TOP > 国内特許検索 > 唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞
再生医療に有用なポテンシャルを有する幹細胞についての研究が盛んになされている。今日までに報告された代表的な幹細胞として、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、並びに膵幹細胞が挙げられる。
間葉系幹細胞はヒト成体骨髄液より分離された(Pittenger, M.F. et al., Science 284, 143 (1999))。この細胞は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞へのin vitroにおける分化誘導が可能である。神経幹細胞(Gage, P.H., Science 287, 1433-1438 (2000))については1992年に成体の中枢神経系からの最初の分離の報告がなされており、2001年には成体の皮膚真皮から神経細胞に分化可能な幹細胞の分離(Toma, J.G. et al., Nature Cell Biology, 3, 778-784 (2001))が報告されている。
造血幹細胞は既に多くの研究がなされているが、その分化機能について報告されたのは比較的新しい。1999年に骨髄細胞が肝臓細胞に分化することがPatersenらによって明らかにされ(Petersen B.E. et al., Science 284, 1168 (1999))、翌年にはマウス造血幹細胞をc-kittil、Thr-1low、Linneg、Sca-1+にてsortingした細胞分画が、幹細胞に分化転換することが示されている(Lagasse, E. et al., Nature Medicine 6, 1229-1234 (2000))。この他にも造血幹細胞には分化転換能があると考えられており、心筋(Orlic, D. et al., Nature 410, 701-705 (2001))や、さらには肺胞上皮、腸管上皮、皮膚(Orlic, D. et al.,上掲)への分化も報告されている。
以上のように、間葉系もしくは外胚葉系の細胞についての幹細胞研究は進んでいるが、内胚葉系幹細胞の報告は未だ少ない。ヒト肝幹細胞についてはその存在が確実視されているが、未だ確定的な幹細胞の報告はない。膵臓についてはCorneliusらのグループが成体マウス膵臓より膵島産生幹細胞(islet producing stem cells (IPSCs))の分離を行っており、さらにIPSCsよりin vitroにて作製した膵島の移植実験を報告している(Ramiya, V.K. et al., Nature Medicine 6, 278-282 (2000))。この細胞についても、a、b、d細胞への分化は確認されているが、その他の細胞への分化能は確認されていない。膵島よりネスチン(nestin)陽性にて分離した幹細胞が膵臓の内、外分泌および肝臓の表現型へと分化したとの報告はあるが(Zulewski, H. et al., Diabetes 50, 521-533 (2001))、分化マーカーの免疫組織学的検索は示されていない。また、内胚葉系細胞および外胚葉系細胞の双方に分化可能なより未分化な多分化能を有する細胞についての報告はこれまでの所なされていない。
【非特許文献1】 Pittenger, M.F. et al., Science 284, 143 (1999)【非特許文献2】 Gage, P.H., Science 287, 1433-1438 (2000)【非特許文献3】 Toma, J.G. et al., Nature Cell Biology, 3, 778-784 (2001)【非特許文献4】 Petersen B.E. et al., Science 284, 1168 (1999)【非特許文献5】 Lagasse, E. et al., Nature Medicine 6, 1229-1234 (2000)【非特許文献6】 Orlic, D. et al., Nature 410, 701-705 (2001)【非特許文献7】 Ramiya, V.K. et al., Nature Medicine 6, 278-282 (2000)【非特許文献8】 Zulewski, H. et al., Diabetes 50, 521-533 (2001)
本発明は、唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞、およびその細胞を用いた唾液腺由来の浮遊系細胞の培養方法に関する。