TOP > 国内特許検索 > GSO単結晶及びPET用シンチレータ
陽電子放出核種断層撮像装置(Positron Emission computed Tomography、以下PET)では、どのような特性あるいは仕様のシンチレータを採用するかが装置全体の性能を向上させる上で最も重要な要因の一つとなる。米国を中心にPET診断の保険適用が進みビジネス拡大が進む中、高性能なPET装置を得るために、優れたシンチレータ材料の探索、実用化のための育成技術開発等が精力的に進められている。
GSOシンチレータは蛍光出力、蛍光減衰時間、エネルギー分解能などの特性に優れ、また材料の化学的安定性にも優れているためPET用シンチレータとして採用されている。図1、図2にCe濃度の異なる2種類のGSOシンチレータのエネルギースペクトル(137Cs)及び発光減衰曲線を示す。図から、Ce濃度0.5mol%のGSOの方がCe濃度1.5mol%のGSOに比べて蛍光出力、エネルギー分解能に優れることがわかる。一方蛍光減衰時間は、Ce濃度1.5mol%のGSOの方が短く(早く)優れる。したがって、Ce濃度による蛍光出力と蛍光減衰時間の優劣は逆の関係にあることがわかる。
従来のGSO単結晶シンチレータには以下のような問題が指摘されている。(1)発光のSlow成分の存在GSOシンチレータの発光減衰曲線は2成分系からなり、減衰の速い成分(Fast成分)は30~60ns、遅い成分(Slow成分)は400~600nsである。遅い成分の出力比は20%程度のため、PET利用で大きな問題とはなっていないが、計数率特性を向上させる上で好ましくなく、低減が望まれる。
(2)Ce濃度増加による着色1.0 mol%以上のCe濃度のGSOでは、僅かであるが淡黄色の着色が見られる。着色は蛍光出力、エネルギー分解能を劣化させることから、好ましくない。図3にCe濃度の異なる2種類のGSOの透過率を示す。Ce濃度1.5mol%の透過率の方が、Ce濃度0.5 mol%に比べて低いことがわかる。着色は、発光に寄与しない4価のCeが原因と考えられる。GSOには、Ce濃度を上げることで蛍光減衰時間を短くできる特長があるが、その結果蛍光出力が劣化する問題がある。蛍光減衰時間と蛍光出力の両立を図る方法としては、4価のCeを減らすことができる不純物の探索が有効と考えられる。
本発明は、GSO単結晶及びGSO単結晶からなるPET用シンチレータに関する。