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遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置 コモンズ

国内特許コード P07A013137
整理番号 A041P121
掲載日 2008年3月10日
出願番号 特願2003-547911
登録番号 特許第3796585号
出願日 平成14年11月25日(2002.11.25)
登録日 平成18年4月28日(2006.4.28)
国際出願番号 JP2002012273
国際公開番号 WO2003046519
国際出願日 平成14年11月25日(2002.11.25)
国際公開日 平成15年6月5日(2003.6.5)
優先権データ
  • 特願2001-360047 (2001.11.26) JP
発明者
  • 重川 秀実
  • 武内 修
  • 山下 幹雄
  • 森田 隆二
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置 コモンズ
発明の概要 時間領域及び空間領域において極限の分解能を有する、光励起による物理現象の測定装置、特に、遅延時間変調型時間分解走査プローブ顕微鏡装置に関し、超短光レーザーパルス発生装置(2)と、超短光レーザーパルス発生装置(2)の発生する超短光レーザーパルス(3)を二つに分けると共にこの二つの超短光レーザーパルス(4,5)間の遅延時間tを周波数変調(ω)する遅延変調回路(6)と、走査プローブ顕微鏡(17)と、走査プローブ顕微鏡(17)のプローブ信号(11)を遅延時間の変調周波数(ω)でロックイン検出するロックイン検出装置(8)とを有し、超短光レーザーパルス(3)の強度の揺らぎによる影響を受けずに、超短光レーザーパルス(3)の照射によるプローブ(19)の先端の熱膨張、熱収縮無しに、プローブ信号(11)の遅延時間依存性を遅延時間に対する変化率として検出する。フェムト秒オーダーの時間分解能及びオングストロームオーダーの空間分解能で、超短光パルス間の遅延時間に依存する光励起物理現象を測定することができる。
従来技術、競合技術の概要


ナノスケールで構造を制御して、新しい機能を有する次世代デバイスを開発する試みが近年とみに盛んになりつつあり、中でも光物性を利用した機能素子や超高速素子の創製は特に重要な課題の一つである。そのためには、ナノスケールの局所領域の光励起物理現象を過渡応答まで含めて解明することが必要不可欠となる。このため、究極の空間領域分解能を有する走査プローブ顕微鏡技術と究極の時間領域分解能を有するレーザーパルス技術を組み合わせた新しい測定技術の導入が提案され、既に単一分子や半導体超格子構造からの光励起発光やトンネル電流発光の解明、局所的バンド構造の解明、点欠陥の解析といった重要な成果を上げつつある(JOURNAL OF APPLIED PHYSICS Vol.83,No.7,1 APRIL 1998,P3453~。 JOURNAL OF APPLIED PHYSICS Vol.88,No.8,15 OCTOBER 2000,P4851~。 Solid State Communications,Vol.107の6,P281~,1998。 重川秀美 「光励起STM」 表面科学20,(1999)337頁 参照)。
走査プローブ顕微鏡、例えば、走査トンネル顕微鏡は、オングストローム・オーダーの曲率半径を有する探針の先端を、オングストローム・オーダーの距離で試料表面に近づけ、探針の先端と試料表面との間にトンネル接合を形成し、トンネル接合に流れるトンネル電流の大きさから、原子レベルの表面モフォロジーを測定する装置である。走査トンネル顕微鏡はピエゾ・ステージを使用してオングストローム・オーダーの精度で走査できるので、究極の空間領域分解能を有した表面モフォロジー像を得ることができる。
また、超短光レーザーパルス装置は、フェムト秒オーダーの半値幅を有するレーザーパルスをフェムト秒という究極の時間分解能で発生する装置である。
走査トンネル顕微鏡の探針の先端の直下の試料表面に超短光レーザーパルスを照射し、超短光レーザーパルス照射に同期したトンネル電流を検出することによって、空間及び時間ともに極限の分解能で光励起物理現象を測定できる。これにより、ナノスケール・デバイスを創製する上で極めて重要な知見が得られる。
このような装置の一つに、遅延時間変調型時間分解走査プローブ顕微鏡装置がある。この装置は、走査プローブ顕微鏡に試料を配置し、この試料を励起する2つの短光パルスを、これらの短光パルス間の遅延時間を連続的に変化させて照射し、試料の励起状態に起因するプローブ電流の変化に基づき、2つの短光パルスの遅延時間に依存するプローブ電流成分を測定するものである。この装置によれば、ナノスケールの局所領域の光励起物理現象の過渡応答が測定できるので、光物性を利用した機能素子や超高速素子の創製に必要な光励起物理現象の知見が得られる。例えば、試料のナノスケール微小領域のキャリアーを励起できる短光パルスを用いることにより、キャリアー寿命を遅延時間に依存するプローブ電流成分の遅延時間依存性から測定できる。
次に、従来の、遅延時間変調型時間分解走査プローブ顕微鏡装置の構成及び作用を説明する。図9は、従来の遅延時間変調型時間分解走査プローブ顕微鏡装置の構成を示す図である。ここでは走査プローブ顕微鏡として走査トンネル顕微鏡を用いた例について説明する。
図9において、短光レーザーパルス発生装置60から一定の繰り返し周波数で出力される短光パルス62を干渉計型遅延回路61により1ps程度の遅延時間td を有する2つのパルス63,64に分け、パルス63,64をチョッパ装置65により周波数ωでチョップし、トンネル顕微鏡装置66のプローブ直下の試料部分に入射する。ロックイン検出装置69により、トンネル電流信号67を周波数ω(68)を参照信号としてロックイン検出を行い、短光パルス63,64照射時のトンネル電流Iirr と、短光パルス63,64非照射時のトンネル電流Ibak との差信号Idiffを求める。短光パルス63,64間の遅延時間td を連続的に変化させて同一の測定を繰り返し、遅延時間に依存するトンネル電流成分Idiffの遅延時間依存性を測定する。
しかしながら、上記の従来装置では、以下に説明する課題がある。
第1に、遅延時間td に依存するプローブ電流成分、すなわち、トンネル電流成分Idiffは、遅延時間td に依存しない成分Ibak に比べて極めて小さく、ロックイン検出装置のダイナミックレンジを限界まで大きくしても、十分な精度で測定できない。
第2に、短光パルス発生装置の光出力強度は環境の微小な変化(温度等)により長周期の揺らぎを持つが、従来方法ではこの揺らぎを除去することができず、プローブ信号の遅延時間依存性を高精度に測定することが難しい。
従って、上記の従来法のように光照射時と非照射時のプローブ信号を差し引く方法では、プローブ電流成分Idiff の遅延時間依存性を高感度に高精度に測定することが困難である。
第3に、走査プローブ顕微鏡のプローブ先端が短光パルスにさらされるため、プローブ先端が、短光パルスの照射時に熱膨張し、超短光パルスの非照射時に熱収縮し、プローブ先端と試料表面との距離が変動し、トンネル確率が変動してしまう。このため、プローブ信号の遅延時間依存性を高感度に高精度に測定することが難しい。
また、従来装置では、図9に示したように、遅延時間td を有する短光パルス63,64の波長は同一である。従って、この装置では、2つのエネルギー準位が関与する現象は測定できるが、3つ以上のエネルギー準位が関与する光励起現象は測定することができない。
例えば、図10に示すように、エネルギー準位71,72,73を介する励起状態があった場合、準位71と準位73のエネルギー差に相当する光エネルギーを吸収して準位71から準位73に励起されたキャリアーが、準位73から準位72に緩和する緩和時間を知りたい場合がある。この場合、準位71と準位73のエネルギー差に相当する光パルス74と、準位72と準位73のエネルギー差に相当する光パルス75を、これらの光パルス間の遅延時間td を連続的に変えて試料に照射し、遅延時間td に依存するプローブ電流成分Idiffの遅延時間td 依存性を測定すれば、緩和時間を求めることができる。しかしながら、従来装置では、遅延時間td を有する2つの短光パルスの各々の波長を任意に変化させることができなかった。

産業上の利用分野


本発明は、時間領域及び空間領域において極限の分解能を有する、光励起による物理現象の測定装置に関し、詳しくは、遅延時間変調型時間分解走査プローブ顕微鏡装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
超短光レーザーパルス装置と、
この超短光レーザーパルス装置の発生する超短光パルスを二つに分割してポンプ光とプローブ光を形成すると共に、このポンプ光とプローブ光間の中心遅延時間を設定し、かつ、この設定した中心遅延時間を中心としてポンプ光とプローブ光間の遅延時間を一定の光路長振幅及び周波数で変調する遅延変調回路と、
上記遅延時間が変調された上記ポンプ光とプローブ光が照射される試料の直上に、プローブ先端と上記試料の表面との間にトンネル接合を形成するようにプローブを配置し、かつ、このプローブを上記試料の面上で走査する走査プローブ顕微鏡と、
上記ポンプ光とプローブ光が照射されて生ずる上記トンネル接合に流れる上記変調周波数で変調されたトンネル電流であるプローブ信号を、上記変調周波数を参照信号としてロックイン検出するロックイン検出装置と、を有し、
上記遅延変調回路により、上記一定の光路長振幅及び周波数で遅延時間が変調された上記ポンプ光とプローブ光を上記中心遅延時間を連続的に各々変えて複数形成し、この複数のポンプ光とプローブ光の各々が照射されることによって生ずる上記プローブ信号の各々を、上記ロックイン検出装置で上記変調周波数を参照信号としてロックイン検出し、このロックイン検出したプローブ信号の各々から、各々の中心遅延時間におけるプローブ信号の遅延時間に対する変化率を求め、この変化率を遅延時間で積分してプローブ信号の遅延時間依存性を求めることを特徴とする、遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項2】
前記超短光レーザーパルス装置は、フェムト秒オーダーのパルス幅を有する超短光パルスを一定周期で発生することを特徴とする、請求項1に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項3】
前記遅延変調回路は、ハーフミラーと、ピエゾ・ステージに固定されたミラーから成る二組の可動ミラーとを有し、この二組の可動ミラーの一方又は両方を駆動して、遅延時間の中心値を変化させると共にこの遅延時間を中心遅延時間として一定周波数で変調することを特徴とする、請求項1に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項4】
前記ロックイン検出装置は、前記遅延時間の変調周波数を参照周波数としてロックイン検出し、前記プローブ信号の前記遅延時間の中心値における、遅延時間に対する変化率に比例した量を検出することを特徴とする、請求項1に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項5】
前記走査プローブ顕微鏡は、走査トンネル顕微鏡又は原子間力顕微鏡であることを特徴とする、請求項1に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項6】
超短光レーザーパルス装置と、
この超短光レーザーパルス装置の発生する超短光パルスから複数の波長の異なる超短光パルスを発生し、かつ、これらの波長の異なる複数の超短光パルス間の遅延時間を設定できる超広帯域可変波長多重パルス波形整形装置と、
上記複数の超短光パルスの波長を設定し、これらの複数の超短光パルス間の遅延時間を設定し、かつ、これらの遅延時間を一定タイミングで変調する制御信号を上記超広帯域可変波長多重パルス波形整形装置の二次元空間振幅変調器と二次元空間位相変調器に送出し、かつ、上記遅延時間の変調タイミングをロックイン検出の参照信号としてロックイン検出器に送出する、波長・遅延時間・変調タイミング制御装置と、
この波長・遅延時間・変調タイミング制御装置で制御され、上記超広帯域可変波長多重パルス波形整形装置から出力する複数の超短光パルスが照射される試料の直上に、プローブをこのプローブ先端と上記試料表面との間にトンネル接合が形成されるように配置し、かつ上記試料の面上で上記プローブを走査する走査プローブ顕微鏡と、
この超短光パルスが照射される走査プローブ顕微鏡のプローブ信号を上記変調タイミングを参照信号としてロックイン検出するロックイン検出装置と、を有することを特徴とする、遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項7】
前記波長・遅延時間・変調タイミング制御装置は、所望の前記複数の超短光パルスの波長、遅延時間及び変調タイミング周波数の入力値に基づいて、前記二次元空間振幅変調器と二次元空間位相変調器の制御信号を計算し、この制御信号を上記二次元空間振幅変調器と二次元空間位相変調器に出力し、かつ、上記変調タイミング信号を前記ロックイン検出装置に出力するコンピュータからなることを特徴とする、請求項6に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項8】
前記ロックイン検出装置は、前記変調タイミングを参照周波数としてロックイン検出し、前記プローブ信号の前記遅延時間における、遅延時間に対する変化率に比例した量を検出することを特徴とする、請求項6に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。

【請求項9】
前記走査プローブ顕微鏡は、又は原子間力顕微鏡であることを特徴とする、請求項6に記載の遅延時間変調型フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 登録
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