ELECTRODE ARRAY AND BIOLOGICAL SENSOR
外国特許コード | F150008630 |
---|---|
整理番号 | (E114P18) |
掲載日 | 2015年12月17日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2015JP053280 |
国際公開番号 | WO 2015119208 |
国際出願日 | 平成27年2月5日(2015.2.5) |
国際公開日 | 平成27年8月13日(2015.8.13) |
優先権データ |
|
発明の名称 (英語) | ELECTRODE ARRAY AND BIOLOGICAL SENSOR |
発明の概要(英語) | This electrode array (10) is provided, on a substrate (1) in the given order, with a plurality of electrodes (2) disposed on the same plane, and a biological buffer layer (3). An insulating partition (4) disposed in a manner so as to encircle the electrodes (2) is provided in the biological buffer layer (3). |
|
|
|
|
国際特許分類(IPC) |
|
参考情報 (研究プロジェクト等) | ERATO SOMEYA Bio-Harmonized Electronics AREA |
日本語項目の表示
発明の名称 | 電極アレイおよび生体センサー |
---|---|
発明の概要 | 本発明の電極アレイ(10)は、基材(1)上に、同一平面上に配置された複数の電極(2)と、生体バッファ層(3)とが順に積層され、前記生体バッファ層(3)内に、前記電極(2)を囲むように配置された絶縁性の隔壁(4)を備える。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] 基材上に、同一平面上に配置された複数の電極と、生体バッファ層とが順に積層され、 前記生体バッファ層内に、前記電極を囲むように配置された絶縁性の隔壁を備えることを特徴とする電極アレイ。 [請求項2] 前記生体バッファ層が高含水ゲルからなることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項3] 前記隔壁が生体適合性材料からなり、 前記生体バッファ層の厚みと、前記隔壁の高さがほぼ同じであることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項4] 前記隔壁全体が、前記生体バッファ層によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項5] 前記隔壁内部または下部に、アース配線を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項6] 前記基材の厚みが、前記生体バッファ層の厚みより薄いことを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項7] 前記生体バッファ層のヤング率が、1kPa~100kPaであることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項8] 前記生体バッファ層のヤング率と前記隔壁のヤング率と前記基材のヤング率とが、 前記生体バッファ層のヤング率<前記隔壁のヤング率<前記基材のヤング率の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 [請求項9] 請求項1~8のいずれか一項に記載の電極アレイと、前記電極アレイの各電極に接続された増幅回路と、前記増幅回路に接続されたトランジスタとを備える生体センサー。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 電極アレイおよび生体センサー 技術分野 [0001] 本発明は、電極アレイおよび生体センサーに関する。 本願は、2014年2月6日に、日本に出願された特願2014-021489号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 背景技術 [0002] 有機半導体でつくるフレキシブルエレクトロニクスは、近年注目を集めている。有機半導体は、素材の軟らかさから、人体の表面や体内への装着により、細胞や組織から直接生体情報を得る手段として用いることができる。 [0003] 特に、脳波などを測定するために、プラチナや金からなる複数の電極を生体に刺し込む剣山形状の電極アレイが用いられてきた(例えば、特許文献1)。電極アレイから得られた体内組織や細胞からの電気的信号を、電気信号として外部に出力することができる。しかし、このような高侵襲な方法では、生体へ負担が大きい。そのため、より生体への負担の少ない測定方法が求められていた。 [0004] 生体に電極を挿し込まない低侵襲な方法も開発されている(例えば、特許文献2)。例えばプラチナや金のような金属からなる電極は基本的には人体に無害ではあるが、体内組織や細胞に直接触れると、生体細胞の抗体反応により、電極と組織との間に防御反応(炎症反応)が生じる。そのため、長期的な生体情報観測を行うことができないという問題がある。また硬い金属は、軟らかい生体内で擦れる場合があり、生体への摩擦によるダメージが大きい。 [0005] これに対し近年、生体適合性を有する材料が開発されている。このような生体適合性を有する材料に導電体を均一分散させることにより導電性を有する生体適合性材料の開発も進められている(例えば、特許文献3および4)。 生体細胞と直接触れることを防ぐために、電極と生体との間にこのような導電性を有する生体適合性を有する材料を生体バッファ層として配置することが考えられる。このような構成により生体の防御反応を抑制し、長期的な生体情報観測を行うことができると考えられる。またこのような生体適合性を有する材料の中には、生体に近いヤング率を有するものもある。そのため、適切な生体適合性を有する材料を用いることで、生体への摩擦によるダメージも抑えることができると考えられる。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1 : 特表2013-512062号公報 特許文献2 : 特許第4742356号公報 特許文献3 : 特許第4038685号公報 特許文献4 : 特許第3676337号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] しかしながら、ヤング率の低い生体適合性を有する材料を生体バッファ層として用いると、このような生体バッファ層は軟らかいため、機械的強度を維持することができないという問題があった。一方で、ヤング率の高い生体適合性を有する材料を用いると、生体への摩擦によるダメージ等を抑えることができないという問題があった。 すなわち、機械的強度を維持し、かつ生体への摩擦によるダメージを抑制できる電極アレイを形成することができないという問題があった。特に、例えば、脳や筋肉等の生体内でも比較的軟らかい箇所から情報を得る際に、この問題は顕著であった。 [0008] また生体と電極間に生体バッファ層を介すると、電気信号がぼやけてしまうという問題があった。これは、生体からの電気信号が電極へ伝わる過程で、電気信号の一部が生体バッファ層内に拡散してしまうためと考えられる。また多点高精細の計測や刺激をする目的で、複数の電極を同一平面上に備える場合に、本来電気信号を読み取るべき電極の周囲の電極にも電気信号が漏れてしまう現象(クロストーク)が生じる。このようなクロストークは、電極アレイの感度を劣化させてしまう。特に大面積デバイスとして使用する際には、個々の電極からの情報が混線してしまうという問題が顕著にあった。 [0009] 本発明は、上記事情に鑑みなされたものである。生体へのダメージおよび生体の免疫反応が極めて少なく、かつ機械的強度を維持でき、さらに高感度、高精細でフレキシブルな電極アレイおよび生体センサーを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0010] 上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。 (1)基材上に、同一平面上に配置された複数の電極と、生体バッファ層とが積層され、前記生体バッファ層内に、前記電極を囲むように配置された絶縁性の隔壁を備えることを特徴とする電極アレイ。 (2)前記生体バッファ層が高含水ゲルからなることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。 (3)前記隔壁が生体適合性材料からなり、前記生体バッファ層の厚みと、前記隔壁の高さがほぼ同じであることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の電極アレイ。 (4)前記隔壁全体が、前記生体バッファ層によって覆われていることを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の電極アレイ。 (5)前記隔壁内部または下部に、アース配線を備えていることを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載の電極アレイ。 (6)前記基材の厚みが、前記生体バッファ層の厚みより薄いことを特徴とする(1)~(5)のいずれか一つに記載の電極アレイ。 (7)前記生体バッファ層のヤング率が、1kPa~100kPaであることを特徴とする(1)~(6)のいずれか一つに記載の電極アレイ。 (8)前記生体バッファ層のヤング率と前記隔壁のヤング率と前記基材のヤング率とが、前記生体バッファ層のヤング率<前記隔壁のヤング率<前記基材のヤング率の関係にあることを特徴とする(1)~(7)のいずれか一つに記載の電極アレイ。 (9)(1)~(8)のいずれか一つに記載の電極アレイと、前記電極アレイの各電極に接続された増幅回路と、前記増幅回路に接続されたトランジスタとを備える生体センサー。 発明の効果 [0011] 本発明によれば、生体へのダメージおよび生体の免疫反応が極めて少なく、かつ機械的強度を維持でき、さらに高感度、高精細でフレキシブルな電極アレイおよび生体センサーを提供することを実現できる。 図面の簡単な説明 [0012] [図1A] 本発明の一実施形態に係る電極アレイの断面模式図である。 [図1B] 本発明の一実施形態に係る電極アレイの斜視模式図である。 [図2A] 隔壁を有さない電極アレイの作用を模式的に示した図である。 [図2B] 本発明の一実施形態に係る隔壁を有する電極アレイについての作用を模式的に示した図である。 [図3] 本発明の一実施形態に係る生体センサーの断面を模式的に示した模式図である。 [図4] 本発明の一実施形態に係る生体センサーの回路構成の一例を示す図である。 [図5] 図4に示す信号検出器F11~Fnmの回路構成の一例を示す図である。 [図6] 本発明の実施例に係る写真であり、基材上にシリコンエラストマーの隔壁が作製され、その隔壁に囲まれたセル内に電極として金が蒸着された写真である。 [図7] 本発明の実施例において、架橋されて生体バッファ層となる組成物の作製手順を模式的に示した図である。 [図8A] 本発明の実施例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果を示したグラフである。 [図8B] 本発明の比較例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果を示したグラフである。 [図9A] 本発明の実施例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果をシミュレーションしたグラフである。 [図9B] 本発明の比較例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果をシミュレーションしたグラフである。 発明を実施するための形態 [0013] 以下、本発明を適用した電極アレイおよび生体センサーについて、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。本発明の電極アレイおよび生体センサーは本発明の効果を損ねない範囲で以下に記載していない層などの構成要素を備えてもよい。 [0014] (電極アレイ) 図1Aは、本発明の一実施形態に係る電極アレイの断面模式図であり、図1Bは本発明の一実施形態に係る電極アレイの斜視模式図である。 本発明の一実施形態に係る電極アレイ10は、基材1の同一平面上に配置された複数の電極2と、生体バッファ層3とが積層され、生体バッファ層3内に、電極2を囲むように配置された絶縁性の隔壁4を備える。生体バッファ層は、導電性を有し生体からの電気信号を電極に伝えることができる。また生体適合性を有するため、生体の防御反応を抑制することができる。 「生体適合性」とは、細胞毒性がなく、生体の拒絶反応が小さいことを意味する。例えば、生体適合に関する国際標準規格ISO10993-6に則り、「コロニー形成法による細胞毒性試験」を実施して細胞毒性がなく、かつ、その規格による「ウサギ埋植試験」を実施して、生体の拒絶反応が小さいことを意味する。 [0015] 図2Aは隔壁を有さない電極アレイの作用を模式的に示した図であり、図2Bは本発明の一実施形態に係る隔壁を有する電極アレイについての作用を模式的に示した図である。 図2A及び図2Bに示すように電極アレイは、生体バッファ層3を介して生体と接触している。生体バッファ層3は軟らかいため、生体の形状に追従することができる。 図2Aで示すように、隔壁4を有さない電極アレイ20の場合、例えば神経細胞6から発せられた電気信号は、電流という形で導電性を有する生体バッファ層3を介して、周囲に拡散する。神経細胞6から最も近い電極2が、この電流を最も強く計測するが、その周囲の電極2にも電流は漏れ出る(クロストーク)。つまり、神経細胞6から発せられた電気信号は、電極アレイ20全体ではぼやけた状態で受信されることとなる。したがって、電極アレイ20は、十分な空間分解能を得ることができない。 これに対し、隔壁4を有する本発明の一実施形態に係る電極アレイ10の場合を図2Bに示す。隔壁4が絶縁性を有する為、生体バッファ層を介して電流が周囲に拡散することを、隔壁4が阻害する。神経細胞6から発せられた電気信号は、神経細胞6に最も近い電極2でより強く受信され、周囲の電極2に漏れ出ることを抑制する。したがって、電極アレイ10は高い空間分解能と感度を示すことができる。 [0016] 基材1の材料は、特に限定されない。電極アレイ10の土台となる強度を有し、かつフレキシブル性を維持することが好ましい。具体的には、ヤング率が0.1GPa~10GPaであることが好ましい。例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等を用いることができる。 [0017] 基材1の厚みは、生体バッファ層3の厚みよりも薄いことが好ましい。生体バッファ層3は、基材1と比較してヤング率が低く軟らかい。基材1の厚みを生体バッファ層3の厚みよりも薄くすることにより、電極アレイ10のフレキシブル性を確保することができる。 基材1の厚みは具体的には、1μm以上50μm以下であることが好ましい。基材1の厚みが、1μmより薄いと、基材1が電極アレイ10の土台として強度が十分では無く、全体の機械的強度が落ちてしまう。基材1の厚みが、50μmより厚いと、電極アレイ10の十分なフレキシブル性を確保することが難しくなる。例えば脳のような複雑な形状への追従性が悪くなる。 [0018] 電極2は、特に限定されない。例えば、金やプラチナの金属、有機導電材料のPEDOT/PSS、ナノカーボン材料、または生体適合性を有する導電性の物質などを用いることができる。「生体適合性を有する導電性の物質」とは、後述する導電ゲルを用いることができる。 電極2は、生体適合性を有する生体バッファ層3で被覆されているため、直接生体に触れることはない。より電極アレイ10の感度を高めるためには、導電性の高い金やプラチナ等の金属を用いることが好ましい。 [0019] 生体バッファ層3は、導電性と生体適合性を有しており、親水性ゲル材料、生体適合性を有する高分子媒体に導電性材料を均一に分散させたものを用いることができる。親水性ゲル材料としては、例えば、ハイドロゲル、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート(通称:ポリヘマ)、シリコーンハイドロゲル、ポリロタキサン、ポリビニルアルコールハイドロゲル等の含水率の高い多様な高含水ゲルがある。ここで、含水率は、以下の式で求めることができる。 (含水ゲル重量-乾燥ゲル重量)/含水ゲル重量×100% 高含水ゲルは、20%以上の含水率であることが好ましく、40%以上の含水率であることがより好ましく、50%以上の含水率であることがさらに好ましい。例えば、体液(生理食塩水)と同等の含水率を有すると、生体適合性の高い電極アレイとして機能することができる。このような高含水ゲルは、体液(生理食塩水)が含まれることで、高いイオン導電性を示す。つまり、導電材料を含まなくても単体で導電性を有する。そのため、高含水ゲル単体でも、生体バッファ層3として機能することができる。 更に、これらの親水性ゲルに導電性ナノ材料を分散させることで、導電性がより高く生体適合性を有する生体バッファ層3を構成できる。導電性材料としては、金属微粒子、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノ材料等を用いることができる。 例えば、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、この水溶性高分子が架橋されてなるゲル状の導電性材料(導電ゲル)を用いてもよい。導電ゲルについては後述する。 [0020] 生体バッファ層3のヤング率は、1kPa~100kPaが好ましい。脳のヤング率がおおよそこの範囲であり、生体バッファ層3のヤング率を当該範囲とすることで、脳のような柔らかく、各複雑な形状にも適用することができる。 生体バッファ層3が軟らかいことで、生体の複雑な形状にも接触面が追従することができ、電極アレイ10の感度を高めることができる。基材1と生体バッファ層3との積層構造において、生体の複雑な形状表面への接触面の追従性を、極めて高いレベルで実現するには、以下の2点が重要である。一つ目は、基材1が柔軟性と強度を両立するだけの厚さとヤング率であることであり、二つ目は、生体バッファ層3が生体と同程度のヤング率と接触面に追従する厚さであることである。そのため、基材1の厚さ<生体バッファ層3の厚さ、基材1のヤング率>生体バッファ層3のヤング率、の関係を満たすことが好ましい。 [0021] 生体バッファ層3の厚みは、0.002mm以上5mm以下であることが好ましい。生体バッファ層3の厚みが0.002mmより薄いと、電極アレイの電極の剛性を十分に吸収できず、生体バッファ層3の表面の剛直性が高くなるという問題がある。一方、5mmより厚いと空間分解能が高くできない。また狭い隙間に挿入できない。 [0022] 隔壁4は、絶縁性を有しており、生体バッファ層3内において、電極2を囲むように配置されている。電極2を囲むように配置することによって、生体から発せられた電気信号が、導電性を有する生体バッファ層3を介して、周囲の電極に漏れてしまうこと(クロストーク)を抑制することができる。すなわち、感度の高い電極アレイ10を形成することができる。 隔壁4は、生体バッファ層3より硬い。そのため、生体バッファ層3を隔壁4が骨格のように支持することができ、電極アレイ10の機械的強度を高めることができる。 隔壁4は、基材1と生体バッファ層3の密着を助け、電極アレイ10の機械的強度を高めることができる。一般に、生体バッファ層3と電極2は強い密着を得ることが難しい。そのため、電極2から生体バッファ層3が外れてしまうことがある。しかし、隔壁4を設けることにより、生体バッファ層3の接触面が増え、密着力を高めることができる。 [0023] 隔壁4の材料は、生体バッファ層3より硬く、生体にダメージを与えない柔らかさを有することが好ましい。すなわち、生体バッファ層のヤング率<隔壁のヤング率<基材のヤング率の関係を満たすことが好ましい。隔壁のヤング率として具体的には、0.5MPa~2000MPa、より好適には1MPa~1000MPaであるものが好ましい。隔壁4が硬さを有することで、生体バッファ層3を隔壁4が骨格のように支持することができ、電極アレイ10の機械的強度を高めることができる。 隔壁4の材料としては、例えばシリコンエラストマー、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素エラストマー、エポキシ樹脂等を用いることができる。生体バッファ材料3よりも低い導電率が求められるため、含水率が低いことが好ましい。電極アレイに合わせたパターニングをするため、光硬化性材料であることが好ましい。 [0024] 隔壁4の配置は、電極2を囲んでいればよく、正方格子配置、ハニカム格子配置、ランダム配置、矩形格子配置等、特にその配置は問わない。作製しやすさの面からは正方格子配置が好ましい。機械的強度の面からは、ハニカム格子配置であることが好ましい。いずれにしても、電極2の周囲を囲んでいることが必要である。 その形状も、隔壁4は基材1に対して垂直に起立している必要は無く、テーパーを有していてもよい。 [0025] 隔壁4の高さは、生体バッファ層3の厚みとほぼ同じであることが好ましい。隔壁4は、生体バッファ層3を介して、周囲に生体からの電気的信号が漏れ出ることを防ぐことを目的とする。そのため、隔壁4の高さと、生体バッファ層3の厚みは完全に同一である必要はない。 隔壁4の高さが僅かに生体バッファ層3の厚みより低い場合でも、十分に電流の漏れを防ぐことができ、クロストークを抑制することができる。 また隔壁4の高さが僅かに生体バッファ層3の厚みより高い場合でも、生体に電極アレイを押し付けることで、生体バッファ層3が十分生体に追従することができる。そのため、生体からの電気信号を十分電極に伝えることができる。また隔壁4により生体バッファ層3は仕切られているため、クロストークの発生を抑制することができる。 ここでいう「僅かに」とは、生体バッファ層3の厚みの3割以内の範囲をいう。 [0026] 上記のように隔壁4の高さは、生体バッファ層3の厚みとほぼ同じであることが好ましいが、中でも生体バッファ層3の厚さより隔壁4の高さが低いことが好ましい。このとき生体バッファ層3の厚さに対し、隔壁4の高さが50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。 ここで、「生体バッファ層3の厚さより隔壁4の高さが低い」とは換言すると、隔壁4全体が生体バッファ層3で覆われていることを示す。すなわち、隔壁4全体が生体バッファ層3で覆われていることが好ましい。隔壁4全体を高い生体適応性を有する生体バッファ層3で覆うことで、生体への影響を抑えると共に、隔壁4を構成する材料の選択性を高めることができる。また生体バッファ層3の厚さに対する隔壁4の高さが高ければ、電気的な遮蔽効果を高くすることができる。 [0027] 隔壁4は生体適応性を有する材料からなることが好ましい。隔壁4の高さと生体バッファ層3の厚みがほぼ同一であれば、隔壁4も生体に直接触れるおそれがある。そのため、生体へのダメージを抑制するために、隔壁4も生体適応性を有する材料からなることが好ましい。 隔壁4の生体適応性を有する材料としては、前述の隔壁4の材料のうち、例えばシリコンエラストマー、フッ素エラストマー等を用いることができる。これは、前述の生体バッファ層3で示した材料に対して、比較的ヤング率の高いものでもある。 [0028] 図1Bで示すように、隔壁4内部または隔壁4下部に、アース配線5を備えていることが好ましい。生体からの電気信号の量(電流量)が大きい場合、隔壁4だけでは十分に絶縁しきれなくなり、クロストークが発生してしまう。隔壁4内部または隔壁4下部にアース配線5を備えることで、隔壁4を介して漏れ出ていた電気信号もカットすることができ、クロストークをより抑制することができる。すなわち、電極アレイ10の感度をより高めることができる。 アース配線5は導電性を有していればよく、金属、ITO、等を用いることができる。 [0029] (導電ゲル) 上述の通り、本発明の生体バッファ層3を構成する電子接点の材料として、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、この水溶性高分子が架橋されてなる導電ゲルを用いることができる。 [0030] 本明細書においてイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。 親水性のイオン液体としては、従来から知られた各種のイオン液体のうち、親水性のイオン液体を使用することができる。例えば、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を挙げることができる。 [0031] 本明細書においてカーボンナノ材料とは、カーボン原子で構成され、ナノメートルサイズで構造化している構成要素(例えば、1本のCNT)が通常、その構成要素のカーボン原子同士がファンデルワールス力でくっついているものを意味する。例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(炭素繊維のうち、径が10nm以下のもの)、カーボンナノホーン、フラーレン等をいう。10nm以下の微細なカーボンナノ材料であれば、水中で良好な分散性を発揮する。 [0032] カーボンナノ材料は同じ種類のものだけが用いられていてもよいし、複数の種類のものが用いられていてもよい。 [0033] カーボンナノチューブは、炭素原子が六角網目状に配列したグラフェンシートが単層で又は多層で円筒状に丸まった構造を有するものである(単層ナノチューブ(SWNT)、2層ナノチューブ(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)と呼ばれる)が、カーボンナノ材料として用いることができるカーボンナノチューブは特に制限はない。SWNT、DWNT、MWNTのいずれでも構わない。カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電、熱CVD法、プラズマCVD法、気相法、燃焼法などで製造できる。ここで用いるカーボンナノチューブは、どのような方法で製造したカーボンナノチューブであるかを問わず、複数の種類のカーボンナノチューブを用いても構わない。 [0034] カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ間のファンデルワールス力によって凝集しやすい。そのため、通常、複数本のカーボンナノチューブがバンドル(束)を形成したり、凝集体を形成して存在する。しかし、イオン液体の存在下で、そのバンドルもしくは凝集体にせん断力を加えて細分化する(カーボンナノチューブの絡み合いを低減する)ことができる。十分に細分化を行うことにより、カーボンナノチューブ同士をくっつけているファンデルワールス力を弱めて一本一本のカーボンナノチューブに分離すると共に、一本一本のカーボンナノチューブにイオン液体を吸着させることができる。その結果、イオン液体の分子が覆った単体のカーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブとイオン液体とからなる組成物を得ることできる。 細分化工程において用いるせん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどのせん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。 [0035] カーボンナノチューブとイオン液体とを混ぜ、上記細分化工程を行うことにより、カーボンナノチューブの絡み合いを低減できる。しかしながら、このからみ合いが減少したカーボンナノチューブの表面に、「カチオン-π」相互作用によりイオン液体の分子が結合すると、さらにこのイオン結合を介してカーボンナノチューブを結びつけ、ゲル状組成物を構成することが考えられる。しかしながら後述するように、このゲル状組成物を、例えば、生理食塩水やエタノール等でリンスすることにより、カーボンナノチューブの表面に1層のイオン液体の分子の層を形成することができる。さらに、水と水溶性高分子とを混ぜることにより、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが水溶性高分子媒体中に分散されてなる組成物を作製することができる。 [0036] 本明細書において水溶性高分子(媒体)としては、水に溶解でき、あるいは、分散できる高分子であれば特に制限はない。水中で架橋できるものであればより好ましい。例えば、以下の例を挙げることができる。 1.合成高分子(1)イオン性 ポリマクリル酸(アニオン性) ポリスチレンスルホン酸(アニオン性) ポリエチレンイミン(カチオン性) MPCポリマー(両性イオン)(2)非イオン性 ポリビニルピロリドン(PVP) ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニル鹸化物) ポリアクリルアミド(PAM) ポリエチレンオキシド(PEO) 2.天然系高分子(多くは多糖類) デンプン ゼラチン ヒアルロン酸 アルギン酸 デキストラン タンパク質(例えば水溶性コラーゲンなど) 3.半合成高分子(例えばセルロースを可溶化したもの) カルボキシメチルセルロース(CMC) ヒドロキシプロピルセルロース(HPC) メチルセルロース(MC)、等のセルロース誘導体 水溶性キトサン(「2.天然系高分子」に分類することもできる) [0037] 水溶性高分子の具体的な化合物としては、例えば、ポリロタキサンを挙げることができる。ポリロタキサンは、環状分子(回転子:rotator)の開口部が直鎖状分子(軸:axis)によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)に、環状分子が遊離しないように封鎖基を配置して成る。例えば、環状分子としてα-シクロデキストリン、直鎖状分子としてポリエチレングリコールを用いたポリロタキサンを用いることができる。 [0038] 水溶性高分子媒体としては架橋剤と反応する基を有する化合物であることが好ましい。このような反応基を有すれば、架橋により強固な膜を形成することができる。 組成物又は導電性材料を用いて、微細な形状のパターンを形成するには、水溶性高分子が光架橋性であることが好ましい。 [0039] カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層は、単分子層であってもよい。カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用により結合する。しかしながら、イオン液体の分子同士の間の結合が、その「カチオン-π」相互作用による結合よりも小さいカーボンナノ材料とイオン液体との組み合わせを選択することにより、カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層を単分子層とすることが可能となる。 例えば、カーボンナノ材料としてカーボンナノチューブ、イオン液体としてN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を選択することにより、カーボンナノチューブを包み込むDEMEBF4の分子の層を単分子層とすることができる。水溶性高分子として例えば、ポリロタキサンを選択すると、DEMEBF4の単分子層の上に5nm程度の薄いポリロタキサンの層を形成することができる。こうして得られる組成物は、カーボンナノチューブの分散濃度を高密度とすることができ、高い導電性材料とすることができる。このような導電性材料で作製した電子接点等の導電部材では、薄いDEMEBF4分子層及びポリロタキサン層を介してカーボンナノチューブ間を電子が移動して電流が流れる。 [0040] 導電性材料において、カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用によって強く結合している。そのため、カーボンナノ材料の表面と結合しているイオン液体の分子は、水溶性高分子媒体の外に出てこない。カーボンナノ材料の表面と結合していないイオン液体の分子は、例えば、生理食塩水やエタノールによる濯ぎによって除去することができる。 [0041] この導電性材料によれば、含有するカーボンナノ材料がイオン液体の分子と水溶性高分子とによって二重に被覆されているので、生体内に適用してもカーボンナノ材料が生体内の細胞に実質的に触れることがない。この導電性材料は、高い柔軟性を有する。そのため、生体内の臓器等の表面に対して追従性に優れ、臓器等との間に極めて良好な界面を形成できる。また、この導電性材料は高い導電率を有するものとすることができる。 [0042] この導電性材料は、親水性のイオン液体とカーボンナノ材料と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料が分散する第1の分散系を得る第1の工程と、第1の分散系と水溶性高分子と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料と水溶性高分子とが分散する第2の分散系を得る第2の工程と、を備える製造方法によって製造することができる。 [0043] 第1の工程において、カーボンナノ材料にせん断力を加えて細分化してもよい。 せん断力を加えることで、カーボンナノ材料のバンドル又は凝集がより解けた状態で親水性のイオン液体で覆うことができる。 [0044] 第2の工程の後に、カーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、水溶性高分子が架橋されてなる組成物を作製する工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。 カーボンナノ材料に結合していないイオン液体を構成する分子を除去するために濯ぎ工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。 この濯ぎ工程は例えば、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体によって行うことができる。この濯ぎ工程はいずれの段階で行ってもよい。 [0045] 導電性材料は、本発明の効果を損なわない範囲で他の物質を含むことができる。当該導電性材料の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で他の工程を含むことができる。 [0046] (電極アレイの製造方法) 電極アレイ10は、基材1上にマスクを用いて電極2を複数作製する第1の工程と、フォトリソグラフィーを用いて、電極2を囲むように隔壁4を作製する第2の工程と、隔壁4に囲まれたバンクに生体バッファ層3を積層する第3の工程とを有する。 [0047] 第1の工程は、公知の方法を用いることができる。例えば、スパッタや蒸着等により電極2を形成することができる。 [0048] 第2の工程は、フォトリソグラフィーを用いて、電極2を囲むように隔壁4を作製する。基材1上に、スペーサーを設置し、そのスペーサーに囲まれた空間内に、隔壁4の材料を充填させる。その充填させた隔壁4の材料に、マスクを介しUVを照射する。その後、不要な部分を洗い流すことで、UVが照射された部分のみを隔壁4として残すことができる。 第2の工程と第1の工程の間に、プラズマアッシングを行うことが好ましい。基材1にプラズマアッシングを行うことで、基材1の表面が改質され、その上に形成される隔壁4との密着性を向上させることができる。 第1の工程と第2の工程を逆にしてもよい。すなわち、まず隔壁を形成した後、マスクを介して電極2を作成してもよい。 [0049] 第3の工程は、隔壁4に囲まれたバンクに生体バッファ層3を積層する。このとき生体バッファ層3を、隔壁4の上にも積層させてもよい。生体バッファ層3は、上述の導電ゲルを用いることができる。 [0050] (生体センサー) 図3は本発明の一実施形態に係る生体センサーの断面を模式的に示した模式図である。 図3に示すように、本発明の生体センサーは、電極アレイ10と、電極アレイ10の各電極2に接続された増幅回路101と、増幅回路に接続されたトランジスタTとを備える。このようなトランジスタTが複数のビット線とワード線とによって結ばれ、各電極からの情報を外部に出力することができる。 図4は本発明の一実施形態に係る生体センサーの回路構成の一例を示す図である。 図4に示すように、本発明の一実施形態に係る生体センサー100は、生体から発生される信号を複数の電極211~2nmで受信する。受信した信号は、増幅回路101で増幅され、信号転送用の複数のトランジスタT11~Tnmと、複数のビット線BL1~BLmと、複数のワード線WL1~WLnとを介して外部に出力する。この複数の電極211~2nmが、電極アレイ10の各電極2に対応する。必要に応じて、コンデンサ102を有していてもよい。 [0051] ここで、行列状に配列された信号検出器F11~Fnmのうち、第1列に属する信号検出器F11~Fn1の各出力部は、信号転送用のトランジスタT11~Tn1を介してビット線BL1に接続され、第2列に属する信号検出器F12~Fn2の各出力部は、信号転送用のトランジスタT12~Tn2を介してビット線BL2に接続されている。以下同様にして、第m列に属する信号検出器F1m~Fnmの各出力部は、信号転送用のトランジスタT1m~Tnmを介してビット線BLmに接続されている。 [0052] 行列状に配列された信号検出器F11~Fnmのうち、第1行に属する信号検出器F11~F1mに設けられた信号転送用のトランジスタT11~T1mの各ゲートはワード線WL1に接続され、第2行に属する信号検出器F21~F2mに設けられた信号転送用のトランジスタT21~T2mの各ゲートはワード線WL2に接続されている。以下同様にして、第n行に属する信号検出器Fn1~Fnmに設けられた信号転送用のトランジスタTn1~Tnmの各ゲートはワード線WLnに接続されている。 [0053] このように、本実施形態では、複数の信号検出器F11~Fnmを行列状に配列し、ワード線WL1~WLnとビット線BL1~BLmとにより信号転送用のトランジスタT11~Tnmを選択することにより、信号検出器F11~Fnmのそれぞれから信号を選択的に読み出すことが可能になっている。 [0054] 図5は、図4に示す信号検出器F11~Fnmの回路構成の一例を示す図である。図4における、信号検出器F11~Fnmの全てが同一の構成を有する。図5に示すように、信号検出器F11~Fnmのそれぞれは、電極2、増幅回路101を備える。またコンデンサ102を備えていてもよい。電極2には、生体からの電気信号が印加される。 [0055] コンデンサ102は、被検体からの生体信号に含まれる直流成分をカットするためのものである。コンデンサ102は、電極2と増幅回路101の入力部との間に接続される。即ち、増幅回路101の入力部はコンデンサ102を介して電極2と容量結合されている。コンデンサ102は、例えば約670nFの容量値を有し、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer;Sam)とアルミニウム酸化物(AlOx)とからなるSAM/AlOx構造を有している。 [0056] 増幅回路101は、トランジスタ1011~1014と抵抗素子1015とから構成されている。本実施形態に係る増幅回路101では、トランジスタ1011~1014は、可撓性を有するp型の有機トランジスタである。増幅回路101を構成する有機トランジスタのゲート幅は、例えば600μmであり、ゲート長は20μmである。この例では、約-100μAのドレイン電流が確認された。ただし、この例に限定されず、p型の有機トランジスタに代えてn型の有機トランジスタを用いてもよい。動作の安定性とキャリアの移動度の違いを考慮すれば、p型の有機トランジスタの方がn型の有機トランジスタよりも大きなドレイン電流を安定的に得ることができ、n型の有機トランジスタに比較して有利である。増幅回路101は、有機トランジスタに限らず、用途に応じて任意の増幅素子を用いて構成することが可能である。 [0057] 増幅回路101を構成するトランジスタ1011のドレインは、電源ノードVDD(高電位ノード)に接続され、そのゲートは、増幅回路101の入力部に接続されている。トランジスタ1012のドレインはトランジスタ1011のソースに接続され、トランジスタ1012のソースはグランドノードに接続されている。トランジスタ1013のドレインは電源ノードVDDに接続され、トランジスタ1013のゲートは増幅回路101の入力部に接続されている。 [0058] トランジスタ1014のドレインおよびゲートは、トランジスタ1012のゲートと共にトランジスタ1013のソースに接続され、トランジスタ1014のソースは低電位ノードVSSに接続されている。増幅回路101の入力部と出力部との間には抵抗素子1015が接続されている。抵抗素子1015は、増幅回路101の出力信号を入力部に帰還させるためのものである。抵抗素子1015は、例えば約20MΩの抵抗値を有し、例えば可撓性および導電性を有するカーボンペーストから構成される。ただし、この例に限定されることなく、抵抗素子1015は、任意の材料を用いて形成することが可能である。抵抗素子1015は、増幅回路101と一体的に形成する必要はなく、外付け抵抗として備えられてもよい。 [0059] (実施例) 基材として、12μmのポリイミドを準備した。最初に基材上に格子状に矩形(正方形)の電極マトリクスを形成した。材料は金を用い、マスクを介して蒸着で形成した。すなわち、64個の電極を作製した。 次に、1mm厚のスペーサーを設置し、そのスペーサーに囲まれた領域に、シリコンエラストマーを充填した。格子状の隔壁構造を形成するため、ここではUV硬化型のシリコンエラストマーを用いた。UV硬化型のシリコンエラストマーは、シロキサンを主鎖とし、UV光照射によってラジカル重合をするための官能基(例えばメタクリロイル基)を末端に有する。このシリコンエラストマーに、UV光照射によってラジカルを発生する光開始剤(例えば、アセトフェノンや2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等の芳香族ケトン)を加える。そのシリコンエラストマーに、先に形成した電極マトリクスに合わせて、1mmのラインが7mm間隔で格子状に形成されているマスクを介して、UV露光してシリコンエラストマーを硬化させた。このときのUV露光は、UV波長300nm~400nmのNEC社のBlack light FL15BL(商品名)を光源として、SUNHAYATO社のLight box(W532×D450×H100mm)を用いて行った。 その結果、一つのセルが7mm×7mmで、8行8列の格子形状のシリコンエラストマーを基板上に形成した。このときシリコンエラストマーの高さは1mmであった。図6は、基材上にシリコンエラストマーの隔壁が作製され、その隔壁に囲まれたセル内に電極として金が蒸着された写真である。 [0060] 次に、生体バッファ層を作製する。生体バッファ層は生体適合性を有する高分子媒体に導電性材料を均一に分散させたものを用いることができる。 生体バッファ層として、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート(DEMEBF4)を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサンに分散されてなる組成物を用いた。図7は本発明の実施例において、架橋されて生体バッファ層となる組成物の作製手順を模式的に示した図である。 この組成物の作製は、市販のカーボンナノチューブ(MWNT、長さ10μm、径5nm)30mgと、親水性のイオン液体であるN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)60mgとを混合・撹拌した。撹拌は、磁気スターラーを用いて700rpm以上の回転数で1週間、25℃、脱イオン水中で行った。得られた懸濁液を、高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano-jet pal, JN10, Jokoh)によって処理して、黒い物質を得た。得られたCNTゲルを含む溶液を生理食塩水で濯いだ後に、光架橋剤(Irgacure2959、長瀬産業株式会社製)1mgと、ポリロタキサンゲル(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)1000mgとを混合し、上記組成物を作製した。 [0061] このゲル状の物質を、既に作成したシリコンエラストマーからなる隔壁で囲まれたバンクに充填させる。次に、ポリロタキサンを架橋して、DEMEBF4を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサン媒体中に分散され、該ポリロタキサンが架橋されてなる生体バッファ層を作製した。このとき生体バッファ層の厚さと、シリコンエラストマーからなる隔壁の高さは同じ1mmとした。 [0062] (比較例) 隔壁を作製しなかったこと以外は、実施例と同じ製造方法で、電極アレイを形成した。 [0063] (評価結果) 図8Aは、実施例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果を示したグラフである。図8Bは、実施例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果を示したグラフである。これらのグラフにおいて、縦軸は出力電圧であり、XY軸は位置座標を示す。グラフのXYは7mm×7mmであり、実施例において隔壁で囲まれた一つのセルサイズである。この出力結果は、入力電圧を印加した点に対向する一つの電極が測定した出力結果である。 この結果、実施例の電極アレイが100mVの入力電圧に対し、45mVの出力結果を示している(図8A参照)のに対し、比較例の電極アレイが100mVの入力電圧に対し、23mVの出力結果しか示していない(図8B参照)ことが分かる。またグラフからも明らかに、実施例の電極アレイの方が、ピークの高い検出結果を示しており、電極アレイの感度が高いことが分かる。 [0064] 図9Aは実施例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果をシミュレーションしたグラフである。図9Bは比較例の電極アレイのある一点に、100mVの入力電圧を印加した際の、その入力電圧をした箇所に対向する電極が測定した出力結果をシミュレーションしたグラフである。縦軸は出力電圧であり、XY軸は位置座標を示す。 シミュレーションは、静電場解析を、有限差分法を用いて行った。有限差分格子のサイズは一辺が1mmの立方体とし、基板に平行な方向に58×58の格子、基板に垂直な厚さ方向に1格子である。 この結果、実施例の電極アレイが100mVの入力電圧に対し、100mVの出力結果を示している(図9A参照)のに対し、比較例の電極アレイが100mVの入力電圧に対し、30mVの出力結果しか示していない(図9B参照)ことが分かる。グラフからも明らかに、実施例の電極アレイの方が、ピークの高い検出結果を示しており、電極アレイの感度が高いことが分かる。 符号の説明 [0065] 1…基材、2…電極、3…生体バッファ層、4…隔壁、5…アース配線、10,20…電極アレイ、100…生体センサー、101…増幅回路、102…コンデンサ、1011~1014…トランジスタ、1015…抵抗素子、F11~Fnm…信号検出器、T11~Tnm…信号転送用のトランジスタ、BL1~BLm…ビット線、WL1~WLn…ワード線 |
※
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。
『 ELECTRODE ARRAY AND BIOLOGICAL SENSOR 』に関するお問合せ
- 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 知的財産マネジメント推進部
- URL: http://www.jst.go.jp/chizai/
-
E-mail:
- Address: 〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
- TEL: 03-5214-8486
- FAX: 03-5214-8417