THERMAL-RADIATION LIGHT SOURCE AND TWO-DIMENSIONAL PHOTONIC CRYSTAL USED THEREIN
外国特許コード | F160008692 |
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整理番号 | J1017-15WO |
掲載日 | 2016年3月10日 |
出願国 | 世界知的所有権機関(WIPO) |
国際出願番号 | 2015JP055161 |
国際公開番号 | WO 2015129668 |
国際出願日 | 平成27年2月24日(2015.2.24) |
国際公開日 | 平成27年9月3日(2015.9.3) |
優先権データ |
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発明の名称 (英語) | THERMAL-RADIATION LIGHT SOURCE AND TWO-DIMENSIONAL PHOTONIC CRYSTAL USED THEREIN |
発明の概要(英語) | This invention provides a thermal-radiation light source that allows light-intensity changes with a response speed on par with photoelectric conversion elements. Said thermal-radiation light source (10) is provided with a two-dimensional photonic crystal (12) in which an n layer (112) comprising an n-type semiconductor, a quantum-well-structure layer (114) that has a quantum-well structure, and a p layer (111) comprising a p-type semiconductor are stacked in that order to form a plate (11) inside which different-refractive-index regions (holes (121)), each of which has a refractive index that is different from those of the n layer (112), the p layer (111), and the quantum-well-structure layer (114), are laid out in a periodic manner so as to resonate with light of a specific wavelength corresponding to the transition energy between subbands in the quantum wells in the quantum-well-structure layer (114). This thermal-radiation light source (10) is also provided with a p-type electrode (131) and an n-type electrode (132) for applying, to the abovementioned plate (11), a voltage that is negative on the side corresponding to the p layer (111) and positive on the side corresponding to the n layer (112). |
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国際特許分類(IPC) |
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日本語項目の表示
発明の名称 | 熱輻射光源、及び該光源に用いる2次元フォトニック結晶 |
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発明の概要 | 本発明は、光電変換素子と同様に速い応答速度で光の強弱の切り換えを行うことができる熱輻射光源を提供する。熱輻射光源10は、n型半導体から成るn層112、量子井戸構造を有する量子井戸構造層114、及びp型半導体から成るp層111がこの順で積層された板材11内に、量子井戸構造層114における量子井戸内のサブバンド間における遷移エネルギーに対応する特定波長の光に共振するように、n層112、p層111及び量子井戸構造層114とは屈折率が異なる異屈折率領域(空孔121)が周期的に配置された2次元フォトニック結晶12と、p層111側が負、n層112側が正である電圧を板材11に印加するためのp型電極131及びn型電極132とを備える。 |
特許請求の範囲 |
[請求項1] a) n型半導体から成るn層、量子井戸構造を有する量子井戸構造層、及びp型半導体から成るp層がこの順で厚み方向に積層された板材内に、該量子井戸構造層における量子井戸内のサブバンド間における遷移エネルギーに対応する特定波長の光に共振するように、前記n層、前記p層及び前記量子井戸構造層とは屈折率が異なる異屈折率領域が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、 b) 前記p層側が負、前記n層側が正である電圧を前記板材に印加するための電極と を備えることを特徴とする熱輻射光源。 [請求項2] 前記量子井戸構造層がn型量子井戸を有し、該量子井戸構造層と前記p層の間に絶縁体から成るi層を有することを特徴とする請求項1に記載の熱輻射光源。 [請求項3] 前記量子井戸構造層がp型量子井戸を有し、該量子井戸構造層と前記n層の間に絶縁体から成るi層を有することを特徴とする請求項1に記載の熱輻射光源。 [請求項4] 前記2次元フォトニック結晶が、(1/(2πRC))が目的とする周波数以上となる電気抵抗R及び電気容量Cを有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱輻射光源。 [請求項5] 前記p層及び前記n層のうち、キャリアの有効質量が大きい方のキャリア密度が、有効質量が小さい方のキャリア密度よりも高いことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の熱輻射光源。 [請求項6] 前記電極が、前記p層に接し該p層を構成するp型半導体とオーミック接合となる金属製のp電極と、前記n層に接し該n層を構成するn型半導体とオーミック接合となる金属製のn電極であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の熱輻射光源。 [請求項7] 前記電極が、前記板材の表面のうちの少なくとも一方に、前記異屈折率領域が周期的に配置された配置領域を囲繞するように設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の熱輻射光源。 [請求項8] 前記2次元フォトニック結晶を電力により加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の熱輻射光源。 [請求項9] 熱輻射光源に用いる2次元フォトニック結晶であって、 n型半導体から成るn層、量子井戸構造を有する量子井戸構造層、及びp型半導体から成るp層がこの順で厚み方向に積層された板材と、 前記量子井戸構造層における量子井戸内のサブバンド間における遷移エネルギーに対応する特定波長の光に共振するように、前記板材内に周期的に配置された、前記n層、前記p層及び前記量子井戸構造層とは屈折率が異なる異屈折率領域と を備えることを特徴とする2次元フォトニック結晶。 |
明細書 |
明 細 書 発明の名称 : 熱輻射光源、及び該光源に用いる2次元フォトニック結晶 技術分野 [0001] 本発明は、熱輻射光源、及び該熱輻射光源に用いる2次元フォトニック結晶に関する。熱輻射光源は、熱輻射により放射される電磁波を光源とする装置であるが、熱を入力とし、光(電磁波)を出力する熱-光変換装置と捉えることができる。この入力たる熱が電磁波(赤外線)で与えられる場合、波長変換装置とも捉えることができる。また、熱ではなく電気エネルギーを投入することにより熱輻射を発生させる装置と捉えることもできる。本願における「熱輻射光源」は、これらいずれをも対象とする。 背景技術 [0002] 熱輻射光源は、物体に熱を与えるだけで発光を得ることができる、という利点を有する。熱輻射光源は例えば、エンジンの排ガス中の成分を分析するガスセンサにおいて、エンジンの廃熱をセンシングのための赤外線に変換する光源として好適に用いることができる。また、熱輻射光源はガスセンサに限らず、人、自動車、動物等の侵入を検知するセンサ等、赤外線を用いた各種センサの光源にも用いることができる。 [0003] 熱が与えられた物体が発する電磁波は、広い波長範囲に亘るスペクトルを有する。例えば物体を数十℃~数百℃に加熱することにより得られる電磁波の波長範囲は数μm~数十μmとなる。しかし、前述の赤外線センサでは一般に特定の波長の赤外線のみを利用するため、このような熱輻射光源を用いると、特定波長以外の不要な赤外線が被測定物に照射されてしまい、被測定物が加熱されてしまう等の悪影響が生じる。また、電気エネルギーを投入することにより熱輻射を発生させる場合において広帯域の輻射が生じる光源では、消費電力の増大が問題となる。 [0004] このような問題点を解決するべく、非特許文献1では、後述の量子井戸構造を有する板材と、その板材内に周期的に配置された、該板材とは屈折率が異なる異屈折率領域を有する熱輻射光源が提案されている。量子井戸構造とは、エネルギーバンドギャップの大きさが異なる複数種の、厚さ数nm~十数nm程度の半導体の層を積層することにより、井戸型のエネルギーポテンシャル(量子井戸)を形成した物の構造をいう。また、板材内に異屈折率領域が周期的に配置されることによって、屈折率の周期的な分布が形成される。このように板材内に周期的な屈折率分布が形成された物を「2次元フォトニック結晶」と呼ぶ。2次元フォトニック結晶は、屈折率分布の周期に対応した特定の波長を有する光の定在波が形成されることにより、当該特定波長の光に共振することが知られている。 [0005] 非特許文献1の熱輻射光源では、熱源から熱が供給されると、量子井戸内に形成されるエネルギーバンド(半導体のバンドと区別して、「サブバンド」と呼ばれる)間においてエネルギー遷移が生じ、それにより、特定の波長帯内の波長を有する光が生成される。そして、この波長帯の光のうち、フォトニック結晶の周期により定まる特定波長を有する光がフォトニック結晶に共振する。これにより、非特許文献1の熱輻射光源は、この特定波長において鋭いピークを有する波長スペクトルを持つ光を生成することができる。 先行技術文献 特許文献 [0006] 非特許文献1 : De Zoysa Menaka(デ ゾイサ メーナカ) 他著、"Conversion of broadband to narrow band thermal emission through energy recycling"(エネルギーリサイクルによる広帯域熱輻射から狭帯域熱輻射への変換)、Nature Photonics、(英国)、Nature Publishing Group、2012年7月8日、第6巻、535~539頁 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] 赤外線を用いたセンサでは、環境温度の変動により生じるノイズや、電源の交流電力等に起因した100Hz以下の低周波ノイズ等が発生し、測定に悪影響を及ぼす。そこで、この種のセンサでは、光源において1,000~100,000Hz(1~100kHz)程度の周波数で強度が変化する赤外線を生成し、検出部においてこの周波数で強度が変化する赤外線のみを検出することによりノイズを除去するという、強度変調によるノイズ除去処理が行われている。強度変調は典型的には、赤外光の強度が異なる2値(「強」と「弱」、あるいは「ON」と「OFF」)の切り換えにより生成される矩形波を用いて行われる。光源としてレーザダイオード等、電力を直接的に光に変換する光電変換素子を用いた場合には、電力を周期的にON/OFFするだけで、赤外光の出力が「ON」と「OFF」の間で繰り返される矩形波を有する赤外線を容易に生成することができる。しかし、従来の熱輻射光源では、出力である光の強度の切り換えは、入力である加熱とその停止の切り換え、あるいは加熱と冷却の切り換えにより行うしかなく、切り換えの応答速度が光電変換素子よりもはるかに遅い。そのため、熱輻射光源はせいぜい1~100Hz程度の低い周波数でしか強度変調を行うことができず、強度変調を用いるセンサに直接適用することは困難であるため、機械的に光路をON/OFFする外部機器を付加する必要があった。 [0008] 本発明が解決しようとする課題は、光電変換素子と同様に速い応答速度で光の強弱の切り換えを行うことができる熱輻射光源を提供することである。 課題を解決するための手段 [0009] 上記課題を解決するために成された本発明に係る熱輻射光源は、 a) n型半導体から成るn層、量子井戸構造を有する量子井戸構造層、及びp型半導体から成るp層がこの順で厚み方向に積層された板材内に、該量子井戸構造層における量子井戸内のサブバンド間における遷移エネルギーに対応する特定波長の光に共振するように、前記n層、前記p層及び前記量子井戸構造層とは屈折率が異なる異屈折率領域が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、 b) 前記p層側が負、前記n層側が正である電圧を前記板材に印加するための電極と を備えることを特徴とする。 [0010] 本発明に係る熱輻射光源の動作を、図1及び図2を用いて説明する。量子井戸には、量子井戸構造を形成する半導体の種類により、伝導バンドに電子を束縛するn型量子井戸と、価電子バンドに正孔を束縛するp型量子井戸という2種のものが存在する。 [0011] まず、図1を用いて、量子井戸構造層がn型の量子井戸を有するn型量子井戸構造層である場合について説明する。n層、n型量子井戸構造層、及びp層がこの順で厚み方向に積層された上記板材は、電圧が印加されていない状態においては、図1(a)に示されるエネルギー状態が形成される。このエネルギー状態では、これら各層に共通の(電子に関する)フェルミ準位Efを挟んで価電子バンド及び伝導バンドが形成されており、n層では伝導バンドに電子が、p層では価電子バンドに正孔が、それぞれ存在する。そして、量子井戸構造層においては、伝導バンドに量子井戸が形成され、量子井戸内に電子が束縛されている。量子井戸内には量子化された複数のエネルギー準位(サブバンド)が形成される。2次元フォトニック結晶を加熱すると、量子井戸内の電子が熱エネルギーによりサブバンド間で励起された後に基底状態に戻り(サブバンド間遷移)、その際に基底状態と励起状態のエネルギー差に対応する波長の光が生成される。サブバンド間遷移はある程度の帯域幅をもち、その帯域中で異屈折率領域の周期に対応した上記特定波長の光につき、定在波が2次元フォトニック結晶内に形成されることにより共振状態になる。これにより、当該特定波長の光が熱輻射光源から外部に放出される。 [0012] 次に、p層側が負、n層側が正である電圧が電極から板材に印加されると、図1(b)に示すように、n層のエネルギーバンドを基準として見たp層の価電子バンドのエネルギーが上昇し、量子井戸構造層の量子井戸内に存在していた電子のうちの一部がn層に移動する。これにより、量子井戸内の電子が減少するため、2次元フォトニック結晶を加熱した際に生じるサブバンド間遷移に寄与する電子も減少する。これにより、サブバンド間遷移により生成される光の強度が低下するため、2次元フォトニック結晶に共振して外部に放出される上記特定波長の光の強度も低下する。 [0013] 以上のように、本発明に係る熱輻射光源では、印加電圧の切り換えにより、該電圧がOFFの時には「強」、該電圧がONの時には「弱」という、光の強弱の切り換えを行うことができる。このような電圧の切り換えは、加熱とその停止又は冷却の切り換えによる温度変化の速度と比較して非常に速い速度で行うことができるうえに、量子井戸内の電子数の変化は電圧の切り換えにほぼ追従するため、本発明に係る熱輻射光源における光の強弱の切り換えは光電変換素子と同様に速い応答速度で行うことができる。 [0014] 量子井戸構造層がp型の量子井戸を有するp型量子井戸構造層である場合には、図2に示すように、価電子バンドに量子井戸が形成され、量子井戸内に正孔が束縛される。2次元フォトニック結晶を加熱すると、量子井戸内の正孔にサブバンド間遷移が生じる。このサブバンド間遷移によってある程度の波長の帯域幅をもつ光が生成される点、及びこの帯域中の上記特定波長の光が2次元フォトニック結晶内で共振状態になることによって当該特定波長の光が熱輻射光源から外部に放出される点は、n型量子井戸構造層の場合と同様である。 [0015] そして、p層側が負、n層側が正である電圧が電極から板材に印加されると、図2(b)に示すように、p層のエネルギーバンドを基準として見たn層の伝導バンドのエネルギーが下降し、量子井戸構造層の量子井戸内に存在していた正孔のうちの一部がp層に移動する。これにより、量子井戸内の正孔が減少するため、加熱時のサブバンド間遷移に寄与する正孔も減少し、サブバンド間遷移により生成される光の強度が低下するため、2次元フォトニック結晶に共振して外部に放出される上記特定波長の光の強度も低下する。 [0016] 本発明に係る熱輻射光源は、前記量子井戸構造層がn型量子井戸を有する場合には該量子井戸構造層と前記p層の間に、前記量子井戸構造層がp型量子井戸を有する場合には該量子井戸構造層と前記n層の間に、絶縁体から成るi層を有していてもよい。このi層は、次に述べるように、その厚みにより熱輻射光源の電気容量Cを小さくし、それにより、動作速度(周波数)を高めることに寄与する。 [0017] 本発明に係る熱輻射光源において、動作速度の上限は、外部から印加された電圧が実際に量子井戸に加わるまでの遅れ時間で決まり、上記2次元フォトニック結晶の電気抵抗Rと電気容量Cの積の逆数で表される周波数(1/(2πRC))が上限周波数となる。この上限周波数は、光の強度のON/OFF比が-3dBとなる周波数である。そのため、上記2次元フォトニック結晶は、(1/(2πRC))が目的とする周波数以上となる電気抵抗R及び電気容量Cを有することが望ましい。電気抵抗Rはp層の正孔及びn層の電子の添加密度により制御することができる。また、電気容量Cは、各層の厚みにより制御することができるが、正孔数及び電子数に影響を与えないように、前記i層を設けてその厚みにより制御することが望ましい。但し、電子・正孔を過多に添加すると不要な波長帯域において熱輻射を生じる原因となる。また、電気抵抗R及び電気容量Cは、2次元フォトニック結晶の面積Sにより調整することもできる。面積Sを小さくするほど、電気抵抗R及び電気容量Cが小さくなり、上限周波数を高めることができる。これら電気抵抗R及び電気容量Cを適切に設定することにより、上述のセンサの光源として好適である1~100kHzの動作周波数を有する熱輻射光源が実現でき、さらには、大気の状態に左右されない自由空間通信の信号源に使用可能である10~50MHzの動作周波数を有する熱輻射光源を実現することもできる。 [0018] 本発明に係る熱輻射光源において、前記p層及び前記n層のうち、キャリア(p層では正孔、n層では電子)の有効質量が大きい方のキャリア密度が、有効質量が小さい方のキャリア密度よりも高いことが望ましい。同じキャリア密度では一般に有効質量が大きいキャリアの方が高い抵抗を示すため、2次元フォトニック結晶の電気抵抗Rを小さくすることにより動作周波数を高める効果は、有効質量が小さいキャリアよりも大きいキャリアの密度で調整した方が顕著になる。また、不要な熱輻射を生じ難いという点においても、有効質量が小さいキャリアよりも大きいキャリアの密度で調整した方が望ましい。 [0019] 本発明に係る熱輻射光源において、前記電極には、前記p層に接し該p層を構成するp型半導体とオーミック接合となる金属製のp電極と、前記n層に接し該n層を構成するn型半導体とオーミック接合となる金属製のn電極を用いることが望ましい。オーミック接合とは、半導体と金属間で整流作用が生じることなく、オームの法則に従う電気伝導に近い導通状態が得られるように接合されたものをいい、整流作用が生じるショットキー接合と対比されるものである。 [0020] 本発明に係る熱輻射光源において、前記電極は、前記板材の表面のうちの少なくとも一方に、前記異屈折率領域が周期的に配置された配置領域を囲繞するように設けられていることが望ましい。これにより、電極に遮られることなく該配置領域から光を取り出すことができる。 [0021] 本発明に係る熱輻射光源はさらに、前記2次元フォトニック結晶を電力により加熱する加熱装置を備えることが望ましい。この加熱装置には、上記電極からn層及び/又はp層に電流を流すものや、上記電極の周囲に別途、加熱装置用の電極を設けて同様の加熱を行うもの、あるいは、別途高抵抗の配線を設けて電流を流すことにより加熱する機構を用いることができる。また、光源自体には加熱装置を設けず、別の熱源と接触させることにより光源の温度を上昇させる手法を用いてもよい。 [0022] 本発明に係る2次元フォトニック結晶は、熱輻射光源に用いるものであって、 n型半導体から成るn層、量子井戸構造を有する量子井戸構造層、及びp型半導体から成るp層がこの順で厚み方向に積層された板材と、 前記量子井戸構造層における量子井戸内のサブバンド間における遷移エネルギーに対応する特定波長の光に共振するように、前記板材内に周期的に配置された、前記n層、前記p層及び前記量子井戸構造層とは屈折率が異なる異屈折率領域と を備えることを特徴とする。 発明の効果 [0023] 本発明により、光電変換素子と同様に速い応答速度で光の強弱の切り換えを行うことができる熱輻射光源が得られる。 図面の簡単な説明 [0024] [図1] 本発明に係る熱輻射光源において、量子井戸構造層がn型量子井戸を有する場合における電子のエネルギー状態を説明するための図。 [図2] 本発明に係る熱輻射光源において、量子井戸構造層がp型量子井戸を有する場合における電子のエネルギー状態を説明するための図。 [図3] 本発明の一実施例である熱輻射光源の斜視図(a)、縦断面図(b)及び上面図(c)。 [図4] 本実施例の熱輻射光源につき、電極間に電圧を印加しない場合と印加した場合における電子のポテンシャルを計算した結果を示すグラフ。挿入図は、電圧と吸収係数の関係を計算した結果を示すグラフである。 [図5] 本実施例の熱輻射光源につき、電極間に電圧を印加しない場合と印加した場合における光の放射率の波長スペクトルを計算した結果を示すグラフ。挿入図は、これら2つの波長スペクトルの差を示すグラフである。 [図6] 本実施例の熱輻射光源において電極間の電圧を周波数10kHzで切り換えた場合(a)と、比較例である従来の熱輻射光源において該光源を加熱するためのヒータの電圧を周波数10kHzで切り換えた場合(b)における輻射パワーの時間変化を計算した結果を示すグラフ。 [図7] 本実施例の熱輻射光源につき、変調周波数による変調パワーの変化を計算で求めた結果を示すグラフ。 [図8] 本実施例で作製した熱輻射光源の顕微鏡写真(a)及び該熱輻射光源における2次元フォトニック結晶を拡大して撮影した顕微鏡写真(b)。 [図9] 本実施例で作製した熱輻射光源の電流-電圧特性を異なる複数の温度で測定した結果を示すグラフ。 [図10] 本実施例で作製した熱輻射光源につき、電極間に電圧を印加しない場合と印加した場合において放出された赤外線の波長スペクトルを測定した結果を、同温度・同面積の黒体輻射光源から得られた測定結果と合わせて示すグラフ。 [図11] 本実施例で作製した熱輻射光源につき、電極間に印加する電圧を変化させながら測定した赤外線の波長スペクトル(a)及び当該測定に対応する条件において計算した赤外線の波長スペクトル(b)を示すグラフ。なお、(b)では、電圧が8Vの場合と10Vの場合のデータが重なって表示されている。 [図12] 本実施例で作製した熱輻射光源につき、電極間の電圧を0.1kHz~1.5MHz(100~1,500,000Hz)の範囲内の周波数で切り換えつつ、放射される光の強度の時間変化を測定する高速変調実験の光学系を示す模式図。 [図13] 本実施例で作製した熱輻射光源につき、10kHzの周波数で行った高速変調実験の結果を示すグラフ。 [図14] 本実施例で作製した熱輻射光源につき、変調周波数による変調パワーの変化を実験で求めた結果を示すグラフ。 [図15] 本実施例の熱輻射光源において、p層の正孔密度Np及びn層の電子密度Neが共に1×1017cm-3である場合(a)、Np及びNeが共に1×1018cm-3である場合(b)、並びにNpが1×1018cm-3であってNeが1×1017cm-3である場合(c)につき、放射率(左図)及び遅れ時間(右図)を計算で求めた結果を示すグラフ。 [図16] 空孔の配置領域を1辺0.5mmの正方形とした場合における、変調周波数による変調パワーの変化を計算で求めた結果を示すグラフ。 [図17] 空孔の径が図8の例よりも小さい熱輻射光源の顕微鏡写真(a)、該熱輻射光源における2次元フォトニック結晶を拡大して撮影した顕微鏡写真(b)、及び該熱輻射光源において放出された赤外線の波長スペクトルを測定した結果を示すグラフ(c)。 [図18] 本発明に係る熱輻射光源の変形例を示す斜視図(a)及び上面図(b)。 発明を実施するための形態 [0025] 図3~図18を用いて、本発明に係る熱輻射光源の実施例を説明する。 実施例 [0026] (1) 本実施例の熱輻射光源の構成 本実施例の熱輻射光源10は、図3に示すように、板材11、空孔(異屈折率領域)121、p型電極131、n型電極132、及び脚14を有し、板材11と空孔121により2次元フォトニック結晶12が形成されている。 [0027] 板材11は長方形であり、上から順にp層111、i層113、量子井戸構造層114及びn層112を積層した構造を有する。本実施例における各層の厚みは、p層111及びn層112では800nm、i層113及び量子井戸構造層114では200nmである。本実施例では、p層111にはGaAsにp型不純物であるBeが添加されたp型半導体であるp-GaAsを、n層112にはGaAsにn型不純物であるSiが添加されたn型半導体であるn-GaAsを、i層113には不純物が注入されていないGaAsを、それぞれ材料として用いた。p層111の正孔密度Np及びn層112の電子密度Neはそれぞれ1×1017cm-3である。量子井戸構造層114は、GaAsから成る層とn-AlGaAsから成る層が交互に多数積層されたものである。これにより、量子井戸構造層114にはGaAsから成る層の部分が井戸内となるn型量子井戸が多数形成される。このように量子井戸が多数形成されたエネルギーポテンシャルを多重量子井戸と呼び、多重量子井戸を有する構造を多重量子井戸構造と呼ぶ。 [0028] 空孔121は、板材11のうち、1辺の長さLが2mmである正方形の範囲内に、三角格子状に配置されている。この三角格子の周期長aは4.8μmである。2次元フォトニック結晶12は、空孔121がこのような周期で配置されていることにより、真空中における波長が9.2μmである赤外線に共振する。空孔121は円柱状の形状を有しており、該円柱の設計上の半径rは約0.96μm(0.20a)、厚みは約1.3μmである。 [0029] 板材11を構成する各層のうちn層112は、他の層よりも面積が大きく、長手方向の両端において量子井戸構造層114と接しない部分を有する。n型電極132は、n層112とオーミック接合となるGe/Au/Ni/Au合金製の金属電極から成り、n層112の当該部分に蒸着法により設けられている。p型電極131は、p層111とオーミック接合となるAu/Zn/Au合金製の金属電極から成り、p層111の表面に蒸着法により設けられている。p型電極131及びn型電極132がこれらの位置に設けられていることにより、量子井戸構造層114及びi層113を挟んでp層111とn層112の間に電圧が印加されることになる。また、p型電極131は、空孔121が周期的に配置された領域(配置領域)を囲繞するように設けられているため、p型電極131に遮られることなく該配置領域から光が取り出される。 [0030] 脚14は、不純物が注入されていない絶縁体のGaAsから成る2本の直方体状の部材である。2本の脚14は板材11の長手方向の両端付近に、板材11の短辺方向に延びるようにn層112の下面に取り付けられている。この脚14により、板材11は脚14が取り付けられた部分を除いて、他の物に接することなく保持される。また、熱輻射光源10を加熱する際には、外部の熱源から熱伝導によって、この脚14を介して2次元フォトニック結晶12に伝熱される。 [0031] (2) 本実施例の熱輻射光源10の特性に関する計算結果 次に、本実施例の熱輻射光源10の特性につき、計算によりシミュレーションを行った結果を説明する。なお、以下では、特記した場合を除いて、p型電極131とn型電極132の間に電圧を印加する際には、電圧の極性は、p層111(p型電極131)側を負、n層112(n型電極132)側を正とした。 [0032] まず、図4を用いて、熱輻射光源10のp層111、i層113、量子井戸構造層114及びn層112における、熱輻射に寄与する電子のポテンシャルを計算で求めた結果を説明する。この計算では、p型電極131とn型電極132の間に(a)電圧を印加しない場合と、(b)8Vの電圧を印加した場合を対象とし、加熱温度を200℃とした。その結果、図4のグラフに示すように、(a), (b)共に量子井戸構造層114に多数の量子井戸(多重量子井戸)が形成されるが、(a)ではいずれの量子井戸もほぼ同じポテンシャルを有するのに対して、(b)ではp層111寄りにある量子井戸の全体のエネルギーが(a)の場合よりも高くなっている。このことは、電圧を印加した場合には、p層111寄りの量子井戸内には電子が存在せず、電圧を印加しない場合よりも熱輻射に寄与する電子が少なくなることを意味する(図1参照)。これにより、電圧を印加しない場合よりも印加した場合の方が、量子井戸内のサブバンド間遷移(Inter Sub Band Transition:ISB-T)による光の吸収係数は小さくなり(図4中の挿入図)、発光強度も小さくなる。 [0033] 次に、図5を用いて、熱輻射光源10を外部熱源により200℃に加熱した場合における光の放射率の波長スペクトルを、(a)電圧を印加しない場合と、(b)8Vの電圧を印加した場合について計算した結果を説明する。ここで放射率は、各波長において、熱輻射光源10の発光強度を同温度の黒体輻射の強度で除した値で定義される。なお、図5のグラフにおいて、波長及び波数は、真空中の光におけるものをいう。このグラフより、波長9.2μmにおける放射率のピーク値が、(b)では(a)の約1/8になっていることかわかる。一方、この波長9.2μm以外においても放射率のピークが見られるものの、それらの値はいずれも波長9.2μmにおける(a)のピーク値よりも十分小さい。しかも、波長9.2μm以外のピークでは、(a)と(b)のピーク値にほとんど相違が見られない。このことは、図5の挿入図に示した(a)と(b)の差をとったグラフからも明らかである。これらの計算結果は、電圧のON/OFFにより、波長9.2μm付近の狭い波長帯域の赤外線のみが強度変調されることを意味する。従って、この熱輻射光源10を用いたセンサにおいて、検出された光の信号のうち、電圧のON/OFFに対応した周波数で強度変調された信号に基づいて、波長9.2μm付近の赤外線による応答のみを得ることができる。 [0034] 次に、図6を用いて、熱輻射光源10を加熱した状態で、電極間に印加する電圧のON/OFFの切り換えを行った場合に得られる輻射パワーの時間変化を計算した結果を説明する。ここで、ONの際の電圧は8Vとし、ON/OFFの周波数(変調周波数)は10kHzとした。加熱温度は200℃とした。ここで、一般的な赤外線検出器においては一定の波長帯内の赤外線が波長で区別されることなく検出されることから、輻射パワーは5~15μmの波長帯内で積算したものを求めた。また、比較例として、従来の熱輻射光源において、その温度を変化させるために光源に投入する入力パワーを周波数10kHzで切り換えた場合について、同様の計算を行った。これらの計算の結果、比較例(図6(b))ではヒータのON時とOFF時の輻射パワーの差(この差を「変調パワー」と呼ぶ)がわずか0.066%であるのに対して、本実施例(図6(a))では変調パワーが約67%となった。このように、本実施例によれば、従来よりも約1000倍の変調深さで、10kHzという高い変調周波数による光の強度変調を行うことができる。なお、図6(a)に示したデータは、上述のように5~15μmの波長帯内の輻射パワーを積算した値を示しているが、図5のスペクトルと合わせて考慮すると、強度変調に寄与しているのは波長9.2μm付近の赤外線であるといえる。 [0035] 次に、図7を用いて、変調周波数が異なる場合において、電圧OFF時と電圧ON時の変調パワーの相違を計算した結果を説明する。各変調周波数における変調パワーは、変調周波数が低周波(100Hz)であるときの変調パワーとの比をデシベルで示した。ここでは、板材11に空孔121を配置する領域(配置領域)を、1辺の長さLが2mmである正方形の場合と、Lが0.5mmである正方形の場合の2種類の計算を行った。図7の縦軸の値が-3dB(変調周波数=横軸が100Hzのときの変調パワーの1/2)になる変調周波数は、L=2mmの場合には約700kHz、L=0.5mmの場合には約10MHzであった。従って、これら本実施例の熱輻射光源では、変調周波数を従来の最大値である100Hzよりも高く設定しても、明確な変調動作が可能である。また、L=2mmの場合よりもL=0.5mmの場合の方、すなわち、配置領域が小さい方が、変調周波数を高くすることができる。 [0036] (3) 本実施例の熱輻射光源に対する実験の結果 次に、実際に作製した熱輻射光源(以下、「熱輻射光源10A」と呼ぶ)に対する実験結果を示す。図8は、熱輻射光源10Aを、図3(a)の斜視図における上側から撮影した顕微鏡写真である。(a)では熱輻射光源10Aの上面全体を光学顕微鏡で撮影し、(b)では2次元フォトニック結晶12の一部を電子顕微鏡により拡大して撮影した。 [0037] 得られた熱輻射光源10Aにつき、電流-電圧特性を測定した結果を図9に示す。ここでは、p型半導体、絶縁体、n型半導体の順で接合されたPINダイオードの測定において通常行われている通り、p型電極131側が正、n型電極132側が負である電圧を正の値で示した。室温から200℃の範囲内の温度で測定を行ったところ、得られた熱輻射光源10Aはいずれも、電圧が正の時には電流が流れ、電圧が負の時にはほどんど電流が流れない、というダイオードとしての特性を有している。熱輻射光源10Aは、PINダイオードにおける電圧0から負のバイアス電圧の範囲において、電流を流すことなく、電子を量子井戸とn型半導体の間で移動させることを利用しているといえる。 [0038] 図10に、熱輻射光源10Aにおいて、p型電極131とn型電極132の間に印加する電圧が(a)0Vであるときと、(b)10V(図9では負で表した値)であるときにおける光の放射強度の波長スペクトルを測定した結果を、同温度・同面積の黒体輻射光源から得られた測定結果と合わせて示す。なお、光の放射強度は任意単位で示したが、(a), (b)及び黒体輻射光源の測定結果の間では比較を行うことができるように強度を揃えた。この実験結果は、図5に示した計算結果と同様に、波長9.2μmにおいて(b)の放射強度の値が(a)よりも大幅に小さくなっている一方、他の波長では、発光が無いか、(a)と(b)が互いに近い強度で発光しているかのいずれかであることを示している。 [0039] 次に、0~10Vの範囲内における複数の印加電圧について、波長9.2μm付近における波長スペクトルを測定した結果を図11(a)に、この測定に対応した計算の結果を図11(b)に、それぞれ示す。印加電圧がいずれの場合にも、測定結果と計算結果が良く一致している。 [0040] 次に、p型電極131-n型電極132間の印加電圧のON/OFFを10kHz以上の変調周波数で繰り返し切り換えながら、熱輻射光源10Aからの発光強度を測定した結果を示す。この測定は、図12に示す実験装置20を用いて行った。なお、この実験装置20は、後述の熱輻射光源10Bに対しても使用するため、図12及び本段落の以下の記載では、熱輻射光源を示す符号は「10」と表記する。実験装置20は、熱輻射光源10を載置すると共に加熱するヒータ21と、p型電極131-n型電極132間に印加する、所定の変調周波数を有する方形波の高周波電圧を生成するパルス生成器22と、熱輻射光源10が発する光を検出する検出器23と、この光を熱輻射光源10から検出器23に導く光学系24と、検出器23から出力される信号とパルス生成器22の高周波電圧を同期させることによって出力信号を観測するデジタルオシロスコープ25を有する。検出器23には、HgCdTe(水銀・カドミウム・テルル)検出器を用いた。パルス生成器22が出力するON時の高周波電圧の値は10Vとした。 [0041] 変調周波数が10kHzである場合の測定結果を図13に示す。印加電圧の周波数に対応した方形波の出力信号が得られた。 [0042] 上記実験装置20を用いて、変調周波数による変調パワーの変化を測定した結果を図14に示す。周波数が約600kHz以下の範囲において、-3dB以上の変調強度を得ることができる。この測定結果は、図7に示した計算結果と良く一致している。 [0043] 次に、変調周波数をより高くするため、すなわち動作をより高速化するために、p層111及びn層112のキャリア密度や、空孔の配置領域の面積について検討した結果を説明する。 まず、キャリア密度に関して、図15を用いて説明する。図15(a)は、p層111の正孔密度Np及びn層112の電子密度Neが上記実施例の値(いずれも1×1017cm-3)である場合における放射率(左図。図5の挿入図を除くグラフの再掲。)及び遅れ時間tr(右図)を示すグラフである。ここで遅れ時間trとは、電極間に電圧が印加されてから実際にフォトニック結晶中央部の量子井戸に加わるまでの時間をいう。ここでは、量子井戸構造層114に印加された電圧の値が、十分に時間が経過した後の値の(1-e-1)倍(eは自然対数の底、(1-e-1)≒0.63)になった時の時間を遅れ時間trとした。なお、p型電極131とn型電極132間の電圧は、左図では8V、右図では10Vとした。図15(a)の計算では、電圧のOFF時とON時の間での放射率の変化は0.69、遅れ時間trは0.62μsであった。 [0044] 次に、p層111の正孔密度Np及びn層112の電子密度Neを共に1×1018cm-3に増加させたところ、図15(b)に示すように、(a)と比較して遅れ時間trは0.061μsに短縮され、電圧OFF時とON時の放射率の変化は0.19に減少した。これは、遅れ時間trは改善されたものの、ON/OFF比が悪化したことを意味する。また、図15(b)の左図より、目的波長(9.2μm)以外の波長における無駄な輻射が増加していることがわかる。 [0045] そこで、n層112の電子密度Neは1×1017cm-3のままとし、p層111の正孔密度Npのみを1×1018cm-3に増加させた。これは、n層112の電子よりもキャリアの有効質量が大きいp層111の正孔の密度を高くしたことを意味する。その結果、図15(c)に示すように、(a)と比較して遅れ時間trは0.091μsに短縮されると共に、電圧OFF時とON時の放射率の変化は0.56となり、放射率の低下を(b)の場合よりも抑えることができた。目的波長以外の波長における無駄な輻射も、(b)の場合よりも抑えられている。 [0046] 次に、空孔の配置領域を1辺0.5mmの正方形とした場合における、変調周波数による変調パワーの変化を計算で求めた結果を図16に示す。この計算における条件は、図14に示した実験における条件と比較して、p層111の正孔密度Npのみを1×1018cm-3に増加させた点(n層112の電子密度Neは1×1017cm-3のまま。すなわち、これらのキャリア密度は図15(c)の場合と同じ。)、及び空孔の配置領域を小さくした点において相違する。この計算結果は、上限周波数を約70MHzにまで高めることができることを示している。 [0047] 次に、図17を用いて、空孔121の半径を上記実施例の熱輻射光源10Aよりも小さくした熱輻射光源10Bについて説明する。この例では、三角格子の周期長aは4.5μm、空孔121の半径rは0.63μm(0.14a)とし、その他の条件は熱輻射光源10Aと同じとした。得られた熱輻射光源10Bの顕微鏡写真を図17(a)及び(b)に、実験装置20を用いて、該熱輻射光源において放出された赤外線の波長スペクトルを測定した結果をグラフで同図(c)に示す。赤外線の波長スペクトルは、輻射強度が最大となる印加電圧が2Vの場合、及び輻射強度が最小となる印加電圧が10Vの場合について示した。熱輻射光源10Bでは、印加電圧が2Vの場合、赤外線の波長スペクトルの半値全幅は7.0cm-1であり、図11(a)に示した熱輻射光源10Aにおける印加電圧が0Vの場合の半値全幅である12.5cm-1よりも狭くなった。これは、空孔の径を小さくすることによって、より狭帯域な放射スペクトルが得られたことを意味する。また、熱輻射光源10Bへの印加電圧を2Vから10Vに変化させると光の強度が低下し、熱輻射光源10Aの場合と同様に電圧による強度変調ができることを確認した。 [0048] 本発明は上記実施例には限定されない。 上記実施例ではp層111、n層112及びi層113にはGaAsを主な構成元素とする半導体を用いたが、他の半導体を用いてもよい。量子井戸構造層114にも、上記以外の材料から成るものを用いてもよい。さらに、量子井戸構造層114には、n型量子井戸を有するものに限らず、InPから成る層とp-InGaAsから成る層が交互に多数積層されたもの等、p型量子井戸を有するものを用いてもよい。また、量子井戸構造層114は、上記実施例における多重量子井戸構造を有するものには限らず、量子井戸が1つのみ形成される量子井戸構造を有するものを用いてもよい。p層111、n層112、i層113及び量子井戸構造層114の上記厚みの値は一例であり、それらの値には限定されない。上記のp層111の正孔密度及びn層112の電子密度(それらの層における不純物の密度)の値も一例であり、それらの値には限定されない。また、i層113を用いることなくp層111と量子井戸構造層114を直接接合してもよい。 [0049] 上記実施例では、異屈折率領域には空孔121を用いたが、板材11とは屈折率が異なる部材を異屈折率領域として用いてもよい。また、異屈折率領域(空孔121)の形状や大きさは上記実施例のものには限定されず、形状に関しては三角柱状や四角柱状等のものを用いてもよい。異屈折率領域(空孔121)の周期長や格子の形状も上記実施例のものには限定されず、格子の形状に関しては正方格子その他の格子を用いてもよい。 [0050] 上記実施例では、空孔121が周期的に配置された配置領域を囲繞するようにp型電極131を設けたが、例えば図18に示すように配置領域を挟むように2本で1対のp型電極131Aを設けた場合にも、p型電極131Aに遮られることなく該配置領域から光を取り出すことができる。なお、図18ではp型電極131Aと同様にn型電極132Aも2本で1対のものを用いているが、このようにp型電極とn型電極の形状を合わせることは必須ではない。 [0051] 上記実施例では熱輻射光源の加熱に外部熱源からの熱伝導を用いたが、加熱方法はこれに限定されない。熱輻射光源自体に加熱のための電力を投入してもよいし、他の手段を用いてもよい。 符号の説明 [0052] 10、10A、10B…熱輻射光源 11…板材 111…p層 112…n層 113…i層 114…量子井戸構造層 12…2次元フォトニック結晶 121…空孔 131、131A…p型電極 132、132A…n型電極 14…脚 20…実験装置 21…ヒータ 22…パルス生成器 23…検出器 24…光学系 25…デジタルオシロスコープ |
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