけるプロモーター領域(図2:太字、一重下線部(配列表配列番号2))、シグナルペプチド領域(図2:イタリック体、二重下線部(配列表配列番号3))をそれぞれ示した。 また、配列表配列番号4にcbpA遺伝子のコーディング領域の塩基配列を示し、配列表配列番号5にexgS遺伝子の塩基配列、同配列番号6にengH遺伝子の塩基配列、同配列番号7にengK遺伝子の塩基配列、同配列番号8にhbpA遺伝子の塩基配列、同配列番号9にengL遺伝子の塩基配列、同配列番号10にmanA遺伝子の塩基配列をそれぞれ示した。exgS、engH、engK、engLはセルラーゼ遺伝子であり、hbpAはセルロソーム骨格タンパク質遺伝子であり、manAはマンナナーゼ遺伝子である(非特許文献9、参照)。 [0033] 2.セルロソーム発現用プラスミドの構築 1)上記1.の結果より、cbpA遺伝子クラスターのcbpA遺伝子からmanA遺伝子までの遺伝子によりセルロソームの構築を行った。cbpA遺伝子からmanA遺伝子までの領域(配列表配列番号11)は、表1に示したプライマーによるPCRによって増幅し、これをpMTL500Eベクターに挿入した。 cbpA遺伝子からmanA遺伝子までの領域を表1に示したプライマー(配列表配列番号12、13)により、クロストリジウム セルロボランスのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い増幅した。表1の各プライマーは、増幅した断片をプラスミドに挿入するために、プラスミドと相同配列となるような塩基配列(表1、下線部)を含むものであった。 [0034] [表1] [0035] 2)上記1)によって増幅したcbpA遺伝子からmanA遺伝子の断片を精製し、線状化したpMTL500Eベクターに、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(タカラバイオ)によってIn-Fusion(登録商標)反応を行い、セルロソーム発現用プラスミドとした。 このセルロソーム発現用プラスミドを大腸菌HST08株へ導入した後、100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に植菌し37℃で一晩静置培養した。コロニーPCRにより、cbpA遺伝子からmanA遺伝子が挿入されているコロニーを選択してLB液体培地で培養した後、プラスミドDNAを抽出した。このようにして得られたセルロソーム発現用プラスミドは、以下、本発明においてpMTL500E-cbpA-ManAと示す。図3にpMTL500E-cbpA-ManAのマップを示した。 [0036] なお、図3における各部分はそれぞれ次のものを示す。 ApR、emR:抗生物質耐性遺伝子 斜線部:プロモーター領域 cbpA、hbpA:セルロソーム骨格タンパク質遺伝子 exgS、engH、engK、engL:セルラーゼ遺伝子 manA:マンナナーゼ遺伝子 [0037] [実施例2] 1.形質転換体の作製 1)エレクトロポレーション法により、pMTL500E-CbpA-ManAを導入し、クロストリジウム ベイジェリンキの形質転換を行った。 クロストリジウム ベイジェリンキ(NBRC 103909)((独)製品評価技術基盤機構より分譲を受けた)をOD600=0.3になるまで表2の組成で作製した培地で培養した。この培養液を5mL容のチューブに入れ、嫌気チャンバー中の卓上遠心機で室温、2,400g、5分間遠心分離して集菌した。この上清を取り除き、氷上で冷したエレクトロポレーション緩衝液(270mM スクロース、10mM MgCl2、0.6mM NaH2PO4、4.4mM NaH2 PO4 pH6.0)を1mL加えて菌体を懸濁し、再び5分間遠心分離して集菌した。この上清を取り除き、10mMが含まれていない冷えたエレクトロポレーション緩衝液(270mM スクロース、0.6mM NaH2PO4、4.4mM NaH2PO4 pH6.0)を0.4mL加えて再懸濁し、氷上で10分間静置した。 滅菌済みの1.5mL容チューブに20μLの菌体懸濁液と25ngのpMTL500E-CbpA-ManAを加えて混合し、氷上で8分間静置した。この混合液を、氷上で冷した0.1cmギャップ滅菌済みエレクトロポレーションキュベット(BIO-RAD)に移し、Gene Pulser Xcell(商標)エレクトロポレーションシステム(BIO-RAD)により、エレクトロポレーション法による形質転換を行った。エレクトロポレーションの条件は、700V、200Ω、25μFで行った。エレクトロポレーションを行った後、キュベットを氷上で10分間静置した。その後、170μLの表2の組成で作製した培地を加え、混合してから2mL容の密栓できるチューブに移し、37℃で2.5時間静置培養した。ここまでの操作は全て嫌気チャンバー内で行った。 [0038] 2)上記1)のサンプルの入ったチューブを嫌気チャンバーから取り出し、表2の組成からなる培地に1.5% Agarを含んだ7mLの培地を滅菌して溶解し、培地に二酸化炭素を吹き込みながら植菌した。植菌の際に、エリスロマイシンを40μg/mLになるように加えた。酸素が入らないようにブチル栓をし、ロールチューブ作製器(三紳工業株式会社)でロールチューブを作製した。作製したロールチューブを37℃で一晩培養した。 形質転換後、コロニーPCRにより導入した遺伝子が挿入されているかを確認した。コロニーを鋳型とし、表1に記載のプライマーによりPCR反応を行い、導入した遺伝子の挿入を確認した(図4)。このようにして得られた形質転換体(CbpA-ManA形質転換体クロストリジウム ベイジェリンキ)は、以下、単にCbpA-ManA形質転換体と示す場合がある。 [0039] なお、図4における各部分はそれぞれ次のものを示す。 M:1kb Extend DNA Ladder(Bio Labs) 1:pMTL500E-CbpA-ManA 2:CbpA-ManA形質転換体のコロニー鋳型PCR 3:野生型のクロストリジウム ベイジェリンキのコロニー鋳型PCR [0040] [表2] [0041] 2.酵素活性の評価 CbpA-ManA形質転換体クロストリジウム ベイジェリンキの酵素活性を、コンゴーレッドによる活性染色によって評価した。 LBGは不溶性であるため、LBGと同じマンナンを構成糖として持ち可溶性であるグルコマンナンを炭素源として、表3に示した組成で培地を作製した。滅菌後、ゲル化する前に嫌気チャンバー内でエリスロマイシンを20μg/mLになるように加え、シャーレに分注した。 作製したシャーレにCbpA-ManA形質転換体とコントロールとして空ベクターを形質転換したpMTL500E形質転換体の培養液を白金耳で植菌し、37℃で2日間静置培養した。ここまでの操作はすべて嫌気チャンバー内で行った。 培養後、シャーレに1%コンゴーレッド溶液を1mL加えスプレッターで広げ、5分間染色した。その後、1M NaCl水溶液を3mL加え脱色を4回繰り返して行った。 その結果、図5に示すように、CbpA-ManA形質転換体を植菌したもの(図5:B)はコロニーの周りにハローが観察されたが、pMTL500E形質転換体を植菌したもの(図5:A)には観察されなかった。従って、この結果より、CbpA-ManA形質転換体がグルコマンナンの分解活性を有することが確認できた。 [0042] [表3] [0043] [実施例3] アルコールの製造 LBGを含む培地でCbpA-ManA形質転換体クロストリジウム ベイジェリンキを培養し、反応生成物を検出した。 即ち、LBGを炭素源として含む培地を表4の組成で100mL容の密栓できるバイアル瓶に40mLずつ作製した。嫌気チャンバー内で培地にエリスロマイシンが10μg/mLになるように加え、その後、CbpA-ManA形質転換体と空ベクターを形質転換したpMTL500E形質転換体の植菌を行った。また、エリスロマイシンを含まない培地も作製し、それには野生型のクロストリジウム ベンジェリンキも植菌した。それらは全て37℃で3日間静置培養した。 [0044] その結果、図6に示したように、野生型のクロストリジウム ベイジェリンキ(図6:A)や、空ベクターを形質転換したpMTL500E形質転換体(図6:B)を培養した系では、培養後も培地が濁ったままであり、培地に含まれるLBGをほとんど分解されなかった。一方、CbpA-ManA形質転換体(図6:C)を培養した系では、培養後の培地が透過しており、培地に含まれるLBGがほぼすべて分解されたことが確認できた。 そして、ガスクロマトグラフィーによりブタノール生産量を調べたところ、空ベクターを形質転換したpMTL500E形質転換体を培養した系(図7:A)ではブタノールの生産が確認できなかったが、CbpA-ManA形質転換体を培養した系(図7:B)では、9.3mg/mLのブタノールを生産していることが確認できた。 [0045] [表4] [0046] さらに、CbpA-ManA形質転換体クロストリジウム ベイジェリンキの培養後の培地(培養上清)と野生型のクロストリジウム ベイジェリンキの培養後の培地(培養上清)をサンプルとし、基質として0.5%のLBGを含む培地で37℃で1日間反応させた。その反応溶液に展開溶媒(1-ブタノール:酢酸:水=2:1:1)を加えてTLCに供与し、分解産物を確認した。 [0047] 図8にTLCの結果を示した。図8の1は各糖をスポットしたマーカーであり、上からマンノース、マンノビオース、マンノトリオース、マンノテトラオース、マンノペンタオース、マンノヘキサオースのスポットを示す。また、図8の4は基質であるLBGのスポットを示す。 図8の2は、CbpA-ManA形質転換体の培地(培養上清)をサンプルとし、基質と反応させた結果を示したものであり、マンノヘキサオース(6糖)に相当する位置に分解産物が確認され、基質であるLBGのスポットの色が薄くなっていた。従って、この結果より、CbpA-ManA転換体によって、LBGを分解できることが確認できた。 図8の3は、野生型のクロストリジウム ベイジェリンキの培養上清をサンプルとし、基質と反応させた結果を示したものであるが、LBGの分解産物は確認されず、基質であるLBGのスポットの減少も確認されなかった。 [0048] 実施例1~実施例3において、セルロソーム発現プラスミドを構築し、これを導入した形質転換体を得て、セルロース系バイオマスであるローカストビーンガムからブタノールを製造することが可能となった。 一般に、セルロース系バイオマスからのバイオ燃料を得るには、前処理→糖化→発酵→蒸留の各工程が必要になる。しかし、本発明によって、クロストリジウム セルロボランスのセルロソームが賦与されたクロストリジウム ベイジェリンキにより、セルロース系バイオマスであるローカストビーンガムを直接糖化し、発酵することが可能となる。これにより、セルロース系バイオマスからのブタノールの製造を1つのタンクで行うことが可能となり、従来、バイオ燃料製造に要していた時間とコストを大幅に削減することができる。 産業上の利用可能性 [0049] 本発明によって構築されたセルローム発現プラスミドは、アルコールを産生する微生物の形質転換体を得るために、広く流通させることができる。このプラスミドを導入することによって得られた形質転換体は、培養によってセルロース系バイオマスから直接アルコール等を製造できるため、効率的なバイオ燃料の製造が可能となる。 |
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